「1851」 『米中激突恐慌』(祥伝社、2019年11月)のまえがき と あとがき を急いで紹介する 2019年10月10日

 古村治彦です。今日は2019年10月10日です。

 「重たい掲示板」で副島隆彦先生が予告した通り、2019年11月1日発売の『米中激突恐慌』のまえがき、目次、あとがきを以下に貼り付けます。


米中激突恐慌-板挟みで絞め殺される日本 (Econo-Globalists 22)

(貼り付けはじめ)

まえがき 副島隆彦

 この本を書き上げた直後(9月30日)、私はヨーロッパから情報をもらった。名門ドイツ銀行(ヨーロッパ最大の民間銀行。ドイツの中央銀行[ブンデスバンク]ではない)が破綻(はたん)する。ヨーロッパに金融危機(フアイナンシヤル・クライシス)が起きる。日本円は、激しく円高になる。1ドル=100円を割って80円、60円台になるだろう。


ドイツ銀行の株価の動き

 ヨーロッパ(EU)とアメリカ(トランプ政権)の貿易戦争(トレイド・ウオー)も始まった。制裁関税のかけ合いだ。欧米白人文明の内部分裂が起きている(10月2日)。


ドイツ銀行本社

 金(きん)が、この6月初めから急激に上がりだした。

 1トロイオンス(31.1グラム)が1560ドル(9月4日)まで上がった。日本の国内の価格では、1グラムが5300円(9月5日。卸値[おろしね])になった。「金(きん)を買うように」と、ずっと勧(すす)めてきた私の考えの勝利である。このあと、金(きん)はもっと上がってゆく。これまで金を買ったことのない人は、今のうちに金(きん)の地金(じがね)を買ったほうがいい。長い目で見て、金はもっともっと上がる。今の2倍になる。第2章で、これからの動きを詳しく予測する。

 あと一度、下(した)押(お)し(下落)したら、そこでサッと拾い(買い)なさい。

 株価は、NY(ニユーヨーク)でも日本でも、最高値を更新しつつあるように見えた。だが、もうすぐ暴落が起きる。いくら上がっていると言っても、ジェットコースターと同じで、急降下する。この動きを2カ月周期で繰り返す。今の世界の金融市場は、きわめて不安定である。


ニューヨーク株式の動き


東京株式の動き

 このことを投資家、資産家、企業経営者は、肌身(はだみ)でよく分かっている。私たちは注意深くならなければいけない。常に慎重になって、用心しなければいけない。調子に乗って、また大損して痛い目に遭(あ)うのは自分だ。ただし、生来(せいらい)の博奕(ばくち)打ちの才能のある人は別である。彼らは瞬時(しゅんじ)に動く。そうでないと、勝ち残れない。そういう人々は、私の本から世界の金融の動きの知識と情報だけ、取って行ってください。

 この本では、米と中が、防衛(軍事)と金融経済の両面でぶつかることで、世界が不安定になって、金融恐慌が起きることをずっと説明してゆく。

 アメリカと中国が貿易戦争(トレイド・ウオー)(ハイテク、IT[アイテイ]戦争でもある)で激しく衝突するたびに、NYや東京の株価が落ちる。そのせいで、世界中が不安定だ。このことを投資家や資産家が、心配して動揺している。自分の金融資産や投資した資金が、安全に守られるか、という根本的な不安を抱えて、そのことを口に出し始めている。

 「株や債券の値下がりを見越して、先物(さきもの)の売りで儲けを出そう」とか、「金(きん)の地金(じがね)が値上がり出したので、そっちに短期間だけ資金を移そう」とかいう、安易な考えはダメだ。どうも、アメリカを中心にした戦後76年目の、世界金融体制(金・ドル体制。ブレトンウッズ体制)の崩壊、終わりが近づいている。そのことを投資家や資産家が、肌合いで敏感に感じ取っている。

 私は最近、彼らから、直接の苛立(いらだ)ちや訴えを聞くようになった。彼らの、投資家としての動物的な勘(かん)から来る不安に対して、私はどのような理論と対策を立てることができるか、を真剣に考えている。

 米と中が、世界覇権(ワールド・ヘジェモニー world hegemony )すなわち、世界の支配権をめぐって激突している。これが今の不安定な金融市場の大きな原因である。この本の英文書名に載(の)せたとおり、” The US‐China Hegemonic Cold war “「ザ・ユーエス・チャイナ・ヘジェモニック・コールド・ウォー」である。それは去年(2018年)3月に、貿易戦争(トレイド・ウオー)の火ぶたが切られたときからだ。米トランプ大統領が、先制攻撃(プリエンプテイブ・アタツク)で先に手を出した。

 「もうこれ以上、中国を放っておくことはできない」と。さあ、それでだ。この戦いは、アメリカと中国の、果たしてどちらが勝つか。

 日本国内では、今もなお、保守的な資産家や投資家、企業経営者たちは、「絶対に、アメリカが勝つ」と固く信じている。「やっぱりアメリカは強いんだー」と威勢よく言っている。だから、彼らは「NYや東京の株は、まだまだ上がり続ける」、そして「円ドルの為替(かわせ)相場は、強いドルが続くので、
1ドル=130~140円の円安ドル高になる」と予想している。そういう人が多い。果たしてそうか。

 私、副島隆彦の本の読者であれば、もう少し深い知恵に基づく、別の見方をする。このことをずっと、この本で説明してゆく。

副島隆彦

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目 次

まえがき

第1章 「米中激突 恐慌」と日本
●中国に対する、アメリカ国民の切迫感とは
●なぜトランプは「2人の主要閣僚」を叱りつけたのか
●市場を直撃した大統領のトゥイッター
●消費税10%で日本の景気はどうなるか
●ジェットコースター相場で、下落(11月)→上昇(12月)→暴落(2020年1月)
●反中国の「フォアマン・レイバラー」とは何か
●〝スプートニク・ショック〟の再来
●アメリカ人は中国への親近感を抱き続けてきた
●これからの株価を予測する
●トランプの「(政策)金利を下げろ」は正しいのか
●逃げ場がなくなる先進国
●2024年、先進国の財政崩壊(フィナンシャル・カタストロフィー)が起きる
●中央銀行総裁と財務長官の違い
●トランプは、アメリカの隠された大借金を無視できない
●「強いドル」の終わり
●恐るべき中国のプラットフォーマー
●銀行が消滅する時代
●日本が買わされたのは、トウモロコシだけではなく大量の兵器

第2章 今こそ金(ゴールド)を握りしめなさい
●金(きん)を買う人、売る人が増えている
●あと2年で金(きん)1オンス=2000ドルに
●世界金価格を決めるのは上海とロンドン
●ウソの統計数字に騙(だま)されてはいけない
●中国とロシアは、米国債を売って金(きん)を買った
●最後の買い場がやってきた

第3章 米中貿易戦争の真実
●米と中の冷戦(コールド・ウオー)はどのように進行したか
●ファーウェイ副社長の逮捕と、中国人物理学者の死
●トランプを激怒させた中国からの政府公電
●「アメリカ政府による内政干渉を許さない」
●なぜトランプは折れたのか
●李(り)鴻(こう)章(しよう)になぞらえられていた劉鶴
●対中国制裁関税「第4弾」の復活
●妥協派と強硬派――アメリカ国内が分裂している
●米国のIT企業とファーウェイ
●アメリカに敗北し続けてきた日本

第4章 米国GAFA 対 中国BATHの恐るべき戦い
●アリババ(BATHのA)の金融商品が与えた衝撃
●追い詰められたアップル社
●トランプはアメリカ帝国の墓掘り人になる
●アリババの歴史と全体像
●7000倍の資産膨張
●貿易戦争からハイテク戦争、そして金融戦争へ
●「中国の手先」と非難されるグーグル
●ホワイトハウスに呼びつけられたグーグルのCEO
●未知なる最先端の何ごとかが進行している

第5章 金融秩序の崩壊
●日本が買わされている米国債の秘密
●ECB総裁が「恐慌突入」を認めた
●2024年、10000円が1000円になる

あとがき

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あとがき  副島隆彦

 この『米中激突 恐慌』は、表紙に打ち込んだとおり、 Econo-Globalists 「エコノ・グローバリスト・シリーズ」の22冊目である。よくもまあ22年間も、私は金融本を毎年、書き続けて、生きながらえたものだ。我ながら感心する。

 この本を書き進めながら、第4章に入ったところで異変が起きた。私の脳にひらめきが起きた。第3章までは、まあ私のいつもの金融と経済(そしてそれを世界政治の動きから見る)の、どぎついあれこれの洞察(どうさつ)である。

 第4章に来て、私は急に一気に、高いところに到達した。問題は、米と中の貿易戦争が、IT(アイテイ)ハイテク戦争に姿を変えたことではなかった。現下(げんか)の貿易戦争は、本当は金融戦争だったのである。すでに5(フアイブ)G(ジー)の世界規準を握った中国ファーウェイ(華為技術)社をめぐるあれこれの抗争と、米中政府間(かん)の激突ではなかった。

 問題は、ファーウェイではなく、アリババ(及びテンセント)だったのだ。アリババが先駆(せんく)して握りしめた、スマホ決済と与信(金融)、さらには預金機能(金融商品のネット販売だ)が、世界の金融体制を根底から覆(くつがえ)しつつある。まさしく大(だい)銀行消滅である。クレジット会社もカード会社も銀行も、世界中で消滅してゆく。


中国のキャッシュレス取引額の推移


中国の取引額の割合

 ヨーロッパ近代(モダーン)が始まって、ちょうど500年である。この近代500年間の欧米白人文明が敗北しつつある。問題はファーウェイではなく、アリババだったのだ。真に頭のいい人は、本書の第4章を読んで驚愕してください。ついでに、ソフトバンクの孫正義(そんまさよし)氏の力(ちから)の謎と裏側もバッサリと解いた。乞(こ)うご期待だ。

 私とともに、この20年間、「エコノ・グローバリスト・シリーズ」で走り続けてくれた、担当編集者の岡部康彦氏が、満期退職した。岡部氏が念入りに下ごしらえしてくれたので、本書の第4章の快挙も成し遂げることができた。彼との仕事での長い付き合いは、このあとも続く。記して感謝する。

2019年10月
副島隆彦

(貼り付け終わり)


米中激突恐慌-板挟みで絞め殺される日本 (Econo-Globalists 22)

(終わり)

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