「1794」 『副島隆彦の歴史再発掘』(副島隆彦著、ビジネス社、2018年12月18日発売)が発売になりました 2018年12月20日

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 SNSI・副島隆彦の学問道場研究員の古村治彦です。

 2018年12月18日に副島隆彦先生の最新刊『副島隆彦の歴史再発掘』(ビジネス社、2018年)が発売されました。全国各地の書店の店頭にも出ている頃だと思います。


副島隆彦の歴史再発掘

 本書『副島隆彦の歴史再発掘』は、「副島隆彦の」という言葉がついているように、副島先生独自の方法による歴史の真実への最接近の試みです。「定説、主流派の歴史解釈はこうだが、それはおかしい、矛盾がある」というところを炙り出し、より確からしい主張を行うということになります。

 副島先生は「今も隠されたままになっている、大きな真実が土中に埋ずめられている。それらを敢えて掘り出して、白日の下に晒(さら)け出すことを、私は常に決意してきた」(2-3ページ)と書いています。下記に掲載している目次にありますように、本書で副島先生は様々な事例を取り上げています。

 第1章では、キム・フィルビー(1912-1988年)という人物を取り上げています。『キム・フィルビー ―かくも親密な裏切り』(ベン・マッキンタイアー著、小林朋則訳、中央公論新社、2015年)を底本にして、副島先生はスパイ・情報将校ネットワークの恐ろしさを解明しています。キム・フィルビーはイギリス秘密情報部(MI6、エム・アイ・シックス)に所属するスパイでありながら、学生時代以来共産主義を信奉して以来、ソ連のスパイとなり、イギリスとソ連の二重スパイ(ダブル・スパイ)となった人物です。


キム・フィルビー

 冷戦期は、フィルビーは MI6 の対ソ連担当の責任者となりました。ソ連のスパイが対ソ連担当の責任者になるというのは文字で書けば笑い話ですが、そのために、イギリス、そしてCIAからMI6にもたらされたアメリカの情報がソ連に筒抜けになっていたということです。

 フィルビーの動きがおかしいことや怪しいことに気づいていた人たちは多くいましたが、なぜか彼は守られ、最後にはソ連に亡命し、天寿を全うしました。フィルビーも入っていたであろうスパイネットワークの怪しさと恐ろしさ、更にはその裏にいるであろう存在について、副島先生が分かりやすく説明しています。

 第2章では、松岡洋右(まつおかようすけ 1880-1946年)を取り上げています。昭和史に関心がある方にはなじみ深い名前です。日米開戦直前まで外務大臣を務めました(1940-1941年)。「松岡洋右が日独伊三国軍事同盟を結んだためにアメリカと戦争する羽目に追い込まれ、悲惨な敗戦となった」ということが定説になっています。

 しかし、松岡は、日独伊三国軍事同盟にソ連を加えた四国同盟を形成し、アジアからイギリスを排除するという計画を立て、それにドイツのアドルフ・ヒトラー、イタリアのベニート・ムッソリーニも賛成し、ソ連のヨシフ・スターリンもこの話に乗ったのですが、アメリカとイギリスの巻き返しによってソ連は枢軸国側ではなく、連合国側につくことになりました。そのきっかけが独ソ戦です。ヒトラーが突然ソ連に侵攻したことで、四国同盟は破綻しました。


松岡とヒトラー、松岡とスターリン

 この独ソ戦も含めて、第二次世界大戦におけるドイツの動きは要所要所で不合理だったり、おかしかったりします。また、連合国側がドイツ側の動きを完全に読み切った動きをしています。それは、ドイツの国防軍情報部(アプヴェーア)の長官で、最高責任者であったヴィルヘルム・カナーリス(1887-1945年)大将 が連合国側に情報を流していたからだ、と副島先生は見破っています。第1章で取り上げたスパイネットワークの動きがここでも重要です。


ヴィルヘルム・カナーリス

 第3章はぐっと毛色が変わって、日本でも話題になった映画『沈黙―サイレンス』(遠藤周作原作、マーティン・スコセッシ監督作品)を通じて、江戸初期までの日本におけるイエズス会の動きとキリスト教(カトリック教会)の欺瞞について書かれています。史実では、イエズス会士であったクリストヴァン・フェレイラが日本で捕縛され、後に棄教します。

 それについて調査し、フェレイラを連れ戻すために派遣されたジュゼッペ・キアラもまた捕縛され、棄教します。彼らはなぜ棄教したのか、ということについて、副島先生は「彼らはカトリック教会の欺瞞に気づいており、そのために棄教した」と述べています。この章を読んで、『沈黙―サイレンス』を見ると、より深いところまで理解できるようになるでしょう。


イッセー尾形演じる「井上筑後守(井上政重、いのうえまさしげ )」


リーアム・ニーソン演じる「フェレイラ」

 第4章は江戸時代の遊郭の話から火付け盗賊改め方の長谷川平蔵(はせがわへいぞう。ドラマ化された池波正太郎の小説『鬼平=おにへい=犯科帳』シリーズの主人公)の話まで多岐にわたっています。江戸については、落語などで話が伝わっているのですが、実際に遊郭や売春地区がどのようであったか、ということから、どうして江戸では火事が絶えなかったのか、長谷川平蔵がどうして庶民のヒーローとだったのかという謎を解明しています。


吉原遊郭の様子

 第5章は、デヴィ・スカルノ(1940年―)夫人の自叙伝から読み解くインドネシアの近現代史です。デヴィ夫人は私たちもテレビ番組で見たことがある人ですが、若い人たちの中にはこの人が一体どういう人なのか知らない人も多いと思います。ご意見番だったり、三枚目役を引き受けたりしている人というイメージだと思います。

 デヴィ夫人は、インドネシア独立革命を成功させた故スカルノ大統領の第3夫人としてインドネシアに渡り、インドネシアの近現代史を体験している人物です。インドネシアは第三世界のリーダーとなりながら、反米路線のために、アメリカのCIAが計画した、1965年9月30日の軍事クーデター、9月30日事件のために、スカルノ大統領が失脚し、スハルト政権が樹立された。

 このとき、インドネシアで、200万人から300万人が、虐殺されたそうです。 インドネシアは親米軍事独裁国家となりました。副島先生はデヴィ夫人の人生とインドネシア政治を絡めながら、インドネシアについて分かりやすく解説しています。


スカルノ大統領とデヴィ夫人

 第6章は、邪馬台国(はどこにあったのか)論争についてです。畿内説と九州説に分かれておよそ100年以上論争が続いています。現在では、畿内説が有利な状況が「作り出されて」いますが、副島先生は「邪馬台国は九州にあった」と主張します。

 更に、大和朝廷についても言及し、「どうして“大和”と書いて“やまと”と読むのか」「どうして“飛鳥”と書いて“あすか”と読むのか」について、中国や朝鮮半島(韓半島)との関係を絡めながら、解明しています。

邪馬台国論争

 このように、本書『副島隆彦の歴史再発掘』は多岐にわたるテーマを取り上げ、副島隆彦独自の歴史の読み解き方で、より真実に近づくという内容になっています。是非、冬休みの読書計画に是非お加えいただきたいと思います。以下に、まえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にしていただき、手に取ってご覧ください。よろしくお願いいたします。

(貼り付けはじめ)

  まえがき     副島隆彦

 歴史は、「ビッグデータ」である。人類(人間)の過去の出来事が蓄積された集蔵体(しゅうぞうたい。archive アーカイーブ)である。今の流行(はやり)言葉で言えば「ビッグデータ」である。

 と書いてはみたが、私にはBig Data(ビッグデータ)の正確な意味が分からない。受けを狙って、こう 書いてみただけだ。

 初めから拍子抜けすることを書いて申し訳ない。私がこの「まえがき」を 1 カ月間どうしても書けなかった理由がある。それは、この本に詰め込んだ内容があまりに多岐に渡り、かつ歴史的に重要なことばかりだったからだ。その謎解き(解明作業)までを自分がひと つずつやったことへの自負心が有るので、何を書いたらよいか戸惑ってしまった。

 歴史は再発掘されるべきである。
今も隠されたままになっている、大きな真実が土中に埋ずめられている。それらを敢えて掘り出して、白日の下に晒(さら)け出すことを、私は常に決意してきた。

 自分の能力の限りを盡 つく して、これが大きな真実だ、本当の話だ、と自分が納得したこと を書いて表に出す。

 故松本清張(まつもとせいちょう)の晩年の長い連載作品に「昭和史発掘」(週刊文春に連載。1964?1971年)がある。この歴史発掘という言葉に私は魅かれて、これにあやかろうと思った。 それでこの本の書名になった。

副島隆彦

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まえがき ― 2

第1章 国家スパイが最尖端(スピアヘッド)で蠢(うごめ)く ― 7

第2章 外相 松岡洋右(まつおかようすけ)論 ― 73

第3章 映画『沈黙―サイレンス』が 投げかけるもの ― 123

第4章 江戸の遊郭(ゆうかく) 、明治・大正の花街(かがい)はどういう世界であったか ― 151

第5章 『デヴィ・スカルノ回想記』からわかる インドネシア戦後政治の悲惨 ― 197

第6章  邪馬台国(やまたいこく)はどこにあったのか、 最新の話題 ― 239

あとがき ― 278

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あとがき   副島隆彦 

 この本の第1章「キム・フィルビー」は、イギリス映画「007」(シリーズ 24 作と番 外編2作)と深く関係している。「007」のストーリーの中に、現代世界史の隠された 大きな秘密が込められていた。それを、皆さんに、この本で掘り出して、鮮やかに種明かししてお見せした。

 第2章で、日本は、では何故、どのようにしてあの戦争に引きずり込まれていったのか。それを、私なりに大きく解明した。誰に、どんな勢力にあのとき日本は、操(あやつ)られ騙されて 嵌(は)められたのか。松岡洋右(まつおかようすけ)外相こそは、昭和天皇に最も信頼されて、天皇の耳と口として、 ヨーロッパの主要国の首脳たちと渡り合った政治家である。

 昭和天皇と近衛文麿(このえふみまろ)首相と松 岡洋右外相は、どのような手口で謀略に陥れられて、そして第2次大戦(WWⅡ)に日本 は突入させられていったのか。

 戦前と戦後の2つを挟んで、ひと筋につながる恐るべき、大きな仕組まれた計略が確か に有った。

 何故、日本国はあのとき、抗(あらが)えない力に仕組まれて、大戦争にひきずり込まれていったのか。400万人の日本人が死んだ(殺された)。 再度書くが、あのとき昭和天皇裕仁(ひろひと)は、自分が最も信頼して使った松岡洋右外相と2人で、大きく騙された。首相の近衛文麿は、立派なお公家で藤原摂関家(せっかんけ)の筆頭の当主であるから「氏(うじ)の長者(ちょうじゃ)」である。

 何の歪(ゆが)みもない温厚な人物であった。近衛首相(敗戦後、服毒 自殺)よりも松岡外相のほうが対外的には重要だった。昭和天皇と松岡洋右のふたりで日本の外交をやったのだ。

 何に? 誰たちに? どんな勢力に?  私たちの日本国が騙された謎、にギリギリまで迫ることを、この本で私は果たした。私が示したこの解明作業の筋立(すじだて)よりも優れた理解があると言うなら、誰でもいいから見せて 下さい。

 終わりに。この本が出来るまでビジネス社大森勇輝編集長に大変お世話になった。記し て感謝します。こんなに苦労するとは思わなかった。

 2018年 12 月   副島隆彦

(貼り付け終わり)

 よろしくお願いいたします。


副島隆彦の歴史再発掘

(終わり)

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