「1723」 「米軍の北朝鮮爆撃 は 有る」と 真剣に論じた自衛隊幹部OB が書いた優れた文を載せる。 副島隆彦 2018.2.15 

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副島隆彦です。 今日は、2018年2月15日です。 

 以下に、載せるのは、私が、一読して、この人の文章は素晴らしい、と相槌(あいづち)を打った文です。 これを皆に読んで欲しいので、ここに載せます。

 私は、掲載誌の週間現代(講談社)に断りなしに載せますので文句が来たら削除します。

 以下の「アメリカの 対(たい)北朝鮮 軍事的措置は、すでに始まっている」という、とても普通の新聞記事や、評論文とは思えない、真剣な、まるで防衛庁内の現場の自衛隊の制服組(軍人たち)の一番上の作戦会議に対して提出されたような、剃刀(カミソリ)のように切れる鋭利な文章だ。自衛隊内部の 作戦本部の報告書のような文だ。

 それを極めて平易に、まるで普通の週刊誌記事のような感じで、第三者の外側の人間が書いているように見せかけている。しかしその内容は、極めて正確無比で厳格な内容だ。 

皆さんも読み始めたら、すぐにこのことが分かるだろう。私、副島隆彦が、折り紙を付けて推薦するこの文章は高度に完成されている。本当に生来(せいらい)頭のいい人間しかこういう報告文、上級庁への提出文は書けない。

 この文は、「米軍(アメリカ)による北朝鮮爆撃は、必ず行われる」という趣旨を 冷静な軍事の専門家の長い経験に裏打ちされて、かつ自分の強い意思を伴って書いている。

 この山口昇(やまぐちのぼる)論文=報告書を、書いた、山口昇氏は、私、副島隆彦よりも2歳年上の1951年生まれだから、今66歳であり、すでに、10年前に56歳で陸上自衛隊を陸将で退官して、そのあと、防衛大学校(ぼうえいだいがっこう)の教授をした後、今は、国際大学という、新潟県の山の中にある、スキーリゾートと間違われそうな、アメリカのワシントンのグローバリスト(地球支配主義者)学者たちが日本の大企業群にカネを出させて作った、変な大学だが、ここの教授をしている。


山口昇(やまぐちのぼる)元陸将

彼は、陸上自衛隊の研究所にいたようだ。防衛省・自衛隊の防衛研究所の研究員ではなかったようだ。 

 彼は、陸上自衛隊の中で頭がいい、と認められて、アメリカのタフツ大学フレッチャー・スクールという軍事研究で有名な大学に留学している。 この人が、さりげなく週間現代( ネット上では、現代ビジネス と 称している。講談社) に書いた「米軍による北朝鮮 への爆撃はある」 という論文だ。

 私、副島隆彦と同じ考えなので、私が「我が意を得たり」と膝を叩いて、好んで、ここに載せる、というだけのことではない。そういう連中は、すでに何十人も出ている。だいたい人の物真似(ものまね)で書いている情けない連中だ。そして軍事の専門家として、私、副島隆彦では、あまり触れることが出来ない現場のことを正確に書いてくれている。

 だから、私は、感心してこの文を転載することにした。こういうことを、私はあまりやらない。私は、よく言われているが、滅多なことでは、人の文章を褒(ほ)めない。私、副島隆彦が褒める、ということは普通ではないのです。このことを分かって下さい。

 それと私は、「米軍の北朝鮮爆撃、そして、今の北の体制の作り替え」が、実際に行われたあと、私、副島隆彦が自分の本『米軍の北朝鮮爆撃は 6月!』に書いたこととこの山口昇の文の2つを,見比べながら、あとあとになって振り返って、細かくその当たり/ ハズレ を 検査、精査したいからである。 それは半年後、一年後には、おそらく出来るだろう。 皆さんも、楽しみにして待っていて下さい。

 以下の山口論文のあちこちに、私なりに、私の見方から、「そうはならない」、「それは、間違いだ」と、言いたいことがある。それらを、割り込み・加筆で入れたいと思ったのだが、今はやめることにする。そのうちやるでしょう。 特に私、副島隆彦は、米軍の爆撃のすぐあとに、中国軍が北朝鮮に侵攻、進撃する、という 軍事予測、予言をしているが、このことに山口昇は何も触れていない。

 ただ、中国(習近平)が、北朝鮮をすでに見捨てていて、アメリカ(トランプ)と連携するのだ、という方向性だけは、しっかり分かっているようだ。 

 日本の自衛隊にはあまり頭のいい人間は行かない、ということになっている。それが、戦後の日本の慣行だ。自衛隊には、背広組(せびろぐみ)という事務官僚たちがいる。彼らは、軍人=征服組から嫌われている、本籍=採用は、財務省か警察庁で、東大の経済学部を出てそのまま「背広組」と呼ばれて、自衛隊の事務屋をやり、制服組を監督をすることを、自分たち自身は、上級の管理職だと、思い込んでいる、バカたちだ。この背広組を、私、副島隆彦は、無能な、生まれたときからの役人根性のヒネた性格の、バカ野郎たちだと思っている。 

 まじめな性格の 制服組(軍人たち)が、愚鈍で横柄な 背広組ことを、吐き捨てるように、嫌っている様子を、私は、かつて20年前に、自衛隊内の見学組織(オピニオン・リーダー制度)に入れてもらったときに、しっかりと見た、目撃した、しっかりと自分で聞いた。


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こういうことも含めて、私は、もうすぐ発売される自著『米軍の北朝鮮爆撃は 6月 !』(光文社刊)と、以下の山口昇論文の、成否、異同、優劣、正誤 を、 のちのちしっかりと検証できることを楽しみにしている。その意味でもこの優れた論文をここに載せる。皆さんも、こころして噛みしめるように一行一行、読んで下さい。 副島隆彦記

(転載貼り付け始め)

 講談社 現代ビジネス 2018.2.7

「 アメリカの「対北朝鮮軍事的措置」、実はすでに始まっている(た) 」

   山口 昇(やまぐちのぼる) 筆

 1951生 国際大学国際関係学研究科教授 元陸上自衛隊研究本部長・陸将

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54357

 一昨年以来、北朝鮮の核開発やミサイル発射による挑発が目に余る。
 国際社会は2006年の国連安保理決議により、北朝鮮が核・ミサイルを「完全で、検証可能で、かつ後戻りできない」形で放棄することを求め、その姿勢を崩していない。

 昨年就任したトランプ大統領の政権は、北朝鮮に対してこれまでになく厳しい姿勢で望んでいるように見える。経済・政治面でこれまで以上に厳しい制裁を課すと同時に、いわゆる軍事オプションが机上にあることを明言し、そのことの信憑性を行動で表してきた。

ドナルド・トランプ米大統領
ここでは、米国の軍事的措置はすでに始まっていること、米国の言質はブラフではないこと、また、韓国や日本もまた1990年代以降、朝鮮半島における不測事態に対処するための体制を整えてきたことを解説する。
 一連の軍事的措置は、北朝鮮国家そのものを崩壊させるだけの準備がすでに整っていることを、そしてその意思が明確であることを、誤りなく相手に認識させることを目的としている。破滅よりましな選択に導く。そのことを通じて、冒頭に述べた国際社会の合意に基づくゴール、すなわち北朝鮮の核・ミサイル計画の放棄を求めることの可能性は十分にあり、またこれを求めるべきである。

●沖縄の米軍ヘリ不時着頻発が発するメッセージ
  最近、在沖縄米軍基地のヘリコプターなど航空機の事故や不時着陸が頻発している。実は、このことは専門家から見れば、この地域に展開する米軍全体が朝鮮半島での万一の事態に備え、極めて高度に準備を進めていることを示している。特に夜間訓練の頻度が高まっていることがそれを示している。


米軍のヘリコプター
 米軍をはじめとする先進国の軍隊は優れた夜間用装備を持っているため、闇を味方にすることができる。特に、正規軍部隊と同士が相対する場合、目視でも観測が可能な昼間での戦闘に比し、夜間戦闘では暗視装置などの優秀な側が圧倒的に優位となる。

 沖縄での夜間訓練の頻度が増しているのは、高い烈度の本格的な戦闘、すなわち朝鮮半島での本格的な軍事行動を想定した訓練に焦点をおいていると考えることができる。朝鮮半島の緊迫にともなって在沖縄米軍部隊を含め日本周辺に所在する米軍全体として北朝鮮に対する抑止を目的とした示威行動などの実任務が増え、部隊の活動がこれまでになく活発化していること、言い換えれば米軍が忙しくなっていることは容易に想像できる。

 事故や不時着の増大には、いわゆる任務過剰という事情があり、しかも夜間訓練が増加することによって隊員の疲労が蓄積してきたことがあると考えられる。このような場合、ややもすれば実戦が近いことを理由に安全のための基本的な手順が疎かになりがちだ。一方、戦場に到達する前に事故で航空機を失うことは、誰にとっても深刻な問題だ。米軍指導部としても、すべての部隊に対して、基本に帰り、安全確保のための手順を愚直に守ることを厳しく求めているものと思われる。

 昨年末以来、在沖縄米軍のヘリによる不時着が増えているのは、航空機の運用手順書に忠実に従い、より深刻な事故に至る前に予防的に着陸して事故を防止しようとする努力の表れと考えるべきだ。一般の報道からは、事故の頻発は、単なる不祥事としか感じ取れないだろうが、軍事の専門家から見れば、紛れもなく差し迫った実戦の準備なのである。このことは間違いなく北朝鮮にも伝わっているのである。

●連続している抑止と実際の軍事力行使
  ティラーソン国務長官は、昨年3月中旬、初の外遊先である日本と韓国で「(軍事的なものを含め)すべての選択肢がテーブル上にある」ことを明言した。


板門店を訪問中のレックス・ティラーソン米国務長官(右)
ここで重要な点は、軍事的な選択肢はオール・オア・ナッシングではなく、さまざまな水準と規模のものがあるということだ。実際の破壊や殺傷をもたらさない措置を含めるとすれば、米国は、かなり前から北朝鮮に対する軍事的措置を講じてきており、いつでも高いレベルにエスカレートできる状態にある。

 近年、米国が多用する言葉に「柔軟に選択される抑止措置(Flexible Deterrent Options: FDOs)」というものがある。FDOsとは、政治・経済・軍事に関する分野で、小規模ではあるが明確な措置をとることによって敵対的な相手にメッセージを伝え、攻撃的な意図を思いとどまらせることをいう。
軍事的なFDOsの具体的な行動は、戦闘機や爆撃機の飛来、演習の頻度や規模の増大、空母機動部隊の派遣など多岐にわたる。

 特に、2016年9月に北朝鮮が核実験を行ってから米国の軍事的FDOsは本格化し、2017春以降より大規模で高い水準の措置が講じられている。米国は、これらのFDOsによって北朝鮮の挑発行為などの抑止を図ると同時に、必要ならいつでも実際の軍事力行使にエスカレートできるという態勢を示してきたのだ。

 2016年に行われた核実験の直後、米国がグアムに所在するB-1爆撃機を朝鮮半島に飛来させたのは、明らかに北朝鮮に対するメッセージだった。同爆撃機は、2010年に米ロ間で締結された新戦略兵器削減条約により、核兵器を搭載できない仕様となった。核兵器搭載仕様のB-52、B-2爆撃機ではなく、あえてB-1を飛来させたのは、北朝鮮に対して「精密誘導爆弾やバンカーバスターなどの通常兵器でも十分に効果がある」ということを示威するためだった。

 昨年年頭から、北朝鮮のミサイル発射および核実験がより挑発的になるにつれ、経済制裁などの非軍事的FDOsに加え、軍事的FDOsも高度化されてきた。昨年6月には空母2隻を中心とする打撃部隊が日本海に進出し、日韓両国と共同訓練を行ったし、11月には米海軍が保有する空母11隻のうち3隻を西太平洋に集中した。戦闘機などを約90機搭載できる空母3隻を集中して運用するのは異例のことだ。


(手前から)セオドア・ルーズベルト、ロナルド・レーガン、ニミッツ
精密誘導兵器を見せつけるのもFDOsだ。昨年4月と10月、オハイオ級潜水艦「ミシガン」を釜山に入港させたのは、その典型と言える。同潜水艦はトマホーク・ミサイル154発を登載しており、また、特殊部隊を海中から潜入させることもできる。トマホークは弾頭重量約450キログラム、1500キロメートル以上の射程を持つ。

 昨年4月6日、米国は、地中海に展開した艦艇から発射されたトマホークによりシリア空軍基地を攻撃した。この攻撃は、シリア政府軍が民間人に対して化学兵器を使用したことに対する報復措置であったが、米軍が公開した写真によれば、防護用の土塁の中にある航空機や燃料補給施設などのピンポイントの目標が59発のミサイルで正確に破壊されていることがわかる。

 その1週間後、米国は、アフガニスタンで MOAB(Massive Ordnance Air Burst)と呼ばれる超大型爆弾を使用した。MOAB の重量は9.8トンであり、炸薬量はトマホーク20発分にあたる。
北朝鮮はこれらの攻撃を強く非難しているが、米軍の攻撃力が正確で威力の大きなものであるというメッセージが伝わったことの証左ともいえる。

 この他にも、例えば、兵器や通信システムの配置などに関する情報収集を目に見えて活発化するようなことも軍事的 FDOsに含まれる。このような活動は、北朝鮮に対して送るシグナルというだけでなく、エスカレートする場合に備えての準備行動でもある。それゆえ、より強力なメッセージ性を持つ。

●「軍事的な圧倒」はブラフなどではない
  冒頭、ティラーソン国務長官が軍事的な選択肢に言及したことに触れた。筆者がこの発言をブラフ(単なる言葉による脅し)ではないと受け止めたのは、マティス国防長官の言葉の重さからだ。
 
 ティラーソン訪日・訪韓に先立つことひと月、2月5日にソウルを訪問したマティス国防長官は、核兵器の使用に対しては「圧倒的かつ効果的(overwhelming and effective)」な対応を行うと述べている。

板門店で会見中のジェイムズ・マティス米国防長官(左)
周知の通りマティス国防長官は、海兵隊の第一線で現場を知り尽くしたオペレーターだ。特にイラク戦争を通じて最大の激戦地となったファルージャでは師団長として作戦を指揮した。そのような実戦派が「圧倒的かつ効果的」というときは、使用する兵器やこれを発射する母体として艦艇、航空機、車両などのプラットフォーム、そして具体的な作戦要領とそれによって得られる効果が頭にある。

 最近では「大量(massive)」のという表現も加わった。具体的な作戦参加部隊の規模が大きいことを念頭においた言葉だ。昨年春以降、米国は多様かつ大規模な米軍部隊を北東アジアに展開してきた。3個空母打撃部隊が西太平洋に集中したことは前に述べた。これらの打撃部隊の指揮下にある潜水艦や水上艦艇、あるいはグアムから飛来するB-1爆撃機が搭載するトマホークだけに着目しても、数百発に上る。

 これに韓国および日本に駐留する、米空軍および韓国空軍の戦闘機や両国陸軍が保有する地対地ミサイルや長射程砲を加えて考えれば、精密誘導弾の数は1000を優に超る。1992年から94年にかけて朝鮮半島の情勢が緊迫した時に、これらの精密誘導兵器は存在していなかったことを勘案すれば、米韓連合軍の通常兵力による打撃力は過去四半世紀で著しく高度かつ大規模なものに変化したことが理解できる。

 また、過去20年以上にわたって、北朝鮮の軍事情勢を監視してきたことによって得られた情報は、実力行使をともなう軍事的措置をとる場合に極めて有用だ。特に、ソウルを射程に収める240ミリ多連装ロケット砲、170ミリ自走加農砲などの長射程砲、対空レーダーや対空ミサイル、高射砲などの防空兵器、指揮統制のための通信システムなどは、大規模な軍事行動に先だって制圧する必要がある。

 マティス国防長官が「圧倒的かつ効果的」という際には、このような目標情報とそれに対して用いる兵器やプラットフォームが具体的に頭の中にあると先に説明したが、その効果とは、北朝鮮の軍事力の速やかな制圧であることは言うまでもない。

 昨年春以来、西太平洋地域に展開する米軍は、単独での訓練を繰り返すほか、頻繁に韓国軍や自衛隊と共同訓練を行っている。これらの行動は、先に述べたFDOsの一環であると同時に、万一の有事に備えての準備という性格を併せ持っている。

●今やソウルは「火の海」にならない
  1990年代の朝鮮半島危機では、全面戦争の一歩手前まで行った。「ソウルを火の海にする」という北朝鮮の脅しに真実味があり、米国として思いとどまったといわれる。韓国の専門家によれば、非武装地帯のすぐ北側には今でも、40キロメートル以上の射程を持つ240ミリ多連装ロケット砲や170ミリ自走加農砲が約300門配置されており、短時間に9000発をソウル近郊に撃ち込むことができる。それぞれの弾頭威力が半径30メーターに及ぶことを考えれば万の単位で犠牲者がでることは想像に難くない。

 1990年代と現在では大きな違いがある。先に述べた米韓連合軍の精密誘導兵器の質と量、そして、蓄積してきた情報だ。1000を優に越す精密誘導弾をソウルにとって脅威となる北朝鮮砲兵に指向すれば、その大部分を射撃する前に制圧する可能性は高い。ロケット砲などの多くは地中の待避壕に隠されてはいるものの、その出入り口を破壊することはさして困難ではないからだ。

 もちろん、このような脅威を100パーセント除去することは不可能に近く、残存したものがソウルに到達する可能性は大いにあると考えるべきだろう。そのような場合には射撃した瞬間に位置が特定されるので、米軍はもちろん、韓国軍のいわゆる「キル・チェーン」で、発見し、韓国陸軍の砲兵や空軍の韓国版精密誘導爆弾で破壊するための措置が講じられる。

● 総じて、ソウルが火の海になる可能性は極めて低い。
  被害がゼロとは限らないが一方、全くの無傷にとどまる可能性も低いと言わざるを得ない。
このことは日本にも当てはまり、無傷ではいられないと考えるべきだ。ソウルに脅威が及ぶような状況であれば、米韓連合軍は臨戦態勢に入る。朝鮮半島の後背地である日本に横須賀や岩国など米軍にとって重要な基地が数多く存在することを勘案すれば、日本に脅威が及ぶ可能性は高いと考えねばならない。

 この場合に日本として最も懸念すべきなのは、中距離弾道ミサイルによる攻撃と特殊部隊などによる破壊活動だろう。弾道ミサイル防衛に関していえば、イージス護衛艦に搭載したスタンダードミサイルSM3による海上配備高高度防衛と航空自衛隊の防空部隊が保有するPAC3ミサイルによる低高度陸上防衛の2層で、かなりの程度のミサイルを迎撃できる態勢となっている。


イージス護衛艦
一方、どのような防衛システムをもってしても迎撃の成功は、確率の問題であり、完全な防衛というものはありない。そこで重要なのは、それぞれのシステムが迎撃し、撃ち漏らした場合には更に迎撃を繰り返すこと、つまり何回迎撃できるかという点だ。
 
 イージス護衛艦は、高度数十キロメートルから数百キロメートルでの迎撃が可能で、カバーする範囲も広く、日本海に2隻展開すれば、日本本土のほとんどが防護対象となる。一方、第2層のPAC3がカバーする範囲は数十キロメートルであり、本土全体をカバーするためには膨大な数の部隊が必要になる。

 現在、政府は、陸上型イージスシステムの導入を考えているようだが、これが実現すれば、海上イージスによる第1層、陸上イージスによる第2層によって、本土全体をカバーする他、例えば、政経中枢や原発などの重要防護対象には3層目の防衛を提供することになる。一方、拉致問題や北朝鮮の工作船事件で明らかになったように、日本国内に潜入して何らかの破壊活動を行われる危険に対処する必要も自明だ。このためには、2つの意味で継ぎ目のない対応が不可欠になる。

 第一に、平時から有事にいたるさまざまな段階に応じ継ぎ目なく対応を変化させていくことが重要だ。警察や海上保安庁の行う法執行活動を中心として対応する場面、烈度が高くなりこれに自衛隊が協力する場面、さらに武力攻撃に対して自衛隊が出動し、法執行機関や地方自治体と協力して国民保護に任ずる場面の間に継ぎ目があってはならない。

 第二に、このように事態が推移していく間、警察、海上保安庁、自衛隊、そして地方自治体などの関係機関が密接に連携するという意味においても、継ぎ目のない対応が必要となる。この点、2015年に成立した新安保法制は、このような対応を可能とする上で重要な一歩となった。

●それでも核放棄という目標を見失ってはならない
  これまで、第一に、米国として北朝鮮に核・ミサイル計画の放棄を求めるために軍事的手段を含む諸施策を講じてきたし、これからも講じていくであろうこと、第二に、トランプ政権は、この目標を達成することを真剣に追求しており、その上でのリスクを最小限にしつつも、そのようなリスクを負うことを厭わないであろうこと、第三に、韓国や日本としても、朝鮮半島から核兵器をなくすという目標を達成するための努力を積み重ねてきたことを述べてきた。

 万一、この目標達成に失敗し、国際社会が北朝鮮を核兵器保有国として認めるようなことがあれば重大な結果をもたらす。核弾頭とICBMさえあれば、どのような無法をも許されるという前例をつくることになり、核武装する国が後を絶たない世界になるからだ。

 日本にとっては核兵器の使用を公言して憚らない隣国から、数十年、あるいは百年にわたって恫喝され続けることを意味する。そのような状態を次世代に引き継がせることはできない。唯一の被爆国であればこそ、日本は、不退転の決意の下、北朝鮮の核・ミサイル放棄に向けて、あらゆる努力をはらわなければならない。

 (山口昇論文の 掲載 終わり)

副島隆彦 拝

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