「90」 「サブプライム危機から世界恐慌へ」(25) 記念すべき”2007年8月17日崩れ”のお祝いとなる一周年である。当時の8月の記事の残りを、「58」番(初回)から「65」番((7)までと重ならないものを載せる。
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●「不動産投信、海外投資家が売り越し・サブプライム余波」
日経新聞 2007年8月24日
国内の不動産投資信託(REIT)市場が、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の余波を受けている。8月に入り、資金回収に動いた海外投資家が保有REITの売却を加速。東証REIT指数は直近の高値を付けた5月末から3割下落した。ただ急激な調整で分配金利回りの平均は3%台を回復。足元では利回り水準に着目した投資家の押し目買いが入っているようだ。
海外投資家は昨年からREIT相場のけん引役だった。だが春先からくすぶり始めたサブプライム問題などを背景に、6月は1年ぶりに売り越し(375億円)に転じ、7月も202億円の売り越しだった。8月に入ってからも、「海外投資家が日本のREITを手じまい売りする動きが続いている」(国内証券)とみられる。
●「 仏BNPパリバ、3ファンド凍結解除へ・サブプライム関連」
日経新聞 2007年8月24日
【パリ=安藤淳】仏銀最大手BNPパリバは23日、今月7日に実施した傘下の3つのファンドの凍結を28日以降、順次解除すると発表した。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)焦げ付きをきっかけに市場が混乱したのをきっかけに凍結。その後、市場が落ち着きを取り戻し、ファンドの資産価値を適正に評価する「諸条件が整った」としている。
BNPパリバABSユリボー、BNPパリバABSエオニアの2つのファンドは日本時間28日午後8時に凍結を解除する。残るパーベスト・ダイナミックABSは同30日午後10時に解除する。凍結した7日時点のファンドの資産総額は約16億ユーロ(約2500億円)とみられる。
BNPパリバはファンドの「資産価値を計算できる新しい手法」を確立したと説明。市場の状況を考慮し、同手法に基づく評価と応募、償還の再開を決めたとしている。7日以降、ファンドの資産価値はBNPパリバABSユリボーが2―3%、BNPパリバABSエオニアは2.5―3.5%、パーベスト・ダイナミックABSは4―5%下がったという。
● 「米上院銀行委員長、FRB議長らと会談へ 」
ttp://www.nikkei.co.jp/news/main/20070821AT2
M2100V21082007.html
日経新聞 2007年8月21日
【ワシントン=小竹洋之】 米上院のドッド銀行住宅都市委員長(民主党)は20日、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長、ポールソン財務長官と21日に会談することを明らかにした。
サブプライム問題を発端とする金融不安への対応を協議する。同委員長は市場の動揺や信用収縮の広がりに歯止めをかけるため、一段の政策努力を要請する見通しだ。
来年の次期大統領選に名乗りを上げているドッド委員長は19日、民主党の候補者8人による討論会で、FRBの資金供給と本格的な利下げが必要だと訴えた。住宅ローンの貸し手の規制や借り手の保護も強化すべきだと主張しており、FRB議長に総合的な対策を要請する可能性がある。
● 「日銀、利上げ見送りを決定」
日経新聞 2007年8月23日
ttp://www.nikkei.co.jp/news/main/20070823
AT2C2300L23082007.html
日銀は23日開いた金融政策決定会合で、政策金利の引き上げを見送り、 現状維持を決めた。誘導対象である無担保コール翌日物金利を年0.5%前後 に据え置いた。金融・資本市場が不安定な状態になっており、実体経済への影響を見極める必要があると判断したとみられる。 正副総裁を含む9人の政策委員のうち、賛成が8、反対が1だった。
●「米住宅ローン会社、破綻・解雇相次ぐ」
日経新聞 2007年8月23日
【ニューヨーク=財満大介】米住宅ローン会社が次々と経営破綻やリストラに追い込まれている。今年、既に約90社が新規貸し出しの停止や破産を申請、4万人が解雇された。短期の資金調達に頼りすぎ、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題で金融機関が融資を出し渋ると、資金繰りが一気に悪化した。住宅ローン市場が縮小すれば住宅販売をいっそう落ち込ませ、米経済を冷やす悪循環に陥りかねない。
22日には大手証券リーマン・ブラザーズ傘下のローン会社と、独立系のアクレディテッド・ホーム・レンダーズが新規の融資を停止。21日は非上場会社で最大手のファースト・マグナス・ファイナンシャルが破産申請した。
●「仏BNPパリバのモーゲージ債トップトレーダー、交通事故で死亡 」
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=a0OsjjQQ_oVc
2007年8月20日 ブルームバーグ
仏銀最大手BNPパリバでモーゲージ担保証券(MBS)自己勘定取引の責任者だった アンガス・ダンカン氏(48)が18日、米ニューヨーク州ラインベックの近くを自転車で友人宅に向かう途中、交通事故で死亡した。 同州ダッチェス郡保安官事務所によると、ダンカン氏はマンハッタンの約 100マイル(約160キロ)北にあるクリントンで 交差点を横切ろうとした際、乗用車にはねられた。
ダンカン氏は2004年4月、モーゲージ債の自己勘定取引のトレーダーとしてBNPパリバに入行。その後、マネジング ディレクターに昇格した。ダンカン氏を採用したBNPのマネジングディレクター、ズビグニュー・ライザク氏は、ダンカン氏 には18年のモーゲージ債トレーディング経験があり、洞察力に優れ、落ち着いた物腰の貴重な人材だったと述べた。 ダンカン氏はドイツ銀行(ニューヨーク)にも6年勤務した経歴があり、MBS自己勘定トレーディング責任者を務めた。
●「サブプライム関連証券921億ドル相当、格下げ方向で見直し-フィッチ」
Fitch to Review $92.1 Billion of Subprime Securities
2007年8月21日 ブルームバーグ
格付け会社のフィッチ・レーティングスは 21日、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローンの関連証券921億ドル(約10兆5180億円)相当について、格下げの可能性があることを示す「アンダー・アナリシス」とした。
フィッチのアナリストらが21日発表した資料によると、見直しの対象はサブプライム関連証券235件。内訳は131件が2005年以前の証券194億ドル相当で、104件が06年の証券727億ドル相当となっている。
フィッチによると、格付けが「BBB」以下の証券42億ドル相当は、格付け変更の可能性が最も高い。 同社は7月、05年と06年のサブプライム関連証券の見直しで、1050億ドル相当の格付けを据え置き、130億ドル相当の格付けを引き下げている。
●「市場の混乱、世界の経済成長を圧迫=IMF筆頭副専務理事 」
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-27511520070822?feedType=RSS
2007年 8月 22日 ロンドン、ロイター
国際通貨基金(IMF)のリプスキー筆頭副専務理事は、最近の世界的な市場の混乱について、世界の経済成長を圧迫することは間違いないとの見方を示すとともに、不透明感が強いため混乱がすぐに終息するとは思えない、と指摘した。
英フィナンシャル・タイムズ紙とのインタビューで述べたもので、新興国市場については、今のところ混乱をうまく乗り切っているが、打撃を受けずに済むと考えるのはあまりに楽観的だ、との認識を示した。同筆頭副専務理事は「グローバル化した世界においては、何らかの影響があるだろう」とした上で、「最も大きな影響を受けている数多くの金融機関は、米国に拠点を置くところではない」と語った。
●「FRB、利下げ実施すれば信認揺らぐ可能性も」
2007年8月21日 シカゴ、ロイター
米連邦準備理事会(FRB)が近く利下げを実施するとすれば、それは、金融市場の救済としてではなく、実体経済が打撃を受けることに対する先制措置として行われる可能性が高い。
ただ、たとえそうだとしても、利下げが実施されれば、米経済のかじ取りを担うインフレファイターとしてのバーナンキFRB議長の信認が新たに問われることとなるだろう。世界的な流動性の問題が過去10年間で最悪の状況となるなか、FRBはこれに対応するため利下げを近く実施するとみられている。金融市場からの圧力がかかるなか、バーナンキ議長は21日、米上院銀行住宅都市委員会のドッド委員長(民主党、コネチカット州)と会談した。
バークレイズ・バンクのストラテジストは「彼(ドッド委員長)は、FRBに圧力をかけたり、連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定に口出しすることはしたくないと強調したが、発言内容や会談を予定していたこと自体からFOMCがある程度の政治的圧力に直面していることは明らかだ」と語った。
米サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅ローン)に絡んだ損失により打撃を受けた銀行やファンドがここ数週間、世界各国で相次いでおり、世界の金融市場では過去10年間で最も深刻な信用収縮の問題が生じている。
FRBは17日、公定歩合を0.50%ポイント引き下げ5.75%とした。また、公開市場操作を通じて、過去1週間で約1000億ドルの資金を銀行システムに供給した。しかしFRBは17日の公定歩合引き下げ後に声明を発表し、8月7日のFOMC後の声明とは異なる新たな政策スタンスを示し、政策金利の引き下げに向けた基礎固めを行った。
FRBは「金融市場の状況は悪化しており、信用状況のタイト化や不透明性の高まりが、先行きの経済成長を抑制する可能性がある。成長への下方リスクが目に見えて(appreciably)高まった」としている。これを受けて、FRBが金融緩和の方向に政策バイアスをシフトし、すぐにでも利下げを実施する可能性があるとの見方が広まった。
スタイフェル・ニコラウス・キャピタルの上場株式トレーディング部門マネジングディレクター、アンジェラ・マータ氏は「(FRBの)狙いは、市場にポジティブな心理を与え落ち着かせることだ。その点については(今のところ)成功したと言えるだろう」と述べた。FRBウォッチャーは、FRBが、状況を「監視(monitor)」していると言明したことは、利下げを保証したも同然だとみている。
BNPパリバのエコノミスト、リチャード・アイリー氏は、FRBのこの文言について「最近において使用されたケースはたったの2回で、どちらの場合もFOMCの場以外での利下げをシグナルしていた」と指摘。「この文言の使用は、FOMC以外で利下げを実施する可能性が大いにあるというシグナルを市場に送ることが明らかに狙いとなっている」と語った。
<利下げか据え置きか>
しかし、ノーベル経済学賞受賞者のゲリー・ベッカー米シカゴ大学教授は、FOMCにとって最善の策は、外部からの圧力を振り払い、雇用やインフレ、国内総生産(GDP)に関する実際のニュースを待つことだと指摘する。
ただ、一方では、クレジット市場の悪化を踏まえると、「政策当局者は、経済への影響に関する明確な証拠を待っている余裕はない」(FTNフィナンシャルのチーフエコノミスト、クリス・ロウ氏)との声も聞かれる。米短期金利先物市場では、9月18日のFOMCで、もしくはその前に0.50%ポイントの利下げが行われる確率(FFV7)が高い水準で織り込まれている。
<モラルハザード>
FRBが利下げという先制措置をとれば、バーナンキ議長率いるFRBは先任者らと同様、リスクを取り過ぎて失敗した者達の救済に乗り出すという意味で、モラルハザードを引き起こすことになる。一部では、バーナンキ議長はクレジット市場が自律的に立ち直るのを見守るという「愛のむち」的アプローチの方が望ましいと考えるのではないか、との見方も出ている。
ベッカー教授は「リスクの高い資産への過剰投資の結果、財務状況が悪化しているようなヘッジファンドやその他の金融機関は、自らの過ちの代償を支払うべきだ」との見解を示した。また、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの首席グローバル通貨ストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は、9月の利下げは決定したわけではない、と指摘している。
● 「ヘッジファンドの破たん、例年上回る記録的な水準に」
2007年8月17日 ボストン、ロイター
複数の市場関係者によると、今年は、例年を上回る記録的な数のヘッジファンドが閉鎖に追い込まれるとみられている。ヘッジファンド業界では例年、何百というファンドや運用担当者が静かに姿を消すが、今年は、サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題に端を発した市場の混乱で、例年にも増してファンドの閉鎖や運用担当者の退社が相次ぐとみられている。
今年はベアー・スターンズ傘下の著名ファンド2本や、ハーバード・マネジメントの元資金運用担当者が設立したソーウッド・キャピタルが破たん。ゴールドマン・サックスも傘下のファンドに30億ドルの資金を注入した。
これ以外にも多数のヘッジファンドが巨額の損失を抱えているといわれており、市場では、今後数週間以内にさらに損失を明らかにするファンドがあらわれるとの見方が多い。複数のヘッジファンドに投資しているミレニアム・ウェーブ・アドバイザーズのジョン・モールディン氏は「今年は、問題ファンドの数という意味では、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が破たんした98年以来、最悪の年になりそうだ」と指摘。
複数の専門家によると、現在ヘッジファンドの閉鎖率は年間8%前後だが、閉鎖率は来年初めまでに2倍近くに上昇する可能性がある。現在、世界全体で9800本のヘッジファンドがあるといわれているが、5年以内にその3分の1が消滅するとの予想もある。
投資銀行モルガン・ジョセフのマネジングディレクター、ランディー・ランパート氏は「ヘッジファンド業界は、これまで右肩上がりで拡大してきたので、今後ある程度の調整が予想される。中小のファンドは苦戦を強いられるだろう」と述べた。
こうしたヘッジファンドの苦境を背景に、投資家の間では、少なくとも一時的に、リスクの再評価やリスク回避の動きが出ている。ヘッジファンドは非公開情報が多いという理由で、解約に動く投資家もいる。金融株に投資するヘッジファンド「セカンド・カーブ・オポチュニティー・インターナショナル」を運用するトム・ブラウン氏は、1─7月の運用成績がマイナス27%になったことを投資家に伝えたという。
ジェームズ・サイモンズ氏が運用する「ルネッサンス・インスティチューショナル・エクイティーズ・ファンド」も、先週末時点で運用成績が「マイナス7%台」となった。
ニューイングランド・ペンション・コンサルタンツのジェーソン・ドブロバイ氏は「ドミノ倒しのような状況になるだろう。別の列のドミノまで倒れることもある。巻き添えになるファンドがたくさん出てくるだろう」と述べた。 追加担保の差し入れや、投資家から解約を求められたヘッジファンドが、株式の売却を余儀なくされ、巨額の損失が発生するケースも出ている。
メイフラワー・アドバイザーズのマネジングパートナー、ローセンス・グレーザー氏は「今後さらに悪いニュースが報じられ、解約請求が増えるだろう」と予想。「ヘッジファンドの解約は、2001年以来最悪となるとみられる。特に、コンピューターだけに頼って売買しているような特殊な戦略のファンドは影響が大きい」と述べた。
アナリストの間では、今後、年金基金がヘッジファンド投資を敬遠するようになるとの見方も浮上している。昨年の年金のヘッジファンド投資は69%増の505億ドルだった。政治家からヘッジファンドの規制を求める声が上がっていることも、ヘッジファンド投資にブレーキをかける原因になる、との指摘もある。
まず最初に犠牲になるとみられるのは、巨額の損失を被った運用資産10億ドル未満の小規模ファンドだ。通常、ヘッジファンドは収入の多くを成功報酬に頼っているため、運用成績がマイナスになれば収入が大幅に減る。「成功報酬をもらえなければ、従業員には自腹で給料を払わなければならない。これは痛い」(ドブロバイ氏)。
モルガン・スタンレーの調べによると、ヘッジファンドの運用資産全体の68%は上位100ファンドが運用しており、中小ファンドが閉鎖しても、業界全体に大きな影響はないとの見方もある。ただ、業界トップの運用成績をあげるのは、大手ではなく中小ファンドという調査結果もあり、こうした中小ファンドが閉鎖に追い込まれれば、業界全体の問題になりかねない。
一方、近年ほどのペースではないが、市場の混乱にもかかわらず、今後も新しいヘッジファンドが次々と誕生するとの見方は多い。新ファンドの設立を検討しているというある運用担当者は「破たん証券を買う機会は豊富にある」と語った。
●「米国債 TB利回りが87年以来最大の下げ-リスク回避鮮明に」
Treasury Bill Yields Fall Most Since 1987 on Money Fund Demand
2007年8月20日 ブルームバーグ
米国債市場は短期証券(TB)の利回りが 1987年以来最大の低下幅を記録。信用収縮を背景に安全性の高い国債に買いが膨らんでいる。
TB利回りは過去5営業日にわたって低下。マネー・マーケット・ファンド(MMF)が投資先を資産担保コマーシャル・ペーパー(CP)から国債へ乗り換えているためだ。3カ月TBの利回りは2001年9月11日の同時多発テロの影響を受けたとき以上の落ち込みだ。
キャッスルオーク・セキュリティーズで債券のセールス・ディレクターを務めるジョン・ジャンセン氏は、「市場は完全に、また完璧に恐怖感に包まれている。市場参加者は多くの住宅ローン証券やそれに関連したあらゆるデリバティブ(金融派生商品)がまったく不透明であり、値付けができない状態に恐怖を抱いている」と語った。
ニューヨーク時間午後4時23分現在、3カ月物TB利回りは前週末比約 0.66ポイント低下して3.09%。ブラックマンデーの翌日1987年10月20日以降で最大の下げ。このときは0.85ポイント低下した。また同時多発テロ後初めて市場が再開された2001年9月13日の下げ幅は39ベーシスポイント(bp、1bp =0.01ポイント)だった。
TB入札
質への投資から米財務省が実施した3カ月物TB(210億ドル)の最高落札利回りは2.85%と、2005年5月16日に記録した2.8%以来の最低を記録した。 投資家はまた、安全だと考えられていたMMFも回避している。MMFがサブプライム(信用力の低い借り手向け)住宅ローンを裏付けにしたリスクの高い債務担保証券(CDO)に投資していたとの懸念が背景だ。
米キャストレトン・パートナーズの債券マネジャー、ヘンリー・スミス氏は、「MMFから撤退し、国債へと投資先の変更を望む顧客がいる」と語り、「市場参加者はTBを購入している。その理由は安全だからだ」と続けた。 ニューズレターのマネー・ファンド・リポートーのコニー・バグビー副編集長によると、機関投資家は8月14日から17日にかけて、国債投資を主にしたMMFへの投資額を397億ドル増やした。
米連邦準備制度の公開市場操作(オペ)を担当するニューヨーク連銀は20 日、今月23日に償還期限を迎える50億ドル相当のTBを同連銀の公開市場操作用の口座「システム・オープン・マーケット・アカウント(SOMA)」を通じて買い取ると発表、準備高の運用に「より柔軟性」をもたせると述べた。
利下げ完全に織り込む
2年債利回りは前週末比10bp低下して4.08%。2年債価格(表面利率 4.625%、2009年7月償還)は1/8上げて101 31/32。 プライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)21社のうち、半数以上は連邦公開市場委員会(FOMC)が来月の次回会合までのフェデラルファンド(FF)金利誘導目標引き下げを見込んでいる。
金利先物市場動向によるとトレーダーは、9月18日のFOMCまでの利下げを完全に織り込んでいる。このうち70%が現在の5.25%から4.75%への引き下げを見込んでおり、残る30%は5%への利下げを予想している。
●「NY連銀:公開オペで380億ドル供給、9.11同時テロ対応に迫る 」
Fed Adds $38 Bln in Funds, Most Since September 2001
2007年8月10日 ブルームバーグ
米連邦準備制度の公開市場操作を担当するニューヨーク連銀は10日、3回のレポを通じ、金融システムに合計380億ドル(約4兆4950億円)の資金を供給した。供給規模は対米同時多発テロが起きた2001年9月以来で最大。サブプライム(信用力の低い借り手向け)住宅ローン担保債の破たんでゆれる市中銀行の現金需要に対応した。
ニューヨーク連銀は、サブプライム問題を発火点とする市場の動揺を抑えるため、まずはレポ対象担保を住宅ローン担保証券(MBS)に限定して190 億ドルを供給。その後、MBSと機関債、米国債を担保として160億ドルを追供給した後、午後に入りこの日3度目のレポで30億ドルを追加供給した。サブプライム問題が世界のクレジット市場に波及し、短期金利が上昇し、株価が下げている。ニューヨーク連銀は9日には、4月以来最大規模の合計240億ドルを金融システムに供給した。
ICAPによると、フェデラルファンド(FF)金利はこの日、2001年1月以来の高水準となる6%で取引を開始していたが、ニューヨーク連銀の2度のオペを経て、連邦公開市場委員会(FOMC)の指令に基づく誘導目標 5.25%に低下した。
ストーン&マッカーシー・リサーチ(ニュージャージー州スキルマン)のプリンシパル、ウォード・マッカーシー氏は、「FRBは非常に積極的な姿勢をみせており、確実に金融市場の流動性を十分な水準に上げようとしている」と述べ、「うまく行ったようだ」と評価した。
9・11
2001年9月11日の対米同時多発テロからの1週間、ニューヨーク連銀は1日平均にして753億ドルの資金を供給した。これまでの最高は同年9月 14日の812億5000万ドル。 連銀は今年に入り前日まで、1日平均90億ドルの資金を市場に供給してきた。 10日の米金融市場では、レポを受けて米国債相場が伸び悩んだ。株価は世界的に下落している。
FRB声明
米連邦準備制度理事会(FRB)はオペ実施後に声明を発表し、「異例の規模の資金需要」に見舞われている銀行もあると指摘。公定歩合による連銀窓口貸し出しも通常通り実施しているとした。
メリルリンチが9日に発表したリポートによると、トレーダーの間では来週にも緊急連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、利下げが決定されるとの観測が一部で流れている。 またJPモルガンはこの日のリポートで、今月中の利下げについて「ありそうなことだ」と指摘した。
一方、クレディ・スイス・グループの金利戦略責任者、ドミニク・コンスタム氏は、「本日の公開市場操作で8月利下げの可能性は低下した」と語る。「FRBは何とか利下げをせずに流動性の問題を解消しようと懸命だ」と付け加えた。
●「サブプライム危機は、米国よりも英国が深刻である-M・リン」
(マシュー・リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
U.K.'s Subprime Crisis May Be Worse Than U.S.'s: Matthew Lynn
2007年8月8日 ブルームバーグ
信用力の低い個人向けのサブプライム住宅ローンの危機が金融市場に与える打撃については、誰もが知るところとなった。世界の株式相場が打撃を被っているのは米国の住宅ローン問題への懸念が理由だ。
次はどの国がこの問題に見舞われるのだろう?英国でも米国と同様の熱狂的な不動産バブルが発生している。不動産評価が水増しされ、融資基準が緩和された結果、英経済は依然として健全でも、返済の延滞は急増し始めている。英国はサブプライム危機に直面しているだけではなく、米国よりもはるかに深刻な危機に陥りかねない。
英国の負債と住宅ローンの延滞に関する最新統計は確かに、ぞっとさせられるものだ。ロンドンのコンサルティング会社キャピタル・エコノミクスは投資家向けリポートで、家計は「住宅ローンに関しては一段と苦境に陥っており」、「金利上昇の影響が今後完全に表れてくると、住宅ローンの延滞はさらに増加する公算が大きく、無担保の不良債権が再び増加する可能性がある」と分析した。
返済を継続できずに差し押さえを受けている住宅の数に、問題の前兆が見える。英国住宅金融貸付組合(CML)によると、今年1-6月期に金融機関が抵当流れ処分にした物件は1万4000件と、前年同期より3割増えた。
借金多い英国人
延滞件数もいい状況とは言えず、全体の1%に当たる推定12万5100件の返済が遅れている(CMLのデータ)。状況が改善されなければ、数カ月後にこうしたローンの対象となる住宅は差し押さえを受ける。英国の負債状況をより広範囲で見ても、慰めにはならない。英国立経済社会研究所(NIESR)のデータによると、個人所得に対する家計の負債の比率は英国が1.62と、米国の1.42や日本の1.36、ドイツの1.09を上回る。
英国も米国と同じ規模のサブプライム危機に直面している。英国で住宅ローンを申し込めば分かるが、銀行は多くの質問もせずに融資を決定する。英金融サービス機構(FSA)は先月、サブプライムセクターでの無謀な融資を批判し、「負担しきれない住宅ローンを承認する結果」をもたらしていると指摘した。
収入証明なし
英国の住宅ローンは、「プライム」と「サブプライム」をきちんと分類できない。大手金融機関の大半は、所得証明も求めずにローンを提供している。返済不履行の履歴のない「プライム」とされる借り手の多くは、返済が困難になるほどの住宅ローンを受ける可能性が高い。英国のサブプライム危機は米国よりもはるかに厄介になり得る。理由はこうだ。
まず、借り手がローンを背負えなくなる兆候が鮮明になっているにもかかわらず、住宅価格の高騰が持続していることだ。英住宅連盟が今週示した予測によると、国内住宅価格は今後5年で40%上昇し、平均価格は2012年までに 30万2400ポンド(約7200万円)に達する見通し。英国の平均住宅価格はすでに、平均所得の11倍となっており、この数字は上昇が続いている。
次は金利だ。米国の金利はピークに達して、間もなく低下するかもしれないが、英国ではそんなシナリオは描けない。イングランド銀行は少なくともあと1回利上げを実施し、政策金利を6%に引き上げる見込みだ。住宅価格や物価全般に利上げの影響が出てこなければ、金利は引き続き上昇する可能性がある。すでに返済に困窮する借り手にとっては、救いにならない。
住宅市場のサブプライム危機を終息させるには、2つの自動調整メカニズムが必要だろう。一つは住宅価格が静かに下落して不動産が買いやすくなるとともに、ローンの規模が縮小することだ。もう一つは、金利が安定または低下することでローンの返済を継続しやすくなることだ。
ただ、いずれも英国には当てはまりそうにない。金利は上昇し、住宅価格も上がっている。その結果、数千世帯が不安定な状況に置かれ、ローンを提供した銀行も同様の状況にある(こうしたローンを購入した投資家は言うまでもない)。
ただ立ち去るのみ
不動産価格が上昇している間は、誰もが安泰だろう。住宅価格がローン残高よりも高く評価されていれば、絶対に手放さないだろう。困った事態になれば、住宅を売ることができるし、ローンを返済してもっと安いところに引っ越すことも可能だ。
しかし、米国で露呈したように、住宅価格が下落し始めれば、その計算は成り立たなくなる。問題が生じた場合に物件を売却してローンを返すことは不可能であり、返済の継続を促す要因はほとんどない。ただ身を引いて、鍵と問題を住宅ローン会社に託すしかないのではないか。 英国はまだ、そうした状況には至っていない。だが、そうなった場合、米国よりもひどい混乱が生じかねない。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝
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