辣腕行政マン掲示板
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Loginはこちら【25】あまりにも平凡な当確の出し方。
伊藤睦月です。今回は、日本の選挙における、「当確」の出し方について、30年ほど前に、選挙管理委員会の総括みたいな仕事をしていた、知人に聞いた話。ずいぶん昔の話だが、基本的なメカニズムは変わらないだろう。
(1)まず、投票された用紙は、開票所に集められ、立会人の元、広い場所にザーッとぶちまけられる。開票所には、そういう「立会人」が結構いるらしい。
(2)投票用紙は特殊な作りで、ぶちまけられると、二つ折りにされていても、自然と開くようになっている。
(3)それらをまず、候補者ごと(例えばA候補者、B候補者、C候補者、その他(無効票)など。)に仕分けする。その時はカウントしない。時間がかかるから。
(4)そうして、投票用紙の山ができる。
(5)山がすべてできた時点で、それを数える。当時は一枚一枚数えていたが、今はどうだろう。
(6)ところで、どんな選挙だろうと、米大統領選における激戦州のような、その選挙の勝敗を決する選挙区や投票所が必ずあって、それは、メディア記者やベテランの選挙参謀は、経験的にわかっていて、そういうところに「張り込んで」いる。
(7)彼らは、開票が始まると、そういう投票所及び集計をまとめるところの「山」を目視、観察する。
(8)そして明らかに「山」が他の候補者と比べて、大きいと、これも経験則から「当確」を判断する。
(9)よくテレビの開票速報で、開票率数パーセントとか、あるいは、確定した得票数が少ない方の候補者に当確が出る時があるが、それは、まだ数えられていないけど、明らかに「山の大きさ」に差があるときだ。
(10)では、そういう状況で選挙不正をやるとしたらどうするだろうか。
(11)日本では、ネット投票や郵便投票の制度は原則ないから、あえて、他の候補者分を山に混ぜ込んだだ投票用紙の山を作るか、数を数えるのをごまかすか、いずれにしても、衆人環視のなかでやるので、そういうアナログな作業では限界があるだろう。
(12)集票機を操作する。しかしあまりに大差をつけると「山」を確認している人たちから怪しまれる。その辺の塩梅が重要?になる。
(13)ごまかす余地がありそうなのは、不在者投票箱だが、これも最初にぶちまけて、山をつくるので、なかなかスリリングな行為になる。スーパーで万引きをするようなものだから。
(14)結局は、投票前に、勝負をつけてしまう。いわば組織選挙だ。日本人は義理堅いから、そういう組織選挙に割と拘束されるものらしい。
(15)私の亡母は、いつかの選挙のとき、高熱を出していたにも関わらず、某支援団体の人が、投票所まで運んでいってくれたそうだ。(帰りは送ってもらえなかったらしい)母はぼやいていたが、普段のつきあいがあるので仕方ない、とか言っていた。母のような一票、一票を積み上げていくのが、最もオーソドックスなのだろう。
(16)最近では「浮動票」がSNSなどによって、大きく動くことがあるらしい。組織選挙をやっている人たちにとって、脅威らしいが、よくはわかりません。
(17)今後は組織運動で「岩盤票」を固め、SNSなどで、「浮動票」を捕まえる、という二段構えにならざるを得ないのだろう。両者のバランスはそれこそ、ケースバイケースなので、選挙参謀も大変でしょうね。
(18)そうなると、ますますオルテガ『大衆の反逆』の様相を呈していく、ということか。やれやれ。
以上、面白くもない、昔話でした。
伊藤睦月筆
【24】「103万円の壁」見直しで地方が財政破綻することは、ありえない。財務省が総務省を恫喝して言わせているだけだ。
伊藤睦月です。今回は、「103万円の壁」について。
(1)国民民主党の要求どおりにやったら、税収分が7兆円、地方税分で4兆円税収入が減って、地方で財政破綻が続出する、ということで、全国知事会が要望を出しているが、出来レースに近い。
(2)もし本当にそうなるのなら、この程度の騒ぎではすまない。地方財政は、住民、すなわち我々一般ピーポーの生活を直撃するからだ。村上総務大臣も、各知事も、財務省とチキンゲームをやっているだけだ。本気じゃない。
(3)その理由はただ一つ。「地方交付税制度」によって地方自治体は財政破綻を免れているからだ。
(4)地方交付税は、国税のうち、所得税・法人税の33・1%、酒税の50%、消費税の19.5%、地方法人税の全額を、財務省が総務省に渡し、総務省が地方(都道府県、市町村)に配分する仕組みだ。
(5)総務省に渡す、国税の総額と内訳は、財務省が決め、各地方自治体にいくら配分するかは、一応の計算式に従い、総務省が決める。
(6)「103万円の壁」を取り払うと、所得税が減って、その分、地方へ渡すお金が減る、そうなっても知りませんよ、(総務省は財務省からくる金をその範囲で配ればよいので、財務省はあずかり知らん)というのが、財務省の考え。
(7)いや、それでは困ります、総務省に責任押し付けるのは辞めてくれ、こちらに責任押し付けるなら、交付税を増やせ(割合と交付対象国税の種類)というのが、総務省の考え。要するに霞が関界隈での主導権争いをやっているだけ、これは、戦後、交付税制度が始まって以来の争いで、「国から地方への財源移譲問題」といって、地方自治論、地方財政論のありふれたテーマの一つだ。
(8)では、実際、壁が撤廃されて、所得税(正確には所得税からの地方移譲分)が減ったらどうなるか。何も変わらない。地方がすぐに財政破綻することはあり得ない。
(9)その時の対応は、財務省がすることになれば、①不足分を増税(所得税を増税すれば、実額変わらない)
②不足分を予備費その他の財源で補充する。(現在の財源の割合をあげる)
③国債を発行する。
の3案ほど考えられるが、これは地方交付税法の改正とかそこまでいかなくても、国会の承認が必要なので、与野党とも、共産党を除き、提案しにくいだろう。だから、国民民主党も「(財源問題は)総合的に検討する」といったことしか言えないのだろう。
(10)もちろん財務省はそこまで、地方の面倒見る気はさらさらないので、なんだかんだ屁理屈を出し続けるだろう。総務省もそこまで、財務省を追い込めればよいので、「知らん顔」するだろう。総務省は財務省からきた金を、黙って地方に配るだけでよいのだから。
(11)そこで、実際は、財源不足分は、地方債(地方の借金)で補うことになる。
(12)地方債の発行は国(総務省)と協議の上決める、という建前だが、実は地方債発行額のほぼ全額は日銀が引き受ける。返済金の8割くらいは、国(財務省と総務省)が日銀に対し返済保証する。(私の記憶による)という。地方と総務省との協議内容はざっくり言えば、どこまで、日銀に引き受けてもらうか、財務省にどこまでお願いするか、協議調整がメインとなる。
(13)万が一、財政基盤の非常に弱い市町村が財政破綻しても、総務省が直接管理する(私の知っている例では、100円を超える支出はすべて、総務省の許可を必要としていた)ことになり、総務省(旧自治省、戦前の内務省)の「直轄領」が増えるだけなので、実際のところ、困らない。
(14)以上、雑駁であるが、私見を述べた。
(15)ところで、来年から年金オンリーになる私としては、年金は増えなくてもよいが、手取りが増えればよいので、減税は賛成だ。
(16)それでは、将来世代の負担が増える、彼らに対する責任はどうするのか、という問いには、こう答えよう。
(17)そんなこと本気で信じていたら、彼らの時代になるころには、我々は死に絶えているだろう。そうなっては遅い。だから、「今」が大事なのだ。
(18)100年前、いわゆる「ケインズ政策」への批判(当時も将来世代に禍根を残すという批判があったらしい)に対する、ケインズ先生のお答えだとか。(これも私の記憶)
(19)われながら、都合がよいとは思うが、この歳になると、「今」が大事になってくるのも、本音である。
(20)将来のことは、その時生き残った人たちで考えてくれ。「アジア人どおし戦わず」であれば、とりあえずはそれで良い。
以上、伊藤睦月筆
【23】前回の続き
伊藤睦月です。また間違えてボタン押してしまった。老眼は嫌だ。
(7)まあ、いずれにしても、そのうち忘れさられるだろう、という平凡で退屈な結論でした。
また、状況変わったら、書き込むかもしれません。
以上、伊藤睦月筆
【22】ブレイク:兵庫県知事選の感想(2)
伊藤睦月です。当掲示板(21)で、私は、選挙が終わると何事もなかったかのように、推移するだろう、という感想を述べた。しかし、依然としてメディアが騒いでいる。私は、主にテレビからの情報しかもっていないが、感想の続きを述べる。こうやって書いてしまえば、「アタリマエ」ことで新鮮味はないかもしれないが、行政とは日々の営みのひとつだから、退屈なもので、我々一般ピーポー(貧乏人)にとっては、大事なことだろう。
(1)行政は、日常に戻っている。選挙はお祭りのようなもので、公務員でも、特別職(副知事)とかそれに近いお偉いさん(部長とか局長。この職階の意味合いや、違いについては、当掲示板ですでに説明しています)を除いては、選挙期間中でも、日常業務は粛々と続いています。そうしないと、クレームがくる。下っ端公務員にとっては、こっちの方が大事。ただ、選挙時期が4月とか人事異動時期が近いと少し、ざわつく人も出てくるが、今は人事異動の時期ではないので、それもない。ちなみに、役人の人事異動の喜怒哀楽については、大河ドラマ「光る君へ」にでてくる「除目」がその雰囲気をよく伝えている。現在も何ら変わりはない。
(2)結構、身内かから刺されている。今回もPR会社社長のSNS書き込みから始まった。あの業界の人って、みんなわきが甘いのか、それともわざとなのか。このことに関して、もっとも真相を知っていると思われる、NHK党や維新のトップのコメントが出てこないのが不思議。彼らの役回りは何だったんだろう。
(3)選挙関連法規に詳しい、実務経験のある現役もしくは元公務員がかなり入れ知恵している。あの公職選挙法の解釈は、ある意味セコイ、言いがかりで、いかにも公務員が言い出しそうな「いちゃもん」、公務員でない者、弁護士であっても、ああいうツッコミは即座に出てこないだろう。相当前から、準備されていたものかと思われる。そういう「シナリオライター」はだれなんやろ。
(4)私は、この兵庫県知事選の「空騒ぎ」は、大きくは、「政界、官界における、ムーニー退治」が国レベルから、地方レベルへと波及してきた、ということなのだろう。とくに地方公務員の実務者レベルでは、創価学会関係者と部落解放同盟関係者が結構いて、その人たちがいわば「新参者」である、ムーニー関係者を排除する動きをみせても、驚くべきことではない。これは、従来の「既得権益層」にとっても悪いは話ではない。
(5)このような動きは、決して国、地方レベルいずれも、報道されたりすることないし、SNSでも「真実」が書き込まれることはない。もしそのような書き込みがあったら、なにか「背景」を疑ったほうがよい。
(6)この兵庫県の空騒ぎも、年内でフェードアウトするだろう。我々一般ピーポーにとっては。「壁シリーズ」の方が大事だし、戦争もなんとなく不安だ。こちらの方が大事だ。と、思わされるようなキャンペーン
【21】ブレイク:まるで新喜劇のような、兵庫県知事選の感想(ちょっとふざけていますが、ご容赦を)
伊藤睦月、です。昨日行われた兵庫県知事選で、県議会不信任決議を「放置」して出直し選挙で失職した知事が再選を果たしたという。これに対し後付けで恐縮だが、感想を述べる。私ももと地方公務員だが、公務員多数意見を代表できるわけもなく、個人的見解である。
(1)この県知事だが、副島先生によると背景に何やら怪しげな勢力がついているらしいが、今回TVでその面構えを見てて、ますます、都知事選にでてきたどこぞの市長をしていた、アバター君とに似てきたな、というのが第一印象。本人もSNSで思いのほか効果があったといっておいたが、それだけか。イーロンマスクの衛星は兵庫県まで作用しなかったのかもしれない。
人を外見で判断してはいけない、といわれているが、「男は40過ぎたら顔に責任を持て(リンカーン)」とか「人は外見が9割」ともいうから、感想くらい良いだろう。
(2)兵庫県の公務員たちは、よほど県民から嫌われているらしい。知事のパワハラで死人がでているはずだが、それにも関わらず、大差で再選させた。公務員が死んでも関係ない、ということだ。ご愁傷様。
(3)7月に死人が出てすぐ、知事を批判して辞職した副知事がいたが、この人は今どうされているだろう。「私は止めたのですよ」「ついていけません」とか言って泣いて見せていたが、それはダメでしょうが。死んだ職員を一番追い詰めたのは、貴方なのだから。
(3)なお、この副知事は、人事課長などを歴任した総務系のエリートだから、大多数の事業系の職員たちからは、表面上はともかく、内心では恐れられ、嫌われていただろう。
(4)来週には、当選した知事が初登庁するが、職員たちは何事もなかったかのように、熱烈歓迎するだろう。そうしないとなんだか不気味だからだ。その点、中国や北朝鮮の役人たちと、そう変わらない。日本の組織というのはそういうものだろう。
(5)そして、知事も何事もなかったかのように、仕事に戻るだろう。県議会も何もなかったかのように、ふるまうだろう。報復人事は、原則やらないだろう。それをすれば仕事にならなくなるからだ。やるにしても当事者しかわからないようにするだろうが、誰に報復する?誰にそそのかされたか知らないが、内部告発をしたあげく、命まで失った職員のことも、もはや、ほとんどの人の話題にもならない。兵庫県民にとっては、関係ない話ということがはっきりしただけだ。
(6)それにしても、兵庫県というところは、興味深い。阪神淡路大震災の時、自治省(今の総務省)出身の知事が、自衛隊派遣要請を遅らせて、顰蹙をかったり、(当時の村山内閣がもっと批判されたので目立たないけど)
(7)議員活動費で地元の温泉に入りびたり、それが発覚すると、記者会見で号泣してみせる県議会議員がいたかと思えば、元明石市長のような、面白いけど、まともな政治家がいたり、そういえば、パチンコマニアの元社会党の女性委員長がいたり、今度はどんな人がでてくるんやろ、と昔食べた明石焼きを思い出しながら、思ってしまう。といったとりとめもない雑談でした。
以上、伊藤睦月筆
追伸:(8)ちなみに、この「不信任決議」→「失職」→「再選」というシナリオを最初に実行したのが、都道府県レベルでは、長野県知事(田中康夫:芥川賞作家)につづき2番目、明石市長の泉氏も同様の行動をとったそうだ。
(9)地方自治法上は、「辞職」か「解散選挙」だが、それを回避するのは、明らかに脱法行為で、地方自治(デモクラシー)いまだ、実現せず、卑怯なり、という思いしかない。このような根本的な問題を誰も取り上げないようなので、ここで強調しておきます。
【20】「お役所仕事」は中国伝統の政治・行政スキルだ(3)前例主義と印章行政:菅義偉は、後世に名が残るかも?
伊藤睦月です。
(1)「お役所仕事」の3アイテム、自己申請主義、文書主義、査定主義、に追加します。前例主義と印章(ハンコ)行政。
(2)前例主義は、これはもう有名ですね。悪しきお役所仕事の典型。しかし、特段支障が出なければ、そのままにして、支障が出たり、方針変われば、その時点で上書き修正する、というのは、仕事の効率からいって、とても望ましいことなのです。
(3)実際、役所の取り扱いがその場その場でころころ変わるのは、住民にとって迷惑な話で、公平性の見地からも問題あります。程度問題化と思いますが。
(4)そして、印章(ハンコ)行政。これって最近ずいぶん少なくなったと思いませんか。役所の諸手続きで。不動産取引とか、印鑑証明が必要とされるような重要な案件は別として、日常的に使う「3文判」の出番がずいぶん減りました。
(5)これは、菅内閣で「印章廃止」の方針が出されてから、特にめだつようになった現象、だと感じています。そうおもいませんか。
(6)菅内閣は短命に終わったので、何か中途半端な印象ですが、それでもジワジワと「印章廃止」が広がってきています。役人は一度方針(レール)がひかれると、その路線をできるだけ続けます。「お役所仕事慣性の法則(伊藤)」と名付けましょう。「前例主義」の一種です。
(7)実は、この「印章廃止」、日本文化にとって歴史的大事件、です。
(8)この「印章主義」こそ中国伝統の政治手法なのです。少なくとも、秦の始皇帝の時代までいけます。
(9)栗原朋信や、西嶋定生、といった、中国古代史の大先生たちが解明した、中国政治システムの肝、それが「印璽」(いんじ:印鑑のこと)なのです。
(10)その中国伝統2千年の超重要アイテムである、「印章(ハンコ)行政」を廃止しようとして、ある程度成果を上げた、この菅義偉、という男。実はなかなかの者ではないか。
(11)中国文明の伝統の破壊者、もしくは欧米文明導入の完成者。
(12)100年後の日本文化史、社会学史に残っているかもしれませんよ。
(以上、伊藤睦月筆)
【19】小ネタ集(1):大河ドラマ「光る君へ」は現在の公務員社会そのものだ。
伊藤睦月です。ここでは、投稿途中で気づいたことなど、軽めな話題を取り上げます。まずは、大河ドラマ「光る君へ」。
(1)副島先生も、「ぼやき」で語っておられますが、藤原道長=光源氏モデル説をベースに源氏物語、栄花物語、大鏡など当時の王朝文学や史実を織り込んで、道長+紫式部ほか女性たちとの不倫物語として、うまくまとめています。
(2)私が注目しているのが、当時の「除目(人事評価と人事異動)」のシーン。
(2-1)まず自己申告制であること。ほら3アイテムの登場です。自己申告に基づき、査定するのです。
(2-2)自己申告書は「漢文」標記であること。
当時から江戸時代まで、公家の公用語(書き言葉)は漢文、つまり中国語、でした。これだけを見ても,我が国は、中国の文化的属国であったことがあわかります。(そこから脱するための悪戦苦闘を描いたのが、井上ひさし「国語元年」という戯曲です)
(2-3)除目(人事異動)は、縁故だけでなく、実力本位の面もあった(紫式部の父親が語学力を買われて、淡路守から越前守(5位)に抜擢されたのは、史実で、そのおかげで当初越前守に内定し、淡路守に格下げになった人はメンタル病んで、早死にしたそうです。(おそらく自殺)そうでないと当時でも行政回らないこともあったのでしょう。これも現在の役所と同じ、といえば、不謹慎化かも。
(2-4)除目前後の貴族たちの立ち居振る舞いや、ドタバタなど、現在の役所のそれを見ているようで笑える(もっとも現役離れたから、そういえるのかも。渦中にいたときは、私も喜怒哀楽会ったことは認めます。)除目に関する人間描写は、「枕草子」や「今昔物語集」にもいきいきと描かれています。
(2-5)当時の受領階級(国司として現地赴任した人々)がいかに「私腹」を肥やしていたか、またそれは当たり前のことで、「私腹を肥やさない」方が、空気読めない「困った人」だったことが良く描かれています。今でもそうかも。
(2-6)直轄領(建前は公地公民制だが、私領である荘園が普及していた)からの税(物納)は、律令で税率とか一応決まっていたけど、当時は「徴税請負制」のような形態であったと思われます。そうなると、国庫に納める分を収めてしまえば、あとは取り放題、どれくらいで抑えるかが、「強欲」か「慈悲深い国司様」かが決まる。
(2-7)これも、中国伝来の行政術で「清官三代」といって、清廉潔白な「官」でも、自分、子、孫の代まで裕福に暮らせる蓄財ができる、といわれたくらい。だから、今の収賄、横領と感覚が違いすぎます。これに上級貴族ともなると、さらに、私領(荘園)からの上納が入りますから、莫大なものになっており、藤原道長前後の時代がその絶頂期でした。平氏など裕福な武士が台頭するのは、その半世紀位後です。そんなところも、紫式部の目を通して、わかりやすく描かれています。
(2-8)当時の「有職故実」(儀式内容など)は上級貴族の一族相伝みたいなところがあり、その多くは、日記に備忘録の形で記録されました。藤原実資(ロバート秋山が怪演)の「小右記」が有名です。実資は当時としては珍しく、聞かれればノウハウを気前よく公開したので、人望が高く、藤原道長も一目置く存在でした。そのへんの心理的かけひきもドラマにでてきます。
(2-8)また官服(衣冠束帯)の色。ドラマでは、紫式部の父親が、5位に昇進の際に6位の官服(緑色)しかもっていなかったので、紫式部の夫に5位の官服(朱色)を借りに行く、というシーンがあります。当時は、官位によって着ることができる服の色が決まっていたのです。ちなみに、紫衣は3位(参議クラス)以上。例の奝然(ちょうねん)坊主が北宋太宗皇帝から、、日本での官位(6位:緑衣)から紫衣を与えられ、3位としてから、謁見を許したとの話、覚えていますか。
以上、大河ドラマに関する小ネタ、いくつかご紹介しました。大河ドラマは史実などではなく、いわゆるファンタジーなのですが、時代考証にうるさい視聴者が多いらしくて、専門家でかなり厳密な考証をしているそうです。10数年前の「平清盛」(松山ケンイチ主演)ぐらいからだそうです。このときは、時代考証厳密すぎて、全体的に地味な装束になり、観光PRにならない、と地元からクレームが出たそうですが。
また、小ネタ思いついたら、投稿します。
(以上、伊藤睦月筆)
【18】「お役所仕事」は中国伝統の政治・行政スキルだ(2)中国正史の書かれ方
伊藤睦月です。私のいう「お役所仕事」は、古代から今現在に至るまで存在し、それで世の中の相当部分が、動いていることは、疑いのないところです。ここでは、古代編、ということで、わたくし伊藤が、ふじむら掲示板に投稿している歴史論考における、中国正史をとりあげます。私の理解の仕方が、大方の支持をえられるかわからない。が、一番わかりやすい、と考えています。以下私見を述べます。
(1)中国正史(歴代中国王朝の公式見解。必ずしも「真実」とは限らない)の、海外諸国の記述は、当時のインテリジェンスレポートだ。
(1-1)中国正史は、紀伝体(皇帝の実績:本紀とそれと関係する、家臣の実績:列伝中心の歴史記述方法)ですが、本紀、列伝以外の部分は、書、とか、志、とか、列伝の中に含まれることもありますが、皇帝、家臣の実績の関連情報、要するに、朝貢にきた、あるいはこなかった、周辺地域、国、の情報、ということになります。
(1-2)関連情報の部分は、客観的なデータでなく、魏志倭人伝のように、かなりバイアスがかかっていることもあります。(岡田英弘「日本史の誕生」)
(1-3)私、伊藤は、この関連情報の部分(主に倭、日本の部分)を読むと、何か既視感を感じるのです。ああ、これ私が現役時代によく書いた、調査レポート(出張記録、復命書)と同じじゃん、と。
(1-4)中国の史官は、まず、相手’倭とか新羅とか)の自己申告書を提出させます。自分たちの国は、そもそも何者か、場所はどのへんで、人口がどれくらいで、どういう外見をしてて、王様はだれで、どういう風俗習慣があって・・・などを記載した文書を提出させます。(文書主義、自己申請主義)
(1-5)史官は、その文書をチェックして、必要に応じ、内容確認(ヒヤリング)をします。
(1-6)内容確認をするのは、過去に提出され、採用された情報と異なる情報があった場合。史官は、過去の提出内容と、現在の使者の言い分(口頭もしくは文書)を聞いて、どちらかを採用しますが、大体は過去の内容を優先します。
(1-7)そのほか、史官は、自国人の訪問記録とか、他国にあげられた情報(いわゆる三韓に取り上げられた情報)なども参考にしますが、基本は、自己申請とヒヤリング、過去の実績(前例主義)をもとに、そして現王朝の各地に対する、思惑、忖度をいろいろ考えて、記述を確定させます。こういった一連の作業を「査定」といいます。
(1-8)日本の場合、①漢書地理志に初めて朝貢の記事登場、➁後漢書東夷伝で「漢委倭国王」の金印、➂魏志倭人伝で、邪馬台国女王と「親魏倭王」の金印、④
晋書で邪馬台国女王の最後の朝貢、④宋書(南北朝)で、「倭の五王」の記事と続き、⑤隋書で、遣隋使の無礼な手紙、と続きますが、諸国情報は、➂の記事から採用されている。
(1-9)これは、親魏倭王以来、本格的な、あるいは、上書きが必要な情報がなかった、あるいは中国側で、そう判断されたものと思われます。邪馬台国の後継だと認定されていました。
(1-10)⑤の遣隋使では、対等の関係を主張したようですが、中国側から一蹴(いっしゅう、即却下)され、お叱りの使者まで派遣されています。(裴世清の来日)中国側からすれば、中二病の子供に現実を教えてやろう、ということだと思います。それを日本側が拒否すれば、その時点で「敵国認定」され、戦争でしょうが、その時は、日本側はうまく切り抜けました。
(1-11)
この時、使者の報告書によって、倭に対する関連情報は上書きされた、と私、伊藤は見ていますが、中国側からすれば、結局はわが国に朝貢してきた、属国である、そして、本人が、邪馬台国の後継でない、と言っているのなら、「奴国」の後継だろう、ということにされた、と思います。中国側にとって、「使者」を派遣した、すなわち「朝貢使」でなければ、「敵国、反乱分子」ということしか相手を理解できなかった、と思います。そして、この中国側の見方は、明治時代まで変わることはありませんでした。
(1-12)伊藤睦月、です。ここで、「ふじむら掲示板」での投稿につながりました。次回から、「ふじむら掲示板」に戻ります。
(以上、伊藤睦月筆)
【17】「お役所仕事」は中国伝統の政治・行政スキルだ(1)
伊藤睦月です。前回までに紹介した、文書、自己申請、査定、の「お役所仕事」3点セットは、中国伝来のスキルです。少なくとも紀元前2世紀、秦の始皇帝のころまで遡れます。今回はそのことについて、投稿します。なお、私、伊藤にとって「お役所仕事」というのは、「価値中立的」な概念です。善悪好悪是非の要素はありません。
(1)お役所仕事の由来は、法家思想、老荘思想の法家的理解、儒教ファッション、のミックス、です。
(2)法家思想は、「韓非子」に書かれています。ケーススタディ付きですべて書いてあります。私は30代に金谷治訳の岩波文庫版を読んで、なんだ、ここに全部書いてあるじゃん、と思いました。
(3)法家思想のエッセンスは、商鞅の「法」、申不害の「術」、慎倒の「勢」、です。それに、思考の前提としての「老子」の韓非子的解釈、です。
(4)それぞれの詳しい解説はここではしませんが、岩波文庫版第1巻の金谷解説で十分です。
(5)そして、儒教ファッションです。論語は、「役人の出処進退是非判断の書」です。安岡正篤という、終戦の詔勅の起草者の一人と言われ、のちに保守系政治家のブレーンともいわれた儒学者の言葉だそうです。
(6)君子は立派な人、小人はそれほどでもない人、といった定義は、被支配者階級(小人)に対する、支配者階級(君子、つまりは役人)の騙し、マインドコントロールです。
(7)法家思想を露骨に出すと、各方面から嫌われますし、命の危険もある(司馬遷の「史記」は、そんな例として、「商鞅、呉起、韓非、李斯などを紹介しています)
(8)だからその言動を儒教の言葉や振る舞い(礼儀作法)、儀式のオブラートでくるむ必要がありました。
(9)なお、後年、儒教が哲学化(朱子学や陽明学といったいわゆる「儒学」化)しますと、本物の政治思想ですから、これに殉じる人たちが出てきます。(文天祥など)日本の幕末の「尊王攘夷」に殉じた人たちもその流れです。
(10)一方で、いわゆる処世術として、これらを上手く使う人たちも大勢います。いわゆる世俗の成功者、たちです。こちらの方が多数派だとおもいます。
(11)また、成功しなかった人たちの嘆きと諦観の書が「菜根譚(さいこんたん)とか「呻吟語(しんぎんご)」です。(私見)
小休止。次回又投稿します。
(以上、伊藤拝)
【16】公務員業界用語(4)文書主義、なにはともあれ文書から。
伊藤睦月です。今回は「文書主義」です。
(4)役所は、すべて「文書」ではじまり、「文書」でおわります。役所系はなんでもそう。最初は、口頭で相談したりしますが、行政手続のレールに乗せようとすれば、「文書化」は必須です。
(4-1)これは警察関係でもそうで、例えば、物を落としたり、窃盗にあったり、ストーカー被害などで、警察に「相談(普通は口頭)」して、じゃ警察が動きましょう(捜査、調査、照会など)となれば、改めて、こちらから「届け」という文書を出すことから始まります。
(4-2)落とし物などは、こちらが皇統でしゃべったことを、パソコンの所定の様式に警官が打ち込むこともありますが、原理的にはこちらから届けを出すことには変わりはありません。役所の窓口もそう。
(4-3)でも、本当は警察は届けがなくても動けるのです。警察官職務執行法に規定があります。ほかの役所系も緊急の場合は動けるようになっているはずです
(4-4)普段はそういうことはしません。公平を保つため、とか、恣意性を排除する、とか言っていますが、要は、届け出順に処理した方が仕事がはかどるからです。いわゆるカスハラ予防にもなります。
(4-5)公務員は、怠け者ですが、基本真面目で律儀なので、与えられた仕事(それのみ)はきちんとやります。(与えられた仕事だけは!)だから、災害等で献身的に働く公務員がいますが、これもそうするように決められているので、義務感で動くというところはあるのです。(使命感でやっておられる方、ごめんなさい。でもそういう使命感、義務感だけでやっていると、いつかは無理が来る、ということは、そういう立派な公務員ほど感じていると思います)
(4-6)だから、そうせざるを得ないように、仕事をシステム化すること。彼らは年功序列で終身雇用なので、そういうものじゃないメリットを与えることです。(要は褒める、感謝してあげる、ということです。リバタリアンの方は公務員嫌いが多いと思いますが、余計、ニコニコしてあげることです。彼らは、自尊心を少しだけ満足させ、皆さんのために身を粉にして働く・・・・かもしれません。(冷や汗)
(4-7)「お前ら、税金ドロボーは俺たちのために黙って働け!」などというのは最低最悪です。彼らはにこにこしながら、優先順位を大きく下げます。心の中でも、実際の取り扱いでも。特に下っ端公務員はそうです。キャリア(国、地方)はそれ以外にもインセンティブがありますから、それをうまく刺激してあげること。そのとき、「アメとムチ」を上手に使い分ける。役人の使い方がうまい政治家はみなそうしています。
(4-8)役所系はすべからく文書主義、言われてみれば当たり前のことですが、そういう「アタリマエ」を考察する、というのも副島学の方法論としてあっていい、と思います。かなり地味ですが。
(4-9)以上、文書主義、自己申告、査定、この3アイテムで役所仕事(対一般ピーポ向け)の大半は説明でき、応用も効きます。あとはこの展開系でこれについては、折に触れて指摘させていただきます。
(4-10)次回からは、この役所系行動原理の由来について。これも分かり切った話かもしれませんが、そういう話こそ、結局は役に立つ、と(小声ですが)考えております。
(以上、伊藤睦月筆)