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アルルの男・ヒロシ 投稿日:2015/03/20 19:06

【1447】[1766]ボッティチェリとロレンツォ・ディ・メディチをテーマにした展覧会をやっています

副島先生の『隠されたヨーロッパの血の歴史:ミケランジェロとメディチ家の裏側』(KKベストセラーズ刊)にも登場してきた、画家ボッティチェルリ(ボッティチェリ)の作品を一同に集めた展覧会が渋谷の東急文化村のミュージアムで開催されています。

この展覧会のプレス向けの内覧会に行くことが出来ました。この展覧会は知り合いの出版関係者から「まるで副島隆彦のミケランジェロとメディチ家の歴史そのままのテーマの美術展をやる」ということを教えてもらったものです。ただ、企画自体は前にイタリアで企画された「Money and Beuty. Botticelli and the Renaussance in Florence」(2011)を元に一部を日本向けに企画されたものだということですが、副島本で紹介されている、フィレンツェの「両替商と妻」の絵画(の同時代のフランドル作家による模写)やメディチ家に代わってフィレンツェを支配した修道士サヴォナローラの処刑の絵画も展示されていました。


パンフレットから(「両替商と妻」のレイメルスヴァーレという画家による模写)

この展覧会では交易を元に発展したフィレンツェのメディチ家を始めとする金融業者の栄華を象徴する、フィオリーノ金貨という金貨の展示や、当時富裕層の家に飾ることがブームになっていた「聖母子像」を工房で大量に描いていた(だから絵画だけではなく額が立派、写真参照)ボッティチェリの軌跡や、ロレンツォ・ディ・メディチと親友関係にあったボッティチェリの生涯と、そしてメディチ家批判を行ってフィレンツェに神権政治を敷いた、ジローラモ・サヴォナローラの登場など、『隠されたヨーロッパの血の歴史』を読んでいると、ああなるほどと非常にわかりやすい展示になっていました。この展示会は13世紀から16世紀の欧州金融史をヨーロッパの学芸員が理解している形で的確に描いていた、世界水準の理解で描いています。メディチ家のロレンツォが絵の中に描かれている作品もいくつかありました。


豪勢な額に入れて飾られた様々な「聖母子像」の絵

この展示会を見ると、当時のフィレンツェのパトロンであるメディチ家による栄華とともにボッティチェリを始めとするルネサンス芸術家が活動できたのだ、とか、大富豪の家に飾る「聖母子像」の絵画を生産する「工房」でボッティチェリが芸を磨いていったのだということが『隠されたヨーロッパの血の歴史』には更によく分かる形になっています。

開催内容は、詳しくはこちらで確認してください。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_botticelli/exhibition.html

https://snsi.jp/shops/index#book

松村享 投稿日:2015/03/20 15:35

【1446】[1765]時計から見るイスラーム思想史③『神学の下女・数学』を創始したと観察される人物

 松村享(まつむらきょう)です。今日は2015/03/20です。
 
 『時計から見るイスラーム思想史』と題して、投稿させていただいております。前回は、キリスト教ヨハネ福音書の『はじめにロゴスあり』まで書きました。『はじめにロゴスあり』が、重要な思想伝統であり、これをイスラームが引き継いでゆく、というところから、今回3回目の投稿です。

○『神学の下女・数学』を創始したと観察される人物

 数学は、イスラームにおいて発達した。イスラーム帝国・アッバース朝の第7代カリフ・マームーン(治世813~833)の時代から高められてゆく。

 マームーンが、世界の中心たるバグダードに『叡智の館』を開設した。叡智の館は、ギリシャ学問の研究所である。
 
 そして、この叡智の集合が、アラビア語を世界言語にまで押し上げることとなる。人類の最先端の知識を得たいならば、アラビア語を習得しなければならなかった。アラビア語が、現代で言うところの英語の立場だったのだ。

 この叡智の館出身で、アル・フワーリズミー(780?~845?)という人物がいる。数学界で、数百年に渡り影響を及ぼし続けた人物だといわれている。『アルゴリズム』の語源になった人物でもある。

 『失われた歴史 イスラームの科学・思想・芸術が近代文明をつくった』(マイケル・ハミルトン・モーガン著 平凡社 2010年)によると 、フワーリズミーは、数学を物質的なものから引き離し、純粋に抽象的なものへと移行させた。代数における業績が、彼の最大の業績として認識されているらしい。

引用はじめーーーーー『失われた歴史 イスラームの科学・思想・芸術が近代文明をつくった』p141~p142(マイケル・ハミルトン・モーガン著 平凡社 2010年)

後年彼は代数学の業績でもっともよく記憶されるようになるが、
代数(アルジェブラ)という語そのものが、
彼の『アル=ジャーブル・ワ・アル=ムクワバラ』
つまり『完備と均斉による計算法の概要書』と訳されている著書の題名からとられた概念に由来する。

※中略

アル=ジャーブルとは、方程式の他辺に減算した量を移す過程に対応する『回復する』を意味し、
アル=ムクワバラとは、方程式の両辺から同等の量を減ずるのに対応する『比較する』を意味する。

そして、ゼロや進んだ数体系の基礎ではなく、
これらの方法が彼の名に結び付けられているのはなぜか?

それは代数が、物質的なものから数学の源泉を切り離し、
純粋に抽象的なものへと移行させる最初にしてもっとも偉大な一歩だからである。

ーーーーー引用終わり

 松村享です。

 フワーリズミーは数学を物質から引き離し、抽象へと移行させた。
 物質的なものとは、たとえば測量だ。幾何学は、土地という、目の前にある具体的な現実を測量するために発達した。
 一方、抽象的なものとは、もともと地球にはなかったものを、人間の思考にしたがって作り出す、という事だ。

 たとえば、携帯電話は、もともと地球には存在しない。時計もまた、存在しない。抽象的な数学がなければ、成り立たない。

 時計で考えてみよう。陽のあたる目の前の現実(不定時法)ではなく、地球が一回転するあいだ(定時法)という、目に見えない事象を基準にするから『抽象的なもの』となる。

 『科学の要諦は、常識、感覚では説明できない新事実を提示する点にある』とは、故・小室直樹氏の言葉である。

 発展には、抽象性が必要なのだ。そして、この発展の土台を用意したのが、フワーリズミーである。フワーリズミーの中に、人類史の重要な鍵が隠されている。

 数学を物質から抽象へと移行した、ということは、フワーリズミーこそ、数学を『実学』から『神学』に転化した張本人、という事ではないのか。

 『新版 決然たる政治学への道』(副島隆彦著 PHP研究所 2010年)に、神学・学問の分類表が掲載されてある。その中に『数学は神学の下女である』と、きっちり整理されてある。

 どういう事かというと、科学(近代学問)は、仮説を立てて、事実によって証明することが必須である。
 一方、神学は、事実による証明は必要ない。仮説でおわり、だ。

 『ほら、これがGodです』などとは、誰もいえない。同様に『ほら、これが1です』などと誰もいえない。『1』は、人間がつくった概念、言語であり、自然界のどこにも存在しない。数字は、事実ではない。現象ではない。仮象である。だから『数学は神学の下女』なのだ。

 フワーリズミーは、インドからもたらされた『ゼロ』に衝撃を受け、以後、ゼロを起点に思考をめぐらす。そして『ゼロ』こそ、信仰で受け入れるべき概念だと言う。

引用はじめーーーーー『失われた歴史 イスラームの科学・思想・芸術が近代文明をつくった』p139 マイケル・ハミルトン・モーガン著 平凡社 2010年

アル=フワーリズミーの思考とヒンドゥー体系のなかでは、
すべてがこの無の微小点(※引用者より。『ゼロ』のこと)のまわりを回転している。

輝かしいプラフマグプタ(※引用者より。インドの数学者)は、ゼロを発見し、
書かれた方程式におけるその空無と神秘を表現しようと試みた。

彼はゼロを除法(※引用者より。割り算のこと)で使おうと意図した唯一の数学者であった。

彼はゼロのあるべき究極の真理について書いた。
すなわち、ゼロで割ったゼロはゼロである、と。

この計算は不可能であり、彼は誤っていたが、
新しい仕方で考える彼の意欲は無限に先見的であり、
天才の火花を順次ムスリムたちに浴びせ、
思想のかがり火に点火した。

その二百年後、バグダッドの屋根の上でアル=フワーリズミーは一人で笑う。
ゼロをゼロで割る方程式は不条理であり、何も証明しない。

※中略

ゼロは純粋な信仰で受け入れなくてはならない、と彼は悟る。
ゼロは証明できない。

そして彼が、庇護者アル=マムーンと分かちあおうと考えている
恐るべき皮肉とは、

神が量化されるものではなく
啓示されるものであるのと同じく、

合理主義者の数学の究極の価値は、
純粋な啓示に他ならないと見ることである。

ーーーーー引用終わり

 ここに、数字と信仰の融合がある。数学はフワーリズミー以後、神学の一部となったのだ。(続)

 松村享拝

アルルの男・ヒロシ 投稿日:2015/03/16 16:42

【1445】[1764]3月29日に第二回交流会をします

アルルの男・ヒロシです。

3月の「交流会」のお知らせです。
 前回は2月14日(土)にやりました。会員の皆さんとそれ以外の読書人の皆さんの間での情報交換会を兼ねた交流会を開催したいと思います。

 今回は、「政治映画を見る会」という趣向でやります。3月29日(日)の18時集合で3時間やります。今回は、ハリウッド政治映画を見てその感想を述べるという会です。その後、各自割り勘で食事をするかもしれません。

 流す予定の映画のタイトルをここで書いてしまうと色々と問題があるかもしれませんで書きませんが、映画を見ながらお喋りをするイベントです。映画はエネルギー問題についての映画ということだけ書いておきます。ドキュメンタリーではありません。

  このイベントは、去年に開催した「ケンカ道場」とは別に(それもできるだけやりますが)もっと気楽に肩の力を抜いた形で参加できるものにしようと思います。つまり、この会に限っては、「学問道場・SNSI」の会員ではない人も参加できます。

 お申し込みは以下の申し込みフォームに必要事項を書いてください。先着10人で締め切りです。締め切りの後申し込みいただくと、その旨、こちらでご連絡しますが、その旨を書く前に思い仕込みいただいた方には個別に「受付終了のメール」を送ります。会場費とプロジェクター使用料金など開催にかかった実費は頂戴します。(費用が確定しないのですが、一人あたり最大で1500円程度です)

※3月20日に募集は終了しました
土日に詳しい案内を送ります。お待ちください。

副島隆彦 投稿日:2015/03/16 14:53

【1444】[1763]私の最新刊の 『余剰の時代』 への 書評文(ブックレビュー)を載せます。

副島隆彦です。 今日は、2015年3月16日です。

 私は、今は、恒例の金融・経済本を書くことで手一杯です。弟子たちの論文を見てあげることも出来ないような苦しい状況です。  皆、人間は、自分のことばっかりで精一杯(せいいっぱい)です。 欲 の深い人間たちも、自分の事ばっかりでそれで、終わってゆく。他人のことなど構っていられない。情けないことだ。

 5月31日(日)に、私たち学問道場の定例会(自力での会員向け講演会)を開きます。 私が、思いっきり容赦なく、気になっているすべての問題を、全力で喚(わめ)き立てるようにしゃべります。 詳細は、決まりましたら発表しますから、待っていてください。

 日本株(東証平均株価)が、今日は、19300円台にまで上がっている。
 もうすぐ2万円だ。この計画的な株のつり上げには、日本国民の最後の虎の子である、厚生年金、共済年金がごっそり使われている。それから今年の分として新たに3兆円の郵貯・かんぽの資金を、突っ込む。

 日本国民の大切な、本当に生き残るための最後の資金を、こうやって、株というバクチ市場につぎ込んで、ひたすら一方方向で、「株を上げろ、上げろ、買い上げろ」 と、バカ丸出しで政府自らがやっている。狂気の沙汰だ。

 博奕(ばくち)打ち というものは、どんな種類でも、双方向性(そうほうこうせい)でなければ成り立たない。 バクチ(ギャンブル)は売りと買いの 両方 でやるのだ。 それを、極悪人の安倍晋三たちは、この双方向性の 市場の原理を無視して、買い一点張りの単線鉄道だ。 行き着いた果ては、崖から落ちるしか無い。

 「日本株を買い上げろ。買え、買え、全力で買え」とやっている。一体、そのあとどうするのだ。
「買って、買い上げて、それで、儲かるんだー」で、盲目(もうもく、めくら)になって暴走している。 

 それが、どれぐらい恐ろしいとか、こいつらは、もう脳が麻痺(まひ)しているから分からない。 そのうち回疲れて暴落がやって来たら、日本国民の 年金(4千万人の厚生年金と 他の共済年金2千万人)と、郵貯・かんぽが、本当に吹き飛ぶのだ。支給額が半分になるでは済まない。

 最後は、自分たち権力者が敗れることになる。 どうして、こんなバカなことを続けられるのだ。 大きくはアメリカに脳をやられて、元々がスパイたち及び暴力団だから、自分たち自身が 騙(だま)されている、という自覚がない。「 俺たちは、日本の権力者だ。国民を 煮て食おうが、焼いて食おうが、オレたちの勝手だ」 という 考えで動いている。 歯止めになるものは、もう無い。

 自分たちのことを、国家指導者であり、知能と人材を結集した権力者であると思い上がっている、この “大きな坊や” たちが日本を破滅に向かわせている。

「 5頭のクジラ( GPIF を始めとする共済年金基金)が、池の中でばたばたと 株式を呑み込んで、買い上げている」と NHK やテレビ朝日(報道ステーション)までが、放送したようだ。

 まだあと27兆円「株式買い上げ用」の年金資金があるそうだから、その玉(ぎょく、弾、たま)が尽きた時が、日本の終わりだ。 「汝(なんじ)の時(とき)は数(かぞ)えられたり」 である。 そのとき、日本の国家経営、国家財政 は死期を迎える。 もうこれ以上の資金はない。アメリカに吸い上げられ尽くした。  私が、5年前に、 『日米、地獄へ道づれ経済』という本を書いたときの構図だ。 私だけは、じっと今の事態の背後の真実を目撃し続ける。

 

 私は、先週、『余剰(よじょう)の時代』(ベスト新書)という本を出した。 その宣伝は、今、今日のぼやき の方でやっていますから、そちらをお読みください。「最後に余っている(余剰である)のは、人間だ。つまりあなただ」 と書いてある。

 以下に載せるのは、さっき教えられて、目についた、この拙本『余剰の時代』へのネットにあった書評文(ブックレビュー)である。 

 この書評文を下に載せます。著者である私の書き加え(加筆)をして、割り込みの形で書き加えます。

 私は、この世のことがらに、もっと達観していたい、のだが、ひとりの職人(しょくにん、アーチザン、クラフトマン)として目の前の自分の本書きの職業にのめり込むから、どうしても追い詰められる。 

 脱俗(だつぞく)と解脱(げだつ)なんか出来るものではない。 人だましの専門の職業だから、悟り済まして立派そうにしている坊主(僧侶)たちも、私が、『 隠された歴史 そもそも仏教とは何ものか? 』(2012年8月刊、PHP研究所刊) で書いたとおりである。 

 私にとって、この「そもそも仏教とは何ものか? 」という本と、あと一冊、『 隠されたヨーロッパの血の歴史  ミケランジェロとメディチ家と真実』( KKベストセラーズ 2012年11月刊 ) は大事な本だ。 人類(人間)とは一体、何をして来た生き物か、を大きく知りたい人は、この2冊をそのうち必ず読んでください。そして私宛てのメールで感想や質問をください。 必ずお返事します。

 それでは、拙本『余剰の時代』への、読み捨て御免 という 書評子(しょひょうし、ブックレビューアー)の文を載せます。 文中で、私が、補足説明として加筆します。

(転載貼り付け始め)

「 読み捨て御免 」という 書評子(しょひょうし)の文

http://blog.livedoor.jp/kenzaemon/archives/50455449.html

「 余剰の時代 」  

副島 隆彦 著   ベスト新書 、KKベストセラーズ刊

 世界標準から取り残された横並びの日本人インテリ階層と一線を画する、数少ない世界基準の知識人、副島隆彦氏の新作。

 「余剰」という人類における深刻な問題をキーワードに近代ヨーロッパの思想史をわかり易く解説した本。 18世紀のヨーロッパの啓蒙思想はライプニッツ(数学者、物理学者)の主張した「この世の事象は全て合理的である。従って問題は全て解明される。現実にあるものは全て最善(さいぜん)である」というオプティミスム(楽天主義、最善説 )が 主導していた。

 この18世紀の当時の全ヨーロッパを席巻していた思想の欺瞞を見抜き、オプティミスムを痛烈に批判したのが、ヴォルテールである。ヴォルテールのの懐疑主義(スケプティシズム)に連なり、ずば抜けた経済理論を構築したのが、のちに現れたケインズである。

 ヴォルテールたちの思想の根底にあるものは、「この世はそんな甘くない」だ。

 (ここから副島隆彦加筆。18世紀の当時の数学は、必ず解(かい、答え)がある。人類は最善の状態で存在している、というものだった ) それに対して、ヴォルテールは、「すべての問題が解かれるということはない」という疑いの思想である。そしして当時のヨーロッパの民衆は、支配者、権力者、僧侶、知識階級の人間たちとは異なって、この世の苦難を生きていた。

 現在では、余剰(サープラス)の問題が起き、人類にとって余剰こそは解決不可能な最大の問題となった。

 ケインズの提唱した「有効需要(ゆうこうじゅよう)の原理」は、自分の先生の経済学者たちが唱えた 「市場は放っておけば神の見えざる手により最善( 副島隆彦加筆。 optimum オプティマム)を実現する 」を否定した。 ケインズは、人々の消費(需要)が大事である、という考えだ。

 カネを十分に供給しさえすれば景気は良くなるという、現在の主流派であるサプライサイダー(新古典派)とは、ケインズの考えは対極の思想である。 ケインズは剰余価値説を唱えるマルクスの経済学さえも否定した。

(副島隆彦注記。マルクス主義が唱えた、労働価値説から生まれた剰余価値=じょうよかち=の理論でさえ市場原理主義の一種だとケインズは喝破した。)

 ヨーロッパの近代政治思想の巨大な対立軸として ① 自然法 と ② 自然権 の 考え方がある。
① 自然法(ナチュラル・ラー)は、天(てん)の掟(おきて)あるいは 自然の法則に従い、人間は、無理や無駄なことはせず穏やかに生きるべきだ という、思想であり、これは永遠の保守思想である。

 ( 副島隆彦注記。それに対して、ジョン・ロックが作った)② 自然権(ナチュラル・ライツ)の思想は、人間は誰でも自分の力で生きてゆく権利を持っている、とする。 ( 副島隆彦注記。 これを、inalienable rights インエイリアナブル・ライツ、誰も奪うことの出来ない生得=せいとく=の固有=こゆう=の権利 という。

これは、 安倍晋三たちが、「尖閣諸島は、日本の固有の領土だ 」の あの、「固有」の使い方とはちがう。、安倍たちは、欧米人の多くからは、ジョン・ロックのインエイリアナブル・ライツ を何も知らないのだ、ということで、ひどく嫌われる。人類の近代=モダーン=というものを何もわかっていない、知能の低い東アジア土人にしか見られない。副島隆彦注記おわり  ) 

 人間は、自力で生きることができる、というの自然権(ナチュラル・ライツ) 持つという思想である。 

( 副島隆彦割り込み加筆。この ジョン・ロックの ② 自然権(ナチュラル・ライツ)から、のちに、③ヒューマンライツ(人権派、モダン・リベラル)派が派生した。 多くの人が、崇(あが)め奉(たてまつ)る人権(ヒューマン・ライツ)がここから生まれた。②の自然権と ③の 人権 は全く違う。この区別が、日本人には、なかなか分からない。欧米人と 本気で話したことがある人たちだけが、この区別に行き当たる。 

  ② と③ の 区別を、日本の知識階級のほぼ全員がいまだに知らない。 そして、それ以前に、①の自然法 natural law ナチュラル・ラー派(バーキアン、エドマンド・バーク派) と ② 自然権 ナチュラル・ライツ(ロッキアン、ジョン・ロック主義 )の 巨大な対立も日本の知識層は知らない。

 日本が誇る偉大な福沢諭吉先生は、②の自然権(ナチュラル・ライツ)の日本への唱導者だ、と考えることが出来る。

 ① ナチュラル・ラー派( 永遠の保守派、「永遠の相の下に sub-specie eternitates ズブスペキエ・エテルニタテス ‘under the sphere of eternity 」の上品だが、残酷な人々。威張り腐った貴族や、大僧正のような人たちの思想 )を、 1回微分して生まれたのが、 ② の ナチュラル・ライツ派(現実的な保守派、近代憲法体制の擁護者 )である。 そして、この ② ナチュラル・ライツ派(ロッキアン)を、さらに2回微分することで生まれた(派生した)のが、③の現代人権派(ヒューマンライツ派、 モダン・リベラル派、左翼、社会主義者たち)である。 

 そして、さらに、この ③ の人権派を 3回微分して生まれたのが、③ダッシュ である  アニマル・ライツ派( animal rights , 反体制派、新左翼、過激派、環境保護派)である。 

そして、この ①、②、③、③ダッシュ とも、、全く別の  ④として、ポジティブ・ラー ( positive law 法人定主義=ほうじんていしゅぎ= 。 法律も正義もこの地上の人間たちが自分で決める。神や自然の摂理が作るのではない ) がある。 

 この ④ を大きくは 欧米世界の知識人の間では、ベンサマイトという。ここにも いろいろと議論がある。 日本の知識人層は、いまだに、この 「ヨーロッパ思想の全体像」を形作っている5大流派の思想の区別がつかない。 それらを理解し議論する段階に到達してない。 

 この5の ベンサマイトの中の一派 が、私、副島隆彦が、長いこと唱導(しょうどう)している リバータリアン libertarian である。 

 副島隆彦の本 の相当の読み手でも、私の弟子たちでも、いっかな、なかなかのことでは、このリバータリアニズム libertarianism の理解に、行き着けない。  私たちの仲間では、藤森かよこ先生が、この、リバータリアン思想の創業者、創作者のひとりである、真に勇気のある女性思想家の アイン・ランド Ayn Rand 女史 の日本への紹介者である。 

  私、副島隆彦は、これら ①、②、③、③ダッシュ、 ④ の 大きな思想見取り図を、 1995年に発表した。それを、『世界覇権国アメリカを動かす政治家と思想家たち』(講談社の文庫、2001年)に出した。今年中には、何とか、この 講談社からの この 私の主著を、上製本にして増補、改定版として 出そうと思っている。

 これらの 5つ大きな思想流派を、分かることが、現在(現代)の 欧米の知識層の人々と、私たち日本の読書人階級が 話をする(できる)ときの、最低限度の基礎知識だ。 この大きな「ヨーロッパ政治思想(法思想でもある)の全体像」が、分からないのであれば、日本人の知識層は、東アジアの土人、原住民のままである。 

 そのように、私、副島隆彦は断言する。 もう20年間、そのように断言してきた。 あー、あー。あー、 もう疲れたよ。・・・・ それでも、私は、日本国民を自分が死ぬまで啓蒙(けいもう)し説得し続けるぞ。 私の加筆も、もう、これぐらいでいいか。)

  ② のナチュラル・ライツから派生して生まれた、即ち、2回目の微分をして生まれた、③であるヒューマン・ライツ(人権派) の思想で、貧困者も生き延びる当然の権利があるとされ、政府は国民の面倒を見る義務があるとする。

 そのために 今の国家、政府は、あれこれの各種の福祉を行う。警察や軍事公務員(自衛隊員)までが、福祉国家の要員だ、という言い方までするようになった。  そして、そのためには税金が必要である、という考え方になる。そしてこの税金によって富の再配分を行うという思考に、公務員と官僚(上級公務員)たちがなっている。今は、「公共インフラの利用者として、あなたも税金を納めなさい」と 柔らかく言うようだ。 

 (副島隆彦加筆。 この税金による福祉という考えは、役人どもの考えである。 あの人間の絶対的な平等主義を
説いたジャン・ジャック・ルソーが、「人は生まれながらに普遍の意思(ボロンテ・ジェネラール)が備わっていて、だから、生まれた時にこの普遍意思によって、国家と契約を結んだのだから、だから、納税と兵役の義務を負うのである」とした。

 このルソーの絶対平等主義が、福祉国家論 の生みの親だ。 この徹底した平等主義のために フランス革命という暴力革命も辞さかった。 この過激な人権思想は、フランス革命を主導したジャコバン党のロベスピエールたちの指導理念であった。

 青年軍人だったナポレオンもこのジャコバン・クラブに出入りしていた。だから、ルソー主義者であったナポレオンも 本当は、過激派である。現在の ③ダッシュ = アニマル・ライツ 、過激派に近い人間だったのだろう )

 イギリス思想からすこし離れて、ヨーロッパの思想界で、約100年間に渡って支配したと言ってよい(数学、物理学が全能で万能だった)のがライプニッツの 「全ての問題は解決する。すべてのことは最善(オプチマム)の状態として有る」 という 思想 からルソーへ、さらに全体主義(ファシズム)へと、過激になっていったのである。 著者(副島隆彦)は、ヨーロッパの全体主義、ファシズムの生みの親が、ルソーの過激なヒューマンライツ思想にあるとしている。 

 税金によって平等社会をつくるという狡猾な思想は、国家の寄生虫(パラサイト)として公務員たる官僚機構が強化されることになり、これこそはまさしく中間搾取(ちゅうかんさくしゅ、 intermediate exploitation インターミーディエット・イクスプロイテイション)以外の何ものでもない。

 そして、このルソーの思想のおかしさを真っ先に見抜いた、ヴォルテール、そしてニーチェ、ケインズ が現代の私たち人類(人間)の生き苦しさを打開する指針を与えてくれる。

 これらのヨーロッパ思想の全体像の中には、リバータリアンという思想がある。著者(副島隆彦)は自らこの思想に属し、著者の他の著書でも多く取り上げられており、本書でも第3章で解説がなされている。

 ( 副島隆彦加筆。  ④のリバータリアンは、だから、反(はん)税金、反(はん)過剰福祉、反(はん)国家、反(はん)官僚制、そして、反(はん)海外侵略 の思想である) この ④のリバータリアニズムは、国家や政府をあてにせず、自分の身は自分で守る、他者からの過剰な干渉を拒否する、独立独歩で生きていくという思想である。

 (副島隆彦加筆。 だから、リバータリアンは、日雇い労働者=今の非正規雇用者 でいい、という思想だ。仕事があれば何でもする。どこにでも行く。組織や団体や、会社に屈従しない。奴隷にならない、という勇者の思想だ。

 アメリカのリバータリアンたちの一部は、猟銃で自衛武装している。外国の核兵器攻撃に対しても、「攻めてくるなら、来い。このアメリカの大地で、私の猟銃で戦う」という思想だ。だから、アメリカが悪賢く、世界中を支配する、海外侵略の思想 = グローバリスト ( globalist 地球支配主義者、グローバリズム)に反対する。 このグローバリズムの簡潔で正しい理解も出来ないまま、洗脳され尽くしているのが、フヌケの日本人だ ) 

 厳しい現実社会を、いかに生き延びるか、サバイバルの思想でもある。そこには、綺麗事も理想主義もない。
 
 著者(副島隆彦)は語る 《いまは老人福祉のやり過ぎである。老人ばかり大事にし過ぎた。若者たちのほうがかわいそうだ。若者に職がない問題というのは非常に深刻で、これは 政治の失敗 とはっきり言い切れる。

 世の中、すなわち社会体制そのものが ズルいのだ。コネで公務員、大企業、特殊法人に就職している人はものすごい数でいる。 ”就活”をやらないといけない人たちというのは、本当の意味で特権に恵まれない人たちだ。それと地方出身者はコネがない。》

《「注意しなさい、用心しなさい、警戒しなさい、疑いなさい」 何事に対しても用心、警戒、注意、疑い。これしかないのだ。》(P178~181)

 著者の若者に対する切実なアドバイスである。世の中は甘くはない。騙し、詐欺、裏切り、困難の連続である。若者にとっては特にそうだ。 

(副島隆彦加筆。 特に、地方出身者で、都会で、何とか何とか勤めて生きている若い人たちがそうだ。本当は、誰からも守られていないのだ。そういう貧しい地方出身者の若者のひとりだった、自分を振り返って、私、副島隆彦は、本当に彼らのことを心配に思う。 )

 国家の与える教育(学校教育、公教育)も 洗脳なのである。 何事も自分の頭で考えなければならない。そして自分自身の考えさえも、「本当にこれで良いのか」と何度も何度も己(おのれ)に問いかけ反芻(はんすう)するという厳しい思考訓練が必要である。
 
「余剰」という問題を語ると、「人間の余剰」という問題に行き着く。人類は「人間の余剰」を 戦争経済(ウォー・エコノミー)で乗り越えてきたらしい。 人類は、大体80年周期で戦争をしている。 日本も敗戦後70年を迎えた。そろそろ何が起こっても不思議ではない。

  ヨーロッパ思想史を学ぶためにも、この本は簡潔かつ深く書かれており絶好の教科書である。しかし、「余剰」というテーマとの格闘は予言者の域に達した著者をもってしても困難であったのであろう、著者の苦闘の痕跡が感じられる作品であった。

 (副島隆彦加筆。当たり前だ。この本には、とても書けなかったが、あなたは、この世の余り物です、と言われたら、そのあと、その人はどうするのか。死ぬしかなくなるではないか。、というわけにはゆかない。だから、何があっても、生き延びろ、と書いた。) 

 著者の多くの作品群の中でも指折りの作品である。若者は本書を読み、思索を深めて、今の不条理な(副島隆彦注記。私は、不条理という フヌケなコトバは使わない。不合理=irrational イラッショナル でいい) 時代を生き抜く知恵を身につけてほしい。(了) 

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

アルルの男・ヒロシ 投稿日:2015/03/14 16:32

【1443】[1762]イギリスが中国を抱き込んだ

アルルの男・ヒロシです。

 鳩山由紀夫元首相がクリミアを訪問したことが日本を騒がせている。鳩山元首相は、日本の反米系右翼団体「一水会」のメンバーと行動を共にしているようだが、毎度のことだが鳩山氏の行動は、読めない。あえて言えば、より大きな地政学上の地殻変動の中で起こっている「ノイズ」といえばいいかもしれない。

 ネイト・シルバーではないが「シグナル」と「ノイズ」を見分けることが重要で、鳩山のクリミア訪問は大きな世界の動きからすれば「ノイズ」。それを良いか悪いか話しているネトウヨもネトサヨもノイズを追いかけているのではないか。

 そして、本当に重要なのは、今朝の「日経新聞」に出ていたこのニュース。

(貼り付け開始)

中国主導のアジア投資銀に英参加 G7で初
日本経済新聞(2015年3月13日)

 【北京=大越匡洋】英国財務省は12日、中国主導で今年末に発足するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加する方針を発表した。主要7カ国(G7)で参加するのは英国が初めてだ。国際金融機関として信認が高まり、カナダやオーストラリア、韓国なども追随する可能性がある。AIIBの構想に距離を置いてきた米国や日本の対応が今後の焦点となる。

 これまでにAIIBには東南アジアなど27カ国が参加を表明していた。最終的に1千億ドルとしている資本金の大半を中国が負担し、初代総裁のポストも中国が握る見通しだ。

 すでに英国は日米などG7各国にも参加の意向を伝えたもようだ。ロンドンを中国の通貨・人民元を使った金融取引の中心的な市場に育てる考えだ。AIIBを後押しし、中国との関係強化をテコに人民元取引の増大や中国・アジア市場での影響力の拡大を狙う。

 オズボーン英財務相は12日の声明で「英国が西側主要国で初めてAIIBの創設メンバーになることをうれしく思う。英国とアジアの連携強化は英国企業が世界で最も成長著しい市場でビジネスと投資の機会を得るための長期的な経済計画の柱だ」と強調した。

 英国は今月中にAIIBの設立協議に加わり、「AIIBの組織運営の透明性の向上などに重要な役割を果たしたい」(英財務省)としている。中国財政省は「英国の決定を歓迎する。ほかの参加国と協議したうえで、英国は早ければ3月末にAIIBの創設メンバーとなる」との声明を発表した。

 米国と日本は両国が中心となって運営してきたアジア開発銀行(ADB)と役割が重なるほか、組織運営に不透明さが残るなどとして、AIIBへの参加に慎重だった。米国が主導してきた国際金融秩序への挑戦と受け止める警戒感もある。英国の参加をきっかけに、米中間の国際金融の枠組みを巡る主導権争いが一段と激しくなりそうだ。

(貼り付け終わり)

 このニュース非常に重要である。なぜなら2015年に始まる世界新秩序への移行を示唆するものであるからだ。世界秩序を握るのは金融の仕組みを作る人達。

 ここで重要なのは、G7のイギリスが中国主導のアジアインフラ投資銀行に参加するということ。これはアメリカ主導のTPPに対する強烈な打撃である。日本が主導してきたRCEPの流れにも打撃である。もっと言えばAPECをてこにしたアメリカのアジア外交に対する強力な横槍となる。

 そこで13日付のフィナンシャルタイムズは「アメリカ側の不快感」を一面トップ記事で取り上げている。(US attacks UK’s ‘constant accommodation’ with China)

 イギリス側でAIIBの担当をしているのは財務長官のジョージ・オズボーンである。ビルダーバーグ会議メンバーだ。アメリカ側はルー財務長官が担当窓口。

 アメリカは、属国である日本に管理を任せているアジア開発銀行(ADB)を利用しようと考えていたフシがあり、そこに対抗勢力としてAIIBが出てきた形になる。中国と新興国主導のAIIBは透明性に欠けるということで、豪州やニュージーランドのような旧イギリスのANZUS諸国の加入を牽制していた。

 イギリスは旧植民地の香港を抱えていることや、シンガポールや香港の財界に深く根を張っていることもあり、中国やアジアに食い込みたかった。だから中国の人権政策や香港政策にあまり厳しい口出しをしないで中国を懐柔しようとしてきた。

 去年からイギリスはロンドン・シティにおける人民元取引の取り扱い拡大に賭けている感じがあって、今回のAIIBへの出資も、中国やBRICSの投資案件にロスチャイルド系の欧州、アジア企業を絡ませたいということだろうし、イギリスの金融マンの金融ノウハウを中国に提供していくことで、中国をアジアにおける覇権国にのし上げていく、その中でHSBCなどの金融機関や、ジャーディン・マセソンなどのような商社、あるいは香港のケズウィック財閥などを通じて商圏を拡大、維持したいのだろう。

 中国と旧大英帝国圏の結び付きを強めることになり、これはアメリカの利害とぶつかる。旧覇権国が現在の覇権国を牽制して新覇権国を育成するという路線だ。

 この点でアメリカのTPP構想はイギリスにとって邪魔だったのではないか、

 つまり、アメリカが日本を操り、イギリスが中国をパートナーとしてコントロールする。

 アメリカ政府はイギリスのAIIB出資に怒っているようだが、ウォール街はゴールドマン・サックスなどのユダヤ系金融機関はロンドン・シティともつながっているので、結局はこのイギリスのシナリオに乗るのではないか。

 アジアにおける日中冷戦の片方の立役者がアメリカ、もう片方の立役者がイギリスということである。

 考えてみると、アメリカのアジア回帰を阻害したのが中東におけるイスラム国の台頭だが、あのジハーディ・ジョンも含めてイギリスの影が見え隠れする。

 アメリカのネオコン放送局のFOXやウォール・ストリート・ジャーナルは、ルパート・マードックのニューズ・コーポレーションであり、マードックはユダヤ系のロスチャイルドグループの人間をニューズ社の取締役に迎えていたことがある。マードック自身はユダヤ系ではないようだが、ロスチャイルド・グループとのつながりは重要だ。

 ニューズ・コーポレーションは今は手放したがユダヤ系ネオコンのビル・クリストルの雑誌「ウィークリー・スタンダード」などの親イスラエルメディアを保有していた。フォックスニュースもまたネオコンの報道機関といっていい。

 アメリカの戦争ムードを過剰にあおっているのがフォックスニュースであり、最近もイスラム国に処刑されたヨルダン人パイロットの処刑動画をネットで公開したりと、好戦意識を何かと煽り立てるのが好きなメディアだ。

 ともかくアメリカの外交政策を中東に貼り付けることで、結局アメリカのアジアへの関与が弱くなる。ここにイギリスが中国に関与するチャンスが生まれる。そのために、ネオコン系メディアを煽り立てて米共和党のタカ派の眼をを中東やウクライナでの戦争に向かわせているのだろう。アメリカのネオコン派にイギリスのロスチャイルドの手が入っていることは知っておいた方がいい。

 IMFと世銀はアメリカ主導であり、中国がこの既存の秩序の中で影響力拡大できないので業を煮やして独自にAIIBやBRICS開発銀行を設立していることは否めない。アジアにおいてはAIIBのライバルは日本人が歴代総裁を務めるフィリピンに本部があるアジア開発銀行(ADB)だ。

 イギリスと言えば、つい最近もHSBCのスイスのプライベートバンクでの脱税指南の問題が取り沙汰された。この脱税を指南されてきた顧客のリストの漏洩元は、IMFの専務理事の名前をとって「ラガルデリスト」と呼ばれているが、このリストはスイスのHSBCの銀行員である。今年になって、このリストの名前が欧米のメディアで詳しく報道されたが、例えばサンタンデール銀行の元頭取のエミリオ・ボティン(しかも故人)など欧州系富豪の名前ばかりだった。アメリカ系の名前は出さないことになっているのかもしれない。 

 イギリスにとってHSBC(香港上海銀行)は旗艦とも言える国際金融機関だ。ここにアメリカの横槍が脱税幇助の追及という形で入ってきた。このことにイギリスは内心、アメリカに対して穏やかならざる気分ではないだろう。

 旧大英帝国圏のAIIBへの参加は少し前までは様子見という報道が多かったのに、結局、イギリスは参加することになった。アメリカにいつまでも付き従うよりも、「ブリティッシュコモンウェルス」に対するネットワークを再構築したほうがいいということになったのだろう。なぜならTPPはイギリスに対する「シマ荒らし」という側面もあるからだ。

 日本はアメリカにべったり、中国はイギリスをうまく利用してアメリカにさらに肉薄することになる。イギリスが中国をコントロールしきれなくなったときが、大波乱の幕開けではないだろうか。

 中国への「抱きつき」という、イギリス政府というか、ロンドン・シティの起死回生の秘策が吉と出るか凶と出るか。イギリスは中国主導のAIIBやBRICS開発投資銀行への参加を通じて、自国の外交力にレバレッジをかける。

 イギリスは極東から遥か遠く離れている。「戦争」になっても火の粉は飛んできにくいという判断なのだろう。

 日本は黙ったままであれば、米英の「冷戦」のコマとして中国にぶつけられるために使われるだけだ。

 アメリカ以外の人脈を疎かにしてきたことの弊害だろう。

 現在もマイケル・グリーンは来日中で、自民党・清和会の勉強会で講師などを務めているようだ。安保法制の法案も実際はグリーンが下書きを書いていることだろう。

 安倍に対する対抗勢力となる二階俊博は、自身の二階派の政治家の西川公也前農水大臣と、中川昭一の未亡人の中川郁子農水政務官に対するスキャンダルを仕掛けられたことで、9月の総裁選への意欲を失いかけているようだ。

 株価を公的資金(年金基金)をつかって買い上げていることで日経平均は19000円台を突破している。

 ところが、中国主導のAIIBへ、イギリスが参加を表明することで、大西洋の盤石な同盟の米英同盟にゆらぎが見えている。

 これはアメリカが、中国に対して世界銀行とIMFの議決権拡大を渋り続けていたためだ。イラン政策を巡っても米議会はネオコン系新人議員のトム・コットン上院議員を中心にした、イラン指導部への書簡を送ったことが、議会の大統領の外交権を阻害したとして問題視されている。コットン上院議員は、ネオコンのビル・クリストルから家族ぐるみの支援を受けていると言われている。

 中国の国際金融機関への影響力拡大を渋り続けていたのがアメリカ政府と米議会であり、これに業を煮やしたイギリスロスチャイルド系が独自に中国と話をつけて、AIIBへの出資を決めたようだ。

 すでにAIIBにはASEAN、中東の一部、シンガポール、インド、ニュージーランドなどが参加表明をしており、イギリスが参加していくことで、豪州も参加する可能性が出てくる。

 そうなるとTPPやADBをつかったアメリカのAPEC主導の外交戦略(アジアン・ピヴォット)は大幅な変更を強いられる可能性もある。アメリカがアジアに回帰する前に、イギリスがアジアに回帰する形となったわけだ。

 ただ、もとよりイギリスはアメリカのネオコン派のように凶暴に軍事力を使って、アジアを対立させようとはしていない。イギリスの思惑はビジネスの拡大である。

<参考記事>

日米、アジアの開発金融 中国主導に警戒感
英が参加、先進国の追随焦点

2015/3/14付
日本経済新聞 朝刊

 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国が参加を表明したことを受け、日米両国は他の先進国が追随することに警戒感を強めている。日米主導のアジア開発銀行(ADB)は融資枠を拡大させてインフラ支援を強化するが、AIIBに参加する先進国がさらに増えれば、アジアの開発金融の主導権が移る端緒になる可能性もある。(1面参照)

 「とんでもない」。日本の財務省幹部は13日、英国によるAIIBへの参加表明を受け、思わず声を荒らげた。主要7カ国(G7)でAIIBに参加するのは英国が初めてになる。

 英財務省は声明で「組織運営の透明性向上に役割を発揮する」と表明した。日米はAIIBへの参加に慎重な姿勢を示す最大の理由として不透明な意思決定などを挙げていただけに、英国の声明に、はしごを外された格好だ。

 英国からは事前に参加方針が伝えられたが、日米は翻意させることができなかった。資源やモノの貿易で中国への依存度が増す各国は日米の慰留を素通りする。

 「案件審査で環境への影響を考慮できるのか」。麻生太郎財務相は昨年9月、インドのモディ首相との会談でAIIBが国際基準に沿った審査体制が不十分な点を指摘し、参加を思いとどまるように訴えた。ところがわずか2カ月後、インドはAIIB創設の覚書に署名した。財務相会談を通じて参加を思いとどまらせようとしてきたオーストラリアも「止めるのは難しい」と、日本の財務省幹部は警戒感を隠さない。カナダや韓国も参加を検討する。

 AIIBの創設は日米が招いた結果でもある。中国はADBの出資比率を上げるように訴えてきたが、影響力の維持を狙う最大出資国の日米は増資に反対を貫いてきた。2017年から実施する自己資本の改革でも、増資は棚上げした。ADB総裁は1966年の創設以降、9代続けて日本の財務省と日銀の出身者。不満を募らせた中国は独自の銀行創設に動いた。

 英国のような先進国が参加すれば、AIIBが発行する債券は高格付けを得やすくなり、資金調達コストを抑えられる。これまで日本の財務省幹部は「AIIBは新興国が中心で資金調達コストが高く、採算が合う案件は限られる」として、最上位の格付けを持つADBの優位性は揺るがないとみていた。

 「AIIBがなぜ問題なのかは改めて言うまでもない」。麻生氏は13日の閣議後の記者会見で、参加に慎重な姿勢を改めて示した。

 だが主要国がAIIBへの参加を検討する事態を目の当たりにすると、日米がアジアの開発金融の主導権を保つことが一段と難しくなっているように映る。

 
 

松村享 投稿日:2015/03/13 03:14

【1442】[1761]時計から見るイスラーム思想史②定時法と不定時法、及びキリスト教『ヨハネ福音書について』

松村享(まつむらきょう)です。
今日は、2015/03/13です。
『時計から見るイスラーム思想史』と題して、投稿させていただいております。

前回は序文でした。

今回は2回目の投稿です。
時間についての説明と、キリスト教『ヨハネ福音書』について、投稿します。

○定時法と不定時法、及びキリスト教『ヨハネ福音書』について

 ここで『定時法』と『不定時法』について説明する。

 参照テキストは
『時計の社会史』(角山栄著 中公新書 1984年 )と
『中世の産業革命』(ジャン・ギャンペル著 岩波書店 1978年)の二つである。

 『時間』は永遠であり、Godに属するものだった。だから伝統的に『不定時法』で、時を測っていた。
 
 『不定時法』とは、なにか。
  陽の出ている時間を、12で割るのだ。だが陽の出ている時間は、季節によって、あるいは地域によって異なる。
 それを12で割るのだから、1時間の長さが、季節によって、地域によってバラバラだ。
30分だったり80分だったりする。

 農業が基盤の社会であれば、太陽光が重要なわけだから『不定時法』の方が都合が良い。陽の光はGodの恩寵、というのが、生活の実感である。恩寵にあわせて生活していた、ということだ。

 別に農業でなくとも、普通に生活していれば、むしろこちらの方が、人間の自然には適合しているかもしれない。
 
 たとえば、私が高校生の頃、毎朝行われる0時限目の授業は、強制参加だった。冬場など、まにあうためには暗いうちに家を出なければならない。

 私は『こんなの自然に反している』と考えていた。考えていた、というより、性にあわなかった。嫌だったのだ。それで、だいたい遅刻して登校した。陽のあたる道を、もはや時間など気にせず歩くのが、好きだった。朝焼けの空や、2月の少女の白い吐息など、私は詩を練りながら一人、ぶらぶら歩いていた。

 皆が定時法にしたがって授業に参加しているところ、私は不定時法の観念で、ぶらぶらしていたのだ。
 だから、定時法とは、1日を厳密に24で分けることである。

 季節が変わろうが、陽が出てようがいまいが、6時40分は、6時40分である。
『陽の光はGodの恩寵』などと悠長なことを言っていれば、電車に乗り遅れてしまう。

 目の前の『陽のあたっている現実』ではなく、その裏に隠された自然の法則を学びとり、生活に利用する。これは『抽象する』ということだ。

 『抽象』して自然の法則を、見つけ出す。現実ではなく、抽象を生活に利用する。
 これが、定時法である。

 地球の自転(定時法)など、私は『現実』として見たことはない。ただ『抽象』された数字、時計の数字として、知っているだけである。

 目の前の現実よりも、頭脳活動たる『抽象』を優先する態度が、キリスト教には初めからある。

 目の前の現実よりも、抽象する人間の能力、これがGodと密接につながっているのだ、現実や肉体は汚らしい、原罪にまみれている、抽象とか精神とかが重要だ、という思想伝統が、キリスト教には最初から埋めこまれている。
 
 新約4つの福音書の1つ、ヨハネ福音書は『はじめにロゴスあり』から始まる。この宣言は、キリスト教圏=ヨーロッパを理解するうえで、非常に重要である。『はじめに現実がある』とは、決していわないのである。

 ウェブページ『イエスの実像:聖書とキリスト教と宗教』の、臨夜海馬(イザヤ・トド)という方によれば、ヨハネ福音書は4つの福音書のうち、いちばん最後に書かれたものであり、先行する3つの福音書と比べ、神学理論が高度であることに特徴がある、とのことだ。

 どうやら、ユダヤが覇権国ローマに滅ぼされた後(ユダヤ戦争 西暦66年~74年)、寄り集まった異端のユダヤ人共同体が、ヨハネ福音書の原点らしい。

 そしてフリードリヒ・ニーチェ(1844~1900)が、このヨハネ福音書に激しい攻撃を仕掛けている。なお、ニーチェにいわせれば、キリスト教もユダヤ教も同じものである。

引用はじめーーーーー『道徳の系譜』p56~57(ニーチェ著 岩波書店 1940年)

ユダヤ人はローマに対して何を感じたか。
諸君はそれを殆ど無数の兆候から察知することができる。

しかしそれには『ヨハネの黙示録』を、あの本心に復讐を蔵するあらゆる書き誌された爆発のうちで最も乱脈な爆発をもう一度思い返してみるだけで十分であろう。

(なお諸君は、ほかならぬこの憎悪の書の標題に愛の使徒の名を冠し、
あの惚れ込んで夢中になった福音をこの使徒に帰したキリスト教的本能の持つ論理の深慮遠謀を見縊(くび)ってはならないー。

いかに多くの文献的贋造がこの目的のために必要とされたにしても、そのうちにはなお一片の真理が潜んでいるのだからだ。)

ーーーーー引用終わり

 読みづらい翻訳ではあるが、まとめると、抽象の優位を強調する『はじめにロゴスあり』は、弱者(ユダヤ)による強者(ローマ)への対抗手段である、ということだろう。

 だからユダヤ人は、学問をなにより大事にしてきた。頭を使わないと、すぐに周辺民族に殺されそうになるのが、ユダヤ人の歴史である。

 この思想伝統に帰っていったのが、近代のキリスト教・プロテスタントだというのが、重要な理解だ。

 ニーチェと同じく、ヴェルナー・ゾンバルト(1863~1941)もまた、プロテスタントとユダヤ教は同じものだと主張した。近代において生まれたプロテスタントは、腐敗極まりないカトリックに反旗を翻し『はじめにロゴスあり』に帰っていったのだ。その延長上が我々の21世紀といえる。

 『はじめにロゴスあり』の行き着いた最果てが『ratio:合理』である。
 このようなユーラシア大陸の、生存を賭けた切実さをわからなければ、近代ヨーロッパ人の思考が、我々にはわからない。だが、この切実さほど、我々日本人にとって、わかりづらいものもない。『ratio:合理』も、ただの言葉、知識として通り過ぎてゆく。『ratio:合理』とは、生存を賭けた者の切実さであり、恐ろしさである。

 そしてイスラームにおいて、天才数学者アル・フワーリズミー(780?~845?)が、この思想伝統を受け継いでゆく。(続)

松村享拝

松村享 投稿日:2015/03/05 02:46

【1441】[1760]時計から見るイスラーム思想史①

松村享(まつむらきょう)です。
今日は2015/03/05です。

私は現在、ルネサンス関連の論文を書いています。
ですが、いつのまにやら、イスラーム関連の記述が大きくなってきました。
イタリア・フィレンツェのルネサンスという現象は、イスラーム抜きには語れないのです。

それで今回から、イスラーム思想史を掲載していきたいと思います。
原稿の分量からして、10回の投稿、連載の予定です。
話は、みなさんの部屋にも置いてある『時計』から始まります。

○『時計から見るイスラーム思想史』序文

『時計の社会史』のp16(角山栄著 中公新書 1984年 )によると、我々が使っている時間は『定時法』と呼ばれる。
『定時法』は、1日を厳格に24で割る。現代人にとっては、あまりに当たり前の話である。

だが、この『当たり前』の中に、重要な事実が隠れているのだ。
かつて定時法は、当たり前ではなかった。
定時法の機械時計は、金融業の発達にともなって現れた。一秒一秒を明確に均一に区切るのは、利子のためである。

引用開始ーーーーー『時計の社会史』p17~p18(角山栄著 中公新書 1984年 )

新しい時間概念(※引用者より。『定時法』のこと)が新旧勢力の決定的対立をもたらしたのは、利子をめぐる問題である。

※中略

キリスト教の時間は神学的時間で、神とともに始まり神によって支配されている時間である。時間が神のものである以上、時間を売って利子をとる行為は神を冒涜するものである。

こうして徴利禁止法が十三世紀に神学者、教会法学者によって体系づけられた。

ーーーーー引用終わり

松村享です。
13世紀、ローマ・カトリックは『定時法=利子』を阻止しようとした。
だが定時法の勢いは止まらなかったのだ。
ヨーロッパ、とくにイタリアは高度成長期だったからである。

13世紀~14世紀のイタリアは、モンゴル・ネットワーク、そしてエジプト・ネットワークに従属する、金持ちの属国国家群だった。
このことは、私松村享が、こちら重たい掲示板1708・1709・1715にて『フィレンツェ・ルネサンスは、イスラーム覇者バイバルスから見なければならない』と題して、素描した。

さて、私がここから追いかけるのは、イスラーム思想史である。なぜならば、イスラームにおいて、定時法を可能とする数学、天文学は格段に進化したからだ。

舞台は、バグダードである。
9世紀バグダードに『神学の下女・数学』を創始したと観察される人物アル・フワーリズミー(780?~845?)がいる。

『失われた歴史 イスラームの科学・思想・芸術が近代文明をつくった』p142(マイケル・ハミルトン・モーガン著 平凡社 2010年)によると 、
フワーリズミーは、数学を物質的なものから引き離し、純粋に抽象的なものへと移行させた。
彼のラテン名が、アル・ゴリトミで、現代でも『アルゴリズム』という、数学コードを表す単語として使用されている。
フワーリズミー出現後、数学、天文学は、格段に進化した。つまり、定時法は格段に進化した。

それから100年、10世紀バグダードは、大恐慌に陥る。
それはそのまま、世界史の誕生を実現したイスラーム・アッバース朝(750~1258)の墜落の過程と重なる。

ユーラシア大交易ネットワークを実現したイスラーム・アッバース朝(750~1258)という王朝があった。稀有の大帝国である。
宮崎正勝氏によれば、世界史の誕生を実現した王朝である。アッバース朝は、バグダードを拠点とする。

このアッバース朝の墜落の過程で、バグダードが、銀行街になっている。
ウォール街化したのだ。ここに、金融ユダヤ人が大いに絡んでくるのである。

バグダードから南方90km地点、ここがバビロンである。バビロンに、タルムード(ユダヤ教の聖典)を介して、ユダヤ人の中央政府をつくりあげた人物、サアディア・ベン・ヨーゼフ(882~942)がいた。

snsi研究員・鴨川光氏によると、サアディアは、近代(modern)の源流に位置する学者である。サアディアの時代に、世界の中心バグダードは、大恐慌に突入し、同時にウォール街化した。金融業の発達である。ここが『定時法覇権』の原点だ。

みなさん、我々の日常は10世紀バグダードの延長上にある。
なにも創価学会だとかキリスト教だけが『宗教religion』というわけではない。
いま、パソコン画面の端に現れている時間、数字の羅列がそのまま、我々の宗教である。(続)

松村享拝 

副島隆彦 投稿日:2015/02/26 16:07

【1440】[1759]私の 金融セミナー(講演会)のお知らせ

副島隆彦です。 続けて書きます。

 明々後日、3月1日に、私が5時間ずっと金融・経済の話をする 「副島隆彦の”予言者”金融セミナー」講演会が有ります。東京の 有楽町の マリオンの 有楽町朝日ホール です。かつて朝日新聞社があったところです。 と言っても40歳から下の人は知らないだろう。
 
 私は、今の日本の金融市場は異常事態だと思います。こんな人工的な狂乱の株価のつり上げをいつまでやる気だろうか、とじっと見ています。 一日あたり、3000億円ぐらい GPIFのお金を突っ込めば、いくらなんでも、株価は上がるでしょう。

 私の友人の弁護士が私に言いました。「アベノミックスがやっていることは、危険ドラッグ だ。覚せい剤と麻薬の飲み過ぎで、やがて昏倒(こんとう、ぶっ倒れる)するだろう」と。私も同じ意見だ。

 今の株式相場は、日本もアメリカも、博奕(ばくち)打ちたちが集まった賭場(とば、鉄火場ともう言う) の 博奕場(ばくちば)の、胴元(どうもと。資金を貸すヤクザの親分、賭場の主宰者) が、自分で、博奕をやっていることに等しい。 なぜ、日本政府という、金融市場の管理者、当局、監視者が、自分で、博奕の札 を張れるのか。おかしいと、自分たち自身で思わないのか?

 英語では、、この 賭博場の胴元(主宰者)を、house ハウス という。それに対して、 regulator レギュレーター と言って、バクチ市場の監視者、管理当局がいる。

 ところが、このハウス(胴元)と一体化したレギュレーター(当局)が、自分で金儲けをしようとして、バクチ betting の賭け札を張ることをしている。だから、今の日本政府と、アメリカ政府のやっていることは、

   Regulator / House Own Betting
  
  「レギュレーター・ハウス・オウン・ベッティング 」

である。即(すなわ)ち八百長(やおちょう)賭博(とばく)である。私が、このように書くこと対して反論がある人はいないだろう。 恥を知れ。 もうすぐ 天罰(=市場の復讐)が落ちるだろう。

 私は、誰にも遠慮しないで、自分の思いの丈を、洗いざらい、明々後日(しあさって)、3月1日の 金融セミナーで、徹底的に話します。 今、インテリ層に人気の、トマ・ピケティ  Thomas Piketty の、 「21世紀の資本(論)」についても、その重要性についてかなりのところまで説明するつもりです。

この先の、日本と世界の金融と経済の動きについて、私の予測(予言)を聞きたい人は、どうぞお集まりください。

 朝日ホールは全部で630席ありますが、あとまだ50席ぐらい余裕があるそうですから、当日の会場払いでいいですから、ご参加ください。全席、自由席だそうです。 
 
 当日払いの受付は午前10時20分から、開演は午前11時から、午後5時まで、私が、ずっと話し続けます(お昼休みは当然有ります)。 概要は以下のとおりです。

『 副島隆彦の“予言者”金融セミナー 第9回 』

 日時  : 2015年3月1日(日)
 場所  : 東京、有楽町朝日ホール
 開演  : 11時
 終了  : 17時(予定)
 受講料 : 15,000円(全自由席)

 申し込み先  http://kokucheese.com/event/index/259057/

 問い合わせ  アールシステム ブレイントラスト企画
        03-6261-5465( 平日:10-18時、2月28日は臨時営業します )

副島隆彦拝

副島隆彦 投稿日:2015/02/26 14:52

【1439】[1758] 官製相場(かんせいそうば) による 株式の最高値が続いている。

副島隆彦です。今日は、2015年2月26日です。

 株式市場で最高値更新が続いている。 ニューヨークの昨日の終値は、史上最高値の 1万8224ドル になった。 2万ドルを目指す気だ。 東京市場も、 さっきの記事で、東証平均株価は、1万8700円になろうとしている。こちらも2万円を目指している。

 このように、ふたつの株式市場が、全くの相似形(そうじけい)で動いている。いや、動かされている。 官製相場(かんせいそうば)が続いている。 

 官製相場というコトバは、私が昨年の11月に出した『官製相場の暴落が始まる』(祥伝社刊)で使って、流行らせたコトバだ。今や、日本の金融や経済の世界で生きている人間で、この 官製相場 を自分の口からポツリ、ポツリと呟(つぶや)かない者はいない。

 官製相場とは、政府、金融当局 自身による 、やってはいけない、お手盛りの、権力者たちが自分で手を汚して、なりふり構わず、やっている市場の価格釣り上げによる 市場操作(しじょうそうさ)である。 

 それは、民事法( みんじほう、私法、しほう)に違反する 法律違反であるだけでなく、さらには、刑事法(けいじほう)に違反する、相場操縦罪(そうばそうじゅうざい)という犯罪である。 

 このことを、自分の胸にしっかり手を置いて、 GPIF(ジー・ピー・アイ・エフ)や、日銀FTF(イー・ティー・エフ)で、価格の操作をやっている者たち自身が、自分のやっていることの 犯罪者としての罪の深さを自覚すべきだ。

 私、副島隆彦だけは、この日本国にあって、本当のことを包み隠さずに、書く。書いて国民に知らせる。 一体、私たちのこの国で何が起きているのか、何という異変が、「まるで正常なこと」のようにして起きているかを、書いて知らせてきた。 犯罪者どもは、逮捕されて、処罰されるべきである。

 「 副島先生よー、こんなに長いこと(もう20年も)、株価がずっと低いままだったんだから、上がって当然だよ」 と、自らのボロボロのポートフォリオ(資産項目)を見つめながら、長年の大損を握りしめたまま、自分もまた、政府による犯罪に加担しているのだ。 恥を知れ、と私は言う。 

 どこが自由市場だ。どこに 健全な市場(マーケット)での、生き生きとした自由競争による、自由な人間たちの金儲けのための、立派な振る舞いが有る、と言えるのか。

 以下の載せる新聞記事は、今年の始めのものだ。ロイター(イギリスの通信社)の日本人の記者たちが正直に書いた記事だ。この記事を ゆっくりと、しっかりと、丁寧に、よーく読んで、賢くなってください。 真実に裏打ちされたコトバだけが、人々の胸に迫る。本当のことを堂々と、怖(おそ)れることなく、書く者たちだけが人々の尊敬を勝ち得るのだ。 

以下の記事の終わりの方に、明瞭に次のように書かれている。

  「 「官製相場」が行き過ぎて、実体経済(じったいけいざい)とかい離す  るような相場が形成されれば、いずれ、株高と低金利のどちらかが修正され  る形で大きく変動することになるため、警戒が必要だ 」

  「 「官製相場」は円債(えんさい)市場(引用者注。 日本国債の売り買  いの市場のこと) も同じだ。10年債利回りは過去最低水準の 0.3%  台 に低下。日本経済もしくは日本企業の業績が改善するとすれば、 低過  ぎる長期金利はいずれ正当化できなくなる 」

と書かれている。 だから、やがて、こういう事態になるのだ。すべての市場参加者は、ゆめゆめ これらの重たいコトバを忘れるなかれ。

(転載貼り付け始め)

●「初日からボラタイルな「官製相場(かんせいそうば)」、2015年の展開暗示か」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0KE0FW20150105

2015年1月5日 ロイター

 新年初日の東京市場は、動きの激しいボラタイルな(引用者注。激しい乱高下の値動き、のこと)展開となった。

 ギリシャの政情不安など海外の不透明感が強いにもかかわらず、特段の材料が ないまま日本株はマイナス圏から急反転。日銀のETF(上場投資信託)購入を期待した買いが入るなど「官製相場(かんせいそうば)」への期待が株価を押し上げた 格好で、ドル/円 も切り返した。緩和マネー主導で大きく振れる今年の相場展開を暗示しているようだとの声も出ている。

 日銀ETF買いへの思惑

 大発会のマーケットには、その年の相場の特徴がしばしば表れることがある。日経平均が 3万8915円(終値ベース)の史上最高値を付けた1989年12月29日。翌年の大発会となった1990年1月4日は200円安で始まり、 年間では1万5000円下落。バブル崩壊の予兆となった。

 昨年初日の日経平均は、その前年末に9連騰と急上昇した反動が出て、380円安で始まった。昨年の値幅自体は4100円と、それほど大きい わけではなかったが、前年末の終値水準から下に2400円、上に1700円と上下に振れる荒れた相場展開を示唆するスタートとなった。

 今年の大発会(だいはっかい)は、終値では42円安と小幅安だったが、一時はマイナス200円安まで下落。その後、一時90円高の水準まで一気に切り返すボ ラタイルな展開となった。特段の買い材料は見られず、上海総合指数が 一時3%超の急伸を見せたが、コマツなどの株価はマ イナスで、中国関連株がにぎわったわけではない。

 相場を反転させた材料は、日銀によるETF買いへの期待だ。前場終値がマイナス圏だったことで、午後に入って買いが入るのではないかとの思 惑が強まった。

 「昨年の大納会(だいのうかい、12月30日)は、日銀のETF買いが見送られたことが大幅安の一因となった。大発会は逆に日銀のETF買いが入ると期待 されるとの見方から、短期筋による押し目買いが入ったようだ」(日本アジア証券グローバル・マーケティング部次長の清水三津雄氏)という。

  インパクト強まる日銀や公的年金の買い

 日銀は昨年10月31日に決定した追加金融緩和策で、ETFを2015年に3兆円購入することを決定した。東京株式市場の年間営業日を 250日として、1日当たり「必ず」120億円買うことになる計算だ。

 昨年10月31日以降、ETFの買い入れ規模は、それまでの147億円から374─380億円に拡大。そのペースであれば、ほぼ3日に1度 は買い入れる必要がある。

 東証1部売買代金は2兆円を割り込む水準に減少しており、取引時間中にまと
まって出てくる買いの額としては、マーケットに与えるインパクト は十分だ。さらに中央銀行が株式を購入するというアナウンスメント効果は小さくない。

 また年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や共済年金など「公的年金」が国内株を増やすポートフォリオへの変更を進めていることか ら、年間1.7─3.5兆円の資金が流入するとの試算もある。

 「いいか悪いかは別にして、日銀やGPIFの買いが日本株相場を下支える要因になることは間違いない。しかし、日銀の追加緩和などを材料に ヘッジファンドなどが仕掛けることが予想される。今年も『官製相場(かんせいそうば)』が続くとみられるが、ボラタイルな相場展開は続くことになりそうだ」と三 菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は指摘する。

  株高と債券高の共存いつまで

 実際、現物株と先物を合わせた昨年の日本株の買い主体を見ると、12月15日の週までの累計では、外国人が2278億円と2013年の13 兆6771億円から大きく減らしているのに対し、公的年金の売買を仲介する信託銀行は2兆7469億円と大きく買い越している。

 現在、日本株を最も保有しているのはGPIFだが、ETF購入を進める日銀は近く日本生命を抜いて第2位の「大株主」となる見通しだ。「違 和感はあるにせよ、GPIFと日銀の動向に神経質になるのはやむを得ない」(国内証券)というのが市場の本音だろう。

 「官製相場」は円債市場も同じだ。10年債利回りは過去最低水準の0.3%台に低下。日本経済もしくは日本企業の業績が改善するとすれば、 低過ぎる長期金利はいずれ正当化できなくなる。

 一方、低い長期金利の方が「正しい」とすれば、今から10年後でさえ、景気や物価は上向いてない状態と言うことであり、株高の方が修正を迫られることになる。「官製相場」が行き過ぎて、実体経済とかい離するような相場が形成されれば、いずれ、株高と低金利のどちらかが修正される形で大きく変動することになるため、警戒が必要だ。  (伊賀大記 編集:田巻一彦)

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。 以下に、今日のNY と 東京の株価の最新の記事も貼っておきます。

(転載貼り付け始め)

●「米国株、ダウ15ドル高で連日最高値 ナスダックは11営業日ぶり小反落 」

2015年2月26日 日経新聞

2月25日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小幅ながら続伸した。終値は前日比15ドル38セント(0.1%)高の1万8224ドル57セントと、連日で過去最高値を更新した。

 米連邦準備理事会(FRB)が利上げを急がないとの見方を背景とした買いがやや優勢だった。一方で、目先の利益を確定する目的の売りが相場の重荷となり、ダウ平均はもみ合う場面が目立った。

●「 東証前引け、反発 先高観強く1万8700円に迫る、2部指数反落 」

2015年2月26日  日経新聞

 2月26日午前の東京株式市場で日経平均株価は反発した。前引けは前日比103円12銭(0.55%)高の1万8688円32銭と、24日につけた2000年4月以来の高値を上回った。

 企業業績の拡大を手掛かりとした投資家の物色意欲が強く、1万8700円に迫る場面もあった。JPX日経インデックス400 と 東証株価指数(TOPIX)も反発した。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

古村治彦 投稿日:2015/02/26 14:20

【1438】[1757]以下の共同通信の記事内容はおかしい

 SNSI・副島隆彦を囲む会の研究員の古村治彦です。

 この重たい掲示板にアルルの男・ヒロシ(中田安彦)研究員が「[1756]安倍晋三が米議会で演説する件」として2015年2月23日に掲載した記事の中で、私が「おかしい」と思った部分があり、それを書いておきたいと思います。それは、中田研究員が貼りつけた共同通信の記事です。それを下に転載貼りつけします。

(転載貼りつけはじめ)

(貼り付け開始)

安倍首相、米議会演説へ 池田勇人氏以来54年ぶり 
共同通信 2015年2月22日

 日米両政府は、安倍晋三首相が4月下旬からの大型連休中の訪米時に米議会で演説を実施する方針を固めた。日本政府関係者が21日明らかにした。1961年に池田勇人首相が下院で演説して以来54年ぶりとなる。日本の首相としては前例がない上下両院合同会議での演説へ最終調整している。先の大戦への反省を踏まえ、戦後一貫して「平和の道を歩んできた」との見解を示し、未来志向の関係を呼び掛ける考えだ。

 首相の祖父、岸信介首相も57年に演説している。

 安倍首相は演説で、TPPなど経済分野を含めた幅広い両国関係の深化が相互の国益にかなうとアピールするとみられる。

2015/02/22 02:00 【共同通信】
(貼り付け終わり)

この記事は何処が安倍首相を招請したか書いてないが、共同通信の英語版には次のようにある。

(引用開始)

According to the government official, U.S. Deputy Secretary of State Antony Blinken proposed, when he called on the prime minister’s office on Feb. 13 during a trip to Japan, that Abe address Congress, and he agreed.

Abe also expressed hope to make address Congress during a meeting in Tokyo on Monday with a bipartisan group of U.S. lawmakers led by Rep. Diana DeGette, a Colorado Democrat.

(引用終わり)

(転載貼りつけ終わり)

 古村治彦です。

 私が「おかしい」と思ったのは、英語版の方です。前半部を翻訳しますと、「ある政府高官によると、米国務副長官アントニー・ブリンケンが、2015年2月13日の訪日中に首相官邸を訪問し、安倍首相に対して、アメリカ連邦議会(Congress)での演説を提案し、安倍首相も同意した」となります。

①アメリカは三権分立(Separation of Power)が徹底している国です。「分立」とありますが、「緊張感を持って、自分の縄張りを犯されないように見張りあっている」状態です。この中で、行政府の国務省の一職員であるブリンケンが、連邦議会のことで何かを言うことありえませんし、あってはいけないことです。これは大変な越権行為です。「公務員が連邦議会のことで云々した」となると、これは大変なことです。それは、アメリカの国家体制である三権分立をないがしろにする行為だからです。

②ブリンケンには、国務省派遣で連邦上院外交委員会のスタッフ(その時の委員長は現在のジョー・バイデン副大統領)という経歴もあります。ですから、議会とのパイプがあって、「安倍首相の連邦議会での演説」について、提案があったということも考えられます。しかし、それはあくまで非公式であり、表に出てはいけない話です。それを「米国務副長官のアントニー・ブリンケン」が議会演説を提案した、と共同通信に漏らした「the government official」は、実は大変なことをしでかしているのです。

③ブリンケンが安倍首相を訪問したのが2015年2月13日です。その後、2015年2月16日に米議会の超党派議員団が安倍首相と会談しています。英語の記事の後半部にある通り、「安倍首相は月曜日(16日)に、コロラド州選出で民主党所属のダイアナ・デゲット連邦下院議員率いるアメリカの超党派の連邦議員たちと東京で会談し、その中で、連邦議会での演説を希望した」ということです。その時の様子を日経新聞は次のように伝えています。

(新聞記事転載貼りつけはじめ)

●「首相、米議会演説に意欲 春で調整の訪米時に」

日本経済新聞電子版 2015年2月17日
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE16H05_W5A210C1PP8000/

 安倍晋三首相は16日、米議会の超党派議員団と首相官邸で会談し、春の大型連休中で調整している自身の米国訪問時の米議会での演説に意欲を示した。デゲット下院議員が「首相が米議会で演説できるようにしたい」と話し、首相は「できればありがたい」と応じたという。同席者が明らかにした。

 日本の首相による米議会での演説が実現すれば1961年の池田勇人首相以来54年ぶりとなる。首相の祖父の岸信介首相も演説したことがある。

 首相は議員団との会談で、戦後70年について「戦火を交えた両国は戦後和解して強固な同盟国となり、ともに世界の平和と繁栄に貢献してきた。今後も幅広い分野で緊密に連携したい」と強調した。米側は「首相の訪米の成功を期待している」と語った。

(新聞記事転載貼りつけ終わり)

 古村治彦です。

④超党派議員団は、安倍首相に対して「演説ができるようにしたい」と述べて、安倍首相が「できればありがたい」と応じています。これはまだ正式な招待という訳ではありません。もちろん内々には根回しが済んでいるということもあるでしょうが、正式な招待のためには、連邦下院議長のジョン・ベイナーの親書なり、招待状がなければなりません。また、超党派議員団は別の機会では安倍首相の歴史認識が日米関係にとって懸念となっていると語ったとも伝えられています。以下の記事をお読みください

(記事転載貼りつけはじめ)

●「日本を訪問中の米議員団、安倍首相の歴史観を危惧「第二次世界大戦をめぐる問題で、日本が逆行しているとみなされないようにすべき」―米紙」

Record China 2月19日(木)10時37分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150219-00000029-rcdc-cn

日本を訪問中の米議員団、安倍首相の歴史観を危惧「第二次世界大戦をめぐる問題で、日本が逆行しているとみなされないようにすべき」―米紙

18日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、日本を訪問中の米国の議員団が、安倍晋三首相の歴史観が日米関係にとって懸念になっていると述べたと報じた。写真は安倍晋三首相。

2015年2月18日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、日本を訪問中の米国の議員団が、安倍晋三首相の歴史観が日米関係にとって懸念になっていると述べたと報じた。

ウォール・ストリート・ジャーナルが17日に報じたところによると、日本を訪問中の米国の超党派の議員団が、安倍晋三首相の第二次世界大戦に対する歴史観が日米関係にとって大きな懸念になっていると述べた。ダイアナ・デゲット下院議員(民主)は、記者団に対して、「第二次世界大戦終戦70年にあたり、慰安婦問題をはじめ、第二次世界大戦に関連したその他の問題で日本は逆行しているとみなされないようにすることが重要である」と述べた。また、安倍首相の「歴史修正主義」は、日本の近隣諸国との関係を傷つけるものだとの見方を示した。

日系のマーク・タカノ議員(民主)は、非常に二極化された米国の政治的環境から見ても、安倍首相の歴史観は超党派の議員の反発を起こす危険性があると警告した。また、ジェームズ・センセンブレナー議員(共和)は、安倍首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の首脳会議がまだ行われていないことに対して懸念を示し、北朝鮮が脅威となる可能性に対して日本、韓国、米国が協力することの重要性について述べたという。(翻訳・編集/蘆田)

(記事転載貼りつけ終わり)

 古村治彦です。

⑤このような状況では、安倍首相の連邦議会での演説が確実に行われるという保証はありません。三権分立の話に戻ると、共同通信の英語版記事では、「2月13日にブリンケンが機械演説を提案し、安倍首相が同意した」とあり、「2月16日に超党派議員団との会見で、安倍首相が議会演説を希望した」とあります。ブリンケンが提案することもおかしいですし、議会演説に関しては、何も正式には決定していないことが分かります。

⑥以下の投稿から私が考えたことは、「首相官邸側の高官が共同通信をはじめとするマスコミを使って、議会演説を既成事実化しよう」としているのだということです。3月3日にアメリカ連邦議会で演説するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、オバマ大統領ともバイデン副大統領とも会談できません。「それに比べて、安倍首相はオバマ大統領とも会談でき、議会でも演説できる」という最大限の厚遇で迎えられるのだ」ということに官邸側はしたいのでしょう。しかし、そこで、「ブリンケン米国務副長官からの議会演説の提案」という内容を話してしまいました。これは大きなミスです。

 ここまで書いてきたことは、些細なことだと思われるかもしれませんが、「三権分立」をないがしろにすることは、アメリカにとっては国家体制の根幹を揺るがす大問題です。共同通信の記事にある通りにブリンケンが発言したとすると、議会で問題にして、オバマ政権に対する攻撃材料にしようとする議員が出ないとも限りません。小さなことなのですが、実は大変なことなのです。

(終わり)