ふじむら掲示板

副島系掲示板の”補集合”としての役割
かたせ2号 投稿日:2022/05/17 20:04

【191】「フレシェット弾」のCNN記事を(証拠付きで)拡散しよう。

かたせ2号です。

DS最高幹部が許可を出したとは思えませんが、CNNから「フレシェット」に触れた記事が昨日(2022年5月16日)出てきました。
この記事がロイターによって配信されれば、DSの最高幹部の許可は出ており、そうでなければ許可は降りていない、と判定できます。いまのところ配信はされておりませんが、結果はもうすぐ出るでしょう。

さて、このCNN記事は、記事中にある「2010年にはイスラエル軍がパレスチナ自治区のガザ地区で民間人に対して(フレシェットを)使用し、国連人道問題調整事務所(OCHA)がこれを非難した。しかし、それらを除けば(フレシェット)は現代の戦争で使われたことはほとんどない。」を崩せば、CNNの目論見とはまったく逆の印象になるのです。CNNは、その危険性に気づいているのか?

以下、まずCNN記事を引用したあと、上記の記載の通りではない(ウクライナ軍の使用による)と主張する証拠(反論)を4つ提示します。証拠(反論)の3つ目と4つ目は、かたせ2号としては新たに提示するものです。
特に4つ目の証拠(プラウダからの反論、2022年4月25日)が強烈です。この反論が出たからDS最高幹部は沈黙せざるを得なくなったのだとわかりました。
このCNN記事を証拠付きで拡散しましょう。

<まずCNN記事の紹介>
CNN(日本語)サイトから。
記事名:民家を襲った「フレシェット弾」、ロシア軍撤退後の町で無数発見 ウクライナ
2022年5月16日配信
https://www.cnn.co.jp/world/35187521.html

(引用開始)
ウクライナ軍が首都キーウ(キエフ)郊外のイルピンをロシア軍から奪還して以来、1カ月あまり。住民のボロディミル・クリマシェフスキさん(57)の自宅では今も、庭に散乱したり家の壁に食い込んだりした釘のような金属片が見つかるという。
「素手では抜き取れない。ペンチがいる」。壁にダーツの矢のように突き刺さった無数の金属片を指さしてクリマシェフスキさんが言った。
この鋭利な金属片は、フランス語で「小さな矢」を意味するフレシェット弾と呼ばれる。第1次世界大戦中、できるだけ多数の敵兵を攻撃するために連合国軍が開発した兵器で、薬莢(やっきょう)に込められて戦車から発射されると、数千本の金属片が広範に飛び散る。
フレシェット弾は無差別的な性質をもつことから、民間人のいる場所で使うことは人道法で禁じられている。人に当たれば身体を引き裂き、ゆがんだり曲がったりして命取りになることもある。
米国務省によると、フレシェット弾は米国がベトナム戦争で使用。このほか、2010年にはイスラエル軍がパレスチナ自治区のガザ地区で民間人に対して使用し、国連人道問題調整事務所(OCHA)がこれを非難した。しかし、それらを除けば現代の戦争で使われたことはほとんどない。
だが3月にロシア軍が占拠していたキーウ北部の町や村から撤退した後、ロシア軍が攻撃にフレシェット弾を使用していた痕跡が浮上した。
イルピン西部の村で農業を営む男性も、自宅前の道路にフレシェット弾が散らばっているのを見つけたと話す。男性は妻と共に地下室に隠れていたが、自宅は砲撃されてほぼ全壊したという。
ウクライナの人権団体によると、キーウ郊外のブチャで殺害された犠牲者の遺体からもフレシェット弾が見つかった。
「法医学の専門家が、ブチャとイルピンの住民の遺体からフレシェット弾を発見した」と同団体は述べ、ロシア軍が住宅をフレシェット弾で砲撃したと主張する。犠牲者がフレシェット弾のために死亡したのかどうかは分からないとしている。
クリマシェフスキさんによると、フレシェット弾が雨のように降り注ぎ始めたのは3月5日だった。クリマシェフスキさんは自宅で窓から離れ、床の上に突っ伏していた。隣家に砲弾が当たったが、爆発はしなかった。
辺りは一面、金属片に覆われ、クリマシェフスキさんの車の窓は破壊された。
2020年3月に戦闘が続くイルピンから逃れ、数週間後に戻ったという近隣の住民も、自宅の庭や屋根の上で無数のフレシェット弾を見つけたと話している。
(引用終わり)

かたせ2号です。

以下、2014年から現在にかけて、ウクライナ軍がフレシェットを使用している証拠(反論)を4つ提示します。この4つの証拠(反論)を提示した上で、上のCNN記事を紹介すれば、破壊力抜群です。
日本で最初に(2022年4月27日)PICKUPさんがTwitterで紹介した
https://mpr21.info/fue-el-ejercito-ucraniano-quien-cometio-la-matanza-de-bucha/
の記事は十分に正しいことも確認できました。

<証拠の提示>
1.
アメリカのヤフーニュースの記事から。
記事名:2014年10月21日、ウクライナのドネツクで、フレシェット砲弾の矢を見せる親ロシア分離主義者の戦闘員(A Pro-Russian separatist fighter shows a dart from a flechette shell on October 21, 2014, in Donetsk, Ukraine)
2014年10月22日配信(AFP)
https://news.yahoo.com/surgeons-ukraines-rebel-donetsk-confirm-cluster-bomb-usage-205747600.html?guccounter=1

(翻訳、引用開始)
ドネツク(ウクライナ)(AFP=時事) – ここ数週間、市民数十人が死亡しているウクライナ東部の反政府勢力の拠点ドネツクの外科医らは24日、ヒューマン・ライツ・ウォッチが主張するように、一部の患者がクラスター爆弾の犠牲になっていることを確認した。
キエフは、東部で親ロシア派の反政府勢力と戦っている自国軍が、論争の的になっている無差別クラスター弾を使用していることを激しく否定したが、医療関係者は、ウクライナ軍に落ち度があったと主張した。
ドネツクのカリーニン病院の外科医は、「私は何十回となく、ウクライナ軍が使用した子弾の破片を負傷者から取り除いてきた」と述べた。
世界的な権利団体HRWは今月初め、非常に不正確なこの弾丸によって、スイスの援助関係者を含む6人が死亡した12の事件を特定する調査報告書を発表している。
クラスター爆弾は、数十から数百の小さな爆発物を含む弾薬で、爆弾やロケットで運ばれ、「広範囲に、しばしばサッカー場ほどの大きさに無差別に撒かれる」とHRWの報告書は述べている。
「カリーニン病院に勤務する外科医は、名前を明かさず、「これらの武器は建物を破壊するためではなく、人を殺すためだけのものだ。
「小さなダーツは重大な傷害を引き起こす」と彼は言った。「一人の人間に20本、30本と刺さった例もある。
世界の大半の国はクラスター爆弾禁止条約に署名しているが、ウクライナは署名していない。
しかし、キエフはこの兵器の使用を否定し、分離主義者を非難し、この報告について完全な調査を開始することを約束した。
ウクライナ国防省のボグダン・セニク報道官は、「これらの告発は根拠がない」と述べた。
– 反体制派は「戦争犯罪」を非難-。
カリーニン病院から数キロ離れた隣の都市マキィフカへの検問所で、地元の親ロシア派反乱軍リーダーがAFPに、2センチほどの鋭い破片が詰まった不発弾を見せた。
「この砲弾はマキイェフカを襲った。ドネツク空港付近の地区には、ほぼ毎日、同様の砲弾が落ちている」と、40歳の反体制派、アレクセイ氏は語った。
彼は、ウクライナ軍は「戦争が始まって以来」、郊外からクラスター弾で街を攻撃し、グラドやウラガンのトラック搭載システムでそれらを発射してきたと述べた。
ニコライと名乗る第17病院の外科医は、AFPに対し「私は、これらの弾丸で負傷した患者の手術をしたことがある」と語った。「10日ほど前のことだ。このようなケースは1件だけだった」。
ドネツク州内の他の病院では、症例は報告されていない。他の3つの病院でAFPのインタビューを受けた複数の外科医は、このような武器で負傷したケースを見たことがないと述べた。
「このようなことはテレビで見たが、私の外科医としてのキャリアでは一度もない」と、地方病院の外科医で緊急対応担当のイゴール氏は述べた。
分離主義者の拠点であるドネツクを拠点とする自称ドネツク人民共和国の指導者たちは、キエフによるこうした武器の使用は戦争犯罪に相当する、と述べた。
「DNRのアンドレイ・プルギン副首相は、「この種の兵器が使用された事例は数十件にのぼる。
「これは戦争犯罪だ。このような犯罪の調査が行われ、国際法廷が有罪、つまりウクライナ国家を裁くことを望んでいる」と述べた。
(引用終わり)

2.
かたせ2号です。
1.の証拠写真がこちら。
https://codename-it.livejournal.com/953562.html
合わせて、投稿された写真の下につけられたコメントを拾っておきます。

(コメント抜粋開始(翻訳))
(質問者)(2015年3月16日)父が職場で釘の木箱を盗んだことがあるんですが、3枚目の写真にあるようなものがあったんです。ネイルの代わりにはならないよ。その内容や名前を教えてください。
(写真の投稿者)(2015年3月16日)矢のような形の発射物。

(質問者)(2022年4月24日)最初の写真に写っている砲弾のある塹壕は誰の塹壕なのか、わかっているのでしょうか?
(写真の投稿者)(2022年4月25日)(ウクライナ東部)ルハンスク州のPeremozhnoye村付近でAFU(ウクライナ軍)の拠点を破壊したとのことです。

(質問者)(2022年5月2日)ここにある記事は、ドンバスでの戦争でウクライナ軍が小さな金属製のダーツを使用した証拠として、「2015年のウクライナ砲による空襲後、ドネツク人民共和国のスラビャンスク市でもダーツを発見」とあり、あなたの記事へのリンクが貼られています。この記事(「mpr21」の記事)は正しいと思いますか?
(写真の投稿者)(2022年5月2日)(私が投稿したうちの)最初の3枚の写真は、ルハンスク近郊のAFU(ウクライナ軍)の砲兵陣地と、その砲兵が割った砲弾のダーツです。当時はよくあったことですが、国防省やロシア連邦からの砲撃が陣地を覆っており、その中から問題の砲弾が発見されました。2014年に使用されたかどうかは、そのような事実を客観的に証明するものがないため、はっきりとはわかりません。
(コメント抜粋終わり(翻訳))

3.
すらいと.Slightさんのツイートから。
2022年5月12日配信
https://mobile.twitter.com/slightsight/status/1524681967647617025

(引用開始)(インク先に画像あり)
左) 英国メディアが、ロシアのものとする、ブチャの殺害された市民から出てきた砲弾片
右) 陥落したポパスナヤで、ロシア軍がウクラ軍から受けた砲弾片
(引用終わり)

4.
プラウダ(英語版)のサイトから。
記事名:ブチャの大虐殺。ガーディアンはフェイクニュースの取り扱いに失敗した
2022年4月25日配信
https://english.pravda.ru/news/hotspots/151417-bucha_massacre/

(引用開始)
2022年4月24日に、ブチャの市民がロシア軍に殺害されたとガーディアンが発表した。(根拠:法医学専門家は犠牲者の遺体から金属製のフレシェットを発見した。このようなフレシェットは122ミリZSH1砲弾に使用されるものである。)
ガーディアンの主張は、フェイクです。事実は以下の通り。
ガーディアンは、ブチャへの砲撃は、集落がロシア軍の支配下にあった時に行われたとはっきり書いている。しかし、ロシア軍は駐留している領土に砲撃を加えることができなかっただけである。
砲撃は、金属製の小さな「ダーツ」である金属フレシェットを詰めた122ミリZSH1砲弾で行われた。このような弾薬を使用するのはウクライナ軍である。
軍事専門家のボリス・ロジンは、122ミリ砲弾はD-30榴弾砲で使用されていると指摘した。ウクライナ軍はロシアの特別作戦開始時に、ソ連の兵器庫から少なくとも350挺のD-30榴弾砲とそのための弾薬を大量に保有していた。
「これはウクライナ軍の主力野戦兵器であり、ゴストメル、ブチャ、イルピンで戦った第4即応旅団も例外ではなかった」と専門家は書いている。
2014年のドンバスへの砲撃でも同じ弾薬が使われた。
ロシア連邦では、そのような兵器は廃棄され、Msta-Bと口径の大きな152mmの他の砲弾と交換された。
(引用終わり)

以上

かたせ2号 投稿日:2022/05/17 06:50

【190】情報の取り扱いには慎重に:この写真は、2022年4月14日のルハンスクのものです。

かたせ2号です。

スプートニクの写真サイトから。
http://sputnikimages.com/story/list_264787293/8165247.html

現在上記写真を元に、
「アゾフスタリ地下深くに住み着く米特殊作戦指揮官の米海軍大将エリック・オルソン特殊作戦指揮官が拘束された」という情報が世界中に流れています。
この情報が正しければ、私も興奮するところなのですが、
ただし、上記リンク先の情報の通り、根拠となる写真は、2022年4月14日にルハンスクで撮影されたものですので、この情報の取り扱いは慎重にしてください。

以上

かたせ2号 投稿日:2022/05/15 21:56

【189】ランド研究所:「日本が地上配備型対艦ミサイルの兵器を開発するのを支援することが、日本がより射程の長い同様のミサイルを調達するよう促す、米国の長期的な戦略の第一歩となるだろう。」(2022年4月28日)

かたせ2号です。

J Satoさんのツイッターから。
2022年5月12日のツイート。
https://twitter.com/j_sato/status/1524621290899853312
(引用開始)
アメリカ軍事政策シンクタンクのランド研究所が、対中代理戦争に向けての地上配備型中距離ミサイルを配備する国として、日本が一番有望と評価。オーストラリア、韓国、フィリピン、タイはチャイナ刺激の矢面に立つことを拒否するが、日本はそこまででもないと。ポチ度が高評価。東アジアのウクライナとして選ばれそうですよ!
(引用終わり)

かたせ2号です。
参照先のランド研究所の記事を引用します。

記事名:インド太平洋における地上配備型中距離ミサイル米国の同盟国の位置づけを評価する。
2022年4月28日付報告
https://www.rand.org/pubs/research_reports/RRA393-3.html?utm_campaign=&utm_content=1651274518&utm_medium=rand_social&utm_source=twitter

(引用開始)
米国は2019年に中距離核戦力(INF)条約を脱退し、射程500~5500kmの地上型ミサイル(本レポートでは地上型中距離ミサイル(GBIRM)と呼ぶ)を開発・配備する機会を自らに開いた。しかし、米国の撤退は、そのようなミサイルをどこに配備するかという議論も呼び起こした。なぜなら、中国はINF条約に加盟していないため、米国が禁止しているさまざまな能力を開発することが可能だからである。
この脅威を考慮し、米国は新たな通常兵器のGBIRMを開発し、インド太平洋に配備することを望んでいるが、米国の同盟国がGBIRMを受け入れるというワシントンの申し出にどう反応するかは不明である。
筆者は、インド太平洋地域における米国の条約上の同盟国であるオーストラリア、日本、フィリピン、韓国、タイが米国のGBIRMをホストする可能性を分析する。これらの国々が同意する可能性は低いため、著者は同盟国の領土にミサイルを恒久的に配備する代替案も検討している。(1)米国が同盟国と GBIRM を共同開発し、同盟国に GBIRM を売却して指揮統制する、 (2)危機時に同盟国の領土に GBIRM を展開する、 (3)peacetime rotational deployment、 (4)Guam または Compact of Free Association に配置される、など。それぞれの選択肢には欠点があるため、著者は最初の選択肢のバリエーションとして、日本が地上発射型対艦スタンドオフミサイルの兵器を開発するのを支援することを推奨している。

<検討して発見した内容>
・同盟国がGBIRMを恒久的にホストすることに同意することに依存する米国の戦略は、意欲的なパートナーを見つけることができないため、失敗するリスクがある。
タイが中国との関係を緊密にしようとする軍事政権である限り、米国はタイにGBIRMを受け入れて欲しくないだろうし、タイが受け入れる可能性は極めて低いだろう。
・米国のフィリピンとの同盟関係は流動的である。ロドリゴ・ドゥテルテ大統領のような対米・対中政策が続く限り、フィリピンが米国のGBIRMを受け入れる可能性は極めて低い。
・韓国が米国の防衛ミサイルシステムを受け入れることに対する中国の反発、韓国が中国の圧力に弱いこと、米韓関係が悪化していることなどから、韓国が米国のGBIRMを受け入れる可能性は極めて低いと思われる。
・豪州は米国との歴史的なつながりが強いため、米国のGBIRMを受け入れる可能性は否定できな いが、恒久的な外国基地の受け入れに歴史的に消極的で、アジア大陸から距離があるため、可能性 は低い。
・日本は米国との同盟関係を強化し、防衛力を強化する意欲があるため、日本は米国の GBIRM を 受け入れる可能性が最も高いと思われる地域の同盟国である。しかし、その可能性はまだ低い。

<結論>
米国がインド太平洋地域で GBIRM (地上型中距離ミサイル)を追求し続ける場合、最も成功する可能性が高い戦略は、日本が地上配備型対艦ミサイルの兵器を開発するのを支援することであろう。
これは、日本がより射程の長い同様のミサイルを調達するよう促す、米国の長期的な戦略の第一歩となるだろう。
(引用終わり)

以上

かたせ2号 投稿日:2022/05/15 21:02

【188】ジャック・ボーの論説を紹介する(その1)

かたせ2号です。
ジャック・ボーの論説を紹介します。その第1回目。

なお、ジャック・ボーの論説をきちんと最初に紹介した日本人インフルエンサーは以下のお二人です。記して感謝します。
・田中宇さん:https://tanakanews.com/220421kramatorsk.htm
・岩上安身さん:https://iwj.co.jp/wj/open/archives/504779

<フランス語原文から英語文への翻訳したデータ>
Postil Magazineのサイトから。
記事名:The Military Situation In The Ukraine April 1, 2022
https://www.thepostil.com/the-military-situation-in-the-ukraine/

<日本語への翻訳文>
世相徒然ブログから。
https://ameblo.jp/docomo1923/entry-12740288218.html

かたせ2号です。ここのブログ主さんによる解説文(のみ)を以下に引用します(翻訳文そのものは上記リンク先を参照ください)。また、日本語に翻訳くださったブログ主さんに感謝します。

(一部引用開始)
このブログでも幾つか紹介したように海外発信された論考は優れたものが多く、正しくウクライナ戦争の原因を突いている。
そんな中、ブログ「阿幾左与庵」Akiさんから、とても分かりやすく優れた分析の論考を紹介していただいた。
ジャック・ボー「ウクライナにおける軍事情勢」(2022.4.25)である。
(表題が少し大人しすぎる。「ウクライナ戦争の正体)又は「ウクライナ戦争の真実」がいいかも)
ジャック・ボー氏は、67歳のスイス陸軍の元大佐、戦略アナリスト、諜報とテロリズムの専門家で、NATOの勤務経験がある方だ。だから現場を知って中立的な分析が可能な信頼できる評者だといえる。
この論考はウクライナ侵攻せざるを得なかったロシアの事情、特に2014年以降のウクライナドンバス内戦やゼレンスキー内閣やNATOの動きから説く。
ボー氏の分析はその経歴からロシア寄りではなく非常に客観的であると捉えてよいだろう。
ロシアに理解を示したからといってそれはロシアのプロバガンダではないのだ。
長めの論考は三部に分かれており、第1部: 戦争への道、第2部:戦争、第3部 結論という構成である。
まず、ウクライナ紛争の根源から説き始める。そしてウクライナ軍の実態からウクライナ軍がなぜナチ化していったか。そのナチ化への米英の関わり。第2部では戦争の勃発として、ほとんど知られていないウクライナ政府の動きが暴きだされている。つまり、ロシア軍のウクライナ侵攻以前にもうウクライナ側はドンバス地方を攻めようとちょっかいを出していたのだ。アメリカのプロパガンダを信ずる者は見たくない不都合な真実だろうが。
ここでプーチンは岐路に立たされる。軍事介入すれば経済制裁や熱い戦争になりうるし、介入しなければドンバス地方の住民を見捨てることになる。そこで決断がなされたのだった。
そのため、プーチンは作戦を2つの目的に限定した。ウクライナの「非軍事化」と「非ナチ化」だ。つまり、ウクライナを征服するのではなく、おそらくは占領するのでもなく、破壊するのでもない。これがロシア軍の戦い方だった。(しかし、このことがアメリカ・ウクライナ側のプロパガンダにいいように利用されてしまうのだ)
一方ゼレンスキー・ウクライナの戦い方について、ボー氏は鋭い指摘をして批判する。
「軍の指揮系統とは、軍隊の本質であり、武力の行使を目的に向けて方向付ける機能である。現在のように無計画に市民を武装させることで、市民を戦闘員にしてしまい、結果的に市民を潜在的な標的にしてしまうことになるのだ。さらに、指揮もなく、作戦目標もなく、武器を配ることは、必然的に決闘や盗賊行為、効果的というより致命的な行動につながる。戦争は感情の問題になる。武力は暴力となる。
…EUは、ベルリンの戦いの最後の時間における第三帝国の悲惨な経験を繰り返そうとしている。
戦争は軍に委ねられ、一方が負けたときには、それを認めなければならない。そして、もし抵抗があるならば、それは指導され、組織されたものでなければならない。しかし、私たちは正反対のことをしている。私たちは市民に戦場に行くよう促し、同時にFacebookでは、ロシアの兵士や指導者の殺害を呼びかけることを許可しているのだ。」
日本の保守の一部は熱狂して、ウクライナの義勇軍化と徹底抗戦を愛国的と称賛するが、軍事専門家ボー氏に言わせればとんでもないことなのである。
「戦争は軍に委ねられ」ねばならず、そうでなく「市民を戦闘員にしてしまい、結果的に市民を潜在的な標的にしてしまうことにな」り、「指揮もなく、作戦目標もなく、武器を配ることは、必然的に決闘や盗賊行為、効果的というより致命的な行動につながる。戦争は感情の問題になる。武力は暴力となる。」という混沌とした悲惨な状況が現出してしまうとの指摘だ。
こう言えば、恐らく有本らの興奮した右翼は、「侵略を許せと言うのか、抵抗してはいけないというのか」と吼えるだろう。しかし、ウクライナ戦争の経緯をキチンとみれば必ずしもその愛国心は正しいとはいえないことがわかるだろう。
結論部分では、「欧米の政治家の中には、明らかに紛争が起こることを望んでいる者がいる」とボー氏はいい、戦争は政治の延長であるというものの、余りの政治優位つまり戦争を泥沼化したい米英のためにそして当亊者ゼレンスキーがロボットのため、停戦に持ち込めない状況に陥っている。
ボー氏は「プーチンの非難は、私たちへの非難でもある」と言う。
「…明らかに、この紛争は私たちをヒステリーに導いている。もし、我々が交渉し、承認したミンスク合意をウクライナに遵守させるよう主張していれば、このようなことは起こらなかっただろう。プーチンの非難は、私たちへの非難でもある。もっと早くから行動すべきだったのだ。」と。
この戦争を世界の人々は終わらせたくても、終わらせたくないアメリカとEUとウクライナがいる。戦争を泥沼化させたい勢力!ヘタをすれば第三次世界大戦!もう少しは突入しているのだが。
アメリカのプロパガンダに賛意を示す人々もまたこのウクライナ戦争を長引かせることに貢献しているのだ。
本当の気持ちは、早く戦争を終わらせたいはずなのに、ロシアが悪というプロパガンダを鵜呑みにして、戦争長期化に心ならずも加担しているのだ。
そして罪なきウクライナ人を結果的に死に追いやっている。死神ゼレンスキーと同じように。
そこから抜け出すには、正しい認識が必要だ。このジャック・ボー氏の論考はそのための一助になるはずだ。
ロシア寄りの論考なんて信用できん、と言わずに、まずはじっくり読んでから、それからテレビの毎日のプロパガンダを聞いてみよう。見方が変わっているに違いないのだ。ナザレンコ・アンドリーの嘘はたちどころにわかること請け合いなのだ。
前置きが長くなってすみません。ではどうぞ。
(一部引用終わり)

以上

かたせ2号 投稿日:2022/05/15 21:00

【187】ジャック・ボーの論説を紹介する(その2)

かたせ2号です。

ジャック・ボーの論説を紹介します。その第2回目。
日本語に翻訳くださったKfirfasさんに感謝します。

<フランス語原文から英語文への翻訳したデータ>
Postil Magzineのサイトから。
記事名:The Military Situation In The Ukraine April 11, 2022
https://www.thepostil.com/the-military-situation-in-the-ukraine-an-update/

<日本語への翻訳文>
KfirfasさんのNoteから。以下のリンク先を参照ください。
記事名:スイスの元軍事情報将校「ウクライナの軍事状況、2022年3月25日」
https://note.com/14550/n/nbcebd70d9726

以上

かたせ2号 投稿日:2022/05/15 20:59

【186】ジャック・ボーの論説を紹介する(その3)

かたせ2号です。

ジャック・ボーの論説を紹介します。その第3回目。
日本語に翻訳くださったKfirfasさんに感謝します。

<フランス語原文から英語文への翻訳したデータ>
thegrayzoneのサイトから。
記事名:US, EU sacrificing Ukraine to ‘weaken Russia’: fmr. NATO adviser
https://thegrayzone.com/2022/04/15/us-eu-sacrificing-ukraine-to-weaken-russia-fmr-nato-adviser/

<日本語への翻訳文>
KfirfasさんのNoteから。
記事名:スイス元軍事情報将校 NATO顧問:ロシアを弱体化させるために米国とEUはウクライナを犠牲にしている(2022年4月15日)
https://note.com/14550/n/n6603d32072eb

かたせ2号です。
翻訳文の一部(のみ)を以下に引用します。全文は上記リンク先を参照ください。

(一部引用開始)
AARON MATÉ:最後に、最近報道された残虐行為についてお聞きしたいと思います。 ブチャの町ではロシアが民間人を大量に殺害し、ウクライナ軍も殺害されたと報告されていますし、クラマトルスクでは駅が襲撃されました。 あなたはこの2つの事件を評価し、どのように受け止めているのでしょうか。
JACQUES BAUD : そうですね、その中には2つのことがあります。第一に、両方の事件について私たちが持っている兆候は、ロシア人がその責任を負わなかったことを示しているということです。しかし、実際私たちはわかりません。これは言わなければならないと思います。つまり、正直なところ、私たちは何が起こったのか知りません。私たちが持っている兆候、すべて、私たちが持っているすべての要素は、ウクライナの責任を指摘する方向にあります。でも私たちは知りません。
(一部引用終わり)

以上

かたせ2号 投稿日:2022/05/15 20:58

【185】ジャック・ボーの論説を紹介する(その4:前半)

かたせ2号です。
ジャック・ボーの論説を紹介します。その第4回目(前半)。

<フランス語原文から英語文への翻訳したデータ>
Postil Magzineのサイトから。
記事名:Our Interview with Jacques Baud. May 1, 2022
https://www.thepostil.com/author/jacques-baud/

<日本語への翻訳文>
CHIE SUZUKIさんが、日本で最初に翻訳しています。

CHIE SUZUKI HOME COURT blogサイトから。
2022年05月08日配信
記事名:XVI. プーチンが何をしても欧米は… ジャック・ボーの見解
https://chiesuzuki.exblog.jp/29180671/

かたせ2号も、翻訳して以下に貼り付けます。長文なので、前半と後半とに分けて掲載します。よろしくご参考ください。

(引用開始)
(インタビューの前説)この鋭いインタビューの中で、ジャック・ボーは地政学を掘り下げ、ウクライナで実際に起こっていることが、結局は米国、NATO、西側諸国の政治指導者が主導し、ロシアに対抗する世界支配のための大きな闘いであることをよりよく理解できるようにしています。
いつものように、ボー大佐は、その深さと重厚さのためにユニークである、十分に情報を得た分析を披露しています。私たちは、あなたがこの保存を有益で、洞察に富み、点と点を結ぶのに極めて重要であると理解することを確信しています。

(インタビュー開始)
ザ・ポスティル(サイト運営社名、以下TPと略称)です。この対談にご登場いただき、とても嬉しく思っています。あなた自身について、またあなたのバックグラウンドについて、少しお聞かせください。

ジャック・ボー(以下JBと略称)。お招きいただき、ありがとうございます。学歴としては、ジュネーブの国際関係大学院で計量経済学の修士号と国際関係学と国際安全保障の大学院のディプロマ(修了証明書)を取得しました。スイス国防省で戦略情報官として勤務し、海外に展開するワルシャワ条約軍(アフガニスタン、キューバ、アンゴラなど)を担当しました。冷戦終結直後には、スイスの国防研究調達局で数年間、部隊長を務めました。ルワンダ紛争では、軍隊と諜報活動の経歴を買われ、ルワンダ難民キャンプでの民族浄化を防ぐため、コンゴ民主共和国に安全保障アドバイザーとして派遣された。
情報部時代には、アフガニスタンの抵抗運動であるアハメド・シャー・マスードと接触し、アフガニスタン人がソ連の爆撃物を地雷除去し無力化するのに役立つ小さなハンドブックを書きました。1990年半ばには、対人地雷との闘いがスイスの外交政策の優先事項となった。私は、国連のために地雷や地雷除去技術に関する情報を収集するセンターの設立を提案しました。これがきっかけで、ジュネーブに「人道的地雷除去のためのジュネーブ国際センター」が設立されました。その後、私は国連平和維持活動局の政策・教義ユニットの責任者に就任することになりました。ニューヨークで2年過ごした後、私はナイロビに行き、アフリカ連合で同様の仕事をしました。
その後、私はNATOで小型武器の拡散対策に携わることになりました。スイスは同盟に加盟していませんが、NATOとの「平和のためのパートナーシップ」に対するスイスの貢献として、この特別なポジションが交渉されたのです。2014年、ウクライナ危機が勃発した際、私はドンバスにおける小型武器の流れを監視しました。その後、同年(2014年)には、ウクライナ軍への信頼回復を目的として、ウクライナ軍の能力回復と人事管理の改善を支援するNATOのプログラムに参加しました。

TP:あなたは現在のウクライナ紛争について洞察に満ちた記事を2本書いており、私たちはそれを翻訳して出版するという大変光栄な機会を得ました。このような視点が必要とされるようになったきっかけは、何か特別な出来事や事例があったのでしょうか?

JB: 私は戦略情報担当官として、政治的あるいは軍事的な意思決定者に最も正確で客観的な情報を提供することを常に主張してきました。この種の仕事は、自分の感情や信念ではなく、現場の現実をできるだけ反映したインテリジェンスを作成するために、偏見や感情を抑える必要があるのです。また、現代の民主主義国家では、意思決定は事実に基づかなければならないと考えています。この点が、イデオロギーベース(マルクス主義国家など)や宗教ベース(フランス革命前の王政など)で意思決定する独裁政治体制と違うところです。
様々な任務のおかげで、私は最近の紛争のほとんど(アフガニスタン、イラク、リビア、スーダン、シリア、そしてもちろんウクライナなど)にインサイダー視点を持つことができた。これらの紛争に共通するのは、私たちが紛争を完全に歪曲して理解していることです。私たちは、敵、その根拠、考え方、本当の目的を理解していません。それゆえ、敵と戦うための健全な戦略を明確にすることさえできないのです。特にロシアについてはそうです。上層部も含め、ほとんどの人が "ロシア" と "ソ連" を混同している傾向があります。私はNATOにいましたが、ロシアの世界観や政治的ドクトリンを説明できる人をほとんど見つけることができませんでした。多くの人がプーチンを共産主義者だと考えています。私たちは彼を「独裁者」と呼びたいのですが、その意味を説明するのに苦労しています。その例として、こういうジャーナリストが暗殺されたとか、FSBやGRUの元工作員が殺されたとか、必ずと言っていいほど出てきますが、根拠は極めて曖昧です。つまり、たとえそれが事実であっても、問題の本質を正確に説明することができないのです。その結果、敵をありのままに描くのではなく、自分たちが望んだとおりに描くことになりがちです。これこそ失敗のもとである。NATOで5年間過ごした後、私が西側の戦略的・軍事的能力を以前にも増して懸念しているのは、このためです。
2014年、キエフのマイダン革命のとき、私はブリュッセルのNATOにいました。人々が状況をありのままに評価するのではなく、こうあってほしいと願うように評価していることに気づきました。これはまさに、孫子(古代中国の兵法家)が失敗への第一歩として述べていることです。実際、NATOの誰もがウクライナに微塵の関心も持っていないことは明らかでした。主な目的は、ロシアを不安定にすることだったのです。

TP:あなたはヴォロディミル・ゼレンスキーをどのように認識していますか?彼は何者なのでしょうか?この紛争における彼の役割は何なのでしょうか?彼は「永遠の戦争」を望んでいるようですが、自分が勝てないことを知っているからでしょうか?なぜ彼はこの紛争を長引かせたいのでしょうか?

JB: ヴォロディミル・ゼレンスキーはロシアとの和平を約束し、当選しました。問題は、西側諸国も欧州連合も、彼がこの目的を実現するのを助けられなかったことです。マイダン革命の後、政治的に台頭してきたのは極右運動でした。私はこれを「ネオナチ」と呼ぶのは好きではありません。「ナチズム」は明確に定義された政治的教義でしたが、ウクライナでは、ナチズムのすべての特徴(反ユダヤ主義、極度のナショナリズム、暴力など)を兼ね備えたさまざまな運動について話しているのであって、単一の教義に統一されたものではないためです。どちらかというと狂信者の集まりのようなものです。
2014年以降、ウクライナ軍の指揮統制は極めて悪く、ドンバスの反乱を処理できない原因となっていました。自殺、アルコール事件、殺人が急増し、若い兵士を離反に追い込みました。イギリス政府も、若い男性は軍隊に入るより移住したほうがいいと指摘しました。その結果、ウクライナはロシア語圏でキエフの権威を行使するための志願兵を募集するようになりました。この志願兵は、ヨーロッパの極右過激派から集められた(そして現在も集めている)。ロイター通信によれば、その数は10万2千人にのぼるといいます。彼らは、この国でかなりの規模と影響力を持つ政治勢力になっています。
問題は、この極右の狂信者たちが、ゼレンスキーがロシアと和平を結ぼうとすると、殺すぞと脅してきたことです。その結果、ゼレンスキーは、自分の約束と、ますます強力になる極右運動の暴力的な反対との間に座っていることになりました。2019年5月、ウクライナのメディア「Obozrevatel」で、民兵「Pravy Sektor」の代表で陸軍最高司令官の顧問であるDmytro Yaroshが、ゼレンスキーがロシアと合意に至った場合、死を与えると公然と脅しました。つまり、ゼレンスキーは、おそらく自分が完全にコントロールできていない勢力から脅迫を受けているように見えます。
2021年10月、エルサレム・ポスト紙は、アメリカ、イギリス、フランス、カナダの軍隊がウクライナの極右民兵を訓練しているという気になる報道を掲載しました。問題は、「集団的な西側」が自らの地政学的目標を達成するために、こうした近親相姦的で倒錯した関係に目をつぶりがちであることです。それを支えているのは、これらの民兵の犯罪行為を承認しがちな、不謹慎な極右による対イスラエル偏向メディアです。このような状況は、イスラエルに、繰り返し懸念を抱かせてきました。2022年3月にゼレンスキーがイスラエル議会で行った要求が受け入れられず、成功していないのはこのためです。
つまり、ロシアとの危機を政治的に解決する意志があるであろうにもかかわらず、ゼレンスキーはそれを許されていないのです。彼がロシアとの対話の用意があることを示した直後の2022年2月25日、EUはその2日後にウクライナへの4億5000万ユーロの武器供与を決定しました。2022年3月も同様でした。2022年3月21日にゼレンスキーがプーチンとの会談を望むと示すや否や、EUは2022年3月23日に軍事援助を10億ユーロに倍増することを決定しました。2022年3月末、ゼレンスキーは興味深い申し出をしましたが、間もなく撤回されました。
どうやらゼレンスキーは、欧米の圧力と彼の極右性、そして解決策を見出そうとする彼の関心の間を行き来しようとして、「行ったり来たり」を強いられ、それがロシアの交渉担当者の意欲をそいでいるようです。
実は、ゼレンスキーは、第二次世界大戦中のソ連の元帥、コンスタンチン・ロコソフスキーのような極端な居心地の悪さを抱えているように思います。ロコソフスキーは、1937年に反逆罪で投獄され、スターリンから死刑を宣告されていました。1941年、彼はスターリンの命令で出所し、指揮を任されるようになりました。やがて1944年にソ連邦元帥に昇進しましたが、死刑判決が解かれたのは1956年でした。
今日、ゼレンスキーは、ダモクレスの剣の下で、西側の政治家や非倫理的なメディアの祝福を受けながら、国を導かなければならないのです。政治経験のない彼は、ウクライナをロシアに対抗して利用しようとする者たちの格好の餌食となり、極右運動の手中にありました。CNNのインタビューで彼が認めているように、2019年に彼の顧問であるオレクセイ・アレストヴィッチが確認したように、彼は明らかに、ロシアと公然と衝突した後にウクライナがより容易にNATOに加盟できると信じ込まされたのです。

TP:ウクライナの運命はどうなるとお考えですか? 「民主主義を広める」ための他の実験(アフガニスタン、イラク、リビアなど)のようになるのでしょうか? それともウクライナは特別なケースなのでしょうか?

JB: 私には水晶玉はありません… 現段階では、ウラジーミル・プーチンが何を望んでいるかを推測することしかできません。彼はおそらく2つの主要な目標を達成したいのでしょう。第一は、ウクライナにおけるロシア語を話す少数民族の状況を確保することです。ただし、どのように、というのは未解決のままです。2014年の騒乱から生まれようとした「ノヴォロシヤ」を再び作りたいのでしょうか。実際には存在しなかったこの「事業体」は、短命のオデッサ共和国、ドネツク共和国、ドニエプロペトロフスク共和国、ハリコフ共和国、ルガンスク共和国からなり、そのうちドネツク共和国とルガンスク共和国だけが「生き残って」いたのです。2022年5月上旬にケルソン市で予定されている自治権の住民投票は、この選択肢を示すものかもしれません。もう一つの選択肢は、これらの地域の自治権を交渉し、その中立性と引き換えにウクライナに返還することでしょう。
第二の目標は、中立的なウクライナ(「フィンランド化したウクライナ」と言う人もいます)を持つことです。つまり、NATO抜きです。スイスの「武装中立国」のようなものかもしれません。ご存知のように、19世紀初頭、スイスはヨーロッパの列強から中立の地位を課され、また列強に対する領土の悪用を防止する義務を負っていました。そのため、スイスには強力な軍事的伝統があり、今日の軍隊の主な根拠となっているのです。ウクライナについても、おそらく同様のことが考えられます。
国際的に認められた中立の地位は、ウクライナに高度な安全保障を与えることになります。スイスはこの地位により、2つの世界大戦中に攻撃を受けることがなかった。よく言われるベルギーの例は誤解を招きます。両大戦中、ベルギーは一方的に中立を宣言し、交戦国からは認められていなかったからです。ウクライナの場合、自国の軍隊は持つが、NATOやロシアなど外国の軍隊の駐留はない。これはあくまで私の推測であり、現在の二極化した国際情勢の中でどのように実現可能であり、受け入れられるのか、私には全くわかりません。
民主主義を普及させることを目的としたいわゆる「カラー革命」については、よくわかりません。地政学的な目的を達成するために、人権や法の支配、民主主義を武器化するための手段に過ぎないというのが私の考えです。実際、2017年にドナルド・トランプの国務長官であるレックス・ティラーソンに宛てたメモには、このことが明確に綴られていました。ウクライナはその一例です。2014年以降、欧米の影響を受けながらも、決して民主主義国家とは言えません。2014年から2020年にかけて汚職が急増し、2021年には野党メディアを禁止し、議会の主要野党党首を収監しました。一部の国際機関が報告しているように、拷問は日常茶飯事で、野党指導者だけでなくジャーナリストもウクライナ保安局に追われています。

TP:なぜ欧米はウクライナ紛争について、単純化されたイメージしか描こうとしないのでしょうか? 「善人」と「悪人」というイメージですか? 西側諸国民は本当にそこまで鈍感なのでしょうか?

JB: これはどんな紛争にもつきもののことだと思います。それぞれの側が自らを「善人」として描く傾向があります。これが、明らかに主な理由です。
これに加えて、他の要因も絡んできます。まず、政治家やジャーナリストを含め、ほとんどの人がいまだにロシアとソ連を混同しています。例えば、ロシアでは共産党が主要な野党であることを理解していません。
第二に、2007年以降、プーチンは欧米で組織的に悪者扱いされるようになりました。彼が「独裁者」であるかどうかは議論の余地がありますが、ロシアにおける彼の支持率が過去20年間一度も59%を下回ったことがないことは注目に値します。なお、ロシアで「外国人エージェント」のレッテルを貼られているためクレムリンの見解を反映していないレバダ・センター(ロシアにある独立系の世論調査機関)の数字をここでは引用しています。また、フランスでは、ロシアに関して最も影響力のあるいわゆる「専門家」が、実際にはイギリスのMI-6の「インテグリティ・イニシアティブ」のために働いているというのも興味深いことです。
第三に、欧米では、欧米の価値観の名の下になら何をやってもいいという感覚があります。このため、ロシアのウクライナでの攻撃は熱烈に制裁され、一方でFUKUS(フランス、イギリス、アメリカ)の戦争は、たとえそれが悪名高い嘘に基づいていたとしても、強い政治的支持を受けています。「私の言うとおりにしろ。そして、私がなすことは、するな!」 ウクライナ紛争は他の戦争より何が悪いのか、と問うことができます。実際、我々がロシアに新たに制裁を加えるたびに、アメリカ、イギリス、フランスに先に適用されていない制裁が浮き彫りになっています。
この信じられないような二極化の目的は、ロシアとの対話や交渉を妨げることにあります。私たちは、第一次世界大戦が始まる直前の1914年に起こったことに戻っているのです…。
(インタビュー後半に続く)

以上

かたせ2号 投稿日:2022/05/15 20:56

【184】ジャック・ボーの論説を紹介する(その4:後半)

かたせ2号です。
ジャック・ボーの論説(日本語への翻訳文)を紹介します。その第4回目(後半)。

(インタビュー後半部分の引用開始)
TP:今回のウクライナへの関与(長期に及ぶ可能性が高い)で、ロシアは何を得、何を失うのでしょうか? ロシアは、軍事的な面と経済的な面(終わりのない制裁とロシアへの「キャンセル」)の「2つの面」で対立しているように見えます。

JB:冷戦の終結により、ロシアは西側諸国とより緊密な関係を築くことができると期待されました。NATOへの加盟も検討されました。しかし、米国は和解の試みにことごとく抵抗しました。NATOの構造は、2つの核超大国の共存を許しません。米国は覇権を守りたかったのです。
2002年以降、ロシアとの関係の質は、ゆっくりと、しかし着実に低下していきました。マイダンのクーデター後の2014年に最初の負の「ピーク」を迎えました。制裁は、米国とEUの主要な外交政策手段となりました。ロシアがウクライナに介入したという西側のシナリオは、実証されることはなかったのですが、支持を得ました。2014年以降、ドンバスにおけるロシア軍の存在を確認できる情報専門家に会ったことがありません。実際、クリミアはロシアの「介入」の主な「証拠」となりました。しかし、もちろん、クリミアがウクライナ独立の半年前、ソ連の支配下にあった1991年1月に、住民投票によってウクライナから分離されたことを欧米の歴史家たちは見事に無視しています。実際、1995年にクリミアを不法に併合したのはウクライナです。それなのに、西側諸国はそのことでロシアに制裁を加えました…。
2014年以降、制裁は東西関係に深刻な影響を与えました。2014年9月と2015年2月のミンスク合意署名後、西側諸国、すなわちフランス、ウクライナの保証人であるドイツ、米国は、モスクワからの再三の要請にもかかわらず、キエフを遵守させる努力を全くしなかったのです。
ロシアは、何をやっても西側諸国から理不尽な対応を受けるという認識を持っています。だからこそ、2022年2月、プーチンは、何もしないことには何も得られないと悟ったのです。彼の国内での支持率の高まり、制裁後のロシア経済の回復力、米ドルに対する信頼の喪失、西側諸国の脅威的なインフレ、インドの支援によるモスクワ-北京軸の強化(米国は「クワッド」の維持に失敗)などを考慮すれば、プーチンの計算は残念ながら間違ってはいなかったのです。
ロシアが何をしようと、米国と西側の戦略はロシアを弱体化させることです。その時点から、ロシアは我々との関係において何の利害関係も持ちません。繰り返しなりますが、米国の目的は、「より良い」ウクライナや「より良い」ロシアではなく、より弱いロシアを手に入れることです。しかし、それはまた、米国がロシアよりも高い位置に立つことができず、それを克服するためにはロシアを弱体化させるしかないことを示している。このことは、我が国でも警鐘を鳴らすべきでしょう…。

TP:あなたはプーチンについて非常に興味深い本を書いていますね。それについて少しお聞かせください。

JB:実は、2021年10月、フランスの国営テレビでウラジーミル・プーチンについての番組が放映された後、私は本を書き始めました。ちなみに私は、ウラジーミル・プーチンを賞賛しているわけでも、西側諸国の指導者を賞賛しているわけでも断じてないのです。しかし、専門家と呼ばれる人たちは、ロシアや国際安全保障、そして単純明快な事実さえもほとんど理解していなかったので、私は本を書くことにしたのです。その後、ウクライナ情勢が進展するにつれ、私はこの激化する紛争を取材するためにアプローチを調整しました。
それは、ロシアのプロパガンダを伝えることではありません。実際、私の本は、西側の情報源、公式報告書、機密解除された情報報告書、ウクライナの公式メディア、そしてロシアの反対派が提供した報告書のみに基づいています。そのアプローチは、アクセス可能な情報だけで、私たちが「ロシアのプロパガンダ」と呼ぶものに頼ることなく、状況に対する健全で事実に基づいた代替的な理解を持つことができることを実証するものでした。
その根底にある考え方は、状況をよりバランスよく把握することによってのみ、平和を達成できるというものです。そのためには、事実に立ち戻る必要があります。今、これらの事実は存在し、豊富に入手可能であり、アクセス可能です。問題は、一部の個人がこれを阻止するためにあらゆる努力を払い、自分にとって不都合な事実を隠す傾向があることです。その典型が、私を「プーチンを愛したスパイ!」と呼んだ、あるジャーナリストです。緊張と過激派を煽って生きているのは、こういう「ジャーナリスト」なのです。私たちのメディアが提供する紛争に関する数字やデータは、すべてウクライナからのものであり、ロシアからのものは自動的にプロパガンダとして排除されます。私の考えでは、どちらもプロパガンダです。しかし、主流の物語に合わない西側のデータを出すと、すぐに過激派が「プーチン好き 」だと主張するのです。
我が国のメディアは、プーチンの行動に合理性を見出すことを心配するあまり、ウクライナの犯した犯罪に目をつぶり、その結果、ウクライナ人が代償を払っているという免罪符のような感覚を生んでいるのです。クラマトルスクのミサイルによる市民への攻撃は、ウクライナの責任である可能性が高いので、もはや話題になりませんが、これではウクライナ人は平気でまた同じことをやりかねません。
それどころか、私の本は、政治的解決を妨げる現在のヒステリーを軽減することを目的としています。私は、ウクライナ人が武器を持って侵略に抵抗する権利を否定したいわけではありません。もし私がウクライナ人なら、おそらく自分の土地を守るために武器を取るでしょう。ここで問題なのは、それは彼らの決断でなければならないということです。国際社会の役割は、武器を供給して火に油を注ぐことではなく、交渉による解決を促進することです。
この方向に進むためには、紛争を冷静に判断し、合理性の領域に戻さなければなりません。どんな紛争でも、問題は両側からやってきます。しかし、不思議なことに、私たちのメディアは、問題はすべて片側からしかやってこないかのように見せているのです。そして、その代償を払うのはウクライナの人々です。

TP:なぜプーチンは欧米のエリートからこれほどまでに嫌われているのでしょうか?

JB:プーチンが西側エリートの「ベットノア bete noire(フランス語でひどく嫌われた人物の意味)」になったのは、2007年のミュンヘンでの有名な演説のときです。それまでは、ロシアはNATOの拡張に緩やかに反応していただけでした。しかし、米国が2002年にABM条約を脱退し、東欧諸国と対弾道ミサイル配備の交渉を始めると、ロシアは熱を帯び、プーチンは米国とNATOを激しく批判するようになりました。
これをきっかけに、プーチンを悪者扱いし、ロシアを弱体化させるための執拗な努力が始まりました。問題は、人権や民主主義ではなく、プーチンが西側のアプローチにあえて挑戦したことであることは間違いありません。ロシア人とスイス人の共通点は、非常に法治主義的であることです。国際法のルールに厳格に従おうとします。「法に基づく国際秩序」に従おうとする傾向があるのです。もちろん、私たちはある事実を隠すことに慣れているので、このようなイメージは持っていません。クリミアはその典型的な例です。
欧米では、2000年代初頭から、アメリカが「ルールに基づく国際秩序」を押し付けるようになりました。その一例として、アメリカは、中国は一つであり、台湾はその一部に過ぎないと公式に認めているにもかかわらず、同島に軍事的プレゼンスを維持し、武器を供給しています。もし中国が(19世紀に不法に併合された)ハワイに兵器を供給したらと想像してみるとよいでしょう。
欧米が推進しているのは、「強者の法」に基づく国際秩序です。米国が唯一の超大国である限り、すべてはうまくいっていました。しかし、中国やロシアが世界の大国として台頭し始めると、アメリカは彼らを封じ込めようとしました。これはまさに、就任直後の20210年3月にジョー・バイデンが言ったことです。「世界の他の国々が迫ってきており、急速に迫ってきている。このままではいけない」と。
ヘンリー・キッシンジャーがワシントン・ポスト紙で言ったように、「西側諸国にとって、プーチンの悪魔化は政策ではなく、政策がないことのアリバイ作りである」のです。だからこそ、この紛争に対して、より事実に基づいたアプローチが必要なのだと感じました。

TP:米国とNATOが、ロシアの政権交代を地政学的な主要目的であると決定したのはいつで、誰が関与したのかご存知ですか?

JB:すべては2000年代初頭に始まったと思います。その目的がモスクワの政権交代であったかは定かではありませんが、ロシアを封じ込めることであったのは確かです。これは、それ以来、私たちが目撃してきたことです。2014年のキエフでの出来事が、米国の努力を後押ししました。

これらは2019年、ランド研究所の2つの出版物で明確に定義されました
・James Dobbins, Raphael S. Cohen, Nathan Chandler, Bryan Frederick, Edward Geist, Paul DeLuca, Forrest E. Morgan, Howard J. Shatz, Brent Williams, “Extending Russia : Competing from Advantageous Ground,” RAND Corporation, 2019
https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR3063.html
・James Dobbins & al., “Overextending and Unbalancing Russia,” RAND Corporation, (Doc Nr. RB-10014-A), 2019
https://www.rand.org/pubs/research_briefs/RB10014.html

これらによれば、法の支配、民主主義、人権とは何の関係もなく、世界における米国の覇権を維持することだけを考えています。つまり、誰もウクライナのことなど気にしていないのです。だからこそ、国際社会(つまり欧米諸国)は紛争を長引かせるためにあらゆる努力をするのです。
2014年以降、まさにこのような状況が続いています。西側諸国が行ったことはすべて、米国の戦略的目標を達成するためのものだったのです。

TP:この点で、あなたはもう1冊、アレクセイ・ナヴァルニーに関する興味深い本も書かれています。ナヴァルニーについて調べたことを教えてください。
(かたせ2号注:ロシアの反体制政治家、アレクセイ・ナヴァルニー毒殺未遂事件のこと)

JB:ナヴァルニー氏の事件で私が気になったのは、西側諸国政府が公平な調査結果を知る前に、ロシアを非難し、制裁を加えることを急いだことです。つまり、この本で私が言いたいのは、「真実を語れ」ということではありません。公式のシナリオが間違っているという一貫した指摘があったとしても、真実が何であるかは正確にはわからないのですから。
興味深いのは、ベルリンのシャリテ病院のドイツ人医師が、ナヴァルニーの体内から神経ガスを確認することができなかったことです。驚くべきことに、彼らはその研究結果を権威ある医学誌『ランセット』に発表し、ナヴァルニー氏がおそらく薬などの悪い組み合わせに見舞われたことを明らかにしました。
ナヴァルニー氏の血液を分析したスウェーデン軍の研究所は、発見した物質の名称を編集しました。
要するに、何が起こったのか正確にはわからないが、症状の性質、ドイツの医師の報告、ドイツ政府の議会での答弁、スウェーデンの不可解な文書などから、犯罪による毒殺、つまりロシア政府による毒殺は考えられないということになりました。
拙著の主旨は、国際関係は「Twitter主導」ではダメだということだ。最近のようにプロパガンダの道具としてではなく、賢く事実に基づいた意思決定のための道具として、情報資源を適切に使う必要があります。

TP:あなたはNATOの中で多くの経験を持っています。今、NATOの主な役割は何だと思われますか?

JB:これは本質的な質問です。実は、冷戦終結後、NATOはあまり進化していないのです。1969年には、時代に先駆けた「ハーメル報告書」があり、NATOの新しい役割の定義の基礎となり得るものだったからです。その代わりに、NATOはアフガニスタンのような、知的にも、教義的にも、戦略的観点からも準備の整っていない新しい任務を見つけようとしたのです。
欧州に集団防衛システムを持つことは必要ですが、NATOの核の次元は、核保有国との通常型紛争に関与する能力を制限しがちです。これがウクライナで起きている問題です。そのため、ロシアはNATOと自国の領土の間に、中立緩衝地帯を持とうと努力しているのです。これによって、紛争を防ぐことはできないかもしれませんが、通常戦力の段階で紛争をできるだけ長く維持することができます。ですから私は、非核の欧州防衛組織が良い解決策になると考えています。

TP:NATOのロシアとの代理戦争は、保守的な中・東欧と進歩的な西欧との間のEU内部の緊張をなだめる役割を果たしているとお考えでしょうか。

JB:確かにそのように見る人もいるでしょうが、これはロシアを孤立させるというアメリカの戦略の副産物に過ぎないと私は考えています。

TP:トルコがNATOとロシアの間でどのような位置づけにあるのか、一言お願いします。

JB:私はNATOにいたとき、トルコとかなり広範囲に仕事をしたことがあります。トルコは同盟のメンバーとして非常に熱心だと思います。私たちが忘れがちなのは、トルコが「キリスト教世界」と「イスラム世界」の交差点にあること、2つの文明の間に位置し、地中海地帯の重要な地域にあることです。トルコは地域的な利害関係者です。
欧米が中東で行った紛争は、イスラム主義を助長し、特にクルド人との緊張関係を刺激することによって、トルコに大きな影響を与えました。トルコは、西洋的な近代化への欲求と、国民の伝統主義的な傾向との間で常にバランスを保とうとしてきたのです。トルコが国内の安全保障上の懸念からイラク戦争に反対したことは、米国とそのNATO連合国によって完全に無視され、退けられました。
興味深いことに、ゼレンスキーが紛争を調停してくれる国を求めたとき、彼は中国、イスラエル、トルコに目を向けましたが、EU諸国には一切触れませんでした。

TP:もしあなたが予測するとしたら、今から25年後のヨーロッパと世界の地政学的状況はどうなっていると思いますか?

JB:ベルリンの壁の崩壊を誰が予測したでしょうか?その日、私はワシントンDCの国家安全保障顧問のオフィスにいましたが、彼はこの出来事の重要性をまったく理解していませんでしたよ。
米国の覇権主義の衰退が、今後数十年の主な特徴になると思います。同時に、中国やインドに代表されるアジアの重要性が急速に高まっていくでしょう。しかし、厳密に言えば、アジアが米国に「取って代わる」わけではないでしょう。米国の世界覇権は軍産複合体によるものでしたが、アジアの覇権は研究・技術分野によってです。
米ドルの信用喪失は、米国経済全体に大きな影響を与える可能性があります。欧米の今後の動向について推測はしたくないのですが、大幅なドルの信用の悪化によって、米国が世界各地で紛争に巻き込まれる可能性があります。これは現在も見られることですが、より重要になる可能性があります。

TP:競合する地域・国家と世界の利益を実際に動かしているものは何か、より明確に把握しようとする人たちにどのようなアドバイスをしますか?

JB:ヨーロッパと北米では、状況が少し異なると思います。

ヨーロッパでは、質の高いオルタナティブ・メディアや真の調査報道がないため、バランスの取れた情報を見つけることが困難なのです。一方、北米ではオルタナティブ・ジャーナリズムが発達しており、不可欠な分析ツールとなっています。米国では、情報機関がヨーロッパよりもメディアに登場することが多いです。
ヨーロッパのメディアだけでは、おそらく私の本は書けなかったでしょう。
結局のところ、私がアドバイスしたいのは、インテリジェンス・ワークの基本的なことがらです。すなわち、
「好奇心旺盛であれ!」です。

TP:お忙しい中、本当にありがとうございました。
(引用終わり)

以上

かたせ2号 投稿日:2022/05/15 17:30

【183】「地政学」の日本での第一人者である奥山真司さんへ一言、お願い。

奥山真司さんへ。
かたせ2号です。

2022年4月27日の英国トラス外相の演説(演題:「地政学の復活(The Return of Geopolitics)」について解説をいただければ助かります。参考にいたします。今後の世界の行方を占う、とても重要な演説だと思うので。
なお、「地政学」という学問は、おそらく今後、日本が拡大NATO(グローバルNATOかANZUSのいずれか)に加盟するのを推進するための論拠、「燃料」と使用されるだけに終わるだろう、とかたせ2号は予想しています。大変残念ながら。
この件に関する奥山真司さんの言論を見守ります。
(奥山真司さんへの悪感情はまったくないし、嘲る気持ちもまったく持ち合わせていないことを付言しておきます。)

以上

かたせ2号 投稿日:2022/05/15 15:05

【182】記事名:ネオコンの手によって日本が「戦争をする国」に仕立て上げられることはないのか (2022年4月30日配信)

かたせ2号です。
田中良紹さんの優れた論考を引用、紹介します。よろしくご参考ください。
(ふじむら掲示板[300]で、すでに一部を引用済みです)

ヤフーニュースから。
記事名:ネオコンの手によって日本が「戦争をする国」に仕立て上げられることはないのか
2022年4月30日配信
https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakayoshitsugu/20220430-00293955

(引用開始) 
映画監督のオリバー・ストーンが2019年に作った長編ドキュメンタリー『乗っ取られたウクライナ』を見た。原題は『Revealing Ukraine』だから直訳すれば『ウクライナの素顔を暴く』だが、邦題は「ウクライナが米国、特にネオコンに乗っ取られた」という内容を表現している。

 オリバー・ストーンは、自身が従軍したベトナム戦争を題材にした映画『プラトーン』と『7月4日に生まれて』でアカデミー監督賞を2度受賞した。他に『JFK』や『ニクソン』など政治家を主題にした映画や、米国の秘密工作の実態を暴露した元CIAのエドワード・スノーデンを主人公にした映画『スノーデン』などで知られる。

 最近では歴史学者と組んで米国の現代史を見直すドキュメンタリー『誰も語らないもう一つのアメリカ史』を作り、日本でもNHKが50分番組を10回にわたり放送した。またロシアのプーチン大統領に長時間インタビューを行うなど精力的にドキュメンタリー制作に取り組んでいる。

 彼がウクライナに関心を抱いたのは、プーチン大統領の話を聞いたからで、それからウクライナの歴史を調べ始め『乗っ取られたウクライナ』の前に『ウクライナ・オン・ファイアー』を作っている。だからこれはウクライナをテーマにした2本の作品の後編に当たる。

 『乗っ取られたウクライナ』は、ウクライナで最もプーチンに近いとされる野党政治家ヴィクトル・メドヴェドチュクへのインタビューを軸に進行する。彼はロシアによるクリミア併合で米国から制裁を受け、妻は出国を勧めているが撮影当時は母国にとどまる選択をした。しかし今回の軍事侵攻で自宅軟禁を破り出国しようとしたところを当局に逮捕されている。

 映画はメドヴェドチュクの他に、プーチン大統領、「マイダン革命」の虐殺を調査したオタワ大学教授、米国のジャーナリストなどの証言で構成されるが、ウクライナと因縁の深い副大統領時代のジョー・バイデン、国務次官補時代のヴィクトリア・ヌーランド、共和党上院議員時代のジョン・マケインら米国のネオコンも頻繁に登場する。

 メドヴェドチュクによれば、1991年に旧ソ連から独立したウクライナは、経済でも技術でも農業でも可能性のある国だった。民族的にも2014年に親露派政権が打倒された「マイダン革命」までは統一が保たれていた。

 しかし「マイダン革命」後のウクライナは、徹底してロシアを排除する勢力と、ロシアと友好関係を維持する勢力に二分され、親露派が多い東部地域では内戦が起こる。ロシアを排除したい勢力は2019年に公用語としてのロシア語を禁止し、半数の国民が使用言語を失った。

 メドヴェドチュクは一方に統一するのではなく、ウクライナを2つの国家に分け、ロシアからの独立も維持すると主張するが、その点ではプーチンと意見が異なる。プーチンはロシアとウクライナを一体と考えている。

 映画は問題の2014年「マイダン革命」の真相に迫る。親露派政権に対しEUとの接近を要求する反政府デモが起こるが、2014年2月18日までは平穏だった。しかし2014年2月18日にデモ隊と警察が衝突すると、正体不明の狙撃手によって2014年2月20日から2014年2月22日にかけてデモ隊が襲われ、警察官と合わせおよそ100人が殺害された。

 すぐ犯人と疑われたのはウクライナ警察とロシアの特殊部隊である。世界のメディアはその疑惑を事実であるかのように報道したが、事実は未解明のままだった。だがオタワ大学のイワン・カチャノフスキー教授が5年がかりで証拠を積み上げ、狙撃手はデモ隊が占拠したビルの中にいて、特定の場所に誘導されたデモ参加者が狙われたことを突き止める。しかし当初流された情報は今でも根強く残り、事件は不明のままとなっている。

 「マイダン革命」以降のウクライナには米国の介入が強まった。旧ソ連時代には宇宙産業や海運業などで先端を走っていたウクライナは、ロシアとの経済関係が破たんしてから生産国ではなく輸入国に代わったとメドヴェドチュクは言う。

 世界一のディーゼル機関車の生産国だったウクライナが今や米国からディーゼル機関車を輸入し、造船業も航空機産業も自動車産業もなくなった。ウクライナ東部で石炭が採れるのに、内戦が起きたため政府は海外から、しかも遠い米国から高い石炭を輸入するようになった。

 そしてバイデンの息子がウクライナの石油天然ガス会社の重役に就任すると、バイデンは副大統領時代にウクライナを頻繁に訪れ、植民地を支配する管理者のようにウクライナ政治に口出しするようになったという。

 また米国人ジャーナリストのリー・ストラナハンは、「マイダン革命」の背後に民主党支持の投資家ジョージ・ソロスと当時国務長官だったヒラリー・クリントンの存在があると証言する。

 ソロスは世界各地の民主化運動に資金を提供し、「マイダン革命」もその一つであった。そのソロスとバイデンとヌーランドは、2016年大統領選挙でヒラリー・クリントンを大統領にするため中心的役割を果たす。

 ドナルド・トランプを落選させるため、彼らはプーチンとトランプの関係を「ロシア疑惑」として浮上させ、トランプの選挙責任者ポール・マナフォートを有罪に追い込むが、マナフォートを訴追させた資料はウクライナの弁護士が公開した資料だった。

 ウクライナを分断した2014年の「マイダン革命」は、実は2016年米大統領選挙と連動し、トランプとヒラリーが戦ったあの選挙にはウクライナが深々と関与していたのである。しかし2016年大統領選挙にトランプが勝利したことで米ロ衝突の危機は回避された。

 オリバー・ストーンの『乗っ取られたウクライナ』を見ると、ウクライナの政治状況と米国内の政治対立とが見事に重なっていることを知る。最後のナレーションは、「ウクライナとロシアの国境付近でウクライナの挑発があり、それがロシア軍の侵攻を招き、世界は『ロシアの侵略だ』と騒いでNATOとロシアが戦争になる」。そして核爆発の映像に「人類最後の戦争」というナレーションがかぶる。

 いま世界が目にしているのは『乗っ取られたウクライナ』が予想した悪夢の現実化だ。ロシアの侵略に西側世界は怒り、大悪人のプーチンを潰すことのみに目を奪われているが、私は以前からブログに「戦争は現象面を感情的に見てはならず、本質が何かを冷静に読み解く必要がある」と書いてきた。

 戦争の真相など何年か経たないと分からないものだ。ただなぜ2022年2月24日にロシア軍が補給も十分でないままウクライナに侵攻したのかは私も疑問である。西側メディアは「狂気のプーチンによる帝国主義的侵略」と言うが、私にはプーチンが狂っているように思えない。手掛かりを探していたら、こんな情報を見つけた。

 「フランス・インテリジェンス研究センター」の研究誌2022年3月号に、ジャック・ボーという元軍人が書いた記事で、事の起こりは去年(2021年)の3月24日、ウクライナのゼレンスキー大統領が「クリミア奪還」の指令を発し、並行してNATOが黒海で軍事演習を行ったことから始まる。これでプーチンも国境周辺にロシア軍を配備し軍事演習を始めることになった。

 演習は2021年11月までで終了するが、するとゼレンスキーはドローンで東部親露派勢力の燃料庫を爆破し、「ミンスク合意」に違反する。2022年2月7日、フランスのマクロン大統領がモスクワを訪れ「ミンスク合意」順守を約束するが、ウクライナはこれを拒否、プーチンは西側に約束履行の気がないことを確信した。

 そして2022年2月16日以降、ウクライナのドンバス住民への攻撃が激化し、それを西側が見て見ぬ振りしたため、プーチンは軍事侵攻に踏み切ったというのである。付け加えれば、2022年1月18日に西側工作員が東部地域で化学兵器を使った事故を引き起こそうとし、親露派戦闘員に逮捕されたことも引き金になったという。

 この情報の真偽を確かめることはできないが、何か突発のことがなければ補給の準備なしに軍事侵攻することは考えられない。それとも侵攻すればすぐにウクライナが降参するとでも思ったのか。しかしウクライナの背後に西側がついていることを熟知するプーチンがそう考えるはずもない。だから戦争の真相は時間が経たなければ分からないと考えるしかない。

 それよりもこの戦争で世界がどう動くことになるか。それを考えることの方が重要だ。まず世界的に軍拡が始まると思う。軍需産業は大喜びだ。欧州では各国が相次いで防衛費をGDPの2%以上にする動きに出た。抑制的だったドイツもショルツ首相が防衛費を倍額する方針を示し、緑の党も賛成に回った。

 日本でも自民党の安全保障調査会が、敵のミサイル攻撃に対し反撃する能力を保有することと、5年以内に防衛費のGDP比2%以上を目指すよう政府に申し入れた。プーチン憎しの現状では、軍拡は世界の流れとして多くの国民が受け入れる可能性がある。

 次に出てくるのは核武装の議論だ。日本でも安倍元総理がいち早く米国との「核共有」に言及したが、現実的でないとして見送られた。しかし周囲に中国とロシア、それに北朝鮮という核保有国がある以上、核武装の議論が消えることはないと思う。

 これから日本国民は真剣に安全保障問題の議論に取り組まなければならない。これまでは平和憲法を護れば世界は平和になるという幼稚な議論と、憲法に自衛隊を明記する必要があるという幼稚な議論が盛んに言われた。しかし現実の戦争を見ればいずれも浮世離れした議論であることに気付く必要がある。

 一方で防衛費の増大も核武装もウクライナ戦争に触発された反射的というか、感情的な議論に過ぎないように私には思える。防衛費の増大も核武装も何のためかと言えば、それによって相手が攻撃するのをやめる「抑止力」にするためだ。

 戦争になってしまったら勝とうが負けようが国民には悲惨が待ち受ける。だから問題は戦争にならないよう「抑止力」をどうやって確保するかの問題である。しかしミサイル攻撃で反撃すると日本が言えば、相手はそのミサイル基地を標的に次々に攻撃を仕掛けてきて、「抑止力」にならないという議論もある。

 また防衛費の増額も良いが、武器に金をかけるより、戦争をさせないための外交力を磨くことに金をかける方が「抑止力」になり、国家にプラスになるという考え方もある。とにかく現実の戦争を見ながら、そのあたりを真剣に議論する必要が出てきたのだ。

 そして『乗っ取られたウクライナ』を見た私は、それよりもウクライナがネオコンに引きずられて戦争に至ったように、日本もネオコンに引きずられて戦争に至ることのないように、よく目を見開いて対処していかなければならないと思う。

 その兆候が現れ始めているからだ。例えば2022年4月28日にネオコンの一人であるブリンケン国務長官は米上院外交委員会で、2022年6月下旬にスペインで開かれるNATO首脳会議に岸田総理が出席することを明らかにした。

 NATOは軍事同盟であるから政治や外交の話をするところではない。ロシアとの戦争を話し合う場である。平和憲法を持つ日本の総理が出席したことのない場に岸田総理は出席することになった。これも国民と与野党が揃ってプーチン憎しで一致しているからだ。

 また2022年5月下旬にはバイデン大統領が来日するが、その目的は日本をAUKUSに加盟させるためである。AUKUSは米英豪の3カ国で作る中国敵視の軍事同盟だ。これまで日本は日米豪印4か国で作る「クアッド」の一員だったが、こちらは政治的に中国を包囲する組織で戦争を念頭に置いたものではなかった。

 それが変わるのである。日本は中国とロシアを敵とする軍事同盟の一員として存在感を示さなければならなくなった。そのように誘導しているのは米国のネオコンである。くれぐれもウクライナのように戦争の前線に押し出されることのないよう、冷静な目で戦争を見るように心掛けなければならないと思う。
(引用終わり)

以上