「1441」 副島隆彦先生の最新金融本『金融市場を操られる 絶望国家・日本』(徳間書店・刊)が発売されます。日本は、アベノミクスに浮かれて「成長国家」どころか、「貧乏国家」となってしまった。この現実から逃れることが出来ない。世界の金融も統制されている。2014年4月5日

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副島隆彦を囲む会の中田安彦です。今日は2014年4月5日です。
副島金融本の最新作『金融市場を操(あや)られる 絶望国家・日本』(徳間書店)が来週刊行されます。ただいま、オンライン書店のアマゾンで発売日を前に予約受付中です。

金融市場を操られる絶望国家・日本
副島 隆彦
徳間書店
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4月初めに消費税が上がって8%になりました。株式相場は大きく崩れてはいないものの、消費増税やその他の社会福祉負担の急増で景気が悪くなることは確実で、だからこそ安部政権はアベノミクスの「第1の矢」である財政出動、「第二の矢」の金融緩和を総動員して、景気浮揚を図ろうとしています。しかし、消費増税で確実に庶民の財布の紐は堅(かた)くなりました。増税初日の1日には麻生太郎財務大臣が、コンビニで『ゴルゴ13』などの漫画を買ったり、森まさこ消費者担当大臣が、江東区のスーパーに視察に出かけたりしています。

安倍晋三首相も、この土曜日に日本橋の三越デパートに出かけて4万円の買い物をしたようです。 報道では、「 竹下(登)さんも同じ店に来た。今回(消費税率が)8%になったので、あの時よりだいぶ消費税が高くなったんだな、という実感はあった」と話して庶民派ぶったアピールをしましたが、この買い物のパフォーマンスに抗議の集団が訪れるということで、ビクビクした安倍首相は、「警備上の理由」で急遽、別の店に変えたと報道されていました。


周りの人払いまでしてわざわざ書店で買い物アピール

安倍首相は先月末にも仲が良いフジサンケイグループの日枝久(ひえだひさし)社長の求めに応じて、最終回直前のフジテレビのタモリの「笑っていいとも」に、無理やり割り込んで出演していました。フジテレビが韓流ドラマばかり放送することには抗議デモを行った、ネット右翼、ネトウヨたちも、この安倍首相のテレビ番組の政治利用にはなんの抗議もしなかったようです。

この時も左翼系の市民活動家が抗議に来ていたようだが、そういうことは報道されませんでした。

政治問題では、大勢で訪れて抗議でいつもわーわーと騒いでいる活動家たちがいる一方で、一般大衆はじっと黙って怒りを蓄積させています。普通の市民たちが「ああ、騙された」となったらいよいよ怖い。

安倍首相は、かつてNHKのドキュメンタリー番組の内容を改編するように圧力をかけた、とされて批判されましたが、最近ではフジテレビなどでは、制作する側が報道番組だけではなく、バラエティ番組にも安倍首相の意向を反映させようとしています。

NHKの会長が、麻生太郎財務大臣の紹介で決まった。自分のことを「川筋気質(かわすじきしつ)」と呼んではばからない失言ばかりしている、籾井勝人(もみいかつと)会長になってから、まずNHKの報道で安倍首相に異様に配慮する報道が行われるようになりました。

これに合わせて、民放のテレビ局でも「右にならえ」をして、安倍首相を叩(たた)く報道はやらなくなった。コメンテーターも一斉に入れ替えが行われ、リベラル系のコメンテーターが次々と降ろされた。

フジテレビの昼の番組ではネット右翼のカリスマで、人種差別としか思えない反韓本、反中本を出している、明治天皇の子孫というだけで話題になった竹田恒泰(たけだつねやす)まで登場させる。

安倍に物申すということができなくなっている。

森まさこ消費者担当大臣が出かけたスーパーに買い物に来ていた普通の主婦たちの顔は笑っていなかった。消費増税の前の年のアベノミクス(金融緩和による強制的な株式浮揚策)になんとなく浮かれていた自分たちは、どうも騙されていた、とこの日に気づいたのだろう。

ただし、騙されていたのは日本の一般市民だけではない。ウォール街主導の相場に投資をしていた世界中の一般投資家たちも騙されていた、ということだ。これが今回の副島金融本の主題だ。

投資家たちが、これまで投資をしている金融市場は公正なものだ、と皆、信じ込んできた。だが、金融市場は公正ではなく、不正取引がまかり通っていて、しかもそれを政府がやっている、ということがいよいよ表面化している。これが今日のニューズ報道にも出た。共同通信は次のように報じている。

(貼り付け開始)

「 米国司法省、「高速取引」を捜査…インサイダー疑い 」

共同通信 2014年04月05日

ホルダー米司法長官は、4月4日、高性能コンピューターを使って1000分の1秒単位で株式などの売買を繰り返す「高速取引」について、インサイダー取引に当たるかどうか捜査していると明らかにした。米下院歳出委員会の公聴会で述べた。

高速取引は主に機関投資家やヘッジファンドが活用し、世界の金融証券市場の主流になっている。大量取引が株価の乱高下や取引システムの障害につながると指摘されているほか、一般投資家の取引が後回しにされているとの批判も出ている。長官は「高速取引は規制当局の監視下にある」と述べ「司法省は健全な市場を保つ責任がある」と強調した。

(引用終わり)

高速取引というのはロボット・トレーディングのことで、これはこれまでの副島金融本で何度も出てきた。この高速取引(ハイ・フリークエンシー・トレーディング)に米司法省はこれから一応メスを入れるようだ。

この捜査と全くタイミングを同じくして、マイケル・ルイスというアメリカの金融ベストセラー本の作家で、元ソロモン・ブラザーズのトレーダーが、この超高速取引の現場を白日のもとに晒(さら)す『フラッシュ・ボーイズ』という本を出した。

ルイスは、これまでも2007年8月のサブプライムローン危機でウラをかいて儲けた投資家を扱った『世紀の空売り』(文藝春秋)や『ライアーズ・ポーカー』(早川書房)でベストセラーをいいタイミングで出してきた作家だ。今回もまさに政府の捜査とドンピシャリのタイミングで『フラッシュ・ボーイズ』を出した。今週の欧米の金融新聞にはこの本の書評が相次いで掲載されている。

高速取引というのは、「高度なコンピューター技術や光ファイバー、マイクロ波の電波塔を悪用して数千分の1秒単位で、他の投資家に先がけて取引を行う」というものだ。そういった金融テクノロジーを持てる投資家だけが、投資では利益を得ることができる、と書いてある。 他の投資家が見ることのできない注文に関する情報に基づいて、しかも他の投資家よりも先に取引することはインサイダー取引法に違反する(可能性がある)。

金融市場はだれでも儲けるチャンスがあるというのは嘘っぱちで、こういったチート(cheat ずる、いんちき)行為をできる投資家だけが勝てる。マイケル・ルイスはモルガン・スタンレーなどの投資銀行がこうやって利益を上げていると叩いている。

他にも「ダークプール」という、名前からして「後ろ暗い」感じの一般の投資家は参加できない機関投資家(インスティチューショナル・インヴェズターズ)だけの取引所もある。これらに最近になって批判の声が集まっている。

時々、こうやって金融市場のインチキが暴かれるが、これに対して金融当局は規制をかけるが、さらにそれをかいくぐるように大手投資銀行は別の手口を考え出していく。インナーサークルだけが儲けられる市場になっている。これが「自由な市場」(フリー・エンタープライズ・マーケット)といえるのでしょうか。

副島先生の金融本でも、このマイケル・ルイスが取り上げた、高頻度取引(こうひんどとりひき)、高速取引の話ももちろん、それ以外にも安倍首相が、増税後の厳しい国民の不満をかわすために、日本の日経平均株価をどうやって、政府の資金を使って、「景気は悪くなっていません」という目くらましをするために、何が何でも高値を維持しようと企んでいる。その具体的な手口がたくさん解説されている。

この『金融市場を操られる 絶望国家・日本』の大まかな目次は以下のとおりだ。

第1章:これからの金融相場を予測する
第2章:金融市場はとっくに統制されている
第3章:変動率(ボラティリティ)に踊らされる日本市場
第4章:アメリカは“金(きん)殺し”と“新興国殺し”で生き延びる
第5章:靖国参拝で日本は世界を敵に回した

コラム「ウクライナはプーチンの寝技一本勝ち」
「ビットコインについて」
「次の次の首相は細野豪志だ」

巻末付録 「乱高下にも負けない強い株38銘柄 」

第2章では、アベノミクスの株価吊(つ)り上げでは、「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」 という国民の大切な年金の基金の資金を使って、損失の危険も顧(かえり)みずに、実際に、株で失敗するする可能性が高いのに、これを株式市場に投入行うことを決定しつつあり、竹中平蔵たちがこれを実行に移す、と指摘している。実際、このGPIF(ジー・ピー・アイ・エフ)のトップの三谷隆博(みつやたかひろ)理事長は、3月末の「朝日新聞」のインタビュー記事で、自分が責任者であるGPIFが、株価吊り上げの道具になることへ警戒感をしめした。

(引用はじめ)

三谷隆博理事長 「 国内債券のウエート(比率)が下がっていけば、ほかの資産が上がる。長い目で見て十分収益が取れるとみて(国内株式を)買うのは悪くないが、期待が短期的すぎるのではないか。私どもは株価の下支え機関ではない。『PKO』(政府による株価維持政策)をするためにあるわけじゃない」

『朝日新聞』2014年3月25日

(引用終わり)

このように新聞やテレビで、サブプライムだのTPPだの、そして今回のようにGPIF(ジー・ピー・アイ・エフ)などのよくわからない横文字が出てきた時が危ない。株屋の新聞(日経新聞のこと)を中心に、こういう新しいものが、何か打ち出の小槌(こづち)であるかのように宣伝して、またしても一般大衆を騙(だま)す。ああ、なんかそういうものかな、自分には分からないなあ、と思わせて黙らせる。

こんどの本でも、金融を長い目で予測、理解していくために必要な諸知識を、わかりやすく図表で掲載している。たとえば、

(下図参照)

今度の副島金融本は、このほかに最新の国際情勢、日本政治に関するコラムも加わり、金融市場(投資市場)に影響を与える情報をいろいろと解説している。 以下に「まえがき」と「あとがき」を掲載する。

(貼り付け開始)

「金融市場を操(あやつ)られる 絶望国家・日本」

まえがき    副島隆彦

日本国民は「また騙された」ことに気付いて怒っている

この4月から消費税が8%に上がり、日本の景気は確実に悪くなった。日本は「成長戦略」どころか、ますます貧乏になり、衰退しつつある。この現実を直視すべきだ。安倍首相のアベノミクスは、既にボロボロに打ち破られ、彼の退陣、すなわち安倍政権の崩壊も間近である。ちょっとぐらいの景気対策ではもう追いつかない。国民は「また騙(だま)された」と気付いて怒っている。

この本は、株式、債券、ドル・円相場、金(きん)などのすべての金融市場が既にもう統制されており、政府によって価格が操作されていることをみんなに知らせるために、警鐘を鳴らす本である。私たちはハッ、と気付いて用心すべきなのだ。注意し、用心と、警戒すれば騙(だま)されることはない。私たちはこの国家、政府による金融市場の操作(あやつり)を見抜くことで儲けを出すべきである。私たちは徹底的に賢くなって、統制経済(コントロールド・エコノミー)と市場操作(マーケット・マニピュレーション)の外側に逃れ出なければならない。悪辣な政府のウラをかくことによって、投資家は儲けることができるのである。

皆うすうす気付いているのである。政府のお金で金融市場がいいように動かされていることを。政府の大きなお金が、市場の値段を決めている。「市場との対話」とか「フォワード・ガイダンス(前もっての指導)」は、これは市場操作の別名である。皆分かっているのに、はっきりと自覚しようとしない。金融市場は既に統制されていることを、はっきりと自覚することが私たちが生き延びる唯一の道である。分かっている(自覚している)つもりで、分かっていない。このことが一番恐ろしいことだ。

あれほどアベノミクスの太鼓を叩(たた)いた安倍政権は、いろいろな失敗を重ねることで、恥多く退散しつつある。私たち日本国民はこの自民党タカ派の危険な政策で、国民生活がさらに追いつめられてしまった現実を見つめて、賢く行動することでせめて自分の生活を守り、収入や売り上げを確保しなければいけない。

副島隆彦

あとがき

4月になって消費税が上がって、日本の景気は一段と悪くなった。政府は「7年ぶりのデフレ不況からの脱却の準備が整いつつある」と、今も強気の姿勢を崩さない。日本中がさらなる景気の悪化で沈滞している。増税をしながら景気回復を唱えることはできない。

若者たちの失業問題が深刻である。学校を出たばかりの若者たちに、就職の機会が与えられないのは政治の失敗である。老人福祉ばかりをやり過ぎて、若者たちが路頭に迷いそうな感じである。政治の失敗をいくら言っても政府自身にもうなす術がない。お札(紙幣)と国債(国の借金証書)を際限なく刷り続けるだけだ。

私は昨年末の、香港・深センへの調査旅行の帰りの飛行機の中で、「ブルージャスミン」(“Blue Jasmine”
憂鬱=ゆううつ=なジャスミン )という 映画をたまたま見た(日本では5月公開)。ニューヨークの上流婦人が結婚生活に失敗して、妹の住むサンフランシスコに逃れて来て、気ままに奔放に遊び回るのだが、さらに憂鬱になっていく。痛々しいジャスミンを女優ケイト・ブランシェットが上手に演じている。監督は、ニューヨーク・ユダヤ人の憂鬱を描き続けたウッディ・アレンだ。

この映画は、往年の大作 『欲望という名の電車(ア・ストリートカー・ネイムド・デザイア)』(1951年)の焼き直し(リメイク)だと判った。二重人格症(マルチプル・パーソナリティ)を患(わずら)う、過去の幻想を追う女、ブランチ(ヴィヴィアン・リー)をスタンリー(若いマーロン・ブランド)が暴き立て、痛めつけた。

今のアメリカも日本も政府がやっていることは、この二重人格症( DID、デイアイデイ。解離性(かいりせい)同一性障害 )あるいは、錯視症(さくししょう)(optical illusion、オプティカル・イリュージョン)だ。 自分たちがやっていることが、過去の偉大なる繁栄に酔って、その幻想と厳しい現実の区別がつかなくなって、薬物( 緩和マネー。じゃぶじゃぶマネー )を、口いっぱいにほおばるジャスミンと同じだ。

自分がいつまでも空中に浮いていられると勘ちがいしている空中浮遊 magnetic levitation(マグネティック・レヴィティション 略称 mag lev マグ・レブ。超電導で起きる)状態である。私は事態を冷ややかに見つめる。

この本は、わずか10日間の昼に夜を継ぐ突貫工事で作られた。しかし粗製濫造(そせいらんぞう)していない。ぎっしりと今(いま)という状況の、金融・経済そして政治の最先端の課題に立ち向かっている。よくもこんな本作りができるな、と私は、自分の脳と体のことを心配しながら、だが、妙に元気である。

強力に伴走してくれた徳間書店力石幸一編集委員と橋上祐一氏とオペレーター・チームの献身がなければできなかった。記して感謝します。

2014年3月                      副島隆彦(そえじまたかひこ)

(2014年4月7日。追加で加筆します。
この映画「ブルージャスミン」が、今年のアカデミー賞で、主演女優賞を獲得しました。引用はじめ)

●「アカデミー賞、主演女優賞はケイト・ブランシェット」

2014年3月3日 産経新聞

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/140303/ent14030314130022-n1.htm

主演女優賞は「ブルージャスミン」のケイト・ブランシェットさんに輝いた。 ブランシェットさんは「私がここに立てるのは、ウディ・アレンさんのシナリオのおかげです。女性を中心にした映画はヒットしないと考える人が多 いようですが、そんなことはありません。稼げるんですよ」と微笑んだ。

作品は大富豪と結婚したものの、運命のいたずらですべてを失った女性を描いた。セレブとしてぜいたくな生活をする様子、そしてときどき見せる病 的な表情の配合は絶妙だった。

(引用おわり)

(貼り付け終わり)

以上です。4月8日には全国の書店に並びます。オンライン書店のアマゾンでも現在予約を受付中です。ぜひご利用ください。

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