重たい掲示板
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Loginはこちら【1189】[1363]英と米の空軍が謀略政治で、無実のシリアを爆撃しようとしている。
副島隆彦です。今日は、2013年8月29日です。夏の終わりで、そろそろヨーロッパとアメリカの金融市場が崩れ出しそうです。じりじりと株価が下げ、債券=国債市場の利回り上昇(長期金利の下落、暴落)のおかしな動きが始まりそうです。
私は9月の変動よりも10月の激変、暴落劇の方に賭けています。 それでも 米、欧、日の先進3地域(リージョン)は悪賢く生き延びる。またしてもインチキの延命政策を採るだろう。
今日からイギリス軍を主体とする シリア政府軍の飛行場への爆撃が起きるはずだった。それがあと4日、国連調査団が帰って来るまで出来ない、とか、「いや国連決議など無くても、英米の空軍だけでシリア爆撃を実施する」という瀬戸際の駆け引きをしている。
8月21日にシリア軍が化学兵器を使った、というのはウソの世界的なキャンペーンだったことが満天下に露見しつつある。 それでも英と米の、軍需産業界の後押しを受けた勢力がシリア爆撃をやると言って聞かない。
(転載貼り付け始め)
●「「アサドは愚かでない」、シリアのクルド人組織が毒ガス使用に疑義」
2013年8月28日 ロイター
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE97R02320130828
シリアで化学兵器が使用された問題をめぐって西側諸国がアサド政権の関与を疑う中、同国最大のクルド人組織「民主統一党」(PYD)のサレ ハ・ムスリム代表は、「アサド大統領はそれほど愚かではない」と述べ、政権の関与に懐疑的な見方を示した。
同代表は、政権側が内戦で優位な立場を築いており、アサド大統領が化学兵器に
頼る必要はないと説明。その上で、今回の化学兵器使用はアサド 大統領を陥
れ、国際的な批判の声を引き出すために行われたものだと述べた。
化学兵器が使用された当時はすでに国連の専門家らが、シリア国内で前回の使用
疑惑の調査を行っており、同代表は「そのさなかで化学兵器を使 うようなまね
はしないだろう。政権側はそれほど愚かではない」と語った。
また、ムスリム氏は「もし国連の調査団で反体制派が化学兵器を使用した証拠が
出てきたとしても、水に流されてしまうのだろう」と皮肉った。PYDはこれまで、アサド政権側と反体制派側の両者と衝突してきたが、別のクルド人組織からはPYDが政権に近い立場にあるとの批判の声も 上がっている。
●「対シリア軍事介入検討で米欧けん制…イラン」
2013年8月28日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130828-OYT1T00927.htm?from=navr
イランの最高指導者ハメネイ師は28日、閣僚を集めた席上で、シリアのアサ
ド政権の化学兵器使用疑惑に関連し、「米国の軍事介入は、地域 を火の海とす
るだろう」と警告し、対シリア軍事作戦の検討に入った米欧を強くけん制した。
イランのザリフ外相は27日、国営テレビに出演した中で、化学兵器使用を非
難した上で、「(米国の軍事介入を期待した)過激派の罠だ」とし て、シリア
の反体制派によるものだとの見方を示唆。「 米国が罠にはまれば、オバマ大統領の評価は地に落ちる」と述べた。スラム教シーア派が多数を占めるイランは、シーア派の分派アラウィ派のアサド政権を全面支持している。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦です。 イギリスのキャメロン首相というは、かつての小泉純一郎とそっくりだ。アメリカの言いなりになって何でもする、という感じだ。この後(あと)、田中宇(たなかさかい)氏の優れた、英米が強行しようとしているシリア爆撃を強く批判している評論記事を載せます。
オバマ大統領は空爆をやりたくない。化学兵器をワザと使ったのは反政府勢力(イスラエルとアメリカの軍事狂暴派が背後で支援している)であって、バシャール・アサド大統領のシリア政権ではないと分かっている。ジョン・ケリー国務長官は、自分のパレスチナ和平交渉の業績を作りたいから、生来の弱腰な生き方で、どっちつかずになっている。
今のアメリカ政権(ホワイトハウス)を軍事政策で牛耳っているのは、スーザン・ライスという黒人女である。彼女はヒラリーの子分として政権内の安全保障担当大統領補佐官(クレジデンシャル・エイド・フォー・ナショナル・セキュリティ)という重要な職についた。
この性悪女(しょうわるおんな)が今は一番いけない。すでにヒラリーの力はない。いくら「私は次の大統領選に出るわよ」と喚(わめ)いても周りに人が集まらない。すっかり飽きられている。
アメリカの軍需産業界(=軍産複合体)と軍事強硬派(ジンゴウイスト、他国への軍事干渉派。インターベンショニスト)は今はもうこのスーザン・ライスを自分たちの頭(あたま)に押し立てている。この秋の景気回復もない、インチキの違法な「金融緩和(ジャブジャブ・マネー)」もなかなか出来ない、ということなれば、またぞろウォー・エコノミー(戦争刺激経済)である。戦争で経済(=景気)を刺激するしかない。
アメリカとヨーロッパのの軍需産業界は、「とにかく何でもいいから、爆弾、ミサイルを使ってくれ。そうしないと私たちの商売があがったりだ」と悲鳴を上げている。それで彼らは戦争を「作り出す」。
この分析で私はアルル君と一致した。 以下の田中宇氏の分析も私たちと同じだ。たくさんの新聞記事を世界中から集めて証拠にしている。真実は何であり、世界の世論であっても、どういう風にいい加減に操(あやつ)られるのか、そして真実の報道をしようとする勇気あるジャーナリストたちがいることも、じっくりと読んで理解してください。
副島隆彦拝
(転載貼り付け始め)
田中宇の国際ニュース解説 無料版 2013年8月28日
http://tanakanews.com/
━━━━━━━━━━━━━
★無実のシリアを空爆する
━━━━━━━━━━━━━
米国が英仏の賛同を得て、早ければ8月29日にシリアを空爆するという。
首都ダマスカスの近郊で、8月21日に化学兵器によって市民が攻撃され多数
の死者が出たとされる件について、米政府は「シリア政府軍の仕業に違いない」
と断定し、国際的に違法な化学兵器の使用に対して制裁する目的で、シリア沖
の地中海にいる米軍艦や、英軍の潜水艦から、トマホークなどのミサイルを
発射して、シリア軍の基地などを破壊する予定と報じられている。攻撃対象が
多くなる場合、B2ステルスなど、ミサイルより多くの爆弾を落とせる戦闘機
を使う予定だという。
http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/171340
Strike on Syria `As Early as Thursday’
攻撃の時期については、9月1日以降との説もある。時期の早晩があるかも
しれないが、米政府の高官がマスコミに攻撃を明言しており、言葉だけでなく、
いずれ攻撃が行われる可能性が高い。攻撃は2日間行われる予定だ。世論調査
では、米国民の9%しか、シリアに対する軍事攻撃を支持していない。
http://rt.com/usa/us-syria-strike-chemical-060/
Obama reportedly considering two-day strike on Syria
取り沙汰されている空爆の理由は「シリア政府軍が化学兵器を使って無実の
市民を大量殺害したから」だが、シリア政府軍が化学兵器を使ったという確た
る証拠を、米英仏は持っていない。8月21日に市民への化学兵器による攻撃
が行われたとされる根拠は、ユーチューブなどに、被害者を撮影したとされる
映像が掲載されたり、現場の地域(Ain Tarma、Zamalka、Jobar。いずれも反
政府派が強い)の病院に医薬品などを供給している「国境なき医師団」が、現
場の病院の医師から、化学兵器の被害を受けたと思われる多数の市民を手当し
ているとの報告を受けたりしたことだ。
http://www.washingtonpost.com/world/national-security/kerry-obama-determined-to-hold-syria-accountable-for-using-chemical-weapons/2013/08/26/599450c2-0e70-11e3-8cdd-bcdc09410972_story.html
After Syria chemical allegations, Obama considering limited military strike
しかしこれらの証拠は、化学兵器を使ったのが政府軍であるということの証
明になっていない。証拠とされるユーチューブの動画の中には、事件の前日の
8月20日にアップロードされたものもあり、ユーチューブのサーバーがある
米国とシリアとの時差を考えても、動画が事件前にアップされていたという指
摘がある。
http://rt.com/news/syria-chemical-prepared-advance-901/
Materials implicating Syrian govt in chemical attack prepared before incident – Russia
http://investmentwatchblog.com/news-of-chemical-weapons-attack-in-syria-published-one-day-before-massacre-happened/
News of chemical weapons attack in Syria published one day before massacre happened
また、アップされた動画を見た英国の科学捜査の研究機関(Cranfield Forensic
Institute)の専門家(Stephen Johnson)が、写っている被害者の容態が、
化学兵器の被害を受けたにしてはおかしいと思われる点が複数あると指摘して
いる。写っている負傷者は、身体に白い気泡(水ぶくれ?。foaming)ができ
ているが、報じられているような化学兵器の攻撃を受けた場合、気泡はもっと
黄色か赤っぽくなるはずで、白い気泡は別の種類の攻撃を受けた症状のように
見えるなど、シリア軍が持っている化学兵器が攻撃に使用されたと結論づける
のは早すぎる。専門家はそのように指摘している。
http://www.euronews.com/2013/08/21/expert-casts-doubt-on-chemical-weapons-footage-from-syria
Expert casts doubt on Syria chemical weapons footage
また、現場の「国境なき医師団」がシリア政府軍の攻撃であると証言したよ
うな報道があるが、実のところ医師団は「化学兵器攻撃の可能性が高いが、誰
が攻撃してきたかはわからない」と言っている。また、米国の金融界や大企業
の献金を受けて活動している同医師団について、戦争で儲けたい米国の勢力の
意向を代弁している疑いがあると見る向きもある。
http://www.activistpost.com/2013/08/doctors-behind-syrian-chemical-weapons.html
“Doctors” Behind Syrian Chemical Weapons Claims are Aiding Terrorists
シリアでは今年3月にも化学兵器による攻撃があり、シリア政府や、同政府
を支持するロシアなどは「反政府勢力が化学兵器を使った」と主張する一方、
反政府派や彼らを支持する米欧などは「政府軍が化学兵器を使った」と主張し、
対立してきた。シリア政府軍は化学兵器を持っていることがわかっているが、
反政府勢力は持っていないと、当初思われていた。だがその後、シリアに隣接
するトルコの当局が、トルコ国内のシリア反政府勢力の拠点で、化学兵器の
材料を押収するなど、反政府派による犯行の可能性が高まった。国連は、シリ
アに専門家の調査団を派遣することを決め、調査団は8月中旬にダマスカスに
到着した。その数日後の8月20日、調査団が滞在するダマスカスのホテルか
ら15キロしか離れていない地域で、化学兵器による攻撃が起きたとされている。
http://www.activistpost.com/2013/08/propaganda-overdrive-suggests-syria-war.html
Propaganda Overdrive Suggests Syria War Coming Soon
http://www.tanakanews.com/130625mideast.htm
悲劇から喜劇への米国の中東支配
http://tanakanews.com/130507israel.php
大戦争と和平の岐路に立つ中東
http://tanakanews.com/121212syria.php
シリアに化学兵器の濡れ衣をかけて侵攻する?
3月に化学兵器を使ったと疑われているアサド政権が、国連の調査団が到着
した直後のタイミングをわざわざ選んで、調査団の滞在場所からすぐ近くで、
一般市民を化学兵器で攻撃するとは考えにくい。シリアの内戦は今年に入り、
アサドの政府軍が優勢になり、政府軍は、各地の反政府派の拠点を奪還してい
る。しかも政府軍は空軍を持っており、化学兵器でなく通常兵器による空爆の
方が、反政府派を効率的に駆逐できる。政府軍が、自分らが優勢な時に、非効
率的な化学兵器を使うとは考えにくい。反政府派が、これまでも自分らに有利
な偏向報道をしてくれてきた米欧のマスコミが「政府軍の仕業だ」と決めつけ
てくれるとの見通しで(もしくは米国側から持ちかけられて)、国連調査団の
目前で化学兵器を使ったと考える方が納得できる。
http://www.globalresearch.ca/us-sponsored-rebels-in-syria-have-been-defeated-government-forces-are-restoring-peace-throughout-the-country/5346632
US Sponsored Rebels in Syria have been Defeated. Government Forces are Restoring Peace throughout the Country
事件後、米英マスコミの多くは、政府軍の仕業と決めつけて報道し、化学兵
器による死者の数を「60人」「600人」「1400人」などと、競ってつ
り上げて報道した。
http://voiceofrussia.com/2013_08_21/Chemical-weapons-use-in-Damascus-only-a-fool-can-believe-it-expert-5491/
Chemical weapons use in Damascus: ‘only a fool can believe it’ – expert
http://21stcenturywire.com/2013/08/22/chemical-weapons-media-propaganda-in-us-uk-is-designed-to-hide-the-truth-in-syria/
`Chemical Weapons’ media propaganda in US, UK is designed to hide the truth in Syria
事件直後は米国政府(国務省報道官)も「誰が化学兵器を使ったかまだわか
らない」と慎重姿勢だったが、マスコミはそんなのおかまいなしだった。03年
の米軍イラク侵攻の直前、米英マスコミが、実は存在していないだろうと最初
からわかっていたイラクの大量破壊兵器の脅威をでっち上げ、競って報じて
いたのとまったく同じ姿勢だ。イラク戦争の失敗後、米英マスコミは、戦争を
起こすプロパガンダ機関になったことを反省し、姿勢をあらためたはずなのに、
今回またシリアで、03年と同質の扇動が繰り返されている。
http://www.reuters.com/article/2013/08/22/us-syria-crisis-usa-state-idUSBRE97L0Z620130822
U.S. says unable to conclusively determine chemical weapons used in Syria
http://www.reuters.com/article/2013/08/27/us-syria-crisis-china-idUSBRE97Q09420130827
Remember bogus U.S. excuses for Iraq war before attacking Syria: China’s Xinhua
FT紙はご丁寧にも「イラクへの侵攻は、イラクの体制を転換する意図(米
英によるおせっかい)で行われたが、シリアへの侵攻は、独裁のアサド政権を
倒そうとするシリア人自身の活動を支援する(良い)ものだ。イラクとシリア
はまったく意味が違う(イラクは悪い戦争で、シリアは良い戦争だ)」という
趣旨の記事を載せている。
http://blogs.ft.com/the-world/2013/08/why-syria-is-not-iraq/
Why Syria is not Iraq
FTの記事は間違いだ。今のシリア反政府勢力の参加者のほとんどは、シリ
ア国民でない。他のアラブ諸国やパキスタン、欧州などから流れてきたアルカ
イダ系の勢力で、トルコやヨルダンの基地などで米欧軍などから軍事訓練を受
け、カタールなどから資金をもらっており、事実上の「傭兵団」だ。外国勢力
が傭兵団を使ってシリアに侵攻している。FTなどが妄想している「シリア市
民の決起」とはまったく違う。シリアの一般の国民の多くは、長引く内戦にう
んざりし、アサド続投で良いから、早く安定が戻ってほしいと考えている。
http://www.washingtonsblog.com/2013/08/medias-reporting-on-syria-as-terrible-as-it-was-on-iraq.html
Media’s Reporting on Syria as Terrible as It Was on Iraq
http://edition.presstv.ir/TextOnly/detail.aspx?id=254692
`None of insurgents were Syrian’
http://tanakanews.com/120613syria.htm
シリア虐殺の嘘
シリア反政府勢力が良くない存在であることは、米軍のデンプシー参謀長も
明確に認めている。デンプシーは「シリアの反政府勢力は過激なアルカイダが
多く、彼らを支援して政権をとらせることは、米国の国益にならない」と断言
している。マスコミの歪曲はひどい。「ジャーナリズム」の「あるべき姿」は、
世界的に(もちろん日本でも)すでに消滅して久しい。今の(もしかすると
昔から?)ジャーナリズムは全体として、読者や視聴者に間違った価値観を与
え、人類に害悪を与える存在だ。(マスコミは昔から戦争宣伝機関の機能を持
っていたが、近年までうまく運用され、悪さが露呈しにくかった。911後、
宣伝機能が自滅的に過剰に発露されている)
http://news.antiwar.com/2013/08/21/gen-dempsey-syrian-rebels-wont-be-us-allies-if-they-seize-power/
Gen. Dempsey: Syrian Rebels Won’t Be US Allies If They Seize Power
米政府はシリア空爆を決めた後、ケリー国務長官が「シリア政府軍が化学兵
器を使ったことは否定しようがない」「それを疑う者は不道徳な陰謀論者だ」
と表明し、根拠なしに政府軍犯人説を主張した。しかし他の諸国は、もっと慎
重な姿勢だ。
http://news.antiwar.com/2013/08/26/no-proof-but-kerry-insists-syria-allegations-undeniable/
No Proof, But Kerry Insists Syria Allegations `Undeniable’
http://21stcenturywire.com/2013/08/27/john-kerry-delivers-obamas-war-declaration-against-syria/
John Kerry Delivers Obama’s War Declaration Against Syria
フランスの外相は、シリア政府軍の拠点を空爆することを強く支持した。し
かし、そこには「もし化学兵器を使ったのがシリア政府軍であるとしたら」と
いう条件がついている。英国の態度も同様だ。イタリアは、国連で化学兵器の
使用者が確定しない限り、空爆に参加しないと表明した。ドイツなどもこの線だ。
http://edition.presstv.ir/TextOnly/detail.aspx?id=320003
`US unclear on Syria chemical arms use’
http://www.thelocal.it/20130827/italy-rules-out-action-in-syria-without-UN
Italy rules out action in Syria without UN
今年3月に反政府派が化学兵器を使ったと指摘するロシアは「誰が化学兵器
を使ったか確定するのが先だ」と言っている。決めつけを表明した米国以外は
「もしシリア政府軍が化学兵器を使ったのなら、政府軍の基地を空爆すべきだ
(もしくは空爆もやむを得ない)」と言っているが、マスコミは「もし」の部
分を意図的に小さく報じ「空爆すべきだ、空爆はやむを得ない」と報じている。
http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-23845800
Syria crisis: Russia and China step up warning over strike
シリアにはちょうど国連の化学兵器調査団がいる。彼らは当然ながら、8月
21日の化学兵器使用現場を調査しようとした。しかし現地に向かう途中、反
政府派から狙撃され、引き返さざるを得なかった。その後、日を変えて再び現
場に向かい、2度目は現場を検証できた。だが、調査結果を持ってダマスカス
から米欧に戻ることができないでいる。米国が国連事務総長らに圧力をかけ、
調査団のシリアからの帰国を阻止している。この指摘は、米国の元大統領補佐
官のポール・クレイグ・ロバーツが発したものだ。以前から彼の指摘は的確で、
注目に値する。
http://www.paulcraigroberts.org/2013/08/26/syria-another-western-war-crime-in-the-making-paul-craig-roberts/
Syria: Another Western War Crime In The Making – Paul Craig Roberts
対照的にFTは「シリアの独裁を倒すために立ち上がろう」と題する、昔の
共産党機関誌顔負けの扇動的な題名の記事で「シリア政府が調査団の現地訪問
を阻止している」と指摘している。当然ながら、信憑性に疑問がある。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/710d67fc-0be6-11e3-8840-00144feabdc0.html
We must stand up to Syrian tyranny
別の報道で「米英は、早く調査団を現地に訪問させろと言っているが、国連
事務局が、治安の問題を理由に、訪問を先延ばしにしている」という指摘もあ
る。これまた疑問だ。国連など国際機関の内部の議論を一般人が検証できない
ことを良いことに、誰が賛成して誰が反対しているかを逆に書くのは、昔から
英国が得意とするプロパガンダ手法だ。
http://thecable.foreignpolicy.com/posts/2013/08/23/un_blocking_its_own_chemical_weapons_investigation_into_syria
U.N. Slowing Its Own Chemical Weapons Investigation In Syria
現在の米政府の姿勢は「国連の調査団は来るのが遅すぎた。反政府勢力の証
言から、シリア軍の犯行であるのは、すでに間違いない。いまさら調査しても
意味がない」というものだ。ケリー米国務長官は「国連の調査は重要だが必須
でない。すでに(政府軍が犯人だということで)結論が出ている」と言っている。
http://news.antiwar.com/2013/08/25/obama-administration-accepts-rebels-account-on-syria-prepares-for-war/
Obama Administration Accepts Rebels’ Account on Syria, Prepares for War
http://www.smh.com.au/world/obama-considering-limited-military-strike-on-syria-20130827-2snl8.html
Obama considering limited military strike on Syria
なぜ米国は、国連の調査を妨害するのか。もしケリーが断言するとおり化学
兵器使用の犯人がシリア政府軍であるなら、国連調査団をさっさと現地に行か
せて米国に帰国させ、国連総会で真相を発表させれば良い。それをせず逆に、
調査団の帰国を遅らせ、妨害しているのは米政府自身なのに、アサドが妨害し
ているんだとマスコミに歪曲報道させている。真相は、化学兵器を使ったのが
反政府勢力だということだろう。それが国際的に暴露されると、米英が支援し
てきた反政府勢力の信用失墜と崩壊が進み、アサド政権が内戦に勝ってしまい、
ロシアの言いなりでアサド続投を認知する国際会議をやらねばならなくなる。
http://rt.com/news/russia-syria-chemical-attack-801/
Russia suggests Syria `chemical attack’ was `planned provocation’ by rebels
http://www.presstv.ir/detail/2013/08/26/320509/antisyria-western-axis-coming-apart/
Anti-Syria Western axis coming apart
反政府勢力の犯行を隠すため、米国は国連調査団を帰国させず、彼らが帰っ
てくる前に空爆を開始し、真相をうやむやにしつつ、シリアの空軍力を壊滅さ
せ、混乱のうちに反政府派を反攻させ、米軍の地上軍派遣をやらずに、アサド
政権を倒すまで持っていきたいのだろう。ロイター通信も、そのような筋書き
を報じている。米軍は、イラクやアフガンよりひどい占領の泥沼になるシリア
への地上軍侵攻に猛反対している。
http://www.activistpost.com/2013/08/reuters-us-to-strike-syria-before-un.html
Reuters: US to Strike Syria Before UN Evidence Collected
イラクとアフガンの失敗以来、米英などでは、政界や世論が、シリアやリビ
アなど中東の紛争地で戦争をすることに反対する傾向が増している。米英政府
が、議会でシリアとの戦争の必要性についてきちんと議論すると、空爆ができ
なくなり、反政府派の悪事が国際的に暴露されていくのを看過せねばならなく
なる。だから米英政府は、自国の議会が夏休みの間に、急いで空爆を実施しよ
うとしている。本来、米国も英国も、戦争するには議会の承認が必要だ。
http://news.antiwar.com/2013/08/27/war-on-syria-imminent-us-wont-seek-un-or-nato-vote/
War on Syria Imminent, US Won’t Seek UN or NATO Vote
米国では911事件以来、大統領が「テロリストとの戦い」を開始する権限
を持っている。だからオバマは合法的にシリアを空爆できる。しかし英国では、
議会の決議を経ずに首相が勝手に戦争を開始できない。特に英国は、03年に
米国のイラク侵攻につきあって大失敗して以来、開戦権について議会が厳しく
なっている。あと一週間もしたら、英国は議会がシリア空爆を阻止する決議を
して、米国と一緒にシリアを空爆できなくなる可能性が高い。だから、米国の
オバマより英国のキャメロンの方が、シリア空爆を急いでいる。英国はこの
10年ほど、米国に冷たくされ、何より大事だった英米同盟が希薄化している。
シリアに濡れ衣をかけて空爆する悪事を米国と一緒にやれば、英米同盟を立て
直せるかもしれないと、英政府は考えているのだろう。悪事を一緒にやった者
同士は(悪事の悪さが大きいほど、強い)運命共同体だ。
http://news.antiwar.com/2013/08/25/us-britain-and-france-agree-to-attack-syria-within-two-weeks/
US, Britain and France Agree to Attack Syria Within Two Weeks
米政府は、国内・国際的な反発を減らすため、空爆によってアサド政権を倒
す目的でなく、使用禁止の大量破壊兵器である化学兵器を使った「罰」を与え
るのが目的だとしている。だからアサドの大統領官邸やシリア政府の役所など
は空爆対象にならないという。だが真の目的は、シリアが100機ほど持って
いる空軍の戦闘機を、空爆によってできるだけ多く破壊し、反政府軍に対する
シリア軍の優勢を壊すことだろう。反政府軍は地上軍だけなので、空軍力があ
る政府軍に勝てない。政府軍の戦闘機やヘリのほとんどを破壊すれば、内戦は
地上軍どうしの戦いになり、政府軍の優位が減る。米英などは最近、シリアの
南隣のヨルダンの基地を使って、シリア反政府派を軍事訓練し、シリアに戻す
ことに力を入れている。
http://www.haaretz.com/news/middle-east/1.543880
Obama’s Syria options: From a symbolic strike to wiping out Assad’s air force
http://news.antiwar.com/2013/08/25/report-claims-us-israeli-trained-rebels-moving-toward-damascus/
Report Claims US, Israeli Trained Rebels Moving Toward Damascus
今後、米英仏が本当にシリアを空爆するかどうか注目が必要だ。この戦争に
は、イランやイスラエル、ヒズボラ、サウジなど、他の勢力も関係している。
今回は書ききれなかった、パレスチナ和平交渉との関係もある。それらは次回
に、有料記事で書くつもりだ。 【続く】
◆終戦記念日に考える
http://tanakanews.com/130816japan.php
【2013年8月16日】戦前の日本は、どこの国にも従属していなかった。
敗戦は日米の国力差から見て仕方がなく、敗戦直後の対米従属もやむを得ない
ことと考えられるが、米国が日本に自立した防衛力を持つよう促した1970
年代以降も、日本が官僚独裁を維持するために対米従属を続け、日本人が世界
のことに無知な状態に(意図的に)しているのは、明らかに国益を損ね、日本
人の精神をねじ曲げている。日本の対米従属は、自主独立を好む米国の精神に
も反する。戦没者たちは、自国が対米従属の国になったことをあの世で嘆いて
いるだろう。首相が英霊に謝罪するとしたら、それはまず自国が卑屈な対米従
属を続けていることに関してだろう。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝
【1188】[1362][中国人の本性」と「時代を見通す力」を読んで
副題:水戸藩の尊王攘夷思想について(2) 投稿者:田中進二郎
8/15に「重たい掲示板」に水戸の尊王攘夷運動が天狗党の乱(1864年)以後、水戸藩の内乱がどういう結末になったか、ということについて書きました。
もうすこし、調べてみたところ、このすさまじい内乱(内ゲバ)について、ライフ・ワークとして研究されている会田良守という方のサイトが総合的にみて精確である、と思われるので、↓をごらんください。
「幕末水戸藩の顛末(てんまつ)」 http://www.yosimori.net/mitotenmatu2.html
信じられないことですが、約3000名からの幕末動乱期の水戸藩の戦没者の名前と死因について、「水戸藩殉職者名簿1~4」のコーナーで列挙されています。しかも、この3000人という数字は名前がわかっているだけの数字であるから、やはり名もなき農民たちの犠牲者まで考えると、5000人以上は死んでいるでしょう。藤田東湖の死1855(安政2)年から、1864年の天狗党の乱の開始、そして1873年(明治6年)まで続く、藩内の闘争で水戸藩は疲弊(ひへい)して、明治時代には、治めることが難しい「難治県」に指定されたということが書かれています。
これはやはり、幕末史のタブーの一つだと思います。到底、NHK大河ドラマで取り上げられることはありえない歴史だ。
さらに時代をさかのぼって、徳川光圀の虚像の裏に何があるのかについても、倉田氏の研究は示唆してくれることが多いと思う。
たとえば、殉職者名簿の死因の多くは、「獄死」となっている(唖然、呆然としてしまう数である。)が、水戸藩は江戸時代初期から各所に牢獄があった。時代劇の水戸黄門の「水戸のご老公さま」の優しいイメージとは裏腹だ。(初代水戸藩主は徳川頼房、家康の第11子で二代藩主が頼房の次男光圀である。)
「水戸藩は意外と厳しい藩であった。獄に入れられ3年がたつと斬首か毒殺される、ということになっていた。」(↑の会田氏の文より引用)
吉村昭の『天狗争乱』にも、赤沼獄(水戸市)についての記述があります。
『天狗争乱』新潮文庫 p217より引用します。
(引用開始)
市川三左衛門ら門閥派と尊攘派との対立は古く、一方が他方を壊滅させて藩政の要職を占めると、やがて巻き返しにでて追い払うことの繰り返しであった。そのため、互いの憎悪は激烈で、藩政の権力をにぎった市川らは、武田耕雲斎(尊攘派・天狗党)らを賊徒として、(彼らの)乳のみ子を含む家族たちを牢に投じたのである。
獄舎の環境はきわめて悪く、あたえられる食物も劣悪で、病にかかれば治療もくわえられず死を迎えなければならない。これらの者たちを投獄したことは、死を強いることと同じであった。
(引用終わり)
田中進二郎です。
これをたとえば長州藩の牢獄と比べてみると、えらい違いだ、と思う。
吉田松陰は1854年、下田に停泊していたペリーの旗艦に乗り込もうとして、不審者として幕府側に引き渡された。
副島先生の著書『時代を見通す力』(PHP)にも、次のようにある。
p128より引用します。
(『時代を見通す力』より引用開始)
吉田松陰はこのあと幕府で厳しい取調べを受けたあと、囚人として駕籠に入れられて萩に護送される。そして野山獄(のやまごく)という長州藩の政治犯たちが入れられる牢獄に入れられる。そこで上級の囚人(武士たち)に説いてきかせたものが、『講孟さつ記』だ。だから演説調にできている。周りの囚人たちに話しながら書物にした。孔子と孟子の思想について論じるというふりをしながら、朱子学(徳川幕府の体制の学)を批判して尊王と倒幕の思想を表明した。そのあと釈放されて、家に帰る。
(引用終わり)
田中進二郎です。確かある伝記には、野山獄で吉田松陰は玉木文之進らが差し入れした、千冊以上の書籍を読んでいた、と書かれていた。このすさまじい学習意欲が尊王攘夷の原動力だと、昔から私は考えてきた。今風にいえば佐藤優氏(さとう まさる)でしょう。
ともかく、水戸藩の牢獄のように、入牢=死という悲惨な状況とは雲泥の違いだ。
吉田松陰は29年の短い人生の間に5回も水戸に足を運んでいる。そして、藤田東湖と会って、水戸学を学んだ。西郷隆盛もそうだった。
幕末水戸藩は、尊王攘夷の思想の最先端を突き進んでいたが、金はなく武士たちも貧乏であったようだ。だから牢屋の管理すら、水戸藩にはできなかった。暮らしをよくしようという考えが、水戸光圀公以来藩全体に乏しかったのであろう。
↑の会田氏の長大な考察は、水戸藩の慢性的な財政難を指摘している。
私が不可思議に思うのは、水戸藩は江戸時代を中心に幕府から、何度も財政援助をうけている。参勤交代も特別に免除されていたのである。それなのに、水戸藩は尊王攘夷(表だってはいわないが「倒幕」が裏には隠されていた。)に取り憑かれた。
徳川家一門の内部で、憎悪が200年続いて、それが幕末に爆発している。これはよっほどのことであろう。徳川家は一枚岩どころか、幕府をつぶしたくてつぶしたくてたまらなかったのであろう。そういう激しい親殺し的な思考(ドストエフスキー的なといってもいいような狂気を感じる)はどこからでてきたのであろうかということである。
途中になってしまったが、幕末水戸藩の歴史についてはここで筆をおきたい。失礼します。
田中進二郎拝
【1187】[1361]国民の生活が第一
「国民の生活が第一」
*特別会計の廃止
*独立行政法人など外郭団体の統廃合
*天下りによる官僚OBの不労所得の禁止
*クロスオーナーシップ(新聞社によるTV局経営)の禁止と
電波オークション制度の導入
*米国による内政干渉の排除
*企業団体献金の廃止(「政党評価表」による外資支配の排除)
*消費税引き上げ禁止
*最低賃金法の導入と非正規労働の規制強化
*検察・警察取り調べの完全可視化
*「記者クラブ」制度の見直し
*自国の主権・領土は自国民で守る
*自衛隊を国防軍に格上げ
*憲法改正の国民的合意形成(9条他)
沖縄は「琉球王国」「琉球政府」として
独立すべきです。
【1186】[1360]原始人食
流れに関係なく書きこみます。
崎谷先生の「原始人食が病気を治す」はすばらしい本です。
何がすばらしいって、私がその通り実践したところ、3週間
で4kg痩せたからです。
・74kg→70kg。その後最軽で67kgまでいったのですが、どう
しても週3回程度の酒がやめられず、70kgに戻しまして
これで安定しています。
(身長176cm)
この方法のすごく良いところは、満腹感があってダイエット
の苦しみがないところですね。
デメリットは、食費は今までよりかかるかもしれない、とい
うことでしょうか。
すごく読みやすくて面白い本なので、皆さまも是非。
(大変軽い書きこみで失礼いたしました)
【1185】[1359]下條様へ
下條様 ご意見ありがとうございました。本題から外れたことを書き連ね、失礼
しました。
下條様のご意見のポイントは、コスト低減に目を奪われ曲線通過性能にとかくの
不評のある「ボルスタレス台車」を「平気」で採用した鉄道事業者に対する糾弾と
理解しました。
確かに電鉄会社によっては、安全第一の観点から、頑固に「ボルスタ付き台車」
を、守り続けていることを知りました。しかもこの会社では列車編成の両端には、
必ず電動車(付随車より重く安定性に勝る)を配置しているとのことです。
このような姿勢があったら福知山線の事故は無かったに違いありません。
4513拝
【1184】[1358]会員番号4513へ
会員番号4513様、丁寧な考察どうもありがとうございます。
広軌については六城さんからも同じ指摘を受けました。ヨーロッパの方が幅は広いのは知っていましたが、1.6倍も違うのは知りませんでした。ご指摘のとおりです。
ただ、お書きのように遠心力は速さの二乗できくので、速さのちがい(120キロと190キロ)がそれを補っていると思います。
あと、「ある条件のもとでは、電車や列車は転倒しない」とのご指摘ですが、「電車や列車は転倒しない」でいいと思います。私は理系ですから会員番号4513さんのおっしゃるとおり、「ある条件のもとでは」とつけるのが正確で好きです。というより、大学時代からそう教えられてきました。
しかし、「そういう理系特有の言い方はやめろ!」と副島先生から教えられました。結局、「ある条件のもとでは」とつけると、何も言っていないし他人には理解してもらえないからです。
「電車や列車は本来、転倒しない」というところから出発しないと福知山線脱線事故の原因は見えてきません。この事実を鉄道関係者の人たちは避けているように私には見えます。
下條竜夫拝
【1183】[1357]ちょっとコーヒーブレイク
須藤元気率いるWORLD ORDERの ” IMPERIALISM” という曲です。
2013年6月19日にリリースされました。
アメリカでロケしながら
「It’s the End of Imperial history, Now(今、帝国の歴史の終わり)」と歌ってます。
【1182】[1355][1353] 「スペインでの列車事故が明らかにした福知山線脱線事故の真実」について
私は鉄道の専門家ではありませんが、鉄道に関心はあります。下條様のご意見「電
車や列車は転倒しない」というのは正確でなく、「ある条件のもとでは、電車や列車
は転倒しない」というべきではないでしょうか。
つまり福知山の事故と、スペインの事故を同じ俎板の上で料理するのは無理がある
と存じます。それは、両者の基礎となる条件に大差があるからです。
動画で見てもわかるように、スペインの場合は軌間が新幹線よりも広く感じます。
ウィキペディア(以下WIKIと略記します。)によると、スペイン国鉄の軌間は
1,668mmとのことです。
これに対しJR在来線は1,067mmであり、わずか64%にしかすぎません。従って、
いわゆる「踏ん張り」が効きにくいスタイルです。在来線電車を真正面から見れば、
車体の幅は軌間の約3倍あります。
脱線させようとする外力は、この場合遠心力ですから速さの2乗に比例しカーブの
半径に反比例します。福知山線の場合曲線半径は300mとのことであり、スペインの場
合はデータを確認できませんでしたが、300mよりははるかに大きいように見られます。
一般にカーブでは外側のレールを(遠心力を相殺するために)高く(カント)して
あります。極端に云えば一定速度で走行することが確実ならば、それに見合うカント
を付ければどんな速度でも遠心力を打ち消すことが出来ます。しかし低速、もしくは
停止時に、カーブの内側に倒れ込んでは困るので自ずから限度があります。
更に重心の高さも重要です。軌間と重心の作る三角形が潰れている(重心が低い)
ほど脱線転覆に対する抵抗力は強いと考えて良いでしょう。
以上の諸条件を加味した上で比較すれば、特に福知山線のケースが特異ということ
はないように思います。
先輩のご発言に対し、失礼の点がありましたらご寛恕ください。
また2005/12/25にJR羽越線で突風による列車の脱線転覆事故がありました。この
場合は直線コースでしたから遠心力ではありませんが、横からの外力という点では同
様です。
私の結論ですが、上記の2つのJRの事故は、もしもJR在来線の軌間が標準軌化
(1,435mm)されていたら「避けられた」のではないかと思います。つまり約35%の
「踏ん張り」寸法アップになるからです。
旧国鉄の狭軌(1,067mm)から標準軌(1,435mm)への改軌論争は、既に1887年に始
まっていたそうです。(WIKIによる) 残念ながら政争により、1911年に広軌化
(標準軌化)計画は中止されました。当時の鉄道の枕木は結構長かったので、敷設済
みのレールの外側に標準軌用のレールを増設することは容易でした。せめて幹線だけ
でも標準軌化して置けば良かったのにと、残念に思います。
政争に明け暮れ、国家百年の大計に思いを致さなかった政治家たち。これは現代でも
同様に思えてなりません。
さて話題を変えます。旧国鉄が成し遂げた快挙。それは「自連一斉交換」でしょう。
鉄道開業当時の連結器は簡単に言うと鉤(フック)に輪っぱ(リンク)を掛ける方式
で、牽引する事しかできません。
そのため押す事が出来るように車両の両端、左右に茸状の緩衝器(バッファ)が取
り付けてありました。(ヨーロッパでは、今でもこの方式がほとんどです。というよ
り路線が各国に跨っているので実際上変更が困難。)
以下WIKIより引用(連結器 5 日本の自動連結器化)
これらの弊害を克服するため、日本の鉄道院は1919年(大正8年)から全国の機関車
・客貨車の自動連結器化を計画した。5年に渡って綿密な準備作業や交換練習が重ねら
れ、作業チーム1組が毎時2両分の連結器交換をできるまでになった。また車両の台枠
端部には定期的な修繕の機会を利用して強化改造が施され、全国を常に移動する貨車
については、前後2個分の自動連結器を台枠下に取り付けた木枠にぶら下げて、全国
どこにいても連結器交換が可能な態勢を整えた。この「腰弁当」方式は島安次郎の考
案と言われている。
統計上、年間で最も輸送需要が少ない時期が交換日に選ばれた。1925年(大正14年)
7月初旬から予備車・固定編成車両を中心に交換が始まったが、大多数の車両は特定の
一日を一斉交換日とした。本州が主に7月17日、九州が7月20日である。交換日当日、
連結器未交換の機関車・客車はその日の終着駅で交換工事を施した。両数が膨大な貨
車については、交換日当日に貨物列車を24時間全面運休させるという異例の特別措置
が採られた。総動員された鉄道関係者らの手で、夜明けから日没までの間に突貫作業
が進められ、ねじ式連結器は一斉に自動連結器に交換された。
この時連結器交換を受けた車両は、機関車が約3,200両、客車が約9,000両、貨車に
至っては約46,000両に上る。これらの車両が装備する、計10万個以上の連結器を、半
月ほどの間に全交換することに成功したのであった。
アメリカの技術指導で開業したため、当初より自動連結器を標準採用してきた北海
道の国鉄線に関しては、取付高さの本州並み調整のみ1924年に済ませており、本州の
連結器交換によって青函連絡船での車両航送による貨車直通が実現した。これに対し、
四国の国鉄線については当時は孤立路線のため、1926年(大正15年) – 1927年(昭
和2年)まで交換が繰り延べられた[17]。
WIKIより引用終り
これは日本人の、とことんまで拘る性格が大成功をおさめた例でしょう。パソコン
などはなく通信網も粗末なこの時代に、これだけのことがどうしてできたのか、現代
に暮らす私には、驚嘆の他はありません。
ちなみに昭和30年代でも旧型車両には、端部両端にバッファ取付用の穴が開いて
いるのを見かけました。 また、電車には「密着連結器」が多く使われています。
以上
【1181】[1354]「中国人の本性」を読んで 朱舜水が日本にもたらしたもの
水戸藩の尊王攘夷思想について 「中国人の本性」を読んで 田中進二郎
皆様、猛暑お見舞い申し上げます。今年の正月にオーストラリアが猛暑で50度近くになったということを知ってから、日本も今年は暑くなるのかなあ、と思っていたら想像以上ですね。クーラーがなくて、大都市の中心に住んでいて、お年寄りの方が毎日のように熱中症で亡くなっていますね。みなさまのご健康をお祈り申し上げます。
さて、アルル中田さんが「今日のぼやき」(広報・1396)で、副島先生の新刊『歴史・思想・宗教で読み解く 中国人の本性 副島隆彦vs 石平』(徳間書店)を紹介しています。私も拝読いたしました。
昨年の『隠されたヨーロッパの血の歴史』では、ビザンツ帝国からやってきたゲミストス・プレトンとヨハンネス・ベッサリオンがフィレンチェにやってきて、コジモ・ディ・メディチにプラトンの思想を伝えた。(1439年プレトンのプラトン講義)そしてイタリア・ルネサンスがここから始まっていく、と、副島先生は書かれています。
このプレトンとちょうど対応するのが、『中国人の本性』では朱舜水(しゅ しゅんすい・1600~1682)という中国から日本への亡命知識人であることがわかります。
p49には、肖像画つきで、「幕末維新を動かした生みの親は朱舜水である」と大書されています。
p47~p51より引用します。
(『中国人の本性』より引用開始)
石平: 水戸光圀は朱舜水からそれほどの影響を受けたのですか?
副島: 影響などというものではありません。水戸光圀は朱舜水から、司馬遷の『史記』の書き方を教わったわけです。隠元禅師は江戸時代、1654年の63歳のとき、弟子たち20人を引き連れて日本へ渡ってきました。その5年後に朱舜水も日本に永住を求め、日本国学の思想も吹き込んだ。
石平: その国学が水戸学につながって、幕末維新を動かしていったわけですね。
副島: つながったどころか、この国粋思想(排外主義 ショービズム)しかなかったと思います。日本の「尊王攘夷」は中国知識人から教えられたものです。それなのに、「中国から最高級の亡命知識人たちが日本に来た」という真実を、日本の右翼言論人たちは隠そうとしている。日本の各宗派の僧侶たちもこの真実を隠して、地力で高度の仏教思想を築きあげた振りをしています。
(中略)
副島:朱舜水は楠木正成の息子である正行(まさつら)との「桜井の訣別」とか足利尊氏に敗れて自害した「湊川の決戦」の故事を初めて日本の正史として高く評価した人です。
二・二六事件の青年将校たちも、水戸学が築いた「日本の国体」なるものに心酔しました。
(中略)
だから戦争中に狂ったように崇拝して、今でもあちこちに楠木正成の碑と銅像があるのです。
石平:神戸市にある湊川神社には楠木正成の墓碑がありますね。
副島:その墓碑の裏面には、朱舜水のつくった賛文が書かれています。今は誰も読めません。この湊川の墓碑の建立(1692年 元禄五年)によって、楠木正成の威徳が極端にまで宣揚されるようになりました。後の幕末勤皇思想の発展につながり、明治体制の精神的指導力にまでなりました。さらに、神がかりといえるほど軍国主義の本尊に祭り上げられました。そして敗戦でアメリカに打ち倒されました。
(引用終わり)
田中進二郎です。この本には残念なことに朱舜水の碑文の原文が載っていませんでした。
よって、探してみたところありました。↓をごらんください。
朱舜水「楠公碑陰記」
http://www.geocities.jp/sybrma/208syusyunsui.nankouhiinki.htm
最初にどんと漢文が出ていますが、下のほうに書き下し文を作ってくださっているので、ありがたい(涙)。
江戸時代には、今の湊川神社には、この碑文だけがあって、社殿などはなったことが名所図会(めいしょづえ)に描かれています。つまり、水田や松林などの中にこの碑文だけが屋根で囲われてあった。頼山陽(らいさんよう)がここを訪れて、漢詩を読んだ。
これが「七たび生まれ変わって、朝敵を討つ」の「七生報国」(しちしょうほうこく)となった。
また太平洋戦争末期に、アメリカから「きちがい兵器」とよばれた人間魚雷「回天」は「天を回(めぐ)らし、戦局を逆転する」という意味がこめられている。これも楠木正成神話からきている。アメリカがヨーロッパの亡命科学者を狩り出して、原爆を製造を完成させつつあった時期に、日本は人間魚雷を開発した。これは「神がかり」以外のなにものでもない。
だから、GHQのニューディーラーたちは、楠木正成を教科書から削除するように命令した。
(ちなみに人間魚雷「回天」は今でも靖国神社の遊就館(ゆうしゅうかん)に展示されている。)
話を朱舜水に戻します。
山本七平(しちへい)著『現人神(あらひとがみ)の創作者たち』(文芸春秋 山本七平ライブラリー12 1997年刊)にも朱舜水について考察した章があります。
山本七平(1921~1991年)は次のように書いています。
『現人神の創作者たち』p48より引用します。
(引用開始)
楠公を発見し、これに賛を書いたのが中国人だなどということは、戦前の日本人にありえざることだったのだろう。
(中略)
楠公碑は、講談にも副読本にも歴史教科書にもでてきて、私たちの世代の人間はいやおうなく覚え込まされたが、その表面の「嗚呼忠臣楠子之墓」が光圀の自筆であることは語られても、裏面の文章は朱舜水であることはこれまたまったく語られなかった。と同時に、そのすべては戦後に消されてしまった。
(引用終わり)
田中進二郎です。戦前のこうした状況が幕末の尊王攘夷運動とどのように、つながっているのであろうか。それと水戸学イデオロギーを奉じた水戸の天狗党の乱(1864年)の結末にも関心がある。
というのも、吉村昭著の「天狗争乱」(新潮文庫)では、尊王攘夷を唱えた天狗党のリーダーたち、すなわち藤田小四郎(こしろう 1842~1865 藤田東湖の子)や武田耕雲斎(こううんさい 1803~1864 水戸藩家老)が、雪中行軍の末に敦賀(つるが 福井県)で幕府や諸大名の包囲網の前に屈し、360名が処刑されるところで小説が終わるからだ。
その先はむごたらしい水戸藩内での激しい内ゲバが起こったのが、史実だ。吉村昭でも触れえなかった悲惨な結末は、水戸人をして「藤田東湖さえ生きていれば、こんなことにはならなかった。」と嘆かせたという。
水戸藩は天狗党の乱からの内乱で5000名の死者を出したとされる。
これを戊辰戦争(鳥羽・伏見の戦い~函館五稜郭 1868年1月~69年6月まで)の戦死者とくらべると、旧幕府軍が約8600名(うち会津藩が2400名でもっとも多い。)、新政府軍が約3600名(薩摩が約500名、長州が約400名)とされている。(靖国神社で招魂されている戦死者の数である。)
この数をみただけでも想像ができようが、殺し合いがあんまりひどいので、みんなが真相を語りたがらなかった、という。純粋・過激な政治イデオロギーの先頭を突っ走った水戸藩は、新政府にだれも高官につかなかった。みんな死んでしまったからである。最後に起こったことは集団的アノミー(規律喪失)だったのかもしれない。
このことについて、私も本当に知っているわけではないので、そろそろ筆をおかなければならない。
田中進二郎拝
【1180】[1353]スペインでの列車事故が明らかにした福知山線脱線事故の真実
下に貼り付けた画像は、7月24日に起きたスペインでの列車事故の録画映像です。
新聞記事を下に引用します。
<引用開始>
スペイン脱線事故、制限速度2倍の190キロで走行
(日経新聞2013/7/26)
【サンティアゴ・デ・コンポステラ=共同】スペイン北西部ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステラで24日午後8時40分(日本時間25日午前3時40分)ごろ、マドリード発フェロル行きの高速鉄道が脱線し、多くの車両が横転して大破し、一部で火災も発生した。スペインメディアによると、80人が死亡、約130人が負傷した。
同国捜査当局は、事故は運転士による速度違反が原因との見方を強めているもようで、ロイター通信によると、25日、運転士の取り調べを始めた。同国メディアは捜査関係者の話として、運転士の1人が、制限速度である時速80キロの2倍以上の約190キロで走行していたことを認めたと伝えた。
スペイン国鉄は「事故車両は当日の朝に点検を受けたばかりで異常はなかった」として、技術的な問題の可能性を否定。捜査当局は、列車の運行状況などを記録したブラックボックスを既に回収し、事故原因の解析を急いでいる。
マドリードの日本大使館には邦人が被害に遭ったとの情報は入っていない。
列車は客車8両と動力車2両の編成で約220人が乗っていた。全ての車両が脱線、列車は途中の連結が外れ前後2つに分かれた。パイス紙は、列車が壁面に激突、横転する様子を写した監視カメラの映像をウェブサイトで公開した。
事故はサンティアゴ・デ・コンポステラの駅の約4キロ手前の急な左カーブで発生した。列車は「アルビア」と呼ばれる高速鉄道で最高速度は250キロ。事故時には、スペイン最高速の新幹線AVEと同じ軌道を走っていた。旧市街が世界遺産に登録されたサンティアゴ・デ・コンポステラは聖ヤコブが埋葬され、エルサレム、バチカンと並ぶキリスト教の巡礼地として知られる。25日は「聖ヤコブの日」と呼ばれる祝日で多くの観光客が訪れるとみられていた。
<引用終了>
制限速度80キロのところを「190キロ」で走行していたのが上のyoutube画像です。
さて、この画像をみて私が気がついたのは、列車が転倒する前に脱線していることです。つまり、遠心力に耐えられなくて2両目の列車がレール外側にはみだし、そこからそのまま壁に激突しながら転倒しています。テレビの解説では、2両目が、ディーゼル電池をつむ車両に変更されていて、重心が高くなって脱線したのだろうという、事故原因を語っていました。
さて、これを見て、2005年に神戸で起きた福知山線の「列車転倒事故」を思い出された方も多いと思います。福知山線の事故は、2005年4月25日にJR西日本福知山線、塚口~尼崎駅間で発生した列車事故です。前部2両が転倒して、マンションに衝突、107名の方が亡くなりました。この事故は制限速度80キロのところを「120キロ」で走行しておきたことがわかっています。
スペインの事故と福知山線の事故は車両構造がちがいます。しかし、それを考慮しても、比較して2つの点で不思議なところがあります。まず、2つの事故は制限速度が同じ場所でおきています。それなのに、福知山線の事故では、わずか40キロオーバーで転倒、スペインの事故では100キロ以上オーバーしても転倒せず、勢い余って脱線してからの転倒です。
次に、スペインの列車事故の解説では重心の高い車両にも問題があったように述べているのに対して、福知山線の事故原因には、車両が原因とする指摘はほとんど出ず、すべて運転手のスピード超過とされている点です。福知山線の事故の方がはるかに速度が低かった(120キロ)にもかかわらずです。
私は、実は、福知山線の事故のあとに、他の脱線事故をいろいろ調べました。その結果わかったことは、「電車や列車は転倒しない」ということです。基本的に下部の方にモーターや台車など重い部品が偏って存在するので、重心が低く、倒れません。調べてみても、先頭機関車が倒れた、あるいは突風にあおられて倒れたというケースはありましたが、カーブの速度超過で倒れた「電車」は見つけることができませんでした。
世界中の鉄道事故を調べるのは困難ですが、たぶん、福知山線脱線事故というのは、「速度超過によりカーブで転倒した歴史上はじめての電車」だと思います。電車というのは倒れないし、倒れるようには、もともとできていません。
では、なぜ、福知山線脱線事故ではわずか40キロオーバーで転倒していまったのか?簡単に書くと、これは車両の軽量化、特にボルスタレスという軽量車両による欠陥によるものです。
以前、ぼやきに書いていますので、興味がある方は,
ぼやき「900」あなたの乗っている列車は大丈夫か?事件が風化する前に2年半前の「尼崎JR脱線事故の原因とは何だったのか」について考える。2007.11.27
を参考にしてください。
下條竜夫拝