「110」 サブプライム危機から世界恐慌へ(39) 2008年8月の記事を載せます。 2009.6.3

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副島隆彦です。 今日は、2009年6月3日です。

引き続き、2008年8月の記事を載せます。この月の次の月が、9月15日に起きた”リーマン・ショック”です。嵐の前の様子が、分かります。  副島隆彦記

(転載貼り付け始め)

● 「中国銀行:ファニーとフレディ債の保有29%減らす-保証MBSは22%減 」

2008年8月29日 ブルームバーグ

 中国の銀行大手、中国銀行は米住宅金融投資会社ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の社債(連邦機関債)の保有を過去2カ月に29%減らした。

 両社の損失拡大や米政府による救済憶測のなかで保有高を圧縮した。 中国銀行が決算とともに発表したところによると、同行は6月30日-8月 25日の間にファニーメイ・フレディマック債の保有を約31億4000万ドル減らして75億ドルとした。両社が保証する住宅ローン担保証券(MBS)は22%減らし51億7000万ドル相当とした。

 米財務省はファニーメイとフレディマックの財務状況が悪化した場合は支援することを表明しているが、アジアの投資家は両社への慎重姿勢を強めている。米資産運用会社ルーミス・セイレスのダニエル・ファス副会長は今週、海外投資家は「信用への懸念から投資を手控えている」と指摘していた。

●「仏クレディ・アグリコル4-6月 前年同期比94%減益-評価損響く」

2008年8月28日 ブルームバーグ

 時価総額でフランス3位の銀行、クレディ・アグリコルが28日発表した2008年4-6月(第2四半期)決算は、米国の金融保証会社(モノライン)関連の評価損が響き、前年同期比94%減益となった。

 発表資料によると、純利益は7600万ユーロと前年同期の12億9000万ユーロから減少。ブルームバーグ・ニュースがまとめたアナリスト予想の中央値(1億5000万ユーロ)も下回った。

 第2四半期にはモノラインの保証付き証券で6億9300万ユーロの評価損を計上した。アナリストは評価損の総額を10億5000万ユーロと予想していた。証券部門のカリヨンは3四半期連続の赤字だった。

 MFグローバルのアナリスト、マムーン・タジ氏は決算発表前に、「カリヨン部門のリスクテークが全体の業績低迷の理由だ」とし、投資銀行事業の見直しがリスクテーク意欲と将来の収益力に影響するのは必至だと指摘した。

 クレディ・アグリコルは今年3月までに、米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン危機に絡む評価損55億ユーロ(約8900億円)を計上し、5月には証券部門のトップを更迭。7月には59億ユーロの増資を実施した。6月末時点の中核的自己資本(Tier1)比率は8.9%だった。

 クレディ・アグリコルは5月15日に、パトリック・バルロフ氏をカリヨン部門のトップに指名。7月17日には同部門の幹部陣を刷新した。同行はカリヨンの再編について9月10日に詳細を発表する。また、向こう1年半-2年の間に50億ユーロ相当の資産を売却する方針も5月に示した。

●「米倒産、歯止めかからず 7月5600件に急増、3年ぶり高水準 」

2008年8月28日 日経新聞 ニューヨーク

 米企業の倒産ペースが加速している。7月の倒産件数は前年同月比57%増の5664件と、法的整理の条件が厳しくなった2005年10月以降、単月として過去最高だった。

 個人消費の冷え込みを映し、小売り、外食企業の倒産が目立つ。 8月に入っても住宅、自動車関連の不況業種の倒産が続出。 金融機関が融資基準を厳しくしていることもあり、当面は倒産件数が高止まりするとの見方が支配的だ。

 企業が裁判所に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)や清算などを申請した件数を、米民間調査会社ジュピター・ イーソーシズがまとめた。7月の倒産件数は直近のピークだった
5月(5319件)を上回り、3年ぶりの高水準。倒産件数は年初は月4000件台で推移していたが、ガソリン高による個人消費の伸び悩みや住宅公社の経営問題を受けた信用収縮を背景に件数は 増加傾向にある。

●「8月の英住宅価格、ほぼ20年ぶりの大幅低下-ネーションワイド 」
U.K. Annual House Prices Drop Most Since 1990, Nationwide Says

2008年8月28日 ブルームバーグ

 英住宅金融4位のネーションワイド・ビルディング・ソサエティが28日発表した8月の英住宅価格は、前年同月比でほぼ 20年ぶりの大幅低下となった。

 住宅ローンの貸し渋りやリセッション(景気後退)の見通しが、住宅購入意欲の低下につながった。8月の平均住宅価格は前年同月比10.5%低下の16万4654ポンド(約3300 万円)と、1990年10-12月期以来の大幅な落ち込みとなった。前月比ベースでは1.9%の低下。7月は同1.5%低下だった。

 約10年ぶりの高水準にあるインフレ率や景気の停滞、銀行による住宅ローンの貸し渋りを背景に、不動産相場は90年代初めの前回リセッション以来の大幅な落ち込みとなっている。イングランド銀行のキング総裁は今月、10年間にわたり活況が続いた後、住宅価格は「著しい調整」に直面しているとの見方を示した。

 ネーションワイドのチーフエコノミスト、フィオヌアラ・アーリー氏は「最近の住宅市場の動きは非常に鈍い」と指摘。「経済や住宅市場の状況に対する信頼感はおおむね弱い」との認識を示した。イングランド銀は、インフレ加速と景気後退のリスクを両にらみし、政策金利を4月以降5%に据え置いている。

●「日米欧、ドル防衛で秘密合意 3月の金融危機時」

2008年8月28日 日経新聞

 米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題をきっかけにした米金融不安でドルが急落した今年3月、米国、欧州、日本の通貨当局がドル買い協調介入を柱とするドル防衛策で秘密合意していたことが明らかになった。

 ドル暴落で世界経済に大きな混乱が広がるのを回避するためで、為替市場の安定に向けた緊急共同声明も検討された。米ブッシュ政権はかねて介入に慎重姿勢を貫いてきたが、深刻なドル離れで方針転換を余儀なくされた格好だ。

 米国主導のドル防衛策は過去にほとんど例がない。米住宅公社の経営問題などでドル不安はなおくすぶっており、各国当局が再び連携を探る可能性がある。

 複数の国際金融筋によると、各国当局がドル防衛策の詰めの作業に入ったのは、米証券大手ベアー・スターンズの経営危機が表面化した3月中旬。金融システムの動揺が収まらず、世界的なドル安、株安に歯止めがきかなくなっていた。

●(副島隆彦注記。アメリカはこの年の4月に、時価会計を放棄して実質、骨抜きにし、ルール変更したくせに、このようにわざとらしいことをやってみせる。本当に偽善者どもの国だ。)

「米SEC、国際会計基準への切り替えスケジュール提案 」

2008年8月28日 AP通信 ワシントン

 米証券取引委員会(SEC)は27日、 上場企業の国際会計基準採用を2年以内に認める方針を打ち出した。 2014年以降は全上場企業に対し採用を義務付ける可能性もある。

 グローバルスタンダード受け入れをめぐっては一部の投資家や議員から反発も出ているが、 推進派は金融市場の国際化が進む中で当然の動きであり、 国外の企業を呼び寄せる一助にもなると指摘している。

●「FRBによる金融危機回避措置の代償は-Jベリー 」

2008年8月28日 ブルームバーグ

 サブプライムローン(信用力が低い個人向け住宅融資)問題が引き金となった金融危機から1年が経過して、米国の金融システム内にある多くの弱点が明らかになってきた。政治的に可能だとしても、こうした弱点をすべて克服するには数年かかりそうな気配だ。

 金融機関の破たんが金融システム全体の崩壊につながるようなシステミックリスクを回避するには、相互に関連した多くの措置が必要となる。そうした災難は今年3月、かろうじて回避された。米連邦準備制度理事会(FRB)が米証券大手のベアー・スターンズの破たん回避に向けて、例外的な措置を講じたためだ。

 つまり、こうした措置は金融機関のリスクを制限する方法が含まれることになるだろう。必要な措置の多くは強い反対に遭うことになりそうだ。というのも、リスクを制限すれば、かつてのような高い収益性を回復することができなくなるからだ。

 米モルガン・スタンレーのエコノミスト、リチャード・バーナー氏は今月25日、投資家は「レバレッジやリスクテーク、金融機関の収益などに対する規制が何を意味するか完全には理解していない」と指摘した。しかし、野放図なリスクテークや金融システムを十分監視していなかったことの代償は大き過ぎて、放置するわけにはいかない。

規制回避
  米国の金融業界やそのロビー集団は政治家の主要な資金源でもあり、大部分はその種の規制強化を回避することが可能だった。それが間違ったことだとしても、彼らは再び規制強化を阻止することができるかもしれない。

 これに対し、FRBのバーナンキ議長は今月22日の講演で、「金融システムの将来や金融関連規則をめぐって起きる国民的な議論」となる問題の一端を示した。こうした議論の及ぶ視野は気が遠くなるほど幅広い。

 ベアー・スターンズ問題は、重大なシステミックリスクをもたらす可能性のある金融機関の破たんへの対処に関して、「明確な法的枠組み」が存在しなかったという事実を浮き彫りにした-。バーナンキ議長はこう指摘した。通常の時間がかかる破産手続きは明らかに機能しないのだ。

 FRBは前例のない措置で、米銀JPモルガン・チェースによるベアー・スターンズの救済合併を後押しした。これは潜在的に税金投入につながる可能性があるため、同議長は財務省に責任を移譲し、資金源を付与する法律の成立を提案した。

 他の投資銀行がベアー・スターンズのような流動性危機に陥らないようにするため、FRBは窓口貸付制度の対象をプライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)にまで広げた。それは、「異常かつ切迫した環境」の下では銀行業以外に対しても中央銀行の貸し出しを認めた大恐慌時代の法律を拠り所としている。「異常かつ切迫した環境」は、今まさにサブプライム危機に当てはまる。

 ただ、バーナンキ議長や他の金融当局者らは、そうした貸出制度の権限が明確に付与されるように「連邦準備法」の改正が必要だと考えている。それと同時に、当局者らはFRBが投資銀行にも窓口貸付を行うとすれば、銀行に対する場合と同様に、規制や監督を行う法的な権限も必要だと指摘している。

他の選択肢はない
  現在、FRBは米証券取引委員会(SEC)との合意覚書に基づき、投資銀行に検査官を派遣している。SECには投資銀行を監督する権限がありながら、これまでリスクの度合いや投資レバレッジの程度を実際に規制したことはなかった。

 適切な権限が付与されれば、FRBはこうした措置を取るだろうし、その過程で金融業界の収益性を限定することになるだろう。しかし、これ以外には選択肢はないだろう。米国の金融システムが発展するにつれて、金融機関のいくつかは「大き過ぎてつぶせない」存在になったからである。ベアー・スターンズの場合と同様に、経営破たんすれば、金融システム全体や米経済に対し、リスクを負わせることになろう。

 米政府による効果的な監視とは、証券会社が「資本や流動性といった緩衝材を適切に維持し、リスクや流動性管理に対する総合的なアプローチを発展させる」ようにすることだと、バーナンキ議長は講演で述べた。 現在、明らかになっているように、いくつかの巨大投資銀行の経営者らはリスクや流動性の管理に大失敗し、受けたリスクに対して資本が少な過ぎた。

 同議長はほかにも立法措置につながる可能性のある問題に触れた。これは資本規定や貸倒引当金、信用供与の急拡大につながる他の規則を見直す必要性があるものだ。

 現在の金融危機は、米国の金融構造や金融機関の経営、規制、監督には数多くの問題があることを示した。FRBは危機を鎮めようと試み、将来を見越して、包括的な方法でより強固なシステム構築を目指している。大統領と議会は来年の年明け早々から、自らの役割を引き受け、努力する必要がある。(ジョン・ベリー)

●「経済コラム、米住宅公社問題から恐ろしい現実が見える - W・ペセック」

2008年8月27日 ブルームバーグ

 機密情報資料。失業統計。国家安全保障費の見積り。政局の世論調査。世界のリーダーたちは、よく読んで理解しなければならない書類が山積している。米国の次期大統領の必読書類リストにはさらに、連邦準備制度理事会(FRB)の表「H.4.1」が加わる。

 エコノミストたちは、ニューヨーク連銀が毎週発表する資料から、この表を入手している。資料の名前は無味乾燥な「準備金の構成項目と収支」というもので、歴代の米大統領たちがその内容を熟読していたことが知られていないのは無理もない。

 次期大統領は同表から、外国人が米国の生活水準を維持する上でいかに積極的に資金を提供し続けているかを知ることになる。悲しいかな、米国民は、アジアからの資金提供がない状態で生き抜く方法を学ばなければならない十分な理由がある。

 多くのアナリストが予想していたような大幅なドル資産離れは、まだ起きていない。米国債に対する需要は、ドルが下落し、信用危機が深刻化するなかでも、極めてしっかりしている。米住宅公社のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の問題ですら、まだ大幅な資本逃避をもたらしていない。

 「まだ(yet)」という単語がここでは重要な意味を持つ。中銀が保有する米政府機関債が今月約100億ドル減少したのは、資本逃避が進行中であることを必ずしも意味するものではない。しかしアジア諸国は、米当局が住宅公社の問題にどのように対処していくか、憂慮しながら見守っている。

 格付け会社フィッチ・レーティングスでアジア地域のソブリン格付け担当責任者、ジェームズ・マコーマック氏(香港在勤)によると、中国はファニーメイとフレディマックを中心に長期の政府機関債を3760億ドル相当保有している。ファニーメイとフレディマックは大き過ぎてつぶせないだけでなく、地政学的な意味も大き過ぎて倒すわけにはいかない。

恐ろしい結果
  中国人民銀行の元貨幣政策委員、余永定氏は先週、「米国政府がファニーメイとフレディマックの破たんを容認し、海外の投資家に十分な補償を行わなければ、恐ろしい結果になる」と指摘した。「それが世界の終わりでないとしても、現在の国際金融システムの終わりということだ」と語った。

 ファニーメイとフレディマックが救済されたとしても、最近の動きはわれわれが知るところの米国の金融取り決めの終わりを示している。米国が今考慮すべきは現実である。 この問題に対処していく上では、中国だけでも十分厄介な「顧客」ということになる。控えめに見積もっても、中国が保有する米政府機関債は同国の国内総生産(GDP)の10%に相当する。

 米国が、投資家に対し返済の遅れと減額を通知したらどうだろう。五輪の成功にどっぷり浸っている中国国民13億人は、自分たちに多大な損失を被らせ、米国民が依然として裕福な状態に、どのように対応するだろうか。FRBの表で立場を逆転させてみれば、米国民の間で中国への資金提供をやめるべきだとの世論が高まることは容易に想像できよう。

アジアの担保
  米国は現在のような危機的状況にあっても足元は今後も堅固との理論は、同国がアジアからの資金にいかに依存しているかという点を軽視している。米国は過去数年間にわたり生産性の高い経済を構築してきており、アジア諸国はそれを担保にしていると、しばしば指摘される。確かにそれは本当だ。

 同時に、アジア諸国には選択肢がほとんどないのも事実だ。貿易黒字の規模を背景に、アジア各国は最も流動性の高い証券市場に資金を投資し、自国通貨が競争面で不利な水準まで上昇することを回避する以外に、ほとんど選択肢がないのだ。

 選択肢の1つとしては、ユーロ建て資産への投資が挙げられる。ただし、ドル資産からの分散投資はリスクを伴う。ドル資産を大量に保有する日本や中国、ロシアといった国々がユーロ資産にシフトしていることを投資家がかぎつければ、ドル相場は大きく下げ、中銀は多大な損失を被ることになる。

 共存関係の話のようだが、実際の問題は米国の海外資金への依存度合いだ。米国の経常収支赤字は2008年1-3月(第1四半期)に1764億ドルと、1993 年以来の平均1000億ドルを上回っている。それは、米国が世界の景気拡大を支えてきたことによるのではなく、アジアの資金が米国に危険なまでに身の程を超えた生活を提供してきた結果である。

ほころびた金融システム
  米金融業界の苦境がさらに深刻化した場合、アジア諸国は投機的な投資を回避するために、米国に投資していたそうした資金が必要になる。その場合でも、過去1年間のドルの乱高下がアジア諸国を慎重にさせるだろう。

 米ベアー・スターンズの事実上の破たんを受けて米国型の資本主義への信頼が損なわれるなか、ドルは米金融当局による利下げを受け、過去1年間に対ユーロで7%、対円で5%それぞれ下落した。米金融機関に巨額の出資を行っている政府系投資ファンド(SWF)も考え直すかもしれない。

 民主党のオバマ候補、共和党のマケイン候補、どちらが就任するにせよ、次期米大統領はほころびが見られる米金融システムを修復し、国民に過度の借金体質を改善させることが課題になる。米国がアジアからの資金にこれまでほどは頼れないと認識するなかで、そうした過程はより厳しいものとなろう。

 マケイン候補は、アジアからの資金なくしてどのように減税分を補うのだろうか。オバマ候補は、米国がかくも依存している地域に対し用いている保護主義論をどうやって貫いていくのだろう。

 両候補が問い掛けている強いアメリカ論はすべて、米国がいかに経済政策面での一部自治権を失いつつあるかという点を無視したものだ。ポールソン米財務長官が取り組んでいる政府機関債の再構築への動きは外交政策の意味を持ち、今後もそうしたプリズムを通して見ていかなければならないだろう。

 次期大統領が多忙であることは間違いない。そして、アジアからの資金流入がこれまでより細るなかでかじ取りを強いられることは、さらに疑いようがない。

● 「独ドレスナー銀売却、コメルツ銀・中国国家開発銀との交渉本格化」

2008年8月 26日 フランクフルト、 ロイター

 ドイツ保険大手アリアンツ傘下ドレスナー銀行の売却をめぐる交渉が、アリアンツと中国国家開発銀行および独コメルツ銀行との間で佳境を迎えている。複数の関係筋が26日、ロイターに語った。

 アリアンツに近い筋は同日、両買い手候補との話し合いが本格化していると述べ、交渉に近い別の関係者は中国国家開発銀と合意する見込みが十分にあると語った。当事者はすべてコメントを拒否している。

 これまではコメルツ銀行が買い手の最有力候補と目されていた。コメルツ銀の買収が成功すれば、ドイツで2位と3位の銀行が合併することになり、ドイツ銀行に対抗する一大銀行グループが誕生する。

 関係筋はまた、ドレスナー銀行がコメルツ銀に2段階で売却され、アリアンツが少数株主として株式の保有を継続する可能性や、アリアンツが中期的に統合銀行の30%前後の株式を取得する可能性があるとも述べた。

 ドイツの日刊紙フランクフルター・アルゲマイネは、金融業界関係者らの話として、中国国家開発銀がドレスナーにかなり高い買収価格を提示しており、それを現金で支払う用意があると報じた。

●「外貨準備、ドル比率最低に 世界の合計3月末63% IMF調べ」

日経新聞 2008年8月 26日

【ニューヨーク=山下茂行】世界の外貨準備に占める米ドルの比率の低下が止まらない。国際通貨基金(IMF)の調べでは3月末時点で、各国金融当局が保有する外貨準備のうち米ドルの占める比率は63%と、1999年のユーロ発足以来で最低となった。

 ユーロ台頭に加え、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題をきっかけに、米経済力を象徴してきたドルの基軸通貨としての立場は浸食されつつある。

 IMFによると、外貨準備のうちで通貨構成が確認されているのは米ドル換算で合計約4兆3200億ドル(約475兆円)。このうち米ドルで保有されているのは約2兆7200億ドルで、その比率63%は、昨年末に比べ1ポイント減少した。

●「米アラバマ州ジェファーソン郡、破産申請を準備-30億ドル不履行か」

2008年8月26日 ブルームバーグ

 米アラバマ州ジェファーソン郡当局は、金利急上昇に見舞われ支払いが困難になった30億ドル(約3300億円)の債券の問題で、債権者と合意できなかった場合に備え、破産届け出を用意するよう司法担当者に通達した。

 ジェファーソン郡政委員会は26日、法律事務所ブラッドリー・アラント・ローズ・アンド・ホワイトと郡検事にJPモルガン・チェース率いる債権団との交渉と、交渉決裂時の破産申請書類の準備を委託する計画を全会一致で承認した。シティグループなど複数のバンカーや助言機関も郡に解決案を提示したが、支持は得られなかった。

 郡政委員会のコリンズ委員長は記者団に対し「成功を望んでいるが、必要ならば届け出も準備する」と指摘。「今回の決議はうまく機能する可能性がある。金融各社は裁判所に持ち込みたくはないとも考えられる」と話した。

 ジェファーソン郡が問題の債務を履行しなければ、米国史上で最大の地方債のデフォルト(債務不履行)となる。これまでで最大のデフォルトは、1983 年のワシントン公共電力システムの債券の22億5000万ドル。地方自治体の破産届け出としても、94年のカリフォルニア州オレンジ郡の破産以降で最大規模になる見込みだ。

●「米GSE株が続伸、国有化観測が後退 」

2008年 8月 26日 ニューヨーク、ロイター

 26日の米株式市場では、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)株が2日連続で上昇した。

 両社をめぐっては、住宅市場の悪化で自己資本が不足し、国有化が必要になれば普通株が無価値になるとの懸念が浮上していた。株価は20年ぶりの安値近辺まで下げていたが、ここ数日は、国有化の必要はないとの見方が強まっている。

 両社は過去4四半期連続で赤字を計上しているが、シティグループとゴールドマン・サックスのアナリストは26日、国有化以外の選択肢が存在すると指摘した。 ローラー・エコノミック&ハウジング・コンサルティングの創業者トマス・ローラー氏は「政府による救済は差し迫っていないとの見方が広がっている」と述べた。

 ノルウェーの政府系ファンドは26日、ファニーメイとフレディマックへのエクスポージャーが、昨年末の1290億クローネから、880億クローネ(163億6000万ドル)に減ったことを明らかにしている。

● 「信用収縮、本番はこれからか-米金融機関債、09年までに過去最大の償還」

2008年8月26日 ブルームバーグ

 米証券大手メリルリンチやリーマン・ブラザーズ・ホールディングス、米銀ワコビアを含む米金融機関は借り入れコストがいかに高くなったかを間もなく知ることになるだろう。

 JPモルガン・チェースによれば、2009年末までに償還を迎える米金融機関の社債は過去最高の8710億ドル(約95兆5000億円)。 米国債に対する利回り上乗せ幅(スプレッド)も過去最大級に拡大しており、メリルリンチの指数データによると、年間の利払いが1年前と比べ 最大230億ドル増える可能性がある。

 借り換えコストが高く付けば、金融機関は資本市場での借り入れ能力を抑制され、個人や法人向け融資を一段と絞り、それが既に01年以降最も緩慢なペースの米景気にさらに水を差す結果となる。

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は先週、最上級格付けの米金融機関50社中、ほぼ半数の見通しが6月30日時点で「ネガティブ(弱含み)」だったとしており、同比率は過去15年で最も高くなった。

 フィフス・サード・アセット・マネジメントのシニア・ポートフォリオマネジャー、マーコ・ミケリック氏は「資本主義のギアが止まりつつある」と指摘。 「銀行セクターには多大な懸念がのしかかり、資本争奪が起きている」と語る。金融機関債のスプレッドは平均で414ベーシスポイント(bp、1bp= 0.01%)と、昨年の最小水準76bpを大きく上回っている。投資適格級債全体のスプレッドは平均で約314bp。

  バンク・オブ・アメリカ(BOA)の証券部門でかつて債券調査責任者を務めたデービッド・ゴールドマン氏はブルームバーグラジオとのインタビューで、「信用収縮は今始まったばかりだ」と指摘。その理由として、「これまでの損失で資本が相当傷んでしまった金融機関は、これから家計や法人向け融資を絞らざるを得ない。

 いよいよデフォルト(債務不履行)が起きる」と説明した。 現在は投資家に転じているゴールドマン氏は運用していたファンドを閉鎖したと語る。市場が「殺伐とする」可能性が高いためだという。

●「米政府系住宅金融:2社株価急落 公的資金投入観測強まり」

2008年8月22日 共同通信

【ワシントン斉藤信宏】米株式市場で、政府系住宅金融会社2社の株価が急落している。米政府による公的資金投入の観測が強まり、株主価値が消失するとの憶測が売りにつながっているためだ。

 株価が急落しているのは、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の2社。両社とも、米国民の住宅取得を促進するため、債券を発行。調達した資金で民間金融機関から住宅ローン債権を買い取り、証券化して投資家に販売する業務を担う。

 低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題の影響で住宅市況が低迷、7月に経営不安が表面化した。米政府が公的資金による救済を可能にする法律を成立させて有事に備えてきた。

 今週はじめに米経済誌バロンズが「米政府が2社に資本注入する可能性が高まっている」と報じたことで、国有化に伴う株主価値の消失が現実味を帯びた。ファニーメイの21日の終値は4.85ドル、フレディマックは3.16ドルまで下落するなど、すでに市場は2社への公的資金投入を織り込み始めている。

●「米ファニーとフレディへの公的支援、2230億ドルの債務借り換え次第か 」

2008年8月20日 ブルームバーグ

 米住宅公社のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)が、2230億ドル(約24兆 5000億円)相当の債券を9月末の償還期限に返済できるか否かが、公的支援を回避できるかの決め手になる可能性がある。

 両社が公表した数値とブルームバーグのデータによると、9月30日が期日となる債務は、ファニーメイが約1200億ドル、フレディマックが1030億ドルだ。

 ポールソン財務長官は7月、ファニーとフレディの資金調達コストが上昇し、両社が発行した債券への需要が縮小している兆候がみられたことから、緊急時に無制限に資金を投入する権限を議会に求めた。しかし、両社の資本が信用関連損失で目減りするとの懸念が広がるなか、両社の調達コストは再び上昇している。

 クレディ・スイス(ニューヨーク)のアナリスト、モシュ・オレンバック 氏は、債務を借り換えできるかどうかが最も重要な要因だと指摘した上で、「これまでのところは両社とも借り換えは可能な状態だ」と述べた。

 ただ、ファニーメイの3兆ドルの債券に対して、最大の国外保有者であるアジアの投資家は購入割合を減らしてきており、ポールソン長官が公的支援を実施する必要性が潜在的に高まっている。

 JPモルガン・アセット・マネジメント債券運用部長の国部真二氏(東京在勤)によると、同社の日本拠点ではファニーメイとフレディマックの債券保有を減らしている。富国生命保険の桜井祐記取締役財務企画部長も、ファニーとフレディの今後の行方をやや懸念していると指摘。事態が好転しているようには見えないと述べた。

●「元IMFロゴフ氏:米経済はリセッション入り-大手米銀破たんも」

2008年8月19日 ブルームバーグ

 元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのケネス・ロゴフ米ハーバード大学教授は、米経済は信用市場の混乱によってリセッション(景気後退)入りしており、大手米銀が破たんする可能性があるとの見方を示した。

 同教授はシンガポールでブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じ、「米国での最悪期はまだこれからだ」とし、「金融業界は縮小が必要だ。中規模と小規模の銀行が幾つか倒れるだけでは不十分だと思われる」と語った。米住宅市場の急減速を発端に昨年発生した信用危機は、金融機関に巨額損失をもたらしている。

 ロゴフ教授は、米住宅金融投資会社のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)について、「10年前に閉鎖するべきだった」とし、「国有化する必要がある。株主が投資した全額を失うのはやむを得ない。債券は保証するべきだろう。米国は両社の債務を政府が保証するという印象を与え続けてきたからだ」と語った。

 また、ロイター通信によると、ロゴフ教授は19日にシンガポールでの会議で、信用危機は悪化する公算が大きく、大手米銀が破たんする可能性があると発言した。同教授はブルームバーグとのインタビューで、「業界が縮小するときにはいつも、大手プレーヤーの退場があるものだ。大手投資銀行の間でも統合が見られるだろう」と語った。

 さらに、「システムで教訓を生かすためには、一部の金融機関を破たんさせることも必要だ。巨額の利益を上げながら、救済される業界があってはならない」と述べた。  ロゴフ教授は、米経済がすでにリセッション入りしているとした上で、住宅市場は悪化が続くとの見方を示した。米景気低迷は2009年7-12月(下期)に入っても続くとの見通しも示した。米政策金利については「低過ぎる」として、現行水準が続けばインフレ圧力の増大を招くと警告した。

●「米政府系住宅金融2社への公的資金注入に現実味 米金融危機」

 2008年8月19日 産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】 経営不安が続く米政府系住宅金融会社、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)に対し、米政府が近く公的資金注入に踏み切るとの見通しが強まっている。

 内外投資家への影響は大きく、財務省は観測の火消しに躍起だが、資産劣化は止まらず、一時国有化のシナリオも取りざたされ始めた。

 米週刊経済誌バロンズ(18日付)は政権関係者の話として、財務省が数カ月以内に両社への公的資金注入に踏み切る公算が強まっていると報じた。

 米住宅ローン残高の半分にあたる約5兆ドルを保証・保有する両社の経営危機を回避するため、財務省に両社の株式購入の権限を与える救済策を盛り込んだ住宅関連法が先月、スピード審議で成立したばかりだ。

 財務省報道担当は18日、報道を否定したが、ニューヨーク株式市場で両社の株価はそれぞれ20%も急落した。ロイター通信によると、海外の中央銀行は保有する両社の株式・債券のうち約110億ドル分を過去1カ月間に売却したという。

 不安が再燃したのは、低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題の拡大で資産劣化が著しいため。フレディマックは4~6月期決算で、全資産を時価評価した場合、約56億ドルの債務超過に陥ると判明。ファニーメイも自己資本の水準が、損失処理には不十分とされる。

 同誌によれば、財務省は両社が追加増資に失敗すれば、両社発行の優先株を引き受ける。その場合、両社普通株式の保有者は資産を失い、優先株保有者や、約190億ドルの劣後債保有者も損失を被ると指摘。さらに、財務省は両社経営陣を刷新して事業縮小や資産売却を進め、株式を再公開して民営化するか、政府機関の傘下に収める「準国有化策」のシナリオも報じた。

 米政府は支援策を「予防的措置」(財務省幹部)と強調するが、エコノミストの間では「最終的に公的資金注入に行き着く」(ビンセント・ラインハート元連邦準備制度理事会金融政策局長)との見方が強い。

●「米カルパース、株式投資減らしディストレスト債ファンドに振り向け」

2008年8月18日 ブルームバーグ

 米最大の公的年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は、株式投資 を減らし、最大23億ドル(約 2530億円)をレオン・ブラック氏が 運用するディストレスト債ファンドに投資する。

 社債デフォルト(債務不履行)率が1年以内に2倍に上昇する と見込まれるなかで、ブラック氏のアポロ・グローバル・マネジメントは割安な債券や融資債権を買い取るファンド3本を設立した。 当局への届け出によると、これらのファンドの当初資金の大半はカルパースが出資した。

●「米住宅差し押さえ、7月は前年比55%増 民間調べ」

2008年8月16日 日経新聞

【ニューヨーク=財満大介】7月に米国で住宅ローン返済が滞って差し押さえを受けた件数が27万2171件と、前年同月比で55%の大幅増となったことが、米不動産調査会社リアルティトラックが14日発表した調査でわかった。6月に比べても8%増えており、住宅不況が直近で一段と進行していることを裏付けた。

 差し押さえ件数が最も多かったのはカリフォルニア州で、約7万2300件。次いでフロリダ州の4万5900件、オハイオ州の1万3500件の順だった。フロリダ州は前年同月の2.4倍に急増した。住宅バブル期に開発が進み、住宅価格が急騰した地域が上位を占めている。

● 「「ゴールドマン、JPモルガンも危機に「無縁ではいられない」-UBS 」

2008年8月15日 ブルームバーグ

 米証券最大手ゴールドマン・サックス・グループと米銀JPモルガン・チェースは同業他社と比べれば、信用危機をこれまで切り抜けてきたものの、第3四半期には「致命的な」影響を受けるかもしれないと、スイスの銀行UBSは指摘する。貸倒損失が増え、銀行業務の収入が落ち込むためだという。

 UBSのアナリスト、グレン・ショアー氏は15日付リポートで、「競合他社がはまった多くの落とし穴をこれまで回避した」ゴールドマンも収益減少に「無縁ではいられない」と予想。時価総額で米銀2位のJPモルガンも資産評価損や消費者向け融資の悪化に直面していると指摘した。

 両社の業績は過去2四半期にわたって市場予想を上回り、評価損と貸倒損失もモルガン・スタンレーやバンク・オブ・アメリカ(BOA)、シティグループのそれを下回っている。このため、株価下落率もS&P500金融株指数に比べて小幅にとどまり、ゴールドマン株は金融株指数がピークを付けた昨年10月以降、27%安、JPモルガンが21%安となっている。金融株指数は41%下落。

 ショアー氏は両社について、「信用危機時の投資避難先とみられてきたので、投資家は短期的に持ち分を減らす可能性があるとわれわれは考えている」と指摘した。同氏はゴールドマンの今年6-8月(第3四半期)の1株利益見通しを2.25ドルと、従来予想の3.20ドルから引き下げ、JPモルガンの第3四半期(7-9月)についても25セントと、同62セントから下方修正した。

● 「米で証券集団訴訟が急増 株主、サブプライム関連で損失」

日経新聞 2008年8月16日

【シカゴ=毛利靖子】 信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の影響が広がる中、損失を被った株主らが欧米の金融機関などを相手取って起こす証券集団訴訟が急増していることが分かった。

 サブプライム関連で今年起こされた訴訟の数は65件で、既に昨年1年間(39件)の1.7倍に達している。提訴を受けた米大手銀行シティグループなどが金融商品の買い戻しを決めた例もあり、株主からの責任追及の動きは今後も広がりそうだ。

 スタンフォード大学ロースクールが集計した。証券集団訴訟は「情報開示が不十分だった」などとして、損失を被った株主が当該企業を訴えるもの。サブプライム問題が表面化した昨年から直近までの累計で、同問題に絡む提訴数は100件を突破した。米連邦裁判所に持ち込まれた証券集団訴訟の総数も、今年に入って既に127件にのぼり、同じペースで年末まで推移した場合、年間では4年ぶりの高水準となる見込みだ。

●「三菱UFJが米銀を完全子会社化 」

2008年8月13日 日経新聞

 大手邦銀による欧米金融機関への大型出資が相次いでいる。これまで動きのなかった三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は12日、米有力地方銀行のユニオンバンカル・コーポレーション(UNBC、カリフォルニア州)を完全子会社化する計画を正式発表した。

 米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を逆手に3メガバンクが投資と融資の両面で、米欧市場で存在感を高めようとしている。

 三菱UFJはすでに65%の株式を保有しているUNBCに対して、今月18日から9月15日までTOB(株式公開買い付け)を実施し、同社の完全子会社化を目指す。買い付け価格は1株当たり63ドル。ニューヨーク証券取引所の11日終値に8.3%上乗せし、過去30日間の平均終値を24.5%上回る。

● 「スイス金融大手UBSが2兆円規模の買い戻し オークション証券を不適切販売」

2008年8月9日 共同通信

 スイスの総合金融大手UBSは8日、米自治体などが発行するオークション証券(ARS)の不適切な販売問題で、投資家が保有する計186億ドル(約2兆400億円)分すべてを買い戻すと発表した。

 販売の際にUBSが投資家への十分な説明を怠ったとして訴えていたニューヨーク州などとも和解、同州などに対し罰金計1億5000万ドルを支払うことも決めた。現在の証券価格が下落しているため、罰金も含めた損失は9億ドル程度を見込む。

 ARSをめぐっては既に米銀行大手のシティグループ、米証券大手のメリルリンチも大規模な買い戻しを決めており、大手3社の買い戻し額は計360億ドル規模に達した。シティとメリルは個人投資家、中小企業などが対象で、機関投資家向けも含めた買い戻しを決めたのはUBSが初めてという。

● 「フレディマックが実質債務超過、投資家の見方交錯

2008年 8月 6日 ニューヨーク、ロイター

 米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)は6日、第2・四半期決算を発表し、保有資産を時価ベースで評価すると、56億ドルの実質債務超過になると表明した。

 これを受け、一部の投資家の間では、フレディマック株はほぼ無価値となるとの見方が浮上。同社が発行する政府機関債については、米政府が住宅公社支援の意向を鮮明にしているため大きな問題はないが、株式投資はリスクが高いのではないかとの声が出ている。

 フレディマックがこの日発表した第2・四半期決算は8億2100万ドルの赤字。赤字幅は予想を上回り、6日のフレディマック株は20%近く急落、6.49ドルで取引を終えた。ただフレディマックの株式時価総額は依然42億ドルあり、少なくとも一部の市場参加者は、同社株に投資価値があると考えていることになる。

 ウエストウッド・キャピタルのマネジングディレクター、ダン・アルパート氏は「投資家は、フレディマックが、景気の回復、住宅市場の回復、公的支援のいずれかが実現するまで、持ちこたえるとみているのだろう」と述べた。確かに住宅市場は、回復基調にあるとは言えないまでも、底入れに向けた兆しが出ている。5月のケースシラー住宅価格指数は前月比0.9%低下と、前月から低下率が鈍化、予想よりも緩やかな低下にとどまった。

 フレディマックの保有資産であるモーゲージ証券についても、多くが売られすぎの状態で、住宅市場の回復に伴い、価格は持ち直すとの見方がある。ただ、モーゲージ市場の低迷は否定できない。フレディマックのサイロン最高経営責任者(CEO)は、アナリストとの電話会議で「今日の経済環境は厳しく、住宅市場は安定には程遠い」とし、「住宅価格が底打ちするまでの全過程の半分を通過したに過ぎないと考えている」と語った。

 市場は、フレディマックや連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)に強い懸念を表明している。両社は、米モーゲージ証券12兆ドルの半分弱を保有・保証しているが、モーゲージ証券下落や住宅市場支援で自己資本が不足するとの懸念が浮上、7月に株価が急落した。フレディマック株は1年で90%近く急落。ファニーメイ株も80%近く下落しており、政府が緊急支援策をとりまとめる事態となった。

<増資計画>
  フレディマックは、財務基盤強化のため55億ドルの増資を行う方針だが、増資が実現しても、実質債務超過分56億ドルをほぼ帳消しにする効果しかない。財務諸表によると、簿価ベースの保有資産は129億ドルとなっている。

 キーフ・ブリュエット・ウッズの株式担当チーフストラテジスト、フレデリック・キャノン氏は「55億ドルの増資では不十分である可能性が濃厚だ」と指摘。ウエストウッドのアルパート氏も、公的支援が実施されれば、株主責任が問われる可能性があるとの見方を示した。同氏は「必要な増資規模を考えれば、株式は大幅に希薄化する見通しだ。国有化のリスクもある」と述べた。フレディマックはコメントを拒否している。

●「米国の金融危機は1年半は継続し、数百の銀行を破たんに追い込むリセッションに」

ニューヨーク 2008年8月3日 ロイター

 3日付の米投資週刊紙バロンズは、エコノミストで 米ニューヨーク大学教授のヌリエル・ルービニ氏の発言を引用し、米国は、少なくとも 1年半は継続し、数百の銀行を破たんに追い込むリセッションの第2イニングにあると報じた。

 ルービニ氏によると、国民は金融サービス業界の残りを救済するため、多額の税金を支払う必要に迫られる見通しだ。同氏は納税者の支出について少なくとも1兆ドルとし、どちらかといえば2兆ドルに達するだろうとした。

 同氏は、銀行は山のような損失を抱えて債務超過に陥る見通しだとし、住宅価格の急落に加え、サブプライム住宅ローンについて、これまでのところ評価損の計上にとどまって いるためだと述べた。

 同氏によると、銀行は消費者信用損失にも直面しているものの、引当金が不足している。さらに、担保価値がほぼゼロとなった住宅担保ローンの貸付残高が数百億ドルに及ぶことも 指摘した。

 ルービニ氏によると、米消費者が貯蓄を減らす一方、連邦準備理事会(FRB)は 問題がサブプライム住宅ローンより先に広がっていることを認識できず、危機にうまく 対応できていない。

 同氏は、政府は過剰な規制を行っているとし、困難を抱えた金融機関の救済や、あらゆる市場への介入を例示した。 ルービニ氏は「連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社 (フレディマック)、ならびにベアー・スターンズ債権者の救済や、新たな貸付制度を伴う 金融システムの構築に関連し、規制当局は自らを調査すべきだろう。米国債と有毒性のある証券の交換にほかならない」と述べた。

 その上で「従来のように利益を私有化し、損失を国有化している。 米証券大手と富裕層のための社会主義だ」との見方を示した。 ルービニ氏は破たんに陥る金融機関について、住宅や商店、商業用不動産など米地域社会の中軸に融資を行う地銀が含まれると述べた。

 同氏は「40行近い中堅地銀のうち、3分の1は窮地にある」とし、半数は破たんに陥る と予想した。さらに、一部の大手行も債務超過に陥る可能性があるが、「ツー・ビッグ・ツー・フェール」とみなされるだろうと述べた。同氏は世界経済については「極めて強気」にみていると強調し、中長期的にポジティブな状態が続くと予想した。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

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