重たい掲示板

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副島隆彦 投稿日:2014/02/20 05:56

【1287】[1532] 来週末、3月1日(土)に私たちの定例会=講演会があります。お集まりください。 

副島隆彦です。 今日は、2014年2月20日です。

大雪の困難もやがて去り、もうすぐ春が来ます。
私たち学問道場は、どんな困難が私たちの日本に迫ってきても、元気よく、知識人階級、読者人階級としての清廉(せいれん)さと、現実を慎重に深謀遠望(しんりょえんぼう)する知恵、知能の力で対応して、己(おのれ)の知恵の足りなさのせいで追い詰められてしまうことなく、賢く生き延びてゆきます。

さて、来週の末の、3月1日に、私たちの学問道場の会員との交流の場でもある 定例会(講演会)が迫ってきました。 以下の要領で開かれます。どうぞ皆さま、この集まりにご参集ください。再度、ご案内申し上げます。

会員の人でなくても、一日会員として参加できますので、お時間のある人はどうぞご参加ください。そして私たち学問道場がどのような人間たちの集まりであるかをご自分の目で、しっかりと確認してください。その上で、会員になって、私たちの言論、知識の運動を応援してください。  定例会は以下の要領です。

定例会(講演会)開催のお知らせ!

『キャロライン・ケネディ駐日大使着任が 日本政治中枢に与えている衝撃』

講師:副島隆彦/古村治彦
開催日:2014年3月1日(土)
会場:(財)全電通労働会館 全電通ホール、東京の神田の聖橋=ひじりばし=の近く
開場  12:30
開演  13:00
終了  16:30
主催:副島隆彦を囲む会

・3月1日定例会へのお申し込みは、コチラ↓
http://soejima.to/cgi-bin/kouen/kouen.html

副島隆彦です。 この定例会では、私たちの研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)君が、つい最近、出版しました「ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側 」(PHP研究所刊)の説明をしながら、最新のアメリカの大学知識人たちの先端の研究の内容を、分かり易く説明するでしょう。 そして日本が今、置かれている厳しい状況についての、「世界から見る目」をお伝えするでしょう。

ここからあとは、当日、私、副島隆彦 が、どのような話をするかを、そのアウトラインを、問題の問いかけ、の形で、少し書いてみようと思います。3月1日に皆さまとお会いできますことを楽しみにしています。

1.安倍政権はいつまで保(も)つか? 6月までか、あるいは、秋にプーチンを東京に呼び寄せて、日本とロシアの平和条約(=戦争終結条約。北方4島の問題の解決へ向けて)の話し合いを実現させて、ホームランを打って、それで来年まで長続きさせるか?

それにしては、安倍晋三は、すでに靖国参拝問題で、中国、韓国からでなく、アメリカを相当に怒らせている。ヨーロッパ各国の首脳たちも、どうやら安倍晋三を見限ったようである。 だから 政権(=内閣)が、どこまでもつか。その話をしなければいけません。

2.安倍首相の側近を自認(じにん)する、 本田悦朗(ほんだえつろう)氏(内閣官房参与=ないかくかんぼうさんよ=)と、衛藤晟一(えとうせいいち、首相補佐官)が、以下に載せる 昨日(19日)の新聞記事の通り、馬鹿丸だしの、 裸踊りを演じています。曰(いわ)く、

「 本田氏はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、第2次大戦中の神風特攻隊の「自己犠牲」について語りながら、涙ぐんだ。・・・・A More-Muscular Japan, Personified .・・・」

同じく昨日19日に、衛藤晟一(えとうせいいち)議員は、
「 「むしろ我々が失望だ。米国はちゃんと中国にものが言えないようになっている。中国への言い訳として(失望と)言ったにすぎない。・・・・同盟関係の日本をアメリカはなぜ大事にしないのか」

と述べた、とある。 アメリカに向かって「もう一度、ゼロ戦で神風特攻隊で日本人は戦うぞ」と、ケンカを売っているに等しい、この日本政府の中枢の状態と様相は、世界から見たら既に尋常(じんじょう)ではない。

アメリカのウォールストリート・ジャーナル(WSJ)という新聞は、日本で言えば、日本経済新聞であり、経営者、投資家たちが読む日刊紙である。このWSJ のアメリカ人の記者の前で、いいかと思って、何の自己防御もなく、7歳の少年のように、「・・・・本田氏は大学教授でもあるが、その言わんとすることを強調するため 神風特攻隊が米空母に体当たりするさまを頭の高さに上げた左手を落として表現 した」という活劇(かつげき)を演じている。  自分が嗤(わら)われていることに自覚がない。

3.以下のWSJの記事の中に出てくる、NHK会長になった 籾井勝人(もみいかつと)会長(この人は、菅義偉=すがよしひで=官房長官の忠実な子分。菅氏が、NHKの人事権を掌握したということ)が、「慰安婦は、どこの国(ヨーロッパの戦場にも)いた」という発言で、報道の中立性を冒(おか)していると批判されている。

この人物と並んで、百田直樹(ひゃくたなおき)というテレビの放送作家(シナリオライター)が、急に設(しつら)えられたように人気が出て、「永遠のゼロ」という小説、そして映画で、ゼロ戦による太平洋戦争の末期の神風特攻隊(かみかぜとっこうたい)を賛美した。それで若い世代にも共感を呼んでいる。それが右翼化する日本の傾向だ。

この百田氏も、NHKの経営委員になったのだが、「 (昭和20年、1945年3月の東京大空襲(=無差別爆撃=)で、13万人の日本人を、アメリカ軍は焼き殺した。その謝罪をしていない)という実感のこもった発言をしている。それで、このご両人はいつまで首が保(も)つかである。

4.ただし、安倍政権が倒れたあとでも、日本国内の“安倍勢力”は、このまま残ってゆくわけだから、日本は、戦争への道をひた走ることになる。一体、どこと戦うのか?

政治(ポリテックス)すなわち、一国の国民政治は 政治力学(せいじりきがく)であり、政治勢力(せいじせいりょく)の動きですから、個人の意見や正義感などを吹き飛ばしながら、このあともジリジリと動いてゆく。一体、日本は、尖閣諸島(せんかくしょとう)の周辺で、いつ中国の公船(こうせん)と軍事衝突( ぐんじしょうとつ、 militaric conflagration ミリタリック・コンフラグレイション)を 起こすか?

5.しかし軍事衝突は、そのまま戦争(warfare ウォーフェア)ではない。この考えの重要性を定例会で、私は、しっかりと説明することで、軍事衝突=事変(じへん)=事件との違いを十分に日本国民が分かり、それに備える、心構えをする、今のうちから準備をする、狼狽(うろた)えない、ということをお話ししようと思います。

6.それでは、安倍首相たちが、「不戦(ふせん)の誓いを新たにする為に(私たちは)靖国に参拝するのだ」と強弁(きょうべん)する際の、彼らの強い信念、論拠である「中国脅威論(ちゅうごくきょうろん)」についても、私たちは考慮しなければいけない。

以下のWSJの記事にもある通り、安倍首相を強く支持する人々は、「・・中国は、2、3年 で、いざ戦争となれば日本を打ち負かせる力を持つのではないかと恐れている」ということを日本の軍事強化、軍国主義化の正当化の理由としている。

中国脅威論は、突き詰めて書くと、以下の3つから成る、と私、副島隆彦は考える。

(1) 中国人は気持ちの悪い民族で、信用できない論。
(2) 恐ろしい統制社会(国民の自由がない)共産主義国である中国は崩壊するか、そうでなければ打ち倒されるべきである。
(3)中国が軍事的に強大化しつつあるので、それに対抗して、日本も軍事的に対抗して、自国の安全を守るしかない。中国が攻めて来るから、自衛のため の戦争をすることも考えなければいけない。

この 3つが、中国脅威論  (中国は日本にとって危険な国だ論)の構成要素だろう。この考えで安倍政権  を支持している日本国民は多い。

それでも、「安倍さん。アメリカとケンカしてくれよ、とまでは、私たちはお願いしていないよ」という国民も多い。 ここのところで今の日本国民の考え(あるいは魂、たましい)は揺れ動いている。このあと、私たちはどこへ向かうのか。あるいは、無自覚(ボーッとしている)うちに、どこへ連れて行かれるのか。

6.この他に、先の1月22日の、スイスのダヴォスでの会議( 世界の超財界人たちの集まり)で、安倍首相は、あのジョージ・ソロスから、「日本の安倍は、もう、世界基準のリフォーマー(改革者の指導者)ではない」と、見限られたようだという、情報も出ている。

アジア諸国だけでなく、ヨーロッパ各国の首脳たちも、日本の政治の暴走あるいは、その傾向に 強い懸念を表明している。

これらのことも、定例会で話さなければいけないと、思います。 学問道場の会員の皆さん。忙しい生活時間を繰り合わせて下さいまして、どうぞ私たちの定例会に結集してください。

副島隆彦拝

( 新聞記事の転載貼り付け始め )

●「 ナショナリスト本田悦朗(ほんだえつろう)氏がアベノミクスで目指す目標 」

2014年2月19日 WSJ
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304445404579391953576198282.html

本田悦朗氏は、安倍晋三首相の経済再生計画で中心的な役割を担う顧問(内閣官房参与)だが、戦時中の話を熱く語るナショナリストでもある。

本田氏はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、第2次大戦中の神風特攻隊の「自己犠牲」について語りながら、涙ぐんだ。
A More-Muscular Japan, Personified .

原文(英語)
.Japanese Prime Minister Shinzo Abe follows a Shinto priest to pay his respects at
Tokyo’s Yasukuni Shrine honoring the country’s war dead in December.
.
TOKYO- Etsuro Honda is a prominent adviser to Japanese Prime Minister Shinzo Abe on his program of economic revival, but he is also an ardent
nationalist who gets emotional about his country’s wartime past.・・・・・(以下、略)

昨年12月の安倍首相による靖国神社参拝については、特攻隊員など戦争で死んだ数百万の兵士たちを追悼するために、首相が参拝したことを喜んでいるとし、「誰かがこれをしなければならなかった」と語った。その上で、「私は首相の勇気を高く評価する」と述べた。

14人のA級戦犯も合祀されている靖国神社への首相参拝は、日本の隣国であり、かつての日本の軍事侵略の犠牲となった中国と韓国の怒りを買った。

この参拝によって、東アジアでは大胆な経済再生計画によって安倍首相がどこに向かおうとしているのかという厄介な疑問が浮上した。安倍氏は、経 済政策と同時に軍事力強化のため平和憲法を改正することを目標に掲げており、中国は安倍首相を軍国主義者だとしている。

日本の力を誇示するかのような安倍首相の動きに対する東アジアの反応は複雑だ。フィリピンやベトナムなど中国の台頭に反発する国は、中国との勢 力均衡上、より強い日本を歓迎している。実際、日本は両国に巡視船を提供しているのだ。

安倍首相の経済分野での政策を練るブレインの1人である本田氏は、「アベノミクス」の背後にナショナリスト的な目標があることを隠そうとしな い。同氏は、日本が力強い経済を必要としているのは、賃金上昇と生活向上のほかに、より強力な軍隊を持って中国に対峙できるようにするためだと 語った。同氏は中国に「深刻な脅威を感じている」としている。

急速に軍事力を増強し、経済的に拡大する中国に対する日本人の恐怖は根深く、この不安は「失われた20年」によって増幅されている。1990年 代初めにバブルがはじけた時、日本のGDPは中国のそれより約10倍も大きかった。しかし、今ではその半分強でしかない。

日本は中国のような核兵器を持ってはいないが、その通常兵力は強力な抑止力になっている。そしてもちろん日本はアジアにおける米国の主要な防衛 同盟国だ。

しかし、多くの日本人は東アジアにおける米国の力の持続性に不安を抱いており、毎年軍事費を2桁の伸びで拡大している中国は、2、3年 (5―10年という人もいる)で、いざ戦争となれば日本を打ち負かせる力を持つのではないかと恐れている。両国は東シナ海の諸島の領有権をめぐり 激しく対立し、そこで武力衝突が偶発的に起きる恐れもある。

本田氏のナショナリスト的な感情は中国に対するものにとどまらない。同氏にとっては、中国の脅威から日本を守れるような経済力をつけるだけでは 十分でなく、日本が世界の舞台で主体的行動を取れる活力があり、後見人としての米国にも頼らない、周辺国とのしがらみに左右されない国になること を望んでいる。

これも同氏が首相の靖国参拝を支持する理由だ。同氏は「日本の首相が靖国参拝を避けている限り、国際社会での日本の立場は非常に弱い」とし、「われわれは重荷を背負った日本を見たくはない。自立した国としての日本を見たい」と語った。

本田氏は大学教授でもあるが、その言わんとすることを強調するため神風特攻隊が米空母に体当たりするさまを頭の高さに上げた左手を落として表現した。
同氏は「日本の平和と繁栄は彼らの犠牲の上にある」と、目を真っ赤にさせながら言い、「だから安倍首相は靖国へ行かなければならなかったの だ」と語った。

安倍首相は周囲に率直な物言いの側近を集めており、その多くは日本政治の右派だ。彼らは新聞の見出しになり議論を巻き起こす一方、重要な問題に ついて首相の考えを知る手がかりを提供している。

人事に政治的な力が働いたとされるNHKの籾井勝人(もみいかつと)会長は先月の就任会見で、戦中の「従軍慰安婦」に関する発言で物議を醸した。この問題は韓国 との関係において依然火種になっている。しかし、同会長は、大騒ぎすることではないといった調子で、「このような女性は世界のどこの戦場にもいる」と 述べたのだ。

本田氏の主張は、日本は日本が望むように歴史を解釈し、それを表現する権利を持たなければならないというものだ。同氏はそれが「純粋に日本人の 精神と魂に関わる問題だ」と述べた。

●「 衛藤首相補佐官が「米に失望」投稿 靖国参拝反応巡り 」

2014/2/19  日経新聞

衛藤晟一(えとうせいいち)首相補佐官が、安倍晋三首相の靖国神社参拝に「失望」を表明した米国への批判を動画サイト「ユーチューブ」に投稿していたことが19日、分かった。

「むしろ我々が失望だ。米国はちゃんと中国にものが言えないようになっている。中国への言い訳として(失望と)言ったにすぎない」と指摘。「同盟関係の日本をなぜ大事にしないのか」と述べた。

昨秋に訪米し、ラッセル国務次官補らに「首相はいずれ参拝する。ぜひ理解をお願いしたい」と伝えた経緯も紹介。中国に関しては「いくら(日本側が)抑制的に努力しても中国の膨張政策はやむことはない。これ以上、抑制的にやると日本にとってよくない」と強調した。

菅義偉(すがよしひで)官房長官は19日午前の記者会見で衛藤氏の発言について「あくまで個人的見解だ。日本政府の見解ではない」と語った。その後、菅氏は衛藤氏に電話し、発言を慎重にするよう求めた。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。 会員の皆さん。どうか 定例会に来てください。お願いします。 私たちがささやかな研究団体、言論集団として ここに結集することが、日本の将来を憂い、私たちが危ない道に引きづられてゆかなくすることのアンカー(歯止め)です。

副島隆彦拝

会員アキラ 投稿日:2014/02/11 18:05

【1286】[1530]副島先生への質問

副島先生へ送ったメールの転載を投稿します。
不備等があれば、ご指摘下さい。
宜しくお願い致します。

質問内容

大前研一氏のECBは国債を買っていない記事について

副島 隆彦様

会員の○○と申します。
ヤフーのニュース等を見ていたら下記記事を見つけました。
週刊ポスト2014年2月14日号の記事のようです。私の読み
違いでなければ件名の内容だと思うのですが。夜も遅いの
で短文の挨拶文で申し訳ありません。また、お忙しいでし
ょうから簡単なお返事で結構ですのでお教え頂けたらと思
います。
 お願い致します。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140209-00000014-pseven-bus_all

(転載貼り付け始め)

日本が円安と共にコントロール不能のインフレに陥る可能性も
NEWS ポストセブン 2月9日(日)16時6分配信

アベノミクスは本当に効果を発揮したのか。日本だけが給油しながらアクセルを踏み続けるような状態を続けているので、今年は日本経済にとってかなりつらい年になると大前研一氏は分析している。

* * *
2014年に入り、日本経済の「潮目」が変わった。私は年初からその空気の変化を感じて発言してきたが、結論から先に言えば、今年はかなり“つらい年”になると思う。

新聞・テレビなどは株価が大幅に下落した1月半ば頃からようやくその変化を報じ始めたが、予兆はすでに昨年末に現われていた。これほど円安になっているにもかかわらず、輸出数量が増えていないのである。その理由を克明に調べていくと、アベノミクスは本当に景気上昇・経済再生の効果があったのかどうか、甚(はなは)だ疑わしくなってくるのだ。

安倍政権は景気を上向かせるために、いわば車にガソリンを注ぎ続けながらアクセル全開でブレーキを踏まずに突っ走ってきた。その象徴が、一般会計の総額で過去最大の95兆8800億円に膨れ上がった2014年度予算案だ。さらに、もし4月からの消費税引き上げで景気の腰折れ懸念が広がれば、補正予算を組むのは時間の問題である。

振り返れば、EUではギリシャの財政問題に端を発した欧州債務危機の時に、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が「必要があれば、どこの国の国債でも無制限に買う」と言ったから、危機が遠のいて小康状態が続いている。ところが、ECBがどれくらい国債を買ったのか調べてみたら、なんと「ゼロ」だった。

黒田総裁と異なり、ドラギ総裁は“口先”だけで、実際には全く買っていなかったのである。国債を買っていないEUと買いまくっている日本。それが現在のユーロ高の最大の理由である。

要するに、EUはガソリンを入れてアクセルを踏むことはしなかったのだ。アメリカも少なくともアクセルを踏むのはやめて、ブレーキを踏むかもしれないという状況になっている。そんな中で、日本だけが給油しながらアクセルを踏み続けている。このままでは、さらなる円安とともに、コントロール不能のインフレに陥る危険性が高まる一方だ。

賢い企業や個人は、すでに昨年までの円高局面で資産を海外に移している。それが今年はさらに加速するだろう。円安が進んだ今では、もはや遅きに失した感もあるが、とにかくインフレ危機への備えを急ぐに越したことはないのである。

※週刊ポスト2014年2月14日号

(転載貼り付け終わり)

以下、副島先生からの回答

○○さまへ

副島隆彦から

メールをありがとうございます。
私は、昨日は、大雪の中で、東京の新橋で、何とか金融セミナーを開催して無事終わりました。
ただし、会場の外で滑って転んで足をねん挫したご婦人がいて、その方にとっては不幸なことでした。
こんな真冬の時期に講演会を決めて、そのせいでまことに申し訳ないことをしたと主催者として反省しています。

○○さまが送ってくださった、週刊ポストの 大前研一氏の 経済予測ですが、大筋ではこれでいいのだと思います。 大前氏は、今の安倍政権に批判的な立場を取っていて、きっと 政権や体制メディアからは嫌われていると思います。

ですが、大前氏の、「ところが、ECBがどれくらい国債を買ったのか調べてみたら、なんと「ゼロ」だった。」というたった一行の文で、何かが分かることはありません。 大前氏には、独自の 調査機関はありません。
私、副島隆彦 と同じで、今は、組織も何もない、ただの評論家です。
大前氏の会社、 大前アットマークは、もう、ぼろぼろで、10人の社員も食べさせることは出来ないはずです。 経営コンサル上がりの 彼ですが、泥臭い、本当に厳しい 経営の才能まではなかったのです。私には、このことはよく分かります。
なぜなら、私、副島隆彦の本と、彼の本で、今、どっちが売れているか、と言えば、私の方だからです。

ということは、私は、この収入で自分の家族を養っているのが、精一杯です。だから、大前氏が、いくら本を出しても、彼も自分の家族の文だけでやっとのはずなのです。 ですから、○○さまも、 もっと、冷酷に、物事を考えるようになってください。もっと 経営者の厳しい目で、世の中を見てください。

できれば、○○さまご自身が、この記事を、私の文も含めて、重たい掲示板に、転載投稿してください。

今後とも 「副島隆彦の学問道場」 をよろしくお願いします。

副島隆彦拝

薄桜鬼 投稿日:2014/02/08 05:23

【1285】[1529]安倍首相靖国参拝問題についての体験的感想

はじめまして、
私は、中国在住の「学問道場」会員です。
私は、副島先生の「日本を何とかしなければ」というお考えに共鳴し、副島先生の著作と学問道場での学びを通じ、「我々は、日本人として、今、何を、どのようになすべきか」について考察を試みている者です。

この度、重たい掲示板と会員ページに掲載された安倍首相靖国参拝問題関連の一連の壮大な評論文は、中国現地での当時の実体験を通し私が抱いた感情と疑問に、論理的な根拠と解答を与えてくれました。
評論文を御拝読し、眼から鱗が落ちるとは正にこの事だと感じましたので、そのことについて書かせていただきたく筆を執った次第です。

昨年末の安倍首相の靖国神社参拝の当日の夜、夕食の休憩時間に、私は部下の若い日本人スタッフと一緒に、中国の工場の近くの小さな食堂で、食事をしていました。
当然、周りには現地ワーカーがたくさんいて、食事をしています。
工場では、現地の管理者や幹部とは常に業務で接していますが、現場の生産ラインの一般ワーカーと、我々日本人幹部は、あまり直接接触することはありません。
したがって、管理者クラス以上になると、我々日本人のことを理解していますが、一般ワーカーの人たちは、日本人についてはほとんど何も知りません。
ただ、日本顧客の製品を製造しており、工場にも日本人がいることは知っていますので、食堂で、日本語を話していると、「聞いたことない言葉を話しているな」「へえ~これが日本人だ」というような好奇の眼で見られます。ワーカーは20歳前後の若い人たちが多く、その視線は単純に好奇の眼であり、無邪気なものです。
その日も、私は部下の現地採用の若い日本人と日本語で話しながらラーメンを食べていたのですが、突然、後方のテレビから、当然中国語で「安倍首相靖国神社参拝問題」というアナウンサーの声が聞こえてきました。ドキッとして、後ろを見ると、テレビの画面に安倍首相と靖国神社の写真がクローズアップされており、安倍首相が靖国神社を参拝したことについての特集番組が始まっていました。(もちろん批判的な論調です。)
その瞬間に、周りのワーカーもいっせいにテレビに集中し、次の瞬間に、皆の視線が、我々に向けられました。その視線は、正確に表現するのは難しいのですが、いつもの好奇のものではなく、未知のものを見るような驚きを湛えたものに変わっていました。
その時、私が感じた正直な想いは「一国の総理ともあろう人が、また軽率なことをやってくれた」という苦々しいものであると同時に、自分でもうまく説明できない、本当に情けなく悔しく辛い感情が込み上げてきました。

こう言うと、反感を抱かれる方もいらっしゃるとは思いますが、現地では本当に切実な問題となります。
普段は、特に労務上で大きな問題はないのですが、いったんこういう政治的な問題が起こると、それをきっかけにして、わざと労働争議等の問題を起こすような者が出てくる心配が生まれます。めったなことでは、そこまでの問題は起こりませんが、以前の反日デモの際には、近隣の工場でもデモ隊に投石されたり、デモ隊と工場内のワーカーが連携を取って全面ストライキに発展してしまったような工場も出ました。
我々が一番怖いのは、ストライキが発生して生産が止まることです。生産が止まるとお客様への納期が守れず、お客様に多大な損害を与えてしまうからです。
したがって、以前の反日デモの時の記憶があるので、今回の参拝問題では、非常に神経を尖らせました。なにしろ一万人近いワーカーがいると、万が一何か問題があった時に、制御しきれるかどうか不安を感じるものです。
そのため、現地の中国人管理者や中国人幹部が一生懸命に現場管理、現場指導を強化し、仕事に集中させ、余計なことをする者が出ないようにいつもよりも数倍の気を配って対応してくれました。
現場では、生産を完遂するという共通の目的のために、中国人と日本人が一致団結して協力し業務にあたっているのです。
憂さ晴らしや悪戯だと思いますが、「小日本」(日本の蔑称)などの落書きは数件ありましたが、結果としては特に問題は起こりませんでした。

話を食堂に戻します。
テレビを見て、私はすぐに上述したような問題の発生の懸念と対処方法について考えていましたので、少し沈鬱な表情になり、食事も余り取らず食堂を出ました。
部下の若い日本人は、私の表情を見て勘違いをし、「いやあ、また中国がうるさく言ってますね」と話しかけてきました。中国で仕事をしていると正直、嫌なこともありますし、自分にスキルが無いと部下に相手にされないこともあります。彼は、経験もまだ浅いので、そういったストレスから、やや反中的な感情が芽生えていたのだと思います。そして、私もそういった感情を共有していると勘違いしたようでした。
そこで、私は彼に言ったのですが、「何か勘違いしていないか?私が問題視しているのは首相の行動であって、中国の反応ではない。首相がこのような行動を取れば、このような反応が起こるのは目に見えているのだから、もし、首相が我々現地企業のことを真剣に気遣ってくれているのなら、そのような行動は取らない。それに対して、中国の反応が過剰だと言うのは見当違いだ。日本が過去に戦争、占領したことは事実だし、その過程で、いくら否定しようとも、戦争なのだから多少なりとは許されない行為があったはずだ。そうであれば、社会における個人と同じで、一度何か過ちを犯した人は、それから逃げることは出来ないし、未来永劫その過去を背負って生きなければならない。批判されても、過去の事実は変えられないので、じっと耐えるしかない。それでも、更生したことを人に認められたいのであれば、自分はただひたすら、周囲からあの人は変わったなと思われるような態度と行為を取り続けるしかない。それでも批判され続けることのほうが多いかもしれないけれど、立派な行いを地道に続けていれば、いつかは誰かが理解してくれる日が来るかもしれない。現実とは、そういう厳しいものであって、それが、戦争をし、しかも負けた国となれば、その後の歩みが非常に厳しい道のりになることは当然のことだ。何世代にもわたって批判され続けるだろう。それでも、日本が立派な国であるためには、ただひたすらに過去を払拭するための努力を続け、ひたすらに立派な行いを続けるしかない。君は、中国に来て、中国のおかげで仕事が出来て、中国のおかけで給料がもらえているのに、さっきのような感想しか感じることが出来ないのなら、さっさと日本に帰ったほうが良い。中国語が少し話せると言うだけで、中国に来て、のほほんと過ごすだけならば、日本にいたって出来ることだから、わざわざ中国に来る必要はない。我々は海外に出た以上、場所がどこであれ、現地の人から見れば、日本人を代表しているのであり、日本人として、もっと真剣に現地とお互い歩み寄り、お互いの良いところを引き出すような思考をする努力と訓練が必要であり、日本人として恥じない思考と行動の努力と訓練が必要だ。それが出来ないのなら、日本の恥になるだけだから日本へ帰れ。」
というような事を言いました。
厳しい内容だったので、彼はショックを受けたようで黙って下を向いていました。
彼については、再度後述します。

以上の体験談に加えて、補足しますと、中国側が特に問題視しているのは、靖国神社に戦犯が祀られている点です。
私の中国の知人や友人も、「靖国神社には、なぜ戦犯が祀ってあるの?戦犯が祀られていなければ、別に問題も起きないのに、なんで?」という素朴な疑問を持っています。

以上の体験で私が抱いた、自分でもうまく説明出来ない、本当に情けなく悔しく辛い感情について、また、知人や友人の素朴な疑問について、副島先生は、今回の一連の評論文で明確に解明してくださったと感じました。

特に象徴的・総括的な内容の部分を以下に転載させていただきますと、

(転載始め)
[1514]安倍の靖国参拝問題が大きな火種に。日本は世界中を敵に回してはいけない。

 ここで、端的(たんてき)に言うと、United Nations (ユナイテッド・ネイションズ=連合諸国、連合国側) の総意に、日本は従わなければいけないのだ、ということだ。世界を敵に回してはいけない。この 連合諸国=が第二次世界大戦の間にできて、それが、そのまま、戦後も、そして今も 世界体制( The U.N. ×「国際連合」は愚かな、意図的な訳語だ。正しくは United 連合 Nations 諸国 、連合諸国だ  )なのだ。現在のこの世界体制を敵に回して、安倍晋三たちは、勇ましい、頓馬(トンマ)な闘いをやっている。 世界とはどういうところか、が分かっていない。 世界の厳しさも分かっていない。 甘やかされた坊や みたいな連中だ。

「ヤルタ=ポツダム体制の打破」、「東京裁判史観の克服」、「戦後レジームの打破」を掛け声にしている、愚か者の集団だ。 その甘えきった態度が、どれぐらい自分たちの愚かさを、今、世界中に、満天下に晒(さら)しているかを、分かっていない。 安倍晋三たちは、いいかと思って世界の舞台で裸踊りをしているのだ。

それでアメリカに楯突いてみせれば、それで、自分たちが英雄気取りだ。アメリカ(オバマ政権)が怒っているのは、今の日本の極右政権が、世界の戦後秩序=世界体制 を 、半ば無自覚に破壊しようとしている、甘ったれた連中だということを、日本側が分からないことだ。 安倍たちは、アメリカを敵に回しているのではない。世界を敵に回しているんだ。 世界を敵に回すと、本当に、恐ろしいことになるのだ (世界は、いったん決めたら、本当に国際的強制執行をする)。

 東条英機(とうじょうひでき)首相(大将)たち、7人戦争指導者を、死刑にして首を吊ったのは、アメリカの軍事法廷(ミリタリー・トリビューナル)というだけでなく、世界体制なのだ。その東条たちを、合祀(ごうし)して祀(まつ)っている(1978年から)靖国神社は、世界基準での The Tomb of Unknown Soldiers ザ・ツーム・オブ・アンノウン・ソルジャーズ 無名戦士の墓 ではない。東条たちは、戦争指導者たちであって無名戦士ではない。

 自分たち、世界体制が東条たちの首を吊ったのに、そこに、どうやって、外国の元首たちが、花輪を持って、哀悼の参詣をすることができるだろうか。世界中の国々の無名戦士の墓に、外国の元首(大統領、首相、国王)は、お参りするのだ。 このことを、日本人は、分かっていないのだ。誰も説明する者がいない。皆、愚かな日本国内の境域と、テレビ新聞の洗脳で、国民は、世界基準の知識、世界で通用している当たり前の思考、思想を、を全く教えられず、めくら(=盲目)にされたままだからだ。
(転載終わり)

まさに、総括し、論理的に説明していただくと、そういうことなのです。

一国の総理ともあろう御方が、世界とはどういうところか、が分かっておらず、世界の厳しさも分かっていない、甘やかされた坊やみたいな連中であり、その甘えきった態度が、どれぐらい自分たちの愚かさを、今、世界中に、満天下に晒(さら)しているかを分からずに、世界の舞台で裸踊りをしているのだという事実なのです。
我々庶民が現地でこつこつと積み上げた現地の人との信頼関係を、軽率な行為が、一瞬でぶち壊しにするのです。
日本人として、もっと祖国に誇りを持っていたいのに、一国の最高責任者が裸踊りも同然の状態なのです。
本当に情けなく悔しく辛い感情が湧きあがって来て当然だということを、自分で納得できたので、おかげさまで、気持が久しぶりに本当に晴れ晴れしました。(ただし、状況は変わっていないので、問題はそのままですが。)

また、知人や友人の素朴な疑問は、国際政治学的観点から解説いただくと、まさにそういうことだと思います。
世界体制が戦犯の首を吊ったのに、そこに、なぜ、元首が、花輪を持って、哀悼の参詣をすることができるだろうか。元首(大統領、首相、国王)がお参りするのは、世界中の国々の無名戦士の墓であるはずだ。
これが海外での通常の思考であり、どんな経緯や言い分があろうとも、結果的に海外から不信感を持たれるという結果になっているのは、まぎれもない事実です。

そして、大きな問題は、最近になればなるほど、明らかに日本の実際の国力すら、どんどん弱くなっているということです。
首相が踊ってはしゃいでいるだけなら、まだ良いのですが、そのうち、踊ることも出来ないくらいに国が弱体化するのではないかと本当に心配になります。
といいますのは、中国にいると本当に実感するのですが、日本のモノづくり産業、特に電機産業の凋落ぶりは著しく、多くの工場で閑古鳥が鳴いており、閉鎖もあいついでいます。
1980年代、1990年代には、SONYや松下などの電機関連企業は、その最先端の技術と高品質とデザインで中国でも大変尊敬を集めていました。
中国に技術指導に来る日本社員の仕事に対する情熱や誠実さ、モノづくりに対する姿勢や思想は、大変多くの中国の管理者や技術者を育成することに貢献したし、現地社員からも尊敬を集めていました。
さらには、優れた企業家であるSONYや松下の創業者は鄧小平から直々に招待され会談し、中国の産業政策に助言したことは、中年以上の中国人であれば多くの人が知っている事実です。
かつては、それほど、日本の電機産業は中国現地から尊敬を受けていました。
今でも、私が、日本のモノづくり企業の歴史やモノづくり思想について、話をすると、中国人スタッフは、本当に真剣な眼差しで聞いています。
しかし、世界の産業構造の大きな変化と生産分業化の急速な進行に対応しきれず、日本の電機産業をはじめとする多くのモノづくり産業が業績の悪化にあえいでいます。
日本の政府として、産業構造の再構築を促すような政策も行わず、生産を支援する政策も行わず、国力の根源である産業が弱体化するに任せている様には、非常に大きな不安を感じます。
このように、過去には確かに、日本も中国から尊敬される面も持っていたのです。
非常に立派な企業と企業家の貢献により、日本も中国から尊敬を受けていたのです。
やはり自分の行いを正し、自分の行いが本当に立派であれば、相手も分かってくれるということだと思います。
しかし、そのように貴重な日本の国力の根源である産業をも、現在、どんどん自ら破壊しているような気がしてなりません。
日本国内では、アベノミクスで景気が良くなったと浮かれているとのことですが、これは目先の数年だけ浮かれさせられて、その後は地獄が待っていることは、副島先生が看破されています。

そして、副島先生著作の「安部晋三の奇怪な変節と「ザ・カルト・オブ・ヤスクニ」から引用させてください:

(転載始め)
「安部晋三の奇怪な変節と「ザ・カルト・オブ・ヤスクニ」

このように、小泉がはじめた数年前からの靖国参拝の政争化の狂騒は、日本の対外的・外交的関係としても、絶対にやるべきではなかった。私たちは、アジア諸国の怒りと不安を本当に掻き立てたのだ、と知らなければ済まない。

首相の靖国参拝問題(小泉の狂騒)はまさしく、子供の火遊びであり、児戯であった。それがどれくらい今の日本を結果的に追い詰めたかを、率先して音頭を取った人々は深く反省しなければならない。

ただひたすら、アメリカに対して、忍従の構えで、這い蹲り、土下座して、ただただ政府資金と国内大企業群(への株式乗っ取り支配)と、国民の資金を差し出すだけであった。
このような私たち日本側からのアメリカへの世界一忠実な属国としての屈辱的な対応が、中国や韓国やアジア諸国から見たら、あまりもの屈辱に見えた。だから、「日本は、あんなにもアメリカの言いなりの国なのか。あれでは奴隷国家だ」と、中国の指導者たちは思った。それで、「今の日本なんか、相手にもならない。戦前の強大だった日本とはどうもちがうようだぞ」ということになった。それで、日本は、今の中国の指導者たちから、低く扱われ、すっかり舐められるようになったのだ。そして、東アジアにおけるメインプレーヤー(交渉大国)の地位を、この「2006年のヤスクニ火遊び」を契機として、ものの見事にあっさりと失ったのである。
(転載終わり)

昨年末の安倍首相靖国参拝時の中国現地での実体験で、私の中に湧きあがった情けなさ、苦々しさ、悔しさ、悲しさ、不安、という感情の根源は、まさにこれらの記述が総括してくださったことであると思います。
絶対にやるべきではないことを、やっているということを本当に分かってほしいし、如何に日本を追い詰めているかを、本当に自覚し、本当に反省してほしいと痛切に思います。
そして、かつては尊敬されていた面も多々あったのに、それをどんどん自ら破壊し、自らをどんどん弱体化させ、自らどんどん馬鹿にされる方向に突っ走っています。本当に情けない気持ちでいっぱいになるし、本当に悔しく、悲しく、不安を感じさせる状況です。

最後に、例の彼の数日後の話をします。
彼は、個人的にキツイ目に会ったので、少し反中的な感情が芽生えただけで、もともと明るい性格で、公正なものの見方を出来る人間です。
そして、サッカー観戦が大好きなのですが、数日後に非常に嬉しそうな顔をして私のところに来ました。彼が言うには、「もともと中国のサポーターは自国のチーム以外を良く言ったりはしないのですが、最近、中国では、日本チームが、そのフェアでストイックな姿勢と高い技術で尊敬を集めるようになっています。」とても嬉しそうでした。
私から言われたことを数日間、彼なりに、考えて咀嚼した結果だと思ったので、
「やはり自分の行いを正し、自分の行いが本当に立派であれば、相手も分かってくれるということ。我々も日本の武士の代表として頑張ろうな。」と言うと、
「はい!自分も、これからもっと頑張ります!」と晴れやかな表情で言ってくれました。

今回の副島先生の安倍首相靖国参拝問題関連評論文が、私の体験的感情に対して、明晰な論理的思考の道筋をつけてくださったということ、
一国の総理の靖国参拝を契機として、国際的最前線の現場で起こったささやかな人間模様とドラマを参考までに皆さまにお伝えしたかったことから、
以上、長々と書き連ねさせていただきました。
もし、副島先生の著作や論文の引用について、私の曲解がございましたら、ご指摘・ご指導を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

ありがとうございます。

薄桜鬼 拝

副島隆彦 投稿日:2014/01/31 17:10

【1284】[1525]安倍の靖国参拝問題から、その後の世界の動きを洞察、予言する。

副島隆彦です。 今日は、2014年1月31日です。

 安倍首相の靖国参拝(昨12月26日)問題の発生のあとの世界規模の大きな政治のこれからの動きを、箇条書きで、私の考え(=未来予測)を書いておきます。今日は、細かいあれこれの傍証(ぼうしょう)の記事は載せません。 断言、断定、予言の言い切り文体で書きます。日本の国家戦略家(ナショナル・ストラテジスト)を自称する者としての自負心で書きます。

1.安倍晋三の 靖国参拝は、正しい。あれでアメリカ政府の怒り( アメリカの強い説得の制止を振り切って強行した)を買ったが、安倍晋三が、「首相として靖国に行かなければ、それが痛恨の極みだった」とまで当日、言ったのだから。

 安倍晋三(自民党政権のタカ派路線)を支持しているのは、おそらく7割の日本国民だ。そのうちの、4割は、安倍の靖国参拝に対して、「アメリカを怒らせている。そこまでやってくれと、日本国民としてはお願いしていない」と、安倍から少し離れた。だから強固な安倍支持はあとの3割(30%)だろう。

 しかし、だからと言ってこの4割の国民が安倍支持を公然とやめたわけでない。今も国民は音無(おとな)しの構えだ。靖国問題では国民の多くは、大きな真実を知らされていない。それは、私、副島隆彦がこれまでに、ここの重たい掲示板に書いた内容だ。

2.「どうして靖国に参拝したらいけないのか」の疑問を多くの国民は抱いたままだ。
「なぜ戦争で死んだ軍人兵士をお参りしていけないのか」と、安倍を強固に支持の3割の国民も、アメリカに対して疑問を抱いたままだ。だから感情、気分、気持ち、民族ロマンティシズム、情緒としては、安倍首相の靖国参拝は正しい。

 日本国民の多くに、反アメリカ感情、反米(はんべい)感情の鬱積(うっせき)が見られる。この日本人の反米感情の薄っすらとした噴出(ふんしゅつ)は正しい。 この反米感情の日本国内での堆積、蓄積を、アメリカやヨーロッパの指導者層 (すなわち 欧米白人文明の側)は、気にして恐れている。外側世界(=国際社会)から見れば、日本国内は、安倍首相の元で団結しているように見える。 日本国内には、安倍政権への反対勢力は事実上存在しない。自民党内にも、倒閣運動(内閣を壊そうという動き。政局=せいきょく=と言う)は見られない。

3.だから安倍晋三の靖国参拝は正しかったのだ。ただしそれは国民感情としての、情緒、気分、感覚のところでの正しさだ。それは、「戦争中には、アメリカ「も」残虐なことをたくさんした。広島、長崎への原爆投下をアメリカは今も謝罪しない」という日本国民の重低音での怒りと不満だ。

 しかし、これらの情緒、感情、気分を土台とする日本国民の、反アメリカ、反世界(=反白人文明)の理屈は、理屈=理論にならないものだ。世界で通用する理論的(ロジカル)な、理論的(セオレティカル)なものではない。だから、安倍晋三の靖国参拝は、世界基準(ワールド・ヴァリューズ、世界普遍価値観)からは、許されないことであり、間違いである。そのことを、私、副島隆彦がこれまでに論証して説明してきた。

4.個人の自由としては、安倍晋三が靖国参拝するのは自由である。しかし、「個人としての参拝」は、日本国の代表者(=首相)としては許されない。

 それは、第二次大戦(1939年9月のドイツのヒトラー政権のポーランド侵攻から始まった)のさ中に出来た、カイロ会談、ヤルタ会談で成立した 連合国側= The United Nations (ザ・ユナイテッド・ネイションズ)の誕生(成立)と、ポツダム会議(そして宣言)、日本のその受諾、そして日本の敗戦後の1951年のサンフランシスコ講和条約(日本が48か国と結んだ平和条約。=戦争終結条約)の時の、条約内容(約束ごと)に違反するからだ。 

 この連合諸国の体制 (=The United Nations 連合諸国 ×「国際連合」)という体制が、現在の世界秩序であり、世界体制である。これに逆らった行動は、日本はしてはならないし、出来ない。そのように条約文で出来ている。

 昭和天皇(裕仁=ひろひと=天皇)は。このことを重々(じゅうじゅう)知っていた。だから、昭和天皇は、日本は世界の大勢を敵に回しては いけないと、言った。そのことを私はこの「重たい掲示板」で、この1月になってから詳しく説明した。

5.アメリカは今も安倍政権に怒っている。しかしアメリカはもっと悪賢く、狡猾である。オバマ政権は、日本をさらに大きく外側から騙(だま)してくる。

 私、副島隆彦は、はっきりと予測(予言)する。もうすぐ、あと数週間もせずに、ジョー・バイデン副大統領が、次の大統領に立候補を表明するだろう。だろう、とさえ書かない。する。このジョー・バイデンをオバマは、強く支持している。「ジョー。僕が、今度は、君の副大統領になろう」 とまでオバマは冗談で言っている。彼らが闘う相手であるヒラリーはすでに実質的に立候補表明した。

 2016年11月の大統領選挙では、バイデンが当選して、次の2017年からの4年間(一期だけ)は、バイデンが大統領になる。民主党の政権が続くということだ。反対党の共和党からは、誰も満足に立候補しようする者さえ出てこない。共和党は初めから大統領選挙を投げている。だから、次はバイデンだと、副島隆彦ははっきり予測、予言しておきます。

6.だから、おとといの1月28日のアメリカ議会での、大統領の The State of Union (ザ・ステイト・オブ・ユニオン、一般教書(いっぱんきょうしょ)演説。「国民の団結」とも訳せる)で、これは、日本の首相の国会開催での所信表明演説に相当するが、ここで、オバマは、評判のあまり良くない演説をわざとやった。 

 オバマの真意は、ヒラリーの大統領選への立候補を、包囲して封じ込める、である。ヒラリーは、民主党内の軍事狂暴派(民主党タカ派)である。 これを、古村治彦研究員が、「人道主義的干渉主義者 (Humanitarian Interventionist ヒューマニテリアン・インターヴェンショニスト)」の勢力というコトバで「アメリカ政治の秘密」(PHP刊、2012年5月)で詳しく説明して日本に紹介した。 

 オバマとバイデンは、共和党系であるに決まっている軍人たちと、それと軍需産業(ミリタリー・インダストリー)の支持を、大きくその外側から取ってしまおうという戦略に出ている。だから、同じ民主党のタカ派のヒラリーを封じ込めるために、公務員や軍人の給料の値上げのような話ばかりを、一般教書演説でやった。あとは、軍需産業の業界への配慮が必要だ。

7.オバマと言うよりも、すでにバイデンが、「中東(アラブ世界)よりも、極東(東アジア)での 戦争の脅威を生み出し方がいい」と考えている。バイデンは、「中東のイランと、アジアの中国とで、どちらをアメリカの仮想敵国として、これからのアメリカの外交政策を作るか、と考えたら、それは、中国だ」と 判断している。

 アメリカの仮想敵国(ヴァーチャル・エネミー)を、新たに中国にする、とオバマは決断したようである。中国と、あんなにG2(ジー・ツー)で仲よくして、3月にも中国に行って習近平と会談する、と決めているとしてもだ。 オバマとバイデンの狙いは何か。それは、中国と日本が軍事でぶつかることだ。

 今も生き残っているネオコン派(元々は民主党の過激派だったが、今は共和党)は、なんとしてもイラン爆撃(小型の戦略核兵器を使ったもの)を、イスラエルと共にやりたい。ネオコンは徹底的にイスラエル寄りである。
だからネオコン派は、中東・アラブをアメリカの正面の敵にしたい。しかし、CFR(外交問題協議会。アメリカの財界、大企業の集まり)派であるバイデンは、イラン爆撃と、中東での新たな戦争を望まない。イスラエルの意思にアメリカが引きづり回されるのは御免だ、と思っている。それよりは、中国との緊張関係を作った方がいい、と考えている。

 これには、ジョン・ケリー国務長官もチャック・ヘーゲル国防長官の同じ考えだ。「アメリカは、外国への爆撃はしない。軍隊の派遣もしない(介入主義への反対)。アメリカはお金がもう無いのだ」という強固な意志でオバマ政権は団結して動いている。

8.だから、オバマとバイデンは、中国との対話を押し進めながら、その一方で、日本が、勝手に、暴走して、中国と、尖閣諸島で、軍事衝突(ミリタリー・コンフリクション)を起こすことを、アメリカにとって、これ幸いのことだと考える。だから安倍政権が、さらに暴走して、中国と軍事的に紛争を起こすことは願ってもないことだ。

 日中は、戦争(ウォー)にはならないが、その前哨戦である軍事衝突を起こすことまでを想定して、それに、仲介者、調停者(ミーディエイター)としてアメリカが登場することを考えている。

 これが、CFR(シー・エフ・アール)の、offshore balancing オフショワ・バランシング 戦略である。アメリカのこの大戦略理論も、古村治彦研究員が、先の本で、日本に詳しく紹介している。今のアメリカ(オバマ政権)は、外国への爆撃と米軍の出兵を避けたい。国内に大きな財政赤字問題を抱えている。

 自分の軍隊を戦線に投入しないで実質的に勝つことこそが、「孫氏の兵法」である。だから、海の外(オフショア)に遠くの方のアメリカ本国に居たまま、外国どうしの軍事紛争が起きることを予期し、それらを対立、拮抗させて、出来れば両方からの依頼を受ける形で、調停、和解の役目を買って出る、という戦略である。そうすればアメリカは、自分の軍隊を損耗(そんもう)することがないし、軍事出費がかさむことがない。

 ここで大事なことは、日中で軍事衝突が起きれば、アメリカの兵器(ミサイル防衛網、戦闘機、輸送ヘリなど)を日本が、大量にアメリカから買うだろう、ということだ。それで、オバマとバイデンは、軍需産業界の支持を取り付けることが出来る。そうすることでヒラリー派を日干しに出来る。このハト派戦略で、世界が大きな戦争に突入することを阻止できる。 

 バイデンは、今、72歳だから大統領になると74歳で、終わるときは78歳の高齢だ。しかしこの男は、「どんな汚れ仕事も、俺はやるよ」と闘志満々だ。

9.だから、尖閣諸島 や竹島で、軍事衝突が起きることまでを、アメリカは、期待し、予想し、誘い込むように戦略を立てている。そして、今年中にも、尖閣での日中の軍事衝突が起きる危険がある。 中国は、このアメリカの戦略を見抜いているが、だからと言って、日本と同じで、中国海軍の中の一番、危険な部分が勝手に暴走することを、北京の共産党の指導部が止められるかどうかは、分からない。日本の海上保安庁や海上自衛隊には、十分に危険な人間たちが潜り込んでいる。

 だから、安倍政権は、日本国民の7割の盲目的な「安倍さんは正しい」の支持を背景にして(国内の反対派はすべて抑え込まれている。勢力にならない。声にならない)、尖閣での軍事衝突に、引きづりこまれてゆくだろう。

今の日本で安倍政権と対立して、深く現状を憂慮しているのは、日本の財界人たちの集まりである経団連(けいだんれん)である。彼ら大企業経営者の集まりは、今の会長の米倉弘昌(よねくらひろまさ)を筆頭にして、「安倍さん。世界に向かってあんまり危ないことをしないでくれ」と苦言を呈している。「私たち大企業は、世界中で、工場を作って、現地の人たちをたくさん従業員たちとして雇って、それで商売をしているのだ。世界が何を考えているかを、私たちは現場のあれこれの苦労で、知っているのだ。安倍さん、あんまり勝手なことしないでくれ」と言っている。

 彼ら、日本の財界団体は、一人一人はサラリーマン社員からのたたき上げだ。それでも能力があって、組織内で苦労を重ねて、人望があるから財界人にまで成れた人たちだ。だから世界の現実を知っている。今の経団連の本当のお親分は、トヨタの会長もし経団連の会長もした奥田ひろし氏だ。彼たち財界人が団結して、安倍晋三たちの暴走を食い止めようとしている。

10.7年前の安倍政権の第一次(2006年9月からの1年間)の時に、「中国包囲網」という戦略を組んだのは、ワルの外交官である、谷内正太郎(やちしょうたろう)だ。このたび、国家安全保障局( 「日本版NSC」 )の局長という日本の国家情報のトップに就任して、その正体を露わした。

 谷内は、7年前に「自由と繁栄の弧(こ)」という戦略をぶち上げた。これは、中東世界までを包み込む、大きなアーチ型の地政学(ちせいがく)的な戦略図式である。

 「日本の努力で、平和と安定を、遠く中東世界にまで及ぼす」とは、よくも言ったりである。 この「自由と繁栄の弧(アーチ)」とは、まさしく、日本による 中国包囲網(ちゅうごくほういもう)のことである。外務官僚の谷内が、無い知恵を絞って、このような大風呂敷を敷いた。そのあとの2008年から一年の麻生太郎内閣でも、この「自由と繁栄の弧」を吹き鳴らした。

 そして、一昨年、2012年の12月からの安倍政権が、アーミテージたちのよって仕組まれたままに成立したら、この時とばかり満を持して、谷内を中心にして各省の幹部である官僚の”同志たち”が安倍の元に結集して、官僚組織(オール霞ヶ関)が一体となって、この「中国包囲網」という日本の独自の外交戦略の大綱を実行に移した。

 この谷内正太郎の、「自由と繁栄の弧」は、1930年に出来た、かつての「大東亜共栄圏(だいとうあきょうえいけん The Great East-Asia Co-prosperity Sphere ザ・グレイト・イースト・エイシア・コプロスペリティ・スフィア)の 再来である。果たしてこの日本の隠された外交戦略を、現在の世界体制( 諸国連合 ×「国連」 The U.N.)が見抜いているか、そして許すか? 

11. 谷内と安倍は、周囲の雑音も、アメリカらの懐疑の目もなんのその、で、今も着々とこの「自由と繁栄の弧」づくりに専念し、実行している。

 そのために、安倍は、この1年2か月で30か国にも出かけた。ベトナムにも、ミャンマーにも、インドにも、そしてトルコやモンゴルにも出かけて、(その前に大臣たちを遣ってから)「日本が、新幹線(高速鉄道)と原発を、タダで上げますから、日本との同盟を大事にしてください」とこれらの各国の首脳を誑(たら)し込むことに精を出した。

 一番最近は、インドにダメ押しに行った。1月22日のスイスのダボス会議(世界経済フォーラム。世界の超(ちょう)財界人たちの会議。ビルダーバーグ会議の表側 )で、靖国参拝問題で安倍は世界の“針(はり)の莚(むしろ)”に座らされて、ヨーロッパ首脳たちからの、「日本は戦争を始める気か」と疑惑の目で見られた。それなのに、帰ってきたらすぐに予定通りインドに行った。

12.だから、この谷内の「自由と繁栄の弧」戦略で、7年前から、コツコツと、中国包囲網を築いて来た。そのもう一つの大きな北側の「弧(こ)」が、ロシアの取り込みによる、ロシアと日本とでの“中国 挟(はさ)み撃ち“戦略だ。

 これが、私が、これまでに何回か報告した、サハリン(北樺太、からふと)の天然ガスのロシアからの、海底パイプラインを引いての日本への直接の購入の商談だ。プーチンは、この話に乗ってきた。だから、中央アジアのカザフスタンや、今もロシアの家来であるモンゴルでの、日本の日立や東芝による原発作り(産出するウランとのバーター=物々交換方式=)にも反対しなくなっている。 

 サハリン(かつての北樺太で見つかった油田地帯)の天然ガスの日本への販売を起爆剤にして、その代金でシベリア大開発を何としてもやりたいプーチンとしては、日本と組んで、「中国包囲網」の話に乗るのは、損なことではない。だから、北方四島の「海の面積半分での2島返還」での話し合いも進めて、日ロの平和条約(=戦争終結条約)に持ち込むつもりだ。

13. ところが、年末から急に起きた、安倍晋三の靖国参拝で、ロシアのプーチンもユーロッパ首脳たちの顔色を窺(うかが)っている。ロシアは今、日本批判を全くしない。ソチのオリンピックを無事、テロ事件なしで乗り切りたいの一心だから、外国のトラブルに巻きこまれたくない。

 ウクライナ問題だけで十分だ、と思っている。ウクライナ人の中のヨーロッパ寄りの「自分たちウクライナ人=キエフ公国=は純粋白人種であり、モスクワ公国の時のルース=ロシア人たちが、モンゴル人(タタールの頸木=くびき=、韃靼人、蒙古人)に卑屈に屈服したのとは違うのだ」で 騒いでいるので手一杯だ。ロシア人自身も、出来ることなら自分たちもヨーロッパ白人文明の一一部だと自分たちのことを思いたい。

 それでも自分たちロシアは、第二次大戦の時の連合国側=連合諸国(=×国際連合)5大国(ファイブ・パーマネントメンバーズ。常任理事国)の重要な一員である。日本のような敗戦国とは違うのだと、と当然に思ってる。ロシアは、今は、中国とも長い国境線での貿易を仲良くやっている。

 それでも、中国人が、どんどんロシア側に経済進出( 浸出=しんしゅつ=、浸みだして来るようにどんどん出てくる)ことを嫌がっている。 靖国問題が一段落しないと、サハリンの天然ガス輸出と北方領土問題(平和条約締結)も動けない状態だ。

14.韓国の パク・クネ 大統領は、去年の就任以来、安倍晋三と反目し合っている。日本国内に、韓国叩き、嫌韓(けんかん)、韓国嫌い、韓国蔑視の大きなキャンペーンが、計画的に去年から週刊誌を中心に作られた。今は、靖国参拝問題が起きたので、それどころではなくなった。弱い者いじめの韓国(人)叩きなど、まともな人間がすることではない。

 それでも深い長い歴史の中にある互いの民族排外主義(ショービニズム)の感情の噴出であるから、これを簡単に止めることは出来ない。パク・クネのアメリカやヨーロッパ諸国への「言いつけ」、「告げ口」外交は、功を奏した。日本は、日韓併合(1910年から1945年、朝鮮半島の植民地化)や、戦争中のあれこれの所業での悪者になった。世界中に日本国がやった過去の行いの非人道は今も批判されている。

 事実であることは認めなければいけない。ところが日本国内では、世界中では語られてる日本(人)による残虐な行為の数々は語られない。日本のヤクザ者たちが、ドスを腹巻に巻いて、何万人も日本軍よりももっと前方で残虐な破壊活動とかをしたのだ。ところが、「自分の民族を貶(おとし)めるようなことは言いたくない」という、情緒、感情、気分に基づく態度を日本人の多くは取る。 「自分たちは間違っていない。悪いのは自分たちだけではない」という安倍晋三支持層の日本人の頑(かたく)なな態度は、このあと、これからますます、日本を窮地に追い込むだろう。世界をどんどん敵に回してゆくことになる。

 韓国は、日本との竹島(韓国名、独島、ドクト)問題で態度を硬化させている。それで、アメリカが音頭を取っての米・日・韓の 三国での軍事同盟の邪魔をしている。いつでも暴発しそうな北朝鮮に対抗する軍事協定を作ることに反対して、韓国はアメリカを困らしているようにさえ見える。韓国は、アメリカが買え、と言っている、TMD(ミサイル防衛網)を買わない、と言った。

 サードも買わない。そして、在韓米軍(2万人ぐらい)の撤退問題も先送りにしている。朝鮮戦争の時の国連軍(こくれんぐん)の最高司令官の地位を、アメリカ軍人から韓国軍人が引き継ぐ交渉も、ほったらかしにしている。

 韓国は、アメリカ軍の韓国からの撤退を望んでいない。韓国駐留のアメリカ軍師団は、今はもうソウル市の北方 (板門店、パンムンジョンの近く)には居なくて、南の釜山(プサン)にいるはずだ。このアメリカ陸軍の旧第5軍(マッカーサー元帥が率いてきた)は、逆に、韓国の人質になっている、という感じだ。

14. バイデンは、12月3日(日本)、4,5日(中国)、6日(韓国)に来た時に、「自分は、中国と韓国と日本の、国境紛争の 仲介、仲裁の訳はしない」と、はっきりと言っている。 勝手に争えばいい、という腹(はら)だ。アメリカは、困った、困った、「この地域(リージョン)の平和を乱すな」という振りをしているが、その実、バイデンは、今の極東の 事態を楽しんでいる。あの口を、ニーと横に開いて笑う、あの顔にそう書いている。

 バイデンとヘーゲルは、米軍の戦争への のめり込みを避けて、オフショア・バランシング戦略で、米軍をどんどん撤退させる戦略で動く。米軍を戦争に投入する気はない。これは、介入主義に反対する現実主義(リアリズム)政治学の立場であり、自国平和主義だ。だから、何かあったら、米軍を、まずその家族たちからさっさと韓国からも、そして、沖縄からも飛行機に乗せて撤退させる作戦である。だから、韓国としては、米軍を逃がさないで、韓国に居させたままにする、という戦略になる。

 パク・クネが率いる韓国は、深く中国と連携している。サムスンも中国およびその後背(こうはい)のユーラシアの大きな市場で生き延びようとしている。韓国の対・大国(日本を入れて4つだ。中国、ロシア、日本、アメリカ)を相手の生き残り戦略のは、今から冴えてくる。 まるで韓流ドラマの歴史ものを見ているようだ。

 それが分からないで、ただ単に、感情、気分、気持ち、情緒だけで、韓国嫌いで自分の頭が一杯の日本人は、うまく騙(うまく)されるだろう。周りの動きを冷静に見れなくなって、傲慢(ごうまん)な態度で、相手を見下しているだけなら、やはり、歴史のあれこれの教訓からしても、知恵の足りない方が負けだ。

私、副島隆彦の態度は、すでに書いたが、「竹島は韓国にこころよく差し上げるべきだ。そして、あの海域を仲良く2国で共同開発すべきだ」論だ。このことは今日は書かない。

15.セオドア・ルーズベルトという男が出現したのは、1901年からだ。マッキンレー大統領が暗殺されて、副大統領から成り上がった。アメリカ合衆国が、それまでの素晴らしい“デモクラシーの元祖”の国だったのがどんどん汚(よご)れ出したのは、このローズベルト(イギリス英語と、古都ボストン読みならローズベルトだ)の時からだ。

 この時から、アメリカは世界を支配する悪い国に変身していった。背後に石油財閥となって表れたロックフェラー家の暗躍が始まっている。ルーズベルト大統領が、1904、5年の日本とロシアの日露戦争( The Russo- Japanese War )を、上手に仲介、仲裁して両国にポーツマス条約を結ばせた。 そしてアメリカが漁夫の利を得た。

 すべては深く仕組まれているのである。この後、ロシア帝国(ロマノフ王朝)は滅んだ。全く同じ時期に、オスマン・トルコ帝国(アラブ・中東全体を支配していた)も滅んだ。ヨーロッパの帝国だったオーストリア=ハンガリー2重帝国も滅んだ(1914年)。この頃、第一次世界大戦が勃発している。中国の大清帝国(満州人の清朝)も滅んだ。

 そして、何と世界を支配した大英帝国(ザ・コモンウエルス・オブ・ザ・ネイションズ)までもこの時期に滅んでいる。4つの帝国が、全く同じ時期に、バタバタと倒壊、滅亡したのである。そしてこの地上にアメリカ帝国だけが残った。こういう歴史の大きな真実を知り、過去から真剣に学ばないないようなら、この先の世界ゲームにおいて、私たち日本(人)は負けだ。

15.安倍晋三の靖国参拝は正しい。正しい反米感情の吐露だ。「ヤルタ=ポツダム体制の打破」、「戦後レジームからの脱却(だっきゃく)」、「東京裁判史観の否定」を、自分たちの内心の信念とし、執念にまでして胸に刻んている者たちの、強い感情の現れた。その意味において安倍の行動は、正しい。

 そしてそのせいでボロを出してしまった。押し黙って、本心を語らず、もっと狡猾に動くべきだったのだ。「靖国参拝をあれほどするなと、私たちはきつく言っただろ」と、自分を首相にした策略の最高責任者である、リチャード・アーミテージからさえも、” It’s over . = Abe is over .” と愛想(あいそ)尽かしをされてしまった。もっと上手にアメリカの裏をかいていたら、叔父の佐藤栄作並みの5年間の長期政権を作れただろうに。それももう無くなった。この5月まで持(も)てば大したものだ。

「お腹(なか)を壊して、また政権放り投げ」というのだけは、勘弁してほしい。私も自分の本にあれこれ書いて出す必要があるので。

 それと、安倍が言い訳する、「非戦(戦争をしない)の誓いを新たにするために、私は靖国に参拝した」という明らかに弁解のウソじみた言葉は、世界(中)は、理解しないし、どうせ説得されないから、やめた方がいい。 日本(人)でだけ通用する「死んだら、どんな人も、みな神になるのだから、皆で、拝めばいい」というのも、世界では通用しない。

16. 私、副島隆彦が大いに気に入らない、あと一点のことを、最後に書いておく。 それは、だから、安倍信三たちは、第二次大戦の連合(諸)国=連合国側が、そのあと作った、今の世界体制、世界秩序(ヤルタ=ポツダム体制)が、私たちは気に入らない。そこから脱却したい。これを壊したい」と、 正直に言うべきだ、ということだ。

 右翼、愛国者であるなら、そのように世界に向かって、正直に言ってほしい。

 それを言わないで、「戦争の起きない、平和を願う気持ちを新たにしたいから、自分たちは、靖国に参拝するのだ」という、歯の浮くようなウソを言うから、私はお前たち、今の日本右翼 「ザ・カルト・オブ・靖国」勢力が嫌いなのだ。人間はまずおのれに向かって正直でなければいけない。

16.世界に向かって正直さがない。「日本は、もう一度、戦争をやって、今度こそ、アメリカに勝って見せる」と、きっぱりと言うだけの人物、保守言論人がひとりもいない。このことを私、副島隆彦は残念に思う。だから、日本国民の中の、素朴な人々の「靖国に東条英機大将まで祀(まつ)って、何が悪いのだ。戦争で死んだだけでなく、アメリカの勝手な軍事裁判で死刑にされて、絞首刑にされたのだ。だから、14柱のA級戦犯たちも、その霊、御霊(みたま)に私たちが参拝に行って、何が悪い」と、はっきりと言うべきだ。そうすれば、安倍支持派の3割の国民の、鬱積した感情が晴れ晴れとなる。

 私は、彼らがそのように正直に、日本人の真心(まごころ)を赤心(せきしん)を、はっきりと言うなら、安倍信三は正しい、と考える。「非戦の誓いを新たにするために参拝した」というウソは、世界中にではなく、同族でありなんでも肌で感じて互いに分かる同じ日本人に対するウソにもなる。だから、それはやめてくれ。

 安倍晋三は、自分の内面と、その燃え上がるような情念と、自分のお祖父さんの岸信介(戦争開始時の商工大臣でA級戦犯) の亡霊、怨霊の無念に報いたいの一心だろうから、その、おのれの執念と主観においては正しい。しかし、その正しさにはどうしても限界がある。世界では通用しない。そこにあるのは、世界の大きさを知らない、恐るべき幼稚さであり知能の低さだ。 

 ここまで来ると、安倍晋三の己の主観での正しさは、やはり、感情、情緒、気分での正しさだ。生来の深い知恵の無い、人生の苦労を知らない、ボンボン息子のこういう人間を、指導者に頂(いただい)たくかない国民の悲劇である。鍛えた頭脳と、苦労を重ねた体験を持つ、本当に知恵のある人間を自分たちの指導者に持てない国民は哀(あわ)れである。その末路は今のうちから、もう見えてきた、と私は言うしかない。  (了)

副島隆彦拝

追記。
来週末の 2月9日(日)に、金融セミナーがあります。金融・経済の話に興味がある人は来てください。
日が迫っているので、受講料は「当日払い」で受け付けるそうです。席に限りがありますから、予約を電話か、FAX、メール で行ってください。

「副島隆彦(そえじまたかひこ)の“予言者”金融セミナー 第7回」
日時:2014年2月9日(日)
開始:10時(受付)、11時(開演) 途中、休憩あり。
終了:17:30(予定)
場所:ヤクルトホール(ヤクルト本社ビル、新橋駅)
受講料:15,000円/全指定席

申し込み・問い合わせ先
ブレイントラスト企画(成甲書房内)
東京都千代田区神田神保町1-42
TEL:03-3292-8401(平日10~18時)
FAX:050-3156-3040
メール:seminar@seikoshobo.co.jp

(了)

守谷健二 投稿日:2014/01/24 14:04

【1283】[1524]柿本人麻呂の正体を暴く14

 1522の続きです。
 『古今和歌集』の仮名序と真名序の柿本人麻呂と『万葉集』の成立事情を、後世の研究者が、誤りとしなければならなかった訳。

「仮名序」は、「奈良の御時に、正三位の柿本人麻呂が居た」と記す。しかし『万葉集』の中では、柿本人麻呂は奈良遷都以前に死んでいたことになっている。
   柿本朝臣人麻呂、石見国に在りて臨死(みまか)らむとする時、自ら傷みて作る歌。
 鴨山の 岩根し枕ける われをかも 知らにと妹が 待ちつつあらむ(223)

   柿本朝臣人麻呂の死(みまか)りし時、妻依羅(よさみ)娘子の作る歌二首
 今日今日と わが待つ君は 石川の 貝(一に云う、谷)に交りて ありといはずやも(224)

 直(ただ)の逢ひは 逢ひかつましじ 石川に 雲立ち渡れ 見つつ偲はむ(225)

上の歌群が、奈良遷都(710年)以後の歌の前に配置されていることから、人麻呂は、奈良遷都以前に官位六位以下の下級地方官吏で死亡したと後世の研究者たちは決め付けてきた。その通説からすれば、『古今集』の仮名序が、「奈良の御時に、正三位の柿本人麻呂が居た」と言うのは、誤りとせざるを得ない。通説では、奈良の御時には、柿本人麻呂は既に亡くなっているのだから。それで、後世の学者たちは「奈良の御時」は、文武朝(697~707)のことである、として、仮名序の作者の誤りとしてきた。
しかし、仮名序を書いたのは紀貫之である、当時を代表する学者で歌人であった。紀貫之ほどの人物が、勅撰集の序文に誤りを書き残すなど云う愚劣な失策を行ったのだろうか。
私は『万葉集』の(207)柿本朝臣人麻呂、妻死りし後、泣血哀慟して作る歌、から(227)或る本の歌に曰く、までを丁寧に読むことで、人麻呂は石見国の鴨山などで死んではいない。石川の貝(一に云う、谷)は、石川郎女であることを発見したのである。柿本人麻呂とは、大伴安麻呂の号(ペンネーム)であることを論証してきた。その大伴安麻呂は、和銅七年(714)に、正三位大納言兼大将軍で薨去している。安麻呂は、奈良遷都後も生きていた。紀貫之は、人麻呂の正体を知っていた、と言うだけのことではないのか。『古今和歌集』が撰呈されたのは、大伴家持が亡くなって僅か百二十年後である。紀貫之が、柿本人麻呂の正体を知っていたとして、何不思議があろうか。しかし、後世の学者たちは、『万葉集』の題詞と歌から人麻呂の生涯を推測するしかなかった。貫之に伝えられていた伝承が、途絶えてしまったのだろう。貫之の書いた「仮名序」の誤りとするしかなかった。
『万葉集』は、大伴家三代(安麻呂、旅人、家持)に受け継がれた私家歌集である。
   次回は、真名序に付いて書きます。
   

副島隆彦 投稿日:2014/01/22 15:07

【1282】[1523] 金(きん)を暴落させてきた英米の不正操作をドイツが公表、反撃した。

副島隆彦です。  今日は、2014年1月22日です。

 世界の金融・経済で、急激に隠(かく)れた大きな動きが起きています。

だが日本国内では誰も騒がない。おかしい。奇妙な静けさが続いている。しかしこの胎動(たいどう)はやがて表面に出る。 

 この1月16日にフランクフルト(ドイツの金融の中心都市)で、ドイツの金融監督庁 Bafin(バフィン) のElke Koenig エールケ・ケーニヒ長官(女性)が、「 金(きん)の取引市場 での不正操作 Metals Rigging が、何年も前から行われている。現在、各国の規制当局が調査中である」と発表した。このドイツの金融庁長官の発言は重要である。

 欧米の金と銀の市場で、通貨(カレンシー、外国為替)の他に、価格の不正操作=相場操縦(そうばそうじゅう)罪である犯罪行為 が行われてきたという発表は、これから大きなスキャンダルになる。

 ロイターの記事では、17日に、
“ How London’s gold and silver price benchmarks are ‘fixed’ ”
となっており、ブルームバーグの記事では、
”Metals, Currency Rigging Is Worse Than Libor, Bafin Says ”
となっている。

 この金(きん)の市場での不正操作(マニピュレーション)には、アメリカのFRB(ニューヨーク連銀=れんぎん=がその実体)自身が深く関わっている。私、副島隆彦は、そのことを、近著の 「帝国の逆襲  金(きん)とドル 最後の闘い」(祥伝社刊、2013年11月)で、この中の P177 以下で、「ネイキット・ショート naked short ”裸(はだか)の空(から)売り” という違法行為を、アメリカのFRBが仕組んで行っている。これはアメリカの政府自身による、金(きん)を大暴落させる違法行為(=相場操縦罪)である」と書いて詳しく説明した。 その事実が満天下に今、露見しようとしている。

 以下に載せる記事たちに書かかれている。 もう2年半前の、2011年9月6日に、NY金(きん)が、1923ドル(日本では1グラム4755円。 小売なら1グラム5000円寸前)の史上最高値を付けたあと、金の暴落を、FRB が中心となって仕掛けた(このあと日本では、2013年4月10日に小売で5339円の史上最高値を付けた。そのあと仕組まれた急落を続けた)。 

 それ以来の金(きん)の苦境である。アメリカ政府は、ドルと米国債の暴落(=信用崩壊)を阻止するためだったら、何でもやる。違法行為でも金融犯罪でもやる。今のアメリカはそういう”手負(てお)い狼(おおかみ)”の国だ。自分のエサになるものだったら周囲の全てを食い殺す。 このことを、私は、昨年から、“ドルを防衛するための 金殺(きんごろ)し”と名付けた。この”金殺し”が、今も続いてる。

 やはりドイツ政府が意を決してアメリカの不正行為に対する、敢然たる戦いを開始した。さすがドイツ人である。これで、これまでのように不正行為を、アメリカの金融当局自身がやる、ということが出来なくなった。金融監督庁という規制当局は、金融の機制当局(レギュレーション・オーソリティ)であるが、大きくは、金融当局=財務省と中央銀行の下に付いている。 

 即ち、彼らはグル(ープ)であるから、やっていることは権力犯罪(パワー・クライム)である。 アメリカの金融当局自身が、市場で不正操作、違法行為をやったら、一体、誰がそれを処罰するのだ? このことを指して、 英語では、 ”Who governs ? ” 「フー・ガヴァーンズ」 という。取り締まる権限(=権力)を持つ者の不正を誰が取り締まるのか、の問題だ。

 だから、金(きん)価格は、これからじわじわと上がってゆく。この事態を私は歓迎する。

 このNYとロンドンで仕組まれて行われてきた金価格の市場操作への新興国(中国とインド、ブラジルたち)からの反撃がこれから始まる。 金の現物(げんぶつ)買いの動きが世界中で出てくる。従って、金を買うなら今のうちだ。あと少しで金の買場(かいば)は無くなる。 そして来年(2015年)からは、いよいよ金融統制(きんゆうとうせい)が始まり、金を買えなくさせられるだろう。

 この「金(きん)市場での不正操作」のニューズを日本で、唯一、報道したのは田中宇(たなかさかい)氏である。私たち学問道場は、昨年の10月に、立川の事務所に田中氏に来ていただいて討論して、「真実の言論をする者として連帯して闘い続けましょう」と合意した。

 田中氏の以下の文章を皆さんもよく読んで下さい。

(転載貼り付け始め)

 田中宇(たなか)の国際ニュース解説  無料版  2014年1月20日
http://tanakanews.com/

★金地金不正操作めぐるドイツの復讐

 ロンドンやニューヨークなどで行われている金地金の国際市場と、世界的な
為替市場において、米欧の大手銀行が、談合による相場の不正操作を、何年
(何十年?)も前から続けていた疑いが濃くなり、EUや英米の政府当局が
捜査を行っている。

http://uk.reuters.com/article/2014/01/17/uk-gold-fix-idUKBREA0G19J20140117
How London’s gold and silver price benchmarks are ‘fixed’

 1月16日、ドイツ政府の連邦金融監督庁(Bafin)のケーニヒ長官がフラ
ンクフルトで行った講演で「金地金(きんじがね)と為替の国際市場に対する
相場の不正操作は特にひどい。 (すでに捜査が一段落した)LIBOR(ロ
ンドンで定められている世界的な銀行間金利)に対する相場の操作は、銀行間の
指標に対する不正操作でしかないが、金地金(きんじがね)や為替に対する操作
は、世界のあらゆる金融取引に影響を与えているからだ」という趣旨のことを述
べた。

http://www.bloomberg.com/news/2014-01-16/metals-currency-rigging-worse-than-libor-bafin-s-koenig-says.html

Metals, Currency Rigging Is Worse Than Libor, Bafin Says

 欧米当局が、為替や金相場に対する金融界による不正操作について捜査して
いるという話は、昨年から指摘されていたが、捜査の実施を金融当局者を認め
たのは、今回のケーニヒが初めてだ。独金融監督庁によると、EUの独占禁止
当局や米英スイスの捜査当局が、為替と金相場の不正操作について調べている。
(以下略)

http://tanakanews.com/

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。 田中宇氏が以上に載せている、これらの世界の一流紙の英文記事を
自分でしっかり読める人は読んで下さい。

私は、来週末に、恒例の金融セミナーを開きます。ここで、この金価格をめぐる世界的な不正操作と、その破綻(はたん)、失敗、そして力強く金が再び上昇してゆく話をします。席はまだ空いているそうですから、時間とお金のある人は来てください。

(転載貼り付け始め)

「副島隆彦(そえじまたかひこ)の“予言者”金融セミナー 第7回」
日時:2014年2月9日(日)
開始:10時(受付)、11時(開演) 途中、休憩あり。
終了:17:30(予定)
場所:ヤクルトホール(ヤクルト本社ビル、新橋駅)
受講料:15,000円/全指定席

お申し込み・問い合わせ先
ブレイントラスト企画(成甲書房内)
東京都千代田区神田神保町1-42
TEL:03-3292-8401(平日10-18時)
FAX:050-3156-3040
メール:seminar@seikoshobo.co.jp

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。 それから、3月に入ったら、すぐに私たちの学問道場の定例会(=講演会)が以下の要領で開かれます。こちらは金融の話はあまりしませんが、会員向けに真剣に、世界の政治の最先端の動きを話します。学問道場の会員でない人でも、当日会員という制度がありますので、いらして下さい。

(転載貼り付け始め)

学問道場の定例会(講演会) 開催のお知らせ!
『キャロライン・ケネディ駐日大使着任が
日本政治中枢に与えている衝撃(仮題)』
講師:副島隆彦/古村治彦
開催日:2014年3月1日(土)
会場:(財)全電通労働会館 全電通ホール
開場  12:30
開演  13:00
終了  16:30
主催:副島隆彦を囲む会

・3月1日定例会へのお申し込みは、コチラ↓
http://soejima.to/cgi-bin/kouen/kouen.html

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。 このようにして私たちは、この国で、最先端の、真実の言論と知識と情報と学問を皆さんに伝えます。 大きな真実が、日本国民に広まることを阻止するために動いている邪悪な者たちからの妨害を打ち破って、何ものも恐れることなく、私たちは前進して行きます。皆さん、学問道場に結集して下さい。  

副島隆彦拝

守谷健二 投稿日:2014/01/19 11:34

【1281】[1522]柿本人麻呂の正体を暴く13

   『古今和歌集』の証言
 
 万葉集と柿本人麻呂に言及した最初の史料は延喜五年(905)の勅命で成立した『古今和歌集』の仮名序と真名序である。

 仮名序(跋)
・・・いにしへよりかく伝はるうちにも、奈良の御時よりぞ広まりける。かの御代や、歌の心を知ろしめしたりけむ。かの御時に、正三位柿本人麻呂なむ、歌の聖なりける。これは、君も人も身をあはせたりといふべし。・・・

 真名序(跋)
…昔、平城の天子、侍臣に詔して万葉集を撰ばしむ。それより来(このかた)、時は十代を歴(へ)数は百年を過ぎたり。その後和歌、捨てて採られず。風流、野宰相の如く、軽情、在納言の如しといへども、皆、他の才をもちて聞こえ、この道をもちて顕れず。・・・

 現代の我々は、古今和歌集の証言を、今から千百年前の記憶として謙虚に耳を傾けなければならない。万葉集の最終編者である大伴家持が亡くなって、僅か百二十余年後の記憶を書いたものとして。
 しかしながら、仮名序、真名序の叙述には、現代の日本人は素直に納得出来ないのである。
 なぜならば現在の万葉学では、柿本人麿は、奈良遷都以前に、六位以下の地方官吏で亡くなっていることになっている。これが、学者たちが創り上げてきた柿本人麻呂像です。
 仮名序の(奈良の御時、柿本人麻呂は居た、)フレーズで問題なのは、奈良遷都以前に既に人麻呂は死んでいたことです。大伴家持が許されべからざるきかんすることであった、奈良に遷都されたのは、元明天皇(在位707~714)です。・・・続く・・・

 

副島隆彦 投稿日:2014/01/19 06:57

【1280】[1521] 靖国参拝に反対した昭和天皇の真実の御製(ぎょせい)の歌の経緯(きいさつ)の重要な文を載せます。

副島隆彦です。  今日は、2014年1月19日です。

 私たちの学問道場の大講堂である、今日のぼやき に載った、石井利明君の、「福沢諭吉と ユニテリアン教会=フリーメイソンリーの深い関係」論文 は、大変すばらしいものなので、私、副島隆彦が、昨晩、再度、これに勝手に手を入れました。会員たちで、本当に知性(=知能)を伴(ともな)って政治思想(ポリティカル・ソート)の文章を読む力のある者は必ず、この石井論文を読み直しなさい。

 さて。 安倍晋三の内閣(=政権)は、昨年末の靖国参拝で致命傷を負った。“高転(たかころ)び”して、有頂天の絶頂から一気に転落しつつある。この流れはもう後戻りできない。安倍晋三は、世界、とりわけアメリカを敵に回したので、もうこのまま政権を維持できない。

 おそらく4月からの消費税の8%への値上げで景気がさらに悪化したことを理由として、アベノミクスの失敗ということを口実( 口実にもならない、みっともない口実)にして退陣するだろう。 そうしないと後(あと)を継ぐ者にまで、馬鹿げた責任が続く。後の者は、当然、「安倍さん。あなたが蒔いた禍(わざわい)は全部、あなたが持っていってください」と言うに決まっている。

 安倍政権の内部は、すでに相当に沈鬱なムードになっており、自分たちへの葬送行進曲が流れている。去る12月26日の靖国参拝を決断し強行した、安倍晋三個人の責任を、周囲の者たちは、公然と追求できない。「総理。私たちがあれほど慎重に行動してくださいと言ったのに」と、弱弱しくでも引導を渡すのが、菅義偉(すがよしひで)官房長官の仕事だ。 

 安倍側近を自任する者たちは、安倍と一緒に討ち死にするしかない。もう、逃げ出す準備をしている者たちも出ているだろう。 

 以下の日経新聞の記事の末尾に、ちらりとあるごとく、萩生田光一(はぎうだこういち)という首相補佐官(=側近)を自認する政治家は、靖国参拝を安倍に急(せ)き立てた強行派であるから自分も討ち死にする覚悟だ。 

 私、副島隆彦としては、安倍晋三が7年前と同じ「お腹の調子が悪い」を理由に、政権放り出しをしないことを祈る。世界に対して、安倍個人がみっともないを通り越して、本当に日本と言う国がみっともない国だ、ということになる。 

 昨日(18日)、バラク・オバマは、ホワイトハウスの執務室から、直接、アメリカ国民に向かって、30分間に渡って、ものすごい演説をしたようだ。記者たちからの質問には一切答えない、という異例の決然たるものだったようだ。

 内部告発者、エドワード・スノーデンによる、アメリカ政府の最高度の安全保障に関わる国家機密(全スパイ・マスターたちの顔ぶれ、経歴までが露呈。イスラエルの機密情報も漏れた)の持ち出し、流出で、相当の打撃を受けている。オバマは、公然と居直ることを決断したようだ。

 まるで「これからは、自分は、世界の独裁官(どくさいかん)になる、とオバマは、宣言したようだ」との評価を、ある人物から私は貰(もら)った。

 その影響が、以下の、日本のワルの外務官僚のトップの、谷内正太郎(やちしょうたろう)への「異例の厚遇」(日経新聞の表現)となって表れている。ジョン・ケリー国防長官と、チャック・ヘーゲル国防長官は、谷内を 安倍政権を無視して、直接、自分の配下に加えることを決断している。 

 ワルの官僚の谷内(やち)は、安倍政権のバカな政治家たち(芸能人並みの知能の連中)を見捨ててアメリカに直属すると決断した。アメリカもそれを受け入れた。

 谷内(やち)は、自分が日本版NSC(エヌ・エス・シー、国家安全保障会議)のトップである国家安全保障局長(こっかあんぜんほしょうきょくちょう)に年末に正式に就任している。だから、安倍政権や自民党に対してもアッカンベーをしても構わないと決めた。「国家の利益ためには、政権なんかいくつ倒れても構わない」という藤原不比等(ふじわらのふひと)が7世紀(西暦668年)から始めた律令官僚支配のやり方を公然と実行した。

(転載貼り付け始め)

〇「米、谷内氏を異例の厚遇 「靖国」後の局面転換狙う 」

2014年1月19日 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS18016_Y4A110C1PE8000/

 オバマ米政権は17日、訪米した谷内正太郎・国家安全保障局長を異例の厚遇で迎えた。安倍晋三首相の靖国神社参拝によってすきま風が吹いた 日米関係の局面転換を印象付けるとともに、首相の再参拝をけん制する思惑があるからだ。アジアで台頭する中国も意識している。

 「excellent(素晴らしい)」。谷内氏は米国務省の玄関口で、中国メディアからケリー国務長官らとの会談の感想を問われ、こう即答した。

 谷内氏はケリー長官、ヘーゲル国防長官、(スーザン・)ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)と相次ぎ会談した。日米の国家安全保障会議(NSC)の 連携を確認したライス氏との会談は織り込んでいたが、主要閣僚のケリー、ヘーゲル両氏との会談の実現は谷内氏本人にも意外だった。

 首相参拝の「真意」を説明するためワシントン入りした日本の要人が会った米政府の顔ぶれをみれば、厚遇ぶりが分かる。超党派の日米国会議 員連盟(会長・中曽根弘文(ひろふみ) 元外相)はラッセル国務次官補(東アジア・太平洋担当)。首相の実弟、岸信夫(きしのぶお)外務副大臣はバーンズ国務副長官だった。

 谷内氏への厚遇は日米関係の局面転換を印象付ける。米国のアジア戦略は同盟国である日本などとの連携が欠かせない。首相参拝によって日米 間に生じたさざ波が大きくなれば、戦略の空洞化が進む。中国や北朝鮮のさらなる増長を招きかねないとの判断だ。

 知日派のマイケル・グリーン米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長は、首相参拝の影響は認めつつも「環太平洋経済連携協定 (TPP)や、日米防衛協力のための指針再改定などへの取り組みは米国の国益にもなる」と訴える。

 首相への影響力がある谷内氏を通じた再参拝への圧力ともとれる。「平和主義からの離脱」(米紙ニューヨーク・タイムズ)など米メディアは 首相参拝と軍国主義の復活を絡(から)めている。再参拝すれば、米国世論の警戒を高める恐れがある。

 もう1人の知日派、アーミテージ元国務副長官も 「首相は選挙の公約を果たした。もう終わったことだ」と、再参拝はないとの認識を強調する。

 中国は米紙ワシントン・ポストに寄稿し、首相批判を展開。再参拝となれば中国に対日批判の材料を与え、日韓関係の改善も遠のかせる。中国 は東シナ海上空の防空識別圏に続き、南シナ海では外国漁船の操業規制を強化した。

 中国を勢いづかせる流れを断つため、日米の仕切り直しに向けたきっかけをつくりたい--。そんな米側の希望をよそに、日本からは首相参拝 時の米側の「失望」表明について「共和党政権ではこんな揚げ足を取ったことはなかった」(自民党の萩生田光一総裁特別補佐)との声が上がる。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。
 さあ、このあとは私が先週、約束した、私が、2007年に書いて出版した、本の中の「ザ・カルト・オブ・ヤスクニ」論文の 重要場面を、弟子たちが復刻してくれたので、ここに載せます。私のこの文は、以後、日本の戦後史の歴史資料に属するものとなるだろう。

(転載貼り付け始め)

『最高支配層だけが知っている 日本の真実』(成甲書房、2007年刊)所収

「 安倍晋三の奇怪な変節と「ザ・カルト・オブ・ヤスクニ」」

 副島隆彦

 (この本の P.25~P.28 を転載する )

 「昭和天皇のコトバ・富田(とみた)メモ」は米国の意思がリークさせた

 安倍晋三(あべしんぞう)首相は、昨2006年の9月20日に自民党総裁選に圧倒的な強さで勝利して、そのあと、9月26日に、国会で首班指名(しゅはんしめい・総理大臣に当選すること)を受けて組閣した。

 そのあと、すかさず、10月8~9日には、アメリカではなくて、中国と韓国を訪問して胡錦涛(フー・ジンタオ)国家主席、盧武鉉(ノ・ムヒョン)韓国大統領と首脳会談を行なった。まずアメリカに行くのではなくて、中国と韓国に行ったのだ。

 この最中の9日に、なぜか、北朝鮮がうまい具合に、例のお粗末な核実験(らしきもの、その後も浮遊核物質が検出されないので、失敗説もある ) をやってくれた(これにも、実は、裏がある)。これに世界の目を奪われて、安倍晋三の外交行動の奇怪さは露見しないで済んだ。

 安倍晋三の表情は、このころから、うつろになり、全く冴えなくなった。テレビで見ていても気の毒な感じになってきた。自分は一国の宰相である、という気迫が急速に消えて無くなった。加えて、しどろもどろの国会答弁をするようになって、「安倍は、7月まではもう少しは威勢が良くて、元気だったのに。一体何があったのか」と新聞記者たちまでが、噂を始めた。一国の責任者としては、あまりにしょんぼりしている。もともとはこういう人ではない。タカ派のバリバリの右翼人間である。

 2006年7月20日に突如、アメリカベったりで親米派の代表のような日本経済新聞に、富田朝彦(とみたともひこ)元宮内庁長官のいわゆる「富田メモ」が、一面のトップで載った。それは、昭和天皇の、「今のような、靖国神社には、(1978年以来、私は)お参りできない」という発言が書いてある日記であった。

 このことは、昭和天皇のお気持ちとして、今の靖国神社では、私は参拝できないし、公式の戦没者の国家的な追悼施設としての国際社会の理解も得られない、という天皇によるはっきりとした意思表示であった。なぜ、あの時、日経新聞に「富田メモ」という形で、靖国神社問題が噴出したのか。その謎が今、私は解けたのだ。

 昭和天皇の靖国神社に関連した発言の「富田メモ」からの、昭和天皇の発言の全文は次のとおりである。

(引用開始)

   私は、或る時に、A級 (戦犯たち14人) が合祀され、そのうえ松岡(  洋右 まつおかようすけ)、白鳥( 敏夫 しらとりとしお)までもが。 筑波 (藤麿 つくばふじまろ 前の靖国神社の大宮司 ) は慎重に対処してくれたと聞いたが、松平の子の今の宮司がどう考えたのか、易々と。

  松平( 慶民 まつだいらよしたみ )は平和に強い考(え)があったと思う のに、親の心(を)子(の) ( 松平芳永 まつだいらよしなが 宮司 )  が知らず(だ)と(私は)思っている。だから 私 (は) あれ (1978年) 以来参拝していない。それが私の心だ。

   「昭和天皇、合祀に不快感靖国のA級戦犯に触れ」共同通信、2006年7月20日配信 

(引用終わり)

 昭和天皇が1988年、靖国神社のA級戦犯合祀に不快感を示す発言をしていたとする当時の宮内庁長官、富田朝彦氏(故人) が書き残したメモがあることが関係者の話で20日、分かった。

 昭和天皇は1978年にA級戦犯が合祀されて以降、同神社に参拝していない。メモは、明確になっていないその意図を探る貴重な資料であるとともに、小泉純一郎首相の靖国参拝にも影響を与えそうだ。

 関係者によると、富田氏は同庁次長時代を含め、昭和天皇との会話を手帳などに書き留めていた。靖国発言のメモは88年4月28日付。メモによると、昭和天皇は「私は或(あ)る時に、A級が合祀され、その上、松岡、白取までもが」「だから私(は)あれ以来参拝していない。それが私の心だ」などと語ったと記されている。

 「松岡」「白取」はA級戦犯としてまつられている松岡洋右元外相、白鳥敏夫元駐イタリア大使を指すとみられる。  (共同通信、同前)

(引用終了)

 このように、昭和天皇ははっきりと自分の考えを述べている。この天皇の意思と考えは、明らかにA級戦犯の合祀への反対である。平和を強く願う気持ちが表われている。そして新たな戦争に加担するような動きに対して強く戒めている。戦後の指導者たちが、軽率な行動をとってはならないと警告している。

 このあと、記者団に質問されて、小泉純一郎首相は、「人 (昭和天皇のこと) にはそれぞれの考えがある」と言い放って、昭和天皇の意思 (大御心 おおみこころ)を無視して、8月15日の首相参拝を強行した。

 安倍晋三も同様であり、すでに5月に内閣官房長官として、こっそりと参拝していた。このことも、どこからの筋か不明だが、露見した。明らかに日本の保守勢力内部に大きな分裂と抗争の暗闘がある。それが、この富田メモの公表という時点で、はっきりと表に出た。

 この7月20日の日経新聞の富田メモの突如の公表は、アメリカの意思も入っている。アメリカは、小泉と安倍に、靖国神社に公式参拝するな、アメリカは反対である、というはっきりとした意思表示をこの時、出したのである。小泉と安倍は、これに逆らった。

 その前の五月に、日本の財界は、経団連と経済同友会の共同の声明で、小泉首相の8月15日の靖国参拝を中止するように求めた。それは、アジア諸国への配慮であり、中国との良好な関係が日本にとって重要だ、という趣旨からだった。この動きに対して、保守言論雑誌に、「金のことしか考えない財界人たちは黙れ。中国で金儲け(営利活動)をすることしか考えない財界人たちを批判する」という評論文がいくつも載った。

 根っからの親米派であるはずの財界人たちを、日本民族派の保守言論人たちが糾弾(きゅうだん)する、という奇妙な構図が見えた。この時に日本国内に走った保守派内部の亀裂と分裂線が、その後の進展を物語っていた。

(ここまで 副島隆彦 筆『・・・日本の真実』のP.25~P.28から引用 終わり)

(ここから 『・・・日本の真実』のP.58~P.61から引用はじめ)

「産経・古森(こもり)公開質問状」と「元国連大使」の愚かな行動

  そしてちょうどこの時期に、前述した産経新聞の古森義久(こもりよしひさ)記者(ワシントン特別論説委員) による、玉本偉(たまもとまさる)外務省・国際問題研究所(略称国問研=こくもんけん=)研究員への言論弾圧事件が起きた。

 それは、2006年8月27日付けの「ワシントン・ポスト」紙に載った、スティーヴン・クレモンス(ニューアメリカン・ファウンデーションという研究所の研究員)の筆による、“ The Rise of Japan’s Thought Police “ 「日本で思想弾圧警察の動きが起きている」と題する、古森氏の行動を批判する記事であった。

 それは、5月13日付けの、外務省の外郭団体の外交研究所である「日本国際問題研究所(JIIA) のインターネット上への論文提供のコーナーでの、玉本偉( たまもとまさる)氏の文章を槍玉に挙げてのものだった。

 玉本研究員の論文は、周囲の反対を押し切っての小泉首相の靖国参拝の強行が、日本の右傾化を招き、この「ザ・カルト・オブ・ヤスクニ」の勢力が台頭して、日本がアジア諸国で孤立する道を選びつつある、という危惧を表明した、きわめて端正(たんせい)な日本分析であった。そして、日本の右傾化が進めば、これに対する揺り戻しが国内から起きて、やがて穏健な勢力によって軌道修正が図られるだろう、という冷静な客観予測が書かれていた。

 ところが、これに対して古森氏が筆誅(ひっちゅう)を加えた。ちょうど、自分がアメリカとの橋渡しをして安倍政権を誕生させる原動力のひとつになったことへの自負で有頂天になっていた時だ。力が余って、それで、この玉本論文を、「中国に迎合する反日の立場からの偏(かたよ)った言論だ」として論難した。

 そして、「外務省の補助金で運営される研究所なのに、現在の日本の外交や安保を否定するような極端な意見の持ち主(玉本研究員のこと) に (海外向け発言を) 任せる理由は何なのか。この『稿の結びを佐藤行雄(さとうゆきお)理事長への公開質問状としたい」 と書いた。

 この記事に死ぬほど驚いて、慌てふためいた日本国際問題研究所の佐藤行雄理事長 は、我を忘れて、冷静さを失い、その生来の身に染みた官僚体質と事なかれ主義のせいで、この産経新聞の古森記事に動転して、いちもにもなく同意して、勝手に自分だけの愚かな行動に突っ走った。そして、このネット上への英文での日本からの意見と情報の発信の場を自ら、即刻閉鎖して、玉本氏を譴責(けんせき)して、それで、それまでのすべての発表記事と英文論文までも削除の処分にした。

 ところが削除しても削除できないのが「ミラーサイト」という複製機能をもつインターネットの仕組みだ。この愚か極まりない行動が、ただちに世界中の日本研究家たちから、一斉に批判の対象となった。

 政府のお金が出ている研究所の言論と研究の成果を、理事長が自分の手で無かったことにして全面削除にして隠滅してしまう、というのは、愚の骨頂を通り越して、狂気の沙汰である。この佐藤行雄という外務官僚 (彼は国連大使の経験者だというから、主流派に属するそれなりの出世組なのだろう) は今、外務省内で、「佐藤はとんでもない判断違いをした」として軽蔑の対象の極致にある。

 佐藤理事長は8月18日付けで、産経新聞に坊主俄懺悔(ぼうずざんげ)の謝罪文を記事の形で載せた。産経の記者が「こんな文を本当に載せていいのですか」と念を押したそうだ。が、本人は、とにかく自分の責任を軽くして逃げ延びたい一心で、それで大きく墓穴を掘ることになる。およそ言論や研究機関の長になるにふさわしくない、いかにも日本的な役人の盲目的な猪突(ちょとつ)行動である。

 自分が信頼して雇った有能な世界基準の英文で発信できる研究員の言論を、守ろうとするのではなくて、逆に部外者の右翼新聞の好戦派の大物記者が書いた、それこそ偏った見解に全面敗北した。それで、すでに発表した記事まですべて削除処分にするなどという、許すべからざる行動に出たのである。

 ここで念を押すべきは、一民間の新聞紙の言論が、政府の補助金で出来ている国の研究機関の言論に対して言論弾圧をする、ということは法律学的に成り立たない。言論弾圧なるものは、政府機関や公務員が、「この評論文は我々、政府にとって好ましくない」などと発言することで成り立つものだ。

 民間人どうしの間の理論の衝突は、それは、「互いの意見の相違。考えのくいちがい」と言うのであって、言論弾圧とは言わない。しかし、政府への自分の影響力を嵩(かさ)に着て、古森氏が、ある論文や記事に対して、「それは反日的であるから、政府の子会社の機関は、その者を辞めさせよ」と書いて、公開質問状とするなどと威張り腐るのは、これは、単なる言論の自由(権)の行使ではすまない。自分を大人物だと思い違いした権力人間だ。

 そして前出のクレモンスの反撃記事が出た。このニュー・アメリカン財団(ファウンディション)のクレモンス研究員による更なる古森批判の文は大きな反響を呼んで、世界中の日本研究家(ジャパン・ハンドあるいはジャパン・エキスパート)たちの共感を呼んだ。

 そして、これに対して古森氏が今度は、「私は、右翼過激勢力など支援していない」、 ” I Don’t Back Extremists. ” というクレモンス研究員への反論文を書いて、ワシントン・ポスト紙に投稿したのが11月11日である。しかしもう遅い。

 今さら古森氏がいくら言い訳をしても、彼がやった卑怯で愚かな行動は取り消せない。ワシントンDCのネオコン勢力の政府高官や研究所員たちと幅広く付き合い、「ネオコン派などというものは存在しない (私たちは、正義そのものなのだ)」 というような、独善と思い上がりの文章ばかりを古森氏はずっと書いてきた。そろそろ彼の新聞記者人生もここらが年貢の納め時だろう。

 このような事件が安倍政権の誕生の背後で起きていたのである。小さな筆禍(ひっか)事件のように思われるが、この事件が、安倍政権の船出に大きな影を落とした。「安倍たちは、どうも恐ろしい東アジア独特の宗教団体にからんでいるのではないか」という疑いが、アメリカの政・官界で今、囁(ささや)かれているのである。

(ここまで『・・・日本の真実』P.58~P.61 から引用終わり)

 副島隆彦です。 このように私は、2007年刊行の、私と弟子たちの論文集で書いた。この本は、今でも私たちの学問道場のサイトで買える。出版社に注文してもいいし、アマゾンの中古本でも安くで買えるだろう。読みたい人は買って読んでください。

 私は、自分が2007年に書いたこの「安倍晋三とザ・カルト・オブ・ヤスクニ」論文が、やがて日本政治史の歴史資料となる、と自負する。

 そして、あと一本、歴史資料になるであろうと思われる雑誌記事を、その全文を載せる。

 この「選択」誌 という政治経済の月刊の高級専門誌(馬鹿ではない日本の企業経営者層5万人に定期購読されている)の昨年の2月号に載った連載の評論文である。書き手(筆者)は、岩井克己(いわいかつみ)という“皇室ライター”と呼ぶべきか、朝日新聞の記者で長年、宮内庁の記者クラブに所属したであろう人が書いた素晴らしい文である。

 私、副島隆彦は、以下の文を、著者である岩井克己氏には、無断で以下に転載する。これは非礼なことであり著作権法違反であるから、岩井氏本人から抗議が来たら、謝罪の上すぐに削除します。私、副島隆彦が、フェア・コメント(公正なる論評)を前後に書き加えて、以下の岩井文に評論(=論評)を書いてから引用すればいいのだが、そんな猪口才(ちょこざい)なことは私はしたくない。

 書き手への深い敬意を表し、かつこの文は、日本国の戦後政治の歴史資料になる重要なものである、と私は判断するので、その全文を以下に引用します。

(転載貼り付け始め)
 
『選択』誌 2013年2月号 「靖国の名に そむき まつれる」

宮中取材余話  連載54  皇室の風   岩井克巳

● 靖国の名に そむき まつれる

 富田朝彦(とみたともひこ)元宮内庁長官から電話があったのは、徳川義寛(とくがわよしひろ)元侍従長が死去したあと、生前の証言をまとめて『侍従長の遺言』(一九九七年一月、朝日新聞 社刊)と題し出版した直後だった。

「読んだよ。本当によく書いてくれた。よくぞ徳川さんから聞き出してくれた。ありがとう、本当にありがとう」

 それだけである。徳川証言のどこがどうとは一切言わないので、その感極まった声に当惑したのを覚えている。 長いつきあいだったが、あちらから電 話をくれたのは後にも先にもこの時だけだ。

 ずっと忘れていたが、うかつにも最近になり思い至った。富田は、晩年の昭和天皇から靖国神社のA級戦犯合祀への思いを聞かされ、それを誰にも言 えず一人悶々(もんもん)としていたのではないか。徳川証言で一端が世に明かされ、ようやく胸のつかえがとれたのではなかったかと。徳川は、七八年に、靖国神社 がA級戦犯を含む合祀予定者名簿を届けに来た時、自分は異議を唱えたと証言した。

「私は、東條英機さんら軍人で死刑になった人はともかく、松岡洋右さんのように、軍人でもなく、死刑にもならなかった人も合祀するのはおかしいの じゃないかと言ったんです。永野修身(ながのおさみ)さんも死刑になっていないけれど、まあ永野さんは軍人だから。(略) 靖国神社には、軍人でなくても消防など戦時下で働いて亡くなった人は祀(まつ)っている。しかし松岡さんはおかしい。松岡さんは病院で亡くなったんですから」

「靖国神社は元来、国を安らかにする つもりで奮戦して亡くなった人を祀るはずなのであって、国を危うきに至らしめたとされた人も合祀するのでは異論も出るでしょう」

 しかし靖国神社は松平永芳(まつだいらながよし)宮司が合祀に踏み切った。以後、天皇の靖国参拝は途絶えた。後年、八六年八月十五日に詠まれた御製が発表された。

 この年の この日もまた 靖国の みやしろのことに うれひは ふかし

 徳川は「合祀賛成派の人たちは、この歌も自分たちの都合のよいように曲解した」と怒っていた。半世紀も侍従を務め、何事にも慎重で口の固かった徳川の強い語調に「天皇が徳川の口をして語らしめている」と感じた。

 靖国神社を天皇が参拝しなくなった理由がA級戦犯合祀への不満だとすれば事は重大だ。徳川は合祀に異を唱えたのは自分だ、と語ることで、安易に合 祀を推進した人たちへ天皇が突きつけようとした「切っ先」を身を挺して押しとどめ、天皇が浴びるかもしれない「返り血」をも防いだのだろう。

 筆者はこの徳川証言を、九五年八月、朝日新聞の戦後五十年の連載企画として紹介した。しかし、一部の近代史研究者を除き目立った反響はなく、天皇 や首相の靖国参拝を求める人たちからも黙殺された。徳川の「間接話法」は十分には通じなかった。

 徳川は九六年二月に死去し、富田も二〇〇三年十一月に死去した。
そして〇六年七月、小泉純一郎首相が靖国神社参拝を宣言し国内外の反発も巻き起こるなか、日本経済新聞が富田の日記と「富田メモ」を特報した。 一九八八年四月二十八日付のメモに「直接話法」の記録(引用者註。 昭和天皇自身のお言葉という意味) があった。

 「 私は或る時に、A級が合祀され その上 松岡、白取( 白鳥敏夫 )ま  でもが、筑波(藤麿 つくばふじまろ 前宮司 )は 慎重に対処してくれ  たと聞いたが 松平の子の今 の宮司 (松平芳永 まつだいらよしなが)が  どう考えたのか  易々と (父の) 松平(慶民 まつだいらよしたみ )  は平和に強い考があったと思うのに 親の心子知らずと思っている。だから  私あれ以来参拝していない それが私の心だ」 ( )内は筆者

 
 実は富田の日記は、筆者(引用者註 岩井克己氏)の先輩で 富田とは長く親しかった元朝日新聞記者が死後間もなく遺族から段ボール箱で渡され、公刊の可否を相談されてい た。一通り目を通し「出版は難しい」と返却したという。それにはメモは含まれていなかった。日経によると、記者が日記とメモを入手したのは〇六年五月。小泉首相の参拝問題が内外の激しい議論を呼んでいる時期に端(はし)無くも重なったという。

 この頃、筆者は侍従職事務を長年仕切った卜部亮吾(うらべりょうご)侍従から死去直前に託された日記の公刊準備を進めていた。八八年四月二十八日の日記には、富田 と卜部が順次天皇に呼ばれ「靖国の戦犯合祀と中国の批判、奥野(誠亮・元国土庁長官の)発言のこと」を聞かされたと記録されていた。

 また後年の日記 に卜部は「靖国神社の御参拝をお取り止めになった経緯 直接的にはA級戦犯合祀が御意(ぎょい)に召さず」と記していた。富田メモが昭和天皇自身の発言であることがほぼ裏付けられた。

 そして〇六年十二月には、天皇の歌の相談役を務めていた歌人岡野弘彦(おかのひろひこ)が、先の天皇の御製(ぎょせい)の真意を徳川から聞いていたことを著書で明らかにした。 徳川は次のように語ったという。

 「ことはA級戦犯の合祀に関することなのです。天皇はA級戦犯が処刑された日、深く謹慎して悼(いた)みの心を表していられました。ただ、後年、その人達の魂を靖国神社に合祀せよという意見が起こってきたとき、お上(かみ)はそのことに反対の考えを持っていられました。

 その理由は二つあって、一つ は国のために戦(いくさ)に臨んで、戦死した人々のみ魂を鎮め祭る社であるのに、その性格が変るとお思いになっていること。もう一つは、あの戦争に関連した国との間に将来、深い禍根(かこん)を残すことになるとお考えなのです。ただ、それをあまりはっきりお歌いになっては、さしつかえがあるので、少し婉曲(えんきょく)していただいたのです」(『 昭和天皇 御製  四季の歌 』)

 岡野は「十分に真意が伝わるとは言えないが、天皇の篤(あつ)いお気持ちを思って、徳川さんと相談の上で御集(ぎょしゅう)の『おほうなばら (大海原) 』に収めることにした」と いう。

 徳川は間接話法で語って逝(い)った。富田は恐らくメモを公にするつもりはなかったが、かといって廃棄もしかねたまま世を去った。卜部(うらべ)は中身は書かず 天皇の発言があったことだけ記録した。

 天皇は「私の心」を露わにすることを強く制約される。側近も口外しないのが基本である。しかし、それぞれに戦争への天皇の悔恨(かいこん)と平和への強い思い、それを理解しない者への怒りと哀しみという「私の心」を聞かされた。その重い「遺言」は自分限りで闇に葬ることが出来なかった。死してなお、 天皇の思いはあたかも「歴史における理性の狡智(こうち)」(ヘーゲル)のように後世に蘇(よみがえ)った。

 筆者は聞き書きの作業中、生前の徳川から御製集『おほうなばら』を数日間貸してもらったことがある。ページをめくっていると、小さな短冊がはさんであるのに気づいた。鉛筆の走り書きである。 後日尋ねると徳川は「発表をとりやめた歌です」とだけ答えた。「これこそが昭和天皇の元の御製(ぎょせい)に違 いない」と思った。短冊にはこう記されていたのである。

   靖国の名に そむき まつれる 神々を 思へば うれひの ふかくも    あるか

(敬称略)

(転載貼り付けおわり)

副島隆彦です。この昭和天皇に真実の御製に和歌の意味は、私が解釈すると次のようになる。

  「 靖国の名に 背(そむ)いて、祀(まつ)られることになった、 東条英機以下の、自分に最後まで忠実ではあったが、誤った戦争開始、指導をして世界を敵に回してたことの非がお前たちには有るので、私、天皇としては、世界に向かって、自分自身の非も詫びたのだから、誤った戦争指導をしたお前たちまでも、この度(1978年に)、愚かにも祀(まつ)ってしま  靖国神社に、私は拝みに行くわけにはゆかないのだ。私の憂いは深い 」

であろう。

 真実はこの皇室記者である岩井克己氏の書いた通りである。 私たちは、私たちのこの日本国が、本当は王国( キングダム、モナーキー 君主制国家。ただし、その内側が デモクラシー=代議制民主政体=になっている)と知っている。だから私たちの 国王である故・裕仁(ひろひと)天皇のお言葉とご遺志に従わなくてはいけない。

副島隆彦拝

2682 投稿日:2014/01/16 10:43

【1279】[1520]靖国神社参拝

こんにちは、私はこのブロッグは敷居が高くてあまり投稿をしないのですが、みんなの、感想をいただきたく投稿してみます。よろしくお願いします。
さて表題のことですが、靖国神社は日本の祖国を守るため犠牲になった軍人、軍属をまつる神社であり、昭和50年頃永久戦犯も合祀されてから、天皇陛下も参拝されなくなり、外国特に中国韓国から軍国主義の復活したなどと、非難されるようになってきた。合祀されるまでは、何の波風もなかったと思います。最近あべ総理が参拝され、また外国から批判を受けています。なるほど気持ちとしては、祖国の犠牲になった人を参拝するのは当然だと思います。
でもサンフランシスコ講和条約で、無条件降伏を受け入れ、外国との交流を認められ、国民が一心不乱に働いてやっと今の繁栄を勝ち得たと思うのです。
このままいくと日本だけが世界から取り残されていくようなことになりかねないじたいだとおもいます。
そこで私は、靖国神社に合祀されている永久戦犯者には申し訳ないけれど、靖国神社より分祀を公の場で行い、外国から言いがかりをつけられないようにしてはいかがなものかと思うのです。そうすれば、公の人が参拝するたびに国民が嫌な思いをしなくて済むし、誰でも何回でも行けるようになる。
同じ敗戦国であるドイツがどのようにして、フランスや周辺国と仲良くなって発展していったか研究してみるのも価値があると思うのです。

守谷健二 投稿日:2014/01/13 10:41

【1278】[1519]柿本人麻呂の正体を暴くⅫ

    大伴安麻呂(柿本人麻呂)の最初の結婚

   大伴宿祢、巨勢郎女を娶る時の歌
   (大伴宿祢は諱(いみな)を安麿といふそ、難波朝の右大臣大紫大伴長徳卿の第六子、平城朝に大納言兼大将軍に任じて薨ずるそ。)
  
  玉葛(たまかづら)実ならぬ樹には ちはやぶる 神そ着くとふ ならぬ樹ごとに(101)

 (大意)玉葛のように実のならない樹には、恐ろしい神が取り付くと云います。実のならない樹ごとに。(求婚の歌)

   巨勢郎女、報(こた)へ贈る歌
   (即ち近江朝の大納言巨勢人卿の女そ)

  玉葛 花のみ咲きて 成らざるは 誰が恋ひにあらめ 吾は恋ひ思ふを(102)

 (大意)玉葛のように花だけ咲いて実の生らない(誠実の無い)のはどなたの恋でしょう。私はお慕いしていますのに。

 難波朝(なにわのみかど)とは、孝徳天皇(在位645~654)です。安麻呂の父・長徳は、孝徳天皇に右大臣として仕えていました。天皇と皇太子・中大兄皇子の間に対立が生じ、皇太子が百官を率いて飛鳥の宮に引き上げ、天皇は孤独の内に憤死する事件がありました。大伴氏と天智天皇(中大兄皇子)との確執はその時以来のものだったかもしれません。
 大伴旅人、田主、宿奈麻呂の三人は、安麻呂と巨勢郎女の間に生まれた子供です。二人は仲睦まじい夫婦でした。しかし、巨勢郎女の父は、近江朝・大友皇子に大納言として仕えていたのです。巨勢人卿は、壬申の乱を大友皇子に最後まで忠誠を尽し、乱の後、本人及び子孫悉く流罪の刑を受けていた。
 一方大伴氏は、一族結束して天武天皇に味方した。その大伴氏の中で最も活躍したのが安麻呂でした。安麻呂の家庭は引き裂かれていた。夫は大きな戦功で輝く未来を約束されていたとて、妻の実家の親兄弟は皆辺境の荒野に流されたのです。妻の嘆き苦しみはどんなに大きなものだったか。世間は、どんな目を二人に注いでいたのだろう。
 「柿本朝臣人麻呂、妻死(みまか)りし後、泣血哀慟して作る歌(207~216)」を丁寧に読むことで、私は「人麻呂の妻は、尋常な死に方をしたのでは無く、覚悟の出奔を遂げた」と解読した。人麻呂は、世間の目が恐ろしくて逢いに行けなかった、と歌っている。愛する心が変わったわけではない、ほとぼりが冷めればまた逢える日がきっと来るから、私(人麻呂)を信じて安心して待っていてほしい、と歌っている。そんな中、人麻呂の妻は、白装束に身を包み失踪を遂げたのであった。人麻呂は、慌てふためいた、必死に捜索を続けたが、生きている妻におろか、遺骸にもめぐり合うことが出来なかった。人麻呂は、妻を見殺しにした、妻殺しを原罪として出発した詩人である。大伴安麻呂の境遇と、人麻呂の歌が完全に重なるのである。壬申の乱は、大伴安麻呂と妻(巨勢郎女)を完全に引き裂いていた。