気になる記事の転載掲示板

◆巻頭言◆

新設されたこの掲示板(BBS)は、私、副島隆彦宛ての読者からの個人メールの転載サイトです。私の「今日のぼやき」ではとても対応できない状態になりましたので、このように拡張しました。

学問道場への入門許可の意味も含みます。別に自分は入門したい訳ではないという人もいるでしょうが。私宛てに挨拶を兼ねた簡略な自己紹介文を寄せてくれた人々と、ここの先進生たちとの情報共有の意味と更なる情報開示方針決定に従う趣旨もあります。以後は積極的に各掲示板の方へ書き込み投稿して下さい。(2001年4月1日記)

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2011/01/29 16:23

【135】阿修羅掲示板から転載「マスコミは、なぜ小沢が怖いのか (二見伸明)」

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 阿修羅掲示板から転載貼り付け致します。

 

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

マスコミは、なぜ小沢が怖いのか (二見伸明)
http://www.asyura2.com/11/senkyo105/msg/753.html
投稿者 otoppi 日時 2011 年 1 月 28 日 19:06:29: cUHXG0u8x2am6

マスコミは、なぜ小沢が怖いのか
The Journal 二見伸明
2011年1月28日
http://www.the-journal.jp/contents/futami/2011/01/post_33.html

 新聞、テレビの小沢バッシングが狂気の沙汰である。小沢一郎が「予算が成立したら政倫審で説明する」と言っているにもかかわらず、各社横並びで「出席拒否は許せない。証人喚問だ。議員辞職せよ。離党せよ」と、それも社説で、大上段に振りかぶっての騒ぎである。社説とは社論、社の基本的な考え・主張である。日本のほとんどのマスコミが、手段を選ばず「小沢抹殺」で狂奔している光景は異常以外の何ものでもない。朝日、読売、毎日など新聞各社は、本音では、デフレ脱却や雇用など国民生活にとって待ったなしの課題よりも「小沢抹殺」のほうが最重要問題だと考えているのである。何故か。

 昨年暮れから正月にかけて一線で活躍する記者たちと懇談した。

「小沢さんの話は論理的で分かりやすい。日本の政治家で小沢さんのような、骨太の国家観、歴史観、洞察力を持った人はいない。スケールの大きい本物の政治家という感じがする」

「TPPはアメリカの世界戦略だという冷厳な国際政治が分かっているようだ」

「小沢さんの政治とカネの問題は『期ずれ』だけだろう。ガタガタ騒ぐのがおかしい。もっと冷静でいい。政治にはカネは必要だよ。私腹を肥やすのは論外だが、カネの出入りを透明にすればいいのではないか」

「検察審査会の問題は恐ろしい。目障りな政治家や高級官僚、或いは宗教団体など、小沢さんをやっつけるやり方で強制起訴して潰すことは簡単だ。仲間たちと『これは政治テロ』だって話している」

「それにしても、小沢さんには熱烈な支持者も多いが、問答無用で切り捨てるアンチも多い」。

 記者魂を持った中堅・若手の記者のほうが冷静で、まともだ。はっと思った。「マスコミの社長や幹部が、心底、小沢が怖くてしかたがないのだ」

 小沢一郎は自民党幹事長時代、記者会見を記者クラブに所属していない雑誌記者、フリーランサー、外国人特派員にも開放し、自由に参加出来るオープンな場にしていた。それ自体、画期的なことだったが、1993年8月23日、新生党代表幹事として細川連立政権を支えるキーパーソンになった小沢は、従来の「記者クラブの、記者クラブによる、記者クラブのための記者会見」ではなく、記者クラブに所属していない記者も参加し、どんなことを質問してもいい平等で「開かれた会見」にすることを宣言した。また「『本音と建前』を使い分けることはしない。ここで言わないことは、どこでも言わない。言えないことは言わない。」と強調し、政界実力者が偽の情報を流して政敵を貶めたり、野党を分断するために利用する番記者のオフレコ記者懇談会も止めたのである。1996年5月には、小沢は新進党訪中団の随行記者団に、慣行を無視して記者クラブ15社17名のほか、週刊誌3社のフリーランサー5名など記者8名を参加させたのである。北京のホテルにはプレスルームが開設され、各社均等にデスク、電話、テレックスを備えた専用ブースが割り当てられ、中国首脳との会談後のブリーフィングも差別なく各社一緒に行われた。真の「国民の知る権利」を守るために、記者クラブを通して情報を独占するという既得権にしがみつく大手マスコミに挑戦状を叩きつけたようなものだ。論理的に太刀打ち出来ないマスコミは陰微な手段を駆使し、「小沢抹殺」を始めた。

 余談だが、このときの江沢民主席との会談では、歴史認識をめぐって厳しいやりとりをしたうえで、小沢は日中関係が経済中心であることに懸念を示し「日本にはカネの切れ目が縁の切れ目という諺がある。経済協力は大事だが、それ以上に両国の信頼関係強化が大事だ」と持論を展開した。

 大手マスコミは、記者クラブを通して行政、立法、司法、地方行政の全ての情報を独占している。このマスコミがお互いに談合し、「霞ヶ関」と結託すれば日本をどうにでも出来る恐ろしい存在になる。「大新聞は日本民主主義の最大の敵だ」と喝破するカレル・V・ウォルフレンが日本の大手マスコミに目の敵にされるのも、むべなるかなである。小沢一郎も「日本ではマスコミが最大の守旧派になっている」「マスコミほど今の社会で既得権を得ているところはない」とマスコミの姿勢を厳しく批判している。

 マスコミが重大視しているのは、小沢が一貫して「政権交代したら官邸の会見はオープンにする」と主張し続けていることである。一昨年3月の記者会見でも、フリーランサーの上杉隆の確認を含めた質問に、小沢代表(当時)は「どなたでも会見にお出で下さいということを申し上げております。この考えは変わりません」と答えている。「約束を守る男・小沢」が総理になったら必ず官邸の記者会見はオープンになるだろう、そうすれば、全省庁の記者会見もオープンになり、検察、警察、裁判所、各県の県政記者クラブの会見もオープンになる。それでは、大手マスコミは情報を独占出来ず特権的地位から引きずりおろされ、世論操作も出来なくなる。記者も癒着・談合の世界から、自由競争の厳しい世界に放り出され、雑誌記者やフリーランサーとの取材合戦に敗れるかもしれない。新聞の紙面作りも難しく、廃刊に追い込まれる社も出てくるだろう。各省庁も、例えば「このままではギリシャの二の舞になる。消費税増税をしなければ大変なことになる」」などと記者クラブを洗脳し、メディアを通して官僚の思惑通りに世論を誘導し、国民を洗脳する手段を失うだろう。「小沢抹殺」は大手マスコミにとって至上課題なのだ。

 ここで、横道にそれるが、小沢の「開かれた会見」の実相はどうだったのか、検証してみよう。1994年10月発行の季刊雑誌『窓』に雑誌記者の石飛仁が書いている。

「私が参加したその会見の場は、意外にぎこちないものだった。双方に未だ質疑のやりとりに滑らかなものがないのだ。質問が具体性を帯びていないというのか、小沢から引き出す側の工夫がほとんど成されておらず、新人記者の初歩的質問風に小沢が丁寧に答えていくというもので、きわめてぶっきらぼうというか、時局のディテールを知り尽くした上での専門家の質問という感じがほとんどしないのだ。これが私の受けた第一印象であった。小沢については、噛んでふくめるような論旨で丁寧に答えていくのが印象的であった。(略)私は正直、小沢という政治家は味も素っ気もないその言い回しのなかに全てを率直に埋めて正攻法で語っていく人物であることに驚いた。きわめて非日本人的な率直さが、そこにあるので驚いたのである。よし、これは発言の主旨をちゃんと正面から聞いていけば、政局はある程度読めるぞ、と思ったのである。
 この「開かれた会見」の場は、日ごとに重要性を増し、また話題性を発揮し、きわめてアクチュアルな政治報道の場と化して、注目を集める場となっていった。小沢自身がこの会見を重要視していることも感じとれてきた」

 自民党幹事長時代から小沢の会見を取材しているフリーランサーの田中龍作は先日、私に「小沢の答弁は丁寧で分かりやすい。的を射たいい質問をされると、嬉しそうな顔をして、大学の教授が学生に教えるように説明する。主旨や意図不明の質問や毎回繰り返す同じような質問だと『もっと勉強してきなさい』とたしなめることがあった」と語ってくれた。

 私も自由党時代、安全保障問題での「開かれた会見」の進行役を務めたことがある。びっくりするような質の高い質問をする記者もいれば、初歩的な質問をする者もいて、玉石混交で面白かったが、某英字新聞の記者の質問には『同じような質問で、何度も答えている。勉強して来なさい』とたしなめたのが印象的だった。その記者は会見終了後、青い顔をして『党首に怒られた。来週から来てはいけないということか』と泣きべそをかきそうな表情をしいているので『そんなことはない。しっかり勉強して、党首が立ち往生するような核心を突いた質問をしなさい。小沢は喜ぶと思うよ』と励ましたことを覚えている。

 1993年10月、小沢が「記者会見は義務ではない。サービスだ」と発言したと言って物議をかもしたことがある。その点について、去る1月17日夜行われた小沢一郎と岩上安身、江川紹子、田中龍作など13名のフリーランサーとの「割り勘でオープンな懇談会」で上杉隆が「サービス発言」の真意を聞いた。それに対し小沢は「僕は、記者会見は公共サービスだと言ったんです。政府や政党の会見は公のものでしょう。だから、新聞やテレビの記者諸君で独占するのはおかしい。公財である記者会見も公共サービスであり、公平に雑誌や海外メディアの諸君にも参加してもらおうと言ったわけだ。それがまったく逆の意味で使われたわけなんです」と答えた(ダイヤモンド・オンライン2011.01.20))。「てにをは」をちょっといじるだけでまったく逆の意味に変えてしまう手品のようなマスコミの陰湿さには開いた口が塞がらないのである。

 大手マスコミが恐れるのは小沢のマスコミ対策の方向性だけではない。歴史を知り、歴史に学び、そこから未来を見通す洞察力と綿密に計算したうえでそれを実行する決断力と度胸だ。

 小沢一郎が、枝野幹事長より1歳年上の47歳で自民党幹事長に就任した1989年(平成元年)は、戦後世界を支配してきたパックス・ルッソ・アメリカーナ(米ソによる平和)というパラダイムが崩壊する世界史に残る激変の時代の幕開けの年だった。菅総理は今年を「平成の開国元年」にしようとしているが、1989年こそ日本にとっても世界にとっても、文字通りの「平成の開国元年」だったのだ。6月にはポーランドで一党独裁政権が崩壊し、11月にはベルリンの壁が壊れた。1991年1月には湾岸戦争が勃発した。アメリカの庇護のもとで金儲けに余念のなかった町人国家日本は覚悟も準備もないままに国際社会に放り出された。明るくて人のいい海部総理には未曾有の国難に対処する能力はなかった。政権政党自民党は慌てふためくだけで、何の構想もない。野党は一国平和主義のタコ壺に逃げ込んで泣き叫ぶだけだった。町人国家を普通の国・国際国家に質的転換しなければ日本は国際社会で相手にされず、国益も守れないないという危機感をもって行動したのは、小沢だけだろう。日本丸が難破の危機を乗り切れたのは党を抑え、海部総理を励まし、野党を説得した小沢の腕力に負うところが大きいと評価せざるを得ない。小沢が主張した「集団的自衛権と国連による集団安全保障は違う。国連の決議のもと、国連の警察活動に参加することは憲法の理念に合致するもので、憲法違反ではない」という理論は大きな論議を巻き起こしたが、今では、日本の平和活動・国際貢献の原点であるばかりでなく、アメリカも国連のお墨付きをもらわなければ、海外での武力行使はし難くなったのである。

 小沢は官房副長官時代、日米建設摩擦、日米電気通信交渉でタフ・ネゴシエーターという評価を得た。アメリカは、日本の国益・原則を踏まえて正攻法で押しまくる交渉上手な小沢に、「脅かせば言うことをきくこれまでの日本人」とは異質の、自立した、手ごわいサムライを見出したのだろう。

 小沢は湾岸戦争が終わった直後、訪ソしてゴルババチョフ大統領と北方領土問題について会談、その後、ブッシュ大統領と会談している。モスクワ滞在中、イワシコ・ソ連共産党副書記長に言った言葉がすごい。

「人類史上で欧亜大陸にまたがる帝国をつくったのは蒙古とソ連だ。蒙古はあなた方にとっては非常に嫌な思いだろうけれども、蒙古帝国の世界史的に果たした役割は非常に大きい。あれは人種、宗教に寛容だ。それから、域内の自由交通を認めた。ヨーロッパ文明はどれだけあそこで教えられたか。文物の交流と、欧亜両大陸の親睦、その意味では非常に貢献した。ジパングなんて国を紹介したのはいつだ、マルコポーロはなぜ中国、北京まで来られたか。それは、あの時代、小アジアからずっとこっちまでの帝国の中を自由に行き来できたからだ。
 ところが、ソ連及びロシア帝国は、図体ばかりでかくて、権力で支配して、何をしたか。何もできなかった。それで破産に瀕しているだけだ。そのことをあなた方は考えなきゃだめだ」

 こうした小沢のことを当時、識者たちはどう見ていただろうか。

 五百旗頭真は「世界秩序が大きく揺らぐ時には、国際感覚を伴った国家感覚がないとやれない。田中外交は戦後政治の主流をなす経済中心主義の枠内だった。今は経済大国の上に『何か』が必要で、日本の国家像が問われている。小沢氏がそのことをまともに受け止めようとしているのは注目に値する」(小沢一郎探検、朝日新聞)と評価した。

 三木元総理のブレーンで「ストップ・ザ・オザワ」のリーダー、国弘正雄は小沢を「国家改造主義者」と位置付け、ドイツ統一の立役者ビスマルクに擬したが「小沢さんが歳をとってね、人生の悲哀を感じ、挫折も感じてね、経験の中で、むちゃくちゃな挑発型だったリンカーンが最後に『角熟』していったようになるかもしれません。そうあってほしいな」と語った(前掲書)。

 小沢に対しては好き嫌いが激しい。それはそれでいい。日本が「春のうららの隅田川」であれば小沢の出番の必要はない。しかし、百数十年続いている中央集権・官僚主導国家を政治主導・地方主権国家に衣変えする大事業は小沢でなければ出来ないことは、反小沢も認めざるを得ない現実だ。小沢は論理の男だ。しかし、それだけだろうか。アンチ小沢の急先鋒、時事通信の田崎史郎の見方が面白い。

「岡田さんが地方回りで青森へ行ったとき、県連の人がぜひ食べてもらおうと、わざわざ大間のマグロを取り寄せて準備していたそうです。しかし、やってきた岡田さんは『私、コンビニでカロリーメイトを買いますから』と言って、箸もつけずに帰ってしまった。
小沢さんは岡田さんとは対照的に、どこへ行っても地元の人たちと酒を酌み交わす。だから、ある若手議員が言ってましたが、岡田さんには7回きてもらったけれど、1回だけ来た小沢さんのほうが、はるかに効果があったと。小沢さんは、地方へ行くと、その日集まって酒を飲んだ支持者の名前と住所を、後で全部教えてもらうんです。それで全員に手紙をだす。そういう人を動かす上での配慮は、政治家にとって一つの大きな力になります」(週刊現代 2011.01.19/26)────「風」で当選した政治家から見ると「古い手法、古い政治家」なのだろうが、むしろ新しい理論・構想を持ちながら、居酒屋で酒を飲み、カラオケを歌う小沢のような「古い」政治家のほうがはるかに魅力的だ。

 胡錦涛中国国家主席が先日、国賓として訪米した。その際、アメリカは自国の国益を考えて、次期国家主席に予定されている習近平の早期訪米を要請した。一昨年秋、習近平が来日したとき、中国の要請で天皇との会見がセットされた。これに対して、宮内庁長官の羽毛田某は、小沢が天皇を政治利用したと騒ぎだし、自民党やマスコミの一部が同調した。しかし、国益を考えれば小沢の判断は正しかった。

 小沢は20年以上、ポケットマネーで米中との草の根交流をしている。昨年8月下旬、小沢は代表選のため参加出来なかったが、無名の庶民で構成された小沢訪米団がサンフランシスコで、アマコスト元駐日大使などアメリカの有力者に大歓迎された。中国でも、青年時代、小沢の招きで来日し研修した者が指導的立場で多数活躍している。小沢は一級の国際政治家でもある。

「君見ずや 管鮑貧時の交わりを 此の道 今人棄つること土のごとし」──杜甫

 諸君、ご覧なさい。昔、管仲と飽叔とが貧乏な時代に結んだ堅い友情を。今の時代の人びとは土くれのようにうち棄てて顧みない。誠に嘆かわしいことだ。───意味はこうである。

 私たちは忘れない。手を握り、肩を組み、叫んだ09政権交代を!

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2011/01/28 17:00

【134】阿修羅掲示板から転載「ついに「日本自由報道記者クラブ協会」を旗揚げ!2011年1月27日、小沢一郎氏をゲストに招き初の記者会見を主催(上杉隆)」

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 李さん、ブログに拙文を転載紹介して頂きまして、ありがとうございます。

 週刊朝日は面白かったでしょうか。私には週刊誌などを購読する余裕はないのですが、冠されている名前は同じでも、資本元や経営母体が違うか、もしくは段々と違ってきている場合もあるかと存じます。グループ企業経営というのも受難の時代ですから。

 各誌の詳しい背景は分かりませんが、予想致しますに両方に片足ずつ乗せて、片方が崩れるともう片方に逃げられるような経営陣の大方針があって、部分的真実を書かせることを編集部や現場の記者やライター達に許すことが出来るのでしょう。

 新聞も雑誌も商業紙・商業誌なのであって、営利目的の言論商売ですから、販売戦略があるのは当然なのですが、あまりにコロコロと情勢に流されて態度と立ち位置を変節ばかりしていると、いくら部分的真実を書いていても全体的に信用されなくなるでしょう。青息吐息だと思いますよ。

 元々が「読み捨てられる」性質のものですが、ただでさえ時代が終わっていく先細りの業界なのですから、そのうち読者から完全に「見捨てられる」前に、せめて手先言論を止めて誠実に取り組んだらいいのではないでしょうかね。

 それでは阿修羅掲示板から、気になった記事を転載貼り付け致します。

 

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

ついに「日本自由報道記者クラブ協会」を旗揚げ!2011年1月27日、小沢一郎氏をゲストに招き初の記者会見を主催(上杉隆)
http://www.asyura2.com/11/senkyo105/msg/663.html
投稿者 pochi 日時 2011 年 1 月 27 日 12:40:36: gS5.4Dk4S0rxA

週刊・上杉隆 
2011年1月27日

ついに「日本自由報道記者クラブ協会」を旗揚げ!
2011年1月27日、小沢一郎氏をゲストに招き初の記者会見を主催

 ついに「自由な言論の場」をつくることにした。

 昨夜、フェアな報道の場を提供するための非営利団体「自由報道協会」(仮称)を立ち上げることを宣言した。

 戦後一貫して、一部のメディアのみが特権の上に胡坐をかき、政府の公的な情報を独占するという歪んだ社会構造にあった日本。

 それは端的に記者クラブの存在によるものではあったが、もはやそうした欺瞞にも限界が訪れたようだ。

 長年、フリーランス、海外メディア、雑誌、最近では、インターネット等の記者たちが交渉を重ね、国民の知る権利を満たすメディアシステムを構築しよう、と呼びかけてきたのだが、伝統的な新聞・テレビなどのマスメディアは結局これを拒否してきた。

 国民の税金で開催されている政府の公的な記者会見を勝手に占拠し、世界に恥ずべくシステムをいまだ続けている「記者クラブ」に、もはや自浄作用はない。

 よって、筆者は多くの有志とともに、「自由な言論の場」を作り、記者会見を主催することにしたのだ。

 それが「自由報道協会」である。

■ 第一回ゲストは小沢一郎氏 協会設立は“非常手段”

 第一回目のゲストは、日本で最初に「記者クラブ」問題を取り上げた政治家であり、また「時の人」でもある小沢一郎氏だ。

 小沢氏は93年以来、記者会見の開放を訴え、それを実践してきた政治家だ。それゆえに既存のメディアからは既得権益を破壊するものとして敵視されることになる。

 第一回目は、敬意を表して、その小沢氏を招き、記者会見を開催する。

 これは非常手段である。本来ならば、記者クラブメディア自ら率先してこうした構造を改革していれば済んだ話だったのだ。

 そのことは3年あまりにわたって、本コラムでも訴え続けてきたことでもある。

 さて、あくまで暫定ではあるが「設立趣旨書」を作成した。なによりも、記者クラブ問題に詳しいダイヤモンド・オンラインの読者には読んでいただきたい。

 そこで少し長くなるが、以下にそのまま載せることにする。

■ 第三の開国と報道新時代の到来を宣言! 日本自由報道記者クラブ協会設立趣意書

【日本自由報道記者クラブ協会(仮称)設立趣意書(暫定)】

 第三の開国が叫ばれて久しい。

 にもかかわらず日本政府の動きは鈍い。とりわけマスメディアは旧態依然のシステムを維持することで自ら停滞を選択したままである。

 世界でも類をみない記者クラブシステムはもはや金属疲労をきたし、いまや日本の成長戦略の妨げとさえなっている。

 2009年9月、外務省と金融庁から始まった政府の公的な記者会見のオープン化も、その後思ったより進まず、いまなお国民の「知る権利」「情報公開」「公正な報道」などの権利を日々、奪い続けている。

 日本社会がアンシャンレジームの既得権益に絡め取られている間にも、世界は変化している。インターネットを媒体とした第四の波ともいうべき情報通信、とりわけマイクロメディアの津波は、チュニジアで政権をなぎ倒し、エジプトなどのアラブ諸国、さらには全世界をも飲み込もうとしている。

 2010年には、イラン、タイ、モルドバでツイッターによるデモが発生し、米国や英国でも、選挙結果を左右する役割をソーシャルメディアが果たした。

 そうした情報通信革命は間違いなく日本にも押し寄せている。

 ユーチューブは尖閣ビデオをアップし、ウィキリークスは東京の米大使館の大量の公電を公表しはじめた。ツイッターはすでに日本人の10人に一人以上が利用し、ユーストリームは小沢一郎氏の記者会見をライブで伝えるほとんど唯一の媒体になっている。ビデオニューズドットコムは首相を生出演させることに成功し、ニコニコ動画の政治コンテンツには多くのユーザーが殺到している。

 第一の開国である明治維新、第二の開国である戦後日本の再生はともに社会構造の抜本的な変革から達成した「革命」であった。

 そうした変化こそが開国というのであるならば、現在、世界中で発生しているソーシャルメディア革命こそまさしく第三の開国というべきものである。

 本来、政府の公的な記者会見への参加は一部メディアに限定されるべきものではなく、取材・報道を目的としたすべてのジャーナリスト等に幅広く開放されるべきものである。
報道の多様性と自由な取材機会を保障することは民主主義国家であれば当然に認められる権利である。

 これは日本新聞協会(記者クラブ)の声明「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」にも合致した考え方であり、政府・国民が共有すべき見解である。

 当協会は、こうした観点から、政府等の公的な記者会見を独占的に占有し、同業他社を排除しているすべての「記者クラブ」に、公正な運用と良識ある対応を求める。

 時代は変わろうとしている。

 私たちは国民の求める「知る権利」「情報公開」「公正な報道」に完全に同意し、それらを達成するための“場”を作ることを宣言する。

 ジャーナリスト(編集者/カメラマン)であるならば、誰もが公平な取材機会に恵まれ、多様な価値観で報道し、国民の知る権利に応える。そうした切磋琢磨の“場”を提供することこそが、当協会の設立目的である。

 世界中で普通に行なわれている政府の公的な記者会見の開放こそが、まさしく第三の開国の第一歩であり、日本の民主主義の発展に寄与すると確信している。

「自由報道協会」設立準備会暫定代表 上杉隆

■ 記者クラブメディアの記者も拒まず 運営上、当初は優先順位を

 日本のメディアが「記者クラブ」というまったくもってつまらない問題で足踏みしている間にも、世界の情報通信環境は革命的な変化を遂げている。

 なにしろアラブ諸国では、ネットメディアを媒体として政府が転覆するほどの時代なのだ。

「自由報道協会」は、記者クラブメディアの記者といえどもその参加を妨げるつもりは一切ない。誰もが個人の資格で参加し、それぞれの価値観でもって報道し、それを国民に届ければいいという認識のもとオープンにする予定だ。ただ、運営上、当初は優先順位をつけざるを得ない。

 そう、つまり、所詮この会は、「場」を提供するだけの役割に過ぎないのである。

 相互主義の立場を無視して無料であるはずの公的情報を独占してきた新聞・テレビはいまや判断を迫られている。選択肢は二つに一つだ。

 ともに手を取り合って、自由で健全な言論空間を作るのか、あるいは、これまでと同じように未来のないガラパゴスに閉じこもってつまらぬ既得権を守り、死を待つだけなのか。

 答えは明白だ。早く一緒に仕事をしようではないか。

 最後に、暫定ではあるが、「会則」と、臨時HPのURLを載せておく。賛同していただく方がいらっしゃれば幸いである。

 以下を「日本自由報道記者クラブ協会」(仮名)の設立趣旨とする。

【1】当会の名称は「日本自由報道記者クラブ協会」(略称:自由報道協会/英語名:Free Press Association of Japan)とする。(暫定)。

【2】当会は、日本全国の公的な記者会見の開放を訴えるとともに、記者会見を代行主催する非営利団体にすぎない。いわゆる「メディア」にはならない。

【3】当会は、取材・報道目的であれば、誰もが個人単位で加盟し、記者会見等に参加することを保障する。その際、報道機関・他団体への所属の有無はこれを問わない。

【4】当会は、あらゆる人物の記者会見への招致を妨げることをしない。また誰もが自由に記者会見の開催を求める機会も保障する。

【5】当会は、別途設置される運営委員会(評議会)によって規約等を定め、第三者も加えた運営等を行なう。また、その代表者は互選により選出する。

【6】当会員は、同会内で行われる会見・発表に関する取材については、自由に各種媒体に公表できる。ただし、その報道内容に関する責任においては会員個人がすべてを負うこととする。そのため会員は、同会内で行われた取材活動の公表の際には、匿名ではなく自らの署名等(会が個人特定可能である執筆名を含む)を明記することを義務づける。

【7】当会入会に関しては、今後、評議委員会等で定められる「規約」に準ずる。

【8】当会の運営費の一部は、会員からの会費を当てる。

【9】当会は、その趣旨に賛同する個人・団体に対して広く寄付を募り、その運営・活動費に当てることとする。

【10】当会からの脱会はこれを自由に行うことができる。

【11】こうした趣旨から、当会はすべての会員の権利を保障し、同時に広く国民に開かれた組織であるべきことから、その運営内容、および財務諸表等を全面的に公開する。

http://fpaj.exblog.jp/

http://diamond.jp/articles/-/10911

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2011/01/27 09:02

【133】『JFK』JFK(1991) 5.正義の問題と秩序の問題

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 投稿4に引き続いて、映画『JFK』について書きます。とりあえず一連の投稿は、今回で結論ということに致します。といっても投稿3と4でまとめきれなかった文章を、仕方なくこちらに移したものであるため、文脈が途切れ途切れになっていますが、どうかご容赦をお願いします。以下「だ・である」口調、ネタバレ注意です。

 

  ● イスラエル・ユダヤ・コネクションとコンスピラシー・セオリストのレッテル貼り

 パイパーが『最終判決』で言う通り、確かに『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』にもイスラエルやモサドについて深く言及された箇所は見当たらない。ただ単に私が見落としている可能性※もあるが。

 ※ 『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』を手にとって読んだことがあるかたならご存知だろうが、文庫本とはいえ実に浩瀚であり、内容がギャリソン地方検事の体験と見解の凝縮である。私も1回読み通した後は、線を引いた気になる部分を文章ごとに読み返すくらいしか出来ていない。

 私はギャリソンが書いたという「未発表の小説」を読んだことはないから内容は分からないが、確かに『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』には小説を1つ書いたということ自体は書いてある。パイパーによれば「おそらくは賢明な選択だっただろう」とのことである。

 それぐらいアメリカという社会において、「イスラエル」「モサド」「ユダヤ」について言及するのは恐ろしいことなのであろう。CIAやFBI、国防総省などの情報機関や諜報機関が秘密工作を実施していることは、アメリカ合衆国の国民であれば誰でも公然として認識していることだろう。正式に認めるか否かは自分が公務員であるかどうか、またはそれぞれの政治的思想的立場や建前上の見解の相違というもので済まされるだろう。

 だけれども「イスラエル」「モサド」「ユダヤ」はそうではないことが伺い知れる。公然とだろうが正式にだろうが、建前であっても本音であっても、公人であっても私人であっても触れてはならないタブーが根強くある。真相に切り込んでいけば命の危険まである。

『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策Ⅰ・Ⅱ』(ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト著、副島隆彦訳、 講談社社刊、2007年)という本で、つい近年までの抵抗の大きさが示されている。まともな議論にのぼらせること自体すらも困難だったのだ。

 ギャリソン地方検事が、その実どの時点でどのぐらい「イスラエル」「モサド」という国外要因を掴んでいたのか細かいところは分からないが、私が思うにクレイ・ショー裁判を通して、「ほとんど」の共謀者達を敵にまわしても、「全て」の共謀者を敵にすることは出来なかったのだろう。

 新聞テレビ報道による悪意の人格攻撃や集中的な個人攻撃の洪水を浴びせられ、国家機関によって犯罪捏造工作を仕掛けられ(全て無罪判決)、「ショーをスケープゴートにして売名行為を計っている悪徳検事」という酷評まで出ていた人間であるのにも関わらず、地方検事選挙においては三選されている(四選はならず)。植えつけられ定着した悪印象を払拭するためにテレビ出演もしている。

 軽薄で怪しい沢山の陰謀理論家(コンスピラシー・セオリスト)達と一線を画して、ギャリソンが誠実な人物であるとアメリカ国民の多くに認識されており、年代が違うとはいえ、映画『JFK』が成立し受け入れられる土壌がそこにはある。単に今では映画の影響があったからということだけではないだろう。何故ギャリソンが様々な妨害工作を受けながらも、国家に不都合な法廷闘争を展開出来たのか。

 ギャリソンは一般国民の信用と支持だけが後ろ盾であり、それを失ってしまえば無条件で撤退するしかない。彼は国外要因まで言い出すわけにはいかなかっただろう。国外要因は、脳裏に引っ掛かっていても主要因から切り捨ることを決めて前進するしかなかった。

 当時の国外要因といえばもっぱらソ連やキューバなどの共産圏や、国際非合法活動を展開するマフィア説であり、そこに繋げられて絡めとらると、そこにばかり拘泥してしまう。そういう方向に世論を誘導されやすい報道環境であるから、より一層陥りやすい罠である。

 国内要因偏重なども含めた諸所の弱点を抱えたまま、検察側敗訴まで突き進むしかなかったのだ。裁判は時間との戦いでもある。その他国の機関の協力が乏しいどころかかえって妨害してくる最中にあって、検証・捜査を地方検事局が行える範囲にも自ずと限界があった。

 

 ● 実行犯特定の難しさ

 オズワルドがケネディ暗殺実行後、逃走中に射殺したとされているJ・D・ティピット巡査(ジャック・ルビーの親友?)の、本当の殺害犯も公式にはオズワルドになっているそうだが、実際はどうなのだか。それから日本語ウィキペディアのジョン・バーチ協会の項目には、ティピット巡査が会員であると記載があるが、英語ウィキペディアにはメンバー一覧の方には見当たらなかった。

 ティピット巡査殺害犯は2人組だったという説もある。何で彼が殺されなければならなかったというのか、どんな必然性があるというのか? オズワルドが警察の捜査に怯えていたという理由づけのためか。その行き当たりばったりの警官殺しという印象操作をするため、殺される役目のために都合よく「選ばれた」のがティピット巡査だったのだろうか。

 別人だったと主張する目撃者達が何人も襲撃されたり殺されたりしているという。デイヴィッド・フェリーの友人で亡命キューバ人のエラディオ・デル・ヴァレという男も聴取する前に殺されている。他にもおびただしい数のケネディ暗殺事件当事者が殺害されたり、変死や不審死や交通事故死を遂げている。やはり日本とは比較にならないほど、とんでもなく恐ろしい国である。恐ろしさの度合いが段違いであり、量も桁違いなのだ。

 とはいえ教科書倉庫ビルから単独でのケネディ暗殺成功の確率に比べれば、まだ本物のオズワルドがティピットを銃撃した可能性が残ると思う。オズワルド本人もCIAから指令を受ける末端の構成員であったならば当然考えられることではあるが、迷宮入りかも。

 そして現実世界でも、映画『JFK』でも明らかになっていないことであり最大の謎は、オズワルドが銃撃していないとすると、実際に大統領を銃撃した複数の人物というのは一体誰と誰なのか、その名前は? ということである。ギャリソン本人も『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』で正確には分からないと書いている。

 仕方がないことだが、肝心のここが不明のままであるということが映画の弱点であり攻撃される箇所だ。教科書倉庫ビル以外でグラシー・ノールやダルテックスビルなどから銃撃があったとしても、実際に撃った人物までは特定出来ていない。

 現場近くで逮捕されて連行される際に警察と一緒に撮影されたという浮浪者の男達3人が怪しいと言われたが(ハワード・ハントやフランク・スタージスらが写真と似ているが、最近になって一般人の3人だったと判明したという話もあり、真偽不明)、どの説もなかなか推測の域を出ない。状況証拠や目撃証言ばかりで物理的証拠がないからだ。

 傘男(通称アンブレラマン、ルイス・ウイットという人が名乗りでているが)とかの、現場協力者ではないかと疑われている者達は映像に映っているが。ザプルーダーフィルム自体も、画面の順番入れ替えということだけでなく、コピーが出回る過程か現像段階で手を加えられているのではという指摘もある。他の現場にいた人間が撮ったものと比較すると不自然なものがみられるという。画像や映像といっても無条件に信用出来るものではない。

 しかしながら未だに全容解明がなされていないのは、どう考えてもルイジアナ州ニューオーリンズのジム・ギャリソン地方検事ただ1人の責任でもないし、もちろんストーン監督のせいでもない。

 オズワルドが生贄の囮だとして、せめて実行犯である射撃者本人達(直接撃ったのは計3人か)の名前が機密解除で明らかになればいいのだが、どうもそれすらもあまり期待しない方が良さそうだ。

 ジョンソン副大統領黒幕説で、顧問弁護士であるエドワード・A・クラークという人物が計画・命令して、マック・ウォレスやジュニア(仮名)と呼ばれる人物達に実際の銃撃をさせたのだという話もある。それでも私は、ジョンソンが一番上の最高意思決定者ということはないと考える。ジョンソンはいわば民主党側の政治の雇われ「最高管理責任者」に過ぎない。共和党側で相当するのが同じく雇われたリチャード・ニクソンである。

 他にも2008年ごろに、ジェイムズ・E・ファイルズ(本名ジェームズ・サットン)という服役囚が、自分が銃撃犯だと名乗りでているようである。ジム・マースが独占インタビューしているとのこと。真相は不明だが直接の銃撃実行犯3人が三方射撃したうちで、ケネディに致命傷を与えた最後の一発をグラシー・ノールから撃ったのが自分だと告白しているらしい。

 実行犯は事件後にルビーのように口封じで消されているか、そうでなければハワード・ハントやスタージス、バーナード・バーカーなどのように、半分組織人間のようにして生きていたのか、ファイルズのように別件で服役していたりするのか。

 直接の実行犯というのはそういうものだと思う。でも司法長官まで務めたロバート・ケネディ(RFK)を直接殺害したとされる、サーハン・ベシャラ・サーハンの方はいつ死んだのかなと思ったら、なんと投稿時点では、終身刑で刑務所の中でまだ存命の模様。びっくりである。サーハンも身代わりである可能性があるそうだ。どこまでもひどい話である。

 

 ● 正義の問題と秩序の問題

 ストーンは映画『JFK』に出て来る証人の1人で刑務所にいたウィリー・オキーフの印象的な台詞として、ギャリソンに向かって

 オキーフ「あんたたちリベラル派は何も知らないんだな、ギャリソンさん。これは正義の問題じゃない、秩序の問題なんだよ! 誰が支配者か? ファシズムの再来さ」

 といった感じのことを言わせている。かなり早口で俗っぽい言い方なのだが、翻訳でもこんなところだと思う。英語字幕は早口の部分を略して表記してしまいがちなので調べにくいことが多い。日本語字幕は簡潔にしていいから、英語字幕は発声した通りに全部表記してほしい。

 このオキーフの台詞が、この映画の核心部分を端的に表しており、ひいては現実社会の本質をも鋭く突いている。確かにケネディ暗殺事件そのものが秩序と正義が激突した事件の結果であり、クレイ・ショー裁判に至るまでの過程自体が秩序と正義の衝突であった。秩序の別名は支配である。

 ケネディ王朝とキャメロットの頂点は1963年11月22日を境に過ぎ去って崩壊していく。これで映画でのギャリソン演説の通り、後の大統領達が単なる臨時職員雇いの身分に落とされることが決定した。デモクラシーは護られたのではなく、とどめを刺されたのではないか。

 後の大統領はみな法形式上の元首ではあるが、度合いの差こそあれ操り人形である。同時に単なる行政官僚組織であるはずのCIAはケネディによる解体・解散の「危機」を脱して安泰となるどころか、諜報機関の王者としてますます君臨することになった。デイヴィッド・フェリーの台詞「CIAは永遠さ」が悪夢の現実となった。

 万国共通、官僚組織は全て存続自体が目的で勝手に自己増殖運動をはじめるが、情報機関や諜報機関、秘密工作機関なども公務員組織であるから例外ではない。だから冷戦なんてとっくに終わっている2011年の現在、後の大統領達はCIAの解体・解散なんて言い出さないし、言い出せない。CIAが作り出す恐怖の秩序に束縛されてしまっている。

 だから「理想主義者」であるオバマだって言わない。ヒラリーになったらもっと言わないだろう。「テロとの戦い」「非対象戦争」「イスラム圏との文明間衝突」「大国ロシアの復活」「中国との新冷戦」などなど様々な言い訳を、現実に作り出してしまうのだ。世界秩序のために軍産複合体も必要だし秘密工作機関も必要だろ、という脅迫である。

 公務員は仕事が無くなってクビが危うくなると、こういうマッチポンプを必ずやりだすが、情報機関や諜報、秘密工作機関は特に顕著な傾向を示す。軍人という戦争公務員も同じである。これはもう習い性だ。自浄作用なるものはない。ギャリソンの言うとおりで、「国のリーダーを奪われていながら、何が国家安全保障上(ナショナル・セキュリティ)の機密か」ということである。

 その台詞があるのは映画『JFK』クライマックスの、クレイ・ショー裁判におけるギャリソン演説で、これが真に迫るものである。もちろんこれはストーンが自分の意見や心情を伝達するために、また映画視聴者のためにケヴィン・コスナーの見せ場として作ったシーンなわけだが、そのメッセージが本当に素晴らしいのだ。

 せっかく一番良いところなのであるから、ここに台詞を書いてしまうのは控える。未だ観ていないかたにはお勧めするし、既にご覧になったかたも再見の価値ありだと思う。

 私が出した結論としては、ジム・ギャリソンは「秩序の人」ではなく「正義の人」であった。本当の正義はいつの時代も敗れ続けている。秩序(支配)側の勝ち続けている人が正義を自称して、それを周りにも押し付ける権利権力を握り締めているだけである。

 

 ● その国における偉大さの表出、体現者の出現

 ここからはアメリカとの比較ということで、日本のことを、おまけみたいになってしまったものだが書く。

 映画『JFK』を観るにつけ、ギャリソン検事がいるというその事実自体が、アメリカ国民の偉大さの表出であり、日本国民が到底かなわないところと認識する。以前の投稿でも書いたが日本にはギャリソンに匹敵する検事は1人もいない。安易に類推して考えないように。法的素地や土壌が全然違うのだ。こういうところでは日本人は全く敵わないことは明白である。

 私の考えをもっと書くと、アメリカはいつでも気違いの犯行ということにして都合の悪い人間を始末してしまう国であるのにギャリソンが彼等に殺されなかったのは、彼自身が軍や情報機関に在籍した経験から事情に精通しており、更には様々な人的繋がり(コネクション・ネットワーク)を持っていて護られていたからというだけではなく、デモクラシーの元祖であるアメリカ合衆国の偉大さをかろうじて守りたいという国民感情の要請による国家意思の表れであり、彼等としてもあえて敗れ去るギャリソンを殺さなかったのだろう。

 デモクラシーの体現者であるケネディが殺された後の、一般国民が漠然と抱いた危機意識は相当なものがあったと思う。

 こういった事情を、あまり考え違いしてはならないだろう。移住と建国以来のアメリカの犯罪産業の巨大さ、国と組織そのものの恐ろしい仕組み(カラクリ)、そのとてつもなく深い罪業と血塗られた歴史を知ってしまうと、アメリカ人はみんな愚かで駄目な人間の集まりだ、どうしようもない悪魔的人間の集まりだ、こんな国から法制度などを見習ったり導入したりすることは何もない、の決め付けで済ませてしまう単細胞がいる。

 しかし、人類社会がそれだけであるわけがない。アメリカ合衆国は世界帝国・覇権国だから、恐ろしさも偉大さも世界帝国・覇権国に相応しい人間が出現するのである。日本国にも属国サイズに相応しいくらいの恐ろしい人間や偉大な人間がいるのと同じことである。国家規模と社会的成熟度に応じている。だから法制度や政治機構についても同様なのだ。

 各下位法だけではなく、大日本帝国憲法も日本国憲法も、日本原住民の民度に調度いいくらいの、デモクラシー教育用憲法を親切にも「導入してあげた」ものだ。元から全て輸入品か真似というシロモノなのだから、今更欧米の法制度の輸入を警戒するも何もあったものではない。万事優れた法制度や文化その他一切は上から下に流れてくるのが当たり前なのだ。下から上にあがるのは税金や貢物だ。上から下にも下から上にも行くこともあるのは人間の移動くらいなものである。移民と殖民だ。

 元来そもそもが日本のものではないのにそう見えないのは、勝手に変造して慣習と融合させてしまい、日本語で憲法や法自体が出来上がっているからである。そしてその事実をキレイに忘れ去って、次に新しく大きく変わるまでは奉る。

 これが建国時、中国から離れて独立するために作った遡り偽造神話から始まる有史以来、日本人に決定された行動様式である。自分達で優れたものを考えて議論して作り上げるということが、尊いことだと感じていないのだ。植田信さん流の表現を用いれば「律令理性」である。ここまで書けば日本からジム・ギャリソン級の大人物が出現しない理由が分かるだろう。

 日本列島というのは地理的に、ここから下に流れる先がない吹き溜まりのような国である。全て先生が各所に書いている通りである。戦後はモノを作り売って経済は繁栄した。人の流れ、人的交流はどうしても滞りやすい。だからすぐに凝り固まってしまうので、日本は学問五流国である。政治や法の世界だけじゃないんだよ五流は。だから日本はモノを作って売った。

 この全世界的な時代に、どこの国がわざわざ日本の憲法やら法制度ごときシロモノを学び取って自国に導入するために、学者や研究者が日本を調査したりする? そんなことのために留学てきたりする留学生がいるか?

 日本は何故だか理解に苦しむが妙な具合に発展したりする時期がある国だから、自国の参考にするために成長モデルの研究対象に取り上げられたこともある、ということだ。経済と産業こそが大事だからだ。産業・工学・技術だけが導入研究の対象である。経済の基礎は産業であり金融ではない。

 とりあえずの答えは、近代資本主義経済が貫徹されていない社会であっても、憲法や各種法制度や政治機構、国民の法意識・精神が前近代のままであっても、国は経済的に成長・繁栄することが出来るということだ。日本は例外でもなんでもない。たまたま先に発展期が来て一足早く減退期が来たということである。良いも悪いもない。

 だから発展途上諸国において日本人の真似が困難であろう唯一の事柄があるとすれば、それは自分達は既に近代を経ているという、謎の「国民総思い込み現象」というトンデモ現象(笑)ぐらいだろう。思い込みが上手く作動していた間は動力源になるから良かった。すっかり活気が失われても思い込みを続けるとどういうことになるのか。これからが見物である。

 最後にあらためてお断りを。書籍文章引用に際して発生したミスがあれば全て私の責任です。また、私が新たに発見した事実など1つも無いことに関わらず、私の見解・意見を含めた文章の一切の文責は私にあります。

 佐藤裕一拝

 

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 映画『JFK』JFK(1991)の投稿をするにあたって参考にさせて頂いたサイトを、一部ではありますが以下にURLを貼り付け致します。

 

 ● 最近のケネディ関係ニューズ

時事ドットコム:サージェント・シュライバー氏死去=ケネディ元米大統領の義弟
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201101/2011011900389

故ケネディ大統領の理想主義を称賛 就任50年でオバマ氏 – MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110121/amr11012113210071-n1.htm

時事ドットコム:ケネディ氏のおかげで米大統領に=就任50年記念でオバマ氏
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011012100332

時事ドットコム:ケネディ未公開写真1万5000点=収集家が入手-米
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201101/2011011700503

東京新聞米大統領就任2年 支持率上向き 反転攻勢へ国際(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2011012202000032.html

CNN.co.jp:ケネディ大統領時代の重要資料、オンライン公開へ
http://www.cnn.co.jp/fringe/30001503.html

ヘッドライン 国際 ケネディ氏遺体の救急車競売へ 暗殺後、首都でひつぎ運ぶ – 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/news/2011/01/post_20110116101301.html

ケネディ元大統領の遺体を搬送したとされる救急車、1000万円で落札 – Bloomberg.co.jp
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=ahT8bBDq3cig

ケイティ・ホームズがJFK夫人役を演じる大作ドラマ、完成直後にまさかの放送中止決定 海外ドラマ情報・ニュースサイト TVグルーヴ・ドット・コム – TVGroove.com
http://www.tvgroove.com/news/article/ctg/1/nid/4225.html

 

 ● 参考書籍

Amazon.co.jp: JFK―ケネディ暗殺犯を追え (ハヤカワ文庫NF) ジム ギャリソン, Jim Garrison, 岩瀬 孝雄 本
http://www.amazon.co.jp/dp/415050167X

Amazon.co.jp: ケネディとユダヤの秘密戦争 (発掘!アメリカの嘘) マイケル・コリンズ・パイパー, 太田 龍
http://www.amazon.co.jp/dp/4880861979/

Amazon.co.jp: 次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた〈上〉技術・諜報篇 (5次元文庫) ヴィクター ソーン, Victor Thorn, 副島 隆彦 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4199060340/

Amazon.co.jp: 次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた〈下〉謀略・金融篇 (5次元文庫) ヴィクター ソーン, Victor Thorn, 副島 隆彦 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4199060359/

Amazon.co.jp: ハリウッド映画で読む世界覇権国アメリカ〈上〉 (講談社プラスアルファ文庫) 副島 隆彦 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4062568438

Amazon.co.jp: ハリウッド映画で読む世界覇権国アメリカ〈下〉 (講談社プラスアルファ文庫) 副島 隆彦 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4062568446

 

 ● 映画DVD

Amazon.co.jp: ディレクターズカット JFK 特別編集版 [DVD] オリバー・ストーン, ケビン・コスナー, シシー・スペイセク, ジョー・ペシ DVD
http://www.amazon.co.jp/dp/B000FQW0LG

 

 ● 参考ウェブサイト(他にも多くのサイト文章を読んでいたが、以前のパソコンで閲覧していたサイトがどこにあったか分からなくなったので、再発見出来た一部のみを掲載)

ケネディ暗殺の謎
http://jfk.seesaa.net/

ケネディ暗殺関連年表
http://www10.plala.or.jp/shosuzki/chronology/usa/asassin.htm

Electronic Journal:JFK|異文化研修のインテックジャパン
http://www.intecjapan.com/blog/cat9/#000167

ギコ教授の兵器・事件史 ~世界史はじめました~ ケネディ暗殺事件
http://gikoheiki.web.fc2.com/sensi/009.html
http://gikoheiki.web.fc2.com/sensi/009b.html
http://gikoheiki.web.fc2.com/sensi/009c.html

津嘉山正種[JFK]
http://www.t3.rim.or.jp/~chika/tuka/jfk1.html#top
http://www.t3.rim.or.jp/~chika/tuka/jfk2.html

「大統領は私が撃った! JFK事件45年目の衝撃 」の分析 ネオ パラダイム サイエンス
http://japan-to-the-world1.seesaa.net/article/86741649.html

衝撃告白!!「ケネディを殺ったのはオレだ!!」 JFK暗殺事件(ジョン・F・ケネディ)道場 学問・研究 まにあ道 – 趣味と遊びを極めるサイト!
http://www.maniado.jp/community/neta.php?NETA_ID=892

JFK暗殺事件 製作中 – トップページ
http://www11.atwiki.jp/voodoo65/

誰がケネディを殺したか – 天の王朝 – 楽天ブログ(Blog)
http://plaza.rakuten.co.jp/yfuse/12000

2007年1月16日(火曜) ジャック天野の気まぐれ日記
http://whoisjack.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/200716_89fa.html

ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 ケネディとイスラエルは仲が悪かったという本
http://amesei.exblog.jp/3800288/

ケネディー暗殺はジョンソンの陰謀
http://members.jcom.home.ne.jp/u333/ithink031126kenedyjhonson.htm

宝石用原石ファイル
http://www.worldlingo.com/ma/enwiki/ja/Gemstone_File

ケネディの暗殺の陰謀理論
http://www.worldlingo.com/ma/enwiki/ja/Kennedy_assassination_conspiracy_theories

ケネディ大統領暗殺事件とは – Weblio辞書
http://www.weblio.jp/content/ケネディ大統領暗殺事件

JFK  (アメリカ・フランス 1991) – ハリウッド映画のデータ集
http://frozenbaum.blog67.fc2.com/blog-entry-320.html

re イタリアの黒いプリンス byアレン・ダグラス (4) kamenoko
http://www.asyura2.com/0502/cult1/msg/683.html

ケネディ
http://www.maedafamily.com/

ケネディ暗殺事件・歴史の中のミステリー
http://www.k2.dion.ne.jp/~hike/dallas.html

 

 ● 参考にした日本語ウィキペディアの項目。順不同。

ジョン・F・ケネディ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・F・ケネディ

リー・ハーヴェイ・オズワルド – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/リー・ハーヴェイ・オズワルド

ジム・ギャリソン – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジム・ギャリソン

オリバー・ストーン – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/オリバー・ストーン

JFK (映画) – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/JFK_(映画)

ケネディ大統領暗殺事件 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ケネディ大統領暗殺事件

ウォーレン委員会 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ウォーレン委員会

2039年 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/2039年

アール・ウォーレン – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/アール・ウォーレン

ジャック・ルビー – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジャック・ルビー

ジョン・コナリー – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・コナリー

セオドア・C・ソレンセン – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/セオドア・C・ソレンセン

リンドン・ジョンソン – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/リンドン・ジョンソン

ジミー・カーター – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジミー・カーター

ロバート・ケネディ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ロバート・ケネディ

サーハン・ベシャラ・サーハン – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/サーハン・ベシャラ・サーハン

ジョン・バーチ・ソサエティ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・バーチ・ソサエティ

エドウィン・ウォーカー – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/エドウィン・ウォーカー

ラッセル・ロング – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ラッセル・ロング

ザプルーダー・フィルム – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ザプルーダー・フィルム

フレッチャー・プラウティ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/フレッチャー・プラウティ

ジミー・ホッファ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジミー・ホッファ

ピッグス湾事件 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ピッグス湾事件

アレン・ウェルシュ・ダレス – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/アレン・ウェルシュ・ダレス

ジョン・フォスター・ダレス – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・フォスター・ダレス

ジョン・エドガー・フーヴァー – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・エドガー・フーヴァー#.E3.82.B1.E3.83.8D.E3.83.87.E3.82.A3.E3.81.A8.E3.81.AE.E9.96.A2.E4.BF.82

ロバート・マクナマラ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ロバート・マクナマラ

アーサー・シュレジンジャー – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/アーサー・シュレジンジャー

ジェームズ・R・シュレシンジャー – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジェームズ・R・シュレシンジャー

ジョン・ケネス・ガルブレイス – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・ケネス・ガルブレイス

アリストテレス・オナシス – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/アリストテレス・オナシス

ジャクリーン・ケネディ・オナシス – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジャクリーン・ケネディ・オナシス

サム・ジアンカーナ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/サム・ジアンカーナ

カルロス・マルセロ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/カルロス・マルセロ

フランク・コステロ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/フランク・コステロ

フランク・スタージス – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/フランク・スタージス

バーナード・バーカー – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/バーナード・バーカー

エヴェレット・ハワード・ハント – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/エドワード・ハワード・ハント

ダヴィド・ベン=グリオン – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ダヴィド・ベン=グリオン

ジョニー・カーソン – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジョニー・カーソン

ウォーターゲート事件 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ウォーターゲート事件

リチャード・ニクソン – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/リチャード・ニクソン

13デイズ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/13デイズ

グッド・シェパード – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/グッド・シェパード

 

 ● 参考にした英語ウィキペディアの項目。順不同。

Jim Garrison – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Jim_Garrison

Edwin Walker – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Edwin_Walker

Earle Cabell – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Earle_Cabell

Charles P. Cabell – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Cabell

John A. McCone – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/John_A._McCone

Guy Banister – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Guy_Banister

David Ferrie – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/David_Ferrie

Clay Shaw – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Clay_Shaw

J. D. Tippit – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/J._D._Tippit

H. L. Hunt – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/H._L._Hunt

E. Howard Hunt – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/E._Howard_Hunt

Richard Helms – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Helms

James Jesus Angleton – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/James_Jesus_Angleton

Bruce Porter Roberts – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Bruce_Porter_Roberts

Clint Murchison, Sr. – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Clint_Murchison,_Sr.

Frank Wisner – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Frank_Wisner

Gemstone File – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Gemstone_File

William Raborn – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/William_Raborn

Michael Collins Piper – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Collins_Piper

Larry McDonald – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Larry_McDonald

John Birch Society – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/John_Birch_Society

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2011/01/27 09:01

【132】『JFK』JFK(1991) 4.ファイナル・ジャッジメント

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 投稿3に引き続いて、映画『JFK』について書きます。といっても今回は書籍を中心にして書きます。以下「だ・である」口調。ネタバレ注意。

 

  ● 「諸君の成功は公表されない。しかし失敗は喧伝される」

 Your successes are unheralded, your failures are trumpeted.

 悲劇的なことに、ジョン・F・ケネディ大統領は、かなりの程度で有言実行の人物であったようだ。

 CIAのチャールズ・キャベル副長官はピッグス湾事件の作戦失敗によって、アレン・ダレス長官とともにケネディ大統領から責任を取らされ解任され、恨み骨髄だったという。長官に上り詰める道も断たれた。リチャード・マーヴィン・ビッセル計画担当副長官もIDA(国防分析研究所)所長に転出させられている。

 ケネディの言葉は特務・諜報・工作機関の本質を突いている。確かに、完全に正当な指摘だが、こんなことを真正面から浴びせかけられればモチベーションだだ下がりであるし、当時のCIA職員達に組織存続についての危機感と憎悪の炎が燃え上がったことは想像に難くない。

 ケネディ暗殺当時のCIAトップはジョン・アレクサンダー・マッコーン長官、陸軍中将マーシャル・シルヴェスター・カーター副長官、そしてリチャード・M・ビッセルの後釜であるリチャード・マックゼーラー・ヘルムズ計画担当副長官らである。ジム・ギャリソン著『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』の記述を読むと、ギャリソンはマッコーンやヘルムズについて、暗殺計画の事前承認者とはみていないようだ。該当箇所を引用する。

 

(佐藤裕一による引用始め)

 こまかく見ていくと、見せかけのスポンサーに関する説は次々と崩壊してしまうのだ。大統領を暗殺する動機と能力をそなえたスポンサーとして、唯一残される可能性をもっているのは、CIAの秘密工作担当者たちだ。

 CIAの秘密工作機構は、危険であると同時にひじょうに見えにくい存在であり、情報コミュニティのなかでも強力な要素となっている。政府の最上層にもきわめて近く、すくなくとも一九五〇年代以降は、外交政策の決定にも次第に影響を与えるようになってきている。

 情報収集とはちがって、秘密工作にはプロパガンダ(遠回しに言うと偽情報)の作成を拡散、秘密の軍事組織の養成、クーデターや場合によっては殺人(国内外を問わず。ただし、つねに隠密裏に行われる)の計画がふくまれる。CIAの全活動の三分の二以上は、その種の秘密工作なのだ。その結果、秘密工作の担当部局は、かつてCIAの高官であったフィリップ・エイジーも言ったとおり、“秘密政治警察……現代のゲシュタポ、SS(ナチスの親衛隊)”となっているのである。

 手のこんだ大統領暗殺計画が、一九六三年当時のCIA長官ジョン・マッコーンあるいは計画部担当副長官リチャード・ヘルムズによって承認されていたとは考えにくい。CIAのもっと下の段階で考え出され、政府外の個人あるいは団体の協力のもとに遂行されたというのが真相だろう。CIAの最上層に書類が回ったりすることのないように取り計られ、上層部はそれをいいことに見て見ぬふりをしていたのではないか。一九八七年に議会が調査を行ったイラン・コントラ事件も、その種の、政府の役人と民間の人間が関与した“準公式の”出来事だった。ウォーターゲート事件の際にも見られた、そのような政府当局と民間人の協力体制を、関係当事者の一人であったある政府高官は“事業”と呼んでいる。

 イラン・コントラ事件は、それよりはずっと強大な“事業”であったケネディ暗殺事件の系列に属するものだと私は信じている。どちらの事件も、CIAの秘密工作担当部門が考え出したものである。どちらの事件の場合も、不法で邪悪な工作を遂行するために、CIAのベテランと不可解な民間人が力を合わせている。いずれの事件も極右的な思想を背景としており、同時に不可解きわまりないできごとである。この連続性はなんとも不気味だ。極度に微妙で論争を招きそうな秘密工作活動を既存の情報機関の一部を活用して行ないつつ、外部の人間には絶対に証明できないものにしたいという、元CIA長官、故ウイリム・ケーシーの夢は、過去四半世紀にわたって――すくなくともケネディ大統領暗殺事件のころから――現実となっていたのだ、と私には思われる。

 見せかけのスポンサーたちとちがって、CIAにはあきらかに暗殺を遂行する能力があった。一九七五年、フランク・チャーチを委員長とする上院委員会は、CIAが、何件もの暗殺を企て、毒物や機関銃、ときにはマフィアのヒットマンまで用いていたことをつきとめた。委員会は国内における暗殺事件まで調べるよう要求されてはいなかったが、CIAが自分たちに気に入らない政策を実施している外国の指導者たちを暗殺しようと何度も企てたことをあきらかにしていた。

(佐藤裕一による引用終わり)『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』(ジム・ギャリソン著、岩瀬孝雄訳、早川書房刊 ハヤカワ文庫NF、一九九二年二月十五日 発行、一九九二年四月十六日十六 十八刷、427~429頁から引用。ルビ、註番号等省略。読み易いように段落ごとに改行)

 

 ● 『13デイズ』『グッド・シェパード』『ダラスの熱い日』

 アレン・ダレスやフーヴァーのような存在感たっぷりの悪役達とは違って、マッコーンCIA長官は現役であるにも関わらず、それほどの悪い噂は聞かれない。映画『JFK』にも出ていることすら確認出来ず、さっぱり重要人物として取り上げられていない。ベクテル・マッコーン社というベクテルのグループ企業から来ている人だから、CIA内部の組織人間にとってはいわば体制部外者である。ダレス更迭の上での後任であるから尚更そうであろう。ジョンソン大統領政権下ではヴェトナム戦争に関するイザコザで辞任。何にせよ印象が薄い。

 マーシャル・シルヴェスター・カーターCIA副長官も同様で、陸軍幹部としてキューバ危機に対応した1人ということだが、ケネディ暗殺との関わりでは何の話も出てこない。なんだかジョージ・キャトレット・マーシャルとシルヴェスター・スタローンとジミー・カーターを足して3で割ったような名前だなぁと思って英語版ウィキペディアを読んでみたら、本当に「マーシャル・プラン」のジョージ・マーシャル元帥の側近であり、ジョージ・マーシャル財団の会長だったのでビックリ。マーシャル繋がりだからか……。あと多分だがジミー・カーター大統領の親戚ではないと思う。

 マッコーン、カーターらが出てくる映画といえば、ロジャー・ドナルドソン監督の映画『13デイズ』Thirteen Days(2000)がキューバ危機を題材にしている。主人公はケネス・オドネル大統領特別補佐官で、こちらもケビン・コスナーが主演である。私はこの映画を観たいのだが、まだDVDを入手出来ていない。一度テレビ放送で少しだけ観たような記憶があるが、『13デイズ』であるか確信はない。確か、もはやキューバ危機がいよいよ切羽詰まってきた段階での政府高官会議で、

 ケネディ大統領「さぁ、みんな! 何か妙案があるなら今のうちに言った方がいい。意見が採用されるチャンスだぞ」

 全員「………………」

 という場面でCMに行ったのが印象的だった。別の映画かドラマだったかも。

 さて、影の薄いマッコーン長官やカーター副長官と比べて、CIA生え抜き組であるリチャード・ヘルムズ副長官の方は相当に怪しい。ジョンソン政権下でウィリアム・フランシス・レイボーン退役海軍中将の後任として長官に昇格しているが、ウォーターゲート事件関連でニクソンから辞めさせられるまで、かなりの長期間に渡ってCIAの指導部にいたことになる(後に偽証で有罪判決を受ける)。アレン・ダレスほどは目立たないが、ダレス以後のCIAにおけるFBIのフーヴァーに相当・対応する人物なのであろう。

 先生が翻訳したヴィクター・ソーン著『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた(上)』にはマイケル・コリンズ・パイパー著『最終判決:JFK暗殺事件陰謀説におけるミッシングリンク』について取り上げるために1章設けてあるが、OSS時代からヘルムズの部下でCIA防諜担当責任者であるジェームズ・ジーザス・アングルトンや、FBIからCIAに移ったウィリアム・キング・ハーヴェイ(当人は当時既にローマ支部転任)が組織したマングース作戦はじめZRライフル部隊などのカストロ暗殺計画(全て失敗)の狙撃者達が、なんとそのままケネディ大統領暗殺に使われた可能性があるということを指摘している。このアングルトンとハーヴェイは、映画『JFK』には出てこない。

『最終判決』によるとアングルトンはイスラエル首相ダヴィド・ベン=グリオンやモサドと親密な関係を築き、CIAとモサドの利害関係を強引に一致させ、一体化(ズブズブ)していったと指摘している。もしそうだとしたらソ連KGBとの関係性より重要だ。イスラエル国内にアングルトンの長年の貢献的行為(従属的忠誠)を称えた記念碑まであるという。パイパーはこのアングルトンをかなり重要視しており『最終判決』で頻繁に取り上げられている。

 ヘルムズの部下であるアングルトンがエヴェレット・ハワード・ハントに責任をなすりつけようとしていると、元CIA高官のヴィクター・マーチェッティ(マーケッティ)が告発した。現場にいた浮浪者の1人がハントではないかとまことしやかに噂されたのも、真実をごまかす工作の一環としてなされており、ハント自身は予定されていた偽のケネディ暗殺計画(ケネディを脅して従順にさせる)に関わっていたが、当日になるとケネディが本当に暗殺されてしまった。つまりハントは最初から、CIA内部によって騙されていた可能性が高い。CIAに世界の疑いの目が当然向けられる際に責任を取ってもらう囮役にされたということだ。だからハントもCIAだったのにゴタゴタと裁判をやっていたのである。ひきつけ専門という感じだ。

 それでロバート・デ・ニーロ監督の映画『グッド・シェパード』The Good Shepherd(2006)の主人公スパイのモデルがジェームズ・J・アングルトンやリチャード・M・ビッセルだということだ。私は一昨年の先生の講演会に行ったときに、ネットカフェのパソコンで視聴した。

 CIAやらKGBよりもスカル・アンド・ボーンズの方が気色悪いなぁという印象が強い。なぜに入会儀式で砂まみれの上から小便かけられなきゃならんのかと。あとは例の飛行機のシーンね。あれはトラウマになる。

 それにしても『13デイズ』も観たいが、もっと観たいのはデイヴィッド・ミラー監督、バート・ランカスター主演の映画『ダラスの熱い日』Executive Action(1973)である。『JFK』よりも前の作品で、研究家のマーク・レーンらが原案だ。なかなか入手出来ない。

 

 ● 『ファイナル・ジャッジメント』とイスラエル諜報工作機関モサド

 ジョン・F・ケネディに関連する情報を調べていると、彼がいたるところ敵だらけであり、理想を追求しようとすればするとほどに敵を増やしていき、暗殺当日には完全に包囲されていたことが分かってくる。

 当時世界の政治家でケネディを暗殺する動機・理由が無いのが明白なのは、ニキータ・フルシチョフやフィデル・カストロなどの共産圏の指導者とアイルランド人ぐらいではないか? ケネディがすることはみんなアメリカ軍産複合体による冷戦商売の邪魔以外の何物でもない。マフィアも下請けと麻薬商売の繁盛を続けたい。CIAも麻薬産業でマフィアと馴れ合い。

 ヴェトナム戦争の早期終結をされて困るのは共産圏ではない。かといってアメリカ国内要因「だけ」でなされたのかといえば、そうでもないようだ。国外要因ではソ連でもキューバでもなく、イスラエルが浮上してくる。

 先程も少し言及したが、マイケル・コリンズ・パイパーという人が『最終判決:JFK暗殺事件陰謀説におけるミッシングリンク』‘Final Judgment: The Missing Link in the JFK Assassination Conspiracy’という本を書いている。

「マイケル・コリンズ」と聞くとどうしても、アイルランド独立運動の軍事指導者にして国民的英雄のマイケル・コリンズが浮かんでしまう。『マイケル・コリンズ』Michael Collins(1996)という映画にもなったが、ややこしいので著者は以下、パイパー。著書の略称は『最終判決』とする。

 日本では太田龍(故人)監訳で『ケネディとユダヤの秘密戦争: JFK暗殺の最終審判』という邦題になってしまったが、ユダヤというよりも、イスラエル政府首脳とケネディ大統領が時間が経過するにつれ、どんどん深く対立していったということだ。イスラエルということは、実行者として取り上げられる組織は当然、Mossad モサドである。

 その動機・理由の決定打は、ケネディが国自体の存亡の危機に晒されているイスラエルに核保有を許そうとしなかったからで、辞職する前のダヴィド・ベン=グリオン首相とケネディは険悪極まりなかったという。

 後任はレヴィ・エシュコル首相で、やはり核が対立要因となる。だからイスラエルと中国が裏で核実験・核開発のために繋がる。先生の話によると、2011年の現在ともなると、中国はイスラム圏との連帯を重視して、イスラエルとの親密な繋がりは切れているとのこと。時代の趨勢である。だがイスラエルと手を切って敵と繋がれば、謀略事件を引き起こされることを覚悟しなければならない。まだまだ極東情勢も、アメリカとイスラエルにあれこれ悩まされるだろう。

 さて、このケネディ暗殺事件の国外要因について、『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた(上)』から、まとまって言及されている箇所を引用致します。

 

(佐藤裕一による引用始め)

 マイケル・コリンズ・パイパーが『最終判決』で提示しているもう一つの重要ポイントは、ケネディ暗殺があった当時、イツハク・シャミル Yitzhak Shamir(のちのイスラエル首相)がモサドの暗殺チームの長をしており、このチームがケネディ大統領暗殺用の殺し屋をSDECE(フランスの国家情報機関)から雇っていたという点だ。この情報は、一九九二年七月三日付のイスラエル紙「ハーレツ」でも裏づけられている。同紙は、「シャミルが暗黒街のテロリスト経験を経てモサドの工作員となり、一九五五年から六四年まで暗殺チームを率いていた」と報じている。さらに信憑性を与えるのが、一九九二年七月四日付の「ワシントン・タイムズ」紙で、「この秘密の暗殺チームは存在しただけでなく、敵とみなす人間やナチスの戦犯と疑われる人物への攻撃も実行していた」と報じている。覚えているだろうか。デイヴィッド・ベングリオンはJFKを“イスラエル国家の敵”と呼んでいた。ケネディは、彼らから“敵とみなされる人間”だったのである。

 イツハク・シャミルがフランスの秘密情報機関SDECEから殺し屋を雇っていたという事実を考えたとき、奇異に思えるのは、ジェームズ・ジーザス・アングルトン――前述したケネディ暗殺の背後にいたCIAの有力者――が一九六三年一一月二二日(暗殺の当日)の午後、誰といたのかという事実だ。その相手とは、ジョルジュ・デ・ラヌリアン大佐、SDECEの副長官である。二人はヴァージニア州ラングレー LanglyにあるCIA本部で、不手際があった際の被害対策に備えていた。実際、CIA、モサド、SDECEという三つの情報機関が三角形を成し、そのすべてがケネディ大統領暗殺の周りに集まっていた。三者は生け贄リー・ハーベイ・オズワルドがキューバやソ連と繋がっていることをすでに確認しており、“共産主義者との冷戦”という作り話をアメリカの報道機関に流せば済むと考えていた。

 これらの情報機関は、どのように首尾よくやってのけたのだろうか。こうした状況をよりはっきりさせるために、マイケル・コリンズ・パイパーが引用している、アメリカ空軍退役パイロット、フレッチャー・プラウティ大佐の言葉を紹介しよう。「暗殺計画で必要不可欠な処置の一つが、大統領の周囲の警備網を取り除く、もしくは突破することだった。誰も暗殺を指揮してはいけない、それはただ漠然と起きるのだ。起きてもよいと密かに容認することが、積極的な役割を果たす。大統領の移動中に実施される通常の警備対策を解除する、あるいは手薄にすることが可能な人間は誰か、これが重要な糸口なのだ」「訳者註:デイヴィッド・アイク著『究極の大陰謀』(本多繁邦訳、三交社刊)に典拠あり」

 ではあのダラスでの午後、ケネディ大統領の警備を取り消す方法や手段、動機を持ち合わせていたのは誰だったのか。それは、ロシア人でも、キューバ人でも、マフィアでもない。間違いなくCIAである。これで状況がますますはっきりして来た。それでは主流派のメディアにおいて、同様のヤラセである「九・一一テロ攻撃」のときの真実を隠蔽する方法や手段、動機を持っていたのは誰だろうか。寄せ集めのテロリスト集団か、それともやっぱりCIAか。これも一考に価する問題である。

「訳者註:二〇〇四年頃から、CIAの幹部高官たちは、辞任したジョージ・テネット長官を筆頭にして団結し、ブッシュ政権を操るネオコン派及びイスラエルの情報機関の米政権内での暗躍に対して、抗議し、ホワイトハウスと激しく対立するようになった。九・一一事件はホワイトハウスの地下のウォー・ルーム(戦争指揮室)から、チェイニー副大統領が指揮して米空軍を操って実行させたものであることが判明しつつある。リチャード・(“ディック”)チェイニーはデイヴィッド・ロックフェラー九三歳の寵臣である」

(佐藤裕一による引用終わり)『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた(上)』(ヴィクター・ソーン著、副島隆彦翻訳・責任編集、徳間書店刊 5次元文庫、2008年8月31日 初版発行、174頁から177頁から引用。ルビ等省略。読み易いように段落ごとに改行。文中の訳者註釈は副島隆彦先生の文章)

 

 背筋の凍る恐ろしいケネディ包囲網の話がイスラエルのモサドだけでなく、フランスのSDECE(現在のフランス対外治安総局、DGSEの前身)まで出てくる。当時のSDECE副長官であるジョルジュ・デ・ラヌリアン大佐は、日本語のネット・キーワード検索では「ジョルジュ・ドラヌリアン」表記で少し引っ掛かる程度だ。それからイツハク・シャミルとはイツハク違いのイツハク・ラビン(当時はイスラエル軍の高官、後に首相在任中暗殺)もケネディ暗殺の当日に、ダラスにいたのだという。

 別にアメリカとイスラエル2国が組めば、それだけで作戦は完結出来るんじゃないか。それをわざわざフランスにまで一枚噛ませたのは、情報機関同士間において後で脅迫文句を言わせないように、ヨーロッパ西側諸国までをも共犯関係(秘密の共有、弱みの握り合い)に引き摺り込みたいという意図があったのではないかと、私は勘繰ってしまう。

 CIAが単独極秘任務でおこなうようなシンプルで鮮やかな普段の「仕事」からは程遠い。ケネディ暗殺の疑いを逸らして各方面に向けるという、各種偽装工作が必要だったということを抜きにして考えても、あまりにもゴタゴタしてしまった暗殺作戦だったようだ。

 弟のロバート・ケネディ暗殺にまでモサドが出てくる。該当部分をパイパーの『最終判決』から引用する。

 

(佐藤裕一による引用始め)

 CIAとモサドが共同で創設した「サバク」はケネディ家とは敵対関係にあったイランのシャーの秘密警察として機能した。CIAとモサドのために、1968年にロバート・ケネディ上院議員の暗殺を実行したのはサバクである。長くCIA高官を務め、後に長官となったリチャード・ヘルムズは、シャーの親しい友人で、ジェームズ・アングルトンのパトロンでもあった。1978年にE・ハワード・ハントを陥れてJFK暗殺事件のスケープゴートにしようとした計画には、ヘルムズも関与した。後に、ウォーターゲート事件をもみ消そうとしたリチャード・ニクソン大統領は、JFK暗殺でのCIAの役割をもちだしてヘルムズとCIAを脅そうとした。デブラ・デイヴィスの著書『キャサリン・ザ・グレート(Katharine the Great)』を情報源の一部として、著者パイパーは、アングルトンのほとんど知られていないホワイトハウス内のCIAデスクが、ニクソンを大統領職から引きずり下ろすためにウォーターゲート事件を画策したと主張している。ニクソンが自分の中東和平案を阻止しようとしたイスラエル・ロビーに、公然と攻撃を開始しようと計画していたことを示す新しい証拠もある。

(佐藤裕一による引用終わり)『ケネディとユダヤの秘密戦争: JFK暗殺の最終審判』(マイケル・コリンズ・パイパー著、太田龍訳、成甲書房刊、2006年5月発行、50頁から引用。掲載写真資料の説明文章であるため文中指示カッコ省略)

 

 このヘルムズはCIAを退職した後に駐イラン大使となっている。
 
 アルルさんが主宰ブログサイトに書いていたように、イスラエル・コネクション(モサド)やフレンチ・コネクション(SDECE、OAS)などの国外要因(太田風表現ではユダヤ要因か)を強調しすぎるきらいがあるとはいえ、パイパーの『最終判決』がイスラエル暗躍追求の急先鋒にして最先端であることは間違いないようだ。

 こういった国外要因が映画『JFK』で触れられないことについても『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた(上)』に説明があるので引用する。

 

(佐藤裕一による引用始め)

 では、念入りに細工された暗殺計画の最終段階を実行する手段と能力を有していたのは誰だったのだろうか。その答えは、ジェリー・ポリコフ著の『撃ち合いによる政治』‘Govement by Gunplay’(シグネット・ブックス刊)の中にある。「ケネディ暗殺事件の隠蔽論がこれほど長く続いている理由は、われわれの報道機関が、言われるままに鵜呑みにするか、それとも事実を自主的に検証するかの選択を迫られたときに単に前者を選んだからにすぎない」

 アメリカ国民を混乱させたままにしておくために、メディアは想像出来るありとあらゆる仮説――ただしイスラエル関与説だけは除いて――を国民の間に広めて押しつけた。映画監督のオリバー・ストーンは、一九九一年一二月二〇日付の「ニューヨーク・タイムズ」紙でこう語っている。「一国の指導者が暗殺されたら、通常メディアは問いかけるものだ。この指導者と対立し、暗殺することによって恩恵を受ける政治勢力はどこかと」

 ところが、マイケル・コリンズ・パイパーが『最終判決』で指摘しているように、オリバー・ストーン監督自身もイスラエル真犯人説を追跡しようとしなかった。これはおそらく、彼の映画『JFK』のエグゼクティブ・プロデューサーがアーノン・ミルチャンという男だったからだろう。この男については、一九九二年五月一八日発行の「ネーション」誌でアレグザンダー・コックバーンが書いているが、「イスラエル最大の武器商人と目される人物」である。さらに、ベンジャミン・ベトハラーミは、ミルチャンのことを「モサドの一員」と呼んでいる。

(佐藤裕一による引用終わり)『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた(上)』(ヴィクター・ソーン著、副島隆彦翻訳・責任編集、徳間書店刊 5次元文庫、2008年8月31日 初版発行、194頁、195頁から引用。ルビ等省略。読み易いように段落ごとに改行)

 

 アーノン・ミルチャンという映画プロデューサーがギャリソンの遺族から民事で告訴されていることがパイパーの『最終判決』に書いてある。

 確かにオリヴァー・ストーンが今も生きていることを考えると、そういう裏の背景と保険があるんだと思う。他ならぬアメリカ合衆国において映画『JFK』を撮影した商業映画監督のストーンに、「裏の隠された繋がりや援助を一切断て」「常に全ての身の危険に晒され続けろ」というのは酷な要求だろう。

 映画を制作するのは現実に生きている人間達なのだから、しがらみや煩わしい関係性から完全に自由というのは幻想であろう。だからクレイ・ショー裁判を中心にギャリソンの視点で展開される映画『JFK』の主要人物と現実では、実際の重要度が異なる部分があるだろう。

 

 ● 「パーミンデックス」と企業の関与

 それから「パーミンデックス」(パイパーの『最終判決』邦訳ではパーミンデクス)とかいう、パンデミックみたいな名前の、全然聞きなれない不気味な国際企業が出てくる。今現在もあるのかどうかは分からない。Permanent Industrial Expositions(永久の産業展覧会?)を縮めてPermindex らしい。気色悪い。

 クレイ・ショーはパーミンデックス社の理事であった。『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』にはパーミンデックスについて書いてあるが、映画『JFK』には私が観た限りでは会社名は出てこなかったと記憶する。クレイ・ショー裁判の後になって分かった諸事実だからということもある。

 ジョゼフ・マッカーシーの弁護士であったロイ・コーンも、パーミンデックスのボードメンバーの1人だった。『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた(上)』からパーミンデックス言及箇所を以下に引用する。

 

(佐藤裕一による引用始め)

 メディアが黙殺した最も重要な要素は、CIA、モサド、ランスキー率いるマフィア、この三者の集合体の要になる存在、「パーミンデックス」だろう。パーミンデックスが何者かを説明しよう。パーミンデックス Permindex 社とは、ローマに拠点を置く武器製造業者で、他と同様マネー・ロンダリングに手を染め、CIAやマイヤー・ランスキー、イスラエルと繋がりがある。

『最終判決』のマイケル・コリンズ・パイパーのようにこの問題を詳細に調べることはわたしには無理だが、ケネディ暗殺事件におけるこの兵器製造販売組織の役割について簡単に説明しよう。パーミンデックスの取締役会長は、モサドの創設とイスラエルの建国に関わった二人の大物のうちの一人、ルイス・M・ブルームフィールド少佐であり、パーミンデックス株の五割を所有していた。ブルームフィールドはまた、J・エドガー・フーバー長官に請われてFBI内の悪名高きDivisions 5 (第五局)に雇われたことがある。そのうえ、ブロンフマン・ファミリーの表看板にもなっていた。前述(一八四頁)したように、ブロンフマンはジョー・ケネディと同様酒の密売人であり、ランスキーの犯罪組織を通じてそのシーグラム酒類帝国を築いた一族である。

 もう一人のパーミンデックスの主要株主は、ジュネーブにBCI(国際信用銀行)という銀行を設立したティボー・ローゼンバウムだ。ローゼンバウムはモサドの財務備品局長でもあった。一方で、彼の銀行BCIはマイヤー・ランスキーの資金洗浄を担っていた。BCIはモサドと当然親密な繋がりがあり、ローゼンバウムは「イスラエル国家のゴッドファーザー」と呼ばれていた。

 イスラエルという国が、デイヴィッド・ベングリオンや今挙げた人間たちにとっていかに重要であるか。また、母国の存続に関して彼らがいかに危機感を覚えていたかを考えると、こうした勢力(モサド、CIA、ランスキーのマフィア)がすべてパーミンデックスの周りに集まっていたという事実は、決して偶然ではない。それぞれがパーミンデックスと直接繋がりを持ち、それぞれの理由でケネディの死を望んでいた。にも拘わらず、アメリカのメディアが追った先は、リー・ハーベイ・オズワルドのような能無しが二〇世紀最大の犯罪をやってのけたという、狂った単独犯人説である。まったくお話にならない。

(佐藤裕一による引用終わり)『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた(上)』(ヴィクター・ソーン著、副島隆彦翻訳・責任編集、徳間書店刊 5次元文庫、2008年8月31日 初版発行、196頁、197頁から引用。ルビ等省略。読み易いように段落ごとに改行)

 

 パイパー『最終判決』の指摘では、このモサドのフロント企業であるパーミンデックスが、イスラエル首脳の支持(指示)でJFK暗殺に資金提供などの協力支援をしたということだ。映画『JFK』でもガイ・バニスターのお得意様がクレイ・ショーである様子が描かれているが、さらにパーミンデックスからの援助があったのであろう。パイパーの『最終判決』から該当箇所を引用する。

 

(佐藤裕一による引用始め)

 JFK暗殺事件を調査したニューオリンズの地方検事ジム・ギャリソンは、国際貿易会社役員でCIAの「資産」でもあったクレイ・ショーを暗殺の謀議に加わったとして起訴し、ショーがモサドのダミー会社であるパーミンデクスの理事を務めていることを突きとめた。ギャリソンは明らかに最後にはモサドが暗殺に関与したと結論づけていたが、その疑いを言葉にしたのは未発表の小説のなかだけだった。パーミンデクスの会長はモントリオールの法律家、ルイス・M・ブルームフィールド。カナダのイスラエル・ロビーを代表する人物で、酒造業界の大物サム・ブロンフマンの古くからの手先だった。ブロンフマンはイスラエルの重要な支援者であるとともに、ランスキーの犯罪シンジケートでも高い地位についていた。

 ニューオリンズのCIA契約工作員のバイ・バニスターとデイヴィッド・フェリーは、パーミンデクスのクレイ・ショーと結託し、フランスの秘密軍事組織OASとシャルル・ドゴール大統領暗殺計画を練った。この計画もパーミンデクスを通して資金を得ていた。ショー、バニスター、フェリーの3人は、リー・ハーヴェイ・オズワルドを「親カストロ」の扇動家として仕立て上げる工作も手がけた。バニスターの「右翼」の扇動家ケント・コートニーとの結びつきを、バニスターと共謀家たちの右翼傾向の証拠と指摘する向きもあるが、こうした研究者が見落としているのは、コートニーもまた熱心なイスラエル支持者だったことである。写真下はコートニーがソ連の拡大主義への防波堤としてイスラエルを賛美した1970年の記事。コートニーのイスラエル観はCIA内のモサドの連絡係、ジェームズ・アングルトンの考えと完全に合致していた。

(佐藤裕一による引用終わり)『ケネディとユダヤの秘密戦争: JFK暗殺の最終審判』(マイケル・コリンズ・パイパー著、太田龍訳、成甲書房刊、2006年5月発行、34頁から引用。掲載写真資料の説明文章であるため文中指示カッコ省略)

 

 このようにパイパーによれば、執念の人であるジム・ギャリソン地方検事でさえも、イスラエルとモサドによるケネディ暗殺関与を掴みながらも公式には言い出せず、避けて通ったということだ。

 ただし、クレイ・ショー裁判が敗訴に終わった後になってから判明してしまったショーの背後関係については、『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』の「6 クレイ・バートランドことクレイ・ショー」に諸々の事実を記述しており、その際にフランス秘密軍事組織であるOASについては言及されてある。該当箇所を引用させていただく。

 

(佐藤裕一による引用始め)

 足を使って忍耐強く調べた結果、“クレイ・バートランド”が実際にクレイ・ショーであることがあきらかになった。クレイ・ショーといえば、インターナショナル・トレード・マート社の理事であり、ニューオーリンズではよく知られた名士だった。しかし、当時の私たちは、クレイ・ショーがニューオーリンズにおけるイメージよりもはるかに有力な大物であることを知らなかった。やがて、ショーがCIAの工作員として国際的役割を担っていたことを知るのだが、それはショーの裁判には間に合わなかった。知っていれば大いに助かったと思われるのだが。ショーはCIAの工作員として、ローマでファシズム復活を画策していた。彼のこの秘密工作活動はイタリアの新聞にすっぱ抜かれた。私たちにその記事を送ってくれたのは哲学者バートランド・ラッセルの秘書ラフル・ショーンマンである。彼は調査のごく初期からの協力者の一人である。

 それらの記事によれば、ある時期、独自の外交政策を展開していたCIAは、早くも一九六〇年代初めにイタリアであるプロジェクトを開始した。そのための組織であるサントロ・モンディアール・コメルシアール(世界貿易センター)は、はじめモントリオールで設立され、一九六一年にローマに移された。理事の一人にニューオーリンズのクレイ・ショーが名を連ねていた。
(中略)

 しかし、一九六七年になって、イタリアの新聞がサントロの理事会のメンバーをくわしく調べてみると、ひじょうに奇妙な構成であることが判明した。理事の一人、グティエレス・ディ・スパダフォロは、イタリア最後の王、ウンベルトを出したサヴォイ家の一員だった。スパダフォロは、武器や石油関連の株を大量に所有する有数の大金持ちで、かつて、ベニート・ムッソリーニのもとで農務次官を務めたこともあった。ニュールンベルクで裁判にかけられたナチの大蔵大臣ヤルマール・シャハトとは義理の娘を介して縁戚関係にあった。

 サントロの理事のなかには、かつてのイタリア王室の一族の弁護士を務めるカルロ・ダメリオや、追放されたハンガリーの元首相で、ハンガリーの主たる反共政党の元党首でもあったフェレンク・ナジがいた。イタリアの新聞によれば、ナジはパーミンデックスの総裁でもあった(パーミンデックスはサントロ・モンディアール・コメルシアールから派生したもので、表向きは恒久的展示場運営のための財団ということになっていた)。そして、彼はヨーロッパにおけるファシスト運動にひじょうに力を貸している、ということだった。そのほかには、ジュゼッピ・ジジオッティという名の理事がいて、彼は<市民軍のための全国ファシスト連合>とかいう団体の総裁だった。

 サントロの主要株主の一人はL・M・ブルームフィールドという少佐だった。彼はモントリオールに住んでいたが、国籍はアメリカで、CIAの母胎となった戦略情報局(OSS)の元エージェントだった。

(中略)

 一九六九年にパリス・フラモンドが著した『ケネディをめぐる陰謀』によれば、サントロは、イタリアのファシスト、アメリカのCIA、その他同様の団体を包含するヨーロッパの準軍事的右翼を代表するものであるという。それは「金の流れるルートを覆う外殻のごときものであり……その資産の源や流れる先は誰も知らない」とフラモンドは書いている。

 この組織がシュライン会や4Hクラブと性格を異にすることは、イタリア政府にもすぐにわかった。一九六二年に、イタリア政府はサントロとパーミンデックスを、破壊情報活動のかどでイタリアから追放した。

(中略)

 これら二つの団体のたどった道を、《ル・ドゥヴォアール》はこう説明している。「いずれにせよ、サントロ・コメルシアールとパーミンデックスはイタリア政府やスイス政府から睨まれることになった。これら二つの団体はその潤沢な資金の源をあきらかにすることを拒否したが、実際に商取引をしているようには思われない。両団体は一九六二年にスイス及びイタリアから追放され、ヨハネスブルクに本部を移した」

 パエサ・セラ紙はクレイ・ショーのサントロをこう評価している。「(極右組織に深い関わりをもつ人物たちが理事に名をつらねるこの団体は)……非合法の政治、情報活動のためのCIAの資金を秘密裏にイタリアに流すために……CIAによって設けられたものである。理事にクレイ・ショーおよび(OSSの)元少佐ブルームフィールドが実際のところいかなる活動をしているかは不明である」

 パエサ・セラ紙がサントロに関してこんなことも書いている。サントロは「反共を共通要素とする、ある意味でいかがわしい紐帯で結ばれた人々の接触点である。彼らの反共思想は強烈なものであり、ケネディをはじめとして、東西両陣営間の理性的関係のために闘った人々を呑み下してしまう」この辛辣な表現は、これらの団体の母胎ともいうべきCIAにもあてはまるものだろう。

 クレイ・ショーが同じく理事を務めていたパーミンデックスに関して、イタリアの新聞は、フランスの秘密軍事組織(OAS)の反ドゴール運動にもひそかに資金供与をしていたと暴露している。OASはアルジェリア独立を支持したドゴール大統領に反対し、何度か彼の暗殺を企てたとされている。一九六七年の時点でそのことを知っていたら、私たちはルイジアナ州ホーマの飛行場に出かけていたことだろう。ガイ・バニスターの工作に加わっていたデイヴィッド・フェリーその他の男たちは、その飛行場で、かつてCIAが暗殺を企てていたOASに提供した武器、弾薬をシュランベルジェ保管庫から回収したのだ。ショーの裁判において彼とCIAとの関係を明確にできれば、私たちは有利に闘えただろう。しかし不運にも、人員と予算がかぎられており、各方面の手掛かりを追わなければならなかったために、私たちはこの重要な情報を、もっとも必要なときに入手することができなかったのである。

(佐藤裕一による引用終わり)『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』(ジム・ギャリソン著、岩瀬孝雄訳、早川書房刊 ハヤカワ文庫NF、一九九二年二月十五日 発行、一九九二年四月十六日十六 十八刷、149~153頁から引用。註番号等省略。読み易いように段落ごとに改行)
 

 他にもオズワルドが反共右翼と親しい関係を築いていたことを書いた「4 オズワルドと白系ロシア人社会」において、ジョージ・ド・モーレンシルトがダラス石油クラブの一員であり、シュランベルジェ社社長のジーン・ド・メニルと親しい友人でもあるが、シュランベルジェ社もCIAと関係が深いことを指摘している。

 ショーの背後にあるパーミンデックスという企業にはケネディ暗殺に資金や物資、人員提供における支援協力を惜しまず、万全の体制を敷くという邪な目的があることは間違いないだろう。設立時点からしてそういう会社であったわけだ。

 

 ● 「無実」と「無罪」、「有実」と「有罪」

 私は直接この刑事裁判、通称クレイ・ショー裁判(エドワード・アロイシウス・ハガティ判事、被告側主任弁護士はアーヴィン・ダイモンド)を傍聴したわけではないし、裁判記録を精密に検査したわけでもない。

 しかし返す返すも残念なことではあるが、実在の人物であるジム・ギャリソン地方検事(主演:ケヴィン・コスナー)を中心とした視点で、制作側がギャリソンよりに有利な印象をもって展開させる映画『JFK』の法廷の様子でさえ、列挙された証拠のことや、さらには『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』の記述内容を考えるとなると、クレイ・ショーを共謀罪で有罪とすることは出来ない。

 ショーを有罪としてしまうと「上」にまで共謀と関与の責任がのぼっていくから、ということだけの事情で無罪とされたわけでもないようだ。無関係の他国民である私も、陪審員団の評決を支持せざるを得ない。ほとんどが当時の目撃証言ばかりであり、物証が弱すぎて立証とするには到底足りない。被告側弁護士がどこかと仕組んで仕掛けたのであろう信用失墜作戦は考慮しないとしてもだ。あれではたとえ私が陪審員の一員であっても、無罪意見だろう。近代法治国としてそれが当然で正当(妥当)な判断である。映画ラストシーンで陪審員の1人が、

「我々も共謀はあったと思っています。しかし、クレイ・ショーがその一味であったとは考えられません」

 という見解を示している。証拠不十分で無罪だ。この「無罪」は「無実」ということと関連はしているが完全な同義ではない。以前の投稿で書いたので繰り返さないつもりだったが、やはり何度でも書いてしまう。

 当掲示板投稿[121]「非有罪状態」で文章を転載させて頂いたが、古市さんというかたの慧眼に賛成する。つまり、ショーは「非有罪」(有罪に非ず)ということだ。”not guilty” ノット・ギルティ判決を下されたのだ。そして、「それでいい」のである。

 この古市さんによる英語と日本語の違いと、そこから発生するものの見方・捉え方・法に対する認識の違いの発生に関する発見は重大極まりない! 私も遅ればせながら気付いた。

 後になって判明した諸情報を、もっと早く入手出来ていれば、裁判前に手元に揃っていれば、その後の展開も違うものに成り得たただろうに……。ギャリソンの無念は察して余りある。証拠不十分の元凶はウォーレン委員会の杜撰調査であることは言うまでもない。なにせ総元締め達のお仲間だからどうしようもないのだ。最初から報告書を杜撰に作るように決定されていたのだから。

 それでも。どんなに怪しくても、本心ではこの人は犯行に及んでいる(有実)だと信じていても、証拠不十分であれば「非有罪」としなければならない。「非有罪」は結果的に「無罪」と同じことである。「そうであっていい」のである。ショーは「非有罪判決」が下った以上は自由の身にならなければいけないのである。

「有実」か「無実」かということは、本当は分からないことが多い。この「有実」という言葉が日本語に無かったということが、日本人の法意識の前近代性を示し、同時に抜け落ちている欠陥部分を露呈しているといえよう。「無実」と「無罪」、「有実」と「有罪」。この区別が明確についているのであれば、結果的には「無罪」と同義となる「非有罪」を持ち出さなくてもよいのだが、日本の現状ではそうもいかない。

 ある事実が有ったか無かったかということは、最後はそれを信じるか信じないかということであり、何人であっても自分については「良心の自由」があるから勝手に思い込んでいい。誰であっても他人の内心に干渉して踏み込むことは許されないのである。あいつこそは真犯人であると決め付ける判断そのものは個人の自由だ。

 翻って裁判官や陪審員が法によって示す判断は、予め「有罪(と量刑)」か「無罪(非有罪)」か、ということに限定しなければならない。ことに刑事訴訟は人間の「身体の自由」を制限し拘束するものであるから当然である。犯行事実として「有実」であろうという判断に足る証拠を法廷に提出するのが検事の役割である(最重要なのは自白や証言ではなく物理的証拠だろう)。裁判官や陪審員の役割ではない。被告に反省や謝罪など強制してはならない。

 私、佐藤裕一は犯行現場にいたわけではない。自分の目で目撃したことすらないクレイ・ショーという人物が「有実」であると判断している。自分自身での現時点で考えての答え、自分の中での判定(ファイナル・ジャッジメント)という、ただそれだけのことだ。

 その上で、ショーに「無罪(非有罪)」評決が下されたことについて、裁判前に証拠が揃わなかったことを本当に残念に思うのと同時に、この評決は「素晴らしい」と感じている。アメリカが「羨ましい」と率直に思う。それは私が日本人で日本国の現状を認識しているからだ。映画『JFK』から日本人が学ぶべきことはたくさんある。

 ここに書いたことが分かる脳ミソがあるか? みんな分かっているからわざわざ言うまでもないこと、あまりにも当たり前のことだから誰も話題にもしないだけのこと、か? 分かっていれば果たして今現在の日本はこんな国になっているか。このままズルズルといつまで経っても理解出来なければ、日本は終わりだよ。

 投稿『JFK』JFK(1991) 5.正義の問題と秩序の問題

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2011/01/27 09:00

【131】『JFK』JFK(1991) 3.トリーズンとレジサイド

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 当掲示板への私の投稿[99]「『JFK』JFK(1991) 1.映画から見えてくるアメリカと日本の共通点」及び[100]「『JFK』JFK(1991) 2.映画から見えてくるアメリカと日本の相違点」から年をまたいでだいぶ経過してしまいましたが、映画『JFK』について書きます。

 以降、「だ・である」口調の文体で書きます。ネタバレ注意。

[99]『JFK』JFK(1991) 1.映画から見えてくるアメリカと日本の共通点
https://www.snsi.jp/bbs/page/2/view/1029

[100]『JFK』JFK(1991) 2.映画から見えてくるアメリカと日本の相違点
https://www.snsi.jp/bbs/page/2/view/1030

 

 ● ややこしいアメリカの地名と人名の整理

 一旦、ここの旧掲示板の[182]の林ピンポンパン氏投稿文章を転載貼り付けする。

 

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

[182] { 投稿者:林ピンポンパン 投稿日:2002/04/30(Tue) 02:43:34

「アメリカの秘密」を再読して気づいたこと
ケアレスミスと誤植がある
1 29ページ「イタリア共産党の大物最高幹部であったアンドレオッチさえも、マフィアとのつながりが公然化したのである」   アンドレオッチはキリスト教民主党の元首相で
82年にマフィア関連の裁判にかけられている 共産党とマフィアが無縁なわけはないが
2 51ページ「実際に犯行の指揮をを行ったのは、ダラス市長の弟で、FBIのエドガー・フーバー長官の片腕だったガイ・バニスターという男である」JFKにCIA副長官を解任されたチャールズ・キャベルの弟がダラス市長アール・キャベルというのと混同してる
バニスターはキャベルと血縁関係はない
3 111ページ 「他にもヴァルド派やヨキアム主義者などの異端の宗派がある」
これは単に誤植でヨキアムではなくヨアキムである
この機会にヨアキムを検索したらけっこうあってビックリ

4 167ページ 「彼が正式に所属したのはコミンテルン(=共産主義インターナショナル。これを第一インターナショナルという)…」
これは第一ではなく第三の誤植です

大柄な理解をという副島先生の趣旨を補足する者です。 

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

 

 先生の『アメリカの秘密』と『ハリウッドで政治思想を読む』の2冊を文庫化したものが『ハリウッド映画で読む世界覇権国アメリカ(上)(下)』である。私は最初に文庫に出合って熱心に読んだ方なので、前2冊についてはあまりなじみがない。

 ただ、林氏指摘2のガイ・バニスターについて書いてある文章については、『ハリウッド映画で読む世界覇権国アメリカ(上)』においても、かなりややこしくて分かりにくい書き方となっている。

 私も最初に読んだ際に、何が何だか人物の相関関係がよく分からなかった。私が持っているのは初版なので、後の版では違っている可能性もあるが、その部分と前後を以下に引用する。

 

(佐藤裕一による引用始め)

 ケネディ暗殺の真犯人は誰か。それは、このアイルランド系のリベラルな若造に国の舵取りを任せていてはソビエト共産主義との戦いに敗れてしまうという危機感を抱いた当時の「軍産複合体」に属する指導者たちすべてである。おそらく数百人のアメリカ支配層のトップが、事件当時から真実を知っていたであろう。実際に犯行の指揮を行ったのは、ダラス市長アール・キャベルEarle Cabellの兄で、FBIのエドガー・フーバー長官の片腕だったチャールズ・キャベルCharles Cabell(将軍、FBI副長官)の、その部下だったガイ・バニスターWilliam Guy Banisterという男である。この男の直属の部下たちが、警察官姿で警備の警察官の中に紛れ込み、至近距離からケネディを撃ち殺したのだ。このことは、原作となったジム・ギャリソンの生涯を賭けての執念の調査報告『JFK――ケネディ暗殺犯を追え』(ハヤカワ文庫、一九九二年)に、写真証拠付きですべて詳しく書かれている。もし本物の政治知識人であるなら、日本人でも必ず読むべき本である。

(佐藤裕一による引用終わり)『ハリウッド映画で読む世界覇権国アメリカ(上)』(副島隆彦著、講談社刊 講談社+α文庫、2004年4月20日 第1刷発行、53、54頁から引用、ルビなど省略)

 

 引用文中に登場する4人の暗殺当時における地位・役職を順番に整理していくと、以下のようになる。

  アール・キャベルEarle Cabell (October 27, 1906 – September 24, 1975)
  当時、現役のダラス市長。キャベル弟。

  ジョン・エドガー・フーヴァー(John Edgar Hoover, 1895年1月1日 – 1972年5月2日)
  当時、現役のFBI長官。

  チャールズ・P・キャベルCharles Pearre Cabell(October 11, 1903 in Dallas, Texas ? May 25, 1971 in Arlington, Virginia)
  当時、既にCIA副長官を解任されている。空軍大将。キャベル兄。

  ウィリアム・ガイ・バニスターWilliam Guy Banister (March 7, 1900?June 6, 1964)
  当時、私立探偵業。元ONI(海軍情報部)、元FBIシカゴ支局長、元ニューオーリンズ市警副本部長、CIA工作員?

 日本人にとっては人名や地名がこんがらがったりして、ややこしいところではある。有名なフーヴァー以外は投稿時点で日本語ウィキペディアが編成されておらず、英語版ウィキペディアを参考にした。キャベル兄弟はカベルの方がよく検出されるが実際の発声はキャベルが近い。

 チャールズ・キャベルについても林氏の指摘が正しいようで、彼が「FBI副長官」にも任命されたという経歴の記録を私は見付けられなかった。フーヴァーの片腕というのは誤植というより事実誤認であろう。彼の役職はdeputy director of the Central Intelligence Agencyであるから「CIA副長官」なので、正しくはアレン・ウェルシュ・ダレスCIA長官の片腕ということである。

 ところで便宜上「副長官」としたが「次官」「局次長」でも同じ。最適な日本語訳は「副局長」だろう。そもそもCIAが中央情報局でFBIが連邦捜査局だからトップは「局長」が相当するだろう。国務長官や国防長官のように、合衆国大統領権限の継承が出来る「長官」というわけではない。まぁいずれも日本語翻訳表記側の整合性の問題である。一部だけ表記を変えたりするとかえって混乱を招くので、以後も「長官」「副長官」で統一する。

 CIA長官アレン・ダレスの兄がジョン・フォスター・ダレスで国務長官を努めたが、戦後日本との関わりで重要人物である。なんにせよ私のような初心者の勉強・理解の第一歩は、地名のダラス市(Dallas)、人名のダレス兄弟(Dulles)、そしてキャベル兄弟をごっちゃにしないことである。

 それから先生が暗殺の現場責任者と指摘しているガイ・バニスターは、一見しただけで何ともすごい経歴の持ち主である。バニスターは何の背景もないような反ケネディ・反カストロの単純思想右翼とは違う。私立探偵業を営んでいるが実状は腐ったピンカートンみたいなもので、諜報工作機関すらが自分達では直接したくないような汚くて薄汚れた仕事を下請けとして引き受けていたようだ。

 ケネディ大統領によってCIAが睨まれ、トップのクビは切られ、解体論まで出ていたのだから、各機関の依頼による下請け作業の需要が多くあったご時勢というところであろう。それでもおおもとであるCIAが解散してしまったら元も子もない。反カストロ派の亡命キューバ人達の戦士育成と経営などは慈善事業ではなく、依頼元や取引相手がないと商売として成り立たない。

 この手の仕事は性質上、マフィアが率先して依頼するわけではない。マフィアと反共亡命キューバ人のみでキューバに攻め込んでカストロ政権を打倒出来るはずもないし、暗殺も悉く失敗している。

 政府機関が主導しなければ何も始まらないということだ。ギャリソン自身が元FBI特別捜査官であったから、こういうことのカラクリや手の内が分かっていたと先生も書いている。CIAは、FBIと管轄違いで国内での工作活動は禁止されている。もちろんただの法的建前である。

 

 ● さらに紛らわしい苗字「ハント」とジョン・バーチ協会(JBS)

 映画『JFK』ではガイ・バニスターがジョン・バーチ協会会員であるという台詞が有った。英語版ウィキペディアではメンバーリストに載っている。このジョン・バーチ協会、ケネディ暗殺と全くの無関係ということもない模様である。

 2010年11月28日(日)の定例講演会で須藤喜直研究員の話題に出てきた『五月の七日間』Seven Days In May(1963)のジェームズ・スコット将軍のモデルだという、エドウィン・アンダーソン・ウォーカー少将も会員リストにある。この人は極右思想のゆえにか、オズワルドに暗殺されかかったという話がある。そんなに言われるほどの危険な軍国主義者だったのか疑問であるが。

 ケネディ嫌いの石油王だったH・L・ハントHaroldson Lafayette Hunt, Jr. (February 17, 1889?November 29, 1974)(ハロルドソン・ラファイエット・ハント)も会員リストにある。

 H・L・ハントの子供14人(!)のうちの息子2人がネルソン・バンカー・ハント(会員)とウィリアム・ハーバート・ハントで、銀の買い占めと市場価格操作の失敗で有名な「ハント兄弟」だということだ。ジョン・バーチ協会会員のジャーナリストで『それを陰謀とはもはや誰も呼ばない』None dare call it conspiracyの著者であるゲイリー・アレンはネルソン・ハントのアドヴァイザーであり、アラバマ州知事ジョージ・ウォーレスの大統領選挙時のスピーチライターでもあったそうだ。

 私はハント兄弟が引き起こした事件の経緯や詳細を知らないが勝手に妄想するに、誰かにそそのかされて手を出してしまって、足を引っ掛けられたんじゃないのかな。親父の代では実力者だから騙しにくくて潰しにくかったろうが、息子達の代あたりでひとつ成り上がりを叩き潰しておく。ケネディ暗殺とは関係ない話だが、ケネディ一族の親子関係とその末路から類推して考えても、ありそうな話だと思うんだが。

 H・L・ハントと同じく、右翼でテキサスの石油王であるクリント・W・マーチソンからリンドン・ジョンソンが「支援」を受けていたという。それから映画『ニクソン』に描かれているようにリチャード・ニクソンも暗殺前日にダラスに来ているから、怪しまれるのも分かる。ニクソンとフーヴァーは、この石油富豪や財界人達も会員ではないかと電話で話し合うシーンがある。

 ニクソン主犯説はこの辺から出ているが、映画ではニクソンが彼等から仄めかされたという程度であり、それがストーンの見解なのだろう。ジム・ブレイドン(ユージン・ヘイル・ブレイディング)やジャック・ルビーが当時石油富豪のハント家を訪問しているのも、ギャリソンの見解では偽装工作である。H・L・ハントが「世間から適度に怪しまれる」作戦に協力していたのかどうかは不明だ。

 さて、この石油王H・L・ハントと、石油王ではない方のハントである、スパイ小説家で元CIA工作員・ホワイトハウス職員だったウォーターゲート事件の指揮官エヴェレット・ハワード・ハントEverette Howard Hunt, Jr. (October 9, 1918 – January 23, 2007)(一部エドワードとする表記を見掛けるが英語版ウィキペディアでもエヴェレット)は別人であり、日本ではどちらも有名人というわけでもないので、より混同しないように注意が必要である。両人ともにケネディ暗殺に関与説があるが『JFK』には名前も出てこなかったと記憶する。

 ハワード・ハントは映画『ニクソン』の方に出てくるのだが、ニクソン政権を脅してウォーターゲート事件命令に関する口止め料を支払わせる様子が描かれている。現職のアメリカ合衆国大統領をゆするなどというのは尋常な行為ではない。奥さんは飛行機事故死(?)している。

 ハワード・ハントもケネディ暗殺に関しての名誉毀損裁判をしていたようで、リチャード・ヘルムズから切り捨てられているようだ。『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた(上)』にはO・J・シンプソン裁判に世間の注意を逸らされたのだという先生の解説がある。

 CIAの中級幹部クラスであったクレイ・ショーにしてもそうだが、ハワード・ハントも疑惑と裁判にかけられるという歴史的責任を押し付けられる役回りをさせられたようである。彼等より下のガイ・バニスターやデイヴィッド・フェリーといった現場の下級幹部クラスは、証言台にすら立たせないようにもっと前に死んでいる(消されている)。

 ジョン・バーチ協会では創業者のロバート・ウェルチ(ジュースのやつ)、大韓航空機撃墜事件のラリー・マクドナルド下院議員などが著名な指導者である。愛国的な反共右翼の組織ということだが、KKK(クー・クラックス・クラン)のような単純な白人至上主義団体というわけではないらしい。

 ジョン・バーチ協会シンパのジョゼフ・マッカーシー上院議員はケネディと仲が良い(赤狩りの際の相棒弁護士であるロイ・コーンも会員リストに名前がある)。でもやはりH・L・ハントやエドウィン・ウォーカー少将、バーナード・ワイズマン、ガイ・バニスターなどのような会員もいるわけで、一様ではない模様。あんまり良い話を聞かないせいか、個人的にはこの組織に好印象を抱かない。

 このようにケネディ暗殺に関連して、ジョン・バーチ協会会員の名前が幾つも挙がってくるが、当時反共右翼の政治結社としてはそれなりの規模だったろうから、矯激な南部保守派で構成員が実際に何人か関わっていたとしても別に不自然ではない。

 組織主導的な関与は特にみられないと思う。「だからこそ」わざと陰謀の噂を、それこそ陰に陽に広めるのに好都合である。私が総元締めの支配者だったら、必ずこういう怪しげな組織に迷いなく罪と責任をなすり付ける。真っ先に彼らのような人達が疑われるように仕向ける。都合が良いことばかりだし、何の遠慮もいらないからだ。

 だから陰謀理論家・怪しい陰謀論者と呼ばれる人々も多いが、それは反ワシントン・反ニューヨーク金融財界派であると考えれば分かり易い。真実追求派と言いかえてもいいだろうけれども、世界の支配者達にとっては思惑通りに動かずかえって邪魔な行動をしてくるような都合の悪い右翼は目障りであり、極右のレッテル貼りで排除の対象となる。

 大き過ぎて簡単に排除出来ない団体は共和党のように内部から組織を変質させるのも手である。転向者(ネオコン)を取り込んでいくつもりが逆に取り込まれてしまい、いつの間にかすっかり主導権を奪い取られて乗っ取られるわけだ。共和党は規模が大きいしアメリカ政治において最重要なので、ネルソン・ロックフェラー御自ら乗り込んでフォード政権の副大統領にまでなってしまった。

 

 ● 『宝石原石文書』とマフィア主犯説(オナシス主犯説、ランスキー主犯説)

 ブルース・ポーター・ロバーツという作家が地下出版した『宝石原石文書』The Gemstone Fileという本について、ヴィクター・ソーン著『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた(上)』では関連本について「第九章 ジェラルド・キャロル著『プロジェクト・シーク―オナシス、ケネディ、そして宝石原石文書』‘Project Seek: Onassis, kennedy and Gemstone Thesis’概観」で主に言及されている。

 キャロル・キグリー(キグレー)の『悲劇と希望』の原文と同じで、おそらく『宝石原石文書』関連も全て未邦訳だろうから、私はこの章からしか内容をうかがい知ることは出来ないが、ギリシャの海運王アリストテレス・ソクラテス・オナシス(ほんと凄い名前だなぁ。長いので以下オナシス)の主犯説であり、マフィア主犯説の1種である。

 オナシスがマフィアの頭目であるということは公然たる秘密ということで納得出来るのだが、ハワード・ヒューズ誘拐・替え玉・本人麻薬漬け死亡説は、どのぐらいの根拠や信憑性があるのか確かめようもなく判断に苦しむところだ。ほかにもポルノ雑誌「ハスラー」のラリー・フリントが銃撃され半身不随となった本当の理由は、彼が暗殺の真相解明に賞金を出したからだという。

『宝石原石文書』の筋書きは他の大方のマフィア主犯説と同様である。ケネディ兄弟達の父でありアイリッシュ・マフィアであるジョゼフ・パトリック・“ジョー”・ケネディ・シニア(Joseph Patrick “Joe” Kennedy, Sr.、1888年9月6日 – 1969年11月18日)(以下ジョゼフ)が、マフィアの協力によって息子達をホワイトハウスに送り込めた。

 ところが当の息子達はマフィアに見返りの約束を果たすどころか、かえって逆に犯罪シンジケートの取締りを強化してきた。当然ながらマフィアにとっては契約反故であり裏切り行為となるから逆上した。キューバ革命によって締め出され麻薬市場やカジノも閉鎖される一方で取り戻されなかった。確かにマフィア連中が激怒しない方が不思議である。

 ケネディ暗殺について、政府公式見解であるオズワルド単独犯行説に次いで有力というか、まことしやかに喧伝されたのがマフィア主犯説であろう。オズワルドを殺したジャック・ルビーにしてからがマフィアの一員だし、こういった噂が広まる背景がある。

 ジャクリーン・リー・ブービェ・ケネディ・オナシス(Jacqueline Lee Bouvier Kennedy Onassis, 1929年7月28日 – 1994年5月19日)がオナシスと再婚しているということもある。ジャッキーについては暗殺を事前に知っていたかどうか色々な説がある。ソーンは事前に時期以外は知らされていたとしていて、事前にオナシスとヨットで二週間過ごしたといっているが、先生の『ハリウッド映画で読む世界覇権国アメリカ(上)』ではジャッキーが葬式でとった毅然とした態度のことを書いている。ところがそのケネディ家で会葬者の相手をしたのもオナシスだということだ。

 そうするとマフィア説も現実味を帯びてくる。シカゴのアル・カポネやラスベガスを作ったバグジー・シーゲル、アメリカのイタリア系マフィア最大の大物であるラッキー・ルチアーノなどは強制送還先のイタリアにてケネディ暗殺の前に死亡しているので名前は挙がらないが、サム・ジアンカーナ(ジュディス・エクスナーはJFKと彼の愛人)、ジミー・ホッファ、サントス・トラフィカンテ、カルロス・マルチェロ(マルセロ)、ミッキー・コーエン(マリリン・モンローの自殺偽装に関与?)、ジョニー・ロゼリ(ロッセリ)、チャールズ・ニコレッティ、フランク・コステロなどの大小様々なマフィアの名前が出てくる。

 そしてケネディ暗殺コンスピラシーの筆頭はユダヤマフィアの頭目であるマイヤー・ランスキーだ。この人がルチアーノ亡き後、実質上マフィアの頂点だということは分かるのだが、そうだとするとオナシスとランスキーの力関係や上下関係がよく分からない。ランスキーはイスラエル支持派ユダヤ人として骨の髄までジョゼフはじめケネディ一族嫌いだということだ。オナシスはギリシャ人だろうから、共産主義が嫌いだったとしてもイスラエル支持派である理由や動機はないだろう。

 ヴィクター・ソーンの一部記述や『宝石原石文書』関係ではマフィア主犯説、もしくはオナシス主犯説なのであるが、ギャリソンや先生はそれを採らない。私も同じである。『宝石原石文書』は事件の一側面を突いているものの、いくら世界の海運王とはいってもオナシスのような外国人扱いの人物が「最高意思決定者」ではケネディ暗殺は無理がある。

 オナシスやランスキーにしても、その他のマフィアにも動機がいっぱいあるが、金銭支援や人員提供などして暗殺実行や隠蔽工作などに関わっていたマフィア達は事前従犯というところだろう。従犯といっても別に嫌々ながらに犯行に加わったというわけではない。なにしろ裏切り者であるどころかマフィアの天敵と化したケネディ兄弟の排除を本心から望んでいるのだから、政府や財界人たちの「決定」には諸手をあげて賛成し協力を惜しまないことだろう。

 しかし「意思決定」に従う者達を主犯とは呼ばない。それでもマフィア主犯説のなかでランスキー主犯説はもっとも説得力があるものだが、ただ1人の主犯であるということはないだろう。主犯仲間のマフィア側総元締め・最高幹部に相当する、といったところが実情ではないのか。事前に知っていて参加しないという立場もある。暗殺賛成派であれば止める必要もないしただ傍観していればいい。誰かが反対派であってもどうせ止める術はなかっただろうが。

 さて映画『JFK』※後半で、裁判前の地方検事局会議における意見対立の模様が描かれている。もちろん観客の理解のために作っているという前提の上で、マフィア主犯説についての理解の補助としたいので、その場面を少々紹介する。

 FBI職員ウィリアム・ウォルターという人物に関連する警告文書コピーと組織的証拠隠滅についての反論シーンから。※私が持っているディレクターズカットの特別編集版DVDの字幕を参考にして私が台詞を書いています。

 

 ビル・ブロザード「……私はその説を買えませんねチーフ。なぜFBIが隠蔽を? この国のFBI全支局でテレックスを破棄した?」

 ジム・ギャリソン「ある単語のせいだよビル。命令、さ」

 スージー・コックス「そして揉み消しよ。Jesus, Bill! あなたはまだFBI共謀の証拠が十分でないというの?」

 ビル「私は国家機関に敬意を払っているだけだ!」

 スージー「My god!」

 ルー・アイヴォン「それを言う必要があるか」

 ビル「どうやって共謀関係が続けられると言うのか、マフィアやCIAやFBIや軍情報部の間で。この12人の間ですら秘密を保てないというのに? 至るところで情報漏洩だ。おれたちはここで裁判にかけている、全員でだ! それで一体、本当に何かを得られたか? オズワルドもルビーもバニスターも、そしてフェリーも死んだ。ショーは多分エージェントだろう、私には分からないが。しかし既にホモだと公開され非難脅迫されている」

 ギャリソン「ショーは足掛かりだ、彼がちょうど合うかは気にしていない。だが彼はウソをついてる。そこを逃がしてはいけない」

 ビル「それだけの理由でクレイ・ショーを裁判にかけるのですか? 負けにいくようなもんです。それよりはニューオーリンズの地元マフィアを調べねばなりません。政府説よりも買えますよ。ルビーはマフィアであり、オズワルドも知っていたから彼が手配した。ホッファ、トラフィカンテ、マルチェロらの銃を借りて、ケネディ暗殺に使われた。政府は全体が複雑で厄介な問題を公開されたくない、なぜならカストロ暗殺作戦の時にも、当局がマフィアを使った経験があるから。マフィアを使ったカストロ暗殺は一般大衆に野蛮と映る。だからJFK調査の本は閉じられる。これで完全に筋が通ります」

 ギャリソン「私はマフィアが低い段階で関与していることは疑っていない」

 ビル「Oh, come on!」

 ギャリソン「マフィアはルート変更ができるか、ビル? テキサスで大統領の護衛を除外できるかな? マフィアはオズワルドをソ連へ送り、その上で彼を取り戻せるか? CIAやFBIやダラス警察の捜査をかき回して台無しにできる? ウォーレン委員会の顔ぶれを隠蔽のために任命できるか? 検死の工作は? 全国のマスコミを操作して彼等を眠らせることもできる? マフィアはあの距離で38口径を使うか? マフィアにはそんな度胸も力もない。暗殺者には報酬が必要だ。スケジュール、時間、命令系統。これはすべて軍隊式の手順だ。これはクーデターだよ。リンドン・ジョンソンの……」

 ビル「するとリンドン・ジョンソンの陰謀? 現合衆国大統領の?」

 ギャリソン「ジョンソンは彼の友人、ブラウンとルートのためにテキサスの建設会社に10億の特需発注。さらにヴェトナムでカムラン湾の浚渫工事だ」

 ビル「ボス! ボス!! まさかあなたは大統領を殺人者と呼んでいるのですか?」

 ギャリソン「違うのか? 私が真実から程遠いところにいるのならば、なぜFBIが盗聴してくる? なぜ目撃者たちがカネを与えられて追い払われるか殺された? なぜ我々の召喚令状と送還を妨害してくる?」

 ビル「私には、私には分かりません。おそらく政府には、何か事情があるんでしょう」

 ヌーマ・バーテル「Oh, come on!」

 ギャリソン「完全な隠蔽が必要なほどに? シェークスピアを読んだことがあるかビル?」

 ビル「……えぇ。ありますよ」

 ギャリソン「ジュリアス・シーザーは? ブルータスとカシウス、彼等も立派な人物だった。誰がシーザーを殺した? 10人から12人の元老院議員。全てそれを1人のユダがしたことにされるんだよビル。一般人に紛れての内部犯行だ、国防総省かCIAのな」

 ビル「ここはルイジアナですよチーフ! あなたは自分の父親が誰であるかを、どうやって知り得ますか? 母親がそう言ったからから。あなたは風で飛んでいるゴミを掴んでいるんですよボス。私はもうついて行けません!!」

 

 ● トリーズンに見せかけたレジサイド

 前述のシーンよりも少し前に出てくる特殊戦略局長のX大佐はフレッチャー・プラウティという実在の人物がモデルらしいが、実際にギャリソンとプラウティが会ったのはクレイ・ショー裁判の後だということだから、裁判前にギャリソンに真実の一端を伝えて励ましたというのは完全な脚色だろう。1対1の会話と追想場面とは思えないほどの長丁場のシーンであり、映画中盤の盛り上げどころの1つである。

 ウィキペディアを見るとプラウティは、フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト大統領はウィンストン・チャーチルに毒殺されたのだと主張したんだとか。私には、いまいち動機がピンと来ないものの、有り得るのか。FDRを暗殺したところで大英帝国の凋落を食い止められるわけではないと思うのだが。

 それで、このミスターXとギャリソンの会話からも、現代日本人にとって重要なことを教えてくれる。

 ギャリソン「私には信じられない……。彼等が政策を変えたいがために大統領を殺したとは、とても信じることが出来ない。この時代の、この国で?」

 X大佐「それらは歴史上、ずっと繰り返されてきたんだよ。王は殺される。ギャリソンさん、政治は権力、それ以上ではない! ……私の言葉を鵜呑みにせず、あなた自身で考えてみればいい」

 ここで王殺しの話が出てくる。レジサイド(regicide)である。これは日本人にはあまり馴染みのない概念である。ギャリソンもシーザー殺しを引き合いに出した。

 私も英語が駄目なので自分なりの理解・認識を述べるまでだが、明治維新以降の天皇に対する大逆罪、トリーズン(treason)を連想してしまうと、かえって理解しにくいだろうということだ。あれらは単純に一般大衆の中から湧き上がった思想的・反体制的なものであって、王朝権力の本格的な交代を目指すものではないからだ。レジサイドは政治謀略の一環である。ミスターXの言うとおり、政治権力闘争こそがその本質である。

 庶民単位で衝動的・偶発的なテロや殺傷行為で王殺しが成功(そんなことが本当にあるとすれば)だった場合は、大逆罪や国家反逆罪に相当するので単純なトリーズンである。例え殺害に成功したところで本人が王に取って代われるわけではなく、処刑されるかその場で殺される(決闘などは例外的事例)。

 オズワルドは裁判にかかることなく殺された。オズワルドがケネディを殺したからといって、かわりに自分が大統領に就任出来るわけではない。だから頭がおかしい単独犯ということにされたのだ。

 先のルーズヴェルトは「政治の世界では、偶然に起こることなど一つもない。何かが起これば、それは間違いなくそうなるように予め計画されていたからである」と言っているが、だからこそ偶然の成功は装われる。トリーズンの汚名を着せられるのは1人でいい。

 一番都合がいいのは敵対勢力の思想に汚染されているものの操られてはいない孤独で被害妄想に囚われた単独犯である。ソ連やキューバに操られていたことにしたら、本当に復讐戦争をしなければならない状況に追い込まれる。既にヴェトナムと戦争をしているのだから、多方面での本格的な開戦は望ましくない。

 憎むべき敵の思想を大衆に警戒させ、憎悪を掻き立てた上で別(ヴェトナム)にぶつけられればそれでいい。だからオズワルドの親友であり支援者であるアメリカ白系ロシア人社交界のジョージ・デ・モーレンシルト等は真実を話す前に消された。背後関係が明るみに出てくると困る人達が大勢いるのである。

 レジサイドといえば日本で卑近な例だと孝明天皇父子弑逆事件の方がすり替え・入れ替わりでの成り代わりだから秘密裏に実行されたレジサイドによる王朝交代の成功例だ。だからトリーズンではない。というよりも結果的に「ならなかった」。日本では成功した弑逆事件など決して「有ってはならないこと」なので、実際に起こると「無かったこと」にされる。古代から南北朝を経て現在に至るまで、結構な頻度で簒奪と血統断絶が起こっているのだが、すり替えと種違いでずっとごまかしてきた。トリーズンさえ「無かったこと」にされたレジサイドの隠された汚らしい歴史だ。表面上はいつも平静を装っている。 ……やはり日本の歴史的事例を出すと、分かりにくいな。なにせごまかし放題なもんだから、理解混乱の原因となる。

 反乱、反逆という結果だけ見るとトリーズンもレジサイドも同じである。言葉の使い方として違うのは法用語と現象となるだろうが、もっと重要な本質的な点は過程であり、実行に至るまでの勢力関係などの背景や目的・動機から分かってくる。

 レジサイドの本質は王朝交代目的のクーデターである。トリーズンは目的達成に成功しても失敗してもトリーズン(反乱罪・大逆罪と、その未遂罪)だが、レジサイドは目的達成に成功すればもはや公式にはレジサイドとは呼ばれない(未遂と正式に発覚すれば反乱未遂、大逆未遂であるが)。もちろん、少数意見の真実追求派は公然とレジサイドであると断定はするけれども。

 大成功すればフランス革命のように革命と呼ばれたりする。ただしこれは君主制の国における国王処刑の話だから、本当に正真正銘の「革命」「レヴォリューション」(Revolution)だ。フランス革命やロシア革命だって、政治体制の根本的「変革」があるとはいえ、フランス・クーデターやロシア・クーデターと呼ぼうと思えば呼べるのである。

 どちらにせよ民衆暴動による「反乱」であり「政変」なのだから。現在のその国の国民がどう考え、どう捉え受け止めているかにより呼び方・呼ばれ方も異なるのだ。明治「維新」だって徳川幕藩体制支配からすれば「クーデター」の一種だが、王政復古だから国民がそう呼ばないということである。

 中国歴代帝国の皇帝と「易姓革命」は、西洋世界の「レヴォリューション」とは違う概念であるということは日本人にもだいぶ分かってきただろう。漢字の「革命」の本義は天からの命令である天命が革まるということであり、皇統の交代によって苗字と国名が変わる。まぁ政治権力闘争という点では西洋世界における「レヴォリューション」と共通しているが、天命を受け継ぐのであるから政治の本質は不変。当然似たような支配が続くので、根本的な政治体制の「変革」ではない。

 そしてご存知日本では、天皇の徳が失われるとか、天の神からの天命が変わったりするとかいう概念が元々無い(日本建国時、日本の天皇支配体制確立において都合が悪いところは取捨選択して、中国の真似・導入をしなかった部分である)。なので「易姓革命」はないし、天皇には苗字も必要ない。国名も「倭」という中国からの呼び名を脱して建国時に「日本」と決定してからは、ずっと変わらない。日本には中国の語義での「革命」もなければ自発的な「レヴォリューション」もなく、権力闘争の勝敗結果という各時代があっただけである。

 アメリカの話に戻すと、共和制であるアメリカ合衆国のケネディ大統領が国民に選ばれた「国王」だというのは政治の本質を取り出そうとした一種の比喩である。本当に反乱軍を率いてリンドン・ジョンソン副大統領がクーデターを起こしてアメリカ王国の国王に戴冠されたわけではないし、当然ながらそれはアメリカ建国の理念に反するから国民が許さない。

 だから「隠れ政変」「隠れクーデター」「隠れ反乱」によって単独犯のトリーズンに見せかけた「隠れレジサイド(王殺し)」が極秘裏に実行されたのである。「隠れ革命」とか「隠れ維新」とか「隠れ変革」などとは呼べないだろう。民衆の総意による変革行動が起きたわけではないし、法形式上の大統領権限継承が行われ憲法が停止したわけでもないが、上向きな要素が含まれてもいないからだ。

 以前のパキスタンでムシャラフが起こした軍事クーデターのような、内外から公式に認識されている反乱、政変ではないというところが分かりにくいところだ。アメリカのこういうところは、かえって日本の天皇に似ているかも。計画的レジサイド、クーデターは、民主国アメリカには「有ってはならない」から「単独犯行」として表面上の政治は進行する。

 ギャリソンの台詞から読み取れるように、マフィアが世界覇権国のレジサイド(王殺し)を「最高意思決定」出来るとは思えない。率直に私もそう感じる。例え海運王オナシスやルチアーノの後継者ランスキーといったマフィア最高幹部であっても、政治的に高度な協力者としての立場であろう。実行者を人員提供したとしても主犯、真犯人とは呼べない。もちろん積極的に「事前従犯としての関与」をしているマフィアがあったのだろう。

 そして恐らくリンドン・ジョンソン副大統領は、リチャード・ニクソン同様の「事後従犯」であるか、そうでなければ「事前従犯として重要な役割を演ずる1人」だったんだろうと私は判断している。彼が「最高意思決定者」であるわけがないと思う。真犯人、主犯とはいえない。確かに「共謀共同正犯」であると言われればそれまでだが。それでも「正犯」といえるほどの本当の「上」ではない。「雲上の財閥」のお方達のご意向を伺う立場であろう。

 ジョンソン個人だけの話ではなく、マフィアの連中が「許可」なく暴走して「勝手」に大統領を殺したりしたら、政府・官庁も軍も本格的に許さないはずだ。たとえ結果的に都合が良かったとしても、自分達の最高意思決定と計画に関係なくして、突如としてマフィアごとき部外者に大統領が殺されるなどという不測の事態によって国の根幹が揺らぐということはあってはならないからだ。

 不測の事態こそ計画者の最も嫌う事態である。そんなことになれば、いくら自分達に都合のいいことをしてくれた者達であったとしたって、徹底的に捜査して実行したマフィアを突き止めてこれを全滅するであろう。何の遠慮も要らない。マフィアには世界覇権国のレジサイド(王殺し)を主導することなど出来ない。

 ギャリソンの『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』の「20 見せかけの"スポンサー"たち」から、クーデターの定義に関する彼の見解と前後の文章を引用する。

 

(佐藤裕一による引用始め)

 しかし、ケネディ大統領暗殺事件とその事件のもつ意味に対する私の興味は、今も衰えてはいない。政府の見解を疑問視する人々は次々と新しい証拠を掘り起こしたが、アメリカ合衆国政府はそれらを無視している。私自身から見てもっとも意味ぶかい事態の展開は、まず、検死の際にケネディ大統領の遺体からもう一つの銃弾が発見されていたことが遅ればせながらわかったこと、ケネディ大統領の脳がどこかに持ち去られたことが判明したこと、それに、クレイ・ショーがCIAのエージェントであったことをヴィクター・マーチェッティとリチャード・ヘルムズが認めたことである(18章参照)。

 一九七八年から七九年にかけて、下院暗殺調査特別委員会は審議会を開き、死に体のウォーレン委員会報告に息を吹き込もうと努めるうちに、ケネディは「おそらく陰謀の結果、暗殺されたのであろう」という結論に到達した。下院委員会は、解散する前に、司法省に捜査を再開することを考慮するよう要請し、新たに判明した手掛かりを詳述した秘密報告を提出した。だが、その要請があったにもかかわらず、その後一〇年、何の動きも見られない。

 ケネディ大統領暗殺事件以降、国民の意識は大きく変化した。私たちは多くのことを経験した。たとえば、マーチー・ルーサー・キング牧師、ロバート・ケネディ、マルコムXが暗殺された。大統領候補ジョージ・ウォーラス、ジェラルド・フォード大統領、ロナルド・レーガン大統領に対する暗殺未遂事件があった。私たちは九年間にわたってヴェトナム戦争という悪夢を経験し、ウォーターゲート事件によって衝撃を受けた。一九七〇年代にはCIAに関して多くの事実が暴露され、さらに時代を下ってはイラン・コントラ事件が発生した。異常なできごとが次々と発生したため、アメリカ国民はのんびりと構えてなどいられなくなった。

 今日、新たな情報をもとに考察すれば、ケネディ大統領の身に起こったこと、そしてその原因を、かなり正確に推測することができる。一九六三年一一月二二日にダラスのディーリー・プラザで起こったことはクーデターだったと私は信じている。それを計画し扇動したのは、アメリカ合衆国の情報コミュニティのなかの狂信的反共主義者たちだったと信じている。そして、公式の承認なしにそれを遂行したのは、CIAの秘密工作関係の個々人と政府外の協力者であり、隠蔽工作に手を貸したのは、FBI、シークレット・サーヴィス、ダラス警察、軍部の、同じような思想を持つ個々人だった。目的は、ソ連やキューバとのデタントを求め、冷戦に終止符を打とうとしていたケネディ大統領の努力を阻止することだった。

「政府の最高責任者の交代に関して法律や憲法が定めている正式な手続きによることなく、個人あるいはグループが、暴力を用いて、政府の権威の地位を奪取する目的で起こす突発的行動」――それがクーデターである。クーデターを成功させるには、いくつかの要因が不可欠である。スポンサー(クーデターの主謀者)による綿密な計画と準備、"近衛兵団"(大統領をふくめた政府関係者の警護に当たるべき政府職員)、事後の広範にわたる隠蔽工作、権力を引き継いだ新政府による暗殺の追認、マスコミに関わる大組織による偽情報の拡散。これら一連のことがらはどことなく耳になじんでいるような気がするかもしれない。これらはまさしく、ジョン・ケネディの暗殺に関連して惹起されたものだからである。

 クーデターが正確にいつ計画され準備されたのかは知らない。ことによると、CIAが次期大統領に関わる一件書類の分析を行なった一九六〇年の終わりという早い時期であったかもしれない。心理的性向を調べたのは大統領の暗殺を計画したからではなかったかもしれないが、その目的はCIA(あるいはその一部)が外交政策を操作しやすくすることであったろう。CIAの冷戦支持派の胸中に暗殺が一つの可能性として浮かんだのは、おそらく、ケネディがデタントに傾き、外交政策を制御する従来の方法が通用しなくなってからのことだったろう。

 誰が陰謀の主謀者であったのかもわからない。しかし、暗殺に関連した活動にガイ・バニスターがかなり早い時期から関係していたことはたしかだろう。一九六一年一月、ニューオーリンズのボルトン・フォード販売店から、ピッグズ湾侵攻用のピックアップ・トラック一〇台を買うために、リー・オズワルドになりすましたのは、バニスターが関係していた<民主キューバの友>の男たちだった(4章参照)。一九六三年夏には、バニスターは反カストロ活動に深く関わっていた。ポンチャートレーン湖北岸でのゲリラ訓練もその一つだし、キューバ侵攻にそなえて武器を奪取したことも一つの例である。このころ、バニスターがCIAのために活動していたことは、今さら論じるまでもないだろう。

(中略)

 隠蔽工作がみごとに成功したので、次は暗殺の背景を説明する段階になった。リンドン・ジョンソン、J・エドガー・フーヴァー、アール・ウォーレン以下、新政府の要人たちは、クーデターが起こったわけではなく、アメリカの民主主義は傷ついておらず、独り狼の不平分子が無意味で突発的な暴力行為によって大統領を殺したのだというシナリオを支持することが得策だと見てとったのだ。彼らは暗殺を企てた連中のメッセージをもすばやく理解した――つまり、ケネディ時代以前の冷戦外交の再考を求める、強力なコンセンサスがアメリカには存在するというメッセージを。ジョンソン、フーヴァー、ウォーレン、あるいはアレン・ダレスが暗殺を事前に知っていた、または暗殺に加担していたことを示す証拠は存在しない。だが、それらの人々は事件後、幇助者の役割を果たしたのだと断言してもいいと思う。

 情報コミュニティのなかの、暗殺には加わっていなかった人々も、クーデターが起こったことを見てとると、ただちに公式見解を支持する動きに出た。そして、選挙によって選ばれた政府高官から各機関や部局の長にいたる多くの人々が、ある場合は保身のために、またある場合はケネディはソ連に対して妥協しすぎたために自ら暗殺を招いたのだと信じて、巨大なフィクションを唱える合唱に加わったのだ。

 成功したクーデターというのはそんなものだ。一七世紀初め、イギリスの詩人サー・ジョン・ハリングトンはこう書いている。

  裏切りは長続きしない。なぜなら、
  長続きしたら、誰もそれを裏切りとは呼ばないからだ。

(佐藤裕一による引用終わり)『JFK―ケネディ暗殺犯を追え』(ジム・ギャリソン著、岩瀬孝雄訳、早川書房刊 ハヤカワ文庫NF、一九九二年二月十五日 発行、一九九二年四月十六日十六 十八刷、409~411、417、418頁から引用。傍点等省略。読み易いように段落ごとに改行)

 

 投稿『JFK』JFK(1991) 4.ファイナル・ジャッジメントに続く。

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2011/01/20 23:53

【130】小沢一郎内閣総理大臣のもと、植草一秀経済財政政策担当大臣の実現によって小泉~菅政権の負の清算を!

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 以下、登場する人物が多過ぎるため、文中基本敬称略と致しますので悪しからずご了承を。

 内閣府特命担当大臣としての経済財政政策担当大臣ですが、まだ廃止されていなかったんですね。てっきり消滅したものだと思い込んでいましたよ。この経済財政担当相、さぞや首相から縁遠い伴食大臣だろうと思いきや、結構な重量級が任命されたりするようです。

 ウィキペディアの項目「経済財政政策担当大臣」を見てみると分かりますが、戦後すぐの国務大臣としての経済安定本部総務長官から経済企画庁長官を経て現在に至るまで、内閣総理大臣が事務取扱だけした場合(芦田均、吉田茂、佐藤榮作、田中角榮、羽田孜)を除いても、石橋湛山、池田勇人、三木武夫、宮澤喜一、福田赳夫、麻生太郎、菅直人などの経済通(?)の首相級を幾人も輩出しています。河野一郎や藤山愛一郎、高村正彦のような首相以外の派閥領袖級・会長は少ないようです。

 民間人からは堺屋太一、大田弘子、そして参議院当選前の竹中平蔵など。良し悪しを別として、経済財政担当相在任中に大きく実権を行使したのは、この竹中ぐらいしか思い浮かびません。強力な後ろ盾がなければ国会議員であろうと民間人であろうと何も出来ないポストのようです。たいした職務権限がないからでしょう。だから竹中も後述する与謝野馨と同じで、他の国務大臣を幾つも兼任していたりしましたね。

 翻って強大なる職務権限がある(はずの)歴代法務大臣などはポストとしては軽量級で、臨時代理を除き出身の首相は全くのゼロだそうです。派閥領袖級・会長では石井光次郎、前尾繁三郎、高村正彦など。

 

経済財政政策担当大臣 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/経済財政政策担当大臣

法務大臣 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/法務大臣

 

 なので経済財政担当相はたとえ実権は少なくとも、ポストとしてはそこそこ重要ということのようです。前任の海江田万里も民主党で期待される首相候補に挙げられるとのことですから、与謝野ほどの人物が就任しても、政治権力という側面からすれば別段おかしくはありません。職務経験者でもあります。

 日本には野中広務や青木幹雄、綿貫民輔、江藤隆美(故人)のような、首相経験者ではないのに最初から院政を敷くという感じの派閥領袖級・会長級の、ボス・ドンといった貫禄たっぷりの長老議員政治家がいます。最初から首相就任を目指していません。

 それとは違って与謝野馨は、加藤紘一、亀井静香、平沼赳夫、谷垣禎一らと同じく派閥領袖級あるいは党首・総裁級の首相候補(本人に意欲有り)と並んで挙げられた保守派の議員政治家です。加藤紘一は加藤の乱での派閥分裂と失脚がありますが、それを含めて上記の方達はみんな、小泉純一郎の劇的な登場によって首相になれなかったのは私にも分かります。

 森喜朗以降、安倍晋三、福田康夫まで4代続けて同派閥(清和会)から総理総裁が輩出しているのは、たとえ最大派閥になったとしても均衡を欠いており著しく偏っていました。最後の自民党総理総裁である麻生太郎は派閥違いですが、もはや同派にはなるべき人物がいなくなったので、仕方なく誰もが納得する血統で選出されたのです。

 李漢栄さんは主宰ブログサイトで「麻生政権が懐かしい」「ましだった」と嘆いておいでであり同感ですが、私はわりと麻生が好きでかなり面白い人だと思いますから、それでやはり歴史と伝統ある自由民主党の最後を華々しく有終の美(?)飾るのに、吉田茂の孫である彼が最も適切な、歴史的要請のある人物だったのだと考えます。

 首相になれなかった谷垣を含め、「麻垣康三」は全員小泉ほどの手先人間ではなかった。もしくは、結果的になりきれなかった。アメリカの要求と脅迫があまりにも苛烈過ぎて1年経つともたなくなり投げ出さざるを得なくなるのでしょう。鳩山由紀夫にしても脅迫に敗れたということです。

 自民党がアメリカから1度見捨てられてから政権復帰し2度目に見捨てられるまでに、アメリカの勝手な都合により(ネオコンが暴走して引き起こした対テロ戦争であるアフガン戦争、その次にイラク戦争に付き合わせる協力支援体制を万全に敷かせるため)、自民党を見捨てるのが先延ばしにされた時期が、小泉純一郎政権です。

 いまだに日本の一般国民は、薄々小泉政治の真相に気付いてきているのに、素直に反省を表明しないのです。自衛隊派遣の本格的な責任追及もしていません。イギリスのブレア元首相の境遇とは大違いです。まんまと騙されて支持したのが自分達一般国民だから、今更批判するのはどうしても恥ずかしいのですね。その点では田中・ロッキード裁判や人類月面着陸問題みたいなものです。過ちを認めたくないのです。

 小泉を批判するということは大多数の国民にとって騙されたり踊らされたりした過去の事実(恥・汚点)を認めるということにつながります。だからそれを暗に避けてしまい臭い事実に蓋をするのです。それが更なる間違いの元となるのです。本当の平和主義者となった元・駐レバノン大使の天木直人が批判の急先鋒です。

 私は、小泉内閣から安倍内閣に引き継がれた時の、あのテレビを見ていて感じた奇妙な空気、強烈な違和感を今でも覚えています。テレビではほとんど誰も小泉を責めなかった。まともな業績評価の総括がなかった。普段はよってたかって散々に言われて退陣していくのが日本の首相の常ですよ。

 その後今に至るまで日本の状況を悪くした小泉への責任追及がありません。有権者の一般国民がそんなだから図に乗って世襲議員に地盤を継がせるのを許し、更には政界全体に院政を敷きたい輩が増えるのです。

 私も何度も書いてますが、現在日本のいわゆる世襲議員達は、選挙の洗礼を受けて当選しているのですよ。議員は全て国民の代表なのです。世襲だろうが二世三世四世だろうが、立派な人はやはり立派です(小沢一郎は二世、田中真紀子も二世、鳩山由紀夫は四世)。

 それでも、世襲議員の大多数がてんで駄目なのは確かです。私が言いたいのは、政党本位で投票行動を決めるのでないのだったら、少しは人物を見ろということです。だから私は各政党が党内規則で世襲制限をするのは勝手だけれども、あるいは官僚出身政治家を党が公認しないようにするとかは良いけれども、選挙法で世襲制限・禁止や前職による立候補制限などを制定するのは立候補の自由と選挙民の判断機会を奪うことになるから、賛成しません。有権者が血縁・血統だけで全てを判断する国になったのであれば、それはもはやどうしようもない国と国民だということです。

 さて、小泉純一郎の話に戻ります。アメリカの大統領のように2期8年とはいきませんが、小泉政権は安定して5年半ありました。日本では長期政権の方が例外です。5年半もの間に何もかも悪化しただけで、在任中に好転したことなど全く無いではありませんか。

 後任の安倍、福田、麻生らはたった1年ずつ、彼等なりにアメリカに小突き回されながらも精一杯やって、それでも悪化をくい止めることが出来なかっただけです。長期政権で今日までの悪化の元凶となった政権と、短期政権でその悪化状況を引き継いで転げ落ちていった政権。一体どちらがより悪いといえるでしょうか。彼ら3人は新聞テレビが小泉を責めないようにごまかすために、より一層矛先を向けられただけではありませんか。

 最近よく短命が悪い、日本政治の顔としてコロコロ変わるのは問題だ、などと急に言い出した人達がいます。今まで米・官の意向があった際に首相引き摺り下ろし言論を展開する手先人間達が、同じ口で恥知らずにもこんなことを言い出します。コロコロ変わっているのは手先人間自身の態度の方でしょう。命令に従って言動を変えていくからなのですね。

 日本の首相が長続きしないのは、日本国憲法下における議院内閣制(首班指名制)が持っている制度的な欠点・欠陥です。私も行法(行政)の安定性・継続性の観点からは確かに問題だとは思っていますが、首相公選制(直接選挙制)にするなどして任期を確定(固定)させなければ抜本的な改善は無理です。憲法改正しなければ出来ませんので、首相個人だけに帰する問題ではありません。

 昔の首相待望論の筆頭候補であった石原慎太郎や、現在の「次期首相にふさわしい人」で挙げられる野党の舛添要一、石破茂、渡辺喜美、石原伸晃、小泉進次郎、小池百合子、それから知事の東国原英夫、知事出身の田中康夫などの広報担当(人寄せパンダ)にふさわしい面々よりは与謝野馨の方が首相にふさわしい人物でしょうが、消費税増税の旗振り役という国民からの嫌われ役を押し付けるために呼ばれた人ですからね。小泉さえ登場しなければ彼も適切な時期に首相に選出されていたのかも。後の祭りですがね……。

 

時事ドットコム:内閣支持微増、21%=不支持は59%-時事世論調査
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011011400594

 

 私は「戦後最悪の首相は誰か」という後ろ向きの設問が話題になる際に、いつも現役の首相の名前を挙げてしまうのは安易なので、軽々には判断しないように気をつけています。誰が首相だろうと常に「首相は責任をとって辞めろ」と言ってしまうのは悪癖です。考えなしの「戦後最悪の首相」のインフレ更新はよくありません。言葉の価値が減っていきますから。

 私は自我が芽生えて以降(一番古い記憶は宮沢喜一)の首相しか実感を伴っての評価は出来ませんが、「戦後最悪の首相は誰か」と問われれば小泉純一郎です。

 消費税を導入した世俗の王権簒奪者・竹下登や、従米化を促進させた中曽根康弘になると、もう首相現役時代を知らないので歴史的知識での判断しか出来ません。さらに前の田中角榮、岸信介、吉田茂を実感を伴って挙げることは完全に無理です。

 世間での「戦後最悪の首相」で定評があるのは村山富一と宇野宗佑で、細川護煕や鳩山由紀夫、菅直人を挙げる人もいらっしゃるでしょう。宇野を除き、これらの人達に共通するのは就任時に自民出身ではない首相だということです。

 ということは日本政界においては非・自民である時点で政治改革派に属するとみなされますので、改革が進捗しないと期待と現実との落差が激しいため失望の度合いも大きいため、本人の真意は何であれ裏切りと感じるのです。だから菅直人が「戦後最悪の首相」だという場合は、理想の裏切り、改革の後戻り、反動という点において言われるのです。

 小泉の場合は自民からの改革者(似非だけど)とみなされていたので、「失敗して元々」ということなのです。オバマ大統領だって実際に「チェンジ」出来ないと米国民に分かってくると、段々失望が広がってきて支持率が低下してきていることからも分かるように古今東西同じであって、日本政治だけの現象というわけではありません。

 日本が顕著なのは、改革派への見切りが早過ぎることです。情熱が冷めるのが早い。転落してしまった菅直人が烙印を押されるのは正当な評価であり当然ですが、だからといって改革自体をすぐに諦める無気力は問題です。一般国民が真の改革派と偽の改革派を見極めることもせず、すぐに保守反動に走るため非・自民政権はすぐに終焉を迎えます。

 これが日本の「欠陥政治メトロノーム」です。ずーっと自民(保守)、ちょっと非・自民(改革)、それが駄目だとまたずーっと自民(保守)。

 自民は日本国内基準における保守派なので、本来の性質からして改革が駄目でもいいわけです。なにしろ「保守派」なのですから、悪化しているこの「現状を保守」することが許されるという理屈です。

 だから小泉は似非改革派だったので、郵政関係(改革派というより破壊者だが)を除けば現状保守派とアメリカの支持(指示)で妥協出来ていたのです。コップの中の争い、自民政治における「やじろべえ」がうまくいったというだけのことです。

 偽の改革派による主導政治が駄目だったからといって、真の改革派への応援を止めることはない。有権者である一般国民が応援を止めていくから、国民政治家だって腰が座らないような事態に陥ります。国民が断固としていないからです。この悪循環を、もう断ち切らなければなりません。

 だから「ねじれ国会」だなんだと言われるが、小泉純一郎と菅直人こそが「ねじれ人物」です。小泉は保守政党に出現した改革派(似非)、菅は改革政党に出現した反動保守派(改革派の裏切り者)です。共通しているのは似非改革派だということです。

 だからこそ、保守派であれ改革派であれ、真の国民政治家を日本国の首相にしなければなりません。

 タイトルに「小沢一郎内閣総理大臣のもと、植草一秀経済財政政策担当大臣の実現によって小泉~菅政権の負の清算を!」と書きましたが、小泉政治の一番の犠牲者である植草一秀を経済閣僚に据えることが、小泉とマスゴミに騙され踊らされまくって彼に誹謗中傷の石を投げつけた一般国民が出来る謝罪であり贖罪です。彼が国民に謝罪するんじゃありませんよ。国民が彼に謝罪すべきです。私は植草氏とは経済思想が違いますが、日本国が負の清算をすることが最優先です。

 そして検察審査会によって強制起訴され刑事被告人となった人物が内閣総理大臣になる。もしくはその後からでもいい、国務大臣の起訴を受けて立つかどうか判断する。それで何がおかしかろう? 刑事被告人というのは有罪判決が確定していない状態の人物、つまり現時点で無罪である人間が内閣総理大臣に就任するという、ただそれだけのこと。

 これは国民政治家・小沢一郎だからという贔屓でのみ言っているんじゃない。誰であってもそうだ。たとえ菅直人が、これから何らかの理由で起訴され、受け入れないあるいは受けて刑事被告人となろうが、私はその事実だけを理由としての辞職要求は断じて「一切」しない! 政治家は、立法であれ行法(行政)であれ、政治的業績でのみ評価・判断するべきだ。結果責任は有権者である一般国民による選挙での当落によって示されるべきである。

 むしろ高級官僚による政治謀略の被害者が首相になるんだったら慶賀すべきことだ。そのような首相を持つことは誇りに思っていい。官僚の操り人形となって攻撃されない、クリーンを標榜する首相を持つよりよっぽどいい。このクリーン政治の罠に落ちないように気をつけなければなりません。デモクラシーにおける政治には膨大なカネがかかるのです。「政治とカネ」は当たり前のこと。

 アメリカと官僚は日本国民が騙されて国民政治家を攻撃する状態が大好きなのです。だからマスゴミと一緒になってそういう好都合な政治状況を作り出すのです。それを許しているのは有権者である一般国民です。どうしようもなく不完全ながらも「不逮捕特権」というものが何故あるのか、それを考えて正しく認識することが必要です。国民は思い上がった「官憲の横暴」を許してはなりません。勘違いが常態化して増長してしまった「彼等」に鉄槌を下すのです。

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2011/01/19 20:21

【129】アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮には他国に核兵器を持つなと言う資格が無い。

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 投稿[132]以下訂正。

 誤 計10ヶ国

 正 計9ヶ国

 イランが正式に核保有国になれば10ヶ国になります。

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2011/01/18 21:10

【128】Re:[131]佐藤君へ

 李漢栄さんへ

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 いえいえ、こちらこそ失礼致しました。

 昨年の同日に私が菊地研一郎さんに送信したメールは届いていたので(お返事頂いたので)、李さんにも届いているだろうと私が勝手に思い込んでいたようです。なにしろ私が今使っているメールはそこらで取得したフリーメールなので、郵送事故みたいな送信事故で届かなかった可能性もありますね。

 日刊ゲンダイは近場になかったので購読出来ていませんが、新連載に近藤誠さんが登場しているとのことで、真実の言論を展開するでしょうけれども。本当に業界内の論争が発展した言論戦というのは職業と利権がかかっていて熾烈極まりないですから大変ですね。「日刊ゲンダイ」と「週刊現代」こそ、奇怪なねじれ現象でしょう。

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2011/01/18 21:09

【127】訃報 劉華清氏死去 享年94歳

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 2011年1月14日(金)に亡くなった劉華清(りゅう かせい、リュウ・フアチン)氏は1916年10月生まれ(誕生日不明)なので、1904年生まれである故・鄧小平の一回り年下ぐらいですから、退役・退任していたとしても中国の最長老の1人だったのでしょう。略歴等はウィキペディアやインターネットニューズ等をご覧下さい。

 先生の中国本シリーズに劉氏の名前が出ていたか確かではありませんが、あの「第一列島線」及び「第二列島線」は、鄧小平の指示で劉氏が提唱した戦略概念なのだそうです。人民解放軍の海洋地政学的な想定上の大戦略ですから、今に至るまでこの冷戦期の構想が軌道修正をしながらも海軍編成の基本を規定しているのでしょう。

 偏狭な観念的保守派の長老軍人達が強硬に唱える台湾併合最優先の掛け声のような、近視眼的な視点でないことは私のような軍事学音痴にも分かります。遠大・遠謀に太平洋を捉えていて、当然その先にはアメリカ合衆国がありますから、海洋・航空覇権争いです。

 アメリカ人から見れば日本列島は共産主義勢力という津波を押しとどめるべき「反共の防波堤」であり、中国人から見れば突破し制覇すべき「第一列島線」と「第二列島線」であり、日本人から見れば……「不沈空母」でしょうかね?

 制海権という比較的古くからの軍事用語がありますが、そこまで進出・制覇することを前提として軍事演習もして実力(実戦可能な軍事力)を蓄え、準備に邁進していることでしょう。もちろん、制海権は制空権とセットでなければ不完全です(というか両者一体でなければならない)。

 それで先生の中国本を読むと分かるのは、意外にも制空権と、深海に潜むはずの原子力潜水艦が繋がっていて、核ミサイルと搭載していて発射出来るので、熾烈な宇宙競争の軍事戦略用途のスパイ人工衛星(弾道ミサイルを目標到達地点に正確に打ち込む)と並んで重要だということです。

 制宙権などという新しい言葉も出ています。が、それでも結局は宇宙といったところで争点は空とこの地上のことです。物質が宇宙に行けたところで、人体は現時点の人類が持つ技術では越えられません(耐えられません)から。

 私は、潜水艦などというとヴォルフガング・ペーターゼン監督(存命)の傑作映画『U・ボート』のような、前時代の遺物っぽい印象しか浮かんでこないのですが、最新鋭のものはまだまだお払い箱にはなっていない模様ですね。

 この潜水艦が事故を起こすと、実に悲惨なことになります。ロシア(旧ソ連)で多発したように潜水艦が沈むと乗組員は全員死にますし、急浮上する際に海面付近の物体とクラッシュすると、それが2010年の韓国哨戒艦「天安」の沈没事件(北朝鮮の仕業ということで責任を押し付けたとのこと)であり、2001年のえひめ丸衝突事件です。

 思えば9・11事件前のあの頃から既に米海軍の堕落が始まっていたのですね。えひめ丸はハワイ沖で起きてしまったので、他国のせいにしようがなかったのです。他国海軍の潜水艦だったことにしたら、同時にアメリカの領海深くまで潜入されていることになってしまい、安全保障上の問題に発展します。

 しかしながら核ミサイル搭載の潜水艦が有効であるとはいえ、冷戦期からのお互いの核抑止力が成立しているという恐怖の均衡による平和戦略・政策の延長線上にあるものですから、つまり常に戦争を仮想・仮定している現状で固定されてしまっているので(実際に互いに核を打ち合ったら一巻の終わりなので)、先に核で手を出してきたら当然反撃することは決まっているけれども、だから冷戦中の米ソが結局一度も直接的な全面核戦争をしなかったように、米中も双方先に核の手は出さない。レールガンとかでスパイ衛星の打ち落とし合いだけはする。

 だからこのままでは実際の太平洋上の制海権、制空権がアメリカ軍に握られたままなので、核ミサイルという使用しないことに価値がある消極的な武力よりも、もっと積極的な即戦力として前面に海洋・航空進出するのに適している海軍と空軍の実戦(実践)向け通常戦力のあり方を整える必要があります。

 おそらくそれが劉氏発案の戦略として、冷戦後世界にまで有効であり続けるため採用されるのでしょう。通常戦力といっても現代では核戦力などの大量破壊兵器と切り離して考えるのは無意味ですが、核だけ公然と持っているというのでは北朝鮮と同じことであって、覇権国家となるのに核兵器保有は必要条件ではありますが十分条件ではありません。

 そうすると戦闘機を搭載する艦隊を組むというだけではなく、離発着させる航空母艦(戦略空母・原子力空母等)を配備するという要請が起こります。旧ソ連製空母を改装したりとか、イギリスの競売に出された空母を落札するとかの話がありますけれども、やはり国産で最新鋭のものを造船したいし、ちゃんとしたものを造れるのであれば、軍事機密上の観点からもそれが何より一番なのは明白です。劉氏は空母保有を一貫して提唱しており「中国空母の父」と呼ばれたのだそうです。

 下の方にURLを貼り付けますが、日中友好協会会長である加藤紘一氏との会談で武大偉(ぶ だいい)朝鮮半島問題特別代表(元駐日大使)が「なぜ中国だけが(批判を)言われるのか」「日本も8から9の空母を派遣した。当時は米国も日本も多くの空母を持っていた。中国は今も空母を持っていない。一つつくってもおかしいことではない。通常の武器だ。ほかの国も持っている」「ステルスの問題も同じだ」「米国が持っても正常なことだと皆さんは言う。日本が仮にそのようなものを購入しても、おかしいとは言わないだろう」などと国際社会の懸念や批判に反発したそうです。詳しくはネット記事をどうぞ。

 ここで私見を言わせて頂きます。武氏の発言は正論です。私は懸念(単にこれからの日本が心配ということ)はしますが、批判も反発も反対も一切しません。

 まずアメリカに中国の軍備増強を批判する資格はありませんし、空母を持つなという資格な全くありません。自分が持っているのに持とうとする国に何故持つなと言えるのですか?

 さらに日本にも中国に空母を持つなという資格はありません。旧日本軍の空母は全て無くなっているから批判の有資格者なのでは、ですと? 他の国(アメリカ)が既に持っているものを、その持っている国に捨てろと一言も言わないで、持とうとする国だけ(中国)に持つなと何故言えるのですか? 

 誰かこの形式的な論理に反論して私を納得させられるかたがいたら、是非ともお話をうかがいたい。世の中は実力の世界で動くからという、つまり先生の帝国・覇権国―属国理論という冷酷なる世界の真実以外には、感情論理やら幻想の共有という、どうせ観念的なことしか残らないでしょう。

 だから、対外的な理由からは、日本も空母を製造し保有し配備していいのです。それを既に空母を保有している国や保有しようとしている国から批判されるいわれは全く無い。保有していないし、保有する気も最初からない国で、しかも現保有国全てに対して捨てろ・非保有国全てに対して持つなと表明する国だけが批判する資格がある。もちろん止める権利はありません。形式的に対等な主権国家間の話であれば、それ以上は国家意思への内政干渉ですから。あのロンドン海軍軍縮会議などは米英こそ「ふざけるな」です。軍縮したいというのなら平等の数量しなければおかしい。

 ここの旧掲示板の過去ログ12にありましたが、[448]でも私は一昨年この資格論について「アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、インド、パキスタン、イスラエルには他国に核兵器を持つなと言う資格が無い。」を投稿しています。

 現在、おそらく北朝鮮は何らかの核兵器を既に保有しているのでしょう。もし本当は持っていなかったとしても、既に国家として公然と表明していますから、製造しようとしている意思のある時点で他の非核保有国に持つなと言う資格はありませんので、資格論の上では核保有国と同じなのです。

 なので現在では、

 ● アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮には他国に核兵器を持つなと言う資格が無い。

 の計10ヶ国ということになります。ちなみに、現在のイラクには日本の核保有製造・保有を批判する資格があります。何故なら大量破壊兵器など全然作っていなかったし、実際に持っていなかったからです(笑)。

 上記10ヶ国以外の、非・核保有国でさらに核兵器を保有する意思が全く無い国であり、なおかつ全ての核保有国に対して廃棄を要求し、さらには全ての非・核保有国に持つなと言っている国だけが、日本の核保有を批判する資格があります。止める権利はありません。地球上に主権国家の上にある組織は形式上、何も無いのですから(国連の強制力など幻。全て参加の各主権国家依存)。国際条約や国家間条約などは主権国家の都合で簡単に破棄されることは歴史の教訓ですね。

 そして以下のことも言えます。

 ● 日本国が国家意思として核兵器の製造・保有をする、または公然と保有する意思を表明するのであれば、その時点で非・核保有国に核兵器を持つなと言う資格を完全に喪失するし、他の核保有国に核兵器を廃棄せよと言う資格も一切無くなる。

 これも理の当然ですね。むごたらしい大量虐殺と後遺症に苦しむ被爆者を出した、世界唯一の被爆国としての例外的・特権的主張立場の説得力も、同時に消えて無くなります(ただし、日本がアメリカに対して2回核攻撃するという、虚しい理論形式上の正当なる復讐の権利だけが残る)。

 はっきり言って、核保有五大国(同時に国連安全保障理事国。この制度もおかしい。何故に対等な主権国家の間で作る互助組織にこんな入れ替わり不能の不公平なものがあるんだ)の理屈がおかしいのです。特にアメリカとイスラエルの主張がおかしいと感じなければ嘘ですよ。

 イラクには大量破壊兵器など無かったことで、独裁者排除・民主化・自由化、少数民族救出解放などを除くアメリカのイラク戦争開戦の主張根拠、正当性が失われたといわれます。IAEAの査察官に私は納得する部分もあるでしょうが、それ以上に強く違和感を覚えます。

 私は率直にこう感じています。

 もしイラクに本当に大量破壊兵器が有って、それが見付かったとしても、アメリカ軍侵攻の主張に最初から正当性など無い。

 何故なら、アメリカは大量破壊兵器を保有しているからです。自分は持っているのに他人に持つなと言い、持っていると疑わしき人物がいれば攻撃して有無を確かめる。チンピラヤクザのいんねん以外のなにものでもありません。

 アメリカの戦争将軍や統合参謀本部より更に上にいるという、恐ろしい戦略学者達が用意周到に巧妙な手段を使ってフセインをまんまと罠に陥れた際の、イラクにクウェート侵略を「させた」ことに端に発した湾岸戦争の「諸国連合軍」出動による大義名分(形式が整っている)とは、根本的に違うのです。

 それでもイラク戦争が、フセイン排除・民主化・自由化だけを旗印にしていれば、とんだ内政干渉ではあるけれども大量破壊兵器云々と比較すれば、アメリカの正当性はまだありましたがね。何故ならアメリカ合衆国は独裁国家ではなく、民主国家・自由国家ですから。

 ビンラディンを匿ったアルカイダ掃討のアフガン戦争(対テロ戦争)は9・11事件の復讐論理だから、また別だ。しかしあれも嘘八百の騙しからスタートしている。アメリカはいつもこうだ。ビンラディンとアルカイダは今何をしている? 中国・北朝鮮との極東情勢や、イラン(シーア派)とイスラエルの戦争にも関係してこないから、すっかりお払い箱じゃないか。

 それから。イランは主権国家として核保有する正当な権利がある。日本も同じ。北朝鮮も韓国も台湾もフィリピン、ヴェトナム、インドネシア、東ティモール、パプアニューギニア、キューバ。どこだって同じ。

 現代に残る不平等条約、NPT(核拡散防止条約)なんてふざけるな。何が「拡散防止」だ米ロ英仏中よ。削減目標だの努力義務だのいい加減にしろ。自国の核を即時全廃してから他国に「非核」を言え。遠い将来には非核国家、非核世界を求めますなんていう望みは、いくらでも無責任に先延ばし出来るじゃないか。この「是核」国家ども。NPTなど世界的に一斉に脱退して投げ捨てるべきだ。

 真にあるべき国際条約は、非・核保有国にして核保有する国家意思がない国(核実験も一切しない)だけが参加する「完全非核国際条約」でしょう。 北朝鮮(脱退)、インド・イスラエル・パキスタン(未署名)の主張が論理的に「正しい」のです。ただし自分達も「他国に持つな」と言い始めることを除いてはね。

 日本の核武装論者も、北朝鮮に持たせるな、断固阻止せよと声高に叫んでいるのに、自分達日本国は持つべきだなどという、妙な思考に陥っている人達がいる。これこそ思考のねじれ現象だ。アメリカに洗脳された「常識」によって、あまりに馴れすぎたせいなんだね。日本はこれからも一切核保有してはならないと主張する立場の人だけが北朝鮮に持つな・廃棄せよと言う資格がある。止める権利はない。互いに主権国家だから、他国の話なので。日本国民は、これくらいの理論武装(論理武装)はするべきだ。中国と渡り合っていきたいのならば、核武装なんかの前に理論武装せよ。

 さて、あくまで、ここまでは対外的な話です。体内的な憲法の話などは別です。私が主張しているのは、自国が空母を持つ・持たない、あるいは核保有する・しないというのは、基本的にその自国国民の議論に基づく国家意思で決めるべきことだということです。憲法改正も日本国民が決めることなのです。

 属国日本の「是核・核保有賛成派」のかたにも「非核・核保有反対派」のかたにも申し上げたいのは、自説の決定打を海外に求めるのは止めるべきだということです。アメリカの政府高官が「日本にも北朝鮮が暴走するのを抑制するために、1個か2個の核ミサイルを売ってあげよう(ただし飛距離は短いし、国産製造は許さないよん)」と言ったとか、どこぞの平和団体代表の誰それが「日本は素晴らしい平和国家デース。核兵器を持つべきではアリマセ~ン」と言ったとかいうのは、考えの参考に入れたところでそれまでの話。

 日本国のことは日本人が考えて自分達で決める。その際に大日本帝国のように、世界の趨勢を国民に見せないような愚かなことをしなければいいのです。世界を知った上で、しかし自分達で決めるべき事柄なのです。

 私自身の現時点での考えは、核武装については副島隆彦先生と故・片岡鉄哉先生の中間ぐらいでしょうか。今現在核兵器を持つ必要はないが、いつでも作って持てるように準備しておき、韓国や台湾などの周辺諸国が持つことを決定したのならその後で日本も即座に作る。以前に中田安彦さんが書いていらっしゃったと記憶していますが、日本人は「軍拡競争を招いた」云々の批判に弱いですから、まぁこれが一番妥当な線でしょう。

 ところで余談ですが、ウィキペディアの「日本の核武装推進論者」というカテゴリーがあるのですけれども、投稿時点でこれに「副島隆彦」の名前が記載されているのです。下にURLを貼り付けますが、ご存知の通り先生は左に急旋回したので、核武装推進論者ではなく逆の反対論者になっています。編成者は名前を外す作業をすべきですね。なのでこの点では、私と先生の考えは同じではありません。

 地震列島に原子力発電所を何十基も設置するより余程上手く管理出来るでしょう。ただしこの狭い国で核実験は許されない。実験しなくても散々他国でデータとれてるのが流出し放題でしょうから、いくらでもやれるんじゃないでしょうかね。

 このように私は必ず核武装する「べきだ」論者ではありませんので、ご注意を。あくまでも日本国民が自分達で決定す「べきだ」論者です。憲法第9条改正にしても、私はアメリカに騙され操られるのが終わったら改正していいと思っています。

「普通の国」とは「正常な国」のことであり、自分達で国防が出来る国だということです。軍(自衛隊)が実際にあるのに無いと言い張る神学論争も、いい加減飽き飽きしました。近代国家という前提に立てば(無政府主義に立たないならば)、常備軍はあって当然です。徴兵制度を禁止して敷かなければいいのです。

 それを、アメリカの政府高官やらジャパン・ハンドラーズの面々が「そろそろ憲法を改正してもよし」などと許可を下すのがおかしいと言っているのです。それを手先達が許可状を貰ったから改正運動の強力なお墨付きだの後ろ盾を得ただの、ご宣託をありがたがっているのがJ右翼の滑稽さなのです。

 私の国防に対する結論の基本は、「是軍非戦」・「賛軍反戦」と「文民統制原則の確立」それに「徴兵の禁止」「侵略戦争をしない、他国間の戦争に巻き込まれない、米中戦争に駆り出されない」です。これらが守られるならば憲法第9条を改正していい。

 軍を持つことを是とし、侵略戦争を行うことを非とする。

 軍を持つことに賛成し、侵略戦争を行うことに反対する。

 当然ながら文民統制の原則を確立する。軍隊の勝手気ままな行動や反逆行為は許されない。

 そして徴兵制禁止を憲法と下位法に明記し、徴兵を敷くことを例外なく一切禁止する。つまり国軍は全て平時有事を問わず志願兵(広義の傭兵)が100パーセント。民兵組織などには関わらない。

 もちろん、侵略戦争をしないという誓いをあらためて憲法その他法制化する。他国間の戦争に巻き込まれないし、米中戦争やら米北(韓)戦争にも駆り出されない。アジア人同士戦わずの精神を互いに大切にすべきなのです。

 ただし相手がアジアだろうがどこだろうが、本当に侵略軍が攻撃してきたら迎撃するのは当然です。それは純然たる防衛戦争ですから。私は全ての戦争を否定する人間ではありません。防衛戦争は肯定します。本当に外交も何もなくて、無条件でただただ攻めてくるんだったら、戦うしかないのですから。

 繰り返します。「私は侵略戦争を否定し、防衛戦争を肯定します」

 もちろんその場合は仕方なしの消極的肯定です。戦争など起こってほしくはありません。

 だから侵略戦争には防衛戦争の側面があっただの、純然たる防衛戦争などありえないだの、新しい概念である対テロ戦争においては先手を打って攻撃しなければ手遅れだのと、同盟国の友軍を助けなければ世界に冠たる最重要な日米同盟が危機を迎えるウンタラカンタラだのと、騙され論理に引っ掛からなければいいだけの話なのです。侵略軍を撃退した後の相手国への報復・制裁行動を起こすべきかどうかについては考えがまとまっていません。

 それから日米安保の常時駐留も解消して、沖縄を昭和天皇と本土国民が差し出した生贄の犠牲に捧げ続ける体制を金輪際止める。

 核保有やその他大量破壊兵器保有については私の中でも決定事項ではありません。是非とも持ってほしいとは到底思えない。持ってもいいし持たなくてもいい。周辺諸国が持ったら仕方なく持つ。選択肢は限られていません。平和を守るための侵略戦争は嘘ですが、平和を守るための軍と平和を守るための兵器は「結果的に」本当にあります。冷戦期の平和は核兵器という恐怖が全人類にもたらした恐怖の平和です。

 で、それから空母と一国でまともに組める艦隊ぐらいは作る。あのミッドウェー海戦の苦々しい記憶があるから拒否反応を示す方達も多いでしょう。答えは他所の国を侵略していかなければいいだけ。
 
 1つの独立国家として、周辺事態有事やら集団的自衛権やら個別的自衛権(専守防衛)の発動などの天から降ってきた言葉(ご宣託)にかき回されることをやめ、国家防衛をまともに考えるようになりましょう。戦争を出来なくてしない国(属国の平和)ではなく、戦争は出来るがしない国(独立国の平和)を目指しましょう。

 さて、核兵器が世界で炸裂するなら、次はどこなのか?

 これも先生の近未来予測によると世界の火薬庫は極東と中東の2箇所ですから、炸裂するとすれば中東の可能性が最も高いということになります。これも納得出来ます。極東では既に広島と長崎に2回落とされているわけですから、次は中東ということになる。

 といってもイスラエルはパレスチナ人に核攻撃を加えられないのですね。自分達が建国し入植して住んでいる所ですから、使えば自分達も被爆してしまいます。

 現時点でイスラム教国においてはパキスタンしか公式核保有国がありません。これからイランやサウジアラビア、シリア、エジプトなどアラブ・イスラム諸国が核武装するとなると(リビアは路線転換)、いくらエルサレムが聖地でパレスチナ人が住んでいるとはいえ、イスラエルに向けて打ち込まないという保障はありません。当然イスラエルが黙っているはずもないので、そら恐ろしい事態になる可能性があります。今後も事態の推移を注視すべきでしょう。

 それからBRICsのうちブラジルだけが核武装していないという事実。近隣にはアメリカを除き脅威となる国はないので(南米では自身が一番強大だから)、周辺国が持たなければ自国も持たないということなのでしょう。あとはやはりトルコやインドネシアといったイスラム教圏と中国の関係に注目するしかありませんね。

 しかしながら、これから大航海時代以来の海洋覇権の時代が終わっていき、大陸覇権の時代が再び訪れるに際して、果たして時代に逆行するような中国人民解放軍海軍の海洋進出がそもそも必要なのかどうか。劉氏の戦略は時代を先取りしているのか時代遅れなのか? 軍事音痴には適格な判断が難しいですね。

 また長々と余計な文章を書いてしまいましたが、劉華清氏のご逝去に心からお悔やみ申し上げます。

 

訃報:劉華清さん 94歳=元中国共産党中央軍事委員会副主席、元党政治局常務委員 – 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20110115ddm007060127000c.html

時事ドットコム:英空母、中国で再利用も=華人実業家が競売参加
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201101/2011010600597

asahi.com(朝日新聞社):「日本も空母持っていた。なぜ中国ばかり」中国高官反発 – 国際
http://www.asahi.com/international/update/0113/TKY201101120601.html

時事ドットコム:国産装備の重要性を強調=空母建造が念頭か-中国国防相
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201012/2010122900453

中国の最新兵器が次々と明らかに 米国は運用能力に疑問を呈す 2011-01-10(月) 144818 [サーチナ]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0110&f=national_0110_081.shtml

劉華清 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/劉華清

トウ小平 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/鄧小平

第一列島線 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/第一列島線#.E7.AC.AC.E4.BA.8C.E5.88.97.E5.B3.B6.E7.B7.9A

U・ボート (映画) – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/U・ボート_(映画)

ウォルフガング・ペーターゼン – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ウォルフガング・ペーターゼン

category日本の核武装推進論者 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/Category:日本の核武装推進論者

過去ログ 12
http://snsi-j.jp/boards/mail/12.html

LEE 投稿日:2011/01/18 11:07

【126】佐藤君へ

メルアドの件、大変失礼しました。
「私が言うのもなんですが、李さんも道場会員なのですから、貴ブログサイトでし障りがありましたらメールなどよりも、当掲示板で色々と話し合い・書き込み合いでいきましょう。」 全く同感です。