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長渕剛 「黒いマントと真っ赤なリンゴ」 Music Video
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【65】分岐点に立たされた山下達郎
詳しくは触れないが、山下達郎がジャニーズ問題の関連で、厳しい立場に陥っているようだ。所属するマネージメント会社内の揉め事の絡みから、7/9(日)の自信のラジオ番組で、ジャニーズ問題についての見解を語ることになったという。
私は山下のファンでもなく、明後日の山下のラジオ放送を聴くつもりもない。だけども、今回の山下の対応は、日本のポップス業界の将来を決める大きな分岐点だと、私は思う。80年代半ばに起きた、RCサクセションのアルバム「カバーズ」の発売停止事件に匹敵するイベントになるだろう。
最早40年も前なのだが、当時洋楽の聴き方を確立した大学生の私にとって、「カバーズ」の騒ぎは、大きな出来事だった。それまで、日本人でロックをやれる歌手など誰もいない、と、勝手に見限っていた私は、「ああ、日本にも本物がいたのか」と、初めて実感させられたからだ。
私が衝撃だったのは、清志郎の書いた反原発の曲の歌詞ではない。優れた表現者は、自らの理想と思いを追求する際に、周囲との大きな軋轢を、自覚なしに起こしてしまう。その、優れた表現者である故に、必然的に自らにのしかかる軋轢を、彼らはどのように乗り超えていくのか?その生き様を見届けるのが、ロックファンの宿命だと、大学生の私は、無自覚だが認識していたのだ。それまでの日本には、そんな表現者はいなかった。同級生が夢中になっていた、矢沢永吉も世良政則もアリスも松山千春もゴダイゴも、そんな人達では無かった。しかし、私が全く期待していなかったその様相が、初めて現実に現れた。それが私にとっての「カバーズ事件」だった。
それ以前では、例えば、ジョン・レノンが「俺たち(ビートルズ)はキリストよりも有名だ」と、うっかり発言したことで、アメリカ南部の保守派から大バッシングを浴びた騒ぎがあった。それをきっかけに、ビートルズはコンサートツアーを辞めてしまい、ファンを落胆させる事となる。一方で、ジョージ・マーティンのサポートを受けつつ、新曲の録音とアルバム作成に注力する事で、「サージェントペパーズ」「ホワイトアルバム」「アビーロード」などの傑作を提示するに至った。(どこが傑作なのかは、敢えて言うまでもない。そのうち書くだろう)
ビートルズ以外にも、ジェフ・ベックとか、リッチー・ブラックモアとか、ローウェル・ジョージとかの(何故か全員ギタリストだ)、周囲と軋轢を起こしながらも、紆余曲折の音楽活動を続ける連中が、海外にはいた。そのファンだった私は、「カバーズ」の騒ぎの際に、「清志郎も彼らと同じだ。日本のポップスも捨てたものではない」と、目から鱗が落ちるのを実感したのだ。
実際に「カバーズ」の、音楽業界へのインパクトは大きかった。あれ以降、日本のポップス曲の歌詞からは、メッセージ性が完全に失われた。何となく前向きな単語と、横文字片仮名が組み合わさって羅列されるだけの、意味不明な、日本語として全く成立しない歌詞ばかりになった。意味がわからなければ、叩かれる心配は無くなる。歌い手の方が勝手に萎縮して、問題が起きるのを避けようと、忖度する姿勢があらわになった。そして、そのまま今に至っている。
別に山下が明後日のラジオで、ジャニーズについて何も語らずにスルーしても、私はそれで良いと思う。山下にとっては、晩年になって、自分の不始末でもない事態に巻き込まれて、納得が行かない処もあるかもしれない。成り行きによっては、輝かしいキャリアを棒に振る可能性もあるだろう。しかし、今回の自分の対応が、清志郎のカバーズ事件と同じインパクトを、周囲に与えることを、充分に、よくよく認識して、意思表示をするべきと、私は思う。
相田英男 拝
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