「13」 拙本「重税国家 日本の奈落」への書評文を載せます。

副島隆彦です。今日は2006年5月5日です。私の書いた
金融本への書評文を載せます。 「なわ・ふみひと」という人のサイトにあったものです。 副島隆彦拝

(転載貼り付け始め)

「重税国家 日本の奈落」

副島隆彦  祥伝社  2005年9月刊

なわ・ふみひと筆

 この本では、「誰も竹中平蔵大臣には逆らえない。なぜなら、彼のバックにはアメリカのロックフェラーがついているから」という実態が明らかにされています。既に日本長期信用銀行(現・新生銀行)に8兆円もの税金をつぎ込んだあげく、わずか10億円で外資に売り渡した“実績”を持つ竹中大臣です。そこにはアメリカの強力な「支持」と「指示」があったことは明白です。

 それと同じようなことが、今度は日本人の最後の貯金といわれる郵貯・簡保の350兆円でも行なわれようとしています。ところが、その竹中平蔵氏を「郵政民営化担当大臣」に任命するなど大変重用している小泉首相は、9月の総選挙では国民の圧倒的な支持を得て、自民党圧勝劇の立役者となりました。いわば「国を売る」人物たちを、国民が大喝采しているのです。私ならずとも、「この国は滅びるしかない」という気持ちにさせられるのではないでしょうか。

  アメリカから言われるままにわが国の政治が動かされている悲しい実態が、大変よくわかる本です。それでも、わが国は今後さらに悲惨な状況を迎える可能性が大きくなっていますので、この“現実”を直視することが大切だと思います。   (なわ・ふみひと)

 日本の戦後保守勢力は壊されてゆく

  小泉純一郎がなぜ4年前の2001年4月24日に、自民党総裁選で地滑り的な勝利を収めて自民党総裁になり、そのまま首相になったのか。実はあのとき、日本遺族会という「職域」と呼ばれる自民党の集団党員票の50万票が、計画的に動かされたのである。あの頃から仕組まれた策略があったのである。

 「小泉純一郎は自分たちの言うことをよく聞き、言うとおりに動くようだ」ということで、アメリカによって大抜擢されたのである。

 残念なことだが、戦後の日本の歴代首相は、みんなアメリカが選んだのである。アメリカの前もっての推薦や承認がなければ、首相にはなれないようになっている。悲しいことであるがこれが大きな真実である。

  そして首相になったあと、アメリカの言いなりになるにも限度があるということで、「いくら何でもそこまではできない」と言いはじめる首相は、アメリカによって首を斬られる。そしてまた別の人間がアメリカの忠実な家来として新たに選ばれてゆく。これが戦後60年間の日米関係の本当の姿である。

  あのとき、アメリカの日本操り班の責任者たちにしてみれば、「コイズミならば郵政民営化を強行して、われわれに日本の郵便貯金を貢いでくれるだろう」ということで白羽の矢が立てられたのだ。

 日本国内には600兆円の資金しか残っていない

  小泉を支えている青木幹雄と森喜朗は、自分たちがアメリカに潰されたくないから、日本の郵貯・簡保350兆円をアメリカに差し出すことに合意した。しかし、綿貫民輔と亀井静香が筋を貫いて反対に徹した。

  日本の金融資産をめぐる国民の悲劇はこの後も続く。私たちが真剣に警戒して、国民が団結しなければ、国内の資金を奪われ、もっと疲れ切り衰退してゆく。

  国内には、もうあと600兆円(郵貯・簡保の350兆円と、各種の年金で200兆円。この他に正味の民間銀行の資金が50兆円)、これだけしか資金がない。この他には430兆円がアメリカ国債やドル通貨の購入という形で流れ出してしまっている。これはおそらくもう戻ってこない。アメリカは簡単には返さない。

  アメリカの国債やドル通貨の暴落が、いくらなんでも数年後には起こるだろうが、このときこの430兆円は半分の額になる。それでもアメリカは返してくれないだろう。属国・日本が貢いだ金だから、自分たちのものだと思っている。そして、残る郵貯・簡保の350兆円の国内資金が狙われているのである。この大きな流れを止めることは誰にもできない。

 アメリカによる「3つの対日金融攻撃」

  アメリカは、日本からアメリカに強制的に流出されている430兆円を簡単には返さない。もし日本の指導者が「日本政府が保有する米国債のほんの一部を売って日本の財政赤字の穴埋めにしたい」と、一言でも言ったら、この政治家はただちに失脚させられる。新聞、週刊誌から奇妙なスキャンダル攻撃をかけられるだろう。これまでに何十人もの愛国派の政治家が、こうして失脚させられてきたのだ。

  アメリカは、日本に対して3つの面から金融攻撃をかけている。①つは、“ゼロ金利”政策の強要である。それで超低金利どころか日本の公定歩合を実質“ゼロ”にして、それで日銀の金融政策を不可能にした。中央銀行から金利の決定権限を奪い取ることで、日本という国の金融政策の舵取りをできなくさせた。

 日銀の金融政策の権限として、あと残されているのは「通貨供給量の決定」だけである。しかし、この通貨量の決定についても、アメリカが日本財務省を脅して、日銀券(お札)を無茶苦茶な量まで発行させている。そして、財務省が発行する国債を日銀に引き受けさせて大量に買わせ、その資金で米国債を買わせている。アメリカに脅迫されて、日本の財務官僚たちがここまでおかしなことをやっている。

  現金(お札)と国債を刷り散らして、それが世の中に溢れているので、やがてこの日本国債の暴落が起きる。お札の力(信用力)が暴落して、ハイパー・インフレが起きて貨幣価値が半減する。そのような時代がやがてやってくる。その直接の引き金は、アメリカでの米国債(10年ものの米財務省証券)が大暴落するときである。だから、日米同時だろう。

  ②つ目が、為替(対ドル円相場)をつねに110円台のゾーンに固定した。 円の実際の力は、今も1ドル=160円ぐらいしかない。それを110円ぐらいに円高にしておくことで、日本の輸出大企業の利益を低く抑え込んできた。

 ③つ目が、日本政府に巨額の財政赤字を背負い込ませて、放漫財政になるようにし向けた。 小泉政権はひたすらアメリカ(ブッシュ政権)の言いなりになって、今もアメリカの財政赤字を補填するために米国債を買わされ続けている。国内は資金不足に苦しんでいるがゆえに不景気から脱出できないでいるにもかかわらず、さらにアメリカに毎年30兆円も貢がされる形で米国債を無理やり買わされている。

アメリカに対しては一言も言えない小泉政権、財務省の考え方は、「徹底した課税強化」である。弱い国民をいじめることしかできない。国民から厳しく“年貢”を取り立てることに、もはや躊躇しなくなっている。そして国民から搾り取った資金を、またしてもアメリカに貢ぐのである。

 人為的な戦争が引き起こされる

  預金封鎖などという異常な事態が、こんな平和で安定した社会で起きるはずがない、と思う人が今も多いだろう。ここが肝心のところである。

  日本国民を否が応でも金融統制体制(預金封鎖)に引きずり込むために、政府は戦争の危機を利用するだろう。北朝鮮情勢が一気に悪化して、ミサイルが日本めがけて発射されるとか、台湾海峡で軍事衝突が起きるとかの戦乱状況が巧妙に仕掛けられるだろう。

  日米両国の政府は示し合わせ、結託して、両国の巨額の財政赤字(膨大な額の国債発行残高)を、一挙に吹き飛ばすために人工的に軍事的な脅威を作り出すのである。それによって、国民生活を緊急事態の統制下に置くだろう。金融経済面では、経済統制体制に突入してゆくだろう。

  これらの作戦実施要領(マスター・プラン)は、日本政府の内閣官房で、「国家危機管理研究」の名で秘かに進められている。金融・経済の危機(国債の暴落と信用秩序の停止)を、政治・戦争の危機にすり替えて一挙に吹き飛ばそうという魂胆である。
  その兆候の重要な一つが、現在進行している金融庁による主要な地方銀行の強制的な合併、経営統合である。地方銀行はどこも預金だけはたくさん集めているが、新規の貸出先がないものだから資金だけが内部に溜まって鬱血状態になっている。それで仕方なく国債をたくさん買うことで低リスクの不健康な経営を続けている。

  地方銀行が大量に買い込んでいる国債が暴落することが予想される。そうなると、地方銀行の中の体力のないものが次々と破綻して、取り付け騒ぎが起きるだろう。その混乱を初期の段階で瞬間的に食い止めるために、今年の4月に「ペイオフ解禁」を全面実施し、「破綻した地方銀行の預金者には、1人当たり1000万円(と金利分)しか払い戻さない」という態勢を整えたのである。

 「実物経済」の時代がやってくる

  だから、やがて預金封鎖(預金の引き出し制限)を断行するのである。この強硬な金融統制も、戦争が迫りくる中で実施すれば国民の間から激しい反発や反抗が起きないだろうと、政府は目算を立てている。緊急時の国民統制の法律群で、一気に国民の反対を抑え込むつもりである。

  このようにして日本国は奈落の底に落ちつつある。やがて日本の国債は暴落し、長期金利が跳ね上がる。それに連動してすべての金利が上がりはじめる。行き着く先にあるのは、今から60年前の敗戦の翌年に日本国民を襲ったハイパーインフレである。
  そのとき、ペーパー・マネー(預貯金、株、債券)が大きく減価して、タンジブル・アセット(土地、貴金属、食糧、有用財物など)の価値(価格)が高騰するだろう。実物経済の時代がやってくるのである。

 竹中「大臣」就任直後、株価は激しく乱高下した

  1995年に始まった金融戦争で、日本はアメリカに大きく敗戦して金融属国化した。アメリカが直接日本を管理し、支配することになったのだ。日本は今やアメリカに直轄支配されている。そのアメリカが日本に送り込んだ手駒の代表が竹中平蔵大臣である。

  和歌山県の履き物屋の息子である竹中平蔵が、現在の小泉内閣に「学者」という触れこみで入閣したのは、2001年の「経済財政担当大臣」としての就任が最初である。翌年の10月には、この経財相を兼務する形で「金融担当大臣」にも就任した。2004年には「郵政民営化担当大臣」と「経財相」を兼務する形で現在に至っている。まさに小泉内閣の経済政策の要である。

  国会議員としての経験もまったく積んでいない「横入り組」のおかしな人間が、いったい誰の差し金で日本国家の金融・財政を動かす枢要の地位に就けたのか。このことを私たちは本気で考えなければならない。

  竹中大臣が、2002年10月に経済財政担当大臣と金融担当大臣に就任したら、主要金融機関の株価が突如下がりはじめた。このときは、みずほや三井住友などの巨大銀行でさえも経営破綻するのではないかという危機感が日本列島を駆けめぐった。これがいわゆる「竹中ショック」と呼ばれる株式暴落だった。竹中平蔵が裏から指揮する策略に遭って、2003年5月には、りそな銀行が「国有化」された。

  何のために銀行を国有化するのが流行するのか。それは銀行をいったん国有化しておいて、それからハゲタカ外資に「払い下げ」するためである。

  ところが、このあと、「仕組まれたように」日経平均株価が急上昇して、主要銀行の自己資本比率が改善した。半年前の大銀行の軒並みの破綻危機の噂が嘘のように静まりかえった。

  そしてこのあと、ひと息つく間もなく、今度は郵便局の民営化、郵便貯金の民営化の話が小泉政権の至上命題、事実上の「対米公約」の実現として急浮上したのである。ここに日米密約がある。

 国会で追及された「アメリカの手先」ぶり

  だからこの5年間の日本の金融制度改変における動きの最先頭には、必ず竹中平蔵という裏のある「学者大臣」が顔を出す。竹中大臣の経歴と動向の背後を洗っていくと、そこには絶えずアメリカ金融財界の意向が見え隠れする。

  竹中大臣が、小泉政権の内閣改造によって金融担当大臣に任命されたのは2002年の9月30日である。そのほんの少し前の9月13日に、小泉首相はニューヨークでブッシュ大統領と会談を行なっている。ここで小泉政権は日本の大銀行の不良債権処理の加速をアメリカに約束している。この「対米公約」のすぐあと、小泉の帰国後すぐに内閣改造が行なわれたことに、私たちは注目しなければならない。

  実は、この内閣改造の背景には、「銀行に対する公的資金の投入の是非」をめぐる、小泉政権内の閣僚たちの激しい意見対立があったのである。竹中氏が金融大臣の職に就任する前は、柳沢伯夫・衆院議員が金融大臣を務めていた。柳沢氏は大蔵省主税局出身の官僚あがりである。

  その柳沢金融大臣が抵抗の末に更迭され、その後釜に竹中氏が就任した背景には、アメリカからの強い圧力があった。はっきりとそう主張する国会議員がいる。まさに竹中ショックが金融界を震撼させていた最中の2002年11月7日に、参議院の財政金融委員会で行なわれた議員質問を国会会議録から引用する。質問者は共産党の参議院議員・大門実紀史氏である。

■大門議員
  私は、柳沢大臣が更迭されたということも、どういうことなのか、アメリカの特にハバードさんが向こうでしゃべっていることも含めて調べてみました。すると、日本では9月13日にハバードさんと柳沢大臣の会談があって、ハバードさんが、「更に厳しい銀行検査をやるべきだ」と、「将来的には公的資金も念頭に置いて銀行の改革をするべきだ」と、このへんのことを柳沢大臣に言われたら、柳沢大臣は「日本はそんな状態にはないんだ。今は必要ない」と突っぱねられた。ここで意見対立があったという報道がワシントン・ポストでされています。この後、柳沢大臣が更迭されて、竹中大臣が就任された。

  竹中大臣については、元々アメリカの評価は高いわけですけれども、この経過の中でかなり高くなってきていますね。10月30日、竹中大臣が就任されるとすぐ、ワシントン・ポストのインタビューでハバードさんが「彼は優秀だ。これで不良債権処理が進む。歓迎」というふうなことを答えております。その後も、(ハバードさんは)竹中方針支持、いくら自民党の皆さんや銀行から反発が出ても、異例の支持表明をする。「竹中案でやらないと日本は大変なことになる」という警告までやる。ちょっと異常なかかわり方だと思います。

  そこで、ずばり聞いてみたいなと思っているんですけど、竹中大臣が金融大臣を兼務されることについて、アメリカの強い期待があったんではないかと思いますが、そういうことを聞かれておりませんか。
      (参議院財政金融委員会 平成14年11月7日)

  このように竹中平蔵はグレン・ハバードの手下なのである。このグレン・ハバードという人物は、ブッシュ政権第1期目に大統領経済諮問委員会の委員長を務めていた人で、現在はコロンビア大学ビジネススクールの学長である。現在の委員長はベンジャミン・バーナンキが務めている。

 そして、このハバードとバーナンキが、来年退任するグリーンスパンの後のFRB(日本の日銀に相当する)議長の座を争っているのである。この2人は、この時期に何としても大きな業績を上げなければならないのだ。だから日本が狙われているのである。日本の郵政民営化法案が「第1回戦(参議院)」で否決されたことで血相を変えているのがハバードだ。アメリカに資金を持ち出すのが、これで遅れてしまう。

  このハバードが司令官になって、「日本の不良債権の処理速度は遅すぎる。もっと加速せよ」と露骨に日本政府に圧力を加えて、日本の金融業界を混乱に陥れたのだ。ハバードの親分はポール・ヴォルカー元FRB議長であり、その上は“世界皇帝”デイヴィッド・ロックフェラー(90歳)である。

 柳沢金融大臣、いきなり更迭の真相

  竹中大臣自身が認めているごとく、このハバードともう一人、ブッシュ政権1期目で大統領補佐官(経済担当)だったローレンス・リンゼー氏が、竹中氏の親分筋に当たる。竹中大臣は、ハバードが2003年にいったん大統領経済諮問委員会の委員長を辞任したときにも、「彼とも個人的なつながりが深かった」と述べている。

  日本の大銀行の不良債権処理を加速することを中心に据えた竹中プランの実行には、グレン・ハバードからの指令という性質が強い。ハバードは何度も日本の新聞・雑誌に登場して、竹中の強引なやり方にエールを送っていた。このことが日本政府や各省の対米交渉担当の官僚たち、そして銀行のトップたちに、かなりの圧力として働いたことがうかがえる。

  前出の大門議員によると、竹中大臣は、金融担当大臣に就任する以前から、ハバードら米政界の経済高官と会って、密に連絡をとりあっていた。というか、「タケナカ、次はこうしろ。その次はこうだ」と指図を受けていた。

  大門氏の質問に対し、竹中大臣ははっきりと「経済問題に関する(アメリカ政府との)情報交換は、当然のことながらしております」と答弁している。タケナカとハバードはハーバード大学で秘密の会合の参加者として出会っており、2人の関係はそのときに遡るとされている。世界各国の金融と石油を牛耳っているのは、言わずと知れたことだが、総帥のロックフェラーである。

  柳沢大臣はハバードに怒鳴られて、即刻更迭された。そしてすぐさま竹中平蔵が経済財政担当大臣のまま兼務した。この異様な内閣人事となった直接のきっかけは、小泉政権の主要閣僚たちの間の「大手銀行に対する公的資金の注入の是非」における意見の強硬な対立にある。

  2002年9月13日に行なわれた「柳沢・ハバード会談」において、ハバードが「もっと厳しい銀行検査をやるべきであり、公的資金の注入も念頭に入れたうえでの銀行改革を行なえ」と、恫喝をかけた。それに対して、柳沢大臣が「日本はそんな状態にはない。今はまだ必要ない」ということで突っぱねた。

  ところが竹中大臣は、「経営内容が著しく悪い銀行には早めに公的資金を注入するべきだ」と前々から主張していた。これが、アメリカ側が日本の大銀行の乗っ取りを狙った「ゾンビ企業の、市場からの即刻退場」論である。日本人であれば、同じ日本人が何千人も働いている企業が苦況にあって、今にも倒産するというときに、これに対して「ゾンビ企業」などと悪罵を投げつけることはとてもできない。「ゾンビ企業」などと平気で言えるのは、アメリカの手先になりきった人間たちだけである。

  竹中平蔵は、「弱い銀行を国有化したり、閉鎖させたりするなどの荒療治を行なったうえで公的資金を投入すべし」という立場だ。それに対して、「そこまでやる必要はない」 とする柳沢(金融担当)大臣と、強硬路線を取る竹中(経済財政担当)大臣の路線対立が先鋭化していた。

  小泉首相は、不良債権処理の加速を「対米公約」としてプッシュ大統領に個人的に約束してしまった以上、強硬路線を取らざるを得ないところに追い込まれてしまっていた。だから、アメリカの「意向」に何度となく反発した柳沢大臣の首を切って、アメリカのお気に入りである竹中氏を金融大臣に据えることでアメリカの意向に応えたのである。

 日本政府が圧力をかけられた決定的場面

  世界皇帝デイヴィッド・ロックフェラーの不興を買った人間は、ただでは済まない。たかが属国日本の大臣の首など、彼の一言で切り落とせるのである。それをD・ロックフェラーは実際にやってみせた。日本の政・官・財の指導者たちは、このとき一様に恐れおののいた。

  D・ロックフェラーが柳沢金融大臣と会った同じ日の2002年2月27日、D・ロックフェラーは小泉首相を首相官邸に表敬訪問している。時間はわずか30分強というところだ。その後、緊急の臨時閣議が1時間近くも開かれている。その晩には、小泉首相は読売新聞社会長の渡邊恒雄氏らの「山里会」(ホテルオークラの日本料理店「山里」が会合場所であることから名付けられた)に参加し、彼らに相談した。というか、その日何が起きたのかを実力者たちに伝えた。ティモシー・コリンズらが、自分たちの主張を通すために親分のロックフェラーを同行させ、柳沢大臣に圧力をかけたことはこれで明白である。

  柳沢および金融庁と小泉・竹中内閣府(ちなみに「経済財政担当大臣」というのは内閣府に所属している特命大臣である)の対立だけでは済まない。その裏側には世界の最高実力者であるデイビッド・ロックフェラー自身の強硬な対日要求があったのである。

 金融庁による「金融ファシズム」が日本を襲っている

  今の日本国の金融政策を動かしている得体の知れない「金融庁」という役所がある。日本銀行が持っていた「民間銀行を監督・検査する権限」を奪い取ってできたのが金融庁だ。財務省国際金融局の、アメリカ財務省や商務省べったりの手先集団が組織替えで枝分かれしてできた組織だ。だから、初めから裏のある役所である。アメリカのニューヨークの金融財界が、日本の銀行を乗っ取るために作らせた、銀行いじめのための恐ろしい国家機関なのである。

  今、この金融庁を上から実際に握りしめているのは竹中平蔵大臣である。2001年に竹中平蔵が大臣に登用されたときに、省庁機構の改造があり、省の数は10になった。ところが、その後、竹中のような「内閣府特命担当大臣(経済財政政策)郵政民営化担当」などという名のつく大臣をいくつも作っている。谷垣財務大臣がちゃんといるのに、経済財政担当大臣とか金融担当大臣とかを置いている。私たち国民は、新聞を読んだだけでは何が何だか訳がわからない。日本はここまでおかしくされているのだ。

  金融庁という恐ろしい役所は、アメリカが圧力をかけて日本に無理やり作らせたものである。日本の金融機関、すなわち大銀行と地方銀行群に、金融検査という恐ろしい手法で直接襲いかかり丸裸にしてしまう。

  そこまでやる権限がはたして金融庁なる役所にあるのだろうか。企業は自分の責任で自由に経営できるはずだ。経営に失敗すれば自己責任で倒産すればいい。だから、官僚(役人)が強制的な検査権や調査権を振り回すのはおかしい。「金融システムを守るため」というのも怪しい言い訳で、本当は日本の金融資産をアメリカに投げ渡すためだ。

 ネオコンが支配する統制国家・アメリカ

  ネオコン派が支配するアメリカは、策略によってアメリカ国民を戦争に引きずり込んでゆく。アメリカ国民に対しては、「テロリストが攻撃してくるので、アメリカは常時警戒態勢下に置かれてもやむを得ない」として、アメリカ国民が常時監視される統制社会あるいは全体主義国にされつつある。今のアメリカは、実際に旅行で行ってみるとわかるが、息苦しいまでの統制国家である。

  今のアメリカ人は、飛行機を乗り降りするときに、空港の検査で靴を脱がされ、バンドをはずされて、バッグの中の下着まで引きずり出される。あの身体検査の屈辱にアメリカ人は皆、じっと耐えている。かわいそうな帝国臣民である。

  アメリカ人たちは、凶暴化する自分の政府からの厳しい監視下に置かれているのである。「イラク戦争反対」と言うことさえできないような国になっている。今のアメリカに自由はない。

  アメリカには、秩序維持の名目で、「愛国者法」ができた。これは国家の安全を守るという名の下に、アメリカ国民の言論を統制し、令状なしの捜査を容認し、証拠がそろわなくても被疑者を犯罪者として起訴できるという法律である。こういう法律でアメリカ国民を徹底的に監視する警察国家への道をひた走っている。

  アメリカ知識人の中には、デモクラシーの基本原理を信じているリベラル派の人々がたくさんいる。しかし、彼らがこのことを表だって書いても、テレビ、大新聞のメディアが黙殺する。アメリカのマスコミも日本と同じく統制されているのだ。

 2008年、極東有事から金融統制へ

  小泉の対中国外交の失敗は、日本国にとってやがて災いとなって降りかかってくる。それは2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博の頃に噴き出すだろう。アメリカは、極東地域に戦乱(戦闘状態)を生み出す計画である。アジア人どうしをいがみ合わせる。北朝鮮と再度の緊張関係の勃発と、台湾海峡をめぐって中国が台湾に向かって軍事攻撃を仕掛けるように動かすだろう。

  アメリカ軍はイラクから撤退の準備をしている。これを「出口戦略」と呼んでいる。そしてその次に、隣のイランの核開発施設に先制攻撃を仕掛けて反抗国イランを抑え込むだろう。これが終わった頃に、今度は東アジア(極東)が舞台となる。

  世界の火薬庫は2つの地域しかない。それは中東と極東の2つである。中東での戦乱が終わったら、次は極東に火をつけるのである。これが世界覇権国アメリカの世界統治の手法である。アメリカは戦争をやらなければ国内の経済がもたないのだ。戦争をやることで経済を刺激するしかないのである。

  そのときに、どういう状況が生まれるか。たとえば北朝鮮のほうから奇妙なミサイルのようなものが飛んできて、日本人が死亡するという事態が計画的に引き起こされるだろう。あるいは、日本の新幹線が爆弾テロあるいは脱線事故を起こされて大事故になるというシナリオが考えられる。これも大きな意味では政治謀略の一環として行なわれるだろう。

  そのときに日本国内に大きな緊張が走り、日本国民が青ざめる。ついでに、一気に金融統制が断行され、預金封鎖も実行されるのである。金融統制令、すなわち旧札の使用停止と銀行からの引き出し制限(預金封鎖)がこのとき行なわれるのである。(了)

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

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