「87」 「サブプライム危機から世界恐慌へ」(22) 2008年4月の新聞記事を載せます。 2008.9.13

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副島隆彦です。 どんどん続けて載せます。 2008年4月分の金融・経済の新聞記事です。 副島隆彦拝

(転載貼り付け始め)


●「再び市場混乱の引き金に? 燻(くすぶ)る米国金融機関の「問題資産」」

2008年04月30日   週刊ダイヤモンド編集部  竹田孝洋

 市場関係者が固唾をのんで見守っていたメリルリンチ、シティグループの2008年第1四半期決算。またも巨額のサブプライム損失を計上したが、主要国の株価は無風だった。FRB(米連邦準備制度理事会)がなりふり構わずベア・スターンズ救済に踏み切った(2008年4月17日) ことで、市場に「大手金融機関が危機に瀕しても当局が救済する。金融システム不安が起きる可能性は小さくなった」(伴豊・新光証券チーフクレジットアナリスト)という安堵感が広がったためだ。

 だが、安心するのは早い。確かに、金融システム不安の噴出は遠のいたようでも、個々の金融機関の損失計上が収まったわけではないからだ。先日のG7で、金融機関は今後100日以内に複雑で流動性のない商品について情報開示をするよう求められた。流動性のない商品といえば、レベル3資産がまさに該当する。米系金融機関がSEC(米証券取引委員会)への報告書で開示しているもので、これこそが今後も燻り続ける火種だ。

 主要金融機関のレベル3の対総資産比率を見てみる。07年12月末でシティが6.1%(自己資本比率5.2%)、メリルが4.1%(同3.1%)、08年2月末でゴールドマン・サックスが8.1%(同3.6%)、モルガン・スタンレーが7.2%(同3.1%)。JPモルガン・チェースは決算発表の席上で「3月末の比率が約6%」(同7.6%)と発表した。自己資本比率を上回る金融機関もあり、その存在がいかに不気味かがわかる。

 さらに注視すべきはその中身だ。たとえば、ゴールドマン・サックスのレベル3は、「商業用不動産ローンとその証券化商品が約15%を占める」(藤岡宏明・大和証券SMBC金融市場調査部次長)。

 4月8日に発表されたIMF(国際通貨基金)の試算では、商業用不動産の証券化商品は2割強の損失を抱えているとされた。が、商業用不動産の下落はこれから本格化する。そのほか、レベル3 にはレバレッジローンなども含まれており、「こちらも景気後退による延滞増加で 価格下落が必至」(石原哲夫・みずほ証券シニアクレジットアナリスト)と予測される。

 金融機関は損失計上の原因となる問題資産を抱えたままだ。「思わぬ巨額損失計上で市場が再び悲観に振れるリスクは残る」(中川隆・大和証券SMBC金融市場調査部次長)。株式市場混乱の恐れは消えてはいない。

●(副島隆彦注記。以下が、M君が言っていた、4月末市場で起きた市場の「狼狽(ろうばい)買い」だろう。)

「金融混乱一服の背景にヘッジファンドのクレジット買い、「逆張り」ポジションで大勝負挑む」

2008年4月24日 ロイター、東京、基太村真司記者

 4月に入ってから各国株価やドル相場が下げ止まるなど金融市場は表面上、一時の混乱から落ち着きを取り戻している。各国当局の相次ぐ利下げや資金供給策が少しずつ効果を発揮し始めたことが一因とされるが、市場混乱の中でも好成績をあげてきた一部のヘッジファンドが水面下で、大きく値下がりしている商品の反発を見込んで買いを入れる「逆張り」に動いていることも大きな要因となっている。多くの関係者が混乱は収束していないとの見方を示す中、大勝負に出たヘッジファンドの行方を、市場関係者は固唾(かたず)を飲んで見守っている。

 「状況が好転した訳でもなんでもない。いくつかの大手ヘッジファンドが、タダみたいな値段になった債務担保証券(CDO)などのクレジット商品を買いあさっているだけだ」。ヘッジファンドに詳しいある金融関係者は、市場混乱が一服となった背景をこう解説する。

 ヘッジファンド全般は最近の金融市場の混乱による運用成績の悪化に加え、取引相手である大手金融機関の業績不振による信用枠縮小などを背景に、戦績は苦戦している。モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)の調べでも、3月のヘッジファンド運用成績はマイナス2.86%と世界の主要な株式・債券市場のパフォーマンスを下回った。

 しかし、そうした環境でも当然、すべてのファンドが損失を抱えたわけではない。急騰する商品相場の買いや急落したクレジット商品の売り仕掛けで、好成績を挙げた敏腕ファンドも少なくないという。欧州を拠点とし「業界内で名前を知らない者はいない」(業界関係者)ある大手ヘッジファンドも、3月下旬以降は「クレジット商品に『逆張り』的に買いを入れ続けている」(先の金融関係者)。

 各国の相次ぐ利下げや資金供給策が「限定的ではあるが、市場安定に一定の効果は生み出した」(在京外銀の資金担当部長)ことで、こうした「逆張り」の動きがさらに、相場の下げ止まりにつながりやすくなったとの見方は少なくない。金融混乱の震源地ともいえるクレジット市場の値動きが落ち着き始めたことで、金融市場で強まっていた株売りや債券買い、ドル売りといった今までの流れを逆転させる動きも増幅し始めている。

 あるメガバンクの為替担当責任者も「状況をよく考えたら(株買いやドル買いが)おかしいのは理解しているが、実際にキャッシュリッチな連中から買いが入って下げ止まり、値動きが鈍ることでポジション解消に伴う(株やドルの)買い戻しが入りやすくなっている。その動きをディーラーとして見送るわけにはいかない」と、目立ち始めた「逆張り」に追随せざるを得ない実情を明かす。

 ヘッジファンド向けの監査・税務サービスなどを手掛けるロススタイン・カスが今月半ばに米国のヘッジファンドを対象に行った調査では、9割以上のファンドマネジャーが今年、業界に大量の新規資金が流入すると回答した。「ヘッジファンドは仮にひとつが清算しても『雨後のたけのこ』のように次々に出てくる。名前を変えながら生き残っているファンドもある。ヘッジファンドは業界全てがやられて厳しいというイメージが先行しているが、さすがに強気だ」(先の業界関係者)。

  逆張り勝負に出たヘッジファンドの読み通り事態が収束に向かうか、順張りで売り込んだ向きがヘッジファンドをなぎ倒すか――。「時間の経過とともに状況が好転すれば彼らの勝ちだが、そう簡単に事態は解決しないだろう。かといって売り仕掛けも機能しなくなってきた。最近の相場は久しぶりに、非常に難しい。正直に言ってまったく見通せない」。ある外銀のチーフディーラーも、こう着相場の中で試行錯誤を繰り返しつつ、ヘッジファンドの仕掛けた勝負の行方を見守っている。


●「銀行の自己資本、積み増しを・バーゼル委」

日経新聞 2008年4月17日

 日米欧の銀行監督当局で構成するバーゼル銀行監督委員会は、16日、7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で合意した監督強化策に沿い、銀行の健全性を示す自己資本比率の計算方法を厳しくすると発表した。 世界の金融機関が多額の損失を負った債務担保証券(CDO)など「二次証券化商品」を抱える銀行に対し、自己資本を厚く積むようルールを変える。

 金融庁はバーゼル委が年内に出す結論を受けて、自己資本比率規制の告示を改正し、来年以降の適用を目指す。バーゼル委は米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)に端を発した市場混乱に関連し、欧米主要行が大規模な損失を計上する原因となった「二次証券化商品」に問題があると指摘した。


●「米メリルの1-3月:赤字、評価損65億ドル-約3,000人削減へ 」

2008年4月17日 ブルームバーグ

 米証券大手メリルリンチが17日発表した 2008年1-3月(第1四半期)決算は、3四半期連続の赤字となった。65億ドル(約6,660億円)を超える評価損と投資銀行の手数料収入40%減が響いた。同社は従業員約3,000人を削減すると発表した。

 第1四半期の純損益は19億6,000万ドル(1株当たり2.19ドル)の赤字。前年同期は21億6,000万ドル(同2.26ドル)の黒字だった。ブルームバーグがまとめたアナリスト6人の予想平均では、17億2,000万ドルの赤字が予想されていた。メリル株は一時、3.7%安となった。

● 2008年4月18日

[連鎖する大暴落 静かに恐慌化する世界]
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4198625093.html

 相場はCMEに操られている。何れ そこから決壊が起こる。CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)は 110年の伝統を持っている。先物取引としては、株価指数と通貨(為替)先物を得意とする。この2つは金融先物市場で、今や世界の金融投機(スペキュレーション)の王者である。危険な金融博打は全てここで行なわれていると言っても過言ではない。

 CMEは、昨年2007年7月には、CBOT(シーボット)という、シカゴで170年の伝統を誇った、穀物と豚肉などの現物の取引所を、競争で打ち負かして吸収合併してしまった。 更に、ニューヨークにも手を伸ばして、今やNYMEXにも合併の王手をかけている。

(注:NYMEXは既に今年の3月18日に買収済み。) NYMEXは、商品(コモディティ、鉱物類、基本物資)のとりわけ原油先物の取引所として有名だ。NYMEXは、もうひとつ別のニューヨークのCOMEXという 主に金地金の先物取引で有名だった市場を既に吸収しているので、これで全米のすべての先物取引がCMEの傘下に入ることになる。株式も通貨(為替)も原油も金も穀物・農産物も先物取引はすべてCMEグループが行なうことになる。

  米国外で扱われる「ユーロドル」と呼ばれる米ドルの金利先物取引も開発した。この「ユーロドル」というアメリカ合衆国の外に流れ出している米ドルが今では、米国債(長期金利)や政策金利(FFレート)までをも引きずり回すようになっている。国家(政府)の金融政策(通貨量と金利を決める)さえもレオ・メラメッドが握って実質的に動かそうとしている。

(注:レオ・メラメッドは、CMEをつくった人です。[金融の倫理/福井日記 No.169]
http://blog.goo.ne.jp/motoyama_2006/e/299e93d26
592c528f9141eec4fbc0d60 )

 レオ・メラメッドの唯一の強大な敵は、やはりヨーロッパの先物市場である。ヨーロッパのEUの統一の先物取引所である「ICEフューチャーズ」(ロンドン)が強力にCMEと競争している。石油(原油)や天然ガス、電力の卸売、二酸化炭素の排出権などの先物を扱って成長してきた、欧州勢の先物取引所であるICEフューチャーズが、激しくCMEを追い上げている。ICEフューチャーズは、明らかに欧州ロスチャイルド財閥がアメリカに対抗するためにじっくりと育てて築き上げた先物の取引市場である。


●(時価会計の放棄が、アメリカ国内で始まった。恥も外聞もない。副島隆彦注記。)

「SECからの手紙 」

2008年4月17日 日本経済新聞

 米国の全上場企業の最高財務責任者(CFO)たちに米証券取引委員会(SEC)から手紙が届いた。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題が深刻になるなか、盛られていたのは実質的な時価評価の後退だった。

  手紙が取り上げているのは米財務会計基準審議会(FASB)が二〇〇七年十一月に導入した新会計基準「FAS157」。企業がこれに基づくSEC提出書類(フォーム10-K)を作る際の考え方を示している。 FAS157は有価証券を性質に応じて三つに分類。
流動性が高く時価が測れる レベル1、
参照できる指標がある レベル2、
取引が薄く時価がない レベル3 だ。

 手紙は「広範な有価証券をレベル3に分類できる」 としている。本来レベル2に入るものでも今は市場がゆがんでいるとの解釈だ。そのうえでレベル3について、どういう方法で評価したかのモデルを開示するように求めている。

 例えばサブプライムローンを組み込んだ証券化商品などレベル2の参照価格は、トリプルA格でもとの価格の五〇%程度。それをレベル3と見なし、開示モデルによる評価を公正価格(フェアバリュー)として構わないというわけだ。開示モデルさえしっかりしていれば七〇%と評価することも可能になる。

 これによって金融機関のサブプライム関連損失の抑制効果が見込める。レベル2には債務担保証券(CDO)やLBO(借り入れで資金量を増やした買収)融資などかなりの資産が入る。一部の会計士はレベル2を市場の参照価格を使って厳格評価する姿勢だった。その場合、債務超過に陥る金融機関が出て、連鎖破綻が起きかねなかった。SECは会計士へのけん制も狙ったもようだ。

●2008年4月18日

 ロンドン・タイムは、米シティグループの決算発表後に、ドル買いが加速した。シティグループの決算は、「税引き前評価損が ▲60億ドル、純損失が51億ドル、1株当たり損失が1.02ドルとなった」 が、「市場はサプライズな損失拡大がなければ、ネガティブに反応しなくなっている」(LDN邦銀筋)との声も聞かれた。

 他の米企業の決算も発表となるなか、ダウ先物は前日比+150ドル高の1万2808ドルまで上昇した。この動きを受けてドルが急騰した。ドル円は2月29日以来の高値104.25円まで上昇した。 ユーロドルは、「欧州系の銀行経由でユーロポンドの売りが断続的に入った」(外銀筋)こともあり、4月15日以来の安値である 1.5756ドル まで急落。

 この動きのなかでユーロ円は円売りで反応。年初来高値を164.45円まで更新する動きとなった。 いったんドル買いの動きは落ち着いている。 「公的資金の売りがあるとの思惑があった102.60円」(信託筋) 近辺からスタートし、各節目を抜けてきたドル円のショートカバーが一服した感もある。

 上昇の加速に、ドル買いでついていけた短期筋がいたとしても、そろそろ利食いが入ってもおかしくはないところだ。ここからは株式なども含め、米金融市場の動きを眺めながら、ポジション調整となりそうだ。


●「金融機関首脳:信用収縮ほぼ終息と相次ぎ発言-投資家はほぼ信用せず 」
Bank Chiefs See End for Woes Investors Can't Forget

2008年4月16日 ブルームバーグ

 米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)と米証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスのリチャード・フルドCEOは今週、信用収縮が終息に向かっているとの認識を示した。同業他社のトップからも先週、同様の発言が相次いだ。しかし、投資家は納得していない。

 ダイモンCEOは16日、信用危機は「恐らく75-80%」終わったと述べ、フルドCEOは15日、信用収縮の「最悪期は過ぎた」と株主に対して語った。先週には、ゴールドマン・サックス・グループのロイド・ブランクフェインCEOが、危機は「始まりよりは終わりに近い」とし、モルガン・スタンレーのジョン・マックCEOはサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン危機は野球の試合に例えれば8回か「恐らく9回の表」との認識を示した。

 信用市場の混乱が抑えられた、あるいは終息に近づいているとの楽観的な見通しを主要金融機関のトップが示したのは今回が初めてではない。しかも過去の見方は間違っていた。昨年末時点で約970億ドル(約9兆9000億円)の関連評価損は今年2月末までに1810億ドルに拡大。世界の主要金融機関の資産評価損・信用損失は2007年初めからこれまでに2550億ドルに達している。

 イースタン・インベストメント・アドバイザーズ(ボストン)のマネジングディレクター、ローズ・グラント氏は株主が「状況は良好に戻ったと信じ始めるにはさらなる証拠」が必要だと指摘。金融機関が評価損や信用損失の規模を完全に明らかにするまでは「投資家は様子見を決め込むだろう」と話す。

 今週は金融機関の損失規模が一層明らかになる。資産規模で米銀3位のJPモルガンが16日発表した2008年1-3月(第1四半期)決算は、前年同期比 50%減益。評価損と貸倒引当金で51億ドルを計上した。米証券最大手メリルリンチは17日に、米銀最大手シティグループは18日にそれぞれ決算を発表する。

● (副島隆彦注記。「ECBが、必要資金をすべて供給してくれるので、欧州の銀行は安泰」という皮肉と冗談が流行っている、という記事。その際に、ECBは、劣悪化している“ジャンク債“である住宅ローン抵当債券(モーゲッジ債券、住宅ローン証券化商品)を担保としてどんどん引き受けてそれで緊急の融資をしてくれる。そういうことだ。

 ということは、今後、このモーゲッジ債券が紙くず化したときに、ECBが、デフォールトする、すなわち国家破産する、ということになる。国家は破産しないのだろうか、という問題になる。副島隆彦記)

「欧州、公的支援で“安定”・サブプライム危機」

2008年4月23日 ブルームバーグ

 米金融界が信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の対応に追われる一方、欧州では一部の銀行で巨額損失が発覚しても市場全体は何とか小康状態を保っている。欧州中央銀行(ECB)や各国政府による実質的な「公的支援」が危機を抑え込んでいるためだ。ただ、専門家の間では、問題の先送りにつながるとの指摘も出ている。

 スペイン最大の住宅金融会社はECB――。金融関係者の間でこんな冗談がはやっている。同国の民間銀が住宅ローン証券などを担保にECBからの借り入れを急増させているのだ。証券化市場で銀行が調達できなくなった分をECBが肩代わりしている格好。昨年12月だけでこの方法による資金供給額は440億ユーロ(約6兆7000億円)と通常の2倍強に膨らんだ。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

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