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守谷健二 投稿日:2015/11/04 13:46

【1497】[1829]天武天皇の正統性について

   天皇制のイデオローグとしての柿本人麿

   天皇、雷丘(いかづちのをか)に御遊(いでま)しし時、柿本朝臣人麿の作れる歌
 大君は 神にしませば 天雲(あまくも)の 雷の上に いほらせるかも〔235〕

 この歌は、『万葉集』第三巻の巻頭歌です。「大君は 神にしませば」の表現は、第三巻にして初めて登場します。人麿の作歌活動で年月が明らかにできるのは、持統三年(689)四月に亡くなった日並皇子尊(ひなみしのみこのみこと)、皇太子であった草壁皇子に捧げた挽歌から、文武四年(700)に亡くなった明日香皇女に捧げた挽歌までです。
 人麿は、七世紀の晩期に活躍した歌人です。七世紀後半の極東アジアは、大変動の時期でした。日本もその動乱に巻き込まれていました。倭王朝は、百済王朝を援け、新羅を討伐するため三万余の大軍を朝鮮半島に送りましたが、唐・新羅連合軍のために壊滅させられる大惨敗を喫したのです。このため倭王朝に対する国民の信頼は一挙に喪失し、国民の深い恨みと強い怒りだけが残ったのです。

 唐朝は、日本を代表するのは九州筑紫に都を置く倭王朝と見ていました。朝鮮半島に軍を送ったのは倭王朝です。七世紀の後半になっても、日本列島には統一王朝は成立していなかったのです。近畿大和王朝は、倭王朝より格下でした。

 倭王朝の朝鮮出兵の惨敗が、近畿大和王朝と倭王朝の立場を逆転させたのです。倭王朝は都の治安もままならず、大和王朝の援けを必要とするまで落ちぶれてしまった。

 人麿の最初の歌、第一巻「29」を見てみましょう。

    近江の荒れたる都を過ぐる時、柿本朝臣人麿の作る歌
 
 玉襷(たまたすき) 畝火(うねび)の山の 樫原の 日知(ひじり)の御代ゆ(神武天皇の時から) 生(あ)れましし 神のことごと 栂(つが)の木の いやつぎつぎに 天の下 知らしめししを(天下をお治めになった) 天(そら)にみつ 大和を置きて あおによし 奈良山を越え いかさまに 思ほしめせか 天離(あまざか)る 鄙(ひな)にはあれど 石走(いはばし)る 淡海(あふみ)の国の 楽波(ささなみ)の 大津の宮に 天の下 知らしめしけむ 天皇(すめろき)の 神の尊の 大宮は 此処と聞けども 大殿は 此処と云へども 春草の 繁く生ひたる 霞たち 春日の霧れる ももしきの 大宮処 見れば悲しも

 人麿は、日本には大和に都を置く、近畿大和王朝しか存在しなかった、との大和王朝唯一史観で歌を作っているのである。また現代日本史学の通説は、四世紀ごろには、大和王朝の日本列島統一は完了していただろう、という。

松村享 投稿日:2015/10/29 17:55

【1496】[1828]社会に壊された人々へ②

 松村享(まつむらきょう)です。今日は2015/10/29です。前回、『社会society』は、日本人の体質にあっていない、という事を話しました。なぜ体質にあわないか。

 『社会society』とは、キリスト教そのものだからである。キリスト教が、戦後日本に本格的に輸入された。輸入をやり遂げたのは、ニューディーラーという、アメリカの思想集団だった。

 いくつかの資料を読みこんで私がわかったことは、アメリカの占領政策の目玉は、『日本土着の共同体を破壊すること』にあった。社会societyを信仰するニューディーラーは、この政策に、うってつけの思想集団である。

 『共同体community』と『社会society』は、ちがうのである。共同体(土着日本)を破壊して、社会(キリスト教)を移植する、これが、アメリカの占領政策である。共同体vs社会、という枠組みで考えていい。全体像が、はっきり見える。そして、日本の共同体は、破壊されたのである。

 日本土着の、壊された共同体とは、なんだったのか。それは、『なんとなく』にもとづく人間関係である。みなさんも、中学生の頃なんか、クラス内にやんわりとグループができていっただろう。それぞれ似た空気をもつ人間同士で、固まっていったはずだ。あれが、共同体communityの卵である。日本独特の『空気』の研究は、山本七平(1921~1991)が詳しい。

 空気を共有するのが、共同体である。空気の読みあいは、みなさんの地元の居酒屋でも、毎晩毎晩、くりひろげられている。こうやって発生した共同体が、もっと育っていって、生活を共有するようになれば、かつて日本で最大勢力を誇っていた、無数の共同体ができあがる。

 私が憶えているのは、高校の手づくりの体育祭の、あの異常な熱狂である。私は応援団をやっていた。応援団といっても、いわば乱舞の披露であり、4つに色分けされたチームで、乱舞の出来を競い合うのである。深夜まで学校に内緒で、みんなで乱舞の型を練習したりして、楽しかった。

 私たちの応援団は、優勝した。うずまく達成感の中で、泣いている女の子がいた。私も嬉しかった。そして、違和感があった。私の中の広大などこかが冷めていて、私の感覚のどこかで、熱狂空間が静まり返っていた。「この人たちは、なんで嬉しいのだろう」と、考える自分がいた。いま思えば、私は、あの熱狂空間の中に、日本共同体の持つ、強烈な異次元の信仰を見ていたのだ。

 「なんで嬉しいのだろう。」ーーこのことは、私の最大の疑問でもある。そして、この嬉しさ、この熱狂空間が、日本全土にいきわたったのが、太平洋戦争時だったのだろう。その熱狂と幸福の激しさを知らずして、私たちは戦争時を語れない。

 私は、いまでも、あの体育祭を思い返すとき、夢の中にいたのではないか、と思う。たしか三島由紀夫(1925~1970)が、『金閣寺』の中で、戦争時の夢のような感覚を描いていた。この『夢のような感覚』こそ、日本の共同体の本質なのだろう。

 そして、日本の地域に無数に広がる『共同体community』こそ、不可解かつ厄介(やっかい)な、日本的性質の根源だと、アメリカは見抜いたのだ。自分の命を犠牲にしてまでも、敵兵を殺そうとするのが日本兵である。特攻のことだ。

 日本人という種族を見て聞いてさわって、高度に抽象した結果、共同体こそが、日本人の意味不明な行動の根源だと、アメリカは見抜いたのだ。

 それで戦後、アメリカは、土着の日本共同体に代えて、『社会society』を導入した。社会と共同体は、ちがう。あまりに違う。真逆だ。日本人の体に、未知の血液が入りこんだ。

 日本人の体に入りこんだ『社会society』という思想は、サン・シモン(1760~1825)という、フランスの変わり者がつくった宗教の集大成なのだ。ひとことでいえば、カトリックのGodを近代化したものが、社会societyである。

 社会societyをつくりあげる土台は、お金である。お金、マネーmoney。マネーの語源は、記憶をつかさどる古代の女神・ムネモシュネだ。ムネモシュネは、9人の学芸女神・ミューズたちの母である。ミューズは、ミュージックの語源だ。

 それで、母であるムネモシュネのつかさどる『記憶』とは、予定調和pre established harmonyのことである。最初からそこにある、普遍の、美しい調和のことである。だから、予定調和=ムネモシュネ=マネーだ。

 マネーは、普遍の、美しい調和としての社会societyをつくりだす。私たちの目前に、いや私たちを大きく包みこんで、Godの世界が出現する。だからマネーこそ、キリスト教の真髄なのである。しかし、ここを掘り下げると、分量がとんでもなく膨大になるので、また別の機会にまとめよう。

 社会societyとは、近代の最大の信仰であり、キリスト教の進化体系なのだということを、ここでは明記しておく。引用文をひとつ、載せておこう。『社会society』の創始者・サン・シモンについての文章である。

(引用開始)

『サン-シモンの新世界 下』p442~p443 フランク・マニュエル著 森博訳 恒星社厚生閣 1975年

将来の産業的科学社会では、精神的なものと世俗的なものとのあいだの緊張はすべて排除されるであろう。ちょうど、キリスト教的心身対立論が新しい調和的人間像を生みだすべく運命づけられていたように。

有機的なものと批判的なものとの律動(リズム)は、全時代を通じて永遠に続くのであろうか。人間は無限の循環と危機とを通過しなければならないのであろうか。

サン-シモンの答えは、はっきりしていた。新しい有機的な産業的科学的体制が「最後の体制」だろう。その開幕とともに、循環は終わり、人間はこれまでに知られたようなものとしての歴史がもはや存在しなくなった黄金時代に入るであろう。

至福千年の王国に到達したので、そこには成長・成熟・衰退の新しい循環という意味でのさらなる発展はおよそありえないであろう。循環が螺旋状的に進みながらめざしてきた目標と目的とが、達成されたのだ。

サン-シモンが生きている時代の批判的過渡期は、最後の闘争期だった。黄金時代は、もはやいかなる生活循環ももたぬであろう。けだし、それは地上における真の天国だからである。

※中略

新しい綜合へのアピール、新時代の開幕へのアピールは、サン-シモンの晩年に有能な若者たちを魅了した彼の思想の中心的側面であった。これら若者たちはすべて、有機体のように全体が統合され調和のとれた文化を、当時の過渡期の終焉を、切望した。

彼らの知的欲求と情熱的欲求とを一挙に満たすことを約束した「批判の余地なき」イデオロギーに魅せられて、すぐれた一群の人々が、サン-シモンの死後にその教義のまわりに結集した。ペレール、ロドリーグ、ミシェル・シュヴァリエ、バザール、デシュタル、等々。

若きJ・S・ミルは、サン-シモン派のおしゃべりの多くに辟易させられたけれども、その彼でさえ、一八三〇年代初期には、この体系と軽い恋愛遊戯にふける以上のことをした。

身を守ってくれるような「有機的」なものの温かさへの激しい願望が、一八三〇年代および四〇年代の多くの芸術家や作家ー社会の動揺・不安・矛盾に対して大方の同時代人よりもずっと敏感だった人々ーにとって、この教義を魅惑的なものにさせた奥深い原因だった。

(引用終わり)

 松村享です。

 今回は乱暴にまとめておく。サン・シモンのつくった社会societyとは、生まれ変わったカトリシズムであり、もっとさかのぼれば、古代ギリシャのプラトニズムにまで行き着く、日本人にはまったく未体験の思想空間である。こんなものが、日本人の体にあうわけない。A型の体にB型の輸血が行われたのである。

 『社会society』とは、近代における最大の信仰なのだ。だから、現代日本の社会人は、自分が巨大な信仰の中の、敬虔なる信徒なのだということを知るべきだ。毎朝毎朝、決まった時間に出勤するあなたのその行為は、ローマ・カトリック教会にひざまづく中世西洋のカトリック信者と、なにも変わらないのである。現代日本人と中世西洋人は、まったく同型の精神構造をもつ。

 アメリカから日本に移植された精神構造、信仰である。そして、その信仰の中で、なんで、あなたがそんなに苦しいのかといえば、輸血されたその血が、生来(せいらい、生まれつき)の日本人の体質にあっていないからである。

 移植の前、日本には、『共同体community』への帰依があった。共同体の、夢の中のような感覚、震えるような熱狂があった。アメリカの日本対策班は、『社会society』とは対極の進化、ガラパゴスの極地を、日本という地に発見したのである。

 そして、ガラパゴス・日本は、完璧に分析された。日本対策班の文化人類学者、ルース・ベネディクト(1887~1948)と、ジェフリー・ゴーラー(1905~1985)、この二人が、ガラパゴス分析の最高知能だったのだ。(続)

松村享拝

守谷健二 投稿日:2015/10/27 13:37

【1495】[1827]天武天皇の正統性について

   柿本朝臣人麿の登場以前と以後

 柿本人麿は『万葉集』の持統天皇の時代(687~696)に忽然と登場する。彼の作風は、重厚、荘厳、沈痛などと評され、日本の詩人には稀な堂々たる構成を持ち、唯一の長歌の成功者である。人麿の本質は、長歌にこそあるのだが、平安時代以降、和歌といえば短歌を指すようになり、万葉の長歌は長い間顧みられることがなかった。現在でも長歌の研究は、旺盛な短歌の研究に比べ微々たるものである。

 人麿を歌聖と崇め、人麿終焉の地を求めることをライフワークした斎藤茂吉さえ人麿の長歌を読んでいない。明治期に、和歌の刷新を唱えた正岡子規にとっても和歌と云えば短歌の事であった。平安時代から、人麿は歌聖と崇められてきたが、鑑賞されてきたのは、短歌のみであったのだ。

 しかし、人麿の本領は長歌にこそある。人麿は長歌に神話、歴史を練り込めて歌い上げた日本で唯一の成功した叙事詩人である。人麿の歌は、最初の歌から完成された成熟した堂々たる大人の歌として登場する。彼は、早熟な天才肌の詩人ではない、言葉を選びに選び、鍛(きた)えに鍛える練達なタイプの詩人である。

 彼は、持統朝に登場するが、天武朝(672~686)に不在だったわけでない。天武朝は、修練の時であったと考えられる。天武朝の最大の喫緊の課題は、天武天皇の即位の正統性を創造することであった。真の主宰者であった高市皇子を中心に、天武朝を正統化するため、神話、歴史を試行錯誤を繰り返し練り上げ創り上げていたのだ。

 人麿が、持統朝に出発していることは、神話、歴史の構想の目途がその頃ようやく立った、と云うことであろう。

 人麿の登場で、それ以前と何が変わったか、それは「天皇が神に昇華した」ことである。天智天皇も天武天皇も、神として歌われていないのである。

   軽皇子(後の文武天皇)の安騎野に宿りましし時、柿本朝臣人麿の作れる歌
 やすみしし わが大君 高照らす 日の皇子 神ながら 神さびせすと 太敷くかす ***〔45〕

   天皇(天智)崩(かむあが)りましし時、婦人の作れる歌 
 うつせみし 神にたへねば 離(さか)りゐて 朝なげく君 放(はな)れゐて わが恋ふる君 玉ならば 手に巻き持ちて 衣(きぬ)ならば 脱ぐ時もなく わが恋ふる 君ぞ昨夜(きそのよ) 夢に見えつる〔150〕

   天皇(天武)崩(かむあが)りましし時、太后の作りませる御歌
 やすみしし わが大君の 夕されば 見し賜ふらし 明け来れば 問ひ賜ふらし 神岡の 山のもみちを ***〔159〕

 天皇、皇子に対する常套句「やすみしし わが大君 高照らす 日の皇子 神ながら 神さびせすと」は、柿本朝臣人麿の長歌に源を発する。

相田英男 投稿日:2015/10/25 18:39

【1494】[1826]原子力の日の前日のこと

相田です。明日10月26日は「原子力の日」です。原子力の論考の第4章がなんとかまとまりそうです。できれば原子力の日に間に合わせたかったのですが、もう少し見直そうと思います。それに少し関することで、最近菅直人がブログで述べたコメントについて、反論したいと思います。

ー引用始めー

2015年10月22日 08:57
菅直人
福島原発事故記念館が必要

(中略)
 もともと日本の原発を推進し、福島原発事故を引き起こした責任の多くは長年の自民党政権にあることは明らか。福島原発事故が発生したのは2009年9月に初めて民主党政権が生まれてわずか1年半後の2011年3月。事故を起こした福島原発をはじめ54基のすべての原発は自民党政権時代に建設されたもの。事故の原因となったほぼすべては自民党政権下で発生していることはその後の検証でも明らかになっている。

http://blogos.com/article/140506/

ー引用終わりー

菅直人よ、それは違う。

あなた達、民主党、共産党、その他の反原子力活動に携わる全ての人物達も、福島事故の責任を免れることはできないと、私は強く主張する。

さかのぼる事50年前、「原子力の日」の前日1963年10月25日(実は今日だった)に、当時の社会党、共産党の支援を受けていた原研労組の50名が、運転中の1万キロワット級原子炉JRR-3(通称国一炉)に、抜き打ちのストライキを強行した。この事件をきっかけに混乱に陥った原研の状況にかこつけて、自民党議員連中は、それまで積み重ねられた原子力政策の問題の責任を、原研理事長の菊池正士(きくちせいし)に全て押し付けて、辞任に追い込んだ。

この時、社会党の議員達も原研の組合員を守るために、菊池の管理責任を追及し、あたかも自民党と連携するが如く、菊池を追い込んで潰した。

菊池正士こそが、それまでの原子力政策の誤りを正直に指摘し、一方では、体制側に反発する労組をなだめながら、日本に正しい原子力技術が根付くように現場で尽力した、最後の人物であった。その希望の星を、自民、社会、共産党の議員達は結託して、共同謀議(コンスピラシー)のようなやり方で、50年前に残酷に抹殺した。

福島事故の悲劇はここから始まったのだと、私は強く主張する。
体制側も反体制派も同罪なのだ、と。

自民党や東電の責任を追求する者達は、50年前に立ち返って、菊池を潰した事実への責任をまずは問わなければならない。それをしない者達は偽善者だ。

菅直人よ、「そんな昔の事を今更持ち出すな」などと、誤魔化してはいけない。あなたは、この50年前の事実をよく知っているはずだ。少なくとも、よく知っている人物が近くにいるはずだ。なぜならば、原子力規制委員長に元原研労組執行委員長を務めていた田中俊一氏を起用したのは、他でもないあなただからだ。

原子力規制庁を作る際に、あなたは「10基も20基も再稼動するなんてあり得ないという、簡単に戻らない仕組みを民主党は残した」とコメントしたという。効果は絶大だった。お互いに信頼関係を築けない規制庁と電力会社は、もめにもめ続けて、再稼動はままならない状況だ。その間に中国はイギリスで7兆円で軽水炉を作るのを手始めに、世界中で原発を作り始めるだろう。そのうち、安全基準も中国主導で作られるのではないか。

私は別に、共産党や左翼を批判するつもりは全くない。日本人で、福島事故の責任を東電や自民党に追求できる資格のある者は、誰もいない、という事を主張するだけだ。少なくとも菊池の霊前で詫びを入れて、先人達が犯した過ちをはっきりと認めるまでは、他人の批判は許されない。ヨハネ福音書でキリストが述べたという「汝らの中で罪なき者から、この者(売春婦のこと)に石を放て」という、言葉の如く。

これまで愚直に技術を追求してきた原子力研究者、技術者達の、無言の努力を、「原子力ムラ」の一言で、貶めてはいけない。私は50年前の偽善を全て暴く。そして菊池の名誉を晴らす。若い人達が、原子力に後ろめたさを感じる事がないように。

P.S.
私は、自民党や東電や統一教会側の肩を持つつもりは、全くありません。原子力という技術の世界に思想を、右も左も、持ち込む事をやめて頂きたい、というのが本心です。

相田英男 拝

松村享 投稿日:2015/10/21 03:09

【1493】[1824]社会societyに壊された人々へ①

 松村享です。今日は2015/10/21です。

 私は、先日おこなわれたSNSI合宿に参加してきました。してきたんですが、私は熱をだして倒れ、加地龍太くんの車で、早々と東京に引きあげる事となってしまいまして、残念です。その際は、副島先生をはじめ皆さん、大変お世話になりました。久しぶりに会えて、嬉しかったです。

 六城さんとは、朝まで酒を飲んでいました。たまに、田中進二郎さんが、乱入してきました。「風邪ひきながら、朝まで酒とは、なんなんだ」というツッコミは、ご勘弁ください。六城さん、進二郎さん、とても良い時間でした。ありがとうございます。

 さて、なんで私が、ここでこのように書いているかというと、実は合宿の際に、発表したかったことがあるからであり、論考としてまとめたので、いっそ『学問道場』に集まる大勢の皆さんの前にて発表してしまおう、と考えたからです。

 夏あたりに、私のメールアドレスを乗っ取って、副島先生にメールをだした者がいます。嫌がらせですね。まあそれは、事務所の須藤よしなおさんが、ヘッダー情報を割り出して解決してくれました。

 私も当初は激怒していたのですが、だんだんと、このネット媒体の中で、顔をふせてウロチョロする類型のことを考えるようになりました。うまくいかない人間の、どろりとまとわりつく粘着性の怨念が、社会から締め出されて、どこにもむかいようのないままに、四方八方に流れだしている。

 社会が、人間を吸収しきれなくなっている。毎日、同じ生活をくりかえす社会人の、その内面には、おぞましい粘着物が溢れかえっている。当然といえば当然の帰結でもある。社会societyというのは、外来の輸入された思想であり、そもそも日本人の体質にはあっていない。A型の人間にB型の輸血をするようなものだ。体が拒否反応をおこしている。そうとうに深刻な状況である。

 私のメールアドレスを乗っ取ったあんた、自分では正常だと思っているのだろうが、私から見れば、輸血に失敗して錯乱状態である。精神構造が、迷路と化している。だから、まずは、錯乱しているありのままの自分を直視してください。これから私がおこなう処置が、まにあうかどうかは、わからない。最善を尽くすが、最後はあんたの体力しだいだ。

 この輸血は、太平洋戦争後、戦勝国のアメリカによって行われた。日本人という意味不明な民族を治療したこの手法は、社会工学Social engineeringと呼ばれている。

 「社会科学を応用して、社会の病気を治すための処方箋を書く」これが社会工学Social engineeringの目的である。古村治彦氏は、アメリカの大学で、このように明確に教えられたのだと『悪魔の用語辞典 これだけ知ればあなたも知識人』(SNSI副島国家戦略研究所 kkベストセラーズ 2009年)の中で書いている。

 「社会科学を応用して、社会の病気を治すための処方箋を書く」ーこの言葉は、果てしなく理想的だ。非常に前向きである。光り輝くような、キリスト教圏に特有の美しさだ。古村氏は、「アメリカでこの言葉を聴いて深く感動した」と上掲書で書いている。そして、帰国後に社会工学の本当の意味を知って、だまされたように感じた、とも。

 キリスト教は、『美』で包みこんだギフトgiftをくれる。あまりに清らかな美しさだ。それは現代の社会工学だけではなく、この2000年を通して変わらないキリスト教の伝統である。

 たとえば『予定調和pre established harmony』などもそうである。予定調和とは、Godがあらかじめ決めている調和、定めのことである。字面を見て欲しい。予定調和はpre established harmony、意訳すれば『あらかじめ奏でられていたハーモニー』だ。

 この語感は私に、天に描かれた壮大な虹をイメージさせる。いまちょうど、著述している私のかたわらで、バッハの音楽が流れはじめた。曲名は知らない。匂いやかな美しさを感じる。陶酔(とうすい)の美しさを、キリスト教は持っている。

 このようなキリスト教圏のイメージを受け継いでいるのが、社会工学なのだ。社会の病気を治してくれるのが、社会工学である。

 社会工学は、数字を適用して、あっちとこっちでバランスをとって、まるで数学の問題を解くかのように、というか数学そのものか、紙のうえで、人間の世界を再編成するのである。「数字をつかう」というのが重要だ。数学Mathematicsというのは、神学Theologyの一部だからだ。数字とGodは切っても切れない関係にある。ともに高度の抽象化である。

 『万物の根源は数字である』と宣言した古代ギリシャのピュタゴラス(紀元前582~紀元前496)から、ものごとを高度に抽象して、理論化して、いちばん高みの天空から、人間の世界を解釈する、という視点が発達した。

 空気+暖かさ=雨であり、人間+恐怖=パニックである。高度に抽象すれば、2+3=5だ。このような、絶対に変わることのない、2+3=5という、数界の普遍(ふへん)の法則、ユニヴァースuniverseを、Godはつかさどるのである。

 だから、数学Mathematicsは神学Theologyの一部なのだ。『新版 決然たる政治学への道』(副島隆彦著 PHP研究所 2010年)のp233に、キリスト教圏で一般的な、諸学の分類表がある。ここに画像として載せたいのだが、載せ方がわからない。

 この分類表を、じっと見て、しっかりと腑に落としこむことで、ちまたに溢れかえる、外国人の書いた難解な思想専門書を、じわじわと理解できるようになるのである。

 ここを理解せずに、プラトンがどうたら、ヴィトゲンシュタインがどうたら言ったって、難解な言語をふりまわす中二病のイタイタしい人間にしかなれない。

 この分類表を解読したなら、次は、SNSI研究員・鴨川光氏の論文『サイエンス=学問体系の全体像』(ウェブサイト副島隆彦の論文教室)を、何度も読み返すのがいい。鴨川氏のこちらの論文は、エンサイクロペディア・ブリタニカencyclopedia britanicaをベースにしている。

 鴨川氏は、原文のままのブリタニカを使っている。翻訳者に好き勝手に引き裂かれた日本語訳のブリタニカではない。未知の知識、未知の歴史を知る事ができる。現代日本には未上陸の、ユーラシアの学問体系の詳細な全体像を、理解できるのである。

 『サイエンス=学問体系の全体像』は、そうとうに膨大な文量だが、まだ未完成の論文であり、しかも打ち切られている。鴨川さん、書いてくだされ。私は続きを読みたいのです。これは、出版物にして欲しい論文だ。

 ともあれ、諸学の分類の中で、数学は、神学の一部なのだ。日本では、ほとんど知られていない未上陸の知識である。高校の数学が、難解なうえに何のためなのか意味不明なのは、あれが神学だからだ。

 数学が得意な人間は、数字の中に、Godの世界の美しさを感じているのである。「何のため」などはない。大事なのは美しさだ。「数式は美しい」とは、キリスト教徒の言葉である。天に描かれた陶酔の美しさこそ、キリスト教と、のちに続く社会工学の本態(ほんたい、本当の姿)である。

 そして、「数式は美しい」の連中が、日本に上陸した。太平洋戦争で壊滅した戦後日本に、社会工学がほどこされた。GHQの中のニューディーラーと呼ばれる連中が、戦後日本の青写真を描いたのである。現在の日本国憲法も彼らの手による。

 ニューディーラーは、私にいわせれば、キリスト教の聖職者である。『pre established harmony:あらかじめ奏でられていたハーモニー:数字の調和』に酔いしれた聖職者の最高傑作が、戦後日本なのだ。

 ここで明確にいっておくが、私は近代において生まれた、あらゆる政治思想のカテゴリーを、キリスト教の名の下に一括する。中には、「ニューディーラーは社会主義者であって、社会主義者は宗教を否定するので、彼らを聖職者と呼ぶのは筋違いだ」という、ガチガチの知識人の方もおられるだろう。

 だが私は、聖職者として一括する。近代と呼ばれるこの500年の、あらゆる政治思想は、キリスト教の各セクトであり、だからこそ日本人には理解がおよばない、という大きく単純化した視点から、私はこの文章を書いているのである。

 我々は、そろそろこの500年を総括しなければならない。それがたとえ、極東の島国からの発信であったとしてもだ。いや極東の日本人だからこそ、いえることがある。キリスト教の最高傑作としてつくりあげられた日本の民として、我々には、西欧近代500年を理解する必要がある。社会societyによって壊された人々よ、あなた達にむけて、いま私は書いている。2chなんかで暴れてないで、こっちを読んで欲しい。

松村享拝

副島隆彦 投稿日:2015/10/08 12:23

【1492】[1823]もう日本は貧乏国だ。 それと 世界の最新の重大な動き。ロシアのシリア空爆が世界戦争に繋(つな)がるだろう。

副島隆彦です。 今日は、2015年10月8日です。

 世界が、またひとつ戦争に向かって、大きく進んでいる。

 オバマとバイデンは、来年(2016年)中まで(正確には、2017年2月22日まで。次の大統領の就任式)あと 1年4ヶ月の任期があるから、“大きな戦争” large war ラージ・ウォー の開始の署名はしない。

 だが、そのあとは、もう分からない。 おそらく大きな戦争=第三次世界大戦(WW3) が始まるだろう。2017年からは、私たちが生きている極東(東アジア)でも、戦争が起きる。いや、特定の極悪人の、戦争しかけ集団が引き起こす。そのように着々と、事態は進行している。このように、考えないと、真に知性と思考力のある 人間だとは考えられない。

 今の日本人のほとんどは、脳(頭)をアメリカと、日本の右翼国家機関にヤラれている(侵されている)から、正常な判断力を持っていない。 中国と 北朝鮮を、コワイ、コワイ、気持ちの悪い国だ、と 厭(いや)がり恐怖することを中心に、洗脳(せんのう、ブレイン・ウォッシング=マインド・コントロール)されている。 だから高い知性と教養のある人間が、ドンドン減っている。

 私は、右翼と 保守は違うと考えている。右翼は、生来の犯罪者体質である。近寄ること自体が危険だ。 それに対して、本当の本来の保守(ほしゅ、コンサーヴァティヴス)は、立派な人達で、常に温厚で、何があっても、我慢強く、思慮深く対応する。

 私は、今も残っているこの本物の保守の人々に、期待している。彼らに希望を抱いている。彼らが、自営業者だったり、自分の従業員たちを、なんとか大事にして雇って給料を出して食べさせている。日本で今、この人達が、痛めつけられて減少、激減しつつある。このことを私は深く心配している。 

 あとは、たいして知能も、思慮もない、始めからずっと会社員=労働者をやるしか脳のない人たちだ。彼らの思考力は、残念ながらたいしたことはない。愛すべき国民大衆ではあるが、いざというときに闘えない。

 日本は、どんどん貧乏な国になっている。恐るべきことだ。普通の国民までが貧困化しつつある。多くの中小企業経営者は、廃業=清算(せいさん)、破綻、破産、して、大きな負債=借金を抱えた者たちは、夜逃げしつつある。 日本の ビンボー国への転落は、目も当てられないぐらいに、ヒドいものである。 

 このことを、皆で正直に語り合う、ということをしない。皆、自分は貧乏ではないと、まだ見栄(みえ)を張って気取っている。みっともない襤褸(ぼろ)を隠して、必死に取り繕(つくろ)っている。まわりから恥を掻(か)きたくないのだ。本気で、自分がどれぐらい貧乏になっているかを、言い合えば、大きな真実が見えてくる。

 下流老人(かりゅうろうじん)、老人破産 とかのコトバで、お茶を濁している。 東京の江東区(こうとうく)、荒川区、北区などの 最下層の極貧層(ごくひんそう)の人たちの困窮ぶりが、だんだん表面化してきた。 

 私、副島隆彦は、日本に3千ぐらいあるだろう職業、業種、産業のうちの、出版業界(しゅっぱんぎょうかい、本を作って本屋で売る、という仕事)に属する。この出版業界が、本当に追い詰められてヒドいことになっている。私はここに所属する。だから自分のこととして深刻に悩み苦しんでいる。 他の、3千の職業の人々も、本当に、業界、職業の、存亡(そんぼう)の危機に立たされていることが自分の肌身で分かる。 
 
 日本は急激に、とんでもない国になりつつある。ところが、 全員が知恵遅れで、低能(ていのう)で極悪人の 集団である 安倍晋三政権は、こういう国民の苦しみを理解しない。自分たちは権力者だから、自分たちには最後に悲劇が来る、それまでは大丈夫だ、と思い込んでいる。そのうち、彼らを天罰(てんばつ)が襲うだろう。
 
 この者たちは、幼児の頃から、十分に、ワルであり、冷酷な人間であり、他人の苦労が分からない人間たちだ。 ヒトを食って生きてきたのだ。「国民が、どうなろうと構わない。国民をどれだけでも追い詰めて、税金で奪い取ればいい。自分たち国家=政府さえ存続できればそれでいいんだ。世の中は、もともとそのように残酷に出来ている。権力者で勝ち組である自分たちだけが、生き残ればいいのだ」と、腹の底から考えている。そしてその子分たち、とうのが、いる。

 そして、 官僚=上級公務員ども、という、もう一種の、ワルい人間たちと、共同戦線を張っている。というか、本当は、以下の田中宇(たなかさかい)氏の文にもあるとおり、「日本の官僚が、アメリカに従属することで、自分たちの特権を温存する」のである。 低能の安倍たちなど、こいつらは大臣たちだから面従腹背(めんじゅうふくはい)で、いいように扱えばいい、と分かっている。

 この他に、日本には、今も500万人ぐらいの、チンコロ右翼の 反共(はんきょう)経営者、自営業者たち(この者たちの商売もうまく行っていない。貧困層に転落しつつある)だけが、産経新聞(さんけいしんぶん)右翼を中心に、安倍晋三を支えている。この者たちの、飢えた本性(ほんしょう)は、今や、半ば本気で中国との戦争の開始を求めている。

 自分たちの ちっともうまく行かない現実を、外側、外国に捌(は)け口(ぐち)を求めて、「戦争をするしか、もう、日本が生き延びる道はない」 と考えつつある。 大きな意味で、世界的な、戦争への扇動(せんどう)がある。震源地は、やはりアメリカの軍事凶暴派(タカ派、軍産複合体、ネオコン、ムーニーMoonie =統一教会=世界勝共運動、ヒラリ―派)である。

 この 9月30日に、ロシアが開始した シリア各都市への空爆と巡航ミサイルによる攻撃は、決定的に重要だ。 ロシアはついに外国への直接軍事行動に出た。これで、IS(アイエス)は、本当に、半分ぐらいを殲滅(せんめつ)されるだろう。今日(10月8日)で、もう3週間がたった。 ロシアのこの動きに、世界の各国の指導者たちが真剣に考え込んでいる。どうやら緒戦(しょせん)では、ロシアの勝ちのようだ。

 アメリカのアシュトン・“アッシュ”・カーター国防長官は、昨日(7日)の記者会見の声明で、「ロシアは、シリアの反政府勢力(自由シリア軍、FSA)に攻撃を掛けており、間違っている。これは、ISへの国際軍事協同行動ではない。アメリカは反対する」と語った。

 しかし、その口調は弱々しい。 アッシュ・カーターは、真面目な国務省官僚あがりで、決して軍事凶暴派ではない。いまのところはオバマに忠実だ。オバマ政権としては、ロシアが本気で、アルヌスラ戦線(ウラで、イスラエルとくっついている)とIS を 叩き潰そうとしていることに、反対できない。オバマの本心は、プーチンに賛成である。

(転載貼り付け始め)

◯「 ロシア、シリアに巡航ミサイル発射 米と亀裂拡大 」

 2015/10/8 日経新聞

 ロシアがシリアへの軍事介入の度合いを強めている。過激派組織「イスラム国」(IS)掃討の名目でシリアのアサド政権を支援するロシアは7日、これまでの空爆に加えて巡航ミサイルによる攻撃に踏み切った。アサド政権の退陣を求める米国の批判をよそに、ロシアは強硬策に拍車をかけている。米ロの亀裂が一段と深まってきた。

 ロシア国防省によるとミサイルは約1500キロメートル離れたカスピ海に展開している4隻の巡洋艦から計26発発射。11カ所の標的をすべて破壊した。ロシア軍は7日もシリア北部や中部での空爆を継続。9月30日の空爆開始からの8日間で112カ所の軍事関連施設を破壊したと発表した。

 プーチン大統領は7日、ショイグ国防相にISの掃討に向けて米国やサウジアラビア、トルコなど関係国と協力するよう指示。アサド政権が率いるシリア政府軍との連携を深めるよう求めた。

 プーチン氏はフランスのオランド大統領から反政府勢力の自由シリア軍とシリア政府軍が共同で反ISの軍事作戦に当たる案を提案されたとも表明。「興味深いアイデアであり、(両者が)力を合わせることができるなら(シリアの)政治的正常化のための好条件がつくられる」と評価した。

 ロシアからの協力呼び掛けに対し、カーター米国防長官は7日、訪問先のローマでの記者会見で「ロシアが何を言おうと、我々はロシアと協力することには合意していない」と強調。IS掃討をうたいながら、実際は親ロシアのアサド政権を支援するため、反体制派を標的にしているロシアの戦略には「悲惨な欠陥」があると指摘した。カーター氏はシリアでの空爆時に軍用機の衝突を避ける安全面での調整については議論を続ける考えを明らかにした。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。ロシアのシリア爆撃の概要は、以上の新聞記事の通りだ。

 IS 「イスラム国」を、作って育てたのは、(去年、2014年6月10日に、モスル制圧で突如出現した)、アメリカの軍事凶暴派と イスラエルと、サウジアラビア(サウド王家という中東全体からの嫌われ者のワルたちが支配している。ワッハーブ派という凶暴な宗派を持ち、アメリカによる石油買い、で支援されてきた王家。だから、サウド・アラビアとは、サウド(家が乗っ取っている)アラビアなのだ)だ。 

 ところが、今、アメリカと、イスラエルと、サウジアラビアの、 このワルの三カ国 の話が合わなくなっている。 分裂が起きている。ISが、自分たちの思うとおりに動かずに、モンスター化している。このことに苛立っている。 この分裂線を、今回、プーチンが、鋭く突いた。だから緒戦(始まりの戦い)ではプーチンの勝ちだ。

 ロシアは、 イランとイラク政府の、許可と承認を得て、上空を通って、戦闘爆撃機スホイ34 による空爆(エアレイド)と、巡航ミサイル「カリブル」(全長6メートル)を使って、1500キロ離れたカスピ海から攻撃している。 極めて正確に敵の 弾薬庫(アーセナル)とかに命中させている。

 ロシア空軍は、シリアの反体制組織のひとつの アルヌスラ戦線 と IS(「イスラム国」)に対して空爆(くうばく)を掛け、大きな打撃を与えている。 ロシアは本気だ。プーチンは、この計画を実行するために十分な根回しをしてきた。 

 私は、9月中旬に、プーチンがイスラエルのネタニヤフ首相と会談したことに、アレ、何かする気だな、と気づいていた。  プーチンは、「私は、IS(アイエス)の本拠、ラッカを空爆するからな。反対しないでくれ」 と あのとき言い切ったのだと分かった。「分かった」とネタニヤフは言ったようだ。

 事前に、ロシアのラブロフ外相がジョン・ケリー国務長官との数度の電話会談で、「ロシアは、ISを撃滅するための軍事行動に出る」と伝えている。だから、シリアは、イラクの北部のISの支配地域の上空での、アメリカ軍機と、ロシア軍機の軍事衝突(撃ち合い)が起きないように、事前に、互いの戦闘機の位置を知らせ合う信号送信の仕組みを作っている。ということは、オバマ政権としては、ロシアのIS爆撃を消極的に容認している、ということだ。

 オバマは、プーチンと十分に根回しして、アメリカとロシアが直接ぶつかることを上手に回避している。オバマとしては、イラクあるいはシリアに、米軍の地上部隊(グラウンド・インファントリー)を投入することを絶対にしたくない。 せっかく 2012年末に、イラクから最後のストライカー師団を撤退させたのに、また中東に、米軍を投入することは絶対にしない。少なくとも自分の任期中はしない。米軍自身がいやがってる。「もう、あんなところには行きたくない」と。

 プーチンは、いよいよとなったら、ISとアルヌスラ戦線を殲滅(せんめつ)するために、ロシアの地上軍まで投入すると決めているようだ。 このことが、再来年からの起きると危惧される「大きな戦争」の引き金となる。

 オバマが、ものすごく偉かった、賢かったのは、2年前の2103年の4月、と8月21日に、シリアで仕掛けられた罠(わな)に、乗らなかったことだ。あの時の、オバマの英断は、後世に語り継がれ、政治学者たちから高い評価を受けるだろう。

 それは、2013年の4月に、シリアの首都ダマスカスの郊外で、サリンガスが撒かれた、という事件だ。それで、シリアのバシャール・アサド政権に、濡れ衣を着せて、「アサドの政府軍が、化学兵器のサリン爆弾を使った」という国際報道キャンペーンを張った。 そして、オバマに、アサド政権を打倒するために、ダマスカス爆撃させようと仕組んだ。仕組んだのは、イスラエルと、アメリカの軍事凶暴派、とそれからサウジアラビアである。

 アサド政権は、何も悪いことはしていない。反政府軍という、おかしな、プロ pro の殺し屋の、傭兵部隊と戦っているだけだ。 さらに、同年、8月21日に、くりかえして、サリン爆弾を爆発させて、シリアの住民たち、子供を含めて、1400人を殺す、という事件が起きた。悶(もだ)え苦しんで死んでゆく人々の映像を、世界中に盛んに流した。すぐあとの9月に、国連の人権委員会と戦争犯罪(ウォー・クリミナル)の調査団が現地に入った。そして、オバマは、真実を知った。サリン爆弾≒化学兵器をヨルダン経由で、サウジから持ち込んで、破裂させたのは、イスラエルとサウジが、米軍の特殊部隊の協力で、自分たちの子分である、反政府軍のならず者たちを使ってやらせたのだ。

 オバマは、正しく判断して、ダマスカス爆撃をしなかった。このことで、日本の安倍政権を含めて、危険な世界の凶暴派のネットワークに入っているゴロツキたちが、心底、がっかりした。 アサドを潰して、シリアを泥沼にすれば、これで、いよいよ 中東全体を戦争に持ち込める、と 策略を仕掛けた者たちの負けだ。

 バシャール・アサドは立派な指導者だ。父親は独裁者だったが、彼は、今も冷静に世界のメディアに出てきて、自分たちの立場を話している。当然に、世界メディアは、バシャールの本当に言いたいことを伝えない。ヨーロッパの優れた知識人層は、皆、「バシャールはかわいそうだ」と擁護している。

 オバマは、シリアの反政府軍の中の、おかしな連中(アルヌスラ戦線、アハラール・アルシャームなど)には、重火器の援助をしなかった。 自由シリア軍(フリー・シリア・アーミー)というスンニー派の穏健な反政府軍にだけ武器援助をした。 それで今のように、まだ、中東発の世界戦争にならないで、おさまっているのだ。 

 オバマの優れた決断を引っ張りだしたのは、国連の戦争犯罪人検事局( 国際刑事司法裁判所 ICCJ )と人権委員会にいる、カルラ・デル・ポンテという女性だ。彼女は、真実を調査する国際検察官だ。 このデル・ポンテ女史が、「サリンを撒いたのは、反政府軍だ」と国連の現地調査団としての 真実の発言をスイスでした。
それで、ヨーロッパ人たちは動揺した。 凶暴な、右翼、戦争キチガイ人間たち以外なら、この大きな真実に気づいた。それでも、世界権力者たちは、この真実を覆い隠して、今も、国連の調査団の報告書を隠してしまって公表しない。ウクライナの上空での マレーシア機の撃墜の真実も発表しない。これが、今の世界だ。

 日本では、このカルラ・デル・ポンテ女史の活動は、何も知らされていない。
私、副島隆彦が去年、出版した。『副島隆彦の政治映画評論 4』(ビジネス社刊)の中で、このデルポンテ女史を扱った ドキュメンタリー映画を、取り上げた。日本の知識人とか、有識者、政治学者なんか、サル並みのアホばっかりだ。私は、彼らが私の目の前に現われて、少しでもえらそうな事を言ったら、つかみかかって殴り倒すだろう。「おまえは、本当に、大きな世界の真実を知っているのか」 と。  

 プーチンは、やがてロシア地上軍の投入までをする。シリアと、北イラクの IS(たかだか、10万人ぐらいの狂った傭兵部隊)を完全に、掃討(そうとう)するには、どうしても 地上軍を投入しなければいけない。そのためには、イラク政府の許可をもらい、イラン政府と十分に根回しして、イランの革命防衛隊(レヴォリューション・ガード)と共同作戦を取る必要がある。

 イランの革命防衛隊(これはイランの政府ではない義勇兵の、民兵組織の形だ 。私は、今年の4月に、テヘランで彼らの尋問を受けて、勉強になった )の将軍(司令官)が、7月末に、ロシアに行っている。 ということは、この時から、今度のロシアの軍事行動計画は始まっていたということだ。

 だから、このままゆけば、アメリカの軍事凶暴派が、ロシアの動きを黙って見ているわけにはゆかないから、ロシアへの制裁、と称して、やがてロシア軍と正面からぶつかることになるだろう。それは大きな戦争につながる。
そうなると、中国が、ゆくゆくは(今は、黙って知らん顔をしているが)、ロシアを支援することになる。中国が、ロシアにとっての ”大後方(だいこうほう、グレイト・バック)”になる。中国の支援がロシアを支える。

 そうなると、中国とロシアの、ユーラシアの同盟ができて、これに消極的に、ヨーロッパの「アメリカよ、もういい加減にせよ。世界支配のやり過ぎだ」と分かっている勢力が、この中ロを後押しするだろう。 いよいよ、ユーラシアの時代である。 アメリカ合衆国は孤立してゆく。

 このとき、アメリカの軍事凶暴派=反共右翼=イスラエル一点張りの 連中は、自分たち、先進国の 高度な技術と、金融大国の理屈で、勝ち続けることが出来ると思っているのか。 大きく、大きく考えると、アメリカは孤立しているのだ。 最後の味方は、カナダと日本だけ、ということになるだろう。

 そして、この日本にも、私、副島隆彦や以下に載せる田中宇(たなかさかい)氏のような言論人と、それから真に優れた人間たちが、極(ごく)少数だが存在する。そして、洗脳されきって、脅しあげられている日本国民に、真実を伝え続ける。この苦しい努力も続く。 最後は、アメリカの敗北だろう。 

 その前に、米ドルを、文字通り、紙切れにして、「外国から借りたカネは、一切、返さない」と宣言するだろう。そして、アメリカが世界を支配した、この120年間が終わってゆく。 ロックフェラー家が石油と共に勃興した、アメリカの時代が終わる。 その前に、世界戦争に打って出て、数年間の間に、数千万人の人間が、死ぬことになるだろう。

 日本もその例外にはならない。数百万人が次の戦争で殺されるだろう。私は、そのように冷酷に、未来予測(フューチャー・テリング)をしている。今の日本の貧困化は、その前兆である。

 今のヨーロッパ諸国は、シリアと、リビア( カダフィを、ヒラリーが殺したからだ。)の難民が流入することで、もう往生している。だから、ロシアが、ISやらを本気で叩いて、これ以上の中東難民の流入を阻止してくれることに賛成している。 自分たちでは、大したことは何も出来ないのだ。

 フランスの虎の子の原子力空母のシャルル・ドゴール号による、レバノン沖からの、IS爆撃とか言ったって、何の成果もあげていない。イギリスの爆撃も同じだ。 アメリカの顔色を伺(うかが)いながらの、西側同盟としての、最低限度の協同軍事行動という体裁だけだ。

 第一、アメリカの軍事凶暴派自体が、ISを作って育てたのだから、米軍が、本気で、ラッカのISの本拠を攻撃する、ということをしない。ドローンを使って爆撃のようなことをやっている。その実、「誤って」ISの支配地域に支援物資を投下した、ということまでやっている。 オバマと、チャック・ヘーゲル前国防長官は、このことで、怒っていた。「自分たち最高司令官の命令を、なぜ、軍は聞かないのか。どうしてISへの爆撃を強化しないのか。本当に、お前たちはやる気があるのか」と、オバマは怒っていた。しかし、何ごとも我慢だから、米軍内の 凶暴派、反共右翼=ムーニー の勢力に対して、何も手を打てないで、ここまでやってきた。

 だから、オバマとしては、プーチンに何一つ強いことを言えない。 このまま行くと、ロシアが、中東アラブ地域(リージョン)でも大きな力を持つようになる、と、イギリスBBCのモスクワ派遣の、如何にも軍事凶暴派で、体制ベッタリの、イギリス女の特派員が、今朝のBBCでも、ロシアを腐(くさ)すだけのコメントをしていた。

 日本の、みっともない安倍政権への屈従集団であるNHKなどは最早(もはや)、まともに世界基準の政治思想の理解や政治分析が出来る人材はいないので、お子様ランチ並の、低レベルの安倍政権への屈従報道をやっているだけだ。自分たちには何の判断力もない。

 以下に長々と載せる、”ウータン”田中宇(たなかウー)氏の世界政治分析が、優れていて、私が、この数日、ずっと観察して分析していたこととほとんど一致しているので、以下に、その「無料、勧誘版」を貼り付けます。

 この中に、トルコ政府(エルドアン政権)が、シリアとイラクにいるクルド人のクルド労働党との戦闘があるので、その分は、いやなのだが、ロシアの戦闘機が、トルコ領内に誤って入ってきたことで、ロシア政府がすかざず謝罪したので、「ロシアは友人だから」と、ロシアの、シリアでのISやアルヌスラ戦線への激しい爆撃に、反対していない。

 ヨーロッパ諸国の指導者たちも、ヨーロッパの集団的自衛集団であるNATO(ネイトー)軍の中にいる、反共右翼の、「ロシアとの戦争も辞さず」という凶暴派を除けば、「ロシアに頑張って欲しい」というのが、本音だ。

 ドイツおよびドイツ国民は、9月15日ぐらいから、降って湧いた、VW(フォルクスワーゲン)社の、排ガス規制逃れの秘密の違法ソフト摘発の件で、アメリカに怒っている。 

 今頃、何だよ、そんな違法ソフトの組み込みなんかを摘発しやがって、ディーゼル車では完璧な排ガス排除は出来ないことは専門家は全員、分かっていたはずだ。と、ドイツ人は、怒っている。これで、ドイツのアメリカ離れが、また加速する。

 アメリカは、ドイツ政府が中国に接近して「一帯一路」とAIIB を推進し、かつ、メルケル首相が、プーチンと北海ルートの天然ガスの供給とかでも合意し、ウクライナの調停(アービトレーション、仲介)でプーチンと密かに話し合っているので、ドイツいじめをやる、と決めたのだ。 

 フォルクスワーゲン社は、180億ドル(2兆円)ぐらいの懲罰金、罰金を、アメリカ政府(司法省)に払うことになるようだ。こうやって、アメリカは、自分の国の財政赤字が、文字通り、火の車 だものだから、外国の大企業を、傷めつけて恐喝(きょうかつ)のような大金の巻き上げを平気でやるようになった。トヨタもひどい目に会った。 

 アメリカの連邦政府の債務上限 20兆ドル=2400兆円の 引き上げの期限が迫っている。ワルのローマ法王フランシスコが米議会で演説したときに、後ろで、「私は辞任する」と突如、ベイナー下院議長が、政府の借金問題で、頭がおかしくなって、泣き出したのが、映像に映ってしまった。9月25日だったか。

 日本の東芝いじめ、東芝の経営危機も、 アメリカが、西室泰三(にしむろたいぞう、元東芝会長)を使って、「金融庁=アメリカの直属機関=が握る社外重役制度」を使って、三井ロスチャイルド系で、能力のある立派な人物である西田厚聰(にしだあつとし。 奥さんはイラン人 )の勢力を追い落とさせるために仕組んだのだ。

 トルコが、「ロシアは大事な友人だ」と言っていることが重要だ。こうなると、アメリカから離れようとしている中東の国々は多い。中東どころか、世界中で、アメリカの凶悪なやり方に嫌気が差している指導者たちが増えている。

 だが、彼らは、政治家だから、どっちつかずが一番。両方の勢力から、猫なで声がかかって、「タダでもらえるものなら、原発でも、高速鉄道(新幹線)でもいただいてしまいましょう」と、「まだまだ貧乏大国」のインドのモディ首相のように上手な立ち回りをしている。 こういう大きな事実を、日本のテレビ、新聞は、絶対に報道しない。

 バカのヌケサクなのだ、日本の、インテリ層や、有識者とか、専門家ぶっているバカたちは。世界基準(ワールド・ヴァリューズ)での大きな真実というものを、知らないのだ。理解する能力がない。アメリカによる戦後70年の洗脳教育というのは恐ろしいものだ。

 以下に、長々と載せる ウータン田中宇(たなかさかい)氏の文を、さらさらと読めるほどの、学力、知識力のある人には、私は何も言うことがない。だが、多くの人は、きっと以下の宇(ウ)ータンの文章は、難しくて、意味が不明だと思う。だから、私、副島隆彦が、分かり易く「今、世界に何が起きているか」 を、「ああ、日本は、本当に貧乏になった」と合わせて書いた。  以下の文をサラサラ読める人は、それでよろしい。その知能を褒(ほ)めてあげます。

 ただし、アメリカの世界覇権国(ヘジェモニック・ステイト)理論や、その他の世界政治の現在の骨格についての田中さかい氏の理解は、私、副島隆彦が、日本では誰よりも早く先駆者として、この30年掛けて築き上げてきたものであるから、そのことだけは、田中氏は、私、副島隆彦に敬意を払うように、ここで、言っておきます。

 それから、私は、「アメリカの覇権が終わったあと、世界は多極化(たきょくか、マルチ・ポーラー)する」理論論は、彦は採っていません。このことも言っておきます。 その他の分析では、田中氏のものとほとんど共有している、と言っていいい。  副島隆彦拝

(転載貼り付け始め)

田中宇の国際ニュース解説 無料版 2015年10月7日 http://tanakanews.com/

●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)

ロシアのシリア空爆の意味 http://tanakanews.com/151004syria.php
米金融財政の延命と行き詰まり http://tanakanews.com/150928fiscal.php
不透明が増す金融システム http://tanakanews.com/150921bank.php

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★多極化とTPP
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 ロシアがシリア政府の要請を受けてISIS退治を始めたことで、世界の覇権体制の多極化と、米単独覇権体制の崩壊に、拍車がかかっている。前回の記事に書いたように、ロシア軍は数日でISISを総崩れの状態に追い込んでいる。

 おそらく今後半年以内に、シリアとイラクは、ISISやアルカイダのテロ組織がほとんど掃討され、ロシアとイランの傘下でかなり安定した状態が始まる。ロシアは今後ずっと、中東で大きな影響力を持つだろう。その分、米国
(や英仏)の中東における支配力が大幅に低下する。

http://tanakanews.com/151004syria.php
◆ロシアのシリア空爆の意味

http://asia.rbth.com/news/2015/10/04/russian_air_strikes_disrupt_supply_system_of_isis_terrorists_in_syria_-__49797.html
Russian air strikes disrupt supply system of ISIS terrorists in Syria – Russian General Staff

 10月5日、シリアでテロ組織を空爆中の露軍機が、間違ってトルコの領空内に数キロ入って飛行してしまい、トルコ空軍機が緊急発進し、ロシアがトルコに謝罪した。露軍機が領空侵犯したのを見て、米国がトルコに「露軍機を迎撃しろ」とけしかけたが、トルコ外相は「ロシアは友人だ。領空侵犯に対しては、友人として優しく注意喚起した」と表明した。

 今回の露軍のシリア進出は、トルコがシリアのクルド人を攻撃することを阻止しており、トルコはロシアに対して激怒している。しかしトルコは、中東で大きな力を持つようになったロシアを強く批判したがらない。ロシアは、トルコにアサド政権を容認せよと求めており、いずれトルコはしぶしぶ従うだろう。

http://tass.ru/en/world/826285
Moscow informs Ankara about Russian plane incident – Turkish PM

http://www.todayszaman.com/diplomacy_russian-made-fighter-jet-harasses-turkish-f-16s-over-turkeys-syrian-border_400643.html
Russian-made fighter jet harasses Turkish F-16s over Turkey’s Syrian border

 イスラエルのネタニヤフ首相は米CNNのインタビューで、露軍のシリア進出を非難しているNATO諸国と異なり、イスラエルはロシアを非難しないと表明した。
ネタニヤフは「もうロシアと対立していた時代には戻らない」と宣言し、今後はロシアと協調的な関係を維持すると述べた。トルコもイスラエルも、ロシアが中東の新たな覇権国であることをすでに認めている。

http://www.reuters.com/article/2015/10/03/us-mideast-crisis-syria-netanyahu-idUSKCN0RX0N520151003
Netanyahu says Israel’s relationship with Russia is good

 英国の議会では「英空軍もISISの拠点を空爆すべきだ」と要求する声が強まっている。ロシアが、シリアとイラクを席巻していたISISを退治すると、シリアとイラクに対する影響力を米英仏から奪う結果になる。英国が中東での利権をロシアに奪われないようにするには、ロシアが進めているISIS退治に参加するしかない。

 英国は従来、ISISを潰すふりをして強化する米国の策に協力し、米国と歩調を合わせてロシアを敵視してきた。それが突如、ロシアと一緒にISISを空爆しようという話になっている。露軍のシリア進出が地政学的な大転換で
あることが見てとれる。

http://www.rt.com/uk/317681-syria-bombing-hammond-support/
Support growing in Parliament for bombing ISIS in Syria, says UK FM

 英国の外務省の事務次官(Simon McDonald)は最近、英議会の外交委員会での証言で、「人権」がすでに英外務省にとって重要なテーマでないと表明した。
同次官は、人権よりも経済発展(prosperity agenda)の方が英外務省にとって優先的な事項だとも述べた。

 これまで英米の外交官たちは、ロシアや中国など新興諸国や発展途上国に対し、
人権問題を理由に経済制裁して弱体化させたり従属させる「人権外交」を得意としてきた。

 英外務省が人権を重視しなくなることの意味は、英国が、米英同盟による世界支配戦略をやめて、これまで人権問題で批判してきた中国や露イランやBRICSに接近し、それによって英経済を維持する策に転換したということだ。英国は、人権外交をやめることで、米覇権の崩壊と多極化に対応しようとしている。

http://www.independent.co.uk/news/uk/politics/human-rights-are-no-longer-a-top-priority-for-the-government-says-foreign-office-chief-a6677661.html
Human rights are no longer a ‘top priority’ for the Government, says Foreign Office chief

http://tanakanews.com/070118UN.htm
人権外交の終わり

 話をシリアに戻す。米国とロシアは、それぞれの陣営の地元の国々(米はサウジアラビアとトルコ、露はイランとエジプト)を引き連れて、シリア問題の解決を話し合う「コンタクトグループ」を設置した。EUも入れてくれと頼んだが、米国に断られてしまった。

 米国は、EUを除外することで、これまで米国と欧州諸国が共有してきた中東利権を、みすみす全部ロシアに渡してしまおうとしている。これは欧州を怒らせている。ドイツでは、メルケルの与党(CSU)の党首(Horst Seehofer)が、難民流入問題に絡む発言として、シリア問題で米国と組むのをやめてロシアと協調すべきだと提案した。

http://news.antiwar.com/2015/10/01/us-seeks-to-cut-europeans-out-of-syria-peace-talks/
US Seeks to Cut Europeans Out of Syria Peace Talks

http://rinf.com/alt-news/breaking-news/historic-news-finally-eu-and-u-s-are-breaking-apart/
Finally, EU and U.S. Are Breaking Apart

 ドイツなどEUは、米国の戦略失敗によって内戦状態が続くシリアやリビアから大量の難民が押し寄せ、非常に迷惑している。ISISなどテロ組織をこっそり育てて内戦を激化するばかりの米国より、テロ組織を空爆してどんどん潰すロシアの方がずっとまともだと欧州人が思うのは当然だ。

http://atimes.com/2015/10/a-syriaberliner-ensemble-escobar/
A Syria/Berliner ensemble: Escobar

http://rinf.com/alt-news/editorials/the-western-alliance-is-crumbling/
The Western Alliance Is Crumbling

 ドイツなどEU諸国は、ウクライナ危機でロシアに濡れ衣をかけて経済制裁する米国につき合わされ、対露貿易が減少して経済的な打撃を受けている。ウクライナとシリアの両方で、EUは米国のロシア敵視のやり方に怒っており、
米国を無視してロシアと関係を回復すべきだという声が強くなっている。先日は、メルケル首相が初めてクリミアがウクライナでなくロシアの領土であることを認める発言をしている。欧州の対米従属は終わりに近づいている。

http://russia-insider.com/en/german-government-wants-sanctions-russia-lifted/ri10147
German Government Wants Sanctions on Russia Lifted

http://sputniknews.com/politics/20151003/1027980523/merkel-admits-crimea-is-part-of-russia.html
Finally the Penny Drops: Merkel Admits Crimea is Part of Russia

http://tanakanews.com/140309russia.htm
プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動

 ウクライナでは今年初め「ミンスク2」の停戦合意が締結されたが、米国に好戦策を扇動されたウクライナ政府は兵器を前線から撤退させる約束を守らず、戦闘が続いてきた。しかし最近、ロシアとEUが協調して圧力をかけた結果、ウクライナ軍はようやく前線からの兵器の撤収を進めている。ウクライナの事態は少しずつ安定に向かっている。

http://news.antiwar.com/2015/09/30/envoy-east-ukraine-weapons-pull-back-deal-could-end-war/
Envoy: East Ukraine Weapons Pull-Back Deal Could End War

http://tass.ru/en/world/826097
Kiev to begin withdrawing weapons Monday – headquarters

http://www.reuters.com/article/2015/10/02/us-ukraine-crisis-meeting-france-idUSKCN0RW22O20151002
Ukraine’s Minsk process will run into next year: Hollande

http://tanakanews.com/150730ukraine.htm
ウクライナ危機の終わり

http://tanakanews.com/140404NATO.php
NATO延命策としてのウクライナ危機

 前回の記事にも書いたが、中国はアフリカ大陸の紛争解決に、国連平和維持軍の兵力と資金を出すことを国連総会で宣言した。ロシアがシリア内戦の解決に動き出したのを機に、米国覇権下で放置扇動されてきた各地の紛争が、露中など非米・反米勢力によって終結させる努力が開始され、覇権の多極化が加速している。

http://usa.chinadaily.com.cn/2015xivixitus/2015-09/29/content_22005596.htm
China to set up $1b peace fund

http://tanakanews.com/150924syria.htm
ロシア主導の国連軍が米国製テロ組織を退治する?

http://tanakanews.com/120206china.php
中国とアフリカ

 多極化が進むと、NATOは名前だけのものになってEUの欧州統合軍に取って代わられる。EUと中露が接近する。それと同時に多極型世界の「極」となる北米(NAFTA)や中南米(メルコスルなど)、アフリカ(アフリカ連合)などで、国際的な地域統合の動きが強まる。この流れは冷戦後、断続的に続いているが、欧州と、ユーラシア中央部(ロシア主導のユーラシア経済同盟、中露主導の上海協力機構)以外の地域では、地域統合があまり進んでいない。

http://tanakanews.com/120419americas.php
中南米の自立

http://tanakanews.com/f0306LaAm.htm
南米のアメリカ離れ

http://tanakanews.com/090707africa.htm
アフリカの統合

http://tanakanews.com/g1212NATO.htm
多極化に圧されるNATO

 露軍がシリアに進出し、中東覇権が米国の手から離れ始めた直後、米国が多極化に対応する地域統合の策を進めていることが再び話題になっている。その一つは、米国とカナダの軍事統合だ。カナダの公共放送(CBC)によると、米軍とカナダ軍の上層部は2013年から頻繁に会合し、米加両軍の統合について検討している。防衛力の統合は、国家統合の大きな部分だ。

http://www.cbc.ca/news/politics/canada-election-2015-military-integration-canada-us-1.3248594
Canadian military explored plan to fully integrate forces with U.S.

 米国とカナダは、空軍について、自国上空の防衛を担当する司令部(NORAD)を1950年代から統合して運営しているが、地上軍や海軍は別々に運営してきた。今回、米加は、海外派兵する際の部隊の統合を検討し、最終的に軍隊全体の統合にまでつなげていく構想も米加で共有していることが、カナダ軍がCBCにリークした文書で明らかになった。カナダ軍より米軍の方がはるかに規模が大きいので、統合はカナダ軍が米軍の傘下に入ることを意味している。

http://www.wsws.org/en/articles/2015/10/02/usca-o02.html
Canada’s top general discussed fully integrating its armed forces with US military

 米国は、イラクが大量破壊兵器を持っていないのに持っていると濡れ衣をかけて侵攻した03年のイラク侵攻や、シリア政府軍が自国民を化学兵器で攻撃したと濡れ衣をかけて13年に空爆しようとしたことなど、違法な海外派兵の策を繰り返してきた。カナダが海外派兵軍を米国と統合すると、このような違法行為にカナダも巻き込まれることになる。それを懸念するカナダ軍内の勢力が、CBCに米加軍事統合の計画をリークしたのだろう。

 世界的な長期の流れとして、戦後70年続いてきた米単独覇権の世界体制が崩れ、多極型の覇権構造に転換すると、国民国家が至高の存在であるという世界的な観念が過去のものになっていき、各地で国家間の統合が進むシナリオが、米国のCFR(外交問題評議会)などによって、折に触れてうそぶかれている。

 それを「陰謀論」と無視するのは簡単だが、EUや、露主導のユーラシア同盟、BRICSなどの動きを見ると、多極化は国民国家間の統合につながるだろうと感じられる。米加軍事統合は、そうした動きの一つだ。1民族1島国の天然国民国家の日本人には知覚・理解しにくい流れだ。

 米国が関与する地域統合のもう一つの動きは、10月5日に交渉が妥結したTPPだ。TPPは、米加メキシコの北米3カ国が1993年に締結した貿易協定であるNAFTAを基盤に、中南米やアジア太平洋の親米諸国を加えて新たな貿易圏を作る計画で、拡大NAFTAともいうべきものだ。

http://tanakanews.com/130812trade.htm
貿易協定と国家統合

 米国は、アジア太平洋諸国とのTPPと、欧州(EU)との協定であるTTIPという、2つの似た内容の自由貿易圏を同時並行的に交渉して設置することで、米国中心の新たな経済覇権体制として構築しようとしてきた。だが
TTIPは、24の全項目のうち10項目についてしか米欧双方の意見表明がおこなわれておらず、対立点の整理すら未完成で、まだ交渉に入っていない。
EUでは、署名活動として史上最多の300万人がTTIPに反対する署名を行った。

http://www.politico.eu/article/ttip-negotiations-not-even-half-done/
TTIP negotiations not even half done

 TPPもTTIPも、企業が超国家的な法廷(裁定機関)をあやつって国権を超越できるISDS条項や、交渉中の協定文が機密指定され国会議員でも見ることが許されていない(米議会では数人が見たらしいが、日本の国会議員は誰も見ていない)など、国民国家の主権を否定する傾向が強い。EUの調査では、欧州市民の96%がTTIPに反対だというが、当然だ。

http://tanakanews.com/120702TPP.php
国権を剥奪するTPP

http://truepublica.org.uk/united-kingdom/ttip-negotiations-fall-apart-as-eu-big-hitters-abandons-us/
TTIP Negotiations Fall Apart As EU Big Hitters Abandons US

 すでに書いたように、EUは今後、米国との同盟関係を希薄化して露中への接近を加速し、米単独覇権体制を見捨てて多極型世界の「極」の一つをめざすだろう。欧州がTTIPに同意する可能性は今後さらに低くなる。おそらくTTIPは破棄される。

 TPPだけが残るが、TPPは拡大NAFTAであり、米単独覇権体制の強化でなく、多極型世界における米国周辺地域の統合を強化するものになる。(米国の中枢には、単独覇権体制を声高に希求する人々と、多極型世界をこっそり希求する人々がいる。ベトナム戦争もイラク戦争も、単独覇権を過激に追求してわざと失敗させ、多極型世界を実現する流れだ。単独覇権型の貿易体制が多極型の体制に化けても不思議でない)

http://www.marketwatch.com/story/the-trans-pacific-partnership-charade-tpp-isnt-about-free-trade-at-all-2015-10-05
The Trans-Pacific Partnership charade: TPP isn’t about `free’ trade at all

 以前、日本はTPPの交渉に入っていなかった。日本がTPP交渉に途中から参加し、今や米国より熱心な推進者になっている理由は、世界の多極化が進む中で、何とかして自国を米国の傘下に置き続けたいからだ。

 日本の権力者が国際的に自立した野心を持っているなら、対米従属の継続を望まないだろうが、戦後の日本の隠然独裁的な権力者である官僚機構は、日本を対米従属させることで権力を維持してきた。対米従属下では、日本の国会(
政治家)よりも米国の方が上位にあり、官僚(外務省など)は米国の意志を解釈する権限を乱用し、官僚が政治家を抑えて権力を持ち続けられる。

 近年では、08~09年の小沢鳩山の政権が、官僚独裁体制の破壊を画策したが惨敗している。対米従属は、官僚という日本の権力機構にとって何よりも重要なものだ。

http://tanakanews.com/13012japan.php
日本経済を自滅にみちびく対米従属

 TPPは、米国の多国籍企業が、ISDS条項などを使って日本政府の政策をねじ曲げて、日本の生産者を壊滅させつつ日本市場に入り込むことに道を開く。日本経済を米企業の餌食にする体制がTPPだが、日本の権力である官僚機構にとっては、米政府に影響力を持つ米企業が日本で経済利権をむさぼり続けられる構図を作った方が、米国に日本を支配し続けたいと思わせられ、官僚が日本の権力を握り続ける対米従属の構図を維持できるので好都合だ。

 米企業が日本でぼろ儲けし、日本の生産者がひどい目に遭うことが、官僚にとってTPPの成功になる。官僚が、意志表示もほとんどしない国民の生活より、自分たちの権力維持を大事と考えるのは、人間のさがとして自然だ。

http://tanakanews.com/150618tpp.htm
大企業覇権としてのTPP

 米国はTPPに対し、貿易だけでなく経済システム全般の枠組みとして、今後の米国の影響圏設定の意味づけを持たせている。TPPに入れば、日本は、米国の影響圏内にいることを明示でき、世界が多極化した今後も、米国の経済システムの中に入って対米従属を続けられるが、TPPに入らなければ、日本は中国の影響圏に入るしかない。

http://fortruss.blogspot.ru/2015/10/obama-on-tpp-america-should-write-rules.html
Obama on TPP: America should write the rules of the global economy

http://www.ft.com/cms/s/0/2c07cd48-6b9b-11e5-8171-ba1968cf791a.html
US in position to write rules on trade

 今夏以降、中国経済が減速すると、日本経済が大打撃を受け、2四半期連続マイナス成長の不況入りが濃厚になっている。すでに日本経済は、米国などTPP圏より、中国に依存する度合いが強くなっている。長期的に見て、米経済は巨大な金融バブル崩壊の過程にあるので、日本経済にとって米国より中国の方が重要である傾向が、今後さらに強まる。放っておけば、日本は経済面から中国の傘下に引き込まれていく。隣の韓国は、経済面で中国の傘下に入ることをすでに容認している。

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/0f66b698-67dd-11e5-97d0-1456a776a4f5.html
Japan’s Tankan shows dwindling business sentiment

http://www.wsj.com/articles/japan-industrial-output-slide-hints-at-recession-1443582684
Japan Industrial Output Slide Hints at Recession

 TPPに入っても、日本経済の中国依存が減るわけではない。TPPはもっと政治的、国際システム的、象徴的なものとして、日本が中国でなく米国の傘下にあることを示すものだ。TPPが重要なのは、関税率とか「コメや乳製品が値下がりして国民生活を助けます」とかいう経済面でなく、TPPが経済政策の政治的な枠組みであり、日本が米国の傘下にとどまるか、中国の傘下に追い出されるかという、多極化する世界の中での今後の日本の位置づけを明示している点だ。

http://tanakanews.com/150408japan.htm
安倍訪米とTPP

 日本ではここ数年、国民が中国や韓国を嫌うように仕向けるプロパガンダがマスコ”ミによって流布され、それを国民の多くが軽信している。こうした洗脳戦略も、米国が衰退して中国が台頭する多極化の傾向への対策だろう。洗脳戦略がなかったら、国民のしだいに多くが「米国より中国と組んだ方が日本経済のためだ」「TPPでなく日中韓で貿易圏を作れば良い」と思うようになり、民意主導で日本が対米従属から離脱していってしまう。

 それを防ぐため、国民が中国や韓国を「敵視」するのでなく「嫌悪」するよう仕向ける洗脳戦略が採られ、かなり成功している(敵視を扇動すると、日本が中国に対して攻撃的に関与してしまうことにつながり、どこかの時点で日中が折り合って和解してしまいかねない)。

http://tanakanews.com/120101CJKFTA.htm
TPPより日中韓FTA

 TPPと並んで、自衛隊が米軍と一緒に海外派兵できるようにする日本の集団的自衛権の強化も、対米従属維持のためだ。先に書いた、カナダ軍が米軍の傘下に入って海外派兵する新体制を作ろうとする米加軍事統合を、日本の集団的自衛権の強化と並べてみると、2つが良く似ていることに気づく。

 カナダは米国から「多極化の中で国家統合を進めたいなら、カナダ軍が米軍の傘下に入って海外派兵できるようにしろ」と言われ、迷いつつ進めている。
それを見た日本外務省が「うちも、米軍の傘下に入って海外派兵できるようにしますので、多極型世界における北米圏に入れてもらって良いですか」と申し出た。米国は了承し、日本は集団的自衛権を改訂した。NAFTA(北米経済圏)の拡大版であるTPPに、日本が何とかして入ろうとしたのと同じ構図だ。

 日本では、米国が昔から将来までずっと日本を傘下に入れ続けたいのだという勘違いが、意図的に流布されている。米国は歴史的に、ハワイやグアムを自国領にしたり、フィリピンを植民地にするなど、太平洋を自国の影響圏として設定してきたが、そこには日本が入っていなかった。

 単独覇権から多極型世界への(隠然とした)シナリオだった911前のサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」でも、日本は、米国にも中国にも従属しない「孤立文明」に分類されていた。TPPでも、米国は当初、米国と同様アングロサクソンの国である豪州とニュージーランド、豪州とフィリピンの間にある中小の諸国をTPPの交渉に入れていたが、日本を入れていなかった。

 第二次大戦後、米国が日本を自国の影響圏に入れておいたのは、ソ連や中国との冷戦構造があったからだ。日本は、米国が中露と対立している限り、米国にとって有益な場所にあるが、世界が多極型になり、米国と中露が対等な関係
で協調するようになると、米国が日本を傘下に入れておくとやっかいなことになる。日本は、米国の傘下に居続けるため、中露と米国の恒久対立を望み、中露と軍事対立し続けたい軍産複合体と結託し、多極型の世界運営の邪魔になる。

 だから、米国の単独覇権を過激に強化するふりをして破壊してこっそり多極型覇権に転換する策をやっているオバマ(や共和党の隠れ多極主義勢力)は、日本が延々と対米従属し続けることを望んでいない。オバマの本心は、TPPをまとめず頓挫させたかったのではないかと思われる。

 今回、TPPの交渉が妥結した一因は、乳製品問題で前回の交渉を頓挫させたニュージーランドを、日本が輸入増で譲歩してなだめたからだ。バイオ医薬品の独占期間の5年+3年の解決方法も日本が進めた。TPPは、日本のイニシアチブで妥結した。安倍政権を動かしている日本の官僚機構は、多極化が進んで日本が米国圏から切り離される前に米国にしがみつこうと、これまでにない積極性で対米従属を強化している。日本が主導してTPPを妥結に持ち込んだのはその一つだし、説明抜きで無理矢理に集団的自衛権を強化したのもそうだ。

http://www.nzherald.co.nz/business/new

5980 投稿日:2015/10/06 05:58

【1491】[1822]8年前に、日本人は足を踏み外した。

2007年 イーホームズ 藤田東吾氏の言葉(9条は、ドラえもん)
https://www.dropbox.com/s/bj2rsycjng0i7mb/fuzita.mp4
(貼り付け開始)
ところで、「耐震偽装事件」から今年の秋で10年となります。
あの事件はいったい何だったのか?
僕は2011年夏の終わりに早稲田で開催された「日本建築学会大会」の「構造部会」に出席しました。
そこで先生方から次の言葉を言われました。
「藤田君は会社を失ったけど(東北震災で)沢山の子供の命を救ったね」
http://ameblo.jp/togofujita/entry-12065420853.html
(貼り付け終わり)

4年前に日本ERIの買収を考え、山本繁太郎さんに会いにいった話し・・・
http://ameblo.jp/togofujita/entry-12061030432.html

税金で、できた。身体の結末

相田英男 投稿日:2015/09/30 00:25

【1490】[1821]真相はこちらです・・・

相田です。

下の投稿では怒りのあまり、うろ覚えの記憶で書いた箇所がありました。
元資料をあたった処、以下の文章を見つけました。本件の私の記述は全て下記の引用文に依るものです。以下の内容が正確です。

-引用始め-

サン・オノフレ原発は、全米でも特殊な原発で、Combustion Engineering(CE社)と言う会社が建設したもの。その蒸気発生器は、ウェスチングハウスが作った加圧水型原子炉では通常4つ付いている蒸気発生器が2個しかなく、同じ発電出力を得るために、ウェスチングハウスの加圧水型原子炉のものと比べて50%程度大きさが大きくなっている。だから、多分、三菱重工にこの手の蒸気発生器を造った経験はなかったはず。Combustion Engineeringの原子力部門はウェスチングハウスに2000年に買収されている。

米国内にある104基の原子炉の内、たったの14基がCE社の原子炉であり、なぜ、三菱重工にこの仕事が発注されたのか、それがまず疑問だ。次に、蒸気発生器にかなりの設計変更がされているという。当然、それは、発注側の注文であり、三菱重工はそれに従っただけだ。更に、発注側であるエジソン社はNRCに対して、蒸気発生器の設計変更を正確には伝えず、もともとあった蒸気発生器とほぼ同等のものを新たに据え付けると主張し、検査期間の短縮を図った様子だ。

この事件、かなりいろいろな事情が入り混じったもののように思える。

-引用終り-

上の文章を書いたのは、私がむかついた爺さんとの対談相手を務めていた、堀潤氏というライターの方である。堀氏は三菱の問題を下記に詳しくまとめている。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36079?page=4

実は堀氏の記事の最後には、本来は上の引用文があったのだ。しかし、堀氏のブログから現代ビジネスに内容が転載される際には、最後の追記文は何故か削除されてしまっている。元のブログ記事は読めなくなった。私がコピーしておいたテキストを上には載せた。

私は(もう読めなくなった)、上での追記文が、今回の一件での最も重要な記載をしていると思う。三菱の設計ミスと大騒ぎされているものの、相当にきわどい改造工事であったことを、エジソン社も重々承知だったのだ。さらには発注側(エジソン社)の依頼で、蒸気発生器にかなりの設計変更がなされたという。作った実績のない三菱に対して、エジソン社はさらに追加設計をさせたのだ。

最後の「発注側であるエジソン社はNRCに対して、蒸気発生器の設計変更を正確には伝えず、もともとあった蒸気発生器とほぼ同等のものを新たに据え付けると主張し、検査期間の短縮を図った様子だ」という記述については、もはや説明は不要だろう。

三菱は、記録しているエジソン社との打ち合わせ議事録を全て公開すれば、おそらく裁判に勝つだろう。筋が通っているのはどう見ても三菱の方だ。但し、裁判はアウェー開催なので、彼(か)の地のルールでやられる可能性もあるだろうが・・・

爺さんの発言にあった「川内原発を再稼働した九州電力と、サンオノフレ原発を廃炉にしたアメリカの電力会社サザン・カリフォルニア・エジソン社の、危険性を防止する思想の違いが、これほど明確に出ている。日本の電力会社は、大事故が起こる可能性を承知で、原発を運転している。もはや、狂気としか言いようがない」というのは、一体何をいっているのだろうか?

 原子力規制委員会に虚偽の書類を申請するアメリカの電力会社の方が、日本の電力会社よりも素晴らしい会社なのだ、というのが爺さんの主張なのだ。流石になんとも立派な、見上げた「モノの見方」ではある。

たいがいにせいよ、全く・・・・

爺さんの思考能力の基準を見極めるのに、今回の一件は大変参考になった。やっぱりこの程度の洞察力の人なのだ。

相田英男 拝

相田英男 投稿日:2015/09/26 23:10

【1489】[1820]結局のところはこうなのだろう・・・・

相田です。

 酔っ払った訳ではありませんが、以下のあの爺様の発言を読んで、書かずに居れませんでした。

-引用始め-

(以下の引用元はこちらです↓)
http://diamond.jp/articles/-/78689

ほんの3年前の2012年1月31日、アメリカのカリフォルニア州のサンオノフレ原発で、蒸気発生器の細管が破損したため、原子炉が緊急停止し、放射性物質が大気中に漏れた。サンオノフレ原発では、この写真の、三菱重工が納入したばかりの最新の蒸気発生器細管が穴だらけで破損していたことが明らかになったのだ。

 アメリカのNRC(原子力規制委員会)が、三菱重工の兵庫県の工場に抜き打ちの立ち入り検査をした、そして2基の原発が「廃炉になった」という大事件は、そういうことだったのだ。しかも、この蒸気発生器は2009~2010年に設置されたばかりで、稼働して1年たたずに事故を起こした。

つまり新品が事故を起こしたのだ!

加えて、日本の低レベルな原子力規制委員会や電力会社と違って、アメリカのNRCは、メカニックな問題に関して、きわめて高度な技術的能力を持っている。その頭脳集団が「三菱重工は信用ならない業者だ」と判定を下して、廃炉になったのだから、決定的である。

アメリカの電力会社が「廃炉」を決断したのは、三菱の欠陥製品を使って運転すれば、大事故を起こす、それがこわかったからである。莫大な損失となる「廃炉」より、大事故を起こした時の損失のほうが、桁違いに大きい。

だから、三菱重工に対して、9300億円、およそ1兆円というトテツモナイ巨額の損害賠償を7月に請求したのである。東芝が不正会計によって隠していた金額どころではない。

川内原発のメーカーは、サンオノフレ原発と同じ「三菱重工」なのである。再稼働した川内原発1号機はすでに新しい蒸気発生器に交換しているが、アメリカの事故が証明した通り、新品に交換してから大事故を起こしたのだ。つまり、鹿児島県では、もうまもなく大事故を起こす可能性がきわめて高い、という結論になる。

さらにひどいことに、10月にも再稼働しようとしている川内原発2号機は、新品の蒸気発生器を持っているが、交換しようとしていたところにフクシマ原発事故が起こったため、交換できないまま倉庫にしまった状態である。30年前に製造されて使ってきた、老朽化した巨大装置を、そのまま使う予定になっている。こちらは、すでに細管の破損を、山のように抱えているはずだ。交換しなければならないにもかかわらず、交換しないで運転しようとしている。

分りますか。

絶対にあってはならないことが、目の前で進行しているのだ。八重洲ブックセンター本店講演会での演題が、「川内原発は、ほどなく大事故を起こす!!」とは、そういう意味なのである。

 川内原発を再稼働した九州電力と、サンオノフレ原発を廃炉にしたアメリカの電力会社サザン・カリフォルニア・エジソン社の、危険性を防止する思想の違いが、これほど明確に出ている。

 日本の電力会社は、大事故が起こる可能性を承知で、原発を運転している。もはや、狂気としか言いようがない。問題は、このような大事件が、日本のテレビと新聞で、まったく問題になっていないことだ。

-引用終り-

相田です。

 イカれた爺さまが、また叫んでると今まで見過ごしてきたが、今度の話は流石に頭に来た。この件は、私もネット等で追いかけていたが、実情は広瀬の話とはかなり違う(筈だ)。

 そもそもこのアメリカの原発は、PWR(加圧水型軽水炉)とはいえ、三菱がライセンスで作って来たウエスティングハウス(WH)製ではなく、コンバッションエンジニアリング(CE)という別のメーカーが作った装置らしい。それが古くなって来たので、電力会社が改造して新しくしたいと思ったのだが、CE社はとうに無くなっていたので、代わりに三菱が改造を受け持ったという。

 三菱は当初はこの改造を受注するのに慎重だったのだが、電力会社からどうしてもと強く要請されて受けたらしい。同じPWR型とはいえ、WHとCEでは設計思想がかなり異なっている。別会社が設計したシステムに合わせて作るのに、三菱は相当に苦労したという。おそらくは、トラブルが生じる可能性も、契約時に十分に話し合った上で、改造工事に着手したのだろう。難しい工事を気楽に請け負うほど三菱は無責任な会社ではない。

 ちなみに受注契約が成立した後も、かの電力会社は、細かな仕様の変更を色々と三菱に要求したらしい。なんやかんやとすったもんだの上に、作ってみたら、トラブルが起きた、というのが、実情だという。

 NRCは電力会社に、運転開始に必要な安全対策の条件を提示したが、それに掛かる費用よりも、廃炉の方が安く上がるため、結局廃炉に決めたのだが、電力会社は腹いせに責任を全て三菱に押し付けたのだ。9千3百億というのは、アメリカのメーカー得意のハッタリだ。

 三菱はこれまでの経緯をきちんと踏まえた上で、冷静に裁判に対処していると思う。大人の対応だ。安易に挑発に乗らないのだ。マスコミが取り上げないのは、実情がはっきりしていないので判断出来ないからだ。多分、三菱側に分があるのだが、このご時世なので三菱の応援に二の足を踏んでいるのではないか。

 おい、爺さまよ。一体どういう風に見れば、上であんたの言うような話が作れるのだ?

 別会社が設計した原発システムに、後付で設備を加えるのがどれだけ技術的に難しいか、わからないのか?
あんたは技術の素人だよ。

「川内原発は、ほどなく大事故を起こす!!」だと?

 本当なのか???!

 鹿児島のほうは元々のWH流の設計で、アメリカの方はCEの設計ではないのか?設計が違うプラントの話を同じ土俵で何で議論できるのだ。何も考えずに、思いついたことをただ口から出しているだけでは無いのか、あんたは?

 爺さんよ、あんたにはまだ言いたいことがある。
 東芝のことだよ。

 東芝では、WHののれん代の話ばかり話題にされるが、火力事業の話も実は問題だ。東芝の火力発電事業は、GEと一体化していることは「当然あんたも」知っているだろう。何せあの広瀬さんなのだから。

 それなのに、東芝の火力事業が全く利益を上げていないのは、どういう訳なのだ?是非説明してもらいたいものだ。

 東芝は自分では蒸気タービンをこしらえて、GE様が設計なされた高性能ガスタービンと組み合わせて、世界最高性能のコンバインド発電システムを、大々的に売りさばいていたのではないのか?所謂H−systemというやつだ。

 H−systemについては、10年位前からあんたが盛んにヨイショしていたのを、私は忘れないぞ。今でも事あるごとにヨイショしてるよな?「原発は古い、これからはコンバインドだ」とかな。何回言ってるやら・・・

 さて、10年前からあんたがヨイショし続けている、このシステムを作っている東芝の火力事業が赤字続きなのは、一体なぜだ?10年間はダメでしたが、これからは売れます、ということなのか?

 結局東芝は、あんたが一押しの「世界のGE様」にひたすら騙され続けた挙句が、今の体たらくでは無いのか?火力でも原子力でも?

 あんたは日本の会社を無茶苦茶けなすくせに、アメリカの会社ばかりヨイショし続けて、一体何処の国の味方なのだ?あんた達は日本の「原子力ムラ」については嵩にかかって責め立てるくせに、「アメリカの原子力ムラ」のことは全く責めないのは、どういうつもりなのだ?

 「アメリカの原子力ムラ」の連中が何を企んでいるのか、この際、はっきりさせようではないか。

 それは、日本の重電メーカーを全て潰すことだ。
手始めに東芝で、次は本丸の三菱だ。日立は取り敢えずどうでもいいのだろう。正確には、日本のメーカーの原子力部門を潰して、技術を根こそぎ中国に持って行くつもりなのだ。違うのか?

 日本は福島ショックでしばらく立ち直れないので、サッサ見切りを付けて、これからは中国でがめつく稼ぐつもりなのだ。「アメリカの原子力ムラ」の連中は。船橋洋一がいきなりカウントダウンなんとか、なんて本を書き始めたのが、いい証拠だよ。

 あんたも、菅直人も、河野太郎も、大江健三郎も、みんな「アメリカの原子力ムラ」の提灯を担いでいるだけではないのか?ワザと気付かないようにしてるのか?

 本気だったらもう潮時ではないのか?これからは中国の原発と、どうやったら上手くやって行けるかくらい、少しは考えてくれたらどうかいな?

・・・・・・

 何だか太宰の「如是我聞(にょぜがもん)」みたいになってしまった・・・・
私は太宰のファンです。何十年も読んでないですが・・・・

相田英男 拝

守谷健二 投稿日:2015/09/24 13:02

【1488】[1818]天武天皇の正統性について

   正統性の創造者としての柿本朝臣人麿

 『万葉集』巻第三(235)
   天皇(すめらみこと)、雷丘に御遊(いでま)しし時、柿本朝臣人麿の作る歌

 大君は 神にし座(ま)せば 天雲の 雷の上に 庵(いほ)らせるかも

 「大君は 神にしませば」のフレーズは、『万葉集』巻第三の柿本人麿作の歌に初めて登場する。それ以前にはない。故に、人麿の発明と考えることが出来る。

 『万葉集』巻第二(167)
   日並皇子尊(ひなみしのみこのみこと)の喪仮(もがり)の宮の時、柿本朝臣人麿の作る歌

 天地(あめつち)の 初の時 久方の 天の河原に 八百万(やほよろず) 千万神(ちよろづかみ)の 神集(かむつど)ひ 集ひいまして 神分(はか)り 分かりし時に 天照らす 日女(ひるめ)の尊 天をば 知らしめすと 葦原の瑞穂の国を 天地の 寄り合ひの極み 知らしめす 神の命(みこと)と 天雲の 八重かき分きて 神下(かむくだ)し 座(いま)せまつりし 高照らす 日の皇子は 飛ぶ鳥の 浄(きよみ)の宮に 神ながら 太敷きまして 天皇(すめろき)の 敷きます国と 天の原 岩門(いはと)を開き 神あがり あがり座しぬ わご王(おほきみ) 皇子の命の 天の下 知らしめしせば 春花の 貴(たふと)からむと 望月(もちつき)の 満(たたは)しけむと 天の下 四方(よも)の人の 大船の 思ひたのみて 天つ水 仰ぎて待つに いかさまに 思ほしめせか 由縁(つれ)もなき 真弓の岡に 宮柱 太敷きいまし 御殿(みあらか)を 高知りまして 朝ごとに 御言問はさぬ 日月の 数多(まね)くなりぬる そこ故に 皇子の宮人 行方(ゆくへ)知らずも

 この歌は、持統三年(689)に亡くなった草壁皇子を悼んだ挽歌である。草壁皇子は、天武天皇と皇后(後の持統天皇)の間の生まれで、天武天皇の存命中に皇太子に立てられていたのだが、どうした訳があったのか天武崩御から三年たつのに即位することはなかった。皇太子のまま崩御してしまったのである。それ故、母である皇后が即位して持統天皇となる。そして、持統十年に草壁皇子の遺子・軽皇子(文武天皇)に譲位するのです。
 この歌のストーリーと修飾の仕方は、『日本書紀』『古事記』の天孫降臨神話、天照大神が天孫・瓊瓊杵尊に豊葦原瑞穂(とよあしはらみずほ)の国を与えたあの神話に瓜二つなのです。この王朝の最大のテーマは、天武の即位の正統性を創造することであったのです。そのためには神話さえも作り替えられたでしょのでしょう。天孫降臨神話は、人麿の「日並皇子尊(草壁皇子)」に捧げた挽歌が元だったのではないかと考えています。天皇は、人麿によって神に昇華させられたのではなかったか。