「85」 「サブプライム危機から世界恐慌へ」(20) 2008年5月は、不思議なぐらいにW.バフッェトとグリーンスパン元FRB議長の発言が世界金融記事として載った。 2008.9.13
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副島隆彦です。 2008年5月ごろは、今考えても不思議なぐらいにウォーレン・バッフェト とアラン・グリーンスパンの講演会先での発言やインタビュー発言が、世界中の金融記事となって連日のように載った。あとあとの参照の為に、それらをまとめてここに載せておく。 副島隆彦拝
(転載貼り付け始め)
●「投資家バフェット氏:ウォール街や規制当局に苦言-一段の痛みを予想」
Buffett Castigates Wall Street, Bankers, Regulators on Blund
2008年5月5日 ブルームバーグ
投資家ウォーレン・バフェット氏は、金融システムを制御不可状態に陥れ、証券大手ベアー・スターンズからの資金流出を引き起こし、他の銀行をも破たんのリスクさらしたとして、ウォール街の投資銀行と住宅金融業者、規制当局に苦言を呈した。
バフェット氏は4日の記者会見で、「ウォール街はもうけを追求するばかりで結果を考えない」と指摘した。また、「銀行は、相当期間にわたり真実を伏せたままで事業を続ける余地がある」との見解を示した。
バフェット氏と投資パートナーのチャーリー・マンガー氏はオマハ(ネブラスカ州)で2日にわたり開催されたバークシャー・ハサウェイの年次株主総会で、格付け会社と金融保証会社(モノライン)、政策当局者も批判した。バフェット氏はまた、悪影響がさらに続くと予想するとともに、ドル安のなかで海外での企業買収を示唆した。
バフェット氏は「一段の痛みがあるだろう」と語った。米経済はリセッション(景気後退)入りしているとの見解をあらためて示した上で、3月に米連邦準備制度理事会(FRB)が推進したJPモルガン・チェースによるベアー・スターンズ買収は「損失が終わったことを全く意味しない」との認識を示した。
バークシャーの副会長のマンガー氏は「規制当局も会計事務所も、われわれの信頼を裏切った」と述べた。 バフェット氏は株主総会開始前のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「ベアー・スターンズが(3月17日に)破たんしていれば、翌日には他の銀行が倒れていたことだろう」と語った。救済を主導することを当局者に打診されたが、バークシャーには状況を分析する資源も時間もなかったことからこれを拒否したことも明らかにした。
同氏は格付け会社が、地方債保証だけでは達成できないような増益率をモノラインに求めることによって金融システムをゆがめたと指摘。モノラインは「ウォール街と格付け会社が求める増益率を達成するために」、米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン関連などリスクの高い証券の保証に進出し、そのような証券の市場を全世界に拡大させたと批判した。
またバフェット氏は5月4日、バークシャーの子会社による英国での「中規模」の企業買収が「恐らく近い」と発言。英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)が売却する保険部門について検討する考えも示した。
さらに、アジア通貨がドルに対して上昇すると予想し、同地域での買収を検討する方針も示した。ただ、コスト高が日本企業の買収を妨げるだろうと述べた。また、中国への批判の高まりを予想するとともに「中国について被害妄想的になることは大間違いだ」と指摘した。
●「資産家バフェット氏:一部モノラインは「AAA」格付けに値せず 」
Buffett Says Bond Insurers Don’t Deserve AAA Rating
2008年5月4日 ブルームバーグ
米保険・投資会社バークシャー・ハサウェイを率いる資産家ウォーレン・バフェット氏は4日、一部の金融保証会社(モノライン)は最高位の信用格付け「AAA」に値しないとの認識を示した。バークシャーはモノライン事業に進出、最大手の米MBIAやアムバック・ファイナンシャル・グループと競合する立場となった。
バフェット氏はこの日の記者会見で、14%金利で資金を借りたり、株価が95%下落しているようなモノライン会社に対し、格付け会社は最高位の信用格付けを付与するべきではないと主張した。バークシャーは前日、年次株主総会を開催した。
バフェット氏は 「株価が1年間で96ドルから4ドルに下落した企業で、AAA格付けを維持したというようなケースがこれまであっただろうか。私はみたことがない」と語った。
バークシャーは、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスを傘下に持つ米ムーディーズの株式約2割を保有している。そのためムーディーズがバークシャーに対し好意的な判断、あるいは競合他社に対し逆の姿勢をとることで、格付けがバークシャーに有利に働く可能性もある。これに対し、バフェット氏は3日、ムーディーズに対し影響力を行使しようとしたことは1度もないと言明した。
MBIAの広報担当者、ウィラード・ヒル氏は電子メールで「格付け会社は既に評価・判断を下しており、ほかの誰よりも格付け評価を下す上で良い位置にあることは明確だ」と述べた。アムバックとムーティーズ、同業の米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)からはコメントを得られなかった。
●「グリーンスパン氏:米国は「色の薄いリセッション」、年内継続も」
Greenspan Sees U.S. in `Pale Recession,’ May Last Through Year
2008年5月5日 ブルームバーグ
グリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、5日までに、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューに答え、米国は「極めて色の薄いリセッション(景気後退)」の状態にあり、活気のない状態は年内続く可能性があるとの認識を示した。
グリーンスパン氏は米経済がゼロ成長程度のペースに「後退しつつあるのは明確だ」と述べるとともに、米サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)市場の混乱に端を発した信用危機について終えんを宣言するのは時期尚早との見方を明らかにした。
同氏は金融政策については言及せず、米経済はよりインフレが加速しやすい環境に戻りつつあるとの認識を示した。海外での賃上げに伴い輸入物価が上がり、既に食品やエネルギーなど商品価格の上昇で高まっている上昇圧力がさらに増すことになる。
バーナンキFRB議長はニューヨーク時間5日午後8時半(日本時間6日午前9時半)に住宅ローン市場について講演する予定になっている。
グリーンスパン氏は米経済を、手持ち資金が潤沢な企業と損失拡大の金融機関との綱引き状態にあると評した。同氏は「これは非常にまれな状況」であり、「どう見ても双方とも勝ち目がない状態だ」と語った。グリーンスパン氏は、米経済は年内低迷が続くというのが望み得る最善であり、また最も可能性が高く、「間違いなく、一番慈悲深いシナリオだろう」と語った。
同氏は「米国はリセッション入りしている」が、「現時点ではひどく色の薄いリセッションで、雇用減少は予想されたほど大幅とはなっていない」と指摘した。グリーンスパン氏は、景気回復が始まるのは、住宅価格が安定の兆しを見せ、金融機関から住宅ローン関連の評価損の重圧が取り除かれるようになってからだとの見方を示した。
●「バフェット・ソロス両氏がデリバティブ取引急増に警鐘 」
2008年5月5日(月)
バークシャー・ハザウェイの年次株主総会で「ドル安は今後も続く」との見方を示した米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が「最近ヘッジファンドの雄、ジョージ・ソロス氏らと伴にデリバティブ市場の急拡大に伴うリスク増大に懸念を示しつつある」(在米金融筋)という。
事実、デリバティブ市場が拡大するにつれて市場参加者はベアー・スターンズ証券のような取引相手の経営不安を一段と懸念するようになっている。BIS(国際決済銀行)によると先物取引市場での金融先物取引やオプションの名目契約残高は05年12月末期日物が58兆ドルから64%増え08年9月末期日物残高は95兆ドルに急増している。
先物の名目契約残高とは現物取引で言う「取引高」を指すが店頭市場での金融先物、スワップ、オプション、その他のデリバティブ取引の名目契約残高は05年12月末の298兆ドルから07年6月末には516兆ドルと74%の急増となっている。また、これら先物取引に伴う証拠金の残高をBISは11兆ドルと推定する。直近の数字は公表されていないがこの金額より多いことは間違いない。
米通貨監督局の推計によると、第3四半期に決済期日がくる米商業銀行のデリバティブ取引名目契約残高は172兆ドル。しかし、これらの契約残高のうち、ネットのクレジット契約残高は2520億ドルに過ぎない。 「ソロス氏はハイリスク商品であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を世界の金融市場の頭上に吊るされた“デモクレスの剣”」(在米金融筋)と語る。
なお、CDSは金利支払の遅延に対する一種の保険であり、CDS市場はすでに45兆ドルと政府債発行市場の約5倍の規模に膨らんでいる。なおIMF によると、CDSは銀行が最大の利用者で、ヘッジファンドが全体の3分の1を占めている。
● 「米経済はリセッション、銀行は今後も住宅問題により圧迫=バフェット氏」
2008年 5月 5日 オマハ(米ネブラスカ州) ロイター
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は4日、米経済はリセッション(景気後退)にあるとの見方を示した。4日の記者会見で語った。 前日(3日)には、同氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイ の年次株主総会が当地で開催され、過去最多の3万1000人が参加した。
米商務省が4月30日に発表した第1・四半期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で前期比プラス0.6%となったが、これについてバフェット氏は、米国の人口も同時に増加しており、実質のGDP伸び率はこれより低いと指摘。また、この統計が米経済成長の収縮を示していないとしても、人々そのように感じている、と述べた。
同氏は「米経済はわたしの定義するリセッションの状況にある」とし「わたしは、個人が3カ月、6カ月あるいは8カ月前に比べて順調にやっていない状況、企業についても同様のことがいえる状況をリセッションと定義する」と述べた。また同氏は、住宅問題が銀行の決算を「今後数年間にわたり」圧迫すると指摘。銀行が抱える巨額の損失と評価損の計上は「決して」終わっていないとし、「一段の痛みを経験することは間違いない」と語った。
●「中国に景気過熱リスク、今年の成長率は8%上回る公算大-李財政次官 」
China’s Economy May Overheat, Vice Minister Li Says
2008年5月5日 ブルームバーグ
中国の李勇・財政次官は5日、同国には景気過熱リスクがあるとの認識を示した。 マドリードで開かれたアジア開発銀行(ADB)総会で李次官は、食品価格の上昇が「主要な懸念」で、投資も依然として急速に伸びていると語った。
輸出増に伴い中国に流れ込む資金を背景に、同国はインフレ加速懸念にさらされている。李次官は、中国当局は流入資金について「不胎化」(金融調節を通じて市場への影響を防ぐ)努力を強化していく方針を示した。
3月の中国のインフレ率は8.3%と、2月の8.7%からは低下したものの、依然として高水準にある。同次官は、中国はインフレ抑制に向け「多くの政策」を講じていく考えだが、世界的な物価上昇に対してはほとんど役に立たないだろうと指摘。また、資金の流入を抑制するために資本規制の強化を図る意向のないことも明らかにした。 今年の成長率については、政府目標の8%を上回る可能性が高いとの見方を示した。
●「通貨融通800億ドルで合意・ASEANプラス3財務相会合」
日経新聞 2008年5月5日 マドリード、御調昌邦
日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)は4日にスペインのマドリードで開いた財務相会合で、通貨危機の際に複数の国の間で外貨を融通しあう「通貨スワップ協定」を800億ドル(8兆円強)以上とすることで合意した。2国間で外貨を融通し合う今の仕組みを改めるとともに、融通する資金の規模を現在の実質580億ドルから大幅に拡大する。
資金の融通枠の8割を日中韓が拠出し、残りをASEANが出すことを決定。資金供給発動条件や経済情勢などの相互監視(サーベイランス)の仕組みも議論した。
●「資産家バフェット氏:ドルは引き続き他通貨に対し下落基調と見込む 」
Buffett Says U.S. Dollar to Remain Weak Versus Other Currencies
2008年5月3日 ブルームバーグ
米保険・投資会社バークシャー・ハサウェイを率いる資産家ウォーレン・バフェット氏は3日、ドルは他通貨に対し今後も引き続き下落基調が続くとの見方を示した。
この日ネブラスカ州オマハで開かれた同社の年次株主総会での質疑応答で、バフェット氏(77)は、火星の通貨単位の呼び名はどうでいいが、「本日、自分が火星から10億 『火星ドル』を携えて地球に降り立ち、投資先を考えるとしたら」 、全額をドルに投じることはないだろうと述べた。
バフェット氏は少なくとも2002年以降、ドル下落を見込んだ投資を行ってきている。同氏は 「米国はドルの下落につながるような政策を取り続けていく」との見方を示した。また同氏はこの日、米国外で大型の企業買収を行う際、為替リスクのヘッジを行う「必要はない」と感じていると説明した。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝