理科系掲示板
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Loginはこちら【62】Re : エミー・ネーター
ネーターの定理、すなわち「対称性があるとき、保存する量が出現する」という知見は、現在の物理学の理論体系を構築する過程のあらゆる場面で指導原理になっていると言っても過言ではありません。
昨日と今日で、運動方程式の立て方や解き方が変わることはありません。これは時間の原点t=0をいつにしても自然界の法則は不変であるということです。逆に言うと、時間の原点t=0をいつと決めるかは、方程式を立てる、あるいは観測や実験を行なってデータ収集をする人間の側の都合であって、自然の法則はそうした人間の都合によって変化するものではない、と言う世界観の現れと見ることができます。時間の原点t=0をずらしても物理法則が変化しないことを、時間の並進について対称性がある、と言います。この時間の並進についての対称性と結びついているのがエネルギー保存則です。
ネーターの定理によって、物理学の世界では、ある量が保存するとき、「実験で確かめる限り成り立っているから受け入れる」と言う知見のスタイルから、「背後にある対称性やその対称性に意味をもたらす自然観と結びつけて考え、それが自然なことか不自然なことかを論じる」と言うスタイルへの変化が起きたことは間違いありません。ノーベル物理学賞を受けたグラショウ、サラム、ワインバーグ、グロス、ウイルチェック、ポリッツアー、南部、小林、益川のいずれの仕事も、ネーターの定理を通して対称性や保存則に注意を払うことなしに成し遂げることはできなかったでしょう。
【61】エミー・ネーター
相田です。コロナには全く関係しないが、ぼやきで副島先生が女性の科学者達について触れられたので、関係して書きます。
副島先生が言われるように、ノーベル賞を取るような有名な物理学者には、殆ど女性はいない。ノーベル賞をもらった有名処では、キュリー夫人(マリー・キュリー)と、娘のイレーヌ・ジョリオ・キュリーくらいではなかろうか?最近はリサ・ランドールとかいう女性物理学者が、「超ひも理論」について書いたりしているが、私は殆ど知らない。
物理学に名を残す女性で、最大の功績を挙げた人物は、おそらくは、エミー・ネーター(1884~1935年)だろうと、私は思う。いわゆる「ネーターの定理」を提案した学者だ。一般の方々は誰もネーターの事を知るまい。私もネーターの定理について、その存在を知ったのは、大学を卒業した後だった。女性だというのを知ったのは、実はごく最近だ。
ネーターはドイツに生まれたユダヤ系の女性学者だ。彼女の本職は物理ではなく、数学である。数学者としてのネーターは、20世紀を代表する天才の一人と認識されている。私もウィキペディアで読んだだけなので、偉そうには書けない。が、ヒルベルト、フェリックス・クライン、ヘルマン・ワイル、そしてアインシュタインといった、泣く子も黙る錚々たる天才学者達が、ネーターの業績について賛辞を惜しまないのは、学者としての彼女の、恐るべき実力を物語っている。
ネーターの物理の発見は「ネーターの定理」の一発のみだ。だが、その物理学への影響力はかなり凄い。「ネーターの定理」だけで軽くノーベル物理学賞を貰える重みがある。シュレーディンガー方程式や、ディラック方程式に匹敵するインパクトが、「ネーターの定理」にはあるのではなかろうか?残念ながらネーターは、ノーベル賞をもらう前に癌で亡くなっている。その物理学上の真価が発揮されるのは、第二次大戦を過ぎた後の事だった。時代があまりにも早過ぎた。
ネーターの定理とは、実は非常に短い、わかりやすい日本語で、書くことができる。
「ある物理系に対称性がある場合は、それに対応して、何らかの物理量の一つの保存則が存在する」
たったこれだけだ。対称性というのは、例えば、並進対称性、回転対象性、時間が経過することによる対称性、とかいう物だ。それぞれの対称性に、運動量保存則、角運動量保存則、エネルギー保存則が対応して存在する、というのがネーターの主張だ。「何だ、たったそれだけの事か、アホらしい」等と、最初は誰でも思うだろう。
でも、よくよく考えてみると不思議である。対称性とは、モノの形といったの幾何学的な考えなのだが、それに対して、ある物理量が一つだけ保存される、というのだ。幾何学と物理量が一対一で対応している、とネーターは語っているのだ。だんだん何だかわからなくなって来る。
ネーターの定理とは、ラグランジュやハミルトンが提唱した「解析力学」に出て来る概念である。解析力学で使う関数の中には、位置座標と物理量をセットで組み込んで展開する形式が、数多く出て来る。そこから想像すると、素人でもネーターの考えに何となく思い至らない事もない。日本語の説明は単純だが、ネーターの定理の証明には、厳密な数式を使う事は言うまでもない。
ちなみに、私が持っている原島鮮(はらしまあきら)や小出昭一郎が書いた、初心者向けの解析力学の参考書には、ネーターの定理は出て来ない。学部レベルの物理には必要ないからだ。その真の価値が発揮されるのは、素粒子物理学である。
ここから先は、私もよく理解出来ていない内容なので、そのつもりで読んで頂きたい。素粒子物理学では戦後に、「群論」という難解な数学を使うようになった。群論の概念からは、通常では想像出来ないような、数式上の様々な対称性が提案される。それらの10種あまりの対称性に対して、異なる素粒子や物理法則が対応する事が明らかになり、盛んに研究された。対称性自体が、素粒子物理の主要課題の一つになったのだ。
さらには、それまで「ある」と信じられていた対称性が破られると、そこに新たな物理の発見がもたらされる事となる。1956年にリーとヤンという中国人物理学者コンビが、パリティ対称性(空間反転対称性?)が破れる、という論文を発表し、実験で確認された事で、翌年にノーベル物理学賞を速攻で受賞することとなった。
1957年には、それまで謎とされていた超伝導現象を説明するための「BCS理論」が発表された。かの南部陽一郎その人は、BCS理論の真髄は「ゲージ対称性の破れ」であることをただ一人見出し、1960年に超伝導現象を素粒子物理に拡張した理論(自発的対称性の破れ)を発表する。これが突破口となり(その後に15年以上の年月を費やしたが)、ヒッグス、ワインバーグ、サラムによるの「素粒子物理の標準理論」の完成に繋がるのである。
これら一連の、研究の流れの骨格になるのが「ネーターの定理」になる訳だ。うーん、あまりにも壮大で、凄すぎる。そう思うのは、私の大いなる勘違いに過ぎないのだろうか?
ネーターは頭の中に、数学の新たな発見が次々に思い浮かぶため、それを整理するのに日頃から苦労していたらしい。自分のアイデアを、気前よく他の学者に教えてあげたそうで、彼女の力を借りて多くの他人の論文が出来たという。マリーとイレーヌ・ジョリオの母娘も相当の堅物だったが、共に結婚して子供もできた。が、ネーターは独身のまま、頭の中にあるアイデアと格闘しながら生涯を終えている。ネーターの方が、キュリー母娘よりも、変人の度合いは上回っていたようだ。天晴れな事である。
相田英男 拝
【60】ジャックウェルチ死す!!
相田英男です。
今回は、記事の意訳のみを載せます。
かなり辛辣な内容ですが、事実はこうだったのです。
例によって、訳文と一緒に英文も読んで、よくよくご確認下さい。
(引用始め)
Jack Welch Inflicted Great Damage on Corporate America
ジャック・ウェルチはアメリカの企業に巨大な損害を与えた
Joe Nocera, Bloomberg・March 3, 2020
(Bloomberg Opinion) — There are well-known people who are vilified during their careers only to seem heroic in retrospect. And then there are others who are lionized in their prime, and only later do we realize how harmful their actions truly were.
So it is with Jack Welch, who died on Sunday at the age of 84. I know we’re not supposed to speak ill of the dead, but his effect on American capitalism was too profound ― and too destructive ― to go unmentioned.
(ブルームバーグ)振り返ってみると、そのキャリアの間だけは英雄的に見えるだけで、後になると散々ケナされる有名人達がいる。他にも、最盛期にはライオンのように見えても、後になって我々が、彼らの行動が本当は有害であるかが、初めてわかる人連中もいる。日曜日に84歳で亡くなったジャック・ウェルチが、まさにそれだった。我々は、亡くなった人物の悪口を言うつもりはない。が、アメリカの資本主義に対する彼の影響はあまりにも深刻で破壊的であり、それについて語らない訳にはいかない。
Before the 45-year-old Welch became General Electric Co.’s youngest chief executive officer ever in 1981, the company’s goal was to “simply grow faster than the economy,” according to Fortune magazine’s Geoffrey Colvin, one of journalism’s leading Welch observers. In the decade before Welch took over, GE’s shares had declined 25% ― yet its shareholders, who viewed the company’s dividend as their reward for owning the stock, were sanguine. Despite the stock’s poor performance, Reginald Jones, Welch’s predecessor, was still considered the most influential man in business. Even Wall Street didn’t make a fuss about the share price.
1981年に45歳のウェルチが、ゼネラルエレクトリック社の、最年少の最高経営責任者に就任するまで、同社の目標は「単純に経済よりも速く成長する」ことだった、と、ウェルチウォッチャーの代表者である、フォーチュン誌のジェオフレイ・コルビンは語る。 ウェルチがCEOを引き継ぐ前の10年の間、GEの株式は25%減少したが、同社の配当を株の保有に対する見返りだ、と、考えていたGE株主達は楽観的だった。株価の低いパフォーマンスにも関わらず、ウェルチの前任のCEOであるレジナルド・ジョーンズは、ビジネス界で最も影響力のある人物とみなされていた。ウォール街でさえも、株価について大騒ぎしなかった。
Under Welch, GE’s mission changed. Its new goal was to become “the world’s most valuable company.” Which is to say, he turned the focus of the company to its stock price. Everything became secondary to that. Corporate raiders like T. Boone Pickens and Carl Icahn may have been the first to call for companies to “maximize shareholder value,” but they were outsiders, knocking on corporate America’s door. Welch was the ultimate insider, and when he started to emphasize shareholder value, so did the entire American business culture.
ウェルチの下で、GEの使命は変わった。新しい目標は「世界で最も価値のある企業」になることだった。彼は会社の焦点を株価に向けた。それ以外のすべては二の次になった。 T.ブーン・ピケンズや、カール・アイカーン等の企業ライダー達が、最初に「株主価値の最大化」を、企業に要求したのかもしれない。しかし彼らは、アメリカ企業のドアを外からノックして入って来たアウトサイダーだった。ウェルチは究極のインサイダーだった。彼が株主価値を強調し始めたとき、アメリカのビジネス文化の全体がそうなり始めた。
Did he succeed? By the standard he set for himself, the answer is clearly yes. During Welch’s 20-year tenure, GE’s total return was about 5,200%, more than double that of the S&P 500 Index. Its revenue grew from $25 billion to $130 billion. Profits were up fivefold. For a while, GE was the world’s most valuable company. Welch became rich ― his severance alone was $417 million ― but so did many of GE’s top executives. Why? Because they made the bulk of their money not from their salary but from the stock options Welch heaped on them.
彼は成功したのか?彼が自分自身で設定した基準では、答えは明らかに「イエス」だ。ウェルチの20年間の在職期間中、GEの総収益は約5,200%で、S&P 500指数の2倍以上だった。収益は、250億ドルから1,300億ドルに増加した。利益は5倍に増加した。しばらくの間、GEは世界で最も価値のある企業だった。ウェルチは金持ちになった – 彼の退職金だけで4億1700万ドルだった- しかし、GEの他のトップエグゼクティブの多くも、皆そうだった。なぜか?彼らは大部分のお金を給料からではなく、ウェルチが積み上げたストックオプションから稼いだからだ。
Something that is often obscured about the rise of shareholder value is the degree to which it coincided with a roaring bull market. CEOs were praised for their brilliance when in truth they were simply lucky to be in the right place at the right time. This is especially obvious when you look at Welch’s track record. He took over GE 16 months before the 1980s bull market began in August 1982. During those 16 months, GE’s stock price fell 5%. And he retired six months after it ended in March 2000. Guess what? The stock dropped 24% before he left.
株主価値の上昇に関する議論でしばしば曖昧になるのは、かつてない程の盛況だった株式市場との一致の度合いについてだ。 CEO達がその輝ける手腕を称賛されたのは、実のところ、適切なタイミングで、適切な場所に、彼らがいたからだ。彼らは単に幸運だっただけなのだ。この事は、あなたがウェルチの実績を見れば、特に明白になる。彼は1982年8月に、1980年代の強気相場が始まる16か月前に、GEを引き継いだ。その(強気相場が始まるまでの)16か月の間に、GEの株価は5%下落した。そして、強気相場が終わった2000年3月から6か月の後に、彼はCEOから引退した。そこで何が起きたか?彼が去る前(の6か月の間)に、GE株価は24%下落したのだ。
Consider also how Welch kept GE’s stock up during his tenure. Yes, some of it was the result of good management - buying NBC at the right moment, for instance. But he also had an uncanny knack for beating analysts’ earnings estimates by a penny quarter after quarter. You can’t do that at a conglomerate the size of GE unless you are playing accounting games.
ウェルチが在任中に、GEの高い株価をどのように維持したかについても、詳しく検討しよう。そう、その一部は例えば、適切なタイミングでNBCを購入するなどの、彼の優れた経営の結果だった。しかし、彼はまた、アナリストの四半期ごとの収益予想を、1ペニーずつ上回るという、怪しげな秘術の持ち主でもあった。GEの規模のコングロマリットでは、あなたがそれを行うことは不可能だ。あなたが会計ゲームをプレイしていない限りは。
Second, Welch turned GE Capital, which had formerly been used to underwrite consumer loans for refrigerators and other GE appliances, into a black box from which Welch could extract whatever profit he needed to make his quarterly numbers. What’s worse, GE Capital began making the same kind of risky loans as the rest of Wall Street - loans that got the company into trouble when the financial crisis arrived. Luckily for Welch, he was long gone by then. His successor, Jeffrey Immelt, took the blame for essentially following Welch’s lead.
第二に、ウェルチは、以前に冷蔵庫やその他の家電品の、消費者ローンを引き受けるために使用されていたGEキャピタルを、ブラックボックスに変えた。そこからウェルチは、四半期ごとの数字を得るための、必要な利益を引き出すことができた。悪いことに、GEキャピタルは、金融危機の到来時にGEをトラブルに陥れる事となった、他のウォール街と同じ種類のリスクの高いローンを作り始めた。幸運なことにウェルチは、その時にそこにはいなかった。彼の後継者であるジェフリー・イメルトは、ウェルチの指導に本質的に従った自分の判断を責めた。
Here’s the key point: Because Welch was so idolized, the path he trod became the path every other CEO trod as well. They all began focusing on shareholder value. That became the basis on which they were judged and paid. And it warped the business culture, causing companies to put employees, vendors and even customers behind the primacy of shareholders. If you want to see what happens when you take maximizing shareholder value to its logical extreme, I give you Facebook. Or, for that matter, Enron.
重要な点はここにある。ウェルチは非常に偶像化されていたため、彼が歩んだ道は他の全てのCEO達の道になった。彼らは皆、株主価値に焦点を合わせ始めた。それが彼らの判断と支払いの基礎となった。そして、それはビジネス文化を歪め、企業は、従業員、ベンダー、さらには顧客さえも、株主価値向上の後ろに追いやることになった。もしもあなたが、株主価値の最大化を論理的に極限まで進めた場合に、何が起こるかを知りたいならば、私はFacebookを例として挙げよう。またはエンロンだ。
You will hear a lot over the next 24 hours about what a business icon Welch was. “The gold standard of greatness,” Jeffrey Sonnenfeld, a Yale University business professor, described him for Bloomberg News’s obituary. Welch’s supporters will make the case that he was a great manager, that his focus on continual improvement imposed high standards and that he developed leaders who went on to run a half-dozen large corporations. There is some truth to that, for sure.
あなたは、ウェルチが、如何に優れたビジネスアイコンであったかついて、今後24時間にわたって、多くのことを聞くだろう。イェール大学のビジネス教授であるジェフリー・ゾンネンフェルドは、「偉大さのゴールドスタンダードだ」と、ブルームバーグニュースの訃報で語った。ウェルチの「サポーター」は、彼が素晴らしいマネージャーであり、継続的な改善に焦点を合わせて高い基準を課し、6つもの大企業を経営するリーダーを育成した、と主張した。確かにいくつかの真実が、そこにはある。
But remember this, too. When you see pharmaceutical companies raising the price of drugs to unconscionable levels; when companies cut back on research and development to satisfy Wall Street; when CEOs routinely make $40 million to $50 million a year, you now know whom to blame.
しかし、これも覚えておくことだ。 あなたが、製薬会社が薬の価格を途方もないレベルに引き上げているのを見たとき; 企業がウォール街を満足させるために研究開発を削減したとき、あるいは、CEOが年間4,000万から5,000万ドルの給料を、継続的に稼いでいるとき、誰がその責めを負うべきかを、あなたは今知っている、という事実を。
(引用終わり)
相田英男 拝
【59】レアメタルの話(追記あり)
相田です。
今日は真面目な技術の話です。
副島先生の新刊に、レアメタルでディスプロシウムという元素が最も重要だ、という記載があったので、説明する。
ディスプロシウムとは、ネオジム磁石と呼ばれる材料に必要な元素である。ネオジム磁石とは、現在の世の中では、最も強力な磁力を持つ磁石である。ハイブリッド車や電気自動車の車輪を駆動するためには、力の強い効率の高いモーターが必要となる。それに使われる最強の磁石が、ネオジム磁石である。
ネオジム磁石を開発したのは、佐川真人(さがわまさと)という日本人技術者である。佐川は、富士通の研究所の材料技術者だった。佐川は富士通で、ネオジムと鉄とホウ素(ボロン)の3元素を組み合わせると強い磁石になると考えて、実験を開始した。しかし、組織の中であまり大事にされない性格のせいか、佐川は実験の途中で上司と喧嘩してしまい、会社を辞める事となる。
その後に佐川は、関西の住友特殊金属という会社に移り、ネオジム磁石を完成させた。佐川の磁石の性能は史上最強であり、アメリカでの学会発表で一躍注目の的になった。ただし、室温でのネオジム磁石は極めて強力だったが、100℃以上の高温に加熱すると、磁力が大幅に低下する欠点があった。この現象を熱減磁(ねつげんじ)という。磁石をモーターに組込んで動かすと、100℃以上に熱くなる場合がかなりある。(モーターの設計にもよるが)このままでは、実用モーターにネオジム磁石は使えない。
佐川達は、周期律表のあらゆる元素をネオジム磁石に添加して、特性の変化を調べた。その結果、熱減磁を起こさないために、最も効果があったのが、中国で産出されるディスプロシウムだった。その当時のディスプロシウムには、特に使い道などなかった。佐川達は、中国から安く大量にディスプロシウムを購入して磁石を作り、大きな利益を挙げる事ができたのだった。
しかし時が過ぎて、中国の技術力、経済力が高まると、話が変わる。自国のディスプロシウムの価値に気付いた中国は、ネオジム磁石を国産化する一方で、ディスプロシウムの輸出に制限を掛けるようになる。当たり前の対応だ。何事にも、上手い話がずっと続く訳では無い。
日本も中国に対抗して、ディスプロシウム使わずに磁力低下を防ぐ技術を追求して、問題を解決した、と言われる。しかし、日本が苦労の末、技術革新によりディスプロシウム量を減らしても、中国ではディスプロシウムをちょっと入れるだけで、磁石のベースの性能を簡単に上げる事ができる。中々に悩ましいものがある。
ネオジム磁石を超える高性能の磁石についても、盛んに研究されて来た。が、結局の処、成功していない。鉄とニッケルを組合わせた、変わった結晶構造の物質が、隕石の中に僅かながら存在し、ネオジム磁石を超える磁力を持つ、とか言われる。しかし、地球上では実験室で作るのが非常に難しいらしく、実用化の目処は全く立っていないという。
佐川はもう70歳過ぎだと思う。彼があと10年長生きすれば、間違いなくノーベル物理学賞を受賞するだろう。
最近のノーベル物理学賞も質が落ちて、出すネタが無くなりつつある。これまでは、南部陽一郎のように、素粒子分野で数年おきに受賞者が出ていた。今の素粒子物理学の最先端は「超ひも理論」というもので、多くの学者がこれに群がっている。しかし「超ひも理論」では、誰もノーベル物理学賞を取れないだろう。理論の結果を加速器による実験で検証する事が、最早不可能になってしまったからだ。現代の技術では到底作れない、超高出力の加速器を使わないと、「超ひも理論」の結果を検証出来ない。実験で検証出来ない研究には、賞を与えないのが、ノーベル賞のルールだ。
南部陽一郎は、歴代日本人物理学者の頂点の人だったが、武谷三男の弟子でもあった。武谷の有名な三段階論は、科学の発展を、経験、実体、本質、の順に進歩するとした。武谷の薫陶を受けた南部は、素粒子物理の進み方について、ローレンス・湯川モード、アインシュタインモード、という、彼独自の分類をしている。アーネスト・ローレンスとはサイクロトロン等の、原子核実験で使われる、高出力の粒子線加速器の技術を確立した学者だ。マンハッタン計画でウラン濃縮を行う際にも、ローレンスが設計したカルトロンと呼ばれる、巨大な電磁石を使った電磁式分離装置が使用された。
物理の問題を解く時に、理論に不備はあるものの、湯川秀樹の中間子のような仮想粒子をまずは考えて、最新型の加速器を使ってその存在を検証する。このやり方がローレンス・湯川モードである。
対してアインシュタインの相対性理論のように、全てを完全に記述出来る理論式を、最初に提示する。その理論に合うような物理現象を予測して、実験で確認するやり方を、アインシュタインモードと呼ぶ。アインシュタインモードはトップダウン型、ローレンス・湯川モードはボトムアップ型の考え方といえる。
実際の素粒子物理は、ローレンス・湯川モードで進んで来た。全ての素粒子の挙動を完全に記述する理論は、今でも存在しない。なので、試行錯誤で研究を進めるしか無かったのだ。しかし、「超ひも理論」に至った現状では、ローレンス・湯川モードは素粒子の問題解決法としては、有効で無くなっている。
ちなみに有名な話だが、湯川秀樹本人は、中間子論を完成させた後では、自らの湯川モードを捨ててしまった。湯川は、極微細な領域では量子力学が成立しないと考えて、量子力学を超える新たな理論の構築を目指していたのだった。このやり方は、アインシュタインモードである。当時はドイツのハイゼンベルクも、同じように、量子力学の適用には限界があり得る、と言っていた。なので、湯川の意気込みも、あながち荒唐無稽とは言えなかった。
そんな湯川を横で見ていた武谷は、「無茶な事はしないで、素直に、地道に研究を進めるべきだ」と、湯川を諭すために「三段階論」を提示したという。この事は西村肇先生の「自由人物理」の中に書かれている。しかし、武谷を超えるへそ曲がりだった湯川は、武谷の忠告を全く受けつけなかった。結果、中間子論以降の湯川は、新たな発見に至る事なく生涯を終えた。
湯川の開拓した素粒子物理学は、その後に、くりこみ、NNG(中野・西島・ゲルマン理論)、クオーク、自発的対称性の破れ、と進歩を続けて、標準理論とされるワインバーグ・サラム理論(実は南部の、自発的対称性の破れ、の焼き直し理論に過ぎない)として、70年代半ばに一応の完成を見た。ローレンス・湯川モードによる着実な進歩の成果だった。
湯川の晩年に、弟子の小林誠(2008年ノーベル賞受賞)が、京都大の湯川研究室のゼミで、ワインバーグ・サラム理論について説明した。その説明の途中で湯川は「そんなおかしなな考えは、聞いた事がない」と、いきなり激昂し、物凄く小林を怒りだしたという。世の中色々あったらしい。
さて、ローレンス・湯川モードが役に立たない現在、ノーベル賞受賞を目指して、「超ひも理論」の研究に日々励む学者さん達には、御愁傷様としか私にはいえない。一方で、レベルの低い学者達には、素粒子で賞が出せない今は、絶好の受賞のチャンスだ。日本のマスコミ界では、まだまだ、ノーベル賞が相当にありがたがられている。なので、佐川も出来るだけ長生きするよう、日々、摂生すべきだろう。徳川家康作戦か?
最後に、実験で検証出来ない「ノーベル経済学賞」は、一体何なのだ?という疑問が自然に湧く。あれは多分、ノーベル賞には到底値しない分野なのだ。世の中はいかがわしさで満ち溢れている。
相田英男 拝
【58】やっぱしダメだわ、この会社はもう
相田です。
新たなロイターの記事を引用します。
風力発電のタワーが次々と倒れて、怪我人まで出るとは、最早、末期症状なのではないでしょうか?
(追ってコメントを追加します)
GE investigates new wind turbine collapse in Brazil
GEはブラジルで起きた、新たな風力発電タービンの倒壊事故を調査している
。
By Luciano Costa
Reuters September 6, 2019
SAO PAULO, Sept 5 (Reuters) – General Electric Co is investigating the cause of another accident involving wind power equipment it built and installed on a wind farm in Brazil operated by power company Omega, the two companies said on Thursday.
SAO PAULO、9月5日(ロイター)-General Electric Coは、電力会社オメガが運営するブラジルの風力発電所に建設し、設置した、風力発電設備に関する別の事故の原因を調査していると、両社は木曜日に述べた。
On Tuesday, a GE wind turbine fell to the ground from its tower at the Delta 6 wind farm in Brazil’s northern Maranhao state. A worker is being treated for injuries.
火曜日に、ブラジルのマランハオ州北部にある、風力発電所のデルタ6で、GEの風力タービンの一基がタワーから地面に倒壊した。 労働者の一人が怪我の治療を受けている。
Two months ago another turbine made by GE collapsed in Brazil when its tower broke in half. There have been three such collapses of GE wind turbines in the United States this year.
2か月前、GE製の別のタービンがブラジルで崩壊し、タワーの高さが半分になった。 今年になり米国では、GE製風力タービンのこのような3つの崩壊事故があった。
“We are working to contain and solve these problems as soon as possible to guarantee the safety and reliability of our equipment,” GE’s Brazilian unit said in reply to a request for comment by Reuters.
「我々は機器の安全性と信頼性を保証するため、これらの問題を可能な限り早く解決し、解決するよう努めている」と、GEのブラジル部門は、ロイターによるコメント要請に応えて語った。
“We are working to find the causes behind the accident,” GE said, adding that it was giving assistance to the worker injured in the accident and his family.
「事故の背後にある原因を見つけるために、我々は取り組んでいる」とGEは語り、事故で負傷した労働者とその家族への支援をしている、と付け加えた。
Omega said it was working with GE to discover the cause of the accident.
電力会社のオメガは、事故の原因を発見するためにGEと協力していると述べた。
RDS Energia, a Brazilian consultancy that develops wind farm projects, said this type of accident was unusual, since towers and turbines are designed to resist winds of up to 300 km (186 miles) per hour.
風力発電プロジェクトを開発する、ブラジルのコンサルタント会社であるRDS Energiaは、このタイプの事故は珍しいと語った。なぜなら、タワーとタービンは時速300 km(186マイル)までの風に耐えるように設計されているからだ。
RDS head Rodrigo Nereu dos Santos said a repeat of such accidents could have an impact on GE’s image and potentially hurt its chances in future tenders to supply equipment.
RDSのロドリゴ・ネレウ・ドス・サントス長官は、このような事故の繰り返しがGEのイメージに影響を与え、将来の入札で機器を供給する可能性を損なう可能性がある、と述べた。
GE has sold more than 3,000 turbines for wind farms in Brazil, accounting for around 5.5 gigawatts of generating capacity. Brazil has currently 15 gigawatts in wind power capacity, accounting for about 9% of its electricity generation.
GEは、ブラジルの風力発電所向けに3,000台以上のタービンを販売し、約5.5ギガワットの発電能力を占めている。 ブラジルの風力発電容量は現在15ギガワットで、国家の総発電量の約9%を占めている。
(Reporting by Luciano Costa; writing by Marcelo Teixeira Editing by Tom Brown)
【57】勝つのはマルコポロスの方だと保険関係者は語る
相田です。
今回の件に関係して、以前に古村さんが翻訳された、マドフ事件についての本を紹介します。この先の成り行きに興味がある方は必見です。皆さん、是非とも買って読みましょう。
『バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容』
アダム・レボー著、副島隆彦 翻訳、古村治彦 翻訳、成甲書房、2010年)
ISBN 9784880862620 ,1800円(本体)
さて、昨日に続き、ロイターのスコット記者の記事を続けて載せます。今回は技術ではなく、保険に関する話なので素人の私は、意味を理解するのに難儀してます。
でも保険関係者の意見だと、マルコポロスの方が正しいようですね。前々からGEの保険分野は危ないとの記事は出てましたが、SECが調査中なので様子を見てたんですね、みんな。
そして、なかなか調査結果を出さないSECの対応に、業を煮やしたマルコポロスが今回の告発に出たと。彼はマドフを告発する際にまず、SECに何回も資料を提出したにもかかわらず、数年間は何も音沙汰が無かったようで、色々と遺恨があるようです。
しかしながら、「俺は空売りしてるからな」と、堂々と公言して告発するとは、あまりにも痛快です。「文句がある奴は何処からでも来い」ですよね。
こんなにも面白すぎる活劇が、日本で全くニュースにならないのは、残念でたまりません。
そして、遂に東芝にもチャンスが来そうです。もうしばらく待てば東芝には、GEのヘビーデューティ・ガスタービン事業が丸々手に入るでしょう。買収費用の全額を出せなくても、アメリカの投資会社と折半すれば、多分買えるでしょうから。あの事業をマネージ出来る会社は、最早、東芝以外にはありません。三菱とシーメンスでは、独禁法に引っかかります。まさかアメリカも、中国にGEガスタービンを売る訳には、流石にいかないでしょう。
そしたら、シベリアにバカスカとガスタービンを作って、天然ガスのパイプラインも北海道まで引いて、北方領土を発展させるのだ!!なんて処まで目指しましょう。
(引用始め)
UPDATE 1- General Electric ranks among riskiest long-term care insurers -Fitch
GEはフィッチにより、最もリスクの高い長期介護保険会社のグループにランキングされた
By Alwyn Scott
ReutersAugust 20, 2019
(Adds GE comment, share price)
NEW YORK, Aug 20 (Reuters) – General Electric Co ranks among the riskiest backers of long-term care insurance, suffering from both high exposure to claims and a relatively small cash pile to pay them, Fitch Ratings said in a report on Tuesday.
ニューヨーク、8月20日(ロイター)-ゼネラル・エレクトリックは、長期介護保険の支援者(パトロン)の中でも、最もリスクの高いグループにランキングされている。なぜなら、高い支払請求に対するエクスポージャー(価格変動リスクにさらされている金融資産の割合)と、それを支払うための現金積立が比較的少ないという、二つの理由に苦しんでいるからだ、と、フィッチは火曜日のレポートで語った。
The Fitch report, which the credit rating agency produces annually, echoed concerns raised last week by financial investigator Harry Markopolos, who estimated that GE has under-reserved by $29 billion for its long-term care policies. GE stepped up its defense of its insurance accounting on Monday.
信用格付け機関が毎年作成するフィッチレポートは、先週、GEが長期介護契約証のための準備金が290億ドル不足すると評価した、金融調査官のハリーマルコポロスによる提起を反映する内容だった。 GEは月曜日に保険部門の会計について対策を強化した。
GE on Tuesday reiterated comments it made on Monday in response to the Markopolos report: “Our current reserves are well-supported for our long-term care portfolio characteristics,” GE said and provided details about how it set key assumptions used in determining its level of reserves.
火曜日のGEは、マルコポロスのレポートに対して月曜日に出したコメントを繰り返した。「我々の資金保有量は、長期介護ポートフォリオの特性に対して、十分にサポートされている。」GEはそこで、準備金のレベルを決定する際の、主要となる仮定の設定方法について、詳細を示した。
GE shares were down 2.7% at $8.44 in morning trading.
GEの株価は、午前中の取引で2.7%下落し8.44ドルとなった。
Long-term care coverage, which pays for assisted living and nursing home stays, has turned out to be far more expensive than insurers assumed when they sold policies decades ago, and has tipped some insurers into financial loss and even bankruptcy.
介護付き老人ホームの滞在費を支払う長期介護保険の費用は、数十年前に保険契約を結んだたときに保険会社が想定したよりも、はるかに高額になることが判明した。一部の保険会社は、経済的損失や破産にさえ陥ることとなった。
Fitch said GE is not alone, and that many insurers still have not set aside enough money to cover losses expected on long-term care policies, which are unusually risky because the costs are volatile and vulnerable to interest rate changes. Even insurers that have taken a more conservative stance and set aside more money have not avoided losses, Fitch said.
フィッチは、GEの他にも、多くの保険会社は依然として、長期介護契約で予想される損失をカバーするのに必要な、十分な準備金を確保しておらず、非常に危険な状況だ、と述べた。長期介護に必要なコストは不安定で、金利の変動に対して脆弱である。より保守的な姿スタンスの、より多くの資金を確保している保険会社でさえ、損失を回避できないと、フィッチは述べた。
But GE ranked second on Fitch’s list of the 16 riskiest long-term care insurers, just below Genworth Financial Inc a company that GE spun out in 2004 and that holds former GE long-term care policies.
しかしGEは今回、フィッチの最もリスクの高い16の介護保険会社のリストの中で、2位にランクされた。これは、2004年にGEがスピンアウトした、元々はGEの介護保険会社であるジェンワース・フィナンシャルのすぐ下だった。
GE has below average reserves and “very high” exposure to long-term care for more than 250,000 retirees and others who receive benefits paid for by such policies, Fitch Ratings analyst Anthony Beato told Reuters.
フィッチ・レーティングズのアナリスト、アンソニー・ベアトはロイターに語った。「GEは、準備金の平均値が低く、同時に「非常に高い」危険度の長期介護に関するエクスポージャーを(5万人以上の退職者と、その他のGE保険契約により給付を受け取る人々のための)を持っている。」
The other insurers cited as having below average reserves and very high exposure are Genworth, Unum Group and Senior Health Insurance Co of Pennsylvania.
平均以下の準備金と、非常に高いエクスポージャーを持つ保険会社として、他に引用されたのは、ジェンワース、ユニムグループ、そしてペンシルベニア州のシニアヘルス保険会社だった。
GE scored high, Beato said, because it has mostly older policies written when the costs of long-term care were poorly understood. A large portion of GE’s policies also provide lifetime benefits and some contain inflation protection benefits.
ベアトは、「GEの危険度スコアが高いのは、長期介護に必要な費用が十分に理解されない時期に書かれた、古い保険契約がほとんどだったためだ」と語った。 「GEの契約の大部分は終身給付であり、一部にはインフレ時の損失を保証する内容までも含まれている。」
“When you compound all of that together, (GE’s portfolio) looks much riskier than what the rest of the industry maintains,” Beato said.
「これらすべてを組み合わせると、(GEのポートフォリオは)業界の他の企業が維持しているものよりも、はるかにリスクが高く見える」とベアトは語った。
GE’s insurance group also has only about $1 billion in capital on a statutory accounting basis, Beato said. While GE, as the parent, has put in money to shore up reserves in the past, Fitch did not factor that into its rankings because it wanted a comparison of reported statutory capital levels across the industry, Beato said.
また、GEの保険グループは法定会計ベースで約10億ドルの資本しか持っていない、とベアトは言った。親会社であるGEは、過去に準備金を支えるために資金を投入したが、フィッチは、報告されている業界全体での法定資本レベルとの比較を望んだめ、それをランキングに織り込まなかった、とベアトは述べた。
“Should GE have to increase reserves further, the capital base continues to be dwarfed by this very large exposure” at GE’s insurance operating subsidiary, Beato said.
「GEが準備金をさらに増額しなければならない場合、この非常に大きなエクスポージャーによって、資本基盤は更に縮小するだろう」と、ベアトは述べた。
(引用終わり)
相田英男 拝
【56】いや~、こんなことになるとは思わなかっただよ
相田です。
アメリカのニュースが錯綜している(私の見る限り)ようなので、1番信頼がおけそうな、アーウィン・スコット記者による記事を載せます。スティーブ・トゥサは、まだコメントしていないようです。
この板に、誰が読むかわからないアメリカの記事を載せ続けて来ましたが、ここまで大事になるとは想像すらしませんでした。マルコポロスはイカサマ師の様に書かれる記事もありますが、GEと刺し違える覚悟で、命を張っています。
一部の識者は、今回の事態を、アメリカ経済崩壊前のカナリアのさえずりだ、とみなしているようで、私だけでは、解説がいよいよ追っつかなくなって来ました。
まだまだ唖然とするイベントが続きそうです。
(引用始め)
GE shares fall on Madoff whistleblower calling its finances a fraud
GEの株は、かつてのマドフ告発者により、財務状況が詐欺であると指摘されたことで、下落した。
Alwyn Scott, Ankit Ajmera
AUGUST 15, 2019 / 9:11 PM
(Reuters) – General Electric Co (GE.N) shares fell as much as 15% on Thursday after fraud investigator Harry Markopolos, who blew the whistle on Bernard Madoff’s Ponzi scheme, said GE was concealing deep financial problems, prompting a sharp rebuke from GE’s new CEO.
(ロイター)-ゼネラル・エレクトリック社の株式は、木曜日(8月15日)に15%も下落した。バーナード・マドフのポンツィ・スキームを告発した事で有名となった、金融詐欺捜査官のハリー・マルコポロスが、「GEは深刻な財政問題を隠している」と述べたために。 マルコポロスの発言に対し、GEの新しいCEOは激しく非難した。
Chief Executive Officer Larry Culp said Markopolos’ 175-page report contained factual errors and constituted “market manipulation – pure and simple,” because Markopolos stood to profit from short-selling tied to its release.
GEの最高経営責任者であるラリー・カルプは、「マルコポロスの175ページのレポートには事実誤認があり、“ 市場操作 − あまりに純粋で単純な ” に過ぎない」と主張した。なぜなら、マルコポロスは彼の発表に関連して、GE株を空売して利益を得ていたからだ。
Short sales, or bets that a share price will fall, have risen 17% in GE stock over the past month to 110 million shares worth about $995 million before the report came out Thursday, said Matthew Unterman, a director at S3 Partners, a financial analytics firm in New York.
ニューヨークの財務分析事務所の、S3パートナーズのディレクターであるマシュー・ウンターマンによると、GE株への空売り、または株価下落へのベットは、過去1ヶ月の間に17%も上昇し、レポートが公表される木曜日の前には、約9億9,500万ドルに相当する1億1,000万株に達した、と述べた。
In the report http://www.gefraud.com, Markopolos accused GE of hiding $38 billion in potential losses and asserted that the company’s cash and debt positions were far worse than it had disclosed.
公表したレポートの中で、マルコポロスはGEが380億ドルの潜在的損失を隠していると非難し、会社の現金と負債のポジションは、開示されているよりもはるかに悪い、と主張した。
“GE’s true debt to equity ratio is 17:1, not 3:1, which will undermine its credit status,” Markopolos said.
「GEの真の負債比率(D/Eレシオ)は3:1ではなく17:1であり、これにより信用状態は弱体化しているだろう」とマルコポロスは語った。
The report also says GE is insolvent and asserts that its industrial units have a working capital deficit of $20 billion.
彼の報告書はまた、GEが支払不能に陥っており、その産業部門が200億ドルの運転資本不足に直面していると主張する。
“He is selectively front-running widely reported regulatory processes and rigorous investigations without the benefit of any access to GE’s books and records,” GE board member and audit committee chair Leslie Seidman said in a statement, referring to Markopolos.
GEの役員の一人で監査委員長のレスリー・サイドマンは、マルコポロスについて次のように言及した。
「彼は、GEの帳簿や記録へのアクセス権を持っていない。このため彼は、報告されている規制プロセスと厳格な調査結果の、幅広い記載内容から、適当に選択してフロント・ランニング(顧客の注文情報を利用した自己売買のこと)を行なっている」
While investors sent GE shares sharply lower, the report echoes the assertions of some of Wall Street’s more skeptical analysts, who have long raised alarms about GE’s low cash flow, frequent accounting charges and writedowns, and what they describe as opaque financial reports.
投資家達がGE株を大幅に引き下げた一方で、このレポートは、GEの低いキャッシュフロー、頻繁に追加される会計費用と評価損、不透明な財務報告について、長らく警告を発してしてきた、ウォールストリートの(GEへの)懐疑的なアナリストの主張を反映したものだった。
Culp, the first outside leader of the company who took over in October, has made no secret of its woes.
10月に就任した、最初のGE外部からのリーダーであるカルプは、その悲惨な状況について隠すことはしなかった。
The industrial businesses have seen a $2.2 billion cash outflow so far this year, and Culp said last month that GE may incur cash costs of $1.4 billion this year from the grounding of Boeing Co’s (BA.N) 737 MAX jetliner. GE makes engines for the jet through a joint venture with Safran SA (SAF.PA) of France.
GEの産業機器部門は、今年になり22億ドルの現金流出を経験した。カルプは先月、ボーイング社(BA.N)737 MAXジェット旅客機の飛行停止により、GEは今年14億ドルの現金費用を負担する可能性があると述べた。 GEは、フランスのサフランSAとの合弁会社を通じて、このジェット旅客機用のエンジンを製造している。
The report alleges that GE faces $38 billion in future expenses that it has not disclosed. “GE’s $38 billion in accounting fraud amounts to over 40% of GE’s market capitalization, making it far more serious than either the Enron or WorldCom accounting frauds,” the report says.
マルコポロスの報告書は、GEが開示していない将来の費用として、380億ドルの負担に直面していると主張している。 「GEの380億ドルの会計詐欺は、GEの時価総額の40%を超えており、エンロンまたはワールドコムの会計詐欺よりもはるかに深刻だ」と報告書は述べている。
In a statement GE said, “We remain focused on running our business every day and … will not be distracted by this type of meritless, misguided and self-serving speculation.”
これに対し、GEは次のように述べた。「我々は日々ビジネスを運営することに注力している。このような無益で、見当違いの、利己的な憶測に気を取られることはない。」
GE said it “stands behind its financials” and operates to the “highest-level of integrity” in its financial reporting.
GEは自らの財務状況に責任を持っており、財務報告書に記したように、それは「最高レベルの完全性」で運営されている、と述べた。
It also said Markopolos was known to work for unnamed hedge funds that typically benefit from short-selling a company’s stock.
また、GEはマルコポロスについて、典型的な会社株式の空売りから利益を得るような、名前を公開しないあるヘッジファンドで働いている、とも述べました。
BACKED BY A HEDGE FUND
A disclaimer in the report stated that it was drafted by Forensic Decisions PR LLC, which will get compensation from a third-party entity that could benefit from a decline in GE’s share price. The report did not name the entity.
マルコポロスのレポートの免責事項によると、Forensic Decisions PR LLC(という会社)が起草したものであり、GEの株価が下落した際に利益を得ることができる第三者組織から、マルコポロスは報酬を受け取ると述べている。 レポートはその組織の名前を明らかにしていない。
Speaking on CNBC on Thursday, Markopolos said he would receive a percentage of any profits generated by the report. He declined to provide details about the compensation or name the fund involved, which he said was “a mid-sized U.S. hedge fund.”
木曜日にCNBCの取材でマルコポロスは、彼のレポートによって生み出された利益の一部を受け取るだろうと述べた。 彼は補償内容の詳細を提供することも、関与するファンドの名前を語ることもしなかった。彼は「とある中規模の、米国のヘッジファンド」だと語った。
GE shares closed down 11.3% at $8.01 on Thursday, its biggest one-day percentage drop since April 2008.
GE株は木曜日に11.3%下落し、8.01ドルで取引された。これは1日における株価の下落では、2008年4月以来の最大のものだった。
A regulatory filing showed CEO Culp bought GE shares worth nearly $2 million in open market purchase at an average price of $7.93 per share. In the past two years, GE has announced more than $40 billion in asset writedowns and accounting charges. The company also has said its accounting is being investigated by the U.S. Securities and Exchange Commission and the Department of Justice.
規制当局に提出された資料から、CEOカルプは1株あたり平均$ 7.93の価格で、200万ドル近くのGE株を公開市場で購入したことがわかった。 過去2年間で、GEは400億ドルを超える資産評価減と会計費用を発表した。 同社はまた、GEの会計状況が米国証券取引委員会と司法省によって調査されていると述べた。
The report details GE’s exposure to long-term care insurance, the subject of a federal class-action lawsuit awaiting a decision on GE’s motion to dismiss.
マルコポロスのレポートは、GEの長期介護保険 (現在GEによる解約手続き決定に関して、民事集団訴訟の裁定中である)に関するエクスポージャー(価格変動リスクにさらされている金融資産の割合)について、詳しく説明してる。
It says GE’s financial statements about its insurance business do not correspond to those of eight insurers that Markopolos says hold about 95% of GE’s exposure.
それによると、GEの保険事業に関する財務諸表は、マルコポロスがGEのエクスポージャーの約95%を保持していると主張する、8社の保険会社の財務諸表とは一致しない、と記されている。
Markopolos is best known for alerting regulators in the early 2000s to signs that money manager Madoff’s investment firm was a Ponzi scheme, a deception in which unusually high returns for early investors are generated with money from later investors. Madoff was arrested in 2008 and later sentenced to 150 years in prison.
マルコポロスは、マドフがマネージャーを務めていた投資会社が、ポンツィ・スキームであったという兆候を、2000年代初めに規制当局に警告したことで有名である。 マドフは2008年に逮捕され、その後150年の刑を宣告された。
John Hempton, co-founder of the Sydney, Australia-based Bronte Capital hedge fund, wrote in a blog post here on Thursday that GE’s 14.7% average profit margin in recent years was in line with the returns of its industrial peers, not “too good to be true” as Markopolos alleges.
オーストラリアのシドニーに拠点を置くブロンテ・キャピタル・ヘッジファンドの共同設立者であるジョン・ハンプトンは、木曜日のブログ投稿で、「最近のGEの14.7%の平均利益率は、同業他社の利益と一致しており、マルコポロスが主張するような「事実よりもあまりにも良すぎる」訳ではない」と、書いている。
“GE remains the unequivocal leader” in medical imaging and jet engines and its currently depressed profit margin will likely rebound, he wrote, adding, “Harry’s report is silly. The market should ignore it.”
「GEは今後も、医療画像およびジェットエンジンの明確なリーダーであり続け、現在落ち込んでいる利益率が回復する可能性が高い」と、彼は書いた。「ハリーの報告書は馬鹿げている。 市場はそれを無視すべきだ。」と続けた。
Worried investors jangled phones on Wall Street Thursday. Nick Heymann, an analyst at William Baird & Co, said questions focused on $18.5 billion of the $38 billion in charges that Markopolos says GE is concealing.
心配になった投資家達は、木曜日にウォール街を多くの電話により混乱させた。 William Baird&Coのアナリストのニック・ヘイマンは、マルコポロスがGEが隠蔽していると主張する380億ドルの費用のうち、185億ドルに焦点を当てた疑問を語った。
Markopolos said GE will need to set aside that money to cover its long-term care policies in addition to the $15 billion it has already begun to set aside.
マルコポロスは、GEがすでに確保し始めた150億ドルに加えて、長期介護政策をカバーするためにその資金を確保する必要がある、と述べた。
Heymann said the remainder of the $38 billion was already largely known: charges related to an accounting rule change coming in 2021 and potential losses on GE’s 50.4% stake in subsidiary Baker Hughes, which it plans to sell.
ヘイマン氏は、380億ドルを暗示する物は、すでに広く知られていると語る。2021年に発生する会計規則の変更に関連する費用と、販売を予定している、子会社のベイカー・ヒューズの、GEの50.4%持分の損失可能性がそれである、と彼は語る。
“I don’t know the validity of the $18.5 billion,” Heymann said. “I’m trying to figure it out.”
「185億ドルの妥当性についてはわからない」とヘイマンは言った。「私はそれを理解しようとしている。」
But he said if the figure was accurate, Culp would not have recently raised GE’s 2019 financial targets.
しかし彼は、その数値が正確だったならば、カルプは最近GEの2019年の財務目標を引き上げることはなかっただろう、と述べた。
(引用終わり)
相田英男 拝
【55】台風も高校野球も日韓関係悪化も、最早、私の頭には無い
相田です。
久々にGEネタを投稿した翌日に、あまりに衝撃的なニュースが出ました。
取り急ぎ、日本語版を引用します。
マルコポロスによると、「GEはチャプター11の申請を覚悟すべし」とのことです。
(引用始め)
米GEに不正会計疑惑、会計専門家が指摘 GEは反論
日経新聞電子版
2019/8/16 3:06 (2019/8/16 6:34更新)
【ニューヨーク=清水石珠実】米国の著名会計専門家が15日、ゼネラル・エレクトリック(GE)が巨額な損失を隠すために不正会計を行っているとの報告書を公表した。「(2001年に経営破綻した)エンロンよりも巨額の不正を働いている」と指摘したことで、同日の米株式市場では追加損失が膨らむとの懸念から同社株は急落、11%安で取引を終えた。GE側は疑惑を否定している。
GEの不正会計を指摘したのはハリー・マルコポロス氏で、リーマン・ショックをきっかけに発覚した史上最大規模の詐欺事件「マドフ事件」を告発したことで知られる。15日はGE株が一時15%超下落する場面もあった。
GEに関する報告書は175ページに上り、あるヘッジファンドと協力して7カ月かけて調査したという。発見できただけで不正額は380億ドル(約4兆円)に上るが、それも「氷山の一角にすぎない」と指摘した。特に介護保険事業で、保険の引当金に不正があると問題視した。
同日、米経済局CNBCに出演したマルコポロス氏は「(今回の不正会計摘発がGEの)経営破綻につながる可能性もある」と語った。
GE側は「高い基準にのっとって企業活動を行っている。マルコポロス氏の主張に根拠はない」との反論コメントを発表した。保険事業についても「十分な引当金を積んでいる」とした。
(引用終わり)
相田英男 拝
【54】相変わらずGEに手厳しいあのアナリスト
相田です。
数日前に出たGEについての記事ですが、忘備録的に載せます。
スティーブン・トゥサの最新のコメントでは、相変わらずGEについてネガティブな内容で、株価の目標値は「5ドルだ」という激辛評価だったそうです。ボーイング737 MAX旅客機の飛行停止で、LEAPという最新型ジェットエンジンの販売が加速できていないのが、目下の悩みとのこと。
このトゥサのコメントが出た翌日には、GEのCEOのラリー・カルプは、自分のポケットマネーから、GE自社株を300万ドル買ったそうです。去年の11月のCEO就任直後にも、220万ドル相当のGE株をカルプは買っており、アナリストとCEOの間で神経戦が繰り広げられているようです。
(引用始め)
J.P. Morgan Sees More Downside for General Electric (GE) Stock
J.P モルガンはGE株価の一層の下落を予測
Ben Mahaney, SmarterAnalyst August 11, 2019
General Electric (GE) shares have fallen back to earth, wiping out this year’s gains, as the frenzy dies down.
ゼネラルエレクトリック(GE)の株価は、今年の利益が一掃され、熱狂も衰えた事で、再び地に堕ちた。
In late July, GE reported better-than-expected Q2 numbers, beating analysts’ estimates on both revenue and EPS. However, investors are still nervous on the road ahead, and one analyst says it’s time to take profits.
GEは7月下旬に、予想を上回る第2四半期の数値を報告し、アナリスト達による収益およびEPS(1株当たり利益)予測の両方に打ち勝った。 しかし、投資家はGEの前途について未だに神経質であり、アナリストの一人は、今が利益を確定する機会だと言っている。
5-star J.P. Morgan analyst Stephen Tusa, a frequent GE bear, has maintained his Underweight rating on GE stock, with a $5 price target, which implies nearly 45% downside from current levels.
J.P.モルガンの五つ星アナリストであるスティーブン・トゥサ(彼はGEに対する悲観的な予想家である)は、GE株価のアンダーウェイト格付けを変える事なく、株価目標を5ドルとした。トゥサの予想は、株価が現在の水準から45%近くも下落する事を意味する。
Overall, Tusa says GE’s recent quarterly results showed an operational miss driven by Aviation, with FCF below his estimates. Free cash flow ― a major point that many look to ― came in below Tusa’s estimates, further contributing to his disregard for the stock.
トゥサのコメントを要約すると、GEの最近の四半期における結果は、FCFがトゥサの推定値を下回ったことを含めて、航空機エンジン事業(GEアビエーション)の経営舵取の失敗を示している、ということだ。フリーキャッシュフロー(多くの人が注目する主要ポイント)が、トゥサの予想を下回ることが、株価の下方予測を裏付けている。
The main takeaway for Tusa is that the company operationally slipped. The analyst says, “the combined Power/Renewables segments [came in] worse,” despite help from “modest” growth in Healthcare. But the worst offender came from Aviation, which missed profit estimates and the segment Tusa calls “the key value driver.”
トゥサの格下げの主な根拠は、会社経営の失敗にある。彼は、GEはヘルスケア事業の「ゆるやかな」成長の助けがあったにもかかわらず、「電力/再生可能エネルギーを合わせたセグメントが悪化した」と述べている。しかし、利益予想を誤った最悪の原因は航空機事業から来たもので、トゥサはそのセグメント(GEアビエーション)の事を「キーバリュードライバー」と呼ぶ。
Indeed, GE’s aviation segment is the backbone of the company right now, and the lead generator of revenue. In the second quarter, the segment generated the plurality of total revenue, at $7.9 billion, or almost 30% of total revenue. Through CFM International ― a joint partnership between GE and the French Safran ― Aviation produces jet engines, including the new LEAP engines. But a major challenge of late for Aviation has been the grounding of the Boeing 737 MAX, a major buyer of the LEAP engines. While the company is still booking sales of the engine to other aircraft, there will be a continued holdback in revenue until the 737 MAX gets back in the air.
実際、現在のGEにおいて、航空機事業セグメントは会社のバックボーンであり、収益の主要な発生源である。第2四半期に、このセグメントはGE総収益の中で最大となる79億ドル、約30%を生み出した。 GEとフランスのサフラン社との共同会社であるCFMインターナショナルを通じて、GEアビエーションは、新型のLEAPエンジンを含むジェットエンジンを製造している。しかし、GEアビエーションの最近の大きな課題は、LEAPエンジンの主要な買い手であるボーイング737 MAXの飛行停止にある。同社はまだ他の航空機へのエンジン販売を受注しているが、737 MAXの飛行が再開されるまで収益の低迷は続くだろう。
Tusa continues to look at the numbers, and just does not believe GE’s stock is priced right. The analyst believes “the underlying core fundamentals are actually a bit worse,” which push him to reiterate his bearish rating.
トゥサは引き続き数字を見ており、現在のGEの株価が適正だとは考えていない。 彼は、「GEの根本的なコアファンダメンタルズは、実際には少し悪い」と考えており、弱気の評価を繰り返している。
All in all, for much of the year, Wall Street was bullish on GE. But that sentiment is beginning to change. TipRanks analysis of 10 analyst ratings shows a consensus Hold rating, with three analysts saying Buy, four suggesting Hold, and three recommending Sell. However, the average price target among these analysts stands at $11.36, which implies about 24% higher from where the stock is currently trading. (See GE’s price targets and analyst ratings on TipRanks)
全体として、年間を通じてウォール街はGE株価に対して強気だった。 しかし、その雰囲気は変わり始めている。TipRanks(経済アナリストの格付会社) の10人のアナリストによる格付では、3人が買い、4人がホールド、3人が売りを推奨しており、現状維持のコンセンサスである。これらのアナリストのGE株価の平均目標値は11.36ドルであり、現在の取引価格から約24%高い。
(引用終わり)
相田英男 拝
【53】問題はタービンだけではない、まだまだ続くよGEパワーの闇
相田です。
色々と世の中は出来事が目白押しですが、私はこの話題で、しばらく押し通すつもりです。
この話は、私も年初の記事で見かけて気に留めていました。が、遂に交換作業を始めるみたいです。
変圧器というのは、トランスと言ったりもしますが、リング形状の鉄芯に二つの銅線コイルを巻いただけの、単純な構造の機械です。コイルの巻数を変えて電圧を変えるだけです。皆さんの周囲にある機械のどれか一つには、必ずこれが付いている筈です。この記事のような電力用になると、電流のエネルギーが桁違いに大きくなりますけど。
記事では爆発した(explosions)と書かれていますが、おそらくは絶縁に使う樹脂材などが、高温で溶けて発火したのだと思います。しかしながら、トランスという枯れた古臭い技術の装置であるにもかかわらず、こんな事故を起こすなどとは、あまりにも製造技術のレベルが低すぎるとしか、言えません。製造元はまだ責任を認めてないようですが。
評論家の野口悠紀雄氏などは、「日本は製造業に頼りすぎだ、製造業以外の産業に切り替えるべきだ」と、今でも盛んに主張されています。しかし、脱製造業化を進めるにしても、ここまで物作りの基礎レベルが、衰えてしまうのも、如何なものかと私は思えます。
目先の利益がなかなか上がらなくても、日本では基礎的な製造技術を、将来もきちんと維持し続けるべきではないでしょうか。地味に技術をつないで生き延びる事が、日本人には向いているのではないのでしょうか?
ぱっと見のカッコ良さばかり追っても、この元世界最強と謳われた会社のように、最後にドツボにはまって終わるのが、オチではないのでしょうか。
我々も他人の失敗から、賢く学ぶべきだと考えます。
(引用始め)
After explosions, Brazil power transmission companies remove GE equipment
爆発事故が続いたことから、ブラジルの変電設備会社はGE製変圧器の交換を始めた
By Luciano Costa
Reuters July 2, 2019
SAO PAULO (Reuters) – After an unusual number of explosions, several Brazilian power transmission companies have started removing a piece of equipment made by General Electric Co , a blow for GE’s Brazil unit as it battles competing suppliers from China and India.
SAO PAULO(ロイター) – 通常ではない数の爆発事故の後、いくつかのブラジルの送電会社は、GE製の変圧器の他社製品への交換を開始した。それは、ブラジルにおいて中国やインドの競合他社と戦っている、GEのブラジル事業部への打撃となる。
Brazil’s grid operator ONS recommended replacing GE’s CTH-550 transformer model after registering 53 explosions, as Reuters exclusively reported in January.
1月にロイターが独占的に報告したように、ブラジルの送電会社ONSは、53回に登る爆発事故が報告されたGE製の変圧器:CTH-550 について、他器への交換を推奨している。
ONS said then that the equipment showed “a failure rate that is superior to what is expected” for such a device.
ONSはその推奨の際に、GEの変圧器に関して「予想よりも高い故障率を示した」と、述べた。
There are close to 700 pieces of that equipment in Brazil’s grid, each costing up to 100,000 reais ($26,000). Power transmission companies have already launched tenders to buy replacement transformers while they discuss the costs and a schedule for the changes with GE and regulators.
ブラジルのグリッド(送電、変電インフラ設備)には、問題となる変圧器が700個近くあり、それぞれの交換に必要となるコストは最大10万レア(26,000ドル)となる。送電会社はすでに、交換コストとスケジュールについてGE及び規制当局と話し合いながら、交換用変圧器の購入のための入札を開始している。
In a statement to Reuters, GE said it is investigating what caused the equipment failure in Brazil.
ロイターへの声明でGEは、ブラジルでの変圧器の故障の原因を現在調査していると述べた。
“GE Grid Solutions performed a series of checks in the equipment with its clients and, as of this moment, there is no evidence that the problems were caused by the design, components or production processes,” it said.
「GEグリッドソリューションズは、顧客との間で一連の機器チェックを実施したが、現時点では問題が、設計、コンポーネントまたは製造プロセスによって引き起こされた、という証拠はない」と語った。
Brazil’s electrical energy regulator Aneel said that, after conducting a detailed analysis, it has determined the problem is with the manufacturer.
ブラジルの電力規制機関であるAneelは、詳細な分析を行った結果、問題は製造業者にあると判断した、と語った。
“The transmission companies acquired a product which, according to the reports, has presented a high rate of failure,” Aneel director Sandoval Feitosa told Reuters.
Taesa , one of Brazil’s largest power transmission companies, controlled by regional utility Cemig
AneelのSandoval Feitosa社長はロイターに対し、「製品を回収した送電会社が作成した分析レポートによると、これらの回収した機器は高い故障率を示した」と述べた。地域最大手のCemig とコロンビアのISA によって管理されている、ブラジル最大の送電会社の1つであるTaesa は、送電ネットワーク内のすべてのGEモデルCTH-550 の交換を開始した、と述べた。
Taesa’s CEO Raul Lycurgo Leite said the changes will be completed next year, adding that it will take time due to the buying process and coordinated grid work.
TaesaのCEO、Raul Lycurgo Leiteは、来年には交換が完了すると述べ、購入プロセスとグリッド調整の作業のためには時間がかかるだろう、と付け加えた。
China’s State Grid Corp , which has expanded strongly in Brazil this decade, has also confirmed plans to make the changes, but did not provide further details.
この10年間で、ブラジルで大きく拡大した中国のState Grid 社もまた、交換事業に関与する計画を確認したが、それ以上の詳細は提供していません。
Other companies such as Furnas and Copel said they have opened tenders to buy new transformers.
FurnasやCopelのような他の会社は、彼らが新しい変圧器を買うための入札を開いたと言述べた。
These companies are also negotiating with Brazil’s electricity regulator Aneel to have some fines suspended. They were fined due to interruption in the flow of power after the explosions and say they are not responsible for the outages.
これらの会社はまた、ブラジルの電力規制者Aneelといくつかの罰金の停止について交渉中である。彼らは、爆発事故後に起きた電力供給の中断について罰金を科されており、彼らは送電機能停止に対して責任がないと言っている。
(Reporting by Luciano Costa; writing by Marcelo Teixeira; Editing by Lisa Shumaker)
(引用終わり)
相田英男 拝