「14」 続けて拙本「老人税」の批評文を載せます。

副島隆彦です。 「13」に続けて同じ、なわ・ふみひと氏の文を載せます。 副島隆彦拝

(転載貼り付け始め)

「老人税」

副島 隆彦・著  祥伝社  2004年9月刊

なわ・ふみひと筆

 ロックフェラーといえばアメリカを支配する黒幕と言われていますが、ヨーロッパを支配しているのはロスチャイルド一族で、両者は対立・競争関係にあるという人がいます。また「陰の世界政府」と呼ばれ、世界を陰で動かしている勢力はロスチャイルドやロックフェラーをも操ることのできる大きな力をもつ組織だという説もあります。

 世界はそのような見えない力によって支配されているようです。政治も経済も食糧も宗教も、すべてそのような組織のコントロール下にあるのだとか。夢のない話ですが、現実にロックフェラー一族はアメリカでは強大な力を持っています。ロックフェラー一族を徹底的に批判し、糾弾していたマクドナルドという上院議員が、旧ソ連によって爆破された大韓航空機に乗っていたのは偶然とは言えません。アメリカではロックフェラー一族を批判することはタブーなのです。

 副島氏はこの本の中で痛快にロックフェラー一族の秘密を暴露していますが、それも日本の中だから言えることでしょう。でも、知ってて損のない話ではあります。 (なわ・ふみひと)

5章 2005年春、世界経済の変動が始まる
      ――日米の国債暴落、そしてドルの大暴落

 なぜFRBはFFレートを引き上げたのか

●アメリカの実質的な公定歩合(政策金利)であるFFレートが上げに転じた。2004年7月1日に年率1.25%に引き上げられた。FRB(連邦準備制度理事会)のアラン・グリーンスパン議長が、いやいやながら金利を引き上げ始めた。(中略)

 アメリカが金利を引き上げ始めたということは、金融が引き締められるということである。アメリカは明らかに、金融引き締めの舵を取った。これでアメリカの土地・住宅バブルがもうすぐはじけ飛ぶ。アメリカはいま土地・住宅価格急騰の最後の場面にある。日本の1988~1989年の狂乱地価と同じだ。

●もしアメリカの財務省やFRBの、景気と金融の舵取りが失敗したら、そのときアメリカは激しい経済変動に見舞われる。それは、ハイパー・インフレーションがアメリカに襲いかかるということである。その下地として、単年度で年間5000億ドルに達しようとする財政赤字と、同じく年間5000億ドルを超えた貿易赤字の2つがある。

 アメリカにやがて信用不安が起きる。この信用不安によって、アメリカの連邦政府が発行している米国債が下落することが予想される。このときアメリカには激しいインフレが起きる。それが日本に波及して、日本の国債も厳しい局面を迎えるだろう。

 長期金利上昇が意味するもの

●長期金利は短期金利とは違って、日銀や財務省が政策的に誘導したり、人為的に操作することはできない。長期金利は1929年のニューヨーク発の世界大恐慌の時に生まれた。30年ものの米国債もあるが、指標となるのは10年ものの国債である。

●現在の日本の10年もの国債は、クーポンが年率1.6%と付いている。10年もので毎年1.6%の金利が付くわけである。
 この金利が、アメリカの長期金利の上昇の影響を受けて、日本でも長期金利を上昇させつつある。そのため、もしさらに1%金利が上昇すると、10年ものの日本国債の価格は8円下落する。額面100円と決まっている国債が92円に下落するのである。
 日本の7月時点での長期金利は1.9%まで上がってきた。

●この長期金利が上がりだして、やがて2%を突破し、2.5%、3%という事態になることが予想される。(中略)国債の暴落という、私たちがいちばん恐れていることが、そのうち起きるのである。日本政府もアメリカ政府も、それぞれの国債の暴落ということをものすごく心配しているのである。

 日本の「狂乱地価時代」とそっくりな現在のアメリカ

●グリーンスパン議長としては、本当は利上げはしたくなかったのである。今アメリカ政府が金利を上げていくと、景気が後退するという問題が本当に深刻なのである。しかし、上げざるを得ない。

 この短期金利の操作による誘導金利という考え方は、インフレを警戒してのものである。今、アメリカがインフレとデフレのどちらをより警戒しているかと言えば、インフレである。デフレ(不況)も怖い。それでも背に腹は代えられないので、デフレ(景気の後退、不景気のさらなる深化)よりも、インフレ、とりわけハイパー・インフレーションが襲いかかってくるのが怖いのである。だから金融引き締めの利上げを決断した。

 米大統領は2期目に入るとスキャンダルが起きる

●私は、今度の米大統領選挙はブッシュが勝って再選されると見ている。11月2日の選挙日にはプッシュが勝つだろう。すべては世界中の石油・軍需産業や資源・農業ビジネスまでを牛耳り、ニューヨークの金融財界をも主導しているロックフェラー財閥によって仕組まれている。

 ブッシュは、チェイニー副大統領とポール・ヴォルカー前FRB議長から顎で使われている。だから、この2人の“大親分”であるデイヴィッド・ロックフェラーの哀れな「操り人形」の大統領である。

 誰も書けない、ロックフェラー家内部の跡目争い

●米国、そして世界の政財界を裏側から支配しているデイヴィッド・ロックフェラーは90歳の高齢であり、余命がそれほどない。

 そこでその後継者として、現在ウエスト・ヴァージニア州選出の上院議員であるジェイ・ロックフェラーがロックフェラー家の次の当主として、ニューヨークに移り住む準備をしている。

 この人物は、創業者のロックフェラー1世の正当な嫡男の4代目である。父親のジョン・ダヴィッドソン3世が死去した後、ロックフェラー家の当主は唯一の共和党員だったネルソン、そして現当主のデイヴィッドと、それぞれ子息ではなく弟たちが継いできた。ここらで党首の地位が本家に戻りそうである。

 今年で68歳になるジェイも、本当は大統領になることを欲していたのだが、1992年の大統領選の民主党予備選で、クリントンに負けてしまった。自分の叔父であるデイヴィッド・ロックフェラーがクリントンの方に肩入れしたからだ。このようにロックフェラー家内部で、跡目相続をめぐる本家と分家との争いがある。

  ニューヨークの金融財界を、これからジェイ・ロックフェラーが掌握しようと動いている。それに伴い、前大統領クリントンとの間で「遺恨試合」のようなものが繰り広げられようとしている。ここに、来年から起こるであろう世界最大の権力者の「代替わり」に伴う激動が待ち構えている。

 この(2004年)7月にジョン・エドワーズが、ウエスト・ヴァージニア州に遊説に入っている。エドワーズは民主党の副大統領候補となって、ジョン・ケリー候補のランニング・メイトである。エドワーズはジェイ・ロックフェラーの後押しを受けることになった模様だ。2人で「反クリントン、反デイヴィッド」の誓いのようなものを結んだのだろう。エドワーズは、ジョン・ケリーが11月に負けても、その次に自分の番が来るように動いている。ということは、民主党内でヒラリー・クリントンとぶつかることになる。

 クリントン前大統領の出生の秘密

● そもそも、どうして民主党の上層部は、ジョン・ケリー上院議員のような、本人が勝つ気迫を示さないおかしな人物を候補者に選ばざるを得ないように仕組まれたのか。

 その「張本人」はビル・クリントン前大統領である。クリントンは、4年後の大統領選で、自分の夫人のヒラリー・ロダム・クリントン上院議員を大統領にして、ホワイトハウスに「夫婦そろって」返り咲こうとしている。

 そのため今回は民主党からは大統領が出ないように、初めから負けるように仕組んだのである。なぜクリントン前大統領にこれほどの政治的実力があるのか。私はズバリと真実を書く。ビル・クリントンは、ウィンスロップ・ロックフェラーというロックフェラー一族の人物の「隠し子」だからである。(中略)

 この事実を、私はこの春に実際テキサス州に行って確認してきた。

 クリントンが高校生の時に、ジョン・F・ケネディ大統領と握手したことは有名だ。そのセレモニーの主催者が、他ならぬアーカンソー州知事だった実父のウィンスロップ・ロックフェラーである。米国のメディアはその映像をよく流したが、どういうわけかそばにいた実父の姿は削除されている。

 だから、前大統領が後年、アーカンソー州知事になれたのも、またその後、大統領選に出馬することができたのも、ロックフェラー家と関係の深いハリマン家の援助によるものだ。

 世界経済の激変は、2005年の春から始まる

● グリーンスパン議長が、アメリカの公定歩合に似たFFレートを上げると決めたもう一つの理由は、ヨーロッパの、ヘッジファンドと呼ばれている国際投機筋が、盛んにユーロ建てで金をテコにして米ドルを先物で売り続けているからである。ヨーロッパはドル暴落を狙っている。これに対して反撃を食らわし、ドルの値段を支えるために、グリーンスパン率いるFRBが金利を上げることに決めたのである。(中略)

 ヨーロッパのヘッジファンドは一定の打撃を受けて、現在低迷している。ドルの暴落を仕組んでいたのに、まんまとその動きをグリーンスパンに阻止された。欧州ヘッジファンドは7月から再反撃に出て、ニューヨーク株を売り原油を買うという投機をやっている。原油は1バレル45ドルまで上げた。

● 私の予測では、2005年の春ぐらいから米経済は怪しくなっていくと思う。アメリカは不況に突入していくと思われる。同時に、米ドル札と米国債の刷りすぎという問題があるので、ハイパー・インフレにもなるだろう。

 2005年は、太平洋戦争の終結から60年目である。世界は60年周期で動くのである。これを景気循環の「コンドラチェフの波」という。2005年を皮切りに、この数年で世界経済は大きく変わっていくのである。

 新ドル切り替えでアメリカの預金封鎖が起きる

● 今アメリカ合衆国で、20ドルや50ドル紙幣をどんどん新札に切り替えている。やがて100ドル札も、2005年から切り替わる。日本も示し合わせたように同じことをやっている。

 日本の場合も、偽札の防止のために新札切り替えをやるという嘘みたいなことを平気で言っている。そんなことは日本の場合はほとんどない。アメリカの場合は、北朝鮮とか南米で造られた100ドル紙幣の偽札が流れまくっていて、本当は1割ぐらいが偽札ではないかと言われている。(中略)

 新ドル切り替えで、アメリカでこそ預金封鎖が日本よりも先に起きる。これは私が書いてきたとおりだ。アメリカは巨大な財政赤字と貿易・国際収支赤字を抱えているから、ドーッと崩れるときにはハイパー・インフレーションが襲いかかる。日本の場合はこの先もデフレのままである。

 大きく変わる世界の通貨体制

● 新ドル切り替えが行なわれたあとで、預金封鎖が起きる可能性が高い。そのとき旧札が使えないようにされてしまう。

 そうやって、今の世界通貨体制である修正IMF体制がいったん崩壊し、別の通貨体制へと移行していく。それは「コモディティ・バスケット」と呼ばれる通貨体制である。(中略)
 そのとき、対円でのドルの暴落と、対ユーロでのドルの暴落という事態が想定される。そのとき1ドルは40円ぐらいまで暴落する可能性がある。

●「日本は今後も米国の影響下で生きていけばいい」と言っている人々にはっきり言っておく。経済・金融場面でこの10年、どれほど酷い状況に追い詰められてきたか。

 すでに政府部門と大企業と金持ちと機関投資部門(生保、証券、銀行)を通じて、400兆円ものお金がアメリカに流れ出している。アメリカの国家財政赤字の半分ぐらいを、日本国民の財産がファイナンスしている。

 ほとんどはアメリカの国債を買っているから、対外債権を持っているのと同じことである。この400兆円が半額になって日本に戻ってくるだろう。数年後にアメリカ経済が恐慌入りをして、その時に1ドル=40円とかの「ドル暴落」が起こる可能性が高い。(了)

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

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