「2131」 映画「オッペンハイマー」を見た(第2回・全3回) 2024年5月14日

副島隆彦です。今日は2024年5月14日です。

映画「オッペンハイマー」の感想の2回目です。これは左翼の勢力の思想闘争の問題でもあるのです。また後でしゃべりますが、コミュニスト、共産主義者 をアメリカの蔑称(べっしょう)で、commy(コーミー)と言います。堅い信念まではないが、左翼的なリベラル派は、pinko(ピンコウ)とも言います。ピンクなんです。赤になるほどではない人たちという意味なです。commyに対するアメリカの保守的な大衆からの憎しみ、怒りが、当時、確かに有った。

アメリカの知識人たちが共産主義思想にかぶれていた、といえばそれだけですが、1920年代、1930年代には、ずうっと世界中で、世界各国で、進歩思想で、人類の理想を唱えた人々は、みんなコミュニストになった。だから副島隆彦までその遺伝子がずっとつながっていて、今でも病気が治らない、といえばそれだけです。

今、人類(人間)に新しいニューコミュニズムが始まったんですよ。ロシアと中国がどんどん今から強くなるからね。人類の新しい理想を求める。今回は、今度こそは、馬鹿なことをしない。人間の大量殺りくに至るようなことはしない。着実にやろうという思想が、今、実は生まれていて、それの日本代表が副島隆彦です。

私はだから、現実味の無い、過激な理想や思想は持たない。穏やかに、穏やかにやって、現実の人間世界が持っている汚らしいところを認める。資本家と大企業経営者と大金持ちたちの存在も認める。彼らのずる賢さ、悪賢さがなければ、人類(人間世界)の運営、経営はできないんだ。それに対して、人類の9割以上である低所得者層(貧困層。はっきり書けば貧乏人)、労働者階級がいる。この事実も認めた上で、新しい理想主義を唱えなければいけないということです。だから、あんまりきれいごとだけ言うな、という思想が副島隆彦を作っている。

反対運動ばっかりやっているんじゃない。福島第一原発事故(2011年3.12から)も、超(ちょう)微量の放射能だったから日本人は誰も死んでいないんだ。

私、副島隆彦が、現地まで行って、事故を起こした原発のそばで、現地活動本部を作って、「作業員一人、赤ちゃん一死んでいない」と書き続けた。ネットで現地の様子も撮影して動画でも配信した。それに対して、超(ちょう)微量の放射能の拡散に対して、自分の脳(思考力)が勝手に妄想を起こして、恐怖感にかられた人々がたくさん出た。

この人たちがぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあ騒い。私は、それに対して「何を言うか。福島の現地に来て、現実を見なさい。原住民(ずっと残っている現地の人たち)は皆、元気だ」と現地から報告を続けた。福一の中の原子炉のメルトダウンなんか無かった。大きなシリンダーみたいな原子炉を包んでいる、格納庫(コンテイナー)も壊れていない。ところが、原子炉が壊れてそこから高濃度の放射能が漏れ出したとか、「馬鹿を言うな」と私は怒った。原子炉の下に、燃料棒からペレットが垂れて凍りついただけだった。燃料棒からウラン燃料が漏れ出ていない。何を言うかということを、私は、ずっと言い続けた。私のほうが正しかったに決まっている。このことで本も書いた。そこにたくさんの資料と写真とかも貼り付けた。

だけどヒステリーを起こす人間たちがたくさんいた。これには右翼も左翼も関係なかった。馬鹿女が多かった。ヒステリーを起こす人間たちというのは、冷静さが無いんだ。それなのに勝手に自分は賢い、と思い込む。 何が起きても、黙ってじっと我慢して、現実に耐えるというのが普通の人たちの態度だ。これがよい。 確かに、自分の頭の上に爆弾が落ちて来そうだとなれば、「きゃあー」と言って逃げます。それでいいんだ。それ以上のことを人間はできない。

動物には、想像力(イマジネール)とか、空想力が無い。だから自分の目の前に危険が迫らないと逃げない。動物は、5万人がコンサートホールやスタジアムに集まって、ワイワイ、皆で騒ぐ、ということをしない。人間だけだ。こんな馬鹿げたことするのは。これを、共同幻想(mass illusion  マス・イルージョン)という。この共同幻想が、暴走すると、狂った宗教団体の行動に成ったりする。戦争をする時の国民(民族)は、この共同幻想が高じて、集団発狂状態になる。

だから私は、オッペンハイマーたちの苦しみがよく分かる。私は彼らと同じタイプの人間だから。ただし彼らはみんなユダヤ人だ。優秀なユダヤ系のアメリカ人の知識人たちだ。映画ではあまり言わなかっただけど、当然の大前提で、同族のユダヤ人がドイツやポーランド、ひどい目に遭っている。収容所に入れられていた。怒り狂っていたんですよ。でもガス室で大量に殺された、というのはウソだ。強制収容所で、15万人ぐらいのユダヤ人が、餓死か腸チフスで死んだ。

だから、自分たちが作った原爆をドイツに落とすのだ、となった。物理学者たちが本気になった。このことはこの映画では強調されないんだけど、前提の前提です。一言で言うと、かれら原爆開発に参加した科学者と技術者たちはほとんどユダヤ系だ。優秀な人たちだ。

このあと、水爆開発をやるエドワード・テラー(Edward Teller、1908-2003年、95歳で死)もハンガリー系ユダヤ人です。エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi、1901ー1954年、53歳で死)はイタリア系で、ムッソリーニに対する激しい憎しみを持っていた原子力物理学者なんです。イタリアから亡命してきていた。

エドワード・テラー

エンリコ・フェルミ

もう一人、レオ・シラード(Leo Szilard、1898ー1964年、66歳で死)という人が重要だ。彼もちらっと出てきた。彼はハンガリー人です。ハンガリー系ユダヤ人のレオ・シラードと、その弟子でアシスタントのディヴィッド・ヒル(David L. Hill、1919-2008年、89歳で死)とがプルトニウム型原爆を本当に作った人たちだ、優秀な物理学者たちだ。

フェルミのアシスタントのこのヒルは、日本への核爆弾投下に反対する署名をした。だからロスアラモス研究所から解職、追放された。レオ・シラードは署名しなかった。だから追放にならなかった。

レオ・シラード

ディヴィッド・ヒル

このフェルミとシラードの2人が、アメリカで核分裂の特許を持っていた。だから彼らが、実際に原爆をつくった人たちだ。この2人が本当につくった。アメリカのマンハッタン計画で長崎に落とされた、ファット・マン(Fat Man ふとっちょ )、この原子力爆弾を本当につくったのはこの2人なんです。そしてディヴィッド・ヒルです。そして、その3日前に広島に投下された、リトル・ボーイ(Little Boy ちび)は、ドイツで、ハイゼンベルグたちが作ったものだ。

そして前出した、フランクという、オッペンハイマーの弟が起爆剤をかけて爆縮(ばくしゅく)実験をやって成功して、それで核分裂(かくぶんれつ。nuclear fission ニュークレア・フィッション)が実際に起きた。あまり難しいことは言いません。私もよくは分からないから。 それに対して、水爆時代になると、核融合(かくゆうごう。nuclear fusion ニュークレア・フュージョン)になる。核分裂の次の、核融合の話になって、これは爆縮ではなくて爆発だから、explosion エクスプロージョン なのね。この話はもうこれ以上しません。私もよく分からないんだ。

長崎に投下された「ファットマン」

フェルミとシラードがアメリカでnuclear fission(核分裂)の特許(とっきょ。パテント)

を持っていた。この事実が重要だ。このレオ・シラードが ” We are Martians. ”と言っていました。Martians 「マーシアンズ」というのは、Mars 「マーズ」で火星のことだ。「私たちは火星人なんだ」という有名な言葉がある。自分たちは火星から来た人間たちなんだよと。実はこれは、「自分たちはマジャール人だ」という意味で使った。マジャールというのは日本人でも知っているとおり、ハンガリー人のことです。首都はブダペストです。紀元3世紀の、ローマにまで迫ったフン族(シュンヌー。 東アジアでは匈奴=きょうど=)の大王のアッチラ大王の話にまで遡(さかのぼ)る。シラードは、前述した通りハンガリー系ユダヤ人だ。

『開かれた社会とその敵』 The Open Society and Its Enemies という本を書いたカール・ポパー(Karl Popper、1902-1994年、92歳で死)という人類学者がそうだ。その弟子だと名乗っていた、大悪人(だいあくにん)で、お金だけをポパーに払っていたのが、悪い悪い男のジョージ・ソロス(George Soros、1930年-、93歳)です。

こいつもハンガリー系ユダヤ人だ。日本に長いこといる数学者気取りの、漫才師みたいなハンガリー系ユダヤ人がいる。ピーター・フランクル(Péter Frankl、1953年-、71歳)です。NHKに昔よく出ていた。今もいると思うけど。大した知能はなかったと思う。あとカール・ポランニーとか、経済人類学者を名乗った学者とかたくさんいた。ハンガリー系のユダヤ人たちが重要だった。

カール・ポパー

ジョージ・ソロスとヒラリー

ピーター・フランクル

数学者で、当時、数学が世界一できた、と言われている フォン・ノイマン(John von Neumann、1903-1957年、53歳で死)。今のコンピューターは、フォン・ノイマン型と言われるぐらい、ものすごく数学ができた人だ。この人たちが、原子爆弾が爆発したときにどれぐらいの破壊力を持つかの計算とかをやった。

ジョン・フォン・ノイマン

戦後、原爆を落とされて日本が占領された後。横須賀港で生き残っていた、唯一の連合艦隊の旗艦でもあった戦艦長門(ながと)も、最後はベニヤ板で囲ってぼろぼろになっていたんだけど、それもムルロア環礁に持っていって、そこで海面に並べておいて、ドカーンと、人類で初めての水爆の一番初期の実験をやった。日本で生き残っていたおんぼろ戦艦たちを、この時、波の力で沈めたんですね(1946年〇月〇日 ? )。そのときに破壊力をはかったらしい。だからあのときの実験成功で、水爆が出来たということになっているようだ。アメリカは、そういうことをしている。だから水爆は有るということになって。だけど私は、このことは話したくない。

この水爆推進派に対して、オッペンハイマーとアインシュタインは「もうやめろ」と言ったんです。原爆だけで十分だ。水爆なんていうのを、そんなものまで作るな。つくる必要はないんだと。地球を壊す破壊力としてもう十分だ。 あの時、オッペンハイマーが自分で、一所懸命に数式で計算したんですよ。そしたら、どうも水爆はつくれそうだ、という書類を、映画の最初と最後の、あのシーンで、アインシュタインに見せようとしたんですね。「これを読んで下さい」と。そしたら、アインシュタインは、「そんなものを私は見たくない。読みたくない」と拒絶したんですね。「私はお前たちの量子力学は嫌いだ」と、「私は、相対論のアインシュタインだぞ」と、そういう感じでした。もうこれ以上やるんじゃないと、これ以上巨大な破壊兵器を作るなと。

やがてその後、1957年にパグウォッシュ会議といって、アインシュタインとバートランド・ラッセルが中心になって学者たちが「原爆作り(核実験)をやめろ運動」を始めた。それに日本からも湯川秀樹(ゆかわひでき、1907-1981年、74歳で死)と朝永振一郎(ともながしんいちろう、1906-1979年、73歳で死)たちが参加して、日本からも核爆弾反対運動になるんですね。

第1回パグウォッシュ会議(1957年)

しかし本当は、1回目で私が説明した、仁科芳雄(にしなよしお、1890-1951年、60歳で死)が一番偉くて、仁科が、理化学研究所の理事長で、東大の理学部なんかよりずっと偉いんですよ、理研が。

理研は「理研のわかめちゃん」も作ったんだ。あとは、例の「STAP(スタップ)細胞はありまーす」の小保方晴子(おばおかたはるこ、1983年-、40歳)も理研なんですね。かっぽう着を着て出てきて。そのあと大騒動になった。この小保方が、色仕掛けで嵌(は)めた、理研の生命科学で、一番優秀な男だった、笹井芳樹(ささいよしき、1962-2014年、52歳で自殺)がいた。

小保方晴子と笹井芳樹

日本で1番優秀で、ノーベル賞に一番近かった、笹井(ささい)は自殺した。それに比べれば、今のあの馬鹿野郎が。京大で威張っている邪魔中伸弥(山中伸弥、やまなかしんや、1962年-、61歳)だ。山中は、ただの臨床医(りんしょうい。患者を治療する医師)だったんだ。あんなのインチキだ。山中は、ノーベル賞を貰って(○○年)、あの後、この10年、iPS(アイ・ピー・エス)細胞で、何も出来ていない。成果が何もない。今もカネばっかり集めている。
やっぱり受精(じゅせい)直後の卵(らん)・胚(はい)を使わないと。物質の核分裂と同じように生命の細胞分裂というのが起きる。これが起きない。細胞分裂は、若い受精卵が受精して、一瞬のうちに爆発現象で起きる。一瞬で何億倍にもなる。この細胞分裂のすごいのを利用しないと生命医学の進歩はないんです。

山中伸弥

ところが、ローマ・カトリック教会(ローマ法王)が、「人間の卵・胚はいじるな。生殖細胞をいじるな」と言ったもんだから、いわゆる生命体研究は止まらざるを得なかった。 stem cell(ステム・セル)という幹(かん)細胞までしか使っちゃいかんとなった。

そうしないと、豚と人間の精子・卵子をかけ合わせるようなことをする、所謂(いわゆる)マッド・サイエンティスト(気違い科学者)が、世界中に今も隠れてたくさん居る。実験によって、この地上に新しく存在することになるものを、自分は作る、という動機になっている。この生命体の初期の爆発現象と、核分裂は一緒なんですよ。ウランとプルトニウムの核分裂(ニュークレア・フィッション)は、実は。このことはもうこれぐらいにしましょう。

だから仁科芳雄(にしなよしお)が、「お前たちは、こことここを研究してみろ」と言って、弟子である 湯川と朝永にやらせた。そこからの業績が、戦後、ノーベル物理学賞になる。本当は仁科が偉いんですよ。仁科が真に偉いんだ、というのを書いたのが、私の弟子で、下條竜夫(げじょうたつお)君です。兵庫県立大学の助教授で、SPring-8 {スプリング・エイト」という国策の国立実験場で、今も実験をしています。下條君の専門分野は、「物理化学」というんだけど、化学(ばけがく)で扱う物質を、どこまでも小さくして行って、素粒子レベルで観察するらしい。それ以上のことは私には分からない。ぐるぐるっと巨大な円形を回して、何十万ボルトの電圧で、物質を破壊して、そこから何かを取り出すというのをやっているらしい。SPring-8をやっている下條竜君が下 ↓ の本を書きました。本にしました。

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水爆推進派のルイス・ストローズ(Lewis Lichtenstein Strauss、1896-1974年、77歳で死)という男が、この映画で非常に重要で、ロバート・ダウニー・Jr.(Robert Downey Jr.、1965年-、59歳)という名俳優が演じてアカデミー賞の助演男優賞を取った。このストローズが、オッペンハイマーを追い詰めていく話だ。この映画の大きな骨格、鉄骨は、まさに、オッペンハイマーとストローズの闘いです。真迫のシーンがたくさん出て来る。このルイス・ストローズのことを日本人は誰も知らないと思う。

ルイス・ストローズ

ストローズを演じた俳優のロバート・ダウニー・Jr.

ストローズは次の水爆推進派だ。原爆を広島・長崎に落とした、1945年8月6日と9日。ルーズベルト大統領は、その前に4月に死んでいるから、副大統領だったトルーマンが大統領になって原爆投下命令を出した。トルーマンが署名して8月に落とした。オッペンハイマーは、ロスアラモス研究所の所長(原爆製造の責任者)として、この10月に大統領執務室(オウヴァル・ルーム)に出頭している。

映画の中でも、大統領に向かって、「私は自分の手が血で汚れているようだ」と言っていた。横に国務長官のバーンズがいたかな。この2人の大物政治家が、オッペンハイマーの発言に、白けたような顔をした。オッペンハイマーは、もうロスアラモス研究所は閉じて原爆研究はしないでくださいと言ったと思う。

そしたら、帰り際に、彼の背中に向かって、トルーマン大統領が、wimpy(ウインピー)と言わないで、crying baby(クライング・ベイビー)と言った。泣き虫。「あの泣き虫を二度とこの部屋に入れるな」というトルーマンの声が、オッペンハイマーの背中に聞こえる。あれが重要ですね。

やがてルイス・ストローズは商務長官になるんだけど、政治家だ。彼は、ミシシッピ州の実業家で大金持ちだ。政治家たちにもお金(政治献金)を、ニクソンにもお金をいっぱい出した男だ。このルイス・ストローズが、あのときは、まだ商務省の長官、secretaryではなくて、まだacting secretary(長官代理)だったと思う。そして原子力委員会の委員長になった。戦争中は軍人でもあった。海軍少将だった。そして彼が推進して水爆研究をやるという形で、オッペンハイマーを痛めつける中心人物として描かれていた。

ストローズは、オッペンハイマーに、以前、アイソトープ推進を馬鹿にされて、ずっと根に持っていたんですよ。オッペンハイマーが議会の公聴会で「あんなものはやるな」と、めちゃくちゃに言った。めちゃくちゃというか、非難し彼にはその開発能力はないと言った。

商務省は、Department of Commerce(デパートメント・オブ・コマース)だ。日本でいえば通産省、今は経済産業省だ。通産省は、実は、日本で戦前は、商工省(しょうこうしょう)だった。商業と工業です。岸信介(1896-1987年、90歳で死)が商工次官、そして商工大臣だった。だから、本当のことを言うとね、商工省というのは、「戦争推進省」なんです。戦争のために物資と技術と人間動員して兵器の開発研究とかね。だから実は戦争省(せんそうしょう。war department ウォー・デパートメント)なんですよ、経済産業省というのは。本当のことを言うとそうなんです。このことは、今の日本人はもうあまり知らない。

だからアメリカ商務省は戦争推進省なんです。技術と物資ね。日本では三井物産や三菱商事なんかを動員して世界中から物資を集めろという命令を出す。それが産業部門の一番上にいる役所わけです。だからルイス・ストローズが商務省長官としてその命令をする。オッペンハイマーへの査問(さもん)委員会の委員長の隣にいた。それでオッペンハイマーを徹底的に痛めつけつける役だった。

彼は、ミシシッピ州の大金持ち実業家で、だから、この映画の最初のシーンに、プリンストン大学の学者たち宿舎の裏の池の横で、アインシュタインとオッペンハイマーが話しているときに遠くからストローズが近寄ってきた。きっと2人は、自分の悪口を言っているんだろうと思った。そんなことじゃないんだけど。あそこで、確かストローズが、 ” I’m a shoeseller、shoemaker.” と言った。shoe salesmanと言った。靴屋だ。「オレは、靴売り屋なんだよ」と言いながら二人に寄ってくるんですよ。

アインシュタインとオッペンハイマー(映画のシーン) 右は史実の実際の2人の写真

靴売り屋って何だよ。もうはっきり言いますよ。私も、君たちと同じユダヤ系だ。そしてユダヤ系の中でも、Wandering Jew というんです。これは「さまよえるユダヤ人」といって、peddler(ペドラー)といって、行商人のユダヤ人です。ヨーロッパ中を、靴を売って回っていたユダヤ人なんだ。ユダヤ人の中でも一番下の被差別民なんだと、ストローズは、自己卑下して言いながら、アインシュタインとオッペンハイマーに近づいた。。

これを言うとまずいんだけど、例えば神戸の長田区(ながたく)でも何でも東京の浅草(矢野、やの)弾左衞門(だんざえもん)が住んでいた辺りでも明治なったら製靴(せいか)業者になった。江戸時代は、浅草弾左衛門は、穢多頭(えたがしら)です。大名待遇です。それに対して、 車善七(くるまぜんひち)の方は、吉原の廓(くるわ)も管理している、非人頭(ひにんがしら)です。穢多頭(えたがしら)の弾左衞門は、明治になって靴屋になった。大きな靴製造業者に。元は皮剥ぎ職人です。動物の皮を剥いで、武士の為のよろいとか馬の鞍とかいろいろ馬具をつくっていた。

だからいタリアの高級ブランド屋の グッチとかエルメスも、元々馬具屋なんですよ。被差別民なんですよ、本当のことを言うと。商業民ともいうかね。こういうことではどこの国も一緒なの。普通は書いてはいけないのだけど、私はそうしても書いてしまう。

ストローズは、自分は同じユダヤ人の中でも一番下だと言ったんです。何であんなことを言いながら寄って来たのか、私にも理解できないけど、分かる人はみんな分かるんですよ、ヨーロッパ人、アメリカ人白人たちは。私は商売人のユダヤ人で、あなたたち高級な学者とは違うんだけどと言いながら寄って行った。そして、謎解きのようにして、最後のシーンでまた同じシーンが出て来た。このストローズの役が重要だとこの映画で描いてあった。

さっき言ったディヴィッド・ヒルを、ラミ・マレック(Rami Malek、1981年-、42歳)という俳優が演じた。マレックは「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年)という映画で、主役のフレディー・マーキュリー(Freddie Mercury、1946-1991年、45歳)をものすごくそっくりに演じたと評判がよかったと言われている。他に007の最新版でダニエル・クレイグ( )が主演のジェームズ・ボンドを演じた最後の作品でも、悪役として出てきたという。人気のあるいい役者だと言われている。私はよく分からない。あんなのは、若い、まだ餓鬼にしか見えない。それが今の時代なんでしょう。

ディヴィッド・ヒルを演じるラミ・マレック

オッペンハイマーは、マックス・ボルン(Max Born、1882-1970年、87歳で死)という学者と、最初のころ、20代のころ共同研究をやっている。ボルンという物理学者が何をやったか、私はよく分からない。

マックス・ボルン

わざとエドワード・テラーを、目がぎょろぎょろした、腹に一物ある、いかにも悪い人間に描いていたけど、本物はああいう顔じゃなかったみたい。

エドワード・テラー役の、あの目がぎらぎら輝く、あれが実は、水爆を推進して「ソビエトに落とせみ」たいなことをさんざん主張した、有名な学者がいる。映画の原題で、Dr. Strangelove「ドクター・ストレインジ・ラヴ」という映画(〇〇年作)になった。監督はスタンレイ・クーブリックだ。この映画の日本語の題名は、「博士の異常な愛情」という変な名前になったんだけど。「・・・彼はどれほど原爆を愛したか」という副題が付いている。

死ぬほど核兵器を愛して、核兵器を落とすことが夢であった ハーマン・カーン(Herman Kahn、1922-1983年、61歳で死)という男の話だ。目がぎょろぎょろ輝いて、ぎらぎらしている、狂っている博士、もうマッド・サイエンティストそのもの。このハーマン・カーンは、アメリカの政財界にも力があった。

ハーマン・カーン

このハーマン・カーンがつくった研究所が、今もニュージャージーにある、ハドソン研究所というシンクタンクだ。政策立案(ポリシー・メイキング)研究所として、日本からも資金が行っている。この研究所に日本もお金を貢いだ。カーンは、80年代まで生きていた。

その映画、「博士の異常な愛情」 Dr. Strangelove (1964年)を撮ったのは。スタンレー・キューブリック(Stanley Kubrick、1928-1999年、70歳で死)だ。目をぎらぎら最後のシーンで原爆(核兵器)と一緒に落ちて行く。「オッペンハイマー」では、このハーマン・カーンをわざとエドワード・テラーとダブらせたようだ。

スタンレー・キューブリック

あと一つ。ロスアラモス研究所の軍人代表で有名な グローヴス将軍が出て来る。レズリー・グローヴス(Leslie Richard Groves Jr.、1896-1970年、73歳で死)中将です。レズリー・グローヴスは、military engineer ミリタリー・エンジニーアすなわち工兵(こうへい)部隊の最高責任者だ。工兵がいないと、戦場で橋をかけたり爆薬を仕掛けたり、電線を惹いたりとかできない。この工兵部隊の中将だ。グローヴス中将が軍人代表でマンハッタン計画を指揮した。形上はオッペンハイマーたちに対する管理統制権を持っていた。

レズリー・グローヴス

もう1人、防諜(ぼうちょう)の責任者で、ボリス・パッシュ(Boris Theodore Pash、1900-1995年、94歳で死)が出てきた。防諜(ぼうちょう)、対(たい)諜報(スパイ)というのは「カウンター・インテリジェンス」で、ロスアラモス研究所に共産主義者が潜り込んで来るのを摘発する係だ。スパイを摘発する spymaster だ。原爆づくりの真ん中に共産主義者を入れるなとか、わあわあ言っていた。

ボリス・パッシュ

このグローヴスとオッペンハイマーが初期の爆破実験の爆発の中心地の跡地で、立って2人で話しているシーンの写真が今もある。このグローヴスも一応理科系だ。だから工兵部隊の大将だ。戦後は、工兵の軍隊 military engineerは、戦争が終わって仕事がなくなったから、アメリカ全土に国道をつくって回った。ナショナル・ハイウエイを作った。それが彼らの大きな仕事だった。立派な大きなハイウエーをアメリカ全土にずっとつくって回った。

このグローヴスを、マット・デイモン(Matt Damon、1970年-、53歳)が演じていた。いかにもアメリカのでぶのおじさんみたいな感じでうまかったと思うけど、あれでは賞はもらえないな。いい脇役になっている。

グローヴィスを演じるマット・デイモン

最後に、もうロスアラモス研究所を閉めるとなって。研究所の幹部たちが100人ぐらい、足を踏みならして集会所で集まって、日本に核兵器を落としたと、広島と長崎に落としたことのお祝いをしていた。そこで所長のオッペンハイマーが、何か言ったか、私は聞き損じた。よく聞き取れなかった。「ドイツにも落としたかった」とはっきり言った。みんなで自部たちの仕事(任務)に感激していた。

しかし、そのとき、ディヴィッド・ヒルは外に出てゲーゲー吐いていた。あと外で抱き合って泣いている夫婦もいた、若い男女が。だから原爆反対派がいたということだ。ただ反対したら首ですからね。アメリカははっきりしている。反対したらもう、出てゆけ、いなくなれです。給料ももうもらえなくなるわけだ。

始めから4つの研究所から出来ていた。何で「マンハッタン計画」かというと、恐らくドイツや日本をごまかすために。マンハッタンというとニューヨークのことですから、関係ないんです、ニューヨークは。

1つは、シカゴ大学にあった。今も有る。シカゴ大学のフットボール・フィールドで、最初の小さな核実験をやった。一番初期の実験だ。そこから2.テネシー州のオークリッジ研究所かな。それと戦後は、3.カリフォルニアのローレンス・リバモア研究所。それと、やっぱり4.カリフォルニア大学バークレー校 ですね。この4つで研究していたのを統合して、ニューメキシコ州の砂漠の中に、インディアン居留地のところに、ロスアラモス国立研究所をつくって、今もここに2万5000人も職員がいるようだ。大規模な研究施設です。    (つづく)

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