重たい掲示板

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松村享(まつむらきょう) 投稿日:2011/12/23 03:13

【731】[818]はじめまして。

はじめまして。
会員番号5307番、松村享(まつむらきょう)と申します。

25歳でフリーターです。
大学には行っておりません。
高校からして、だいぶサボりがちでした。

さぼって何をしていたかというと
神社の木陰なんかで三島由紀夫やらヘーゲルやら読んでいました。
あとは、ふらり旅に出てホームレスのおっちゃんと一晩語り明かしたり
あるいは、誰かを殴って警察に連れていかれたり、典型的に反抗的なティーンネイジャーでした。

様々な事を考えていました。
生きるということについて、
人間世界について、そうなると歴史について
次は現代の世界情勢について
そんな思考の途中で、小室直樹先生や副島隆彦先生と出会いました。

少年期の私の人格形成は、先生方にかなり深い影響を受けたと思います。

とかく、考え事をしている人間で、世界観は膨大になっています。
もちろん自分個人の歴史ですし、これまでの自分にプライドを持っております。

が、これまで自分は自分以外の存在を認めていなかったことも事実だと思います。
また、大きく育った世界観からのみ物をいう、次第に現実に立脚せず、あちら側の世界の住人と化してしまいがちな面もありました。これは、副島先生に指摘された事です。

なので、これからこの重たい掲示板において
大きく普遍的な人間世界を語るのではなく
自分の現実に立脚した、日々徒然の考え、思考の破片を
少しずつ書いてゆこうかと思っております。
よろしくお願いします。

最近思った事、
自分は、お金がない!!
だいぶ社会不適合なところがあって、普通に労働できないんですよね。

で、類が友を呼んでいるのかわかりませんが
自分の周りには、就活に反対している者もいますし
そこまで表面に出してはいずとも
『仕事ってまさしく時間泥棒だよな』とぼやいている者もいます。
労働は神聖なり、の倫理は私たち、あんまり持ってないと思います。

時代的なものは大いにあると思いますが、
50歳、60歳の方々は、私たちの世代のこういう態度
労働にあんまり興味を持っていない生き方をどう思われるのかは気になります。最近の若者はーと言われちゃうんでしょうか。

労働を価値の生産と定義付けるならば
たぶん、大概の事に価値を見いだせなくなっている状態が、今の私たちなんですよね。

今たぶん周りを見る限り、なんでもない普通の、ほんのり暖かい人間関係を求めてる人間がものすごく多いと感じます。
本人は言わずとも、私はそう感じます。

若干、逆説めいてきますが
ほんのり暖かい人間関係が築ければ
今の若者も、労働に身を入れる事ができるんじゃないかと感じます。
(私個人はどうしても労働できないのですが)

だんだん、小室先生の話に近づいてきている感じがしますが
『共になにかをやる事』が日本における共同体の生成法ならば
労働問題、経済問題は、ほんのり暖かい人間関係までも考えてあげねばならないと思っています。

経済問題は、経済の事だけを考えても永久に解決しない!
と思いました。

さて今日はこの辺でやめておきます。
それではまた、ぽつぽつと投稿してゆきたいと思います。

松村享 拝

吉見 おさむ 投稿日:2011/12/21 18:34

【730】[817]福島本部活動日誌です49

以下に、MLに投稿した内容を転載します。

(転載始め)

2011年12月11日の日誌です。

LEDライトの光がまだ慣れず、寝るのに一苦労しました。

洗濯をしました。外に置くしかない洗濯機が冬季も普通に動いてくれるか、今から心配です。

午後7時、Iさんが来ました。
Iさんは、夜のうちから屋根を作る作業に取り掛かっていました。

レシートの整理をしました。
明日、ダイユーエイトで過去のポイントをつけてもらう関係上、一度金庫の金を使って11月にかかった費用を清算しました。
未明までかかる作業になってしまいました。

遅めの夕食として、ご飯、漬物、もずく、納豆、麻婆豆腐、を用意しました。
もっと書くことがあったはずなのですが、思い出せません。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月12日の日誌です。

燃えるごみを出しました。

午前8時38分、機動隊の車両が2台通りました。一台は川内村方面に行き、もう一台は都路の検問所方面に行きました。
月曜日が検問所の見張りを交代するタイミングだと聞きましたので、その車両だったのかもしれません。

船引と常葉町にIさんの軽トラックで行って、屋根の材料を調達しました。
行く時に「鳩を原ノ町まで飛ばす」と言っている人たちが、都路大橋を下りた所に居ました。
行きの道の途中ですれ違うトラックは、「災害復興支援」と書かれた張り紙をフロントガラスに貼っていました。
ダイユーエイトとコメリで鉄パイプなどを購入しました。洗濯機の延長排水ホースや夕食用の食材なども購入しました。
途中でケーズデンキとコンビニに寄らせてもらいました。LEDスタンドとエネループ、それから、事故から1ヶ月の間をまとめた河北新報のムックを購入しました。

午後2時から歯医者に行きました。1時間20分かかりました。

遅めの昼食は、焼そばでした。

Iさんは屋根を作る作業をしていました。

午後8時から、Iさんが設置した看板上の照明の設置を簡単に手伝いました。

夕食は、蕎麦、酒、漬物、もずく、半額の海栗、半額の生牡蠣を酢醤油で味付けしたもの、でした。
主な調理はIさんがされたので、美味しかったです。
なお、メキシコ産の199円の海栗は、一寸変な味がしました・・・。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月13日の日誌です。

検問所の警官は2週間で交代するのだと聞きました。
また、ガソリンスタンドで雑談をしていた人達が
「事故の後な~んであいつら原発の方行くんだってやつらがいたけど、あいつら今思えば窃盗団だったんだなぁ。ATMとかコンビニとか、6億やられたらしい。」
と言っていました。

灯油を60リットル、ガソリンスタンドで補給しました。

2階と奥の部屋に掃除機をかけました。
布団とソファーを干しました。
洗濯をしました。

昼食は、ご飯にかれいの煮付けもどきを載せて、一気に食べました。

Iさんの作業を簡単なものだけ手伝いました。
とは言っても、余り役に立ってはいませんでした。

今日NTTの工事があって、光回線へ切り替わりました。
ADSLよりもずっと速くて驚いています。
但し、無線LANが上手く設定できていない状態です。

ガラスの壁に断熱材を貼りました。まだ半分ほど貼る箇所が残っています。

常葉町のコメリに屋根の部品を買いに行きました。
行く時に古道体育館の明かりがついていました。

夕食は、ご飯と鍋もどきを作って、後は昨日と同じものをお出ししました。
私は腹の調子がおかしかったので食べませんでした。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月14日の日誌です。

無線LANの設定が出来ました。
現在問題無く使用可能です。2階でも使えます。
なお、2階のPCのメンテナンスを少しだけしました。

久々に石井魚店に行きました。
帰りに通りがかったパトカーは、警官が厚い防護服を着ていました。

昼食は炒飯をIさんが作りました。

午後3時10分、古道体育館に行ってみましたが、入り口、裏口ともに人がいて、ちゃんとした写真が撮れませんでした。
脇の入り口には車が停めてありました。

公民館の駐車場には宮城ナンバーの車が2台、いわきナンバーと福島ナンバーの車が3,4台置いてありました。

古道小学校の崖崩れ現場では、隣の木々も切られていました。

ショベルカーが崖の上から入れられていました。

大家さんのところに自転車で行って、屋根を作る許可を貰ってきました。

M商会でパイプを5本購入しました。
Iさんによると「意外と品揃えは良い」とのことです。

夕食は、余り物で作ったカレー、セロリと長芋のサラダ、白菜の漬物、でした。

六城さんが関心を持っていた、たくきよしみつ氏の裏日記はこちらです。
http://gabasaku.asablo.jp/blog/

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月15日~20日の日誌(・簡略版)です。
一寸大量に溜めてしまったので、時系列のおかしい簡略版ですが、ご容赦下さい。

17日に雪が降りました。

20日現在で融けていますが、また降り出しています。晴れているのに雪が降っています。
なんとか自転車を走らせることは出来ましたが、今後はわかりません。
道路は凍結しそうですので、ご注意下さい。

17日の検問所前の立て看板には、雪に注意を促す看板が追加されていました。

奥では3人の警官が外に立っていました。

丁度、原発に向かう作業員が検問所を抜けていくところでした。

公民館前の駐車場では、防護服を着た人が車に乗るところでした。

体育館内には防護服を着た人達が集まっていました。

Yさんが15日の午後3時半に来ました。
取材の途中で通りがかったそうです。
3分だけ居て、事務所の写真を撮っていました。
「ここだったのか・・・」と言っていました。

大家さんの奥さんが来ました。
干し柿を頂きました。

288号線と399号線を小型クレーンのついたトラックが頻繁に行き交っています。
以前に比べて、警察車両の頻度が減り、資材を積んだトラックが増えています。



19日の午前8時30分に、検問所方面から家畜運搬車が走ってきて驚きました。

警察車両のなかに、のどかな音楽をかけながら防犯を呼びかけるものが出てきました。

歯医者に行きました。

16日、17日は食事を摂らずに、お茶だけ飲んでいました。
残っているラーメンや鍋の残りなどがなかなか減りません。

K先生から衣類を頂いてしまいました。大変恐縮です・・・。

東京書籍の「new horizonでもう一度英語をやってみる」が届きました。
内容がエロゲやラノベ、そのまんまでした。
過去の教科書に載っていたキャラ達がこんな風に成長するのは、大変感慨深いです。

この本で一番盛り上がるのは、この絵を見て、どちらが攻めでどちらが受けなのかを考える事なのだと思います。

流石は、教科書を作っていたにも拘らず、トンキンハウスという名前で名作ギャルゲーを作っていた、東京書籍という・・・・・・・・・優れた出版社の著作物は物凄いと感服しました。
(ただ、エロ小説のフランス書院は筑摩書房がやっている(らしい)ことを考えると、余りおかしい話ではないのかもしれません。
少なくとも光栄の様に、世界初のエロゲーを作ったのに、社史からその過去を抹消するような行為とは比べようもありません。)

(転載終わり)

東京書籍というと、東大受験生必携と言われる(らしい)世界史Bの教科書&数学の問題集であるニューアクションシリーズが人口に膾炙していると思うのですが、私には断っ然「Lの季節」です。もう少し私の能力が高ければ、ギャルゲー史上最高傑作との意見もある「Missing Blue」を出来たのでしょうが、挫折しました・・・。

吉見 おさむ 投稿日:2011/12/21 17:56

【729】[816]福島本部活動日誌です48

以下に、MLに投稿した内容を転載します。

(転載始め)

2011年12月7日の日誌です。

痛み止めを飲んだ影響か、起きられたのは午後2時でした。
やっぱり治療箇所の神経は、ずっと痛かったです。

Iさんは一旦実家に帰りました。明日からまたお世話になります。
なおIさんがいつの間にか、昨日の鍋もどきを煮物(風?)にして下さっていました。

今日も午後6時まで体育館の電気が点いていたので、作業をしていたのだと思います。

午後6時から駄目になりそうな食材を加熱処理しました。
しめじを出汁で煮てから日本酒、砂糖、醤油、チーズを入れて誤魔化しました。

夕食は、4日前のご飯、納豆、もずく、でした。

夜は痛み止めを飲んで、溜まっていた日誌を投稿しました。
不完全な所がたくさんあって、頭が痛いですが、送信ボタンを3日分押してしまいました。
画像の整理に手間取ってしまい、その分だけ内容が薄くなってしまっています。

12月8日午前3時半、パトカーが検問所方面に走っていきました。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月8日の日誌です。

午後2時、Kさんが来ました。
川内村の(井出茂村議会議員のやっている)旅館兼蕎麦屋に行ってみたのですが、誰も居ませんでした。
入り口の所にお酒とKさんの持ってきた花を置いて帰りました。
入り口の横には先生の書いた紙が貼ってありました。

Iさんが午後3時15分に来ました。
KさんがLEDライトを持ってきたので、1時間かけて、新聞ポストのある柱に飾りました。

(↑は夜撮った画像です)

3人で船引に行きました。
Iさんの屋根の部品調達にダイユーエイトに行きました。これでほぼ材料は揃ったそうです。
また、窓に貼る断熱材、はさみ、電源延長コード、半額の食料品なども購入しました。
船引の中華料理屋で夕食にしました。
食後にKさんと、都路に戻ってからIさんと別れました。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月9日の日誌です。

午前1時に288号線を通りがかったパトカーが、LEDライトの所で減速していました。

体育館に行ってみました。
暗くてよく分かりませんでした。
また、体育館のガラスが反射するので、適切な写真が取れませんでした。
明日また行ってみます。

12月10日午前6時50分、「浪江??」と書かれた中型クレーン車が、288号線を帰っていきました。
その後も検問所方面から帰ってくる車が多かったです。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月10日の日誌です。

昨日、今日と、余り掃除などが出来ず、ストレスが溜まります。

灯油を30リットルガソリンスタンドで補給しました。

古道体育館で作業をしていたので、終わりに行ってみました。
入り口に車が一台置いてありました。

体育館内部は、ストーブの周りにパイプ椅子が並べられていました。



(この写真に「着装場」の文字があります)
入り口に一人作業員がいて、帰り支度をしているところでした。

この写真を撮ってから5分後に体育館の電灯が消えました。

今日の都路の放射線量は0.35μSvでした。

「冬コミックイベント直行バス」というものが最近はあるのか、と、遠い目を一日中していました。
http://travel.willer.co.jp/event/comicevent/index.html?mid=440
また、そこからのリンクに貼ってあった「KKRホテル」というのは、「コールバーグ・クラヴィス・ロバーツのやってるホテル」なのか?と早合点してしまいました。
国家公務員共済組合連合会のホテル、でした・・・。

(転載終わり)

電灯やLEDライトをつけずに節電した方が良いと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、丁度このあたりは電灯が無くて少し危ないので、夜に明かりをつける意味があるところです。

吉見 おさむ 投稿日:2011/12/21 17:27

【728】[815]福島本部活動日誌です47

以下に、MLに投稿した内容を転載します。

(転載始め)

2011年12月3日の日誌です。

雨が降っていました。
そのせいなのか、ずっと続いていた体育館の作業が今日は無かったようです。

レシートの整理をしました。
その他にも些事を処理していたら時間が過ぎていました。
・・・別にサボっていたわけでもないのですが、何をしていたのか思い出せません。
若年性健忘症でしょうか。
(思い返してみると、写真の縮小とアップと整理、ごみの整理、の二つでした。)

光回線への切り替え手続きをしていました。12月13日から切り替わる予定です。
1月当たり2000円余計な出費になりますが、ライフラインの一種なので倹約しないことにしました。
併せて古いプロバイダの解約手続きを行いました。こちらは少し時間がかかります。

夕食は、賞味期限5日切れのラーメンを食べました。
同時に10日前の鍋を食べました。もう少しです。

明日来るIさんとHさん用に簡単な料理の下準備をしました。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月4日の日誌です。
今日も写真が漫然と大いです。

午前中は、駄目になりそうな食材を加熱しました。
風が強すぎて、布団を干せませんでした。干せたのはソファーだけでした。
また、ポリバケツの蓋がいつの間にか飛ばされていて、粉々になっていました。
おそらく288号線上にあったところを車に潰されたのだと思います。悔しいです・・・。
ポリバケツの本体は崖の下に落ちていたので、明日取ろうとしてみます。

昼食として、11日前の鍋を食べました。もう少しで完食です。

IさんとHさんが来ました。
まずは検問所を案内しました。

帰る時に、検問所を撮影しに来た人がいました。

昼食は、船引の中華料理屋に連れて行って貰いました。
私の頼んだ「中華風エビチリドリア」は、・・・・・・合いませんでした。

昼食後に船引の仮設住宅と春山小学校を案内しました。
仮設住宅の通路はかなりアスファルト舗装がなされていました。


仮設住宅のごみ置き場内に、シクラメンが寒さを避けるために入れられていました。

春山小学校に向かう途中、東電の賠償相談窓口は開いていませんでした。

休日だからやっていなかったのか、それともここから引き払ったのかはわかりません。
春山小学校の内部は、10月30日とは違い、よくある小学校の風景になっていました。

船引の駅前は普通の町の光景でした。

船引公民館には車が一杯停まっていました。北島ファミリーの演歌公演があったようです。

途中でフジテレビの車が船引の288号線と349号線の交差点を通って、おそらく三春か郡山に帰っていきました。

ダイユーエイトに寄らせてもらって、半額の食料品とポリバケツの蓋を買いました。
また、船引と常葉町の酒屋でウイスキーとリキュールを補充しました。
といいますか、補充しすぎました。

都路に戻ってから、体育館と小学校を案内しました。
体育館は今日も電気がついていて、入り口に人がいました。作業が終わったところだと思います。
外から見えないような補修がなされていました。

奥には防護服と一緒に
「スクリーニングエリア 〔入域時〕○マスク、綿手、シェズカバー着用 (作業時)?????○タイベックスーツ着用 〔退域時〕○念のためサーベイ(??)励行○装備品は各自のハンガー等へ○廃棄物は区分はしコンダクト 『スクリーニングエリア』ビニール袋に収納』」
という張り紙のある場所がありました。

また、「物品スクリーニングエリア」という張り紙のある場所がありました。

事務所に戻った後、IさんとHさんは午後5時40分に帰りました。大変お世話になりました。

夕食として、鍋の最後の残りを食べ切りました。
ついでにお客様用の麻婆豆腐を作りました。

12月5日午前3時、パイプ椅子を業務用冷蔵庫の裏に置き直しました。
退かしたところは非常に汚れていたので、掃除機をかけました。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月5日の日誌です。

午後1時半から歯医者に行きました。
麻酔を使っての治療で、午後4時までかかりました。説明された通り、麻酔が切れてからとても痛いです。

ガソリンスタンドで両替をしてあげました。3万円分両替しました。

夕食は、やばくなっているパンなどをできるだけ処理しました。

12月6日午前0時10分、Iさんが来ました。
看板と屋根の作成でしばらく事務所に滞在されます。宜しくお願いします。
Iさんは東北泉という日本酒を飲んでいました。私もお付き合いしたかったのですが、麻酔の影響で飲めず、牛乳を飲んでいました。
K先生から頂いたホタテのひもを肴にして、暫く話していました。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月6日の日誌です。

今日はずっと治療中の歯が痛かったです。

プラスチックごみを捨ててきました。1日早かったですが、猫などに荒らされるようなものはなかったので、出しても大丈夫だと判断しました。

検問所は、防護服を着ていない警官が立っていました。側には警察車両がありました。

県警によってどの程度の放射性物質対策をするのか、かなりの差があります。

行政局手前では、電線の補修が行われていました。

体育館に行って見ました。
体育館の脇には車の停止線?や電源の延長コード、ライト、カラーコーンが置いてありました。

屋根からの水が落ちてくるところには覆いがしてありました。

脇の入り口から中を覗くと、館内には防護服を着た人が一人休んでいました。

別の入り口には、中に別の作業員が一人いました。その人は防護服を着ていませんでした。

灯油をガソリンスタンドで30リットル補給しました。ついでに、3万円ほど細かく両替してあげました。

洗濯をしました。布団とソファーを干しました。
曇っていたので、余り効果は無かったかもしれません。

大広間に掃除機をかけました。奥の部屋と2階はかけられていません。
・・・それでも久々に自分で掃除機をかけられました。凄く嬉しいです。

Iさんは看板の反対側を完成させました。
また、外風呂の上に作る屋根の材料を揃えていました。

昼食として市販のラーメンを作りました。
出汁はとってあったので、そこに炒めてあった野菜類を入れました。
Iさんが食べて下さったので安心しました。

Iさんが、白菜の漬物をつくって下さいました。一冬の間保つらしいので、大変ありがたいです。

残っている野菜で鍋とお吸い物の間の何か?を作りました。
大根、白菜、人参、大蒜、生姜、鶏肉、を煮た・・・というよりは出汁をとっただけで、全く味をつけない状態で措きました。

午後5時半、体育館の電気はまだ点いていました。午後6時まで作業をしているものと思われます。

Iさんに船引に連れて行って貰いました。
中華料理屋で夕食を食べました。先日IさんとHさんとで行った時と同様に、この料理屋では今日も忘年会をしていました。
コメリとダイユーエイトで、Iさんが作る屋根の部品を調達しました。また、同時に2メートルの脚立も購入しました。
その他、乾電池、軍手、半額の食料品なども買いました。
実は、最近は半額の食料品を船引に買いにいける機会が集中してしまっているので、買い過ぎてしまいます。
ダイユーエイトにあった風除けの小型ビニールハウスは、古道体育館内に置いてあるものと同じものかもしれません。

船引の仮設住宅を邪魔にならないように回って、夜の写真を撮りました。
(←この3枚目は1枚目とは反対側から撮影しています)
帰り道の都路大橋付近で猫が車に撥ねられていたので、それを見たIさんが、帰った後に猫の遺体を埋めに行きました。

事務所に戻ってから、酒を軽く飲みました。

(転載終わり)

Hさま、あの後、支援物資をお送り下さいまして有難う御座いました。大切に「使用」させて頂きます。

吉見 おさむ 投稿日:2011/12/21 16:59

【727】[814]福島本部活動日誌です46

以下に、MLに投稿した内容を転載します。

(転載始め)

2011年11月29日の日誌です。

歯の詰め物がまた取れてしまったので、歯医者に行きました。
次は麻酔を使うそうで、またしばらく通うことになりました。

午前11時、古道体育館に行きました。
東電の職員が2人警備をしていて、中になかなか入れませんでした。

一旦諦めて川の方に行ってみたら、大家さんと奥さんにお会いして、少しだけお話しました。

もう一度体育館に行ってみました。
古道こども園の入り口や窓が全開になっていました。

体育館の脇の入り口には職員が10人弱ほど集まっていました。
もう少し近づいて撮影したかったのですが、アイミーブが通路に置いてあり、通れませんでした。

古道小学校では崖崩れの箇所で撤去作業が行われていました。

灯油を30リットル補給しました。

電気代のお知らせが来て、47.071円でした。
以前より2万円安くなったとはいえ、先月より12500円も上がってしまい、かなり嫌でした。

東北電力の「原発が近くにあって御免なさい」金を、郵便局で換金してきました。
35,700円でした。小型金庫に入れてあります。

Kさんから食料品が届きました。
K先生から石油ファンヒータが届きました。
大変有難く頂戴します。

午後1時から午後4時まで、台所と建物裏と脇のコンクリート部分にブラシをかけました。
寒くなっているので、掃除していて大変冷たいです。
体が冷え切ったので、終わった後に急いでシャワーを浴びました。
それでも、2ヶ月ぶりに普通の事務所清掃サイクルに戻れてホッとしました。

昼食は、Nさんから頂いたどら焼を一個ほど食べました。
食べながら掃除をしたので、余り行儀の良いものではありませんでした(汗)。

午後6時、シャワーで体を温めてから、作業員の帰った後の古道体育館に行ってみました。
体育館の裏側には、いつの間にか倉庫のようなプレハブが建っていました。

体育館脇には、「関係者以外ハここからの入域ヲ禁ズ」と書かれた張り紙が貼ってありました。

体育館の脇の入り口は、画用紙のような、あるいは新聞紙のような、水分を多く含んだ紙のようなものが、濡れて置いてありました。
消毒液の匂いがしました。

夕食は、ご飯、ラーメン、パン、鮭の残り、牛肉の残り、麻婆豆腐の残り、鍋の残り、でした。
体に悪そうな炭水化物系を自棄食いして大量に食べたはずなのに、一向に減らなくておかしいです。
そもそも私は余り食べませんので、私の自棄食いなんて言ってもたかが知れています。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年11月30日の日誌です。

今日は体育館に作業員が来ていなかったです。

Hさんからお電話を頂きました。Iさんとお越しになるようです。

一日飲んだくれていて、ルジェ・カシスを空にしました。

夕食は、駄目になった麻婆豆腐の残りにラーメンとお湯を入れたもの、でした。
夕食を作る際に、K先生から頂いた石油コンロを使ってみたのですが、慣れないことはするものではありませんでした。
火をつけるだけで1時間かかりました。その他、色々とわやくちゃになってしまいました。
商品としては、灯油と乾電池だけで使えるので災害に強く、火加減も沸騰したままで止まるなど、優れたものだと思います。
なお、麻婆豆腐とラーメンは相性がかなり悪かったです。

今日は書くことがなくて困りました。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月1日の日誌です。

燃えるごみを出しました。やっと出せました。

ガスコンロの網を発見しました。流しの下にありました。

部屋の中は暖房をかけているのに、・・・9度です。とても寒いです。
以前にPさん一家がいらした時は、20度までならば灯油ストーブをつけることで上げられたのですが、一人では難しいです。
それでもこたつに入れば暖かく寝られるので、大変改善されました。

2階に掃除機を半分だけかけました。
実は寒すぎたので、途中で断念しました。
ほんの少し掃除をするだけでこの有様でしたので、みっともない格好をすることを承知の上で、服装などを抜本的に考え直し中です。

二週間賞味期限切れの納豆などは、食べに食べて減らしているはずなのですが、一向に減りません。
ラーメンに納豆をかけて食べるなど、自分でも下手物食いが極まったと思うのですが、食べてしまえば一緒だと思うことにしています。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年12月2日の日誌です。

缶とペットボトルのごみを捨てました。

朝に古道体育館の駐車場に車が停まっていました。
行ってみると、放射線量を調査するためと思われるラジコンヘリが出されていました。(注:なお、12月下旬も、作業員の格好は、この様に青っぽい作業服が多いです。それか、白い防護服を着て、原発に向かうかです。)

古道体育館の裏に、仮設トイレが移っていました。

体育館内には防護服を着た人がいました。
(←この写真では見辛くてわからないかもしれません)

古道小学校の崖崩れ現場では、崖の上に残っていた木が切られて無くなっていました。

下の校庭では切られた木が処理されて整理されていました。

電気代47071円を振り込みに行きました。

布団やソファーを干そうかと思ったのですが、この気温では干しても余り意味がないと思い、止めておきました。
布団乾燥機を使ってみます。

午後0時半、竹原信一前阿久根市長と西山千嘉子前川内村議会議員が来ました。
羊羹とお茶をお出ししました。

午後2時に288号線を、朝に見たラジコンヘリを積んだバンが帰っていきました。
ラジコンヘリを積んだバンは品川ナンバーで、他にも袖ヶ浦ナンバーや足立ナンバーのバンが5台ほど連なっていました。

灯油を30リットル補給しました。
ガソリンスタンドのおばさんに、林檎を2個差し上げました。ついでに小銭の両替もしてあげました。

夕食は9日前の鍋を減らしました。ですが、まだ残っています。

(転載終わり)

吉見 おさむ 投稿日:2011/12/21 16:33

【726】[813]福島本部活動日誌です45

以下に、MLに投稿した内容を転載します。

(転載始め)

2011年11月26日の日誌です。
なんか今日は先生の言っていたことが少しだけ分かった気になりました。本当に分かってるかは微妙です。

古道体育館に行きました。内部の写真を撮影しました。

洗濯をしました。ソファーを干しました。

午後4時、Pさんご夫妻が、お子さんを二人連れてきました。
お風呂に入って頂きました。
夕食として、ご飯、鍋、南瓜のスープ、鮭の刺身、をNさんが用意してくださいました。

Pさんに船引に買出しに連れて行って貰いました。
TSUTAYAで本を二冊、ダイユーエイトで半額の牛肉などを購入しました。

お二人で、事務所の地図の上に、昨日Bさんから頂いた寄せ書きを飾って頂きました。
大変有難うございました。

夕食後、P夫妻と飲んだくれていました。
お子さん2人の世話をしながらだったので、滅茶苦茶偉いなぁ・・・と思いました。
Pさんは、
「自分の国は左、右、中道に力が無く、中道左派、中道右派に力がある。」
「日本とは、右と左の定義がかなり違うかもしれない。自分の国では70年代までファシズムの時代だったので、「共産主義者」というのはむしろヒーローのイメージがあった。今の若い人間たちはまた違うが。」
と言っていました。
また、日本の政治について、
「党の代表選がそのまま総理大臣を選ぶのと同じになるのはおかしくないか?また、日本人はおかしいと思うことはないのか?自分は高卒だけど、自分たちの代表を自分達で選んだからといってそれで全ての問題が解決する訳ではないが、自分達の一番上の代表を選ぶ時には直接選ぶべきじゃないのか?」
「ヨーロッパ人から見るとアメリカ人は『ああ、洗脳されていて可哀想な人たち』というイメージで、逆に可哀想というか、自分としては、そこまで言わなくても、と同情してしまう」
「NHKの放送は、最初に見たとき、穏やかな口調の北朝鮮の放送だと直感で言ってしまったら、周りに怒られた」
「日本人には良い所が一杯なのに勿体無い。ヨーロッパのように厳しくストライキやデモをするのは合わないとは思うが、それでももう一寸主張するべきじゃないだろうか。自分の頭を使って自分の考えを持つべきだ。・・・というのは、変なガイジンなのだろうか。」
とも言っていました。

都路ではディスカッションバーやディスカッションカフェをやったらどうだろうか、とも言われました。
何はともあれ議論をするのを売りにするところのようです。
・・・出来たにしても、私は話を聞いてばかりになってしまいそうなので、あまり役に立ちそうにありません。
もしやるなら、誰か応援を頼むことになりそうです。

なかなか日誌が書けなかったので、深夜に外風呂に入りました。
風呂の中は暖かいのですが、風呂の縁は凍りかけていました。
流石にお湯が冷めるのが早かったです。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年11月27日の日誌です。

11月26日の朝に古道体育館に行っていましたが、写真を転載するのを忘れていましたので、ここで書いておきます。
体育館の玄関付近には、倉庫用のプレハブが2つ建っていました。

体育館前の駐車場には、数字の書かれたガムテープ片が、一定間隔で貼られていました。

内部は、夏に使われていた扇風機などは、脇にどかされていました。

体育館の脇の出入り口は、一時帰宅の出入り口でもあるので、やや厳し目にビニールがかけられ、ガムテープで固定されていました。(ただし、ここからの一時帰宅はもうないのかもしれませんが。)

体育館の一部は、「森の水」の入っていたダンボールで敷居がされていました。

また、Bさんの寄せ書きは福島の地図の上に展示してあります。

昨日、Pさんは他にも
「自分の国では1988年にカラーテレビになって感動した」
「PIIGSは、いつか金融崩れがくる、だって余り国全体で働いていなかったし、という国民全体での共通合意のようなものがあった」
「「いつ』崩れるのかが興味があった。それに、農村の自給自足をしている農家には、結局関係無い事だった」
と言っていました。

朝食は、残っているものを中心にNさんが用意してくださいました。
ご飯、鍋、鶏肉の照り焼き、鮭の焼き魚にイクラを添えたもの、・・・だったと思いますが、昨日の酒が残っていて良く覚えていません。

午前11時、Tさんが来ました。

Pさん一家が大広間を掃除して下さいました。布団も干してくださいました。

正午にPさん一家は帰りました。
大変お世話になりました。

Tさんに、お茶、ノンアルコールビール、鍋、南瓜のスープの残り、をお出ししました。
外風呂も用意しました。
Tさんは2時半に帰りました。

午後2時、大家さんと奥さんが汚水の排水管で外れているところを修理に来ました。
本当は来るはずだった、大家さんの知り合いの東電関係の配管工の人がいつまでも来ないから、自分達でやってしまおう、と思ったそうです。
応急補修の形ではありましたが、汚水の漏れはほとんど無くなりました。
もう少ししたら、ちゃんと補修すると言っていました。

amazonから大量の荷物が届きました。
長いLANケーブル、布団乾燥機、毛布3枚、電気こたつ、でした。
特に電気こたつは、これを使いながら、冬を越す準備を抜本的に考え直します。
またamazonでロシュフォール10を、お客様用、あるいは贈答用に注文しました。
減らないワインを買う位なら、減るビールを買う方が良いと判断しました。
・・・このビールだけは飲めるので、自分で飲んでしまわないように気をつけます。
・・・・・・・・・まあ、高いので、飲むことは貧乏性の私には無いとは思います。

LANケーブルを直接繋いで使ってから、殆ど問題は起きていません。
ただし、時折短時間ですが、モデムのADSLのランプが点滅していて、繋がっていないことがありました。

Rさんが気にしていた「かわうちの湯」についての写真は、内部を撮った

しか見つかりませんでした。

(転載終わり)

(転載始め)

2011年11月28日の日誌です。

朝・・・というよりは昼に起きて、昨日Tさんに自動車のバッテリーが上がらないようにする処置を教えて貰った事を思い出しました。
一週間に一度、自動車のエンジンをかけて10分そのままにしておく、というものでした。
本当は走った方がいいらしいのですが、流石に止めておきます。
また、燃えるごみを出すのを忘れました。最近のごみ出しは失敗ばかりです。

新聞が集金に来ました。2905円でした。

午後3時半、以前事務所にいらしたKさんからお電話があり、食料品の差し入れをされると言って下さいました。
大変恐縮です。

夕食は、ご飯、鮭を焼いたものの残り、牛肉を焼いてからYさんから頂いた焼き鳥のタレを投げ込んだもの、麻婆豆腐の残り、でした。
鍋が減りませんし、麻婆豆腐はまだまだ残っています・・・。

午後4時40分、体育館に行ってみました。
体育館の玄関付近には作業員が6、7人いて、写真を撮りづらかったです。

公民館脇のプレハブは、中が覗けるようになっていました。中の物資はかなり少なくなっていました。

体育館の裏側に回って中を撮影しました。
中は、灯油ストーブ、ビニールで覆われたパイプ椅子、事務用の机と事務用品、ビニールハウスの様なもの、が新たに置いてありました。

午後6時には体育館の電灯が消えていました。

コタツで寝るようになって、やっと普通に寝られるようになりました。
これまでは朝起きると体が氷の様で、辛かったです。
これでやっと、体力が回復させられそうです。
更に、寝るときに部屋を暗くしてから
「ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD」
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0011FM33A
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http://www.amazon.co.jp/gp/product/B003GF6R80
のシリーズをかけると快眠出来ます。

ロシュフォール10の注文は、クレジットカードの少ない月内使用額の限度を超えてしまい、一旦キャンセルになってしまいました。
灯油ストーブなど出費がかさみ続けたことが重なって、こうなってしまいました・・・。

ネットを有線にしてから、回線が速いような気がします。

外風呂に入りました。
出る時寒くて、なかなか出られません。

(転載終わり)

Pさま、これが先生の言うところのworld valuesかぁ・・・と感心しながらお話を伺っておりました。
Kさま、頂戴しましたたくさんの食料は、少しずつ大切に頂きます。

松尾 雄治 投稿日:2011/12/19 11:08

【725】[812]野村に資本注入計画

松尾雄治です。

Facta Online 2012年1月版より転載します。

(貼り付け始め)

野村救済に「資本注入」計画

1月に格下げなら土俵際。三菱UFJか三井住友との資本提携を模索。銀行免許をもらう奥の手も。

Facta Online 2012年1月号

「野村證券は日銀に取引口座がある証券会社です。資金繰りに困るわけないでしょう」――野村證券の持ち株会社、野村ホールディングス(HD)執行役員(リスク担当)、柏木茂介は、必死で欧州の金融当局や格付け会社に説明を続けてきた。

野村が資金繰りに窮しているとの噂はこの夏、欧州のインサイダーたちの間で燎原の火のごとく広がった。火元は英国の金融監督当局である金融サービス機構(FSA)。3年前のリーマン・ショック以降、金融機関の資金繰り破綻にことのほか神経質で、主だった日系金融機関の現地法人や支店に対しても資金繰り状況を定期的に報告させていた。11年に入ってから、資金の市場依存度が高い野村に警戒感を強め、日本の金融当局に指導を打診するほどだった。

英FSAの動きに気づいた欧米格付け会社は、野村にヒアリングを開始した。現在の野村の格付けは米格付け会社ムーディーズ・インべスターズ・サービスでBaa2。取引相手の信用リスクに神経を尖らせている欧州資金市場では、格付けが1段階下がっただけでデリバティブ(金融派生商品)取引はかなり困難になり、2段階下げだと投資銀行業務がほぼ麻痺し、国際取引から完全撤退を余儀なくされる。

日銀は特融に慎重姿勢

焦った野村は「日銀口座」まで持ち出して格付け会社に説明した。確かに銀行でも破綻した日本振興銀行に日銀は口座を開かせなかったから、それは日銀が野村を「信用」しているお墨付きだし、いざというときの資金供給のチャネルでもある。

だが、これが仇となる。柏木の説明を受けた格付けアナリストが内々に日銀関係者に問い合わせると、「担保の範囲内でならいくらでも」と答えたものの、無担保でも貸し出す日銀特別融資(特融)は「簡単に発動できるわけがない」と繰り返した。

ムーディーズが野村の格付けを11月9日に格下げ方向で見直すと発表したのも、同月1日発表の7~9月期連結決算が460億円の赤字に転落しながら、日銀を含む当局が「万一の時は救済する」とのサインを出し切れなかったからでもある。

野村の窮状は株価に端的に表れている。9月6日に大和証券グループ本社を下回り、低迷の一途で時価総額は1兆円を割り込んだまま。野村が主幹事のオリンパスの不正会計が表面化した11月上旬には、つられてストップ安。慌てて野村證券副社長兼COO(最高執行責任者)の柴田拓美が、兜クラブのキャップ級記者を個別に呼んで「風評被害だ」とばかりに説明に努めた。

実は英FSAの強い懸念を受けた日本の金融庁は、11年夏から強力な野村監視体制を組んでいる。事実上の「金融庁管理会社」とのボヤキが野村社内からも漏れる。「とにかく手元資金を厚くしろ」との指示のもと、野村は傘下の野村プリンシパル・ファイナンスを通じて投資していた外食大手すかいらーく株を米ファンドに売却、2600億円の現金を確保した。野村不動産や野村総合研究所の売却先探しも躍起で、香港のファンド関係者の間では「買い叩ける」との見方も広がった。手元を厚くして市場の信認を得たい、格下げを回避したい、との必死の工作だ。

野村は当局の指導もあって、メーンバンクづくりにも動いた。すかいらーく売却前の11年夏にはグループCEO(最高経営責任者)の渡部賢一が、三菱東京UFJ銀行頭取の永易克典を訪ね、資金繰り支援を要請。クレジット・ライン(資金貸出枠)の設定で合意したもようだ。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)では、傘下の三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)が巨額赤字を繰り返し計上してきただけに、野村の国内部門は垂涎の的で、できればこの機に買収したいとの思惑。野村にとっても三菱UFJはいざというときの駆け込み寺。両社の企画部門は頻繁に会合を設け、相手の腹を探りあっている。

ただ、MUFGは米投資銀行モルガン・スタンレーを11年春に連結対象にしたこともあって「旧リーマン部門は不要。海外を売却してから」と三菱・野村の資本提携に高いハードルを課している。 

そこへ、MUFGの動きを察知した三井住友FG(SMFG)がちょっかいを出した。野村へクレジット・ライン契約を打診し、出資を含む交渉に入った。三井住友にしてみると、日興証券は買収してみたものの、海外拠点網はお寒いかぎり。野村、大和と違って証券部門は黒字を維持しているが、収益源にまで育てるには海外網も持つ野村は手に入れたい代物だ。そのうえ「万一、三菱にとられたら、二度と差は埋められない」と危機感を募らせている。

野村サイドにもMUFGとの交渉を有利にしたいとの思惑があり、三菱側に三井住友からのアプローチを隠さず、両てんびんにかけている。

内部の立て直しでそれどころではないみずほFGを除いた2メガバンクの野村争奪戦は、しかし意外に盛り上がりに乏しい。2メガとも、欧州危機が一段と深刻化した10月以降、野村の欧州での資産は劣化したとみており、不良債権の山ではないかと警戒し始めているからだ。日本の金融当局は英FSAの野村への検査をベースに「悪化を織り込んでも債務超過にはならない」と伝えている模様だが、両メガとも「もう少し欧州情勢が落ち着くまでは」と慎重になり、いざという時に間に合わなくなる恐れが出ている。

劣後債「特約」にドッキリ

実は、英FSAが指摘した懸念は野村の資金繰りだけではない。日本政府に野村のきちんとした救済手法がないことを問題視、米リーマン・ブラザーズの破綻が世界的な金融システム不安につながった例を引きながら「巨大証券が万一破綻したら大変」と制度対応を求めている。

米国ではリーマン危機直後、大手投資銀行ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーとも銀行持ち株会社に移行しており、いざとなれば「銀行」として救済が可能。日本では野村と大和が証券会社のままで、“伝家の宝刀”である預金保険法102条に基づく公的資金注入で救済することができない。

欧州危機の深刻化に金融当局も「野村が万一の時は」と野村HDに銀行免許を出すことを検討したが、不動産会社やプリンシパルを抱えたままでは「難しい」と諦めたという。そこで野村は、銀行免許もとれるよう野村不動産の売却に動き、プリンシパルも全て投資株を売却して事実上機能停止した。いざというとき銀行免許を取得できる道筋はできつつある。さらに、新しい自己資本比率規制(バーゼル3)下でも自己資本に算入できる劣後債1700億円を主に個人向けに売り出し、12月12日から募集に入った。金融庁が破綻認定し公的資金が注入されたら元利の支払いをやめる特約付き。「そこまでやるか」と市場は目をむいた。

欧州危機で野村には多くの安全ネットが張られた。1月末ごろにはムーディーズの格下げ判断の時期が来る。後手に回らぬ戦略は打ち出せるだろうか。(敬称略)

(貼り付け終わり)

松尾 雄治 拝

茂木 投稿日:2011/12/18 14:04

【724】[811]鉄と海と山の話

会員番号1149番の茂木です。

以前、山岳と海洋とを繋ぐ河川を中心にその流域を一つの纏まりとして考える「流域思想」について書いたこと( [297] )がありますが、最近この考え方に関連する本、“鉄は魔法つかい”畠山重篤著(小学館)を読みました。感想をブログ
http://celadon.ivory.ne.jp
に書きましたので、記事を転載させていただきます。ご意見などいただければ嬉しく思います。

—————————————-
鉄と海と山の話(12/12/2011)

 “鉄は魔法つかい”畠山重篤著(小学館)という素晴らしい本を読んだ。まずは新聞の書評を紹介しよう。

(引用開始)

 古来、漁師の間には、豊かな漁場と近接した森を示す「魚付林(うおつきりん)」という言葉があった。沈めた錨(いかり)の周りに魚が集まることも知られていた。だが、カギを握るのが「鉄」と分ったのは最近のこと。森から運ばれた土の中の鉄分が植物性プランクトンをはぐくみ、豊かな海を支える。
 宮城県気仙沼市でカキ養殖を営む著者が、この事実に30年がかりでたどり着くまでをつづった。多くの研究者の協力や助言を得ながら解明に取り組む熱意に引き込まれる。
 「森は海の恋人」を掲げて植林を始めた1989年当時、科学的根拠は乏しかった。研究費を工面してくれた母は大津波の犠牲となり、設備も損壊した。絶望の底で得た「それでも三陸の海は死んでいない」という確信が、出版につながったという。

(引用終了)
<毎日新聞 11/6/2011>

ということで、復興に努力しておられる畠山さんを支援する意味でも、是非本書を購入いただきたい。ただし、本屋によっては絵本の棚に分類されているから見つけにくいかもしれない。

 この本の内容構造は多層である。以下、それぞれの層について見てゆきたい。

1. 復興

 この本の「あとがき」が書かれたのは、東関東大震災からおよそ1ヵ月後の2011年4月、初版発行は同年6月6日である。この本には著者の大災害からの復興への祈りが込められている。

2. 絵本としての魅力

 この本には、以前にも著者とコンビを組んだことがあるという、スギヤマカナヨさんの絵やイラストがたくさん載っている。文章と絵とのハーモニーは楽しく、描かれたイラスト図は内容の理解を助けてくれる。

3. 鉄に纏わる科学知識

 フルボ酸のはたらき、深層大循環、血液と鉄分、オーストラリアのしま状鉄鉱石、鉄炭団子、ムギネ酸、アムール川とスプリングブルームとの関係、巨大魚付林など、鉄に関する地球規模の知識を得ることができる。

4. 流域思想

 畠山さんの「森は海の恋人」活動については、以前「牡蠣の見あげる森」の項でも紹介したことがある。そのとき“流域思想”というキーワードを使った。これは、山岳と海洋とを繋ぐ河川を中心にその流域を一つの纏まりとして考える思想で、これからの食やエネルギーを考える上で重要なコンセプトである。詳しくは「流域思想」、「流域思想 II」などの項を参照していただきたい。

5. 境界学問

 境界学問とは、ある現象について、専門領域を超えて統合的に分析・研究する学問のことである。この本には、生物学や化学は勿論のこと、気象学や海洋学、地質学といった様々な学問が融合する様が描かれている。以前「エッジ・エフェクト」の項で文化の融合について述べたけれど、学問領域においても同じことが云えるわけだ。エッジ・エフェクトは、パラダイム・シフト(その時代や分野において当然のことと考えられていた認識が、革命的かつ非連続に変化すること)を惹起する。パラダイム・シフトについては「パラダイム・シフト」、「パラダイム・シフト II」の項を参照いただきたい。

6. ハブの役割

 上記の新聞書評に「多くの研究者の協力や助言を得ながら解明に取り組む熱意に引き込まれる」とあるけれど、畠山さんは、大切なことがあれば、北海道から東京、京都、山口、沖縄、さらにはオーストラリアへまですぐに飛んでいく。以前「ハブ(Hub)の役割」の項で、知人や友人の数(次数)が多い人が果たす社会的役割について書いたけれど、情熱の人・畠山さんは間違いなく、東北復興を担う「元気なリーダー」のお一人である。

根尾知史 投稿日:2011/12/17 09:51

【723】[810]アメリカに操られた、 ヨーロッパの財政統合・金融統制へのシナリオ

SNSI研究員の根尾知史です。

はたして、ユーロは、ヨーロッパ経済は、
これからどうなって行くのでしょうか。

欧米のメディアも、今ごろになって、ユーロを崩壊
(解散)させてしまうことの「コスト(損失)」が
膨大すぎるから、何としてもユーロの分裂・解体は
防がなければならない、と言い始めました。

先月まではあれほど、ユーロの崩壊も避けられないと、
さんざん「ユーロ危機」煽っていた、その同じ舌の根
も乾かぬうちにです。

日本のマスコミは論外ですが、欧米の一流金融紙や
英BBCなどの国営放送でも、やはり大きくはアメリカ
に操られて、踊らされて、「国際世論を扇動する役割」
をさせられているのです。

ユーロ危機やヨーロッパ諸国の財政危機を集中的に
報道させることで、アメリカ自身が自国で抱える巨額の
財政赤字や、米国債がデフォルト(債務不履行、金利や
返済の不払い)間近である実態から、しばらく世界の
注目をそらすということはできるでしょう。

だから、日本国内で金融評論家や経済学者を名乗る
「扇動家(アジテーター、agitator)」たちが、
アメリカの世界規模での情報戦略の術策にはまって、
なんでもかんでも「破綻だ、破綻だ!」とオオカミ少年を
やらされて、騒ぎ立てて、不安を煽って、それで本や
雑誌が何万部も売れればいい、というものではありません。

そうではなくて、実際は、アメリカのロックフェラー
国際資本勢力の後ろ楯を受けた、ドイツのメルケル
首相と、フランスのサルコジ大統領、新しいイタリアの
マリオ・モンティ首相(官僚出身)、そして、
欧州中央銀行(ECB)のドン、マリオ・ドラギ総裁と
彼がひきいるヨーロッパの「国際官僚(テクノクラット)」
たちが、欧州の政治家とタッグを組んで、アメリカが
ヨーロッパで抱え込んでしまった巨額の損失が表面化
するのを、どうにか抑え込んでしまおうという動きが
画策されているのです。

だから、統一通貨のユーロを利用する17ヵ国ばかり
ではなく、EU(欧州連合)に加盟する27ヵ国
(イギリスを除くと26ヵ国)で、無理やりの財政統合、
金融・税制の統一化を、強引に押し進めることに
決まりつつあるのです。

ヨーロッパのEU加盟27ヵ国が、財政統合すると
それはまるで、アメリカ合衆国の50州が、統一通貨
である米ドル(USD)を介して財政統合されて
いるのとおなじような状態になる、という構想が
あるようです。

以下に、そのことを解説した記事を、抜粋でご紹介します。

(転載貼り付け始め)

●「米国各州と欧州各国の統合の違い」 Capital―経済コラム

ウォール・ストリート・ジャーナル 日本版 2011年 12月 15日
http://jp.wsj.com/Economy/Global-Economy/node_360939

欧州は一段と完全な財政統合に傾いている。少なくとも、ドイツは
そう表現し、「Stabilitätsunion(安定統合)」と呼んでいる。

(中 略)

ドイツの視点では、ユーロを救済できる唯一の長期的解決策は、
規定されている財政規律に向け各国財政に対する共同体としての
統制を強化することだ。

米国では財政統合が確立している。ドイツからギリシャへの資金
提供の場合のような騒ぎを伴わずに、米政府を通しコネティカット州
の納税者が納めた税金はカリフォルニア州の失業保険に向けられる。

また、労働者は米国の50州を自由に行き来できる。欧州諸国間と
異なり、米国の州ごとのインフレ率の違いは持続しない。

米国の州はほぼ全部、多くの場合州憲法によって、年間の財政均衡が
既に義務付けられている。

しかし、欧州の場合は各国が単一通貨を共有している。それぞれの
国が、明白な連邦政府による援助といったものはなく、独自で
借り入れを行う。米地方債市場は総額2兆9000億ドル(約230兆円)
規模に達する。

このことが、エコノミストが熟考してきた疑問につながる。

ギリシャの状況を受けてイタリアの借り入れコストが押し上げ
られるのであれば、米イリノイ州や米自治領のプエルトリコ
(米国の他州と比較して経済規模に対する債務比率が最も高い)
の信用力を巡る市場の疑いが強まると、カリフォルニア州に
同じことが起こり得るだろうか。

(中 略)

その答えは意外だ。以下のシナリオを考えてみよう。イリノイ州は、
高水準の債務や機能しない政治のために、地方債に対し既に他州
よりも高い金利を払い、債務返済の深刻な問題に陥っている。

(中 略)

欧州に目を向けると、答えは明白なようだ。過剰債務を抱えた国が、
同様に過剰債務を抱えた諸国の借り入れ金利を押し上げる。

しかし、国際通貨基金(IMF)の新たな作業リポートによると、
こうした現象は米国ではみられていない。

・・・1つの州の借り入れコストの上昇は通常、他州の借り入れ
コストの低下につながっていることが分かった。

これは欧州で非常に歴然とした波及パターンとは正反対の状況だ。

(中 略)

・・・おそらく(米国の)地方債市場は非課税のミューチュアル
・ファンドがほとんどだ。発行体の1つが不安定に見えても、
投資家は市場を離れるのではなく、資金を他に移す。

もしくは、不安なニュースが出てきても個人投資家は税制面での
優遇措置を望んで自分の住む州の債券を維持することから、
問題が州を越えて素早く広がることはない。

(中 略)

コロンビア大学のアンドリュー・アング氏は欧州からの興味深い
教訓に注目している。同氏の研究はIMFチームのものと類似している。

同氏は、米国の50州はユーロ圏加盟17カ国よりも経済的統合が
ずっと進んでいるとみている。したがって米国の州が発行する
地方債は、たとえば、原油高、デフレ圧力、米国債格下げといった
米経済全体に吹き付ける逆風に対する反応が大きいと考えられる
(また、実際多くのエコノミストがそうみなしている)。

一方、それほど統合されていない欧州経済のなかでの各国の国債は、
それぞれの国の状況に一層大きく反応する。

(中 略)

なぜ欧州と米国のケースはそれほど異なるのか。アング氏は2つの
矛盾する仮説を示す。

カリフォルニア州の債務問題がいかに混乱していようとも、
「ドル連合」の崩壊を懸念する向きはいないだろう。もしくは、
投資家は米政府が破綻の危機に直面した州の救済に乗り出すと
確信しているだろう。

しかし、(欧州の場合に)ドイツが同じことをするかどうかは
確信が持てない。

(以後、略)

(転載貼り付け終わり)

だから、ヨーロッパはこれから、どんどん財政・金融制度
を統合させられて、ユーロ(EUR)を統一通貨とする、
「ユナイテッド・ステイツ・オヴ・ヨーロッパ(ヨーロッパ
合衆国)」をめざす方向性にあるのだと考えられます。

これによって、税制度も効率化し、ユーロが流通する
するヨーロッパ諸国に、いっせいに「統一増税」を
実施するのつもりなのでしょう。

こうしてヨーロッパ全土の諸国民から、資産を巻き上げて、
「大きすぎて潰せない(トゥービッグ・トゥーフェイル)」
を口実に、巨額の含み損、不良資産を抱えるヨーロッパの
大手銀行をヨーロッパ統一の「公的資金」で救済するのです。

アメリカの中央銀行である「FRB(米連邦準備制度・銀行)」
にあたるのが、「ECB(欧州中央銀行)」になります。

ECBが、EU(欧州連合)加盟の27ヵ国から統一増税で
巻き上げた「税金」が、「公的資金」の半分を占めるでしょう。

残りの半分は、EU(欧州連合、つまり、ユナイテッド・
ステイツ・オヴ・ヨーロッパ=ヨーロッパ合衆国)が
発行する「ユーロ共同債(ユーロ・ボンド、Euro bond)」に
よる外国からの借金が、ヨーロッパ共通の「公的資金」です。

こうして無理やりあつめた「公的資金」を注入して、
ヨーロッパの潰れそうな大手銀行や金融機関を、国営化
したり、合併統合させて、ゾンビ企業として生き長らえ
させるのでしょう。

欧州統一の中央銀行(ECB)の「公的資金」で、ギリシャや
アイルランドやスペインの国債を買い支えて、デフォルト
(債務不履行)するのを抑え込むのです。

だから、これらのヨーロッパ諸国の国債を保証している
ハイテク保険商品である「CDS(クレジット・
デフォルト・スワップ)」を販売していたアメリカの
銀行たちも、補償金の支払いを迫られて、倒産の危機に
直面するという、リーマン・ブラザーズの失態を
無理やり回避させられるのです。

米ロックフェラー金融資本と欧英ロスチャイルドとの
フィクサーをつとめる、ヘッジファンド界のドン、
ジョージ・ソロス(1930- )も、そうしたアメリカに
よるヨーロッパの債務危機への対応戦略の一端を、
以下のようなパフォーマンスで担っているようです。

(転載張り付け始め)

●「ソロス氏のファンド、破綻したMFグローバルの欧州国債購入―20億ドル相当」
HEARD ON THE STREET

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 2011年12月9日
http://jp.wsj.com/Finance-Markets/Finance/node_357851

著名投資家ジョージ・ソロス氏一族のファンドは、
経営破綻した米金融会社MFグローバルが保有していた
約20億ドル相当の欧州国債を買い取った。関係筋が明らかにした。

これらの国債への投資損が同社の経営破綻の一要因になっていた。

同社はジョン・コーザイン前最高経営責任者(CEO)の指示により、
トレーディング収益を上げるため、イタリアを中心に欧州の様々な
国の短期国債を買い、保有額は63億ドルまで積み上がっていた。

夏にかけ、これらの国債投資をめぐり、投資家、監督当局、
格付け会社の間で懸念が強まり、同社は10月31日、連邦破産法
11条の適用申請に追い込まれた。

MFグローバルは63億ドル相当のうち15億ドル相当を破産申請
前に売却し、48億ドル相当が残った。こうした残りは、
ロンドンでのMFグローバルの破産管財人KPMGに引き継がれた。

(中 略)

ソロス氏の会社は今年、投資の一部を安全な流動資産に移して
いたため、今回約20億ドルを支払うことができた。

同筋によると、同氏とソロス・ファンド・マネジメントの
投資チームの購入額は当時の時価より低かった。取引には
JPモルガン・チェースも参加。ほかにも大手投資家がいた
という。JPモルガンの広報担当はコメントを控えた。
ソロス氏のファンドは取得した国債の半分以上を今も保有
しているという。

ソロス・ファンド・マネジメントは、ソロス氏、一族、同氏の
慈善事業の資金260億ドルを運用している。最近イタリアを
はじめとする欧州国債の相場が持ち直していることから、
その後の5週間で利益を得た可能性がある。

(中 略)

ソロス氏のイタリア国債購入は大きな意味を持つ。
世界有数とされる賢い投資家が、少なくとも今回購入した
国債が償還を迎える2012年12月までは、イタリア国債が
デフォルトしないと見込んでいることを示すためだ。
同氏の動きはユーロ圏の危機拡大が回避されることに
賭けるようなものである。

(中 略)

第2四半期の投資が期待外れに終わったことから、
ソロス氏は外部投資家に10億ドルを返還して会社を
「ファミリーオフィス」に変えることを決めた。

そのため、多くのヘッジファンドが直面している
当局の監視強化を避けることが可能だ。

(転載張り付け終わり)

たとえ目論みどおりにユーロ危機を沈静化できても、
私がこれまで何度も書いてきたとおり、「ヨーロッパ人
の税金」と「他国からの借金」で充当される「公的資金」
を、銀行を救済するために大量に注ぎ込んだあとの
ヨーロッパには、「失われた10年、20年」が
待ち構えています。

日本政府が、1990年のバブル崩壊で不良債権を
抱えた日本の銀行に「公的資金(日本国民の税金)」
を注入して救済したあとに、日本経済を襲った
「失われた20年」が、これからヨーロッパでも
始まるのです。

いっぽうのアメリカには、「失われた●●年」という
ような悠長なことを言っている余裕はありません。

来年早々には、ヨーロッパの数倍の規模で米国債が
デフォルト(債務不履行)するという「債務危機」や
「米ドル危機」が、ふたたび勃発するでしょう。

だから副島隆彦先生が書かれるとおり「戦争(刺激)
経済(ウォー・ブースト・エコノミー)」で、
世界のどこかで無理やり戦争を引き起こすという
戦略で、来年から新たな戦火が拡大していくのでしょう。

ヨーロッパは、表面的にはこの「戦争(刺激)経済」
戦略は採りません。

上品ぶった老獪なヨーロッパ人たちは、増税と借金と、
アメリカが引き起こす戦争への密かな荷担をするしか
ないので、日本と同じようにじわじわと衰退して行く
しかないのです。

ユーロの見通しは非常に難しく、一概にいいか悪いか、
という判断はできません。

私が以前から書き続けているとおり、ユーロという
ヨーロッパ統一の通貨をいまから解散して、改めて
それぞれの国の通貨に戻すことは、そのためのコストや
労力、生じてくる様々な損失やそのリスクを考えると、
現実的ではありません。

ヨーロッパは、ギリシャやアイルランドやスペインが
債務危機だと言っても、その借り入れ先は、主にドイツ
とフランスであり、つまりおなじ通貨圏のなかにおける
「内輪」の貸し借りです。

いっぽうのアメリカは、中国と日本、サウジアラビアなど
から、その借り入れ額の半分近くを借り入れています。

しかし、それでも足りない財政資金を、アメリカの中央銀行
(FRB、米連邦準備銀行)に米国債を買い戻させるという
「禁じ手」の架空の借金政策でまかなっています。

そのための資金源が、一昨年から続けている「QE(量的
緩和政策、キューイー、クオンティテイティヴ・イージング)」
です。何のことはない、担保のない「米ドルの増刷」です。

米国債の発行総額に対する、外国への販売比率が減少
しているように見えるのは、自国内で米国債をさらに
買い上げているからです。

しかしそれでも、中国やサウジアラビア、日本などの
外国からの借入が巨額であり、ヨーロッパのように
ユーロ経済圏の「内輪」での借金ではありません。

だから、いまヨーロッパ諸国がやっているように、
債務の返済や利払いができなくなった時点で借り換え
をして返済期間を延長させるとか、契約条件を変更
したり、契約そのものをなかったことにしたり、
ということができません。

したがって、「債務不履行(デフォルト、財政破算)」
が実現する可能性は、アメリカのほうがより高くて
明確なのです。

だからこそアメリカは、イランで新しい戦争を起こして、
経済が破綻しそうな状況を、戦争の混乱でうやむやの、
めちゃくちゃにしてしまおうと目論んでいるのです。

ニューヨークのワールドトレードセンターへの旅客機
追突テロ、「9・11(セプテンバー・イレヴン)」くらい
の規模と衝撃で、世界中の人々を震え上がらせるような
突拍子もない襲撃や爆撃、テロ事件を仕掛けてくると
警戒しておくべきです。

そのあとの急激な武力衝突(つまり、戦争)から、
世界各国に恐怖をあたえて、金融危機や国際経済
システムが崩壊しそうな現在の危機を、無理やり
「戦時緊急統制令」のような強硬手段で抑え込んで
帳消しにしてしまうのです。

「緊急時だからしょうがない」という、私たちが
「3・11」の東北東日本大震災と、福島原発事故の
混乱と恐怖のなかで何度も言い聞かされたあの言葉
(口実、正当化)で、欧米人をいっせいに扇動する
のでしょう。

だからいまでも、欧米のメディアは、フクシマは
まだまだ放射能汚染が深刻で「危険だ危険だ」という
報道を、自国民に流し続けています。

「戦時緊急統制令」で、緊急の「増税」や「銀行の
業務一時停止」、「預金引き出し制限(預金封鎖)」
を強行しようとしているのです。

あやゆる金融取引やお金の流れを規制して監視する、
第二次世界大戦時のような、恐ろしい「戦時統制経済」の
国家総動員体制にまで、強引に持っていくのです。

そのとき、ユーロや米ドルや日本円がどうなるのか。

やはり基本は、複数の地域や分野などあらゆる形に
広く分散して、まさかのための保全の体制を
各自整えておく、ということに尽きるのでしょう。

根尾知史拝

根尾知史 投稿日:2011/12/17 09:47

【722】[809]ギリシャとローマから世界的な<官僚統治>の時代が始まった

SNSI研究員の根尾知史です。

11月16日(水)に、イタリアの新首相としてマリオ・モンティ
(Mario Monti、1943- )という、欧州委員会の委員を10年近く
務めた、もとヨーロッパ高級官僚だった人物が就任しました。

マリオ・モンティ伊新首相は、1972年に、アメリカ財界の
帝王である、デイヴィッド・ロックフェラーによって設立された
「日米欧三極委員会(トライラテラル・コミッション)」の
ヨーロッパ委員長もつとめたことがあり、さらに、欧米の金融・
財界人と政治家や官僚など国家権力者たちが一同に会する
「ビルダーバーグ会議」の主要メンバーでもああります。

さらには、ゴールドマン・サックスの国際顧問もつとめる、
米ロック・フェラー陣営の人物なのです。

いっぽう、ギリシアにもの新しい首相も、イタリアと同じく
「官僚上がり」の人材である、ルーカス・ディミトリオス・
パパデモス(Lucas Demetrios Papademos、1947年- )が、
11月11日(金)に就任しています。

パパデモスは、欧州中央銀行(ECB、ヨーロピアン・
セントラル・バンク)の副総裁を約8年務めていました。

そしてパパデモスも、同じくロックフェラーの「日米欧
三極委員会(トライラテラル・コミッション)」の会員を
現在も務めているのです。

このパパデモス新首相はMIT(マサチューセッツ工科大学)、
イタリアのモンティ新首相はイェール大学と、いずれも
アメリカ留学経験がある完全な「親米派」です。

これはまさに象徴的なできごとです。暫定的とは言え、
選挙で国民から選ばれた国家のリーダーを追い出して、
官僚(テクノクラット)が、その地位を乗っ取ったのです。

ギリシャのあとにイタリアまでが官僚支配の手に落ちました。

まさに、官僚支配による金融統制体制が、ヨーロッパでも
日本でも、中国はもちろん世界の国々を、ものすごい勢い
で覆いつくして行く、その明確な予兆なのです。

「スーパーマリオ」ことマリオ・モンティ伊首相が、
これからの政策について語った以下の記事は、短いですが
非常に恐ろしい、これからの官僚支配による経済統制
政策が始まることを示唆するものです。

官僚統制、官僚主導による徹底したイタリア国民資産
収奪によって、財政危機に苦しむ国家財政を再生させる
ための管理・統制経済の方向に舵を切ったことを示す、
強力な発言であることに、注目しなければなりません。

(転載張り付け始め)

●「【NewsBrief】モンティ次期伊首相16日に施政方針を説明」

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 2011年 11月 16日
http://jp.wsj.com/World/Europe/node_344434

【ローマ】イタリアの首相に間もなく就任するマリオ・モンティ
氏は15日、就任後の政策についてナポリターノ大統領に16日午前
に提示することを明らかにした。

欧州委員会の不公正取引を監視するなどの担当委員を務めたモンティ
氏はこの日、閣僚候補者のリストや、既に「青写真はできている」
と本人が語る今後の政策については明かにさなかった。

モンティ氏は同日、与野党指導者、労働組合や財界幹部、青年団体
などの幹部らと会談、意見交換した。会談後にモンティ氏は関係者
の「全員」が、イタリア社会全体のためになるのなら「部分的には
犠牲を受け入れる」姿勢を示したと語った。

また、一連の会談で、労働組合や左派政党が推す富裕層を対象に
した課税を取り上げたことを示唆した。富裕層に対する課税は、
中低所得層が大きく影響を受ける各種財政支出削減策の交換条件と
みられている。多くのエコノミストは、モンティ氏が労働者に大きく
影響する年金制度改革に早急に手を付けるとみている。

(転載張り付け終わり)

イギリス最大の経済紙「フィナンシャル・タイムズ
(Financial Times)」の記事を読んでいても、マリオ・
モンティ首相やパパデモス首相のことを、「EUの権力に
近いリーダーたちにより率いられる新しい技術官僚政権
(new technocratic governments headed by leaders
close to European Union authorities)」とか、
「専門技術官僚首相(technocratic prime minister)」
などという言い方で表現しています。

「官僚」は通常、英語で「ビューロクラット(beaurocrat)」
ですが、海外の記事では「テクノクラット(technocrat)」
という言葉で表現されています。

「テクノクラット(技術官僚)」とは、もともと
「テクノクラシー(技術の専門家たちによる統治=
governance by technical experts)」という比較的
新しい政治用語から生まれた言葉です。

「テクノクラシー」とは、1930年代にさかんに
なった社会主義の思想のひとつで、企業経営から
国家運営にも導入され、経営者ではなく作業の現場に
従事する専門の技術を身に付けた「専門技術者」で
ある「労働者」たちによって、企業や国家を直接に
統治・経営して行こうという理想をかかげて提唱
された政治体制の名称です。

そして、その国の経済全体を国有化して、国家によって
すべての経済活動を所有し、国家による経済管理・運営
を行って行こうという「国家社会主義」の政治体制の
根本思想ともなりました。

この「テクノクラシー」こそが、当時アメリカの
フランクリン・ルーズベルト大統領による社会主義的
経済政策である「ニューディール政策」や、ドイツの
ヒトラーやイタリアのムッソリーニによって実践された
「ファシズム(Fascism、全体主義)」、さらには、
その対極にある「共産主義(コミュニズム)」の思想
までも産み出した、恐ろしい政治・経済思想なのです。

これが、「専門技術のエキスパート」である「テクノクラット」
たちによる科学的で合理的な統治をめざす統治体制である
「テクノクラシー」と呼ばれるようになりました。

現在のギリシアのパパデモスや、イタリアの(スーパー)
マリオ・モンティたちは、元々が経済学者であり、かつ、
その専門知識を活かして、EU(欧州連合)の経済統合や運営
の技術指導や行政実務を行ってきたエキスパート(専門家)
なのであり、まさに「テクノクラット(”専門”事務官僚)」
なのです。

いっぽう、「官僚」を一般的にあらわす英語である「ビューロウ
クラット(bureaucrat)」の「ビューロウ(bureau)」とは、
「机」とか「オフィス」をあらわすフランス語で、つまり、
「ビューロクラット」とは「事務屋」という意味です。

したがって、おなじ「官僚」でも「テクノクラット」のほうが
より専門的な技術や知識を身に付けた「エキスパート(専門家)
官僚」なのであり、「ビューロクラット」は専門性の有無に
かかわらず、大きな組織のなかのいち歯車として事務作業を
こなす「”一般”事務官僚」という違いがあるということです。

いずれにしても、国民の選挙で選ばれた代議士(国民の代表者)
としての政治家による国家の財政再建ではなく、「国民の顔色を
気にしない」官僚の主導による<統制経済政策>が、これから
断行されて行く、ということなのです。

以下の日本語訳された英「フィナンシャル・タイムズ」紙の
記事からも、国民の選挙を行わずに選ばれた、ギリシャと
イタリアの首相について、警戒をうながす文章になっています。

(転載張り付け始め)

●「社説:ギリシャとイタリアに必要な真の指導力」

Financial Times 2011年11月11日
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/29143

通常であれば、ギリシャ新首相のルカス・パパデモス氏は
権力の座に就いていないだろう。

欧州中央銀行(ECB)前副総裁のパパデモス氏は選挙で
選ばれたわけではなく、信用を失った政治家同士が2週間
交渉した末に任命された。

イタリアも似たような過程をたどっている。

11月第3週までには、シルビオ・ベルルスコーニ氏が首相を
辞任して、イル・カバリエーレ(騎士の意、ベルルスコーニ氏
の呼称)が彼特有の流儀で避けてきた改革を断行できる
無所属の実務家に道を譲り、数カ月間に及ぶ政治麻痺が終わる
と期待されている。

有力候補として浮上しているのが、欧州連合(EU)の競争政策
担当委員を務めたマリオ・モンティ氏だ。

非常時の解決策としての暫定政権

選挙で選ばれていない実務家の任命は決して理想的ではないと
言えば、分かりきったことを指摘することになる。しかし、
システムが機能不全に陥っている時には、非常時の解決策が必要だ。

ギリシャ、イタリア両国では、有権者が自国の腐敗した政治家を
極端に敬遠しているため、成長を取り戻すのに必要な痛みを伴う
改革を実行するうえで、差し迫った障害を克服できるのは部外者
だけのように思える。

だが、どちらの国の場合も、旧来の政界エリート層から成る
連立政権を実務家が率いれば、根深い問題を奇跡的に解決できる
と思ったら、命取りになるだろう。

信用を失った政権が代わることに安堵感があるものの、いまだに
一部の人が国内の危機に関して欧州(あるいはドイツ)に押し付け
られた解決策と見なすものへの不満がある。

パパデモス、モンティ両氏がEUの元高官だという事実は、そうした
意識を強めている。

(中 略)

イタリアでは、暫定政府への国民の支持がかなり強いのは確かだ。
また、これまでの実務型政府の経験は概ね、有益だった。だが、
過去の前例は、有権者がいつまでも実務家を容認しないことも
示している。

実務能力だけでは不十分

両国の暫定政府は、有権者が多大な犠牲を求められるプロセスから
締め出されていると感じないよう、選挙に向けた明確な日程表を
定めなければならない。

また、新首相は国民の支持なくしては何も達成できないことを認識
しなければならない。彼らは議会で改革法案を通すのに苦労する
かもしれない。解決策は、真のリーダーシップを発揮することだ。
管理者としての能力だけでは十分ではない。

(転載張り付け終わり)

世界共通の官僚たちの「性格、思考回路」は、自分
たちの「利権」確保、自己保身、現状維持を追求する
ことです。

だから、彼ら「官僚」が国家財政の監督者として、
政権そのものを乗っ取ったということは、ガッチリと
上からの監視を強化するフリをしながら、財政破綻や
国債の債務不履行(デフォルト)、ユーロ統合通貨の
崩壊(解散)とか、EU支配の現体制を壊してしまう
ような改革は決して行わないでしょう。

そうではなくて、官僚支配者たちのもとでガチガチに
管理された形での「不良債権処理」を、これから10年
でも20年でもかけて実行して行くのです。

1990年代に日本の官僚たちがやったのと同じことを、
これからヨーロッパの統一官僚たちもやるのです。

だから、「増税」や「銀行の整理・統合」、「貸し渋り」
などの嵐が、これからヨーロッパ中で吹き荒れて、日本と
同じように「失われた20年」が、欧州各国でずっと
続いて行くのです。

そして、やはり日本やアメリカと同じく「大きすぎて潰せない」
銀行たちを「公的資金」というなの税金資金を注入して
救済するので、ヨーロッパ人たちはこれからますます重税に
苦しむことになります。

こうして、一般のヨーロッパ国民たちに大量の「救済資金」
を負担させて、ギリシャを起点とする欧州債務危機が
ヨーロッパ全体に拡大し金融崩壊を起こすことを、無理矢理
にでも押さえ込もうとしているのです。

その代わりに、押さえ込まれた財政赤字のツケは、欧州各国の
国民の資産への重課税による資金収奪や、将来受け取れるはず
だった社会保障や年金からどんどん切り崩すことで、債務返済の
キャッシュフローを強引に確保したり、さらには、複雑な
金融工学のスキームを使って、不良資産、不良債権の「飛ばし」
処理をすることで、巨額の損失を最後まで隠し続けて、
帳簿をごまかしてしまおうという魂胆なのです。

こんな冷徹で国民感情を逆なでする強行策を実行できるのは、
「国民から選ばれたわけではない官僚」、つまり、国民の顔色や
人気(選挙の票)を気にする必要のない、「官僚上がり」の
経済専門エキスパートの政策実務家である「テクノクラット」
にふさわしい役割なのです。

ギリシャやイタリアの「官僚上がり」の新首相である
パパデモスやマリオ・モンティ、さらには、欧州中央銀行
(ECB)総裁という、まさにヨーロッパ統一の官僚機構
の大親分である、マリオ・ドラギ総裁(1947- )の顔が、
イギリスの国営放送局、BBCのニュースに大写しに
なるのを見ました。

彼らの表情は冷たく、一点を見つめており、一切の感情や
気持ちの動きを表に出さない、冷酷なターミネーターの
ような人物に、三人とも見えました。

先に書いた「テクノクラシー(専門技術官僚による統治
体制)」は、一見すると、理想的で専門家による科学的で
合理的な政治・経済運営が期待できそうに思えます。

だから、パパデモス新首相もマリオ・モンティ新首相も、
とりあえず、ギリシャとイタリアそれぞれの国民からは
行き詰まった国家財政と経済情勢を解決してくれる救世主
として歓迎を受けています。

しかし、この経済の専門家(エキスパート)であるとされる
「テクノクラット」たちが、その理論的な専門知識のフリを
しながら、実際は、強引で冷酷な国家財政の「清算」処理を
これから執り行う、というのが本当の真実なのです。

あれこれの経済理論が、本当に、実践のこの大混乱した
国際財政や国際金融情勢への対応策として、まったく
役に立たないということは、サブプライム問題発生から
「リーマンショック」を経て、すっかりバレています。

この11月1日に、ヨーロッパ中央銀行(ECB)総裁に
新たに就任した、先述のマリオ・ドラギ総裁も、ECBが
ギリシャなど債務危機の国の国債を公的資金(ヨーロッパ人
の税金)で買い取るという「禁じ手」を使うことは、

“equivalent to temporarily suspending the freedom of
the press and speech to avoid uncertainty in the markets”

「市場が不安定になるのを避けるために、言論や出版の自由を
一時的に廃止してしまうのと同じくらいの事態である」

と、はっきり自覚していることを述べていました。

マリオ・ドラギ欧州中央銀行総裁は、イタリア人ですが、
やはりアメリカ留学組で、ギリシャのパパデモス首相と
おなじMIT(マサチューセッツ工科大学)で経済学の
博士号を修得しています。

マリオ・ドラギ総裁は、現在も、アメリカのブルッキングス
・インスティテュートや、ハーバード大学のケネディ行政
大学院(ケネディ・スクール)などにも、「理事(trustee)」
や「評議員、特別研究員(フェロー、fellow)」として
席を置いています。

ドラギ総裁の本性が一番よく分かるのは、アメリカ金融資本
の牙城の投資銀行ゴールドマン・サックス社の、国際部門
(ゴールドマン・サックス・インターナショナル)の副会長
や役員などの重役を、2002年から2005年まで
務めていたというその経歴です。

注目すべきは、この時期にちょうど、ギリシャ政府が、
自国の財政赤字を隠蔽するために、ゴールドマン・サックス
から招致された政府顧問の指導を受けながら、財政赤字の
飛ばしを行っていたという、最近もどこかで聞いた
「損失飛ばし」のスキームが実行されていた事実です。

ギリシャ政府の「財政赤字飛ばし」は、2007年に
発覚し、ヨーロッパの金融危機の引き金となりました。
この騒動に、どうやらマリオ・ドラギ現総裁が関与していた
のではないかという疑惑が、今でもあるのです。

本人は否定していますが、もしこれが真実なら、まさに
「マッチ・ポンプ」です。

マリオ・ドラギ欧州中央銀行総裁が、ゴールドマン
・サックスの役員時代に仕組まれた、ギリシャの債務
飛ばし問題で発火した欧州金融危機を、今度は、
自らヨーロッパ統合の中央銀行トップとなって、
その火消し役に回っているのです。

これは、重大なスキャンダルです。

今後、欧米のメディアが、この疑惑をどのように
取り上げるかによっては、大きな事件となって、
現在の欧州中央銀行総裁の地位を辞任するという
騒動にもなりえます。

しかし、アメリカ金融資本の後ろだてがある
ドラギ総裁は、きっと守られるのでしょう。

もともとヨーロッパの政界、金融界では、このマリオ
・ドラギが欧州中央銀行(ECB)の総裁になることは
あり得ないだろう、と見られていたのです。

なぜか今年に入ってから、英「フィナンシャル・
タイムズ」紙や、英「エコノミスト」誌が、急に、
ドラギ氏がふさわしい、と言うような記事を書き
始めて、とんとん拍子にそのサヤに収まりました。

マリオ・ドラギの中央銀行総裁の任期は、何もなければ
2019年の10月までという長期に渡ります。

限りなく裏のある人物なのです。

現在の、ヨーロッパの金融危機と、ユーロ救済を
目指したEU加盟国の財政統合強化の動きは、こうして、
アメリカの後ろ盾のもとに進行しているのです。

いま私たちの目の前で進行する、経済の専門技術官僚
(テクノクラット)による<統制経済政策>の恐ろしい本質を、
テクノクラット自らが皮肉を込めるように語っているのが、
恐ろしく印象的です。

根尾知史拝