「1755」 『金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ (祥伝社新書) 』(副島隆彦+SNSI副島国家戦略研究所著、祥伝社新書、2018年7月1日発売)をご紹介します。 2018年6月26日

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 SNSI・副島隆彦の学問道場研究員の古村治彦です。今日は2018年6月26日です。

 今回は7月1日に発売となります『金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ (祥伝社新書) 』をご紹介いたします。

 副島隆彦先生と弟子たちの初めての論文集『金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ』(祥伝社、2005年1月)に、加筆訂正と副島先生による書下ろし「ユダヤ思想の中心、マイモニデス」が加えられ、新書となって生まれ変わりました。新書版となり、更に多くの方々にお届けできることになりました。


金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ (祥伝社新書)

 『金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ』では、「なぜユダヤ人は金儲けが得意なのか」という問いを立て、副島先生と弟子たちが様々な角度から論稿を書いています。そして、「ユダヤ人は合理性(合利性)を大事にし、ユダヤ教は金儲けを肯定している」という結論に達します。合理性(rationality)、合理的(rational)、理性(reason)、理性的(reasonable)という言葉は、「自分が損をせずに、得をするように行動すること」という意味が含まれています。そして、更に「分け前」「取り分」「割合」「比率」という意味のratio(レイシオ)も重要です。「自分の取り分、利益を冷酷に計算できる」ことこそが「理性的」ということになります。ユダヤ思想の中にこのような要素があるので、ユダヤ人は冷静沈着に利益を計算して行動できる、一時の感情や義理人情では動かない、これで金儲けができるということになります。

今回の新書版には、副島先生の書下ろし「ユダヤ思想の中心、マイモニデス」が加えられています。この新たに加えられた章で、副島先生は、モーセス・マイモニデス(Moses Maimonides、1135-1204年)という極めて重要なイスラム思想家(本当はユダヤ人)を取り上げています。マイモニデスが著した『迷える者たちへの導きの書(迷える者への手引き)』は人類史において重要な著作です。この本でマイモニデスは、金儲けを肯定し、自分の欲求、欲望を追求することを肯定し、この考えがイスラム教だけでなく、ユダヤ教にも拡大していったということです。


マイモニデス

 こうした人間らしさの肯定の下地(したじ)となったのは、イスラム世界によるギリシア哲学研究であり、古代ギリシアの大哲学者アリストテレス(BC384-BC322)の思想、具体的にはエクイリビリアム(equilibrium)という考えでした。アリストテレスについて、アヴィセンナ(イブン・スイーナー、980-1037)、イブン・トゥファイル(1105-1185)、アヴェロエス(イブン・ルシュド、1126-1198)といったイスラム思想家たちが研究し、紹介して、それがユダヤ教世界やキリスト教世界にも拡大していきました。


アリストテレス

 副島先生は書下ろしの章「ユダヤ思想の中心、マイモニデス」で、マイモニデスやその他の思想家たちを取り上げて、ユダヤ人の合理性の基底をなすものを明確に説明しています。この書下ろしの章は世界史を理解するための極めて重要な内容となっています。

以下に、まえがき、目次、あとがきを貼り付けます。

(貼り付けはじめ)

まえがき

 みんな金持ちになりたい。

 しかし、ほとんどの人はなれないで終わる。それはなぜなのか。それはユダヤ人の精神(思想)が分かっていないからだ。

 この本は、「金儲(もう)けの精神を、ユダヤ人あるいはユダヤ思想に学ぼう」という本である。ユダヤ思想について、いろいろな角度から論究している。

 私たちは、みんな金儲けがしたい。貧乏は嫌(いや)だ。みんな金儲けをして、いい生活をしたいのである。ところが現実には、私たちのほとんどが貧しい。貧しいまま人生を終える。

 もちろん、皆が皆、貧しいわけではない。たしかに世の中には「お金持ち」と呼ばれる人々がいる。簡単に考えれば、大きくて立派な家に住んでいる人たちのことだ。あるいは、高級車に乗っているとか、いい洋服を着ている人のことをお金持ちという。

 自分もそういう人になりたい、と思いながら、ところが現実の私たちは貧しいままで人生を終わる。それはなぜなのか。私は、私の弟子の研究員たちと一緒に、本気でこのことを考えた。

 そして分かったことは、どうも、ユダヤ人とかユダヤ教( Judaism ジュダイズム。これはそのままユダヤ思(し)想(そう)と訳してもよい)なるもの、を私たちが分かっていないからだ。

 すべての世界の大宗教の中で、ユダヤ教だけが、もともと初めからお金儲けをすることを認めていた。ユダヤ教だけが、金儲けを、根本の所で罪悪視しなかった。他のキリスト教も、イスラム教も、アジアの仏教も、中国の儒教(じゅきよう)も道教(タオイズム)(これの日本版が神道(シントウイズム))も、根本の所で金儲け(金銭欲望)を嫌(きら)って罪悪視している。

 ユダヤ教だけが、資本主義(キャピタリズム)をもともと全面肯定している宗教であり、思想なのだ。近代資本主義(モデルネ・カピタリスムス)の精神(ガイスト)をつくったのはプロテスタンティズム(キリスト教の新版)ではない。ユダヤ教(ジユダイズム)(ユダヤ思想と同義)である。

 私たちは羽入辰郎(はにゅうたつろう)著『マックス・ヴェーバーの犯罪』(2002年、ミネルヴァ書房刊。2003年、山本七平賞受賞)に触発されて、この大著を大いに支持する立場に立って、8人の若い研究員たちが、さまざまな角度から個々に書いた。この本はSNSI(エスエヌエスアイ) 副島国家戦略研究所の第一回論文集である。多くの人に注目していただきたい。

 2005年1月                       副島隆彦(そえじまたかひこ)

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(目次)

まえがき  副島隆彦

新書版の刊行に寄せて〈書下ろし〉
ユダヤ思想の中心、マイモニデス  副島隆彦

[副島国家戦略研究所]とは

1 ユダヤ人だけが、なぜ金儲けが上手(うま)いのか  副島隆彦

・キリスト教徒は、金儲けを大いに嫌う
・イスラム教におけるシャリーアとザカード
・「ラシオナリズム」――合理主義とは何か
・マックス・ヴェーバーを祭壇から引きずり降ろす

2 ユダヤ商人の原像  山田宏哉

・資本主義の掟を学ぶテキスト
・高利貸しこそ、資本主義精神の実践である
・法廷を去るシャイロックの後ろ姿

3 近代資本主義の精神をつくったのはプロテスタントではない  伊藤睦月

・ヴェーバーの資料操作を暴く
・では、誰が近代資本主義をつくったのか

4 「近代資本主義・ユダヤ人起源説」を、いちはやく見抜いたのは誰か  伊藤睦月

・大著『ユダヤ人と経済生活』
・ユダヤ人たちこそ、金融制度の担い手にして形成者
・なぜ「ユダヤ人起源説」は葬られたのか

5 近代ヨーロッパ史とユダヤ人  日野貴之

・スペイン、ポルトガルからのユダヤ人国外追放
・名誉革命で拡大する影響力

6 十七世紀オランダの盛衰とユダヤ商人  吉田祐二
・「前期的資本」としてのユダヤ資本
・オランダ衰退の原因

7 ユダヤ教が果たしたカルヴァンへの影響  関根和啓

・プロテスタンティズムとユダヤ教との関係
・ユダヤ教カバラと、ライモンドゥス・ルルス
・カルヴァンがヘブライ語を学んだことの意味

8 ユダヤの商法を擁護したベンサムの思想  根尾知史

・ユダヤ人の金融力が、大英帝国を築いた
・ユダヤ人にとって「お金」は、唯一最強の武器である

9 ユダヤ商人と浪花(なにわ)の商人(あきんど)  庄司 誠

・日本の商人と、ユダヤ商人の違い
・日本人の労働は、はたして仏行か

10 アメリカ映画にみるユダヤ人の強(したた)かさ  首藤良尚

・『ベン・ハー』――独立不羈(ふき)のユダヤ人像
・『オリバー・ツイスト』――ユダヤ人・フェイギン像の変転
・『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』――本当の主人公は

あとがき  副島隆彦

《巻末》ユダヤ人とユダヤ思想史年表

執筆者略歴

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あとがき

 この本は、私が主宰する副島国家戦略研究所(SNSI)の第一回論文集である。

 私の弟子の一騎当千の研究員たちが各々(おのおの)、「ユダヤ思想について」の優れた論文を寄稿してくれた。

 この一冊で、「現代ユダヤ思想論の集成」になっており、「ユダヤ人とはこういう人々である」の網羅的な解説になっている。本書の英文タイトルは、 ` The Spirit of Jewish Capitalism `『ユダヤ資本主義の精神』である。私がつくった書名である。

「近代資本主義(モダン・キヤピタリズム)の精神(スピリツト)をつくったのは、キリスト教のプロテスタントではなくて、実はユダヤ商人たちのユダヤ思想だったのだ」という衝撃的な理論が、本書によって登場することで、日本の文科系の学問世界(政治学、経済学、社会学)がこれから大きく変貌を遂げてゆく。

 プロテスタンティズム(カルヴァン派)の「勤勉(きんべん)の哲学」が、近代資本主義をつくったのではない。ということになると、日本の江戸時代の「勤勉の哲学」(二宮尊徳(にのみやそんとく)やら鈴木正三(すずきしょうざん))が、日本の近代資本主義を準備したのだ、という山本七平(やまもとしちへい)氏と、私の先生の小室直樹(こむろなおき)先生、そして大塚久雄(おおつかひさお)の学説「大塚史学」は大間違いということになる。ガラガラと崩れ去る。今や崩れ去るべきである。

 コツコツと勤勉に働いて、普通の人の三倍努力すれば金儲けができ、富裕者になれるのなら、それはたいていの人にできることである。ところが現実にはそういうことはない。勤勉だけで人は金持ちにはなれない。

 プロテスタンティズムの思想を大成させたマルチン・ルターとジャン・カルヴァンが唱えた職業召命(しょうめい)観、すなわちベルーフ Beruf (英語では Calling(コーリング) )、神(ゴツド)の声に従い己(おのれ)の天職をまっとうせよ、が、カトリック思想を打ち破ったと考えることも再度、疑ってかからなければならない。

 資本主義は、太初(はじめ)からずっとユダヤ人の精神で彩(いろど)られており、どこの国でもユダヤ人的な人格を、生まれながらに備え持っていた人々によって荷(に)負(お)われてきたのである。命懸(いのちが)けの極度のケチ(守銭奴)になりきらなければ金は貯(た)まらない。かつ、企業経営者として成功する人々は、将来予測に、先見(せんけん)という独特の投機家(バクチ打ち)の才能を持っていなければならない。それだけではなく、もともとユダヤ人の思想を身に付けていたのである。それは『ユダヤの商法』(1972年、ベストセラーズ刊)を書いた、日本マクドナルドの創業者の藤田田(ふじたでん)氏が、私たちに教えていたことである。

 私たちが金儲けをして、裕福な生活を送りたければ、ユダヤ人の生き方に学ばなければならない。彼らの非情さ(合理(レイシオ)と理性(リーズン))こそは、これからの日本人が真剣に学び、受け入れてゆかなければ済まされない。そうしないと、ますます日本は衰退(すいたい)( decline デクライン。成(グロ)長(ウス)の反対)を続け、惨(みじ)めになる。

 私たち副島国家戦略研究所は、どこの公共団体や大組織にも頼らない在野の研究機関である。不偏不党の立場で、日本国民の利益に資(し)することだけを目標として、今後も研鑽(けんさん)を重ねてゆく。さらに多くの、学問的に恵まれない境遇、人生環境にある俊秀の結集を待ち望む。彼らを続々と知識人、言論人として育ててゆくことが私に残された仕事である。ある年齢になったら、人を育てることだけが大事だ。

 この本を編むにあたっては、祥伝社書籍出版部編集長の角田勉氏にお世話になった。私たちの研究所を次々に襲う苦難(例えば国税庁、税務署との闘い)の中で、根気強くつきあってくださった。記して感謝します。

 2005年1月

(貼り付け終わり)

『金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ (祥伝社新書) 』を是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。


金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ (祥伝社新書)

(終わり)

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