① 軽水素とホウ素による核融合反応を、岐阜県にある核融合実験装置(LHD)を使って確認した。 ②実験のアイデアは、米国の核融合スタートアップ企業の「TAEテクノロジーズ」が提案した。 ③ 軽水素とホウ素による核融合反応は、中性子を発生しないが、従来のD-T反応の30倍の高温反応が必要となる。 ④TAEテクノロジーズでは、磁場反転配位(FRC)型という閉じ込め性能が高いプラズマ制御技術を開発中である。ただし、基礎検討の段階で超伝導コイルを使った実験はまだである。 ⑤TAEテクノロジーズの研究者は、30年以内にFRC型核融合反応の実証炉が出来る、と期待してる。
ロストーカー氏が唱えたのが「End in Mind」(出口から考えよ)という思想だ。では、核融合発電における出口とは何か。それは安定的にエネルギーを生み出し続ける装置を成立させることだ。そのためには、軽水素とホウ素の核融合しか道はない―。TAEはそう結論付けた。田島教授は「中性子が出ることによる安定運転への影響は大きい」と指摘する。
坂本氏、日経新聞の記者、東京理科大大学院教授の若林氏、萩生田経産相、経産省の西川課長には、EE Times Japanの記事「『Micronになってよかった』という言葉の重さ」(2019年7月8日)を、目を見開いて読んでいただきたい。そして、「Micronになってよかった」という言葉の意味をよく考えていただきたい。
筆者も、2019年に広島で国際学会があった時、旧エルピーダで現マイクロンジャパンの社員たちから、「マイクロンに買収されて本当のDRAMビジネスが理解できた」「エルピーダが倒産したのは不運だったのではなく、当然の帰結だ」「外資企業となった現在は完全な実力主義であり、実績を上げれば昇進・昇格・昇給できる」「仕事は大変だが充実しており、エルピーダ時代がいかに甘かったかが実感される」ということを聞いた(「中国は先端DRAMを製造できるか? 生殺与奪権を握る米国政府」EE Times Japan)。
さらに、今年1月には、ベンチャーキャピタルのCoral Capitalから約1.2億円の資金調達を実施。6月にはテレビ東京などが主催する、REVERSIBLE WORLD 2021のGreat Entrepreneur Award 「社会的に異次元なインパクトを与える可能性のあるスタートアップ企業」カテゴリにおいて1位を受賞するなど、社会からの期待も大きい。
宮林(会員番号7327番)です。
科学(Science)が自然界の現象を記述する法則を探求する営みの結果が蓄積された知見の体系であるのに対して、技術(Technology)は目標とする課題を解決するためのソリューションをScienceにより得た知見を用いて具現化することですから、両者は違いますね。
流体が物体に当たったとき表面での流速の高低、圧力の高低、渦の発生の有無がどのような条件式で記述できるか体系化したものが流体力学で、これはScienceです。
一方、それにもとづいて、どのような寸法と形状の翼にしてどれだけの推進力を発揮するエンジンを使えば、計画する重量の人員や貨物を企図した速さで要求される距離を運べる機体になるかを計算して描き出し、それに沿った飛行機の実物を作って飛ばすことはTechnologyに該当します。
Scienceのための実験研究のアイデアを思いついても、必要な性能・機能を持つ実験道具を実現するTechnologyがないときは成果を出せないので、その実験に着手するには時期尚早とアイデアが寝かされることもあるし、Technologyの発達により、新しいScienceの実験研究を行う学問分野が創生することもあり、別ものではあるが互いに深く関連はしています。
相田です。
評論家の池田信夫のブログで、以下の文章が記載されていた。全文ではないが引用する。
(引用始め)
2023年09月01日11:23 (池田信夫ブログより)
「軍事革命」が近代科学を生んだ
この投稿(相田注:大石雅寿氏の旧Twitterへのある投稿文のこと、引用元のブログ参照)が炎上しているが、その発火点は「軍事研究が学問だとさ」という大石雅寿氏(国立天文台准教授・学術会議正会員)の(相田注:旧Twitterへの)投稿である。ここには軍事の蔑視だけでなく「技術は科学ではない」という理学部系によくある思い込みがあるが、これは誤りである。科学は本質的に技術なのだ。
学問(エピステーメー)と技術(テクネー)を別の知識と考えるのは、古代ギリシャから同じである。中国では印刷術も火薬も発明されたが、産業革命は起こらなかった。それは学問と技術がまったく別の知識だったからだ。
学問の担い手はエリートで、その条件は古典を暗記することだったが、技術は職人が経験的に蓄積した知識で、体系化されなかった。ヨーロッパ中世でも最高の知識人は、聖書やアリストテレスを読んだ聖職者だったので、オリジナリティは重視されず、イノベーションには価値がなかった。
それを変えたのは、16世紀の植民地戦争と軍事革命だった。学問で戦争に勝つことはできない。特にアジアや新大陸を支配したイギリスにとっては、古典は役に立たなかった。大砲や爆弾などの重火器が生まれ、異民族と戦うには実証的な知識が必要になった。
しかし観察や実験だけで科学はできない。新しいパラダイムが生まれるには、聖書とは違う理論が必要だった。ニュートンは神学者であり、『プリンキピア』は神の構築した宇宙の秩序を数学的に説明するものだったが、結果的には天動説よりはるかに正確に天体の運行を予言した。
その数学理論は、大砲の軌道計算に使われた。相手をねらう鉄砲とは違って、重火器は軌道計算ができないと役に立たない。天文学が軍事技術に応用されたことで、各国は競って科学技術に多くの人材を動員し、近代科学が飛躍的な発展を遂げたのだ。
(引用終わり)
相田です。引用文に書かれている「「技術は科学ではない」という理学部系によくある思い込みがあるが、これは誤りである。科学は本質的に技術なのだ」という池田の理解は、間違っている、と、私は思う。技術と科学は同じと考えるのは、日本独自のユニークな考えである。
この根拠は、言わずもがなだが、この理科系スレッドで私が以前書いた、科学論者のスティーブ・フラーの文章である。フラーが述べるように、科学(サイエンス)と技術(エンジニアリング)の違いを付けない日本人学者の考え方は、欧米の正統派の科学者の考えとはズレている。なので、日本人学者達は、「まともな科学者」とは、欧米では認識されていない。
「技術と科学は同じ」と考えるのは、近代学問を欧米から最初に学んだ際の、東アジア人独自のユニークな思い込みである。フラーが力説するように、最初は欧米の「お雇い外国人学者」達は、科学(サイエンス)の背後にある思想的な裏付けを、日本人に教えてようと尽力した。が、日本人学者達はそれを頑固に受け入れようとしなかった。そのままで今に至っている。だから池田のような考えが、今の日本の正当な考えと認識されているのだ。私はそのように考える。
池田信夫は東大経済学部出身の、典型的な「日本人エリート知識人」であるため、見事に上の、「日本人学者の伝統的な考え方」に染まっているのだ。なかなか趣き深いものである。
前の私の文章で書いたが、フラーと同じ認識を村上陽一郎も持っており、村上の本にも書かれている(筈だ。私は読んでいないが)。村上は日本人学者が欧米学者の認識とズレている事実を、おそらくは物理学者の柳瀬睦男(上智大学の元学長)から学んだのだと思う。
柳瀬は、終戦直後に東大物理学科を卒業した。優秀な学生で、先生の茅誠司は自分の研究室の後継者として東大に残るように説得した。が、柳瀬は茅誠司の誘いを断り、イエズス会の牧師として神学の研究に進んだ、という、極めてユニークな経歴を持つ。柳瀬のユニークさは、牧野富太郎を遥かに超えている。
その後に、上智大学に物理学教室が設立される際にあたり、柳瀬はその責任者となるようにイエズス会から依頼された。柳瀬は、イエズス会の援助によりプリンストン大学に留学した。物理の研究に10年ほどブランクがあった柳瀬が、プリンストンで研究テーマとして選んだのが「量子力学の観測問題」だ。この分野で柳瀬は日本の第一人者とみなされている。
私の推測だが、池田信夫は柳瀬から直接、「量子力学の観測問題」に関する講義を受けている筈だ。池田が時々ブログで触れている物理の話は、柳瀬の研究内容そのものだからだ。
柳瀬はプリンストン時代に、ウィグナーというノーベル賞物理学者から直接学んでいる。プリンストン(高等研究所)には、他にもオッペンハイマー、パウリ、ディラック、アインシュタインなどの、超一流の物理学者が集結していた。彼ら超一流の物理学者達を離れて観察しながら、柳瀬は、フラーと同じ考えに至ったのだろう。私の推測だが。帰国した柳瀬は、その話を、村上陽一郎に繰り返し話て聞かせたのだと思う(村上は柳瀬が帰国した直後に、上智大学の柳瀬の研究室に在籍し、柳瀬から直接学んでいた)。
村上は東大駒場の池田の先輩に当たる人物だが、書く内容がアレなので、その真意が他人に正しく伝わらないのだ。折角、柳瀬から優れた考えを学んだのに、これでは全く意味のない事である。東大のレベルも、所詮はこの程度なのか。
相田英男 拝
相田です。
原発の話ではないが、三菱の国産旅客機MRJのプロジェクトが失敗した理由を述べた論考を、2件引用する。私にとって、かなり衝撃的な内容だった。重要な内容なので、長文だが全文引用させて頂く。
MRJについては、機体の方は早くに完成していた。が、米国政府の型式証明が取れないまま時間を費やし、最終的にプロジェクト凍結に至った。この経緯については、報道で誰でも知っている。アメリカ政府が承認しなかったため、三菱は事情に詳しい元ボーイングなどの米国技術者を数百人も採用して挽回を図ったが、結局ダメだったという。ニュースのコメントでは、「三菱は税金の無駄遣い」、とか、「三菱の技術力が低すぎる、あいつらはヘボだ」などといった、三菱への非難が挙がっていたと記憶する。
しかし、以下の引用文では意外な事実が書かれている。米国政府が型式承認しなかった理由は、日本政府による承認がなかったからだ、というのだ。
「そもそも日本製の旅客機なのだから、まずは日本政府が技術的な見極めをして、その結果を知らせるべきだろう。日本政府が責任を持たない機体を、何故アメリカ政府が保証する義務があるのだ?」という理由で、アメリカは承認を見送ったという。
この説明のアメリカ側の対応は、極めて当たり前の、常識的な判断だ、と、私は考える。そうではないだろうか?
本来なら、三菱が機体を作り上げる過程で、日本政府側が適切な技術基準を三菱に提示し、基準を満たしているかの判断は、日本側がまずはやるべきだったのだ。ところが日本政府はその技術判断を、アメリカ政府に丸投げした。アメリカ側からはそのように見えた、ということだ。
「そりゃまあ、アメリカも承認する訳ないよなあ」と、私は大いに納得した。
私は、「三菱の技術力が足りないので、アメリカが承認しなかった」という説明に、大きな違和感を持っていた。発電用の大型ガスタービン開発競争で、GEを正面から打ち破った三菱重工の技術力が低いとは、到底考えられない。何らかのマネージメントの問題だろう、と推測していた。そして、以下の説明を読んで、全て腑に落ちた。
要するに、日本政府の責任で最初に型式証明を出すべきだったのだ。それが出来ないならば、最初から旅客機をアメリカに売り込むなど、不可能だったのだ。
はっきり言って、この失敗は経済産業省の大チョンボだ。プロジェクトの最初に先を見通して、政府側での技術承認体制を作るべきだったのだ。その前準備を怠り、三菱に機体設計と製造を着手させてしまった。それが敗因だ。その責任を、政府はしらばくれて、メーカーの技術不足に押し付けている、という事だ。
大概にせえよ、お前らよ。
前にも書いたが、福島原発事故の際には、本来対応の指揮を取るべき原子力保安院(経産省の下部組織)の寺崎委員長は、真っ先に雲隠れし居なくなった。代わりにアドバイザーの立場だった、原発安全委員会の班目春樹委員長が、矢面に立たされて集中砲火を浴びせられた。その後、傷心の班目氏は多くを語らず、漫画で心境を綴りながら体調を崩して亡くなった。あの時と全く同じ、無責任な対応だよな、経済産業省の皆さんよ。
旧通産省を含めてOBの評論家に八幡和郎、古賀茂明などがいるが、彼らからこんな説明は全く出て来ない。このような経済産業省の対応を、彼らOB評論家は問題視しないのだろうか?
皇室批判とか、反原発運動などの、しょうもない趣味程度のコメントではなく、政府の抱えるこのような大きな問題の告発は、あんた達には無理な相談か?
そうなんだろうな、多分。
評論活動を廃業すべきではないのか?
(引用始め)
2023.1.9 Merkmal(メルクマール)
なぜ国産旅客機「MRJ」は失敗したのか 現場技術者に非はなかった? 知られざる問題の本質とは
筆者:ブースカちゃん(元航空機プロジェクトエンジニア)
1)5回の遅延でプロジェクト凍結へ
YS-11以来の国産旅客機として期待を集めたスペースジェット(旧称MRJ)は、5回の計画遅延を繰り返した末、2020年10月にプロジェクトの凍結が発表された。既に5機の試作機が飛行試験のために渡米しているが、飛行試験は中断され、そのうち1機は航空機としての登録も抹消された。
MRJの計画は、もともと経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託・助成事業「環境適応型高性能小型航空機」として始まった。三菱重工は、2003(平成15)年度から主契約企業となって事業を推進した。プロジェクトには宇宙航空研究開発機構(JAXA)なども参画しており、これは文字通り「国家プロジェクト」だった。
JAXAをはじめとする専門機関は、コンピューターを活用した先進的設計手法や、複合材部品の新しい製造技術など、基礎技術に関わる支援を行った。しかし製品開発はその先にあるもので、技術開発はゴールではない。旅客機が製品になるには、量産品として型式証明が取れなければ意味がないのだ。
MRJプロジェクトの遅延は、ほとんどがこの型式証明の取得手続きに関わるものだった。事業凍結への決定打となった大幅な5回目の遅延も、型式証明を得るための大規模な設計変更が理由である。
専門メディアによると設計変更は900件以上に及び、設計荷重の見直しや、各種システムの系統設計に関わる変更など、基本設計の段階に戻ってやり直すような内容がいくつも含まれている。これは卒業論文の提出時に「課題設定と調査からやり直しなさい」といわれたようなものである。
2)型式証明とはなにか
航空法には、航空機は耐空証明がなければ飛んではいけない、と書かれている。国の審査で「安全な航空機であることの証明」を受けるのが耐空証明で、各国が定める耐空性の基準を満たさない航空機は、原則としてその国で飛ぶことができない。
耐空性の基準は、日本では耐空性審査要領、米国ではAIRWORTHINESS STANDARDSとして文書化されているが、世界中で米国と欧州の基準を踏襲しているので、実質的に同じ内容となっている。
型式証明は、量産航空機に包括的な証明を与える制度である。
・図面や計算書などの設計プロセス ・製造工程や品質管理などの生産能力 ・試作機で確認される性能や飛行特性
などを国が審査し、その型式に対して証明を与える。型式証明を得た航空機は、適正に設計・製造されていることが認められているので、機体個別の耐空性審査は、製造記録や整備記録などの確認で済ませることができるのだ。
販売先の国で型式証明を得られなければ、航空機は製品として意味がない。そのため、三菱MRJでは、国土交通省航空局(JCAB)の型式証明と同時に、連邦航空局(FAA)の証明を取得する方針を採った。しかし、日本の企業が日本で開発製造する以上、設計や製造の過程を審査して製造国型式証明を発行するのは、あくまで日本のJCABである。
3)誰が審査するのか
耐空性の基準が文書化されているといっても、設計が基準を満たしているかどうかは、その文章だけでは判定できない。
「○○の場合でも□□の状態にならないこと」
と書かれていても、「○○の場合」とされる条件や、その設計が「□□の状態」を防止できると認められる条件は明確ではないからだ。その判定は、過去の事例などで培った知見に基づき、行政側の審査員が行う。
機体ができてから不合格では困るので、メーカーは設計段階から審査当局と密接に連絡を取り、確認しながら作業を進める。MRJの場合は三菱がJCABと一緒に開発を進めたはずだが、JCABの審査員も基準の解釈に「頭を悩ませた」という。
日本では、メーカー以上に、審査する側に経験やノウハウがないのである。そして、できあがった試作機を米国に持ち込んだ2016年の終盤、FAAは「この設計では型式証明を認めない」と判定した。三菱とJCABが進めてきた設計が、FAAの審査員から不合格の判定を下されたのだ。
三菱でも型式証明が難関であることは承知しており、外国人技術者の採用や経験者の任用などの施策を講じたが、それも功を奏さなかった。型式証明審査は時を重ねるごとに厳しさを増していて、過去に認められた設計が現代では通用しないことも多い。ボーイングなどでも、新しい旅客機を既存の737や777の派生型として開発することが多いのは、新型機としての型式証明が不要で、変更部分の審査だけで済むためだ。
JCABはMRJの審査を行う航空機技術審査センターを2004(平成16)年に名古屋に設置し、FAA職員を招いた講習も受けたといわれるが、膨大なノウハウが必要な審査能力が一時の研修で体得できるわけもない。FAAに助言を求めても、FAAは外国当局の審査には関与しない。あくまでJCABが製造国の責任として型式証明を発行しなければいけないし、FAAは輸入された機体を米国の基準で審査することになる。
つまり、MRJが挫折した理由の根本は、
「日本という国家が、航空機の安全を国際的に担保する能力に欠けている」
ことだ。
4)ホンダジェットは米国製
難航するMRJの傍らで小型ジェット機ホンダジェットの成功が各所で報じられたため、
「なぜ自動車メーカーのホンダが成功したのか」
という声も多く聞かれた。しかしホンダジェットは日本の国産機ではない。製造会社は米国のノースカロライナにあるHonda Aircraft Companyという会社であり、米国で設計開発された正真正銘米国製の飛行機なのだ。
日本で開発したのでは外国で売る航空機はつくれないことを、ホンダは知っていた。また、ホンダが日本で航空機を製造するなら、JCABから航空機製造事業者の認定が新規に必要で、この審査に合格するのも大変だ。つまり、「日本製ではない」ことがホンダジェットの一番大きな成功理由だ。
もうひとつ興味深い存在として、中国製の旅客機C919がある。エアバスA320やボーイング737に競合するクラスの機体で、2022年に中国国内の航空会社に引き渡しが始まっている。C919はもちろん中国航空局の型式証明を受けているので、中国国内で商業運航が可能だが、FAAの型式証明は取得していない。開発元のCOMACは、あえて「FAAの型式証明を取得しない」選択をしたのだ。
C919がFAAの型式証明を取得しようとすれば、MRJと同様の困難に見舞われたかもしれないが、広大な国土を持つ中国は、国内だけでも十分な市場がある。米国の型式証明を必要としないのだ。
5)国家プロジェクトのあり方と航空機産業
一方ではFAAの権威も揺れている。ずさんな設計のために墜落が相次いだボーイング737MAXに関して、FAAによるボーイング社への審査が非常に甘かったことが調査で明らかになり、物議を醸している。FAAも神様ではないし、自国産業を保護したいという判断の存在も否めない。そのため、より安全な航空機の実現や、より自由で平等な国際市場の実現には、各国がオープンな場で情報を交換し、協力していくことが必要ではないか。
日本においても、経産省がプロジェクトを立ち上げる際、JCABの型式証明能力や、FAAの証明取得プロセスをどうするかといった問題が、十分に検討されたとは思えない。経産省とNEDOが実施したMRJに向けての技術研究は、高い付加価値を持つ製品実現のために必要な努力だが、日本の旅客機開発に困難をもたらす最重要課題は、こうした先端技術ではなく、「国による認証制度」の問題なのだ。
しかし、専門分野の研究や設計を担う現場技術者や、マーケットだけを見ている投資家や経営者では、こうした認識を持つのは難しい。特に日本では専門人材の流動性が低く、開発現場の実情から行政の制度までを、網羅的に知る機会は得にくい。
その結果、経産省/NEDOは市場や基礎研究だけを見て絵を描き、三菱はそれを足掛かりにして事業に取り組んだが、肝心の型式証明を手掛ける国交省は蚊帳の外という、驚くべき体制ができあがった。
これは「誰が悪い」という問題ではなく、国家プロジェクトのあり方や行政機関の整備方針など、日本という国の力が改めて問われるべき事例ではないだろう。
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8/26(土) 6:11配信 Merkmal(メルクマール)
MRJの失敗は必然だった? 元航空機エンジニアの私が感じた「うぬぼれ技術者」発言への違和感、部下への責任転嫁に民間産業の未来なし
1)川井元社長らの発言
国産旅客機スペースジェット(MSJ、旧称MRJ)開発の失敗は、日本国民に大きな失望を招き、今もその理由について議論が続いている。
そんななか、三菱航空機の社長として一時期のMSJ開発を率いた川井昭陽(てるあき)氏が、テレビ愛知のインタビューに対し、日本人技術者の「うぬぼれ」が失敗の理由だと発言し、一部のひんしゅくを買っている。
川井氏は経験豊富な外国人技術者を招聘(しょうへい)したが、日本人技術者は傲慢(ごうまん)で彼らのいうことを聞かなかったというのだ。
川井氏は、かつて三菱が開発したビジネスジェット機MU-300の飛行試験に関わった経歴を持ち、連邦航空局(FAA)による型式証明審査の一端を経験している。FAAでは、型式証明に関わる膨大な審査作業をスムーズに進めるため、資格を認めた民間技術者に業務の一部を委託する仕組みがある。そうした技術者に接してきた川井氏は、彼らのような人材を招き入れることが、MSJの開発に役立つと考えたのだろう。
これについては、開発の初期からチーフエンジニアを務めていた岸信夫氏も「良い考えだった」と述べており、5回目の納期遅延が発表された2017年以降も、外国人技術者の増員は続いた。この時期、開発に携わる約2000人のうち、実に600人を外国人技術者が占めたと報じられている。
2)過去の経験に依存した計画の問題点
しかし、MSJは日本の国産機であるにも関わらず、「FAAの型式証明しか意識されていない」ことが、このプロジェクトの本質的な異常性を示している。
米国へ輸出するMSJにFAAの型式証明が必要なのは当然だが、それ以前に必要なのは設計製造国である日本の型式証明だ。航空機の型式証明審査に関して、国際民間航空条約(シカゴ条約)では「設計国が世界に対し第一義的な責任を有する」としている。
米国の政府機関であるFAAには日本企業が日本で行う事業を審査する権限はなく、MSJの設計や製造を審査して承認する責任を負うのは日本の航空局(JCAB)だ。それにも関わらず、関係者を含む多くの人たちがFAAの型式証明だけに目を向けていたのは、過去の経験に引きずられた思い込みのためである。
日本では民間航空機の開発機会が少ないため、JCABに新型旅客機の型式証明審査が行えるような常設部門はない。しかし、過去には
・YS-11
・MU-300
といった開発でFAAの型式証明を取得して輸出につなげた実績があり、MSJの型式証明も同じスキーム、すなわちJCABとFAAの証明を同時に取得する方針で計画された。
3)日本人の意識から消えた本来のプロセス
だが、この方針を採用したとしても、設計段階での審査や製造工程の審査を行うのはJCABでなければならない。輸入国であるFAAは、米国国内でMSJを飛ばすことを認めるかどうかを判断する立場なので、米国に持ち込まれた試作機の審査が基本になる。
川井氏がMU-300の開発で担当していたのは、試作機の飛行試験などFAA審査への対応であって、国内での設計段階の審査ではない。そのため、川井氏も試作機に対するFAAの審査が型式証明の本丸だと考えたのだろう。
川井氏だけでなく、日本のメディアがYS-11などの開発を語る消費者向けの物語でも、FAAによる審査がドラマチックに描かれることが多い。「JCABによる設計や製造の承認」という本来のプロセスが、日本人の意識から消えているのである。
だが、現代の旅客機開発という巨大プロジェクトでは、試作まで終えているFAA審査の段階で大きな設計修正は致命傷だ。40年も前に小型航空機で経験したのと同じスキームを、そのままMSJで押し通すのは明らかに無理がある。MSJ開発の最終盤で起こった悲劇は、「誰もが予想できた事態」である。
MSJは2015年に初飛行しているが、それから5年がたっても型式証明が取得できないまま、凍結が発表された。しかし、より大型のボーイング777や787の場合、初飛行から1~2年でFAAや欧州航空安全機関(EASA)の型式証明を取得している。
ボーイング機は設計段階でFAAの審査を受けているから、設計の安全性は試作機が完成した時点で基本的に承認されており、飛行試験はそれを確認するプロセスにすぎないからである。
4)異常な審査体制
JCAB航空機技術審査センターの清水哲所長によると、三菱航空機は日米両国で並行して審査を受け、設計を進める考えだったという。
しかし先にも書いたとおり、日本も米国も互いに主権を持つ独立国家である。日米両国による並行審査を構想するなら、両政府がしかるべき取り決めを交わし、設計段階から共同の審査機関を設けるような体制が必要だ。
しかし、そんな虫の良い話を米国政府が受け入れる理由はない。MSJの開発は非現実的な構想を前提に始められ、FAAの承認が得られるかどうかわからない設計に基づいて、試作や飛行試験の段階に進んでいったのである。
川井氏らは、外国人技術者ならFAAの審査に耐える設計ができると思ったのかもしれないが、それは見当違いの思い込みだ。設計は技術者が審査当局と調整しながら進めるものであり、最初からFAAが納得する設計案だけを用意することなど、いくら経験が豊富な設計者でも不可能だ。航空機の開発は設計者だけが行うのではなく、審査に当たる政府当局との共同作業なのである。
したがって、いくらボーイングのOBであっても、設計作業の能力そのものは日本人と違いはなく、日本人技術者が彼らのいいなりにならなかったのも無理はない。そもそも三菱の設計者はボーイング777や787の共同開発設計にも参加しており、設計能力がボーイングの技術者に劣っているわけではない。
強いていえば、米国人技術者はFAAへの提出資料などについて日本人より詳しいだろうから、彼らのおかげで審査を受ける準備がはかどったというのは本当だろう。
5)必然だったMSJの失敗
繰り返しになるが、航空機の型式証明は「設計国が世界に対し第一義的な責任を有する」ものである。日本で設計される航空機の安全性を、日本の政府当局であるJCABが保証し、それを世界に認めさせることができなければ、国産機など製造できない。
JCAB審査センターの清水所長は、インタビューに対して強度試験の例を挙げ、「最大値の1.5倍の荷重に3秒以上耐えられることを証明しなければならないという基準はあるが、証明の方法は示されていない」と語っている。しかし、方法が適切かどうかを判断するのがJCABの仕事だ。その責任を負う立場にある者が「証明の方法は示されていない」と語ること自体、まったく論外というしかない。
川井元社長も清水所長も、無理な仕事を押し付けられた立場だったといえるし、そのことには多少の同情も感じる。しかしJCABが自らの責任を放棄し、元社長が「部下に責任を転嫁する」ようでは、日本の民間航空機産業に未来などあるわけがない。
MSJプロジェクトを事業化した経済産業省は、開発の失敗を検証する有識者会議を開催しているが、やはりここでも「検討安全認証プロセスの理解・経験が不足していた」と、最初から指摘されていたことを、ひとごとのように繰り返しているだけだ。しかも、計画の立ち上げに関わった張本人である御用学者や役人たちが、やはり自分たちの責任を丸投げし、今も涼しい顔で会議を主導している。
このような無責任国家にとってMSJの失敗は必然だったのであり、その無責任が今後も繰り返されようとしているのだ。
ブースカちゃん(元航空機プロジェクトエンジニア)
(引用終わり)
相田英男 拝
相田です。
たかが「単なる水」を海に流すくらいで、えらい騒ぎよるねえ。まあ結局は、だな、「本当のこと」がどうか、というのは、発言者達は全く問題にしていない。「私達が信じるものはこういう事だ」と、相手に押し付けてるだけだ。だから、折り合いがつく訳がない。
ここまでこじれたそもそもの原因は、だな、経済産業省の官僚達が、東京電力をぶっ潰すために、「処理水」の安全性に関する説明を、世間一般に対し「意図的にサボタージュした」ためだ。学者達を集めて、何回も、もっと丁寧に説明する機会を持てば良かった。それを経済産業省はさぼったのだ。
私はそう考えている。まず間違いないと思う。それで、頭のいい官僚さん達の目論見通りに、各所で炎上しまくっているようだ。
みんなせいぜい頑張ってくれ。
さて、私からの提言だが、近い将来に中国、韓国の原発でメルトダウン事故が起きた時の、我が国の対応については、きちんとシミュレーションしてるのかね?せめて、事前準備くらいはしとこうね、官僚の皆さん。
ついでに、かねてより私が気になっているのは、だな、おそらくGEが密かに作成しているだろう、「3.11福島事故の正式な報告書」の存在だ。官僚達はこの報告書を、さっさとGEから入手して、解析して、対応策を追加する事だ。どうしても、GEからもらえない時は、だな、個別にGEの原子力技術者達を招待して、彼らにレポート作成を依頼しろ。日本人の間抜け達が作った、過去の「事故報告書」よりも、数段レベルの高い内容になるのは疑う余地がない。当時のBWRの設計を知っている技術達者は70歳を超えているだろう。が、まだだいぶ生き残っている筈だ。なので、彼ら死ぬ前に集めて書かせておけ。数100億円くらい税金を使っても、入手する価値はあるよ。
(引用始め)
水産物全面禁輸ショック!「想定外」だった中国の処理水報復 岸田政権「不買運動程度か」と甘い予想…専門家が指摘「今後、報復が半導体に拡大すると…」
8/25(金) 19:50配信 Jcast 会社ウォッチ
東京電力が2023年8月24日午後1時、福島第一原発の処理水の海への放出を始めた途端、それを見届けたかのように中国政府は、日本産の水産物の輸入を同日から全面的に停止すると発表した。
全国の漁業関係者はもちろん、日本政府にとっても「想定外」のショックだった。福島から遠く離れた鹿児島、福岡などの水産業者の元に中国や香港から取引キャンセルの連絡が入った。日本の漁業は、そして日本経済はどうなるのか。中国の狙いは何か。専門家の分析から読み解くと――。
処理水放出で中国国民パニック、食塩「爆買い」に走る
報道をまとめると、中国外務省の報道官は8月24日の記者会見で、日本の処理水放出について、「生態環境の破壊者であり、海洋環境の汚染者だ。断固たる反対と強烈な批判を示す」と非難した。
その後、中国税関当局が「福島の『核汚染水』が食品の安全に対してもたらす危険を全面的に防ぐため」として、日本を原産地とする水産物の輸入を全面的に停止すると発表した。
中国は原発事故後、福島、宮城、東京など10都県からの水産物の輸入を禁止してきた。今回、それが全国に拡大されたかたちだ。中国は日本にとって水産物の最大の輸出先で、中国・香港向けの合計が、2022年度実績で約42%に達する。日本の漁業に甚大な影響が出ることは避けられない。
また、中国外務省は「食の安全と中国人民の健康を守るため、あらゆる必要な措置をとる」との談話を発表した。これは、水産物以外の日本産食品にも、新たな輸入規制を導入する可能性を示唆したと受け止められている。
実際、ロイター通信(8月24日付)によると、処理水の海洋放出が始まった8月24日、中国のスーパーやネット通販では食塩を「爆買い」する人が急増、売り切れになる事態が続出し、当局が冷静な対応を求めたほどだ。
中国国民の「食の安全」を巡る不安が、水産物にとどまらず、海水を原料に作られる食塩にも波及したかたちだ。
今回の中国政府による全水産物禁輸措置、岸田文雄政権にとっては「想定外」の事態だったようだ。朝日新聞(8月25日付)によると、日本政府内では「中国が何かやってくるとは思っていたが、ここまでは予想していなかった」(農林水産省幹部)という驚きが広がったそうだ。
中国がすでに実施している水産物の放射能検査という規制に加えて、「さらに不買運動をしてくるかもしれない」(首相官邸幹部)という相場観が語られていたという。ずいぶん甘い想定だったわけだ。(以下略)
(引用終わり)
相田英男 拝
この夏アメリカで、物理学者のオッペンハイマーを主人公とした映画が公開され、ヒット中らしい。同時期に公開された、別の娯楽映画の宣伝がこじれた影響(?)で、日本での公開時期が未だに決まっていない。大変残念なことだ。ジャニーズ事件に巻き込まれた、山下達郎みたいな立ち位置だろうか(???)
はっきり言って「君たちはどう生きるか」は、全く観る気がない私だが、「オッペンハイマー」は是非見てみたい。別に原爆実験の爆発や、赤狩りに巻き込まれて公聴会を受けるシーン、などを、見たい訳ではない。同僚やライバルとして、多数登場するだろう物理学者達が、どのように描かれているかを見たいのだ。
オッペンハイマーはプリンストン高等研究所の所長だった。この研究所は、アインシュタインを筆頭に、欧州から亡命して来たユダヤ系物理学者の受け皿となった。第二次大戦後の物理研究の頂点といえる場所だった。パウリ、ダイソン、ディラック、ノイマン、ワイル、ウィグナーなどの、著名な物理、数学者達がここに所属していた。
戦前にオッペンハイマーがドイツに留学した際には、ボーア、ハイゼンベルク、ボルン等の量子力学の立役者達との交流もあった。マンハッタン計画に参加していた際には、フェルミ、ベーテ、ファインマン達とも付き合いがあった筈だ。チョイ役で良いので、彼ら歴史に残る多くの学者達が、どのような風貌で描かれて、どんな言葉を語るのかを、是非見てみたい。私が文章で読む彼らの印象と、どのように違うのかを知りたい。それだけだ。
以下の引用記事によると、映画には日本人は登場しないらしい。そうすると、日本からプリンストンに留学した、湯川秀樹、朝永振一郎、南部陽一郎(言わずと知れた日本人物理学者の最高峰)、内山龍雄(後述のヤンより先に、一般化ゲージ理論の概念に到達した学者、阪大の伏見康治の弟子)、柳瀬睦男(日本の科学哲学会の影の主役、村上陽一郎の師匠でもある)、等の学者達も、やっぱり登場しないのだろう。残念なことである。
プリンストン研究所は頂点だけのことはあり、環境はなかなかに熾烈だったようだ。あるインド系の物理学者が亡くなった際に、アインシュタインは、お悔やみの言葉として、その奥方に「私達は御主人の御遺体については、哀悼の意を捧げます」と語ったという。驚くべき非常識さである。そのような厳しい様子を、監督はどのように表現しているのか、なかなかに興味がある。
中国人初のノーベル賞物理学者となった、チェンニン・ヤンくらいは、せめて出ていないのだろうか?素粒子物理学の分岐点となった一般化ゲージ理論について、プリンストンでヤンが初めて発表した際に、パウリが凄い剣幕で文句を言い始めたため、ヤンの発表が中断し、オッペンハイマーが仲裁に入ったという、有名なエピソードがある。映画で一度見てみたいと思うのだが、多分ないだろうな。
(引用始め)
映画『オッペンハイマー』 「原爆の父の物語なのに日本人が出てこない」のはなぜ?
8/1(火) 18:30配信
「原爆の父」ことJ・ロバート・オッペンハイマーの生涯とその時代について描かれた、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』は高い評価を得ている。
一方で、原爆の父の物語でありながら、その原爆の被害にあった日本人が映画内にまったく出てこないのはどうなのか、との指摘もある。
アメリカによる広島と長崎への原爆投下は、戦争を終わらせるのに本当に必要だったのかーーという、原爆後の戦後史において「最も重要な議論に対峙していない」と、米誌「マザー・ジョーンズ」はノーランを批判している。
無論、ノーランは「大量破壊兵器を使用することは悪いことだ」との考えを表明している。
だが、同作品内でノーランは「“日本への原爆投下に正当性はなかった”という考えへの支持を明らかにしていない」ため、「太平洋戦争を終結させてアメリカを救ったのは、オッペンハイマーが発明した2発の爆弾だった」という物語にも読み取れるという。
同作ではオッペンハイマーが戦後、赤狩りの渦中で公職から追放されたことと、機密保持許可公聴会に焦点が置かれているが、このように仕上がったのは、ハリウッドの関心が偏っているせいではないかと、米紙「インテリジェンサー」は報じている。
また、ノーランに限らず、多くのアメリカ人が「戦時中の日本人について漠然とした考えしか持っていないからでは」と述べている。
ハリウッドが好きな戦争ネタは「ナチス、共産主義者、そしてそのスパイ」
一般的に、戦時中の日本人は「特攻隊員と、戦いが終わった後も長くジャングルで戦い続ける盲目的に忠実な兵士たちによって定義されており」、軍人ではない市井の日本人については知られていない。アメリカを攻撃し、戦争に持ち込んだのはナチスではなく日本人だったにも関わらず、ハリウッドは「ほとんど関心を寄せていない」という。
これについては、ハリウッドにはユダヤ系が多いこと、また、日本は他のアジア諸国の人々は迫害したが、オッペンハイマーしかりアメリカにも多数いるユダヤ人を迫害した歴史は持たないことが少なからず関係しているのではないかと示唆している。
もっとも、原爆は当初ヒトラーへ対抗するために開発された。だが、ナチスが敗北したことでターゲットは日本へ向けられた。
ノーランが作ったのはユダヤ系アメリカ人であるオッペンハイマーについての映画で、そのなかで必ずしも「日本人を忠実に描かなければいけないわけではない」。だが、オッペンハイマーを語るうえで「核」を外せないのと同様に、彼の人生と日本は切っても切れないものであるはずだと述べている。
ノーランは「オッペンハイマーが人類を核の時代へと導き、人類に初めて自らを破壊する能力を与えた。この事実に懸念を持つ」と語ってるが、一方で「その核の遺産(核の犠牲者たち)については曖昧だ」。核の破壊力の凄まじさ、およびそれが歴史の転換点になりうる可能性を示すシーンとして、作中では人類初の核実験「トリニティ実験」が描かれているが、それらを最も示すのは、トリニティ実験ではなく、一瞬にして焼却された、もしくは放射能中毒で(1945年末までに)死亡した広島と長崎の約22万人の犠牲者だと同紙は主張する。
実際に、この「核」によって、アメリカは戦後の世界の覇権を握ったわけだが、それはつまり「アメリカの世紀の幕開けは日本の犠牲者なくしては起こらなかったということだ」
そして、この視点がいまなおハリウッド、およびアメリカ人には欠けていると指摘する。
その証拠としてあげているのは、同作公開後に作家兼コラムニストであるカイ・バードの、同作公開後の米紙「ニューヨーク・タイムズ」への寄稿文だ。
バードはピュリッツァー賞を受賞した「オッペンハイマー『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」のほか、日本への原爆投下に関する著書などで知られる人物であるが、彼はこう書いている。
オッペンハイマーの人生の「本当の悲劇」は、(原爆の脅威を目の当たりにして、核開発に反対する主張を訴えるようになったことから)ソ連のスパイ容疑をかけられ、公職から追放され、屈辱を与えられたこと。そして、それがほかの有能な科学者たちを「公的な知識人として、政治の舞台に立ち、声をあげるのを思いとどまらせたこと」だと。
これに対し、インテリジェンサーは「本当の悲劇」は、彼のたぐいまれな頭脳が、すでに彼にとってもアメリカにとっても、ほとんど脅威ではないと分かっていた国(日本)の破壊に使われたこと、しかも、その22万人以上の犠牲者の大多数が洗脳された特攻隊員でも兵士でもなく、武器を持たぬ市井の人々だったことだと述べている。
COURRiER Japon
(引用終わり)
相田英男 拝
相田です。
マイナンバーカードを普及させるため、健康保険証と一体化させる、とか、病院帰りの年寄りが、道で落としたらどうするんだ?、とかの、話題が席巻している。その中で、カード自体を現行方式から、新しい仕様のカードに変更する準備が政府で進んでいる、という。
その場凌ぎの政府の対応に、世間の不満が高まっているが、河野大臣は新しいカードが必要な理由に、何と量子コンピュータでセキュリティが破られる可能性がある、と、国会で答弁したという。
とある事情から、私も量子コンピュータについて調べ始めた。わかって来たのは、これ、そんな簡単に作れる代物じゃないぜ。理論上は、現状の暗号システムを容易に無効化できる。だが、現実に量子コンピュータが使えるレベルになるのは、相当な技術革新が必要だ。ノーベル物理学賞があと4個くらい取れるレベルの、ソフト、ハード両方の、破壊的な技術革新が、だ。
そこまで到達するには、少なくとも10年以上はかかるだろう。その間は、従来型コンピュータの進んだ暗号破りへの対策は、当然必須だろう。が、量子コンピュータへのセキュリティ対策を持ち出すのは、あまりにもナンセンスである。
言うにこと欠いて、勉強不足アリアリの無責任な発言を、国会記録に残すのは如何なものか?理科系センスの欠落を如実に反映した発言だ。
どうせ、外野が批判した処で、いつものように聞く耳持たずで物事過ぎるのだろう。が、勉強不足の軽い発言しか出来ない人物なのが、世間に露見していく実態を、大臣本人はもっと反省するべきでないのか?
(引用始め)
【速報】河野デジタル大臣「新しいマイナンバーカードでは新しい読み取り機が必要となる可能性」
7/5(水) 14:38配信 TBS NEWS DIG Powered by JNN
河野デジタル大臣は、2026年中を視野に導入を目指す新しいマイナンバーカードについて「仕様によっては、新しい読み取り機が必要になるという可能性は当然ある」との認識を示しました。
新しいカードに切り替える理由としては、“量子コンピューターなどいろいろ技術が革新し、強度的にさらに強い暗号に切替える必要性がある”などと答弁しました。
立憲民主党の長妻政調会長の質問に答えました。
(引用終わり)
相田英男 拝
相田です。
以下の記事は、異なる話題が入り乱れた、ごちゃごちゃした内容で、大変わかりにくい。書いた人物が、内容をよくわかっていないので、仕方がないのだが。ざっくり整理すると、以下となる。
① 軽水素とホウ素による核融合反応を、岐阜県にある核融合実験装置(LHD)を使って確認した。
②実験のアイデアは、米国の核融合スタートアップ企業の「TAEテクノロジーズ」が提案した。
③ 軽水素とホウ素による核融合反応は、中性子を発生しないが、従来のD-T反応の30倍の高温反応が必要となる。
④TAEテクノロジーズでは、磁場反転配位(FRC)型という閉じ込め性能が高いプラズマ制御技術を開発中である。ただし、基礎検討の段階で超伝導コイルを使った実験はまだである。
⑤TAEテクノロジーズの研究者は、30年以内にFRC型核融合反応の実証炉が出来る、と期待してる。
最初に、岐阜県の核融合科学研究所の話が出てくるので、そっちの成果なのかと思った。だが、そうではなく、実験装置を使わせただけだ、ということらしい。岐阜県は、単にダシに使われただけだった。
それでもプラズマ型の核融合装置で、実際に核融合反応を確認した事例はほとんど無いので、貴重な実験ではあるのだろう。14ミリオン電子ボルトのエネルギー持つ高速中性子が生じる実験など、その辺の機械で安易に出来るものでは無い。イーターの実験も、スケジュールの大半は、核融合反応を起こさないで、重水素(D)だけのプラズマの安定制御実験を、延々とやるのだ。最後の最後に、核融合を起こすために、三重水素(T)を含むプラズマを作り装置を稼働する。が、そっちは、何が起こるかわからないので、正確な工程を決めておらず、出たとこ勝負になる筈だ。
私がここで、ずっと書いているが、D-Tの核融合反応では、高速中性子が発生し、周囲の機械に大きなダメージを与えるのだ。プラズマ制御のために使う超伝導マグネットも、中性子を浴びて特性が低下し、超伝導を維持できなくなる。この超伝導から常伝導状態に変化する現象を「クエンチ」と呼ぶ。記事の通りに、イーターで核融合反応を起こすと、早い段階で超伝導マグネットにクエンチが起きて、プラズマ制御が困難になると予想されている。
だから、イーターが動き始めても、その後に、商業用の核融合発電が早期に実現するなど、出来る筈ないのである。キャノングローバルなんちゃらという、シンクタンクのおっさんが、「核融合発電が商業ベースに乗る日も近い」と、散々吹聴しているが、あんなのは全て大ウソだ。大概にせえよ、全く。
それで上記の③に、中性子を発生しない新たな核融合反応を確認しました、メデタシですね、という事になる。が、そんな安易な事は、やっぱり全くない。
実験内容を書いた記事をチラリと見たが、ホウ素(B)の原子は、最初からプラズマ中に燃料としてある訳では無く、LHD装置の脇についている、プラズマを加熱する中性ビーム加熱装置を使って、水素プラズマ中にイオンとして打ち込むらしい。確かにそれならプラズマになるだろうが、そんなやり方でチビチビとホウ素イオンを加えても、ほとんど核融合反応の発熱は期待できない。
なので、上記③の磁場反転配位(FRC)型とやらの、新しいプラズマ制御方式を使って、更に高密度のプラズマを作る研究を続けます。どうか皆さん、TAEテクノロジーズにたくさんのお金を投資してください、という話に繋がる訳だ。ふう、ややこしいぜ。
それで、そのFRC型の新しい核融合炉が、いつモノになるかというと、「20―30年代に発電能力を実証する」らしい。「発電能力を実証する」とは、商業発電炉の一つ前の実証炉(デモリアクター)を建設して、発電を起こす、という意味だ。ちなみに、イーターは実証炉の前の「実験炉」である。イーターはの構想は、私が学生時代から既にあった。それから30年長を経て、2兆円を費やして、ようやく実験に漕ぎつけた。せっかく作ったのだから、これから10年くらいは実験に使うだろう。その結果を踏まえてから、次の実証炉に進むと、計画されている。
それと比べると、だな、イーター(トカマク型)とは全く異なる炉形で、あと30年で実証炉を作るというのは、どう考えても無理があるのではないだろうか?実験炉をスキップして、いきなり実証炉に進むという道もある。が、そうそう上手くいくのか?中性子を発生しない核融合反応は、温度が高温になるため、高温に耐える材料が必要になるそうだ。私は断言するが、現在の世界に存在する材料よりも、高温に耐え得る材料は、最早存在しない。今後、研究を重ねても作れない。少なくとも金属材料ではあり得ない。GEや三菱重工が、高温ガスタービンを開発する過程で、周期律表に存在するほぼ全ての元素を使って、金属の耐熱性を突き詰めているからだ。
セラミックスならば可能性はあるかもしれない。しかし、セラミックスは溶接ができないため、タイルのような貼り板で使うのが席の山だ。使える部分が限定されざるを得ない。そんな状況で、早期の発電試験ができるのだろうか?まあ、ヘリウム3のように、原料が木星から取って来ないと使えない訳ではないので、その分マシではあろうが。
なので、このTAEテクノロジーズとかいうスタートアップ企業が言うことも、やっぱり大ウソだろう。核融合の話を読むと、このように、あちこちにたくさんのウソが散りばめられている。それを御大層に読者に煽るので、壮大な詐欺の勧誘を受ける気分に、毎回させられるのである。
(引用始め)
世界初「軽水素とホウ素による核融合実験」に成功、スタートアップが描く未来
5/7(日) 16:10配信
日刊工業新聞 ニューススイッチ
3月、自然科学研究機構核融合科学研究所(岐阜県土岐市)と米国の核融合スタートアップ「TAEテクノロジーズ」(TAE、カリフォルニア州)は共同で、軽水素とホウ素による核融合実験に世界で初めて成功した。軽水素とホウ素による核融合は、重水素と三重水素を使った一般的な核融合に比べて反応条件は厳しいが、放射線である中性子が発生しない点で優れる。今回の成果について、TAEの最高科学責任者(CSO)でカリフォルニア大学教授の田島俊樹氏は「軽水素とホウ素による核融合実現の入り口に立った」と力説する。
TAEは1998年に創業し、長年にわたり核融合発電に挑戦してきた。核融合スタートアップとしては最古参の存在だ。核融合は重水素と三重水素の核種を用いるのが一般的だが、非主流の軽水素とホウ素による核融合を目指している。
今回の実験は、核融合研の大型ヘリカル装置(LHD)で行った。磁場で閉じ込めたプラズマにホウ素の粉末を振りかけた後、時速1500万キロメートル超の速度で側面から軽水素を照射してホウ素にぶつけ、核種同士を融合。この核融合反応によって生じたヘリウムをTAEの計測器で捉えた。
重水素と三重水素による核融合では反応の際、放射線である中性子が発生する。中性子は膨大な熱エネルギーを持つが、遮蔽(しゃへい)が難しく、炉壁に当たると金属を放射化し、放射線を出す放射性物質に変化させてしまう。
これに対し、軽水素とホウ素では反応の結果、高温のヘリウムしか出ないため、炉壁が放射化するリスクが小さい。反応条件が難しいという課題もあるが、それでもTAEが軽水素とホウ素の核融合を目指すのは、創業者の故ノーマン・ロストーカー氏の遺志を受け継いでいるからに他ならない。
ロストーカー氏はカリフォルニア大学アーバイン校(UCI、カリフォルニア州)のプラズマ研究者であり、田島教授は教え子に当たる。73年、田島教授はロストーカー氏に初めて会った際「プラズマの理論は構築された。これからはそれを使った応用が重要だ」と説かれた。その応用の一つが核融合であり、50年もの歳月を経て師の教えを実現しようとしている。
ロストーカー氏が唱えたのが「End in Mind」(出口から考えよ)という思想だ。では、核融合発電における出口とは何か。それは安定的にエネルギーを生み出し続ける装置を成立させることだ。そのためには、軽水素とホウ素の核融合しか道はない―。TAEはそう結論付けた。田島教授は「中性子が出ることによる安定運転への影響は大きい」と指摘する。
一般的な核融合発電を阻む主な課題は、中性子による放射化と超電導コイルの性能劣化にある。放射化は保守が困難になるなど、安定運転に支障を来す恐れがあった。また超電導コイルに中性子が多く当たると、熱により超電導特性が失われる「クエンチ」という事象が発生する。これを防ぐため、中性子を遮蔽(しゃへい)する炉壁を大きくすると、今度は装置全体が巨大になり、コスト増につながる。
一方、軽水素とホウ素では中性子が出ないことから放射化の懸念がなく、装置のコンパクト化にもつながる。ただ、核融合を起こすための反応温度が極めて高く、重水素と三重水素よりも30倍のプラズマ温度が必要になるという。このため国際熱核融合実験炉(イーター)のように強力な磁場でプラズマを閉じ込めるトカマク型の方法や、レーザーで核融合反応を起こす方法は使えない。そこでTAEが採用したのが、磁場反転配位(FRC)型という炉系だ。
FRCは理論上、閉じ込め性能が高い高エネルギーのプラズマを作ることができる。まず線形装置の両端で閉じ込め効率が低いプラズマを生成。それらを中央に向けて加速させ、二つのプラズマを合体させて閉じ込め効率が良いプラズマを作る。プラズマの性能が高まると外側から強力な磁場で閉じ込める必要がなくなり、プラズマ自身が持つ磁場によって閉じ込められる。
従来はFRCのプラズマを一定時間、閉じ込めることが難しかったが、プラズマに外部から高エネルギーを与える方法で課題をクリアした。これらの方法について、田島教授はプラズマを「自転車」に例えてこう表現する。「自転車はペダルをこぐまでは不安定で転びやすい。だが、ひとたびペダルが回り、進み始めると安定して前に進む。プラズマも同様にエネルギーを高めていけば、自分自身が作る磁場によって安定的に閉じ込められる」。
具体的にはこうだ。まずFRCのプラズマに外部から加速器でエネルギーを加える。加速器からのエネルギーを受け取ったプラズマは、自身が持つ磁場の閉じ込め性能が高まり、安定化するという仕組みだ。今後建設する実験装置や商用炉では加速器のパワーを上げ、よりプラズマにエネルギーを与える。同時に高エネルギーになったプラズマが外側に広がろうとするのを抑えるため、超電導コイルを導入する計画だ。
高温に耐える材料開発不可欠
事業体制も着々と整いつつある。2022年には米グーグルや住友商事などから2億5000万ドル(約336億円)の資金調達を実施。またグーグルの計算機の知見を生かし、開発を効率化している。ロストーカー氏が抱いた夢はTAEに受け継がれ、今、花開こうとしている。田島教授は「(ロストーカー氏が)20年以上研究してきたプラズマや装置の知見を進歩させてきた結果だ」と強調する。
核融合においてプラズマ研究は進展しているが、発電にはエネルギーの取り出しや装置としての安全性が求められる。特にFRCは通常想定する核融合発電よりも高温のプラズマを使うため、それに耐えうる材料開発が不可欠だ。田島教授も「我々はプラズマの専門家ではあるが、周辺機器については協業していく必要がある。日本企業にはその点を期待している」と話す。
実現まで遠く、国が研究の主体だった核融合。しかし、10年ごろに急増した核融合スタートアップの存在は、この潮目に変化をもたらした。巨額の民間資金が流れ込むことで研究開発が加速。野心的なスタートアップは20―30年代に発電能力を実証すると意気込む。TAEもその1社だ。田島教授は言う。「2、3年後に核融合発電を実現できるとは言わない。ただ30年かかる話ではない」。その目は核融合の「出口」を捉えている。
(引用終わり)
相田英男 拝
相田です。
引用文の著者については、説明の必要はあるまい。いつもの「古賀節」で、反原発をカマしているのだが、今回はつっ込ませてもらう。
まず古賀氏は、「安倍晋三元首相もできなかった「40年ルール」の撤廃」と書いている。ここに、最初の古賀氏の事実誤認がある。「安倍首相でもできなかった」のではない。安倍が重用した、経済産業省出身の周囲のブレーン達が、原発の再稼働を阻止したのだ。経済産業省の官僚達は、原発の再稼働をどうしても東電にやらせたくなくて、それによって、東電をさっさと潰して、電力利権を自分達に取り戻したいのだ。古賀氏も元経済産業省出身の官僚なら、その辺りの経産省の思惑は知っているだろう。知らないのならば、あなたは頭が悪すぎる、か、カンが悪すぎる。それだけだ。
さて古賀氏は、「原発では、「心臓部」にあたる原子炉圧力容器と、これを覆う格納容器は交換できない」と書いている。古賀氏の説明を逆に言えば、だな、圧力容器と格納容器以外の、ほぼ全ての原子炉の部材は交換が可能だ、ということだ。現に蒸気発生器(PWR)とか、シュラウド(BWR)とか、ポンプとか、その他の配管一式全て、などの原発の部品については、実際に現地サイトで新品に交換された実績がある。
確かに、圧力容器は大き過ぎて、交換はできないだろう。だけども、壊れるメカニズムを詳細に解析して、割れにつながる窪みや切り欠きの寸法を、実機で正確に測っている。割れの進展を加速させる中性子照射量は、実機にミニチュアの金属試験片を入れて、定期的に取り出して調査して、照射量のモニターを続けている。要するに、交換できる部品は全て新品に取り替えましょう。交換できない部品は、慎重に調査を継続しながら、運転を続けましょう、というスタンスなのだ。だから継続運転が可能と、規制委員会は判断したのだ。委員の一人を除いて、であるが。
ちなみに、共産党員の金属材料研究者で、井野博満(いのひろみつ)という方がおられる。井野先生は以前から、日本で使われる圧力容器の強度を計算する際の、数式が誤っている、と主張し続けている。本当の処は、材料強度屋でないとわからない。しかし、原子力規制委員会で認めている計算式は、アメリカの原子力規制委員会(NRC)が採用した数式が基本である。そのNRCの数式は、米国機械学会(ASME、アスメ)で長年にわたり議論されて決められた、強度計算式が元になっている筈だ。井野先生も、ASMEの技術者達が、膨大なテストデータを元に定めた強度計算式の、どこに問題があるのかを、はっきりと説明して頂けないか、と、かねがね私は思っている。
さらに古賀氏は「石渡氏は、地震や津波の審査を担当する委員である。彼ほど、日本という地域がいかに危ないのかを、知っている人はいない。だからこそ、老朽原発の運転期間延長に反対を貫いた。そうした専門家の知見を無視して多数決で押し切るなら、規制委の存在意義はない」とまで書いている。
ここにも、古賀氏の事実誤認がある。石渡先生は規制委員会では、地震や津波の審査を担当する委員である。が、石渡氏は岩石研究の専門家であって、地震や津波の研究の専門家ではない。地震や津波の専門家は、石渡先生の他にも大勢いる。ただその方々は規制委員ではない、というだけである。石渡先生が運転期間延長に反対を貫いた理由は、彼が地震の専門家だからではなくて、地団研のメンバーだからだ。科学的な判断に、政治的心情を持ち込む人物だからだ。
ちなみに古賀氏は、引用文の最後でプレートテクトニクスの話を持ち出して、日本の原発の危険性を述べている。トルコのプレートがどうのこうの、とか言って読者を煽っている。しかし私は問うが、古賀氏が専門家として、絶大な信頼を置いている石渡先生は、プレートテクトニクス理論を本当に信じているのだろうか?私には大いに疑問である。御自身が心の奥底で信用していない地震発生のメカニズムを使って、「原発は危ない」と言われたところで、全く説得力がないように思えるが。
プレートテクトニクスを本当に信じているのかどうか、規制委員の石渡先生には白黒はっきりさせて頂きたい。自分自身が信用を置いていない原理を使って、「原発が壊れます、危ないです」と主張されても、「ひとをバカにしとるんか?」という、怒りと情けなさしか、私には感じられない。「地向斜造山論でも地震は起きる」と言われるならば、それでもいい。是非そのように石渡氏には明言して頂きたい。
最後に古賀氏に問いたいが、自分をクビにした経済産業省から、実はパシリに使われているという自覚が、あなたには無いのか?情けないとは思わんか?これまで、安倍元総理を散々非難して、バカにしてきた古賀氏であるが、安倍総理がブレーンにしていた、宿敵である古巣の思惑に、あなたはマンマと乗せられているのではないのか?それとも、最初から古巣とグルでやってるのか?こちらも白黒はっきりさせて欲しいものである。絶対にやらんだろうけどさ。
「国民は、この危機的事態に声を上げなければならない」と、古賀氏は最後に煽る。「原発が動いている関西や九州よりも、関東は電気代が高いのを、なんとかしてくれ」という、関東民の危機的な声など、古賀氏にはどうでもいい訳だ。
(引用始め)
危ない原発ほど延命される愚策
古賀茂明
危ない原発ばかりが延命されると言えば、そんな馬鹿な、と思う。だが、現にそういうとんでもない法律改正に向けて、岸田文雄首相が原子力規制委員会の山中伸介委員長と二人三脚で、暴走を始めた。安倍晋三元首相もできなかった「40年ルール」の撤廃を目指しているのだ。
3.11の翌年2012年に原子炉等規制法が改正され、原発の運転期間は原則40年とし、1回に限り20年までの延長を認めた。最長でも60年で廃炉だ。これが「40年ルール」である。政府が現在検討中の法改正案では、まず、原発の運転期間に関する定めを規制委所管の法律から経済産業省所管の法律に移す。原発推進官庁であり福島第一原発の事故を起こした主犯格の同省に任せること自体が驚きだ。さらに、「40年ルール」の骨格を維持すると言いつつ、実際には、規制委による審査などで停止していた期間を除外し、その分を追加的に延長できるようにする。規制委の審査で20年稼働停止していれば、60年を超えて80年まで運転期間延長が認められる。驚愕の改正だ。
現在、管理体制に不備があったり、活断層の存在が疑われるなどの理由で、規制委の審査を通らない原発がいくつもあるが、この改正により、そういう「危ない原発」ほど長い運転期間が認められることになる。どう考えてもおかしい。
40年ルールの根底には、どんな設備でも経年劣化により故障や事故が増えるという「常識」がある。原発では、「心臓部」にあたる原子炉圧力容器とこれを覆う格納容器は交換できない。特に、圧力容器は核分裂で生じる強い放射線の中性子線にさらされ金属材料が劣化する。古くなれば危ないと考えるのは当然だ。
マクロン仏大統領が原発建設を推進していると報じられるが、その理由は、同国の原発の約半数が老朽化による金属劣化や補修予定により稼働が停止し、停電リスクが高まったからだ。原発の老朽化リスクが顕在化しているのがわかる。
しかし、山中委員長は「原発の寿命は科学的に一律に定まるものではなく、規制委員会として意見を言う立場にない」として、ルール変更を容認した。原発の経年劣化を考えれば、安全性と運転期間が無関係というのはあり得ない。一方、5人の規制委委員の一人石渡明氏は「科学的・技術的な新しい知見に基づくものではなく、安全性を高める方向での変更とは言えない」と述べて反対を貫いた。科学者の矜持を示したのだ。
大地震に襲われたトルコは複数のプレートの境目にあるが、日本も4つのプレートが境を接する国である。世界の地震発生地点を赤丸で示す気象庁の地図では、日本は真っ赤に染まり空白地点はない。この小国で世界の地震の10分の1が発生しているという。そんな国で原発を運転するのだから、念には念を入れてと考えるのは当然だ。石渡氏は、地震や津波の審査を担当する委員である。彼ほど、日本という地域がいかに危ないのかを知っている人はいない。だからこそ、老朽原発の運転期間延長に反対を貫いた。そうした専門家の知見を無視して多数決で押し切るなら規制委の存在意義はない。
40年ルール撤廃でより危険な原発の再稼働が促進される。国民は、この危機的事態に声を上げなければならない。
※週刊朝日 2023年3月3日号
(引用終わり)
相田英男 拝
相田です。
原子力規制委員会の議論で、委員の1名が反対して合意できなかったそうだ。反対した委員とは、日本地質学会の会長で東北大の先生だという。専門は岩石の分類であり、地震の専門家では全くないのだが、地震・津波分野の審査を自信を持って判断しているという。
まあ、ぶっちゃけて言うとだな、この日本地質学会の会長さんは、地団研(ちだんけん)の重要メンバーなのである。だから、原発の再稼働に反対し続けるのである。
地団研とは、地学団体研究会という組織の略称である。地団研とは単なる学界ではなく、共産主義を信じる地学研究者が集まった組織である。井尻正治(いじりしょうじ)という、ナウマンゾウの発掘で有名な学者がいた。井尻はあの武谷三男、坂田昌一と並ぶ、理科系左翼学者のカリスマの一人であり、井尻をリーダーとして戦後に組織されたのが地団研である。
地団研とは、かつては民科(みんか、民主主義科学者協会の略称)の一部会でもあったが、1955年に民科が分解した後も、独立組織として活動を継続している。
現在の大規模地震の発生メカニズムであるプレートテクトニクス理論を、地団研は執拗に否定し続けている。プレートテクトニクスは、西側国家で提案された帝国主義的な理論であり、旧ソビエトで提唱された地向斜造山論の方が正しい、と、ひたすらに言い張っているのが地団研である。学術議論に政治思想を持ち込むのが地団研である。
そんな組織の重要人物が、規制委員のメンバーにいるのだから、絶対に議論がまとまる筈など無いのである。日本の原発の運転には執拗に反対し続ける地団研であるが、ロシアや中国で稼働する原発には、全く抗議の声を上げないのも地団研である。
これ以上は、もう言わん。
最初から話にならんよ、こんなもん。理屈の話じゃないけんね。
(引用始め)
原発「40年ルール」→60年超案、委員1人が反対 原子力規制委
2/8(水) 18:17配信 毎日新聞
原発の運転期間を原則40年、最長60年とする「40年ルール」を改め60年超の運転を可能にする改正制度の骨子案について、8日の原子力規制委員会の定例会で審議があり、5人の委員のうち石渡明(いしわたり・あきら)委員が反対を表明した。この日、骨子を決める予定だったが、山中伸介委員長は多数決による議決を避けて、来週臨時会を開き改めて議論することにした。
政府の原発運転延長方針に対応して規制委は、運転開始から30年を超える原発について最大10年ごとに劣化状況や安全性を審査して、以降の運転を認可する新規制制度の骨子案を昨年策定した。この日は、意見公募で1749人・団体から寄せられた意見と、それへの規制委の回答について議論。山中委員長が「骨子案を了承してよろしいか」と意見を求めると、石渡委員が「非常に重要なことで、採決すべきだ」と発言した。
採決したところ、他の委員が賛成する中、石渡委員は「運転期間(の規制)を法律から落とすことになり、安全側への改変とは言えない」と述べた。また、政府の運転延長案は規制委の審査などで停止した期間分だけ運転期間を延長できる仕組みのため、審査に時間を要するほど古い原発を動かすことになる点が、矛盾を意味する「二律背反になってしまう」などと指摘。骨子案への反対を表明した。石渡委員は東北大教授などを務めた地質学者。2014年9月から委員を務め、地震・津波分野の審査を主に担当している。
規制委は、8日に骨子を決め、それを基に40年ルールを削除して新規制制度を加えた原子炉等規制法の条文案を作成し、15日の定例会で議論する予定だった。山中委員長は会合後の記者会見で「(石渡委員が)誤解されている部分もある。もう少し議論したい」と述べた。【吉田卓矢】
(引用終わり)
相田英男 拝
相田です。
細かくコメントを書くとシンドイので、忘備録程度とします。記事の日本語が回りくどすぎて、内容が大変わかりにくい。が、政府が核融合技術を積極的に「後押しする方針を決めた」、という訳でも無いようだ。組織の名称が「核融合産業協議会(仮)」となっている。「産業振興会」ではなく、「産業協議会」である。しかも(仮)までついている。
まあ、うるさく騒ぐ連中がいるから、どの程度の実力か、下調べしながら話だけまずは聞いてやるか、というスタンスらしい。核融合にはこれまで、旧文部省が長い間、ダマされ続けた歴史がある。なので、政府もさすがにすぐさま飛びつくような、間抜けな対応はしないのだろう。
しかしまあ、極めて古典的な詐欺の手法が繰り返されているのに、疑わない連中が大勢いるのよなあ。世代が変わると、痛い思いを経験した担当者達がいなくなるので、同じ失敗を繰り返すのだろう。
話は単純で、核融合技術を産業化するならば、D-T反応による装置で、安価にメンテナンス可能な、超高真空を維持できる、大型リング構造体が作れるかを証明させれば良い。材料は何だ?316ステンレス鋼か?それとも低放射化バナジウム合金か?
あと、D-T反応では絶対に上手くいく訳ないので、D-D反応炉、He3-He3反応炉が、いつ実用化出来るのかを、説明させれば良い。そしたら、「AIを使った最新の電磁場解析手法で、あと30年くらいで見通しが立ちます」とかの、まことしやかなウソを並べるんだろうな。
そこまでしてアブク銭が欲しいのかね?欲しいんだろうな。私もお金は欲しいからね。
(引用始め)
「核融合」産業化へ、公的補助で民間参入後押しも
2/2(木) 10:10配信
「核融合産業協議会(仮)」設立へ
政府は「核融合産業協議会(仮)」を設立する方針を固めた。国際熱核融合実験炉(イーター)などで培った技術を生かし、核融合産業のサプライチェーン(供給網)構築を目指す。量子科学技術研究開発機構(QST)を中心に民間企業の技術を結集。産学官の連携体制を構築する。公的補助などで民間の参入やスタートアップの育成を後押しする。
このほど核融合発電の国家戦略の骨子案を取りまとめた。核融合産業の予見性を高めるため、発電実証時期を早期に明確化する。産業ニーズを可視化するため、技術成熟度を記載した核融合発電に関する技術マップなどを作成し、経済安全保障の視点も踏まえて取り組むことなどを盛り込んだ。
また、産官学の有識者などが参加する核融合エネルギーフォーラムを発展的に改組し、産業化に向けた議論を活発化させる方針。スタートアップを含めた民間企業の保有する技術シーズと産業ニーズのギャップを埋める支援を行う。
1月30日に開いた有識者会議では、核融合開発を推進するには現在の2倍程度の人員が必要だとする意見が出たほか、核融合炉を運転する人材確保・育成も重要になると指摘があった。こうした意見を踏まえ、3月にも国家戦略を策定する。
核融合発電は発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない脱炭素エネルギーとして期待される。近年は米国や英国、中国が独自に核融合戦略を打ち出すなど、各国が産業化に力を入れ始めている。
日刊工業新聞
(引用終わり)
相田です。
以下に引用する文章の筆者は、原発を積極推進する体制派の技術評論家として、広く知られている。しかし引用文は、筆者の本業の原子力の評論ではない。筆者は東工大の先生なのだが、東工大と東京医科歯科大が合併する件について、考えを述べている。読んでいて私は思う処があった。申し訳ないが、全文引用させてもらう。
引用文には、「英語のサイエンス(science)の原語は、ギリシャ語のscientica で、知識の意味である。(中略)さらに広義には、体系化された知識(knowledge)の集まり全体を意味する。」と、ある。副島先生の読者には自明であるが、この内容は、副島先生が30年以上前から言っている「サイエンスとは学問のことである」の説明と、全く同じである。我々には「今さらなに言ってんの」という感じである。
筆者が文中で、坂田昌一を出して来たのも意外だった。筆者と同窓の京大出身とはいえ、坂田は、筆者達(私も含むのだが)の原子力推進派が忌み嫌う、左翼科学者の筆頭だ。赤色物理学のリーダーそのものだ。最も偉大な共産党員の自然科学者が、坂田だ。筆者は、その坂田を持ち出して、肯定的に持ち上げている。
以前に筆者は、旧日本原子力研究所の化学研究者で、共産党の活動家でもあった中島篤之介(なかじまとくのすけ、公安調査庁がマークしていた重要人物)の名を引用して、「彼ら左翼系活動家のせいで、原子力が推進できない」と批判していた。それを思い返すと、この筆者の文章は、私にはなかなか趣き深い内容である。
坂田、中島共に、かつては日本学術会議の議員であった。共に、学術会議員としての積極的な活動でも知られる。学術会議に関しては、先の菅総理時代の騒動の際には、保守派の論客は総じて、「左翼の巣窟となっている学術会議など即刻廃止せよ」と、息巻いていた。保守派の一人である筆者も、「学術会議など潰してしまえ」と、明言したかどうかは、私には不明だ。が、学術会議を擁護する姿勢では無かった、と、記憶する。
学術会議については、そもそもが、誰もが知らない、もしくは、忘れてしまった事実がある。戦後に日本学術会議が成立する過程で、積極的に設立を推進したのは、左翼ではなく、茅誠司、嵯峨根遼吉、兼重勘九郎などの、東大の体制派の科学者達だったのだ。戦前・戦中に軍部主導で推進された科学(技術)研究のあり方には、数々の問題があった。それが要因のひとつとなり、日本は戦争に負けた。東大の学者達は、皆そのように認識していた。なので、科学者自身の意向に沿った学術行政を行う場として、東大の学者達は、日本学術会議を作ったのだ。ケリーという、アメリカ人物理学者の後押しがあったにせよ、だ。
しかし、学者達自身の直接選挙による会員の選出という、「民主的」なルールが適用された結果、立ち上げに尽力した東大の学者の多くが落選し、左翼学者ばかりが当選する、皮肉な事態となった。そして、今に至っている。その事実を私は否定はしない。
さて、筆者は引用文の中で、文科省の方針が歪んでおり、勤務先の東工大が妙な名称に変わることを嘆いている。しかし、このような科学行政の歪みを正すための場とは、どのような組織であろうか?それこそが、日本学術会議に期待された、重要な役割ではなかったのだろうか?
先の学術会議の会員排除問題では、「政府の方針に逆らう左翼学者共はケシカラン」と、保守派は騒ぎ立てた。そのような風潮が続く結果、政府に従順な、日和見的な学者ばかりが重用される事態になったのではないのか?自身の論文数や給料の心配に汲々となり、「科学者の社会的役割」などについて、眼中にない学者ばかりが残ったのではないのか?
一般庶民に親しみ易い、軽い名前の大学で、何が問題だと言うのか?受験生が増えさえすれば、それで十分であろう。軽い名前の方が「政府にウケが良い」と、大学の幹部達が会議を重ねた末に出した結論だ。これこそが「最早、学術会議などは必要ない」と吹聴する、保守派連中の望んだ世の中だ。甘んじて受け入れるべきだろう。
遡ること80年前に、当時の科学者達は筆者と全く同じことを嘆いていた。それを正すために、学術会議は作られたのだ。その「本来の理念」から、皆が目をそらし続けるから、問題が解決しないのではないか?全く同じ様相が、繰り返して現れることに、何故気付かないのか?別に、科学者達だけの問題では無いのだが。
なので私は、歴史を学ぶことに価値がある、と、強く思う。しかし、「日本の科学が自然死する」などと、見当違いのボケた発言を振りまく「歴史学者」が、賞賛されてはびこっている。そんな世の中では、問題の解決からはホド遠い、と、私も嘆く。
(引用始め)
東工大と東京医科歯科大の統合:新名称「東京科学大」に思う
澤田 哲生
2023.01.21 06:40
キマイラ大学
もしかすると、そういう名称になるかもしれない。しかし、それだけはやめといたほうが良いと思ってきた。東京科学大学のことである。東京工業医科歯科大学の方が、よほどマシではないか。
そもそもが生い立ちの異なる大学を、無理やり繋ぎ合わせたキマイラなのであるから、キマイラらしく"工業"と"医科・歯科"を素直に接合したほうがマシだろう。キマイラとは、古代ギリシャ神話に登場する合成生物である。例えば、頭部はライオン、胴部は山羊、後尾は蛇というようなものである。"工業"と"医科・歯科"を併せて科学と称することで、却って矮小化したように感じる。
工業には、細分化された知を集約・統合して、実践的ものづくりによって人々のより良い生活に資するという、崇高な精神がある。医は、ヒトという小宇宙を相手に統合された知がなければ、成り立たない。しかるに"科学"とは単なる分科の学問にすぎない。科学という語彙は、西洋由来の概念であるscienceのとんでもない誤訳なのである。
科学とScience
まず日本語の"科学"は、分科の学問または科挙の学問の意味である。明治にサイエンス(science)という英語に出会った西周(江戸時代後期から明治時代初期の啓蒙思想家)が、これを"科学"と訳してしまったのである。もう取り返しはつかない。短慮という他ない。蒙を啓くべき思想家にあって、実に蒙昧たるべしという他ない。科学=分科の学問とscienceの間には致命的な違いがあるのである。
英語のサイエンス(science)の原語は、ギリシャ語のscientica で、知識の意味である。サイエンスは狭義には、観察や実験によって確かめられた事実であり、検証や追試が可能な自然科学を指すが、それを広げて、科学的方法論に基づいて得られたあらゆる知識を指す。そして、さらに広義には、体系化された知識(knowledge)の集まり全体を意味する。
つまりscienceにおいては、分科の学問を構成する○○科と□□科の境界領域にあって、相互を関係付けている何物かが、より重要な意味を持ってくる――それこそが、この宇宙の根本的な仕組みである、と言って良い。
科学は分科の学問であるから、専門知識を極めることを重視するが、専門知識間の関係性にはマインドが及ばない。当然ながら「理科」も「文科」も、ともにサイエンスの一部分に過ぎないが、本来両者は相補的関係をもって、知識間の関係性にもっと心血をそそぐべきであろう。しかし、「科学」と表意した途端に、そのマインドが致命的に欠落して行ってしまうのである。
明治の頃に『学問のすすめ』という書も出たが、これは分科の学問のすすめのことをいう。つまり、分化された分野に精通した専門家という人材が、当時は必要だったのである。いわゆる専門性を極めることが、善であったのである。近代化を急いだ当時の国情が、背景にあった。
専門バカ
私は約30年前、ドイツから帰国して東工大に職を得たが、当時の部門の長に「専門性を極めろ、さもなければ将来(職のステップアップ)はない」と、諭された。その時大いに違和感を感じた。大学の意義は、専門性を極めることはもちろんだが、むしろその統合がもっと重要なのではないか。オレに専門バカになれというのか・・・と。
2011年の東日本大震災・福島第一原子力発電所事故以降、私はTV新聞WEBなどのメディアに頻出してきた。その都度「専門は何ですか?」と聞かれる。「単なる専門家じゃあないんだけどなあ、そんなに狭い専門分野に閉じ込めたいのぉ?」と内心思いながらも、「原子核工学にでもし、といてください」と答えることにしてきた。
科学帝国主義時代
科学者といえば、まずは物理学者という時代があった。日本でいえば、日本人ノーベル賞第一号(物理学賞)の湯川秀樹。世界でいえば、アルバート・アインシュタイン。当時は万事が物理で解明されるべし、という幻想があった。
そのような風潮をして、哲学者オルテガは「物理帝国主義」と、1923年の彼の哲学講義の中で批判した。昨今の若者は、湯川秀樹といってもピンとこないらしいが、アインシュタインはお笑い芸人の名称でもあるので、その名前ぐらいは知れ渡っているのだろう。
湯川の愛弟子である坂田昌一は、仲間の一団と訪中し毛沢東に謁見した際に、「毛沢東主義(共産主義のひとつ)の理論的正当性は、素粒子物理学によって証明されるでしょう」と息巻いたという説がある――その真偽のほどは定かではないが、弁証法に精通していた坂田らしいエピソードだと思う。
近頃大学の文系の学問分野は、あまり役に立っていないのではないか――今後GX時代に向けて、IT人材が大いに不足するので、大学の文系を"理転"すべし、というような馬鹿げた論調が、政府筋から発信されるようになってきていた。
そしてついに先だって、『文部科学省は、デジタルや脱炭素など成長分野の人材を育成する理工農系の学部を増やすため、私立大と公立大を対象に約250学部の新設や理系への学部転換を支援する方針を固めた。今年度創設した3000億円の基金を活用し、今後10年かけ、文系学部の多い私大を理系に学部再編するよう促す構想だ』(読売新聞)と報じられた。気でも狂ったのか!?
これって、科学帝国主義時代の幕開け? 科学専門バカを量産するのか・・。東京科学大学がその急先鋒にならないことを、願うばかりである。
1970年に没した坂田昌一は、当時の明治生まれの知識人らしく、いわゆる文・理に精通していたので、以下の名言を遺している。
「イノベーションは必ず学問の境界領域で起こります」「創造の領域は境界にあることは間違いありません」
もって瞑すべし。東京科学大学は東京境界領域大学としたほうが、日本のみならず、世界の将来に貢献できるのではないか。
(引用終わり)
相田英男 拝
相田です。
核融合の話である。アメリカのローレンス・リバモア研究所に、国立点火施設「NIF」という実験設備がある。米エネルギー省によると、この設備を使って、核融合の実験で「歴史に残る成果」が達成されたという。アメリカ政府の公式発表のため、それなりのニュースが流されている。
以下の引用は、それを受けた、とあるジャーナリストのコメントである。一般の方々の素朴な感想だろう。私ごとき一技術屋では名前しか知らない研究機関を、数多く訪問して取材されている。それでも、核融合についての認識は、以下のような程度か、こんなものなのだろうな。
あちらこちらで書かれているように、「核融合と核分裂(原子力)とは違う」と思われているらしい。しかし、核融合と原発の核分裂は、同じである。私は断言する。核融合も核分裂も、エネルギーの根本は、物質の質量そのものである。質量を熱エネルギーに変換する事で、高熱を発生させるのだ。その高熱でお湯を沸かして、蒸気タービンを回して、発電するのだ。
エネルギーの根本は物質の質量である。質量自体がエネルギーの源だ。我々の身体も質量を持つ、超巨大なエネルギーの塊である。だから普段の生活で、危なくてしょうがない、などと、心配する必要はないのだが。
エネルギー源の根本は同じだ。違うのは、エネルギーを取り出すプロセスである。核分裂は、ウランなどの重たい原子核をぶち破る事で、質量をエネルギーに換える。対して核融合は、水素などの軽い原子核を溶かしてくっ付ける事で、エネルギーにする。これだけの違いだ。
なので、「核融合は核分裂と異なる仕組みなので、安全な発電方式だ」という説明は、全くのプロパガンダである。核融合炉の危険さは、原発(軽水炉)以上である。
以下の文章にあるようにNIFというのは、192本の巨大レーザー装置を使って、燃料ペレットに高熱を集中させる仕組みである。超強力なレーザーを200機も使って実験するのだ。こんなものが、平和利用のための、クリーンな発電設備である筈が無いだろう。少し頭で考えたら、普通の人でもわかるだろう。
こんな発表は、アメリカの軍産複合体の、めくらましの、公式プロパガンダでしかない。抜け抜けと、よく言えたものだ、と、呆れざるを得ない。核融合炉こそが「ウソ技術」の筆頭である。
(引用始め)
夢の核融合エネルギー
2022.12.17
「地上で太陽を作り出す」
簡単には言葉の意味が理解できないが、米国の国立点火施設「NIF」があるローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)を、最初に訪問したのはもう30年になる。数百メートルにも渡る金属箱のようなものが横たわっていたのを覚えている。レーザーが旅するものだと言われた。当時も今も、全体では野球場くらいの巨大施設だ。
それからさらにその30年前、つまり今日からいうと60年くらい気が長い基礎研究が継続されている。筆者の母校、カリフォルニア大学バークレー校で、「プルトニウム」を発見したグレン・シーボーグ博士の長時間対談をやった頃だ。シーボ―グ博士にも「NIFも取材したら」と言われた。
(中略)
核を利用する兵器には大きく2種類ある。「核分裂」と「核融合」だ。核分裂兵器はプルトニウム(PU)やウラン(U)元素の原子核(陽子・中性子)を利用しており、プルトニウムはナガサキ、ウランはヒロシマで使われた。
核分裂の際、放出される中性子が別の原子核が吸収してさらに分裂、それが継続して分裂がドミノ倒しのように次から次に起きる。分裂がごく限られた時間内に一定の臨界量に達すると、連鎖反応が持続、莫大なエネルギーになり、それが核(分裂)爆弾になる。
原子力発電の場合は、原子炉の中で前述のようにウランが核分裂をする時、臨界状態を制御・維持、その熱で水を沸かして水蒸気を作り、それでタービンを回して発電する。
「核分裂」とは全く違う、もう1つの「核融合」。核融合だけを利用した爆弾は、現時点ではほぼ不可能とされる。重水素と三重水素を、熱で加速して核融合させる。高温・高圧がまずは必要だ。それを作り出すために、上記の核分裂爆弾、原爆を「起爆剤」として使う。
核分裂爆弾と比べると、水爆は1000倍くらいの威力があるという。
「核融合」は「核分裂」と共に、制御は大変、放射性物質の扱いも難しいが、その莫大なエネルギーを上手く使おうという考えは、当然、大昔から存在する。太陽が常に明るく輝いている原動力。主に重水素と3重水素の2つの軽い原子核が、重いヘリウムと中性子に変わる時に出る莫大なエネルギーだ。原子の中心にある原子核が衝突している部分が太陽に似ている。
全て上手くいけば、脱炭素、そして一方の「核分裂」利用の原発の危険性から逃れる可能性がある。日本はEUと組んで、茨木県に実験的な施設を建設、試験運転を始めるという。やはり将来を考えているフランスは、磁力利用の核融合炉で、今回話題を呼んだ米国の高出力レーザー利用とは、全く違う。
これも30年近く前だが、筆者は全米にある「国立研究所」全ての訪問取材をした。ライフワークの原爆関連取材だ。ヒロシマ原爆を作ったロスアラモス、双璧のリバモア(LLNL)、サンデイア、サバンナリヴァー、オークリッジY12、ハンフォード、アルゴンヌ、ブルックヘイブン、フェルミなどなど、フクシマ事故取材もあり、複数回取材した。ロスアラモスでは、内部を深く複数回取材した唯一の日本人ジャーナリストと言われた。国家核安全保障局(NNSA)はその窓口で米エネルギー省内でも、核関連を全て仕切っている。
そこの友人がつい数日前、教えてくれた。半世紀以上、努力している核融合炉NIFの実験で大きな前進があったというものだ。訪問した30年くらい前には、夢物語で、いつ可能になるか、実験が成功するか不明と言われていたが、今回の成功は、小さな一歩、だが同時に大きな一歩とも言える。
実験では、192本の巨大レーザーで凍結水素入りの容器を破壊した。放出したエネルギーと比べて爆破により得られたエネルギーが大きかった。つまり、差引勘定でクリーンエネルギーが生成できた。
しかし実用にはまだまだ大変な道のりがあると、NNSAの友人に言われた。だが貴重な一歩。米国の基礎リサ―チ、基礎研究は日本では想像できないほどのスケールがある。今回の核融合の研究だけでなく他の分野でも、長時間やっても失敗の可能性もあることもやっている。失敗を恐れていては、重要な基礎研究などできないのだ。
野口 修司
国際ジャーナリスト
国際ジャーナリスト(在米40数年)。東京生まれ。UC Berkeley 修士号。安全保障、国際テロ、原爆、原発、日米関係、国際金融を中心に世界30数ケ国・現地取材を行う。ビル・ゲイツ、スノーデン、アサンジへの世界的スクープインタビューも。米国の調査報道記者賞。国際エミー賞審査員2回。
(引用終わり)
相田英男 拝
ぶっちゃけ、どうでもいいのだが、書いておこう。以下の筆者は、私の独断の決めつけによると、統一教会の信者である。文章の内容がモロに、勝共連合の方々の、ステレオタイプの原発推進文章の、そのままである。彼らムーニーの、原発推進賛成の先駆けは、なんと言っても福田信之(ふくだのぶゆき)大先生に由来している。物理学者である福田信之の先生は、あの朝永振一郎と武谷三男である。物凄い優秀な学者だったのだ、福田は。
しかし、福田は大恩人だった筈の武谷三男を、米国フルブライト留学から帰国した後に、統一協会に帰依する事で裏切った。その後の福田は、東京教育大学の筑波への移転騒ぎで、反対派の学生達の無茶苦茶大勢を(総人数は不明らしい)、退学に追い込んだり、中曽根に掛けあって、筑波の田舎に物理実験用の大型加速器を誘致したり、と、良くも悪くも大活躍だった。
一方の武谷は、共産党系の研究者達と連携して、政府が強引に進める(ように見えた)原発建設に、反対する主張を繰り広げた。日本の反原発活動家の、基本的な主張は、武谷が中心となり数名で執筆された、岩波新書の「原子力発電」という本の中で、ほぼ出し尽くされている。武谷以降の活動家は、この本の文章をテンプレートに使って、ただただ繰り返すだけである。「便所のないマンション」という用語も、この本の最後に武谷が書いたのが始まりだ。「便所」の部分が、品の良い「トイレ」に、あとから変えられているが。
でまあ、である。以下の文を読むと、「ああ、福田がいかにも言いそうな内容だ」という感慨のみが、私の脳内に込み上げてくる。原発推進派と反対派の論争を眺めると、結局の処は、福田と武谷の師弟コンビの発言を、それぞれコピーして、ひたすら繰り返すだけであるのに気づく。「みんな、よく頑張るね」と、感心するしかない。
以下の筆者を含めて、統一協会系の原発推進派が、大きく勘違いしている点が、一つある。福島原発事故の後で、原発の再稼働が遅々として進まない最大の理由は、筆者が記すような共産党の反対のせいではない。そうではなくて、死んだ元総理の安倍晋三にある、という事実だ。
安倍が総理の時代に、側近として重用され安倍を支えたのは、経済産業省系の大物官僚たちだった。経済産業省と東電を始めとする電力会社は、実は物凄く仲が悪いのだ。経済産業省の役人達は、太平洋戦争の前から、民間の電力会社を全部潰して、電力ネットワークと利権の全てを、国家で管理する事を目標に掲げている。なので、福島原発事故は、経済産業省の役人達にとって、待ってましたの大チャンスが転がり込んで来たのだ。
安倍晋三が総理だった間は、経済産業省は東電を、ここぞとばかりに弱らせるために、原発再稼働をサボタージュし続けた。だから、総理が変わった今頃になって、新設するとか、40年寿命を撤廃する、などの機運が出て来たのだ。ちなみにだが、40年過ぎてどれだけ使っても、「古いから原発が壊れる」事などないよ。
なので、であるが、「安倍総理は偉かった」と称えながらも、「原発を早く動かせ」という、統一協会系推進派の主張に、私は大きな違和感を感じるのだ。
私が間違っているのなら、誰か言ってくれ。
原発をさっさと動かして、早く電気を起こすべきだ、と、私もかねがね思っているよ。
(引用始め)
原子力を強化せよ(屋山 太郎)
今、世界のエネルギーや原料の供給網に劇的な変化が起きようとしている。例えばドイツは、これまで頼ってきたロシアの天然ガス市場から締め出されようとしている。同じくロシア産天然ガスに頼る日本には、日露友好交渉を行って現状を守れという意見もある。
しかしロシアはガスをドイツ叩きの絶好の材料と見ている。日本叩きにも当然利用するはずだ。日米を含む西側自由主義国対ロシア・中国の関係は、今後の国際秩序の大枠を形成するものだ。エネルギーの供給網も、この枠組みに沿って落ち着いていかざるを得ない。
国際NGO「気候行動ネットワーク」は11月9日、気候変動対策に後ろ向きな国に贈る「化石賞」に日本を選んだと発表した。今年で3回連続の受賞である。化石燃料の関連事業に巨額の公共投資をしたこと、岸田首相がCOP27(国連気候変動枠組み条約会議)への参加を見送ったことなどを理由に挙げた。
「化石賞」の受賞は国際的には恥ずかしいことだが、岸田首相はその恥を一挙に覆そうという提案を発表した。原発運転期間の上限60年の撤廃は、政権が長年温めてきたアイデアだったが、これを実現することになった。
これまで日本の科学技術の世界は、左翼の影響にどっぷり浸ってきた。日本学術会議は設立当初から共産党の影響力にさらされ、80年代には解体論が叫ばれていた。それから少しは浄化されたのかと思っていたら、菅前首相による会員候補6名の任命拒否事件があった。
ごく最近になって日本学術会議は漸く、軍事と民生双方で研究できる「デュアル・ユース(両用)」の科学技術研究を容認する方針を打ち出したが、時すでに遅し。軍事科学技術は諸外国に比べてすでに半世紀遅れた。共産党が特に原子力利用への反対に力を入れてきたのは、反対が中国、ロシアに対する協力に通じたからだ。原子力に関する規制については、あらゆる面に亘って厳格さを要求してきた。
そうした運動の結果、福島第一原発のような事故が起きると、原子炉等規制法は改定され、規制がいたずらに厳しくされた。運転期間の上限を原則40年に定め、規制委員会が認めれば1回に限り最長で20年延長できることになった。しかし福島原発の事故で上限を40年間に決める理由は何なのか。規制でいたずらに押さえつける態度にしか見えない。
米国は稼働開始から40年以降は、安全審査をクリアしさえすれば20年以内の延長が何度でも可能だ。英国・フランスには運転期間の制限はなく、10年毎の安全審査を実施することになっている。日本がこれからやるべきは最長60年の運転期間上限を撤廃する法改正だ。
今年6月時点で、フランスの原子力は全電源の約62%を占めている。米国は15.8%(7月)。日本は3.1%だ(国際エネルギー機関データ)。これからの日本は、原子力エネルギーの割合を圧倒的に増やして主力電源を安定させ、電気料金も世界最低レベルを目指していってもらいたい。
(令和4年11月16日付静岡新聞『論壇』より転載)
(引用終わり)
相田英男 拝
核融合は手の届く所にある 設計、材料、制御…主要な課題に解決の見通し 何としても日本の手でやり遂げ新たな基幹産業に
夕刊フジ 9/22(木) 17:00配信
【官製エネルギー危機】
たゆまぬ技術開発により、太陽のエネルギーを再現する「核融合」は今や夢物語などではなく、手の届く技術になった。設計、材料、制御などの主要な課題はすでに解決の見通しが立っている。
→ 少なくとも、材料の見通しは全く立っとらんぞ。どうやって、高速中性子のカスケード損傷を防ぐのだ?真空容器にクラックが出来て、溶接補修しようとすると、核変換で出来たヘリウムのバブルが、溶接の加熱ですぐに集まって、クラックがどんどん広がるぞ。壊れても補修も出来んとは、どうするつもりなんかね?
いま国際協力で、「核融合実験炉(ITER=イーター)」の建設がフランスで進んでいる。完成は2020年代後半で、35年には、普通にみる火力発電所と同等の出力に達する予定だ。この建設コストは、2・5兆円前後とされている。また実用化の前に、もう1つ、同じぐらい金額をかけて実証炉を造る必要がある。
→そんな金があるなら、2500億円で最新火力発電所を、10箇所作るべきではないのか?
そんなにかかるのか、という心配はごもっともである。だがこれは、幾つもの方法を試し性能を確認する「実験」をするためのコストだ。
→実験せんでも、結果は見えとるとやなかとか?
実用段階になれば、発電コストは、既存の原子力発電と比べても全く遜色がないと推計されている。高くつくのは実験段階だけの話だ。実用段階になれば、安価で、CO2(二酸化炭素)を出さず、無尽蔵な発電技術を人類は手にすることになる。
→壊れたらロクに修理もできない設備を、一体どうやって安価に運用するつもりなのだ?
また核融合炉は原理的に安全だ。既存の原子炉で用いる「核分裂」反応は、起こすのは簡単だが、止めるのに失敗すると、炉心溶融や核爆発といった過酷事故が起き得る。「核融合」はその逆で、起こすのは難しいが、何かあるとすぐ反応が止まってしまうので安全になる。
→モノは言いようではないが、そもそも今の技術では、ちょっとプラズマの制御が乱れたら、すぐに核融合反応が停止するのではないのか?安全とか、議論する以前の問題ではないのか?
いま温暖化対策として、日本は毎年数兆円といった莫大(ばくだい)な費用をかけている。だがそれよりも、核融合発電に集中投資することで、実現を前倒しすべきではないか。
→これまでも、どれだけ集中投資しようが、全く前に進まかったのでは無いのか?
なお、新しいアイデアによって小型の核融合炉が可能になり、数年先には実用化できる、といった報道が散見される。だが、残念ながら、それほど事は簡単ではない。
→ここだけは本当。
核融合には、超電導コイル、プラズマ、廃熱部、ブランケットといった要素技術があり、このすべてを組み合わせると必然的に普通の原子力発電所ぐらいの大型のものになる。新しいアイデアというのは、大抵はこの一部の改善案にとどまっており、大型の核融合炉が不要になるということはない。むしろそれらのアイデアは、大型炉を改良してゆくためにこそ有益になる。
→こんな開発は、50年も前からずーーーーーーっと、続けて来たのではないのか?原研那珂(JT-60)とか、筑波大(ガンマ10)とか、名大(プラズマ研)とか、京大(ヘリオトロン)とか、核融合科学研究所(LHD、ラージヘリカルデバイス、岐阜県土岐市)とか、阪大(激光)とか、九大(トライアム)とかで。その成果の、一体何が、世の中の役に立っているのだ?わかるように、ハッキリと教えてくれや。
宇宙開発における民間企業「スペースX」の成功は、NASA(米航空宇宙局)のアポロ計画やスペースシャトル計画で開発した技術があったからこそ実現した。核融合開発では、ITERなどの大型の実験炉が、宇宙開発でのアポロ計画にあたる。これは予算規模が大きく時間もかかることから、国家が主導するほかない。
→とりあえず、これからしばらくは、中国に任せようや。
核融合ができれば、温暖化問題もエネルギー問題もすべて解決する。これは何としても日本の手でやり遂げ、新たな基幹産業としたいものだ。
→全くそうは思えんとやけど
(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・杉山大志)
(矢印書き込み・相田英男)=おわり
相田英男 拝
相田です。
出張に出る際に、書店で見掛けて購入した。帰るまでに読了出来た。電車中で読みながら、途中で皮肉な笑いが幾度となく込み上げて来て、こらえるのに苦労した。
『GE帝国盛衰史 「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか』(ダイヤモンド社刊、訳:御立英史、2022年7月12日初版発行)
私には待ちに待った本だった。GEの凋落について、一時期の私は頭が妙にハイになって、この板に何度も英語の記事を挙げていた。しかし、断片的にしかアメリカの事情がわからないので、GEの凋落について整理した文章を、書き始めてもいた。でも、本書が出てしまえば、最早私の出る幕はない。
この本の内容は私にとって非常に重い。「なるほど、そういう事だったのか」と納得する記述が、随所に出て来る。当たり前だが、こんな内容の本を、私が書ける筈がない。
私が社会で職を得て以来、30年以上も考え続けて納得できなかった疑問の答えが、本書には全て書かれてある。私の人生にとっての、最大の経済関係書籍である。
この本の内容について、日本人の「識者」とやらが、あれやこれやとコメントするのだろう。まとめてみんな、お前らは全て、大バカのアホ連中である。お前ら一体、これまでGEについて、どのように語ってきたというのだ?!?「日本メーカーは遅れている。その点GEはさすがだ、素晴らしい」と、ひたすらに繰り返してきたのではないか。その、今までお前らが積み重ねて来た、あまりにも莫大な、白々しいコメントの山脈について、どのように責任を取ってくれるのだ!?!ええ!!、日本経済新聞よ。ついでに。広瀬隆よ。
あのなあ広瀬隆よ。あんたなあ、死ぬ前に本書の感想文を必ず書けよな。俺がしっかりと見届けてやるからな。何なら口述筆記でもいいぜ。今ならスマホに話しかけるだけで、簡単に文章ができるだろうが。
本書の内容は、人間社会の底知れない闇の存在を私に感じさせる。資本主義の本質とは、所詮は、このようなものなのであろうか?偉そうな能書きばかり語っても、全ては、その場しのぎのデマカセに過ぎないのか?
本書の記述からは、答えはYESだ。
本書について、まだまだ言いたい事が続くのだが、キリがないので今日はここまで。
相田英男 拝
相田です
長い引用の前にちょこっとコメントするだけなので、恐縮してはいるのだが、やっぱし「これはないよ」と、読みながら思った。世界中で資源高のインフレが進みつつある。資源輸入国の日本はエネルギー政策の転換を急ぐべきだ。というまでなら、まだ許せる。しかし、その結論が「具体的に政府は、洋上風力など再生可能エネルギーの、利用増加に集中しなければならない」というのは、如何なものか?
洋上の大型風力発電装置に必要な、発電機やら、大型歯車やら、高純度の銅線やらアルミ導線やらの、素材や部品の価格も、これからバンバン高騰するのではないのか?軸受のベアリングも、大型風力発電の場合は特注品になる。自動車のベアリングのように、たくさん作って量産効果で価格が低下する、などというオメデタイ事は、風車の場合は起こり得ない。
ちなみにわかっているだろうが、風車の建設には、500トンと超える重量級のクレーンを現地まで持って行かなければならない。洋上ならば、大柄工事船舶で基礎工事をやってから、海の上に高いクレーンを立てるのだ。インフレが進むこれからの時代に、どれだけコストアップになるのか、少しは考えてはみたのか?
考えても想像は付かんか?
私なら、さっさと原発を再稼働させてバンバン発電させて、十分な電力を先ずは確保するけどね。風力発電システムを日本の会社が作らなくなった本当の理由を、筆者達は知るまい。
その内に書くよ、池田某に先を越される前に(ダメかもしれんが)。
(引用始め)
「日本は電力すら賄えなくなる」未曾有の物価上昇に備えて岸田政権が今すぐやるべきこと
3/15(火) 9:16配信 プレジデントオンライン
■輸入頼みの日本が直面する厳しい現実
依然として、ウクライナで激しい戦闘が続いている。それによって、世界経済の構造が大きく変わりそうだ。1990年代初頭以降、世界経済は国境の垣根が下がる=グローバル化の流れを歩んできた。それが、ウクライナ危機によって、ロシア対西欧諸国の間で分断=ブロック化が進むことになりそうだ。米英やドイツなどのEU加盟国はロシアへの金融制裁に加え、原油などの輸入を停止あるいは削減する。
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3月7日には、需給が逼迫(ひっぱく)するとの懸念から原油の先物価格が急騰した。ブロック化へ世界経済のパラダイムが変化することで、自由にモノを貿易することが難しくなる兆候が表れている。
グローバル化によって、世界に張り巡らされた供給網=サプライチェーンが遮断されはじめた。その結果、経済運営の効率性は低下し、世界的に経済成長率は低下するだろう。ロシアからの資源供給の減少によって、世界全体で構造的に物価も上昇しやすくなる。各国が緩和的な金融政策に頼った経済運営を続けることは難しくなる。
資源を輸入に頼るわが国は、かなり厳しい状況に直面する恐れがある。わが国は国全体でどのような対応策をとるべきかを真剣に考えなければならない。喫緊の課題は、経済安全保障の観点からエネルギー政策を強化することだ。やや長めの目線で考えると、経済の実力を高めなければならない。そのために、教育の強化や労働市場の改革を進めてより多くの人が新しい取り組みを進めることができる環境を目指さなければならない。そうした取り組みがどう進むかによって、わが国の将来が大きく変わるだろう。
■世界経済はグルーバル化から「ブロック化」へ
ウクライナ危機の発生によって、世界経済のパラダイムが変化する可能性が高まった。それは、グローバル化からブロック化へのシフトだ。1990年代初頭以降の世界経済では、ポーランドやハンガリーなどの東欧諸国が市場経済に仲間入りした。中国は改革開放路線をあゆみ、外資企業から製造技術を習得し、豊富かつ安価な労働力を武器に“世界の工場”としての地位を確立した。ロシアは天然ガスや原油、希少金属、小麦などの穀物の主要輸出国としての役割を発揮した。それによって、世界経済のグローバル化が加速した。
その状況下、米国など主要先進国は積極的な金融政策によって経済成長率の向上に取り組んだ。2000年9月の米ITショック(インテルの業績下方修正が米IT関連銘柄の株価を急落させた)や2008年9月のリーマンショックの発生によって一時的に成長率は低下したが、世界経済は基本的には低インフレと、緩やかな成長率の高まりを実現した。その背景には自由貿易の促進や海外直接投資の増加があった。
■「物価が上がりづらい経済構造」で起きたウクライナ危機
米国の企業は、高付加価値のソフトウエアなどの設計と開発に取り組んだ。製品の生産を新興国の企業が受託した。国際分業は加速し、先進国企業はコストが最も低い場所で高付加価値のモノを生産し、需要が豊富な市場で販売する体制を構築した。世界全体で経済運営の効率性は上昇し、物価が上がりづらい経済構造が整備された。
その状況下、内需が停滞するわが国では、長い期間にわたって日本銀行が超低金利政策など緩和的な金融政策を継続した。リーマンショック後は世界的に金融緩和策に依存する国が増えた。
しかし、ウクライナ危機によって欧米各国はプーチン政権下のロシアとの関係を断つ覚悟を強めている。ドイツの防衛予算増額は象徴的だ。西側諸国とロシアの分断は鮮明化するだろう。欧州やわが国は別の国からエネルギー資源などを、より高い価格で輸入しなければならなくなる。グローバルに張り巡らされた供給網が組み直され、そのコスト負担が企業の事業運営の効率性を低下させる。その結果、世界全体でGDP成長率は低下する可能性が高まっている。
■物価上昇は「ロシア原産」以外にも波及する
世界は、低インフレ環境から構造的な物価上昇へというパラダイムの変化にも直面しつつある。わが国は対応策を急がなければならない。3月7日のアジア時間の金融市場では“ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)”原油先物価格が1バレル当たり130ドル台に急騰した。その背景には、世界経済に対するロシアからの原油供給が減少し、需要を満たすことが難しくなるとの懸念急増があった。
今後、ロシアからの原油や天然ガス、木材、穀物、希少金属などの供給は減るだろう。供給が需要を下回り、価格は上昇する。高級食材と異なり、原油は日々の生活に欠かせない。高いからといって購入を我慢するわけにはいかない。また、新しい供給網の確立にはコストと時間がかかる。当面、世界全体で供給制約は深刻化するだろう。企業は増加するコストを販売価格に転嫁せざるをえなくなる。多くのモノの価格が上昇するだろう。
■岸田首相はエネルギー政策転換を急ぐべきだ
このようにブロック化によって世界経済ではコストプッシュ型のインフレが進みやすくなる。その場合、中央銀行にできることは限られる。通貨の価値を防衛するために利上げなどが行われたとしても、物価上昇率を2%程度に落ち着かせることは難しい。
場合によっては、経済成長率が低下してマイナス成長が続くと同時に、物価が上昇する展開もあるだろう。グローバル化に支えられた“低インフレと緩やかな成長”から、ブロック化による“構造的物価上昇と成長率低下”に、世界経済のパラダイムがシフトしはじめた可能性がある。
そうした展開に対応するために、目先、わが国は経済安全保障の観点からエネルギー政策の転換を急がなければならない。エネルギー政策の転換は一朝一夕には進まない。それだけに岸田政権は迅速に対応方針をまとめなければならない。具体的に政府は、洋上風力など再生可能エネルギーの利用増加に集中しなければならない。
エネルギーの安定供給は、国民が安心して、持続的に経済活動を送るために不可欠だ。また、安全保障体制の強化のために政府は米国との関係を基礎にしつつ、クアッド(日米豪印戦略対話)など多国間の連携も強化しなければならない。
(引用終わり)
真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
相田英男 拝
相田です。
エルピーダとは、DRAMという半導体の製造技術を残すために、日立、NEC、三菱電機などが集まって作られた会社なのは、今更私が説明するまでも無い。最近の半導体の価格高騰の中で、エルピーダの破綻の経緯について再び注目されている。その中でも、引用した著者の説明内容は白眉と言える。
政府の資金援助が足りないとか、巨額な設備投資に日本企業は耐えられない、などという、巷に流布される理由とは、実情は全く異なるらしい。全文の引用は避けるが、「坂本幸雄社長は無能である」と断定しているのは重要だ。坂本氏の評価がどうだ、という点ではない。巷で流布されている、経済評論家、技術評論家の考えが、全くもって独りよがりの、信頼の置けない内容である事が、白日の下に晒されている。これが重要だ。
要するに、巷の評論家の殆どは、信用にならんのよ、おそらくはどの分野でも。
(引用始め)
まだそんなことを言っているのか!間違いだらけの「エルピーダ破綻の原因」
3/6(日) 11:01配信 yahooニュース
■ 日経新聞の特集記事の「間違い」
坂本氏は、(1)「生き残っていれば、世界と戦えた」とか、(2)問題は「資金力だ」と発言したが、全く事実は異なる。調査結果で論じたように、異常なまでの高コスト体質のエルピーダが倒産したのは必然である。「坂本社長のエルピーダ」は淘汰されたのである。資金力の問題ではない。収益率の低さが問題であり、収益を出せない技術にこそ問題があり、そこに経営のメスを入れることができなかったことが致命傷になったのだ。
日経新聞の(3)「エルピーダの破綻劇は、官民が巨額投資を伴う長期戦に耐えられなくなった構図」というのも間違っている。繰り返すが、過剰技術で過剰品質をつくり、歩留り100%を目的にする、そのエルピーダの企業体質が問題だったのだ。
東京理科大大学院教授の若林氏の(4)「DRAMの技術や最終製品の動向を、当局や金融機関が十分に捉えられていなかった」や(5)「日米貿易摩擦の記憶が残る日本」などは、全く的外れな指摘だ。もっとエルピーダの技術の実態を見て発言してもらいたい。
萩生田経産相の(6)「世界の半導体産業の潮流を見極めることができず、適切で十分な政策を講じてこなかった」という発言もどうかしている。昨年(2021年)6月1日の衆議院の意見陳述でも述べたことであるが、経産省は呆れるほど「合弁、国プロ、コンソーシアムをやり続けた」のである(図5)。そして、全部失敗した。「経産省が出てきた時点でアウト」なのである。その反省をなぜしないのか?
(7)TSMCの誘致を奇貨として日本での産業基盤を強くするためには「「設備にしても開発にしても『カネ』と『ヒト』だ」という経産省の西川課長、『ヒト』を育成してからTSMCを誘致すべきではないのか? 順序があべこべだろう。そして、(8)「九州では人材育成の準備を急ぐ」というのは、あまりにも泥縄すぎるだろう。
筆者が日経新聞の特集記事を読んで、うんざりした理由が分かっていただけただろうか?
■ 「マイクロンになってよかった」という社員たち
坂本氏、日経新聞の記者、東京理科大大学院教授の若林氏、萩生田経産相、経産省の西川課長には、EE Times Japanの記事「『Micronになってよかった』という言葉の重さ」(2019年7月8日)を、目を見開いて読んでいただきたい。そして、「Micronになってよかった」という言葉の意味をよく考えていただきたい。
筆者も、2019年に広島で国際学会があった時、旧エルピーダで現マイクロンジャパンの社員たちから、「マイクロンに買収されて本当のDRAMビジネスが理解できた」「エルピーダが倒産したのは不運だったのではなく、当然の帰結だ」「外資企業となった現在は完全な実力主義であり、実績を上げれば昇進・昇格・昇給できる」「仕事は大変だが充実しており、エルピーダ時代がいかに甘かったかが実感される」ということを聞いた(「中国は先端DRAMを製造できるか? 生殺与奪権を握る米国政府」EE Times Japan)。
このような実態を理解せずに、日本半導体産業への政策などは、一切行わないでいただきたい。それは税金の無駄遣いであり、何度も失敗の歴史を積み重ねることになるからだ。本当に、もう、うんざりなんです。
湯之上 隆
(引用終わり)
相田英男 拝
相田です。
世間の流行りはウクライナだが、私は地味に行く。
風力発電は反原発主義者達にとって、期待の星とも言えるシステムだ。ヨーロッパや中国で導入が先行しており、「日本も遅れるな」「日本政府はもっと政策支援すべきだ」などと、毎日のごとくネットで記事を見かける。
でも風力発電の技術は厳しい。機械の構造は極めて単純だ。要するに、歯車が組み合わさって、風車と発電機を回すだけである。しかし、単純なだけに、技術的には誤魔化しが効かない。超重量級の歯車がぶつかり合って、物理(機械)エネルギーを伝達しながら、10年以上も発電機を回し続けるのだ。しかも、風車の構造自体が、片持ちはりの、回転軸にモーメントが加わる形である。ちょっと考えるだけで、歯車や軸受に、強い負荷が掛かり続ける事がわかるだろう。
そして、引用記事にもあるが、風車の導入価格はコストダウンが著しい。安く作れば買う方はありがたい。が、そこには盲点がある。部品や設計コストを下げなけらばならない、という盲点が、だ。
当たり前だが、部品や設計の手を抜くと、故障の確率が高くなる。故障した部品は、洋上の100mを超える高所に存在するのだ。その修理には、海上に大型クレーンを新たに浮かべて、数十トンを軽く超える大型発電機やギヤシステムを、吊り上げる必要がある。修理をするスタッフも、大型船舶をチャーターして、風車の脇の洋上で、数十日間も過ごさねばならない。陸上なら毎日、宿まで往復出来るが、船中の寝泊まりは過酷である。
はっきり言って、原発の修理や定期点検以上に過酷で、高コストになるのだ。発電量とのバランスを考えると、明らかに風車の方が高コストである。
だから、風力発電システムを売る側は、メンテナンスの過酷さをあまりわかっていないか、知っていても、顧客に詳しく説明しないのである。
(引用始め)
この世界では、中国の躍進が目覚ましい。21年には、中国国内で4757万kWの風力発電容量を生み出し、そのうち1690万kWが洋上風力だ。企業のコスト競争力も強く、欧米勢でも苦戦しつつある。
日本でも富山県沖での洋上風力発電プロジェクトで中国企業の「明陽智能」(世界シェア6位)が発電ユニットを受注するなど、その存在感は高まるばかり。このままでは政府の思惑とは裏腹に、国内の洋上風力発電ビジネスが中国に牛耳られてしまう可能性さえある。
(引用終わり)
発電システムを安く買ったはいいが、保証期間(大概は2年)が過ぎて、ギアパーツが壊れ出してから、修理見積もりをとった。出された修理代がべらぼうで、文句を言うと、それっきり中国メーカーから音沙汰が無くなり、途方に暮れる、などと、ならないように、重々気を付けることだ。しっかりとした長期保証契約を結べば済むのだが。買い値が上がらなればの話だが。
もっと書く事があるが、あまり書き過ぎると、池田何某あたりにネタをとられそうなので、この辺にしとくわ。
(引用始め)
世界が注目する再エネの切り札! 「洋上風力発電」の開発競争に日本はどう向き合うべきか?
2/25(金) 6:00配信
(この記事は、2月21日発売の『週刊プレイボーイ10号』に掲載されたものです)
* * *
洋上風力発電が注目されている。政府は2040年までに最大で原発45基分相当の4500万kWを導入する方針だ。
風力発電はCO2を排出しない、原発のように核ゴミを出さない、太陽光と違い夜間でも発電できるなどのメリットがある。発電単価も急激な技術進歩で世界トップレベルならkWh当たり5円前後、日本国内でも同12~16円前後にまで下がっている。
特に無人の海上に建設される洋上風力は、長さ100m超の長大なブレード(羽)を回す空間の確保が陸地より容易だし、風車による低周波振動の被害を心配する人々の反対も受けにくいといった長所がある。領海の広さが世界6位の海洋大国ニッポンにとって、洋上風力はとても魅力的な電源になるだろう。
また、洋上風力は日本の成長戦略の柱になる可能性がある。どういうことか、説明しよう。
洋上風力には大きくふたつのスタイルがある。ひとつは海底に埋め込んで固定された構造物が風力発電の施設を支える「着床式」。水深50m以下の浅い海に適している。もうひとつが、海底に固定したアンカーでつながれた水上でプカプカ浮かぶ巨大な構造物が風力発電の施設を支える「浮体式」。水深50m以上の深さの場合、このスタイルになる。
国内で強い風が吹く海域は水深50m以上の深海が多く、日本の洋上風力では浮体式が有力だとされる。より広い海域で風力発電の建設が可能になるため、世界でもニーズが高まっている。とはいえ、浮体式は設置方法などの技術が完全に確立したとはいえず、世界の勢力図もまだ定まっていない。
そこで、日本政府は国内企業に浮体式の製造や設置の技術を磨いてもらい、日本の風力発電産業復活につなげることを狙っている。
だが、現実はそう甘くはない。そもそも、風力発電の世界シェアは欧米や中国などの海外勢に握られ、国内に風力発電の製造を手がける企業はほぼゼロになってしまった。昨年末に三菱商事が千葉県など3海域の洋上風力発電事業を落札したが、その発電ユニットを納入するのは米ゼネラル・エレクトリック社だ。
この世界では、中国の躍進が目覚ましい。21年には、中国国内で4757万kWの風力発電容量を生み出し、そのうち1690万kWが洋上風力だ。企業のコスト競争力も強く、欧米勢でも苦戦しつつある。
日本でも富山県沖での洋上風力発電プロジェクトで中国企業の「明陽智能」(世界シェア6位)が発電ユニットを受注するなど、その存在感は高まるばかり。このままでは政府の思惑とは裏腹に、国内の洋上風力発電ビジネスが中国に牛耳られてしまう可能性さえある。
日本政府は19年4月から「再エネ海域利用法」を施行し、洋上風力振興に乗り出したが、この程度では、日本の遅れを取り戻すのは容易ではないだろう。
それでも私が「まだ期待できる」と考えるのは、発電ユニットの重要なパーツや素材を供給する「下請け」メーカーの存在だ。
日本には高機能なブレードや発電機を製造する企業が多くある。主契約者として洋上発電のメイン設備を納入できなくても、その中身はメイド・イン・ジャパンばかり、となれば十分に日本の成長戦略として成り立つ。そのためには、政府がもう一段本腰を入れて規制緩和などの政策的支援を強める必要がある。
●古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。
(引用終わり)
相田英男 拝
相田です。
私的には面白すぎる内容なので、一応取り上げる。京都フュージョニアリングの記事ばかりなので、他の連中も、もっと核融合の傑作な話題を提供してもらいたいものだ。
(引用始め)
核融合発電をめぐっては、現在、実用化できる規模の反応を安定的に維持するための開発競争が繰り広げられている。こうした技術的ハードルが近い将来に克服されることを見越し、さらにその先の技術を確立させることでスムーズな実用化につなげる。
(引用終わり)
この記述には、さすがの私も空いた口が塞がらない。「技術的ハードルが近い将来に克服されることを見越し」などと、よくも抜け抜けと言えたものである。千年くらいの先の出来事を「近い将来」とか言いたいのかね?高齢化社会とはいえど、一体どれだけ長生きするつもりかしら。
社長によると開発する技術は「核融合発電を実用化するにあたって将来、避けては通れない部分」なんだそうだ。
確かにそうかもしれんけどさ・・・自動車を作るのにタイヤとシャーシだけ一所懸命作って、「あとは超高性能エンジンが載りさえすれば画期的です、凄いでしょう。エンジンは誰かがその内に作ってくれるでしょう」とか聞いた処で、単なるアホのタワゴト以外の、何物でもないではないか?
凄えなあ、京都フュージョニアリング。エクセルヒューマン真っ青の厚顔無恥ぶりだよ。近所のばあちゃん達が、しょーもない布団やらアクセサリーとか、何十万円も出して買ってたのを思い出したよ。
(引用始め)
核融合発電へ一歩 京大発ベンチャーが世界初の実証プラント建造へ
産経新聞 2/2(水) 19:14配信
核融合関連の技術開発に取り組む京都大発のベンチャー、京都フュージョニアリング(KF社、東京)は2日までに、核融合発電の実証実験プラントの建設を計画していることを明らかにした。令和5年中にも着工し、核融合反応で生じたエネルギーを発電用に転換する技術開発を進める。同社によると、核融合を想定した発電プロセスの実証施設は世界でも例がないという。
核融合は水素などの軽い原子核どうしが融合して新しい原子核になる反応で、太陽など恒星の中心部で生み出される膨大なエネルギーの源。発電にあたり温室効果ガスや、高レベル放射性廃棄物を排出しないことから、エネルギー問題や環境問題の解決につながるとして期待がかかる。
ただ、核融合炉内の反応で生み出されるエネルギーはそのままでは発電に使えず、転換には特有の技術が必要とされる。
計画するプラントでは、核融合反応でエネルギーが放出される状況を疑似的に再現し、同社が開発する装置で熱エネルギーに変換。さらに発電装置を駆動することで、実際に電気を起こす。プラントは十数メートル四方に収まる規模で、想定している発電能力も数十キロワットとごく小規模という。
核融合発電をめぐっては、現在、実用化できる規模の反応を安定的に維持するための開発競争が繰り広げられている。KF社は、こうした技術的ハードルが近い将来に克服されることを見越し、さらにその先の技術を確立させることでスムーズな実用化につなげる。長尾昂社長は「核融合発電を実用化するにあたって将来、避けては通れない部分。知見を重ねて技術的に先行したい」という。
同社は2日、三井住友銀行や三菱UFJ銀行といった大手金融機関やベンチャーキャピタルから総額約20億円の資金を調達すると発表。技術開発の加速や人員体制の強化などに充てるとしている。
プラントは来年中の着工を目指し、現在、建設候補地の検討を進めている。実証プラントに設置する装置の製造は国内のメーカーに依頼する方針といい、国内で技術やノウハウを蓄積することで、将来的な国際的競争力も確保する。
(引用終わり)
相田英男 拝
相田英男です。
以下に引用する記事は、東芝の現状についての解説だ。別に大した内容ではない。しかし、私は読みながら、大いなる苛立ちを感じた。特にイラついたのは、以下の記述である。
(引用始め)
さらに東芝と時を同じくして、米国を代表する世界的企業であるゼネラル・エレクトリック(GE)やジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が、スピンオフ戦略を公表したという潮流も、日本ではまだ実例に乏しいスピンオフ戦略に対する評価を後押していると言えます。
GEやJ&Jが相次いでスピンオフに踏み切ったことは決して偶然ではなく、コロナ禍においてデジタル化の急進展をはじめ、企業経営が大きな転換点を迎え、企業経営が効率化とスピードアップを迫られた結果の前向きな対応として、一歩を踏み出したと言えるのです。
しかしながら、東芝の場合は少々事情が異なります。事の発端は2015年の不正会計という不祥事であり、直後に米国原発事業における巨額損失が明るみに出て経営危機に陥るという、今に連なる大きな汚点がそこにあるからです。さらにこの経営危機からの脱却策として、アクティビストたちからの資金支援を得たことが、その後の東芝にさらなる暗雲を垂れこめさせたと言えます。
成長戦略が描けないことに業を煮やしたアクティビストが経営陣交代要請を強めると、東芝の経営陣は経済産業省の力を借りてこれを排除しようするという、重ね重ねガバナンス上由々しき問題を起こしてしまったわけなのです。
今回の事業三分割計画はこのような流れを受けたものであり、東芝のスピンオフ計画に批判的な意見の根拠が、「GEやJ&Jと同列に語るのはどうなのか」というところにあるのは明白です。
(引用終わり)
相変わらずの米国を賛美して日本をケナす、伝統的なコメントである。しかし、私はもう騙されない、お前ら低脳な経済評論家達には。
GEが、確か2015年辺りだったと思うが、悪名高いアクティブ・ファンドであるトライアンの、経営への介入を許した事、そしてCEOがイメルトからハゲのフナラリーに、生え際が後退、ではなく、交代させられた事、その直後に起きたHA (アドンスドH型)ガスタービンのブレード破損事故を発端として、株価が20数ドルから一桁ドルまで一気に暴落し、経済界に衝撃を与えた事、これらの事実をお前らは、相変わらず、全く無視するのか?もしかして、米国の経済記事を、全く読んでいないのか、お前らは?
東芝が三分割させられるのは、事前に「親会社」のGEで行ったシミュレーションを、単に踏襲しているだけではないか。アクティビストの介入まで含めて。その後の株価の暴落の度合いから見ると、「親会社のGE」の方が遥かに華々しく、罪深いのではないのか?
だから、あんまし、中身の無い、軽すぎるコメント記事ばかり書くなっつーの。
もう、本当に、よくわかったよ、お前ら経済記事家の、頭の軽さの程度が。俺にはよ。
GEの凋落に関する記事を結構ストックしているが、結局まとめきれずに終わりそうだ。その前に、アメリカの国家自体の方が、先に崩壊しそうな雰囲気なので。
ただ一つ気になる事がある。昨年末のトランプ落選のドタバタ最中に、パキスタンで大停電が起きた。その理由が、GEの航空機事業を中国ファンドに売り渡す交渉を密かに進めており、それを妨害するための陰謀だった、云々(でんでん、ではない)という噂の記事が、ネットで出回った。その実情が何だったのだろうか?
パキスタンには、GE火力のフラッグシップ機であるHAガスタービンを使った、発電所が建設されている。その絡みで、何らかの動きが、あの時にあったのだと思う。シロートの俺でも間違いに気付くような、スカスカのこんな記事でなく、パキスタンの噂の真相でも、ちゃんと調べて教えてくれんもんかね?
(引用始め)
大関暁夫
2022年01月06日 14:25
苦肉の「事業三分割」発表でも続く東芝復活へのいばらの道
https://blogos.com/article/575577/
東芝の事業三分割が大きな衝撃をもって受け止められています。「日本のコーポレートガバナンスにおける大改革と評価できる(菊地正俊みずほ証券チーフストラテジスト)」とこれを評価する声がある一方で、「東芝は自滅への道を突き進んでいるように思える(久保利英明元東京第二弁護士会会長)」という批判的な見方もあります。
その実どうなのか。それぞれの見解の根拠を検証しつつ、東芝の復活に向けた現在地を確認してみます。
まず東芝の事業三分割計画についてですが、2023年度にグループ全体を発電、公共インフラ、ビル、ITソリューションなどを手掛ける「インフラサービス会社」、半導体、パワー半導体、HDD、製造装置などを手掛ける「デバイス会社」、そして「東芝」の名称での存続会社で主にキオクシアや東芝テックなどのグループ企業事業体の株式を保有して管理する「資産管理会社」の3社に分割し、それぞれを上場。お互い株の持ち合いはせず、各社の専門性を高めかつ経営判断の迅速化をはかることで、それぞれの会社が専門領域で最大限の発展をめざしていくというものです。
事業分割は一般にスピンオフ(分離)と呼ばれており、分割後の単体事業に将来性が見込めるならば、大きな効果が期待できるとされています。すなわち、コングロマリット・ディスカウント(多岐にわたる事業を扱うことで、個々の事業価値が目減りしている状態)に苦しむ企業体がそれを解消し各事業単体での正しい事業価値を得ていくという意味で、スピンオフは大きな期待が持てる事業戦略であると言えるのです。
この観点から考えれば、まさにコングロマリット・ディスカウント状態にあるとアクティビスト(物言う株主)たちから強い批判を受けてきた東芝にとっては、この上ない良策であるように思えます。
スピンオフに関しては、米国では既に毎年50件程度が実施され、大企業の転換戦略として定着しています。例えば、2015年にネットオークション大手のイーベイからスピンオフしてナスダック市場に上場したWEB決済サービスのペイパルは市場に好感され、イーベイとペイパルを合わせた株式価値の合計はスピンオフの前よりも上昇。狙い通りにコングロマリット・ディスカウントを脱しているのです。
このような海外での実例をひいてのスピンオフ効果認識が、東芝の事業三分割をそれなりに評価する理由になっていると考えられます。
さらに東芝と時を同じくして、米国を代表する世界的企業であるゼネラル・エレクトリック(GE)やジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が、スピンオフ戦略を公表したという潮流も、日本ではまだ実例に乏しいスピンオフ戦略に対する評価を後押していると言えます。
GEやJ&Jが相次いでスピンオフに踏み切ったことは決して偶然ではなく、コロナ禍においてデジタル化の急進展をはじめ、企業経営が大きな転換点を迎え、企業経営が効率化とスピードアップを迫られた結果の前向きな対応として、一歩を踏み出したと言えるのです。
しかしながら、東芝の場合は少々事情が異なります。事の発端は2015年の不正会計という不祥事であり、直後に米国原発事業における巨額損失が明るみに出て経営危機に陥るという、今に連なる大きな汚点がそこにあるからです。さらにこの経営危機からの脱却策として、アクティビストたちからの資金支援を得たことが、その後の東芝にさらなる暗雲を垂れこめさせたと言えます。
成長戦略が描けないことに業を煮やしたアクティビストが経営陣交代要請を強めると、東芝の経営陣は経済産業省の力を借りてこれを排除しようするという、重ね重ねガバナンス上由々しき問題を起こしてしまったわけなのです。
今回の事業三分割計画はこのような流れを受けたものであり、東芝のスピンオフ計画に批判的な意見の根拠が、「GEやJ&Jと同列に語るのはどうなのか」というところにあるのは明白です。
三分割案を提案したのは、6月にアクティビストたちとの協議を経て招いた、ボーン・プロフ氏ら新社外取締役で構成される執行部から独立した同社戦略委員会であり、東芝経営陣の意思で組み上げた新戦略とはおよそ言い難いわけですから。
同委員会による執行部への提案から組織決定までの時間の短かさをみても、事業三分割後の事業について十分な仮説検証がなされたとは思えません。
この点について事業コンサルタントの大前研一氏は、「3事業のうち可能性を感じるのはインフラ事業の一部のみです。残り2事業は全体としてアップサイドがほとんど見込めない状況ですし、半導体メモリー事業にいたっては本社がキオクシアの株を保有しているに過ぎず上場するなど夢の話」「今回発表された3つの事業分割のままでは、勝てる見通しはほとんどない」(大前研一 ニュースの視点Blogより)と、かなり手厳しいです。
このような考察から結論として見えてくるのは、東芝の事業三分割を前向きに評価するとすれば、スピンオフという手法を日本を代表する大手企業が取り入れたことに関する評価であるということ。
すなわち、税制改正によってスピンオフ戦略をとりやすくなったという背景もあり、東芝のような大手企業が率先してこの戦略にのりだしたことで、大規模化と多角化によって利益率が下がった多くの昭和企業にとってスピンオフは有力な選択肢とし顕在化し、日本における産業の新陳代謝が進む可能性はあると言えるでしょう。
しかし、東芝の事業三分割というスピンオフ戦略は、ガバナンス不全に端を発したアクティビストとの関係悪化の結果として追い込まれた感は否めず、それが本当に同社にとって有効であるのか否かは現段階では何とも評価のしようがない、という印象ではあります。
同社の株価は11月12日の分割案発表前の4937円から、現在4600円前後にまで約7%も下げており、市場の受け止めは至って冷ややかです。
先の久保利弁護士の「東芝は自滅への道を突き進んでいる」が言い得ているか否かは別としても、不正会計以降の「沈みゆく東芝」からの復活は今なお、茨の道にあると言わざるを得ないでしょう。
東芝の株主は、現在その約2割がアクティビストで占められているとみられています。そのうちの有力な1社3Dインベストメント・パートナーズは、事業三分割を「支持しない」とする書簡を公表しており、年明けに開かれる事業三分割の信任を問う臨時株主総会はなお予断を許さない状況にあると言えます。
もし議案が否決されるなら東芝は再び迷走し、目先の利益を重んじるアクティビスト主導での「解体ショー」という最悪の事態すら否定できません。
鳴り物入りで報じられた事業三分割が、今はまだ東芝復活の切り札であるとは到底まだ言えず、本当の正念場はこれからということだけは確かなようです。
(引用終わり)
相田英男 拝
相田です。
核融合炉の記事にこだわるぜ、と宣言してしまった手前、やはり、引用せざるを得まい。
よく読むと、私にはツッコミ処が満載なのだが、今回はもう、こまかこつは言わんどこ。
こげな会社が、スタートアップのベンチャーキャピタルで、株価がこれから上がる、とか、注目されちょるんか?こげな話を堂々と書き並べるとは、正真正銘の詐欺広告、としか、私には見えんちゃけど。
大学も京都大学やけんねえ。超一流のブランドをチラつかせるのも、詐欺の資格充分なんよねー。
素人さんには意味不明な、何やら良さげに聞こえる横文字専門用語ばっかし並べちょんなる。読者が騙されて株ば買うてくさ、株価が上がって経済が活性化される、とか、記事を書かせた連中は思ちょるとかいな。書いた人は素人のごたるけん、あんまし罪はなかごたるばってんが。AIが書いた記事かもしれんばってんくさ。
いっちょん訳んわからん、何とんしれん話ばいやん。
(引用始め)
ガンダムにも搭載の「核融合発電」実用化を目指す「京都フュージョニアリング」。世界のエネルギー事情を覆すか
10/4(月) 12:05配信
毎週1社ずつ、気になるスタートアップ企業や、そのサービスをザクッと紹介していくシリーズ「スタートアップ・ディグ」。第2回は「核融合発電」の実用化・商用化を目指す、2019年創業の京都フュージョニアリング株式会社を紹介していく。
核分裂と核融合は違う
「核融合発電」とは、現在世界中で行われている原子力発電とは似て非なるもの。原子力発電は原子核の「分裂」によって発生するエネルギーを利用するのに対し、核融合は文字通り原子核同士を「融合」させることでエネルギーを生み出す。これは太陽が輝いているのと同じ原理だ。ちなみにガンダムのエネルギー源も核融合なんだとか。
分子の核を扱うという点において同じであっても、核融合は原子力発電における臨界事故やメルトダウンを起こす危険性は原理的にありえず、高レベル放射性廃棄物も生まれないらしい。
他にも原子力発電に用いられるウランはおよそ100年で枯渇するとされているけれど、核融合発電に用いられる重水素は海水から取り出すことができるので、ほとんど無尽蔵。ちなみに化石燃料に関してはこのままのペースで採掘が続くと石油と天然ガスは約50年、石炭は130年ほどで枯渇してしまうとされている。新しいエネルギー源の確保は喫緊の課題であることは間違いないため、世界的に注目が集まっている。
半世紀以上にわたり研究が続き、未だ実用化の目処はたっていないけれど、実用化すればエネルギー情勢を大きく変える可能性を秘めた、まさに人類の未来をになう技術だ。
京都大学がエネルギー問題を解決するのか
京都フュージョニアリング社は、そんな核融合炉の実用化、商用化を目指し、核融合炉に関する装置の研究開発・設計・製造、装置・コンポーネントの輸出を行う、京都大学発のスタートアップ企業。
同社が主に打ち出している技術は2つ。「ブランケット」と呼ばれる、発電に必要な熱を取り出すと同時に、燃料となるトリチウムを製造するための装置と、核融合反応時に発生するヘリウムやその他の不純物を除去、分離する「排気系」の製造だ。
どちらも核融合炉の中核を成す装置であり、稼働時に高温などの極端な条件に曝されるため、非常に高いクオリティが要求されるそう。そのうえ、交換が容易であることなどメンテナンス性も求められる。これらを向こう数十年にわたり継続的に製造・納品していくことで核融合炉の商用化に貢献するということだ。
技術開発は京都大学エネルギー理工学研究所内の小西哲之教授を中心とする核融合装置とエネルギー利用に関する研究がベースとなっており、京都大学宇治キャンパス内にオフィスを構える。またCEOの長尾 昂(ながお たか)氏は、京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻出身であり、京都大学が100%出資するベンチャーキャピタルの京都大学イノベーションキャピタル社が主な株主と、まさに京大一丸となって挑戦するプロジェクトと言えるだろう。
さらに、今年1月には、ベンチャーキャピタルのCoral Capitalから約1.2億円の資金調達を実施。6月にはテレビ東京などが主催する、REVERSIBLE WORLD 2021のGreat Entrepreneur Award 「社会的に異次元なインパクトを与える可能性のあるスタートアップ企業」カテゴリにおいて1位を受賞するなど、社会からの期待も大きい。
AI、VRやAR、ブロックチェーン、ロボティクスなど、どれだけテクノロジーが先鋭化しようと、それを動かすエネルギーがないことには始まらない。同時に次世代のエネルギー産業を握ることは世界の覇権を握ることにも通じるだろう。その是非はともかく、各国がますます力を入れることは間違いない。引き続き注目したい分野だ。
赤井大祐(FINDERS編集部)
(引用終わり)
以前に漫画家のとり・みきが、工事現場の立て看に書かれたオジギビトを集めて、雑誌に載せていた。オジギビト蒐集家の彼の真似をして、私も「核融合炉の可能性を賛美するウソ記事蒐集家」として、ここでは活動しようと思う。
相田英男 拝
相田です。
アゴラに掲載された、ある記事を全文引用する。
前にも書いたが、核融合発電の問題はプラズマ閉じ込め方式のアイデア構築ではなく、デューテロン ー トリチウム(D-T)反応で発生する、高速中性子(14MeV, ミリオンエレクトロンボルト)の封じ込めにある。というか、高速中性子は電荷を持たないので、鉛などの金属板材で遮蔽する事がほぼ不可能なのだ。エネルギーを失って減速するまで、ある程度の距離を取る以外に方法はない。茨城県の原研那珂研究所にイーターを置こうとしたら、中性子が10km位離れた太平洋岸まで到達する、と計算で出たらしいので、何をか言わんやである。
だから、核融合炉が動いて電気を起こす間には、高速中性子がバカスカと周りを透過してゆき、JCOの臨界事故のような中性子線による被曝被害を、周囲に発生させるのだ。そんなシステムが、まともな商業発電用途に使えるなどと、本気で信じる者がいるのか?
それで、事情をよくわからん人達が、以下のように騒ぐ訳だ。
中性子を発生しない核融合反応も、あるにはある。日本人は割と知っているが、あのガンダムの動力源は核融合炉である。ヘリウム3という元素同士の核融合反応で、中性子を発生しないため、システムが小型化された、という設定である。
ただヘリウム3の核融合反応は、D-T反応よりも実現が非常に難しい。D-T反応核融合は1億度の粒子運動エネルギーが反応を維持するために必要だが、ヘリウム3核融合反応は30億度の運動エネルギーとなる。1億度のプラズマを安定制御するのにあたふたする現状で、30億度の反応を実現するのは、全くもってナンセンスだ。
あとヘリウム3は地上には殆ど存在せず、月の土中か木星の大気中とかにしか、ないらしい。なのでガンダムには、木星までヘリウムを採取に出向くための、宇宙貨物船団の話が出てくる。よく知っとるんだわ、あの監督さん
下の記事には、原料が地球上に大量に存在する、と明記されているので、D-T反応核融合の話なのだが、アニメの監督さんの方がよく勉強されているので、少しは反省した方がいいと思う。
たまに池田信夫が、自分のブログで「量子力学の観測問題」などの物理の話を書いて、高級そうな雰囲気を醸し出して、読者を惑わす事がある。が、池田信夫の物理の話は、全て東大出身の学者である柳瀬睦男(やなせむつお)の講義をネタにしている。柳瀬は非常にユニークな人物だ。その内に書くつもりだが、柳瀬睦男こそは、日本人の科学哲学者の頂点だと私は思う(少なくとも理科系の人物から「この人は凄い」と、尊敬される唯一の日本人科学哲学者であるのは、間違いない)。村上陽一郎の「本当の先生」も柳瀬である。ネタ元がバレると困るので、村上は柳瀬の事を殆ど言及しない。そんな処が村上は賢い。
柳瀬の話だから内容はもちろん間違ってはいない。だが、人からただ単に聞いただけの話を、さも「自分が深く勉強して理解しました」などと、読者に誤解を与えるような書き方をする池田信夫も、どうかと私は思う。
(私は、核融合の記事については、これからも徹底的にコメントするぞ)
(引用始め)
2021年09月12日 アゴラより
高市候補が言及した核融合発電に追い風の吉報
「皇室維持とエネルギー政策が判断材料」と拙稿に書いたからのはずはないが、河野太郎候補は10日の出馬会見で、この二つに関するこれまでの持論をあっさり引っ込めてしまった。これを臨機応変な現実的対応と見るか、単なる姑息な変節と見るかは人によって異なろう。
筆者は後者だと思う。その訳は原発について「安全が確認された原発を再稼働していくのはカーボンニュートラルを目指す上である程度必要だ」としながら、「いずれ原発はなくなっていくだろうが、あした、来年やめろと言うつもりではない」と彼が述べたからだ。
「安全が確認され」て「再稼働していく」原発が「いずれ」「なくなっていくだろう」とする、破綻しているようにも聞こえる思考回路を筆者は理解できない。つまりこれは、河野候補の反原発が理屈ではないことを物語る。女系容認での変節も理屈ではないのではあるまいか。
日米首脳会談の菅さんの様子を、ルーピー鳩山が「不慣れなオロオロ感がモロ」と腐したが、筆者は「『飾らずに地を出した』と好感した。人となりを見せ合う場に付け焼刃は要らぬ」と拙稿*に書いた。河野候補は「日本を日本足らしめているのが皇室(と日本語)」と述べたが、「付け焼刃」は脆い。
他の2候補のエネルギー政策だが、原発について岸田候補は「まずは再稼働を進めるべきだ。そこから先は国民と対話していく」とし、「大きな柱は再生エネルギー」だが「それだけでは現実的には難しい。原子力は引き続き維持しなければいけない」と、この人らしい優等生の発言をした。
高市候補はJ-CASTニュースの3日のインタビューで、これもこの人らしい正直さで「文藝春秋には小型モジュール原子炉(SMR)について書」いたが、炉が小さいSMRは「地下に立地させることで安全を担保」できるが「核廃棄物が出」るとし、「本当に見据えているのは核融合炉」だと述べた。
その核融合発電で8日、ビッグニュースがあった。マサチューセッツ工科大学(MIT)が「MITが設計したプロジェクトは核融合エネルギーに向けて大きな進歩を遂げた」と発表したのだ。「新しい超電導磁石は磁場強度の記録を破り、実用的で商業的な無炭素電力への道を開く」と小見出しにある。
現存する原発は核分裂のエネルギーで蒸気を発生させて発電タービンを回す仕組みだが、核融合はこれとは仕組みが異なるようだ。我が文科省は核融合とそれを使った発電について「核融合研究」なるサイトで判り易く説明している。先ずはその概要を見てみる。
太陽のエネルギーが核融合によって生み出されていることから、核融合研究は「地上に太陽をつくる」研究ともいわれる。核融合発電には「資源(*重水素)が海水中に豊富にある」、「二酸化炭素を排出しない」などの利点がある(*核廃棄物もほとんど出ない)。
「磁場閉じ込め」による核融合エネルギーの研究開発は、軍事用技術と原理が異なるため、冷戦下85年のレーガンとゴルバチョフの会談で、平和目的のための核融合研究を国際協力の下で行うことが提唱された。目下、日欧米露中韓印がITER協定を締約し、ITER(イーター)計画が推進されている。
研究開発は大きく三段階に分けられる。第一段階は、核融合プラズマ生成に必要な加熱エネルギーよりも、そのプラズマで実際に核融合反応が起きたときに出るエネルギーの方が大きくなる状態(臨界プラズマ条件)の達成が課題とされる。
第二段階は、加熱をやめても核融合エネルギーによって核融合プラズマが持続する状態(自己点火条件)を達成することと核融合プラズマの長時間維持に道筋を付けることなどで、実験炉の建設を通した炉工学技術の発展や材料開発など多くの課題があり、現在はこの段階。
第三段階では、実際に発電を行い、経済性の向上を目指して必要な課題に取り組むための核融合原型炉デモの建設、運転等を行う。これらの段階を経て、実用段階である商用炉を目指すとしている。
核融合反応を起こす方法としての「磁場閉じ込め」の代表例としてトカマク方式とヘリカル方式があり、「慣性閉じ込め」の代表例としてレーザー方式がある。MITの方式はトカマク方式で、フランスのITERや日本のJT-60SAが採用している。少々難解だが文科省サイトの概要を続ける。
核融合反応を起こすためには、燃料を加熱してプラズマにする。その時、プラズマは分子が電離、つまりプラス電荷を持つ陽イオンとマイナス電荷を持つ電子に分かれて運動している。電荷を持つ粒子は磁力線に沿って運動する性質があるため、磁場を使ってプラズマを閉じ込め、更に加熱することで、超高温の核融合プラズマを生成する。これが「磁場閉じ込め」方式。
トカマク方式は、Dの字の形をしたコイルを円状に並べ、コイルの中にドーナツ状の磁場を発生させる。そしてドーナツの中心にあるコイルでプラズマに誘導電流を流し、ドーナツの断面を回るような磁場を発生させる。
これら2つの磁場の重ね合わせによってねじれた磁場を形成し、プラズマを閉じ込める。なお、誘導電流を半永久的に流すことは現実的に不可能なため、プラズマを長時間閉じ込めるためには、加熱装置を使用して電流を流し続ける必要がある。
そこでMITの発表だが、先述のように核融合発電では「臨界プラズマ条件」が、トカマクでは「磁場の発生」がキーワードだ。MITの成果をごく単純化していえば、「世界最強の核融合磁石」を創って、高効率の「臨海プラズマ条件」を達成したということのようだ。
この「世界最強石」の開発に協力したコモンウエルス・フュージョン・システム(CFS)は、このデモの成功は「消費するよりも多くの電力を生成する世界初の核融合発電所の建設」という「不確実性を解決するのに役立つ」とする。つまりは、エネルギー効率がプラスになったということだ。
小泉環境相のお好きな再生可能エネルギーの最大の弱点はこのエネルギー効率だ。CO2の発生を軽減するための電気自動車や水素自動車、そして太陽光発電にしても、電気や水素や太陽光パネルの生産時や、太陽発電送電時やバックアップ発電時の、CO2の発生やコストなどを考慮する必要がある。
つまり、100の価値を生み出すために、別の価値を110投入するのでは間尺に合わないということ。MITの核融合発電は「世界最強の磁石」の開発に成功したことによって、例えば90の投入によって100を生み出せるようになったということだ。
高市候補がMITのことを知っていて3日の取材に答えたのかどうかは知らぬ。が、計ったような絶妙のタイミングでMITの成功が報じられたことは、彼女に運があることの証左。ワクチン接種とオリパラの大成功が、デルタ株で相殺された菅さんの不運を思うと、運も実力のうちか。
(引用終わり)
相田です。
「現存する原発は核分裂のエネルギーで蒸気を発生させて発電タービンを回す仕組みだが、核融合はこれとは仕組みが異なるようだ」
とあるが、実際には同じ仕組みだよ。トーラスの炉壁内部に水が流れる冷却パイプがたくさん配置されて、核融合反応の発熱を吸収して外に取り出して、最後は蒸気タービンを回すのよ。その辺の細かな仕組みまでは、初心者向け資料には書かれていない。
水パイプの材料は316ステンレスのL(エル)材にするしかないから、運転中に応力腐食割れが起きるわな(軽水炉でも多発した)。割れたパイプを溶接で塞ごうとしたら、金属内部で中性子との核反応でできたヘリウムガスが集まって、ヘリウムのミクロバブルがたくさん出来る。不活性ガスのヘリウムバブルは絶対に潰せないので、溶接で塞ごうとするほどバブルが出来て、割れが次々に広がって、収拾が付かなくなるよな。
それなら、割れた水パイプ全部を交換してやれ、となるのだが、停止直後の装置内部には、原発炉心に匹敵する高濃度の放射線が飛び交っている。核燃料の燃えカスはないのだが、高速中性子の照射で周囲の部材が強烈な放射線を帯びるのだ。低放射化材料とかいう物を使うとはいえど、数日位で人間が装置の間際まで近づけるようにはならない。あと、燃料のトリチウム(水素の放射同位体)も大量に存在する。その状況で、複雑怪奇な構造の核融合炉の壁に張り付いた、水パイプだけを取り出して、新品パイプを元に戻すのは至難の業である。現実にはほぼ不可能だ。
そやけん、せいぜいこれからも、こげなふうにくさ、素人さん達を巧みに騙し続けんね、あんたどんは。どんこんされんとばいやん。
相田英男 拝
相田です。
あちこちサイトを眺めていたら、とある場所に「島村原子力懇談会(通称)」の会話記録が、丸々アップされているのを偶然見つけた。以前から私が読みたいと探していた資料だ。ありがたく、私のPCに全ファイルをダウンロードさせて頂き、眺めている。アップしたサイトの管理者は、内容について全くコメントしていない。読んでも何が語られているのか、理解できなかったのだろう。
全文は膨大なので(A4で620ページ)読み切れていないが、気になった箇所を引用する。これからも何回か続くだろう。
下記の島村武久(しまむらたけひさ、戦後の原子力導入時期に活躍した大物官僚)と、物理学者の大塚益比古(おおつかますひこ、大阪大学の伏見康治の教え子)の会話を読みながら、「ああ、昔からみんなわかってたのか」と、私はため息をつく。
島村と大塚は、日本の科学技術には「メタフィジックスが足りないのだ」と、はっきりと認識している。今の私が言い換えるとそうなる。メタフィジックスに裏打ちされた技術を持つ欧米と競争しても、日本は容易には追いつけない、と、二人は以下の会話で語っているのだ。
心ある理科系の読者の方々は、読みながら何事かを感じるだろう。文科系の、ようわからんままで「原発反対」とか「ワクチンうつとすぐ死ぬ」とか、騒ぎまくる左翼や、「日本の科学技術は中国、韓国に泥棒されている」とか、ヤフコメにあげ続ける右翼連中は、読んでも無駄だ。
あんたどんは、読まんでよかとばい。なんのこつか、いっちょんわからんやろけんな。
(引用始め)
(対談は1985年9月26日)
島村: そこで話は変わるんですけど、さっきの学術会議の雰囲気ですね。原子力をやられる 推進派もおられたかわりに、全体的な何は否定的なあれが一時は少なくとも強かったわけですね。予算も付いてやると決まったから、条件付けたと言う形になっちゃってるわけで。予算でも出なかったら、まだまだ議論が。
大塚: そうだと思います。
島村: そこの、何ですか、これは割に新しい8月の末の、27日の新聞に、鈴木治雄さんが書 いてるんですよ。最後のところだけ読むと、「ともかく量子力学が原爆を製造し、かくして 現在世界を核の恐怖のもとにおののかせていることになっている」と、「そこで、物理学者には原罪感に似た感情があるのではなかろうか。つまりそれに由来した良心が、多くの物理学者を平和主義者に導いているのであろうと想像される」と、昭和電工の鈴木さんにしちゃね、ちゃんとしたことを書いておられると、こういう気がするんですが。
確かにそれが非常に強い何だと思うんです。戦争直後だし、日本の物理学者が原爆つくって広島に災害生んだわけでは全然ないけれども、かなり考えてみると、学者も戦争に駆り立てられてて、もう三度と政府のあれに乗って、戦争に協力するようにはしないぞという空気が強かったことは、確かだろうと思うんだけれど。
(それでも)私みたいな、そういう崇高なあれでなくて、疑い深い人間にとっては、原子力なんか始めたら、研究者がそっちに取られちやう、というような気分の人もいたんじゃないだろうか、という気もするんですが。その、研究体制が不十分な何なんでという辺のニュアンスは、どういうことなんだろうか。研究体制が不十分な日本でというのは、何もさっき鈴木さんが言う良心とはあまり関係ない理由の、 おそらくどういうことなんだろうか、という気がするんですけど。
大塚: だからさっき申しましたように、平和利用の問題っていうのは、自分の職業離れっていうか、日々のこと離れて、皆持ってるわけですけど。実際はここに大きな、何十億も、当時何十億はすごい金ですけど、そういうので原子力づくりが始まると、ただでさえ困ってる基礎研究、原子核研究その他が相当マイナスの影響受けるだろうとは、皆思ってたんだと思います。
それはやっぱり皆切実に、今に至るまで加速器は、加速器はまあでかくなり過ぎてるんですけども、常に欠乏感はあるような感はいまだにあるわけですから。当時なんかは、全部海に沈められて加速器一台もないわけですから、その時の飢餓感っていうのは皆さん大きかったんです。そこへ原子炉がいきなり現れたんでは。
島村: だから、学者の良心から学術会議が否定的な空気にあったのか、その他の事情もあったのかと、いうようなこと考えておったんですけど。なぜ学術会議が。それはもう明らかに、鈴木治雄さんが言ってたような理由も基本的にはあっただろうと、そう思うんですけど。
しかし、たった30年ぐらいの間だけど、ずいぶん変わるもんですね。もし学術会議が否定しておったら、またさらに10年ぐらい遅れてたんでしょうな。あなたがおられる時は、阪大は菊池(正士、きくちせいし)先生はもうおられなかったのかな 。
大塚: いえ、菊池先生は原子核研究所長に出る1955年まで、阪大におられました。
島村: 原子核研究所つくるときに移られたわけ。
大塚:ええそう、そうです。
島村: だから、菊池先生はどっちかというと実験物理だな。
大塚: そうです。どっちかっていうとよりは、実験物理の親玉だったんです。
島村: 素粒子とか何とか言うほうは、理論物理ですな。その頃、戦前の理論物理っていうのは、どうだったんですか。
大塚: 戦前はだめです。僕は知識と批判能力がない。(笑い)
島村: それじゃ大塚さんおられた頃までのあれで見ると。やはり日本は相当遅れとったんで すか。日本も仁科先生もおられるし菊池先生もおられるし、まあまあだったんですかな。いろんな先生が沢山おられて、それこそ、原子核の連絡会か何かあったんでしょ。
大塚: そうそう。
島村: 核物理っていうものの研究がやっておられたわけなんだ。
大塚:ですけどその、まあ決して進んではいなかったですよ。
今村: 最近ちょっと読んだ本で、本当か嘘か知りませんけれど。アメリカもマンハッタン計画をやっとったわけですが、理論物理はそう進んでなかった。そういうときに研究者がオーガナイズされて、むしろ原爆つくろうと。日本もまあ同じような状況だったんで、蓋を開けてみたら、理論面ではそう差がなかったという風に書いてありました。本当かどうか知りませんけれ ども。
大塚: アメリカの原爆の時に理論面を指導したのは結局、よく知られているようにフェルミ、オッベンハイマー、ベーテ。だけどウィグナーとかフェルミは亡命者ですし。だからその当時は、アメリカは物理学の先進国でなかったことは確かです。その当時はヨーロッパであって、アメリカ には別段物理学の権威は、そんなにいなかったんじゃないですか 。
今村: いずれにせよ、やはり戦争があって、勝った国も負けた国も戦争協力の方からやってたんで、理論的なことは―。
大塚: それと、原子核理論とか素粒子論の興味から言えば、原子爆弾の理論なんていうのは、 物理としてはどうでも、あれはそんな面白い、学問的に興味のある話ではないですもん。
島村: 理論物理なんて難しいこと言わなくたって。
大塚: そうです。ただ、臨界になるかどうかの、中性子の吸収、核分裂断面積を測らにゃいけませんけど、そういうのはしかし、むしろ実験でしょ。
B: 実験するということには、そういう設備はやはり向こうの方が良かったんでしょうな。
大塚: いやだから、結局マンハッタン計画に20億ドルの金を戦時中に出して、あれだけのことやったわけですから。
島村: 何故そんな音のことに興味を私が持つかというのは、ひとつは歴史的にどうであった か、ということを知っておきたいということだけではなくて、数年前にドイツに行ったんです。ドイツの連中と話をした時に、あなたの話にもあったように、日本もドイツも原子力を禁止されてた。日本のほうがちょっと、どっちかっつうと少し早めに解除になったんです。ドイツの方が少し遅れてて、まあほぼ同じ時期に解除になったと考えていいでしよう。それから出発して、日本の原子力は、相変わらず技術導入ばっかりやってて、ドイツの方は約30年近い間に、逆に原子炉を輸出するようなあれに変化した。ドイツ側としては何故だと思うかと。
私は、私にもし責任があるとすれば、あやまらなければならんけれども、技術導入によって何でも輸入してやろうとしたんです。例外は国産一号炉ぐらいのもんです。ドイツは最初から国産でやろうとした。その違いがやはり、今日に出てきたんではなかろうか、と私は思ってたんだけど、それに対してドイツ人の意見は、ドイツは戦前から物理学なんかで原子力を研究しとった、だから早かったんだと 。そういう話を向こうはしたんです 。
日本だって、やってないわけじゃない。大阪大学、京都大学のあれまではよく知らなかったけど、少なくとも仁科さんのサイクロトロンが東京湾にぶち込まれたぐらいのことは、知っておるわけでしよう。 ドイツがその頃やっとったくらいの何は、日本もやっとったんじゃなかろうかという気もして。日本は本当はどうだったのかしらんと。
大塚: これは忘れぬうちに言っておきますが、1954年の秋に伏見先生が中央公論に書いてますけれども、三原則が出た後のあれですけど、日本は理論物理は外国の理論物理の文献を見て勉強した。実験物理屋さんは外国の実験物理のレポートを見ながら実験した。物理の世界でも理論屋と実験屋は別々にやっとった。日本の実験を見ながら理論を組むわけでもないし、日本の理論屋の刺激を受けて実験を計画するわけでもない。まして今度は理学と工学は、理学のベースに立って工学をやるわけでもないし、皆それぞれ独立に、外国のイミテーションでやっとるって話が、そこにも出てますけど。
僕が今先生に言われたことで勝手に思ってるのは、ドイツって言う国は、さっきも申しましたように戦争負ける前は、ヨーロッパにおいて機械工業その他で、とにかく世界の先頭を一度切ってるわけです。第一次世界大戦以後でしょうが、戦争に負けるその前に。要するにドイツは、ある時期世界の先頭切って自分たちの科学、自分達の工学でもって物をつくり出し、何とかした経験を持ってるわけです。そういう国は、戦争に負けて研究が禁止されたり何かしたことがありましても、そういう先頭を切った経験と体質を持ってますから、解除になったら時間のロスを防ぎ時間を稼ぐために、情報を買ったりいろいろなことはするにしても、物を自分達で考えて自分達でつくるという伝統を持ってる人たちは、やはり自分達でつくるんだと思います。
ところが日本は、戦前がそういう風に全て買ってきて、その上に乗っかってつくる。理論屋も外国の理論の論文を見ながら、それにヒントを得ながら仕事をする。実験屋も外国の実験の論文を見ながら仕事を。まして産業界や工業界は、戦争前は日本の学者なんか全然相手にしないで、皆向こうから買ってきてやった経験しかないわけです。そういう国は、その継続をするんだろうと思います。
島村: 私も実は、そういったような考え方を持っておったんです。てのは、1956年に、私は大屋敦ミッションについてぐるっと世界を回ったんです。井上五郎さんも一緒だったし、木川田一隆さんも一緒だった時です。ドイツに行って、RWE(西独最大の電気事業者)に行ったんです。休みの日で、偉い人は出てきてくれなくて、技師長が、なんて名前だったか調べてみたけど、原産の視察団の報告にもその名前が出てないんです。そこに行ったんですが、一行は二十数名だったんだけど、そこへ行ったのは電力会社の人だけだったんです。 私も付いていったんです。
その技師長さんが、いろいろドイツの会社でやってることを説明してくれてすぐわかったのは、日本側は 「あなた方が計算したところによると、発電コストは、コールダーホールがいくらになりますか、日本でも我々も計算やっとんだけど 」っていうようなことを訊いたわけだ。電力屋さんらしいわな。ところが技師長さんが言ったのは、「いや我々は、コストまで調べてない、我々が発電炉をつくりたいと思っておるのは、早く英米に追い付くためにはどうすりゃいいか。どこの技術をもらい何するか。日本も同じだろうけど、そのうちに必ず追い付いてみせる」と。そういう気持ちでやっておるので、初めてつくる炉のコストがいくらになるかなんてことは問題じゃないと、こう言ったわけ。
こっちから行った人たちは、「ああやっばし技師は駄目だな」って顔しとるわけです。「経営者じゃなきゃだめだな」って顔してたけど、僕はそれ見て、「この技師長さんは偉い」と思ったんです。それが今あなたの仰ることに通ずるし、日本はもうとにかく、買ってくるということだけ考えとるわけでしょう。開発していこうという気がない。それは、メーカーが言うなら話わかるんですよ。ところが電力会社の人がそういってるんですから。そのへんの国民性の違いっていうのは 。
大塚: それは、僕は国民性だとは思わないです、国が経てきた経験だと思うんです。だから こういうの、島村さんに言うのはちょっと恥かしいですが、結局彼らは一度世界の先頭切って、つまリカンニングしたくたって何もないところを、自分達で歩いて来た訳です。その人たちは戦争に負けたために、そこで大きなギャップができた、それを埋めさえすれば、自分達はまた戦前の栄光ある状態にもう戻るのは、当たり前だと思ってるわけです。自分たちで考えて。
彼らは ASME(米国機械学会基準)じゃなくて、もともと自分の技術基準 (DIN:Deutsche lndustrie Norm) を持ってるわけですから、やっばリドイツの基準にあわせてやってかなきゃいかんし。ものの発想が、たまたま戦争負けた時だけが異常なことであって、全て自分で考えて自分でつくるのがむしろ正常な、かつて皆もやってきたし、その時代の人たちは生き残ってるわけですし。
だから、その異常な戦後だけをどう乗り切るかだけを、彼らは考えておってやるのに対して、日本は前から技術を買ってやってきました。 だから戦争負けていよいよ今度再スタートする時は、また同じように買ってやる気になるから、それこそライセンス契約だって、期限を切るようなことやらんわけです。いつまでも仲良くする。
向こうは、ドイツだってフランスだって、期限を切ってそこへ来たらもうそこでおしまいで、いよいよ後は独立するのは彼らは当然と思ってるわけです。だからそれは国民性じゃなくて、一度先進的な経験をした民族だからで。 だから日本だっていずれ電子工業かどっかの分野で、右見ても左見てもカンニングするもの、お金を払っても買えるものがない、本当の意味の世界の先頭切れば、必ず僕はそういう状態が出てくるんじゃないかと思う んです。
島村: それは、まだまだ勝負がつくのは早いんで。明治維新の時のように何もかんも入れて、そして追いついて、それを今度は追い越してという、日本は経験持っておるから、全てそういうやり方で。原子力についてもどんどん入れて、入れてやっとる方が結局勝つのか、どうかっていうけど、少なくとも30年経った今日では、かなりいいところまで来ている。
(引用終わり)
最後に加えるが、福島原発事故が起こった原因は、日本の原発技術にメタフィジックスが無かったからだ。メタフィジックスが無かったので、電力会社は、GEが作った設計スペックを錦の御旗にして、自分達で、勝手に、神棚に祭り上げて、「畏れ多くも一言一句、この文言を修正する事はまかりならん」「はは~、仰せの通りに致します」と、福島1号機を導入した当初から、延々と崇め奉った訳だ。そしたら、御教祖たるGE様から「ここに置いておくように」と、ありがたい御宣託を受けた、地上に露出した非常用のディーゼル発電機が、見事に津波に流されて、メルトダウンしたのだ
後からなら、「バッカじゃ無かろか」と誰もが思うだろう。でもそれは、原発技術者達がバカだ、というよりも、日本人の技術の背景に「メタフィジックス」が不足しているからだ。私はそのように断言する。メタフィジックスとは、外人から教わることなく、カンニングせずとも、自らの手と頭で、製品を作り上げる能力の事だ。日本人が自分達の頭を使わずに、すぐに外人に頼るのが問題なのだ。
ディフォルメして書くとくさ、上んごたるこつやけん。ちっとは物を考えてみらんね、あんたどんは。
相田英男 拝