理科系掲示板
※ログイン後に投稿フォームが表示されます。
Loginはこちら【113】Re : 科学と技術は同じではない
宮林(会員番号7327番)です。
科学(Science)が自然界の現象を記述する法則を探求する営みの結果が蓄積された知見の体系であるのに対して、技術(Technology)は目標とする課題を解決するためのソリューションをScienceにより得た知見を用いて具現化することですから、両者は違いますね。
流体が物体に当たったとき表面での流速の高低、圧力の高低、渦の発生の有無がどのような条件式で記述できるか体系化したものが流体力学で、これはScienceです。
一方、それにもとづいて、どのような寸法と形状の翼にしてどれだけの推進力を発揮するエンジンを使えば、計画する重量の人員や貨物を企図した速さで要求される距離を運べる機体になるかを計算して描き出し、それに沿った飛行機の実物を作って飛ばすことはTechnologyに該当します。
Scienceのための実験研究のアイデアを思いついても、必要な性能・機能を持つ実験道具を実現するTechnologyがないときは成果を出せないので、その実験に着手するには時期尚早とアイデアが寝かされることもあるし、Technologyの発達により、新しいScienceの実験研究を行う学問分野が創生することもあり、別ものではあるが互いに深く関連はしています。
【112】科学と技術は同じではない
相田です。
評論家の池田信夫のブログで、以下の文章が記載されていた。全文ではないが引用する。
(引用始め)
2023年09月01日11:23 (池田信夫ブログより)
「軍事革命」が近代科学を生んだ
この投稿(相田注:大石雅寿氏の旧Twitterへのある投稿文のこと、引用元のブログ参照)が炎上しているが、その発火点は「軍事研究が学問だとさ」という大石雅寿氏(国立天文台准教授・学術会議正会員)の(相田注:旧Twitterへの)投稿である。ここには軍事の蔑視だけでなく「技術は科学ではない」という理学部系によくある思い込みがあるが、これは誤りである。科学は本質的に技術なのだ。
学問(エピステーメー)と技術(テクネー)を別の知識と考えるのは、古代ギリシャから同じである。中国では印刷術も火薬も発明されたが、産業革命は起こらなかった。それは学問と技術がまったく別の知識だったからだ。
学問の担い手はエリートで、その条件は古典を暗記することだったが、技術は職人が経験的に蓄積した知識で、体系化されなかった。ヨーロッパ中世でも最高の知識人は、聖書やアリストテレスを読んだ聖職者だったので、オリジナリティは重視されず、イノベーションには価値がなかった。
それを変えたのは、16世紀の植民地戦争と軍事革命だった。学問で戦争に勝つことはできない。特にアジアや新大陸を支配したイギリスにとっては、古典は役に立たなかった。大砲や爆弾などの重火器が生まれ、異民族と戦うには実証的な知識が必要になった。
しかし観察や実験だけで科学はできない。新しいパラダイムが生まれるには、聖書とは違う理論が必要だった。ニュートンは神学者であり、『プリンキピア』は神の構築した宇宙の秩序を数学的に説明するものだったが、結果的には天動説よりはるかに正確に天体の運行を予言した。
その数学理論は、大砲の軌道計算に使われた。相手をねらう鉄砲とは違って、重火器は軌道計算ができないと役に立たない。天文学が軍事技術に応用されたことで、各国は競って科学技術に多くの人材を動員し、近代科学が飛躍的な発展を遂げたのだ。
(引用終わり)
相田です。引用文に書かれている「「技術は科学ではない」という理学部系によくある思い込みがあるが、これは誤りである。科学は本質的に技術なのだ」という池田の理解は、間違っている、と、私は思う。技術と科学は同じと考えるのは、日本独自のユニークな考えである。
この根拠は、言わずもがなだが、この理科系スレッドで私が以前書いた、科学論者のスティーブ・フラーの文章である。フラーが述べるように、科学(サイエンス)と技術(エンジニアリング)の違いを付けない日本人学者の考え方は、欧米の正統派の科学者の考えとはズレている。なので、日本人学者達は、「まともな科学者」とは、欧米では認識されていない。
「技術と科学は同じ」と考えるのは、近代学問を欧米から最初に学んだ際の、東アジア人独自のユニークな思い込みである。フラーが力説するように、最初は欧米の「お雇い外国人学者」達は、科学(サイエンス)の背後にある思想的な裏付けを、日本人に教えてようと尽力した。が、日本人学者達はそれを頑固に受け入れようとしなかった。そのままで今に至っている。だから池田のような考えが、今の日本の正当な考えと認識されているのだ。私はそのように考える。
池田信夫は東大経済学部出身の、典型的な「日本人エリート知識人」であるため、見事に上の、「日本人学者の伝統的な考え方」に染まっているのだ。なかなか趣き深いものである。
前の私の文章で書いたが、フラーと同じ認識を村上陽一郎も持っており、村上の本にも書かれている(筈だ。私は読んでいないが)。村上は日本人学者が欧米学者の認識とズレている事実を、おそらくは物理学者の柳瀬睦男(上智大学の元学長)から学んだのだと思う。
柳瀬は、終戦直後に東大物理学科を卒業した。優秀な学生で、先生の茅誠司は自分の研究室の後継者として東大に残るように説得した。が、柳瀬は茅誠司の誘いを断り、イエズス会の牧師として神学の研究に進んだ、という、極めてユニークな経歴を持つ。柳瀬のユニークさは、牧野富太郎を遥かに超えている。
その後に、上智大学に物理学教室が設立される際にあたり、柳瀬はその責任者となるようにイエズス会から依頼された。柳瀬は、イエズス会の援助によりプリンストン大学に留学した。物理の研究に10年ほどブランクがあった柳瀬が、プリンストンで研究テーマとして選んだのが「量子力学の観測問題」だ。この分野で柳瀬は日本の第一人者とみなされている。
私の推測だが、池田信夫は柳瀬から直接、「量子力学の観測問題」に関する講義を受けている筈だ。池田が時々ブログで触れている物理の話は、柳瀬の研究内容そのものだからだ。
柳瀬はプリンストン時代に、ウィグナーというノーベル賞物理学者から直接学んでいる。プリンストン(高等研究所)には、他にもオッペンハイマー、パウリ、ディラック、アインシュタインなどの、超一流の物理学者が集結していた。彼ら超一流の物理学者達を離れて観察しながら、柳瀬は、フラーと同じ考えに至ったのだろう。私の推測だが。帰国した柳瀬は、その話を、村上陽一郎に繰り返し話て聞かせたのだと思う(村上は柳瀬が帰国した直後に、上智大学の柳瀬の研究室に在籍し、柳瀬から直接学んでいた)。
村上は東大駒場の池田の先輩に当たる人物だが、書く内容がアレなので、その真意が他人に正しく伝わらないのだ。折角、柳瀬から優れた考えを学んだのに、これでは全く意味のない事である。東大のレベルも、所詮はこの程度なのか。
相田英男 拝
【111】MRJの失敗も経済産業省の責任だったのね
相田です。
原発の話ではないが、三菱の国産旅客機MRJのプロジェクトが失敗した理由を述べた論考を、2件引用する。私にとって、かなり衝撃的な内容だった。重要な内容なので、長文だが全文引用させて頂く。
MRJについては、機体の方は早くに完成していた。が、米国政府の型式証明が取れないまま時間を費やし、最終的にプロジェクト凍結に至った。この経緯については、報道で誰でも知っている。アメリカ政府が承認しなかったため、三菱は事情に詳しい元ボーイングなどの米国技術者を数百人も採用して挽回を図ったが、結局ダメだったという。ニュースのコメントでは、「三菱は税金の無駄遣い」、とか、「三菱の技術力が低すぎる、あいつらはヘボだ」などといった、三菱への非難が挙がっていたと記憶する。
しかし、以下の引用文では意外な事実が書かれている。米国政府が型式承認しなかった理由は、日本政府による承認がなかったからだ、というのだ。
「そもそも日本製の旅客機なのだから、まずは日本政府が技術的な見極めをして、その結果を知らせるべきだろう。日本政府が責任を持たない機体を、何故アメリカ政府が保証する義務があるのだ?」という理由で、アメリカは承認を見送ったという。
この説明のアメリカ側の対応は、極めて当たり前の、常識的な判断だ、と、私は考える。そうではないだろうか?
本来なら、三菱が機体を作り上げる過程で、日本政府側が適切な技術基準を三菱に提示し、基準を満たしているかの判断は、日本側がまずはやるべきだったのだ。ところが日本政府はその技術判断を、アメリカ政府に丸投げした。アメリカ側からはそのように見えた、ということだ。
「そりゃまあ、アメリカも承認する訳ないよなあ」と、私は大いに納得した。
私は、「三菱の技術力が足りないので、アメリカが承認しなかった」という説明に、大きな違和感を持っていた。発電用の大型ガスタービン開発競争で、GEを正面から打ち破った三菱重工の技術力が低いとは、到底考えられない。何らかのマネージメントの問題だろう、と推測していた。そして、以下の説明を読んで、全て腑に落ちた。
要するに、日本政府の責任で最初に型式証明を出すべきだったのだ。それが出来ないならば、最初から旅客機をアメリカに売り込むなど、不可能だったのだ。
はっきり言って、この失敗は経済産業省の大チョンボだ。プロジェクトの最初に先を見通して、政府側での技術承認体制を作るべきだったのだ。その前準備を怠り、三菱に機体設計と製造を着手させてしまった。それが敗因だ。その責任を、政府はしらばくれて、メーカーの技術不足に押し付けている、という事だ。
大概にせえよ、お前らよ。
前にも書いたが、福島原発事故の際には、本来対応の指揮を取るべき原子力保安院(経産省の下部組織)の寺崎委員長は、真っ先に雲隠れし居なくなった。代わりにアドバイザーの立場だった、原発安全委員会の班目春樹委員長が、矢面に立たされて集中砲火を浴びせられた。その後、傷心の班目氏は多くを語らず、漫画で心境を綴りながら体調を崩して亡くなった。あの時と全く同じ、無責任な対応だよな、経済産業省の皆さんよ。
旧通産省を含めてOBの評論家に八幡和郎、古賀茂明などがいるが、彼らからこんな説明は全く出て来ない。このような経済産業省の対応を、彼らOB評論家は問題視しないのだろうか?
皇室批判とか、反原発運動などの、しょうもない趣味程度のコメントではなく、政府の抱えるこのような大きな問題の告発は、あんた達には無理な相談か?
そうなんだろうな、多分。
評論活動を廃業すべきではないのか?
(引用始め)
2023.1.9 Merkmal(メルクマール)
なぜ国産旅客機「MRJ」は失敗したのか 現場技術者に非はなかった? 知られざる問題の本質とは
筆者:ブースカちゃん(元航空機プロジェクトエンジニア)
1)5回の遅延でプロジェクト凍結へ
YS-11以来の国産旅客機として期待を集めたスペースジェット(旧称MRJ)は、5回の計画遅延を繰り返した末、2020年10月にプロジェクトの凍結が発表された。既に5機の試作機が飛行試験のために渡米しているが、飛行試験は中断され、そのうち1機は航空機としての登録も抹消された。
MRJの計画は、もともと経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託・助成事業「環境適応型高性能小型航空機」として始まった。三菱重工は、2003(平成15)年度から主契約企業となって事業を推進した。プロジェクトには宇宙航空研究開発機構(JAXA)なども参画しており、これは文字通り「国家プロジェクト」だった。
JAXAをはじめとする専門機関は、コンピューターを活用した先進的設計手法や、複合材部品の新しい製造技術など、基礎技術に関わる支援を行った。しかし製品開発はその先にあるもので、技術開発はゴールではない。旅客機が製品になるには、量産品として型式証明が取れなければ意味がないのだ。
MRJプロジェクトの遅延は、ほとんどがこの型式証明の取得手続きに関わるものだった。事業凍結への決定打となった大幅な5回目の遅延も、型式証明を得るための大規模な設計変更が理由である。
専門メディアによると設計変更は900件以上に及び、設計荷重の見直しや、各種システムの系統設計に関わる変更など、基本設計の段階に戻ってやり直すような内容がいくつも含まれている。これは卒業論文の提出時に「課題設定と調査からやり直しなさい」といわれたようなものである。
2)型式証明とはなにか
航空法には、航空機は耐空証明がなければ飛んではいけない、と書かれている。国の審査で「安全な航空機であることの証明」を受けるのが耐空証明で、各国が定める耐空性の基準を満たさない航空機は、原則としてその国で飛ぶことができない。
耐空性の基準は、日本では耐空性審査要領、米国ではAIRWORTHINESS STANDARDSとして文書化されているが、世界中で米国と欧州の基準を踏襲しているので、実質的に同じ内容となっている。
型式証明は、量産航空機に包括的な証明を与える制度である。
・図面や計算書などの設計プロセス
・製造工程や品質管理などの生産能力
・試作機で確認される性能や飛行特性
などを国が審査し、その型式に対して証明を与える。型式証明を得た航空機は、適正に設計・製造されていることが認められているので、機体個別の耐空性審査は、製造記録や整備記録などの確認で済ませることができるのだ。
販売先の国で型式証明を得られなければ、航空機は製品として意味がない。そのため、三菱MRJでは、国土交通省航空局(JCAB)の型式証明と同時に、連邦航空局(FAA)の証明を取得する方針を採った。しかし、日本の企業が日本で開発製造する以上、設計や製造の過程を審査して製造国型式証明を発行するのは、あくまで日本のJCABである。
3)誰が審査するのか
耐空性の基準が文書化されているといっても、設計が基準を満たしているかどうかは、その文章だけでは判定できない。
「○○の場合でも□□の状態にならないこと」
と書かれていても、「○○の場合」とされる条件や、その設計が「□□の状態」を防止できると認められる条件は明確ではないからだ。その判定は、過去の事例などで培った知見に基づき、行政側の審査員が行う。
機体ができてから不合格では困るので、メーカーは設計段階から審査当局と密接に連絡を取り、確認しながら作業を進める。MRJの場合は三菱がJCABと一緒に開発を進めたはずだが、JCABの審査員も基準の解釈に「頭を悩ませた」という。
日本では、メーカー以上に、審査する側に経験やノウハウがないのである。そして、できあがった試作機を米国に持ち込んだ2016年の終盤、FAAは「この設計では型式証明を認めない」と判定した。三菱とJCABが進めてきた設計が、FAAの審査員から不合格の判定を下されたのだ。
三菱でも型式証明が難関であることは承知しており、外国人技術者の採用や経験者の任用などの施策を講じたが、それも功を奏さなかった。型式証明審査は時を重ねるごとに厳しさを増していて、過去に認められた設計が現代では通用しないことも多い。ボーイングなどでも、新しい旅客機を既存の737や777の派生型として開発することが多いのは、新型機としての型式証明が不要で、変更部分の審査だけで済むためだ。
JCABはMRJの審査を行う航空機技術審査センターを2004(平成16)年に名古屋に設置し、FAA職員を招いた講習も受けたといわれるが、膨大なノウハウが必要な審査能力が一時の研修で体得できるわけもない。FAAに助言を求めても、FAAは外国当局の審査には関与しない。あくまでJCABが製造国の責任として型式証明を発行しなければいけないし、FAAは輸入された機体を米国の基準で審査することになる。
つまり、MRJが挫折した理由の根本は、
「日本という国家が、航空機の安全を国際的に担保する能力に欠けている」
ことだ。
4)ホンダジェットは米国製
難航するMRJの傍らで小型ジェット機ホンダジェットの成功が各所で報じられたため、
「なぜ自動車メーカーのホンダが成功したのか」
という声も多く聞かれた。しかしホンダジェットは日本の国産機ではない。製造会社は米国のノースカロライナにあるHonda Aircraft Companyという会社であり、米国で設計開発された正真正銘米国製の飛行機なのだ。
日本で開発したのでは外国で売る航空機はつくれないことを、ホンダは知っていた。また、ホンダが日本で航空機を製造するなら、JCABから航空機製造事業者の認定が新規に必要で、この審査に合格するのも大変だ。つまり、「日本製ではない」ことがホンダジェットの一番大きな成功理由だ。
もうひとつ興味深い存在として、中国製の旅客機C919がある。エアバスA320やボーイング737に競合するクラスの機体で、2022年に中国国内の航空会社に引き渡しが始まっている。C919はもちろん中国航空局の型式証明を受けているので、中国国内で商業運航が可能だが、FAAの型式証明は取得していない。開発元のCOMACは、あえて「FAAの型式証明を取得しない」選択をしたのだ。
C919がFAAの型式証明を取得しようとすれば、MRJと同様の困難に見舞われたかもしれないが、広大な国土を持つ中国は、国内だけでも十分な市場がある。米国の型式証明を必要としないのだ。
5)国家プロジェクトのあり方と航空機産業
一方ではFAAの権威も揺れている。ずさんな設計のために墜落が相次いだボーイング737MAXに関して、FAAによるボーイング社への審査が非常に甘かったことが調査で明らかになり、物議を醸している。FAAも神様ではないし、自国産業を保護したいという判断の存在も否めない。そのため、より安全な航空機の実現や、より自由で平等な国際市場の実現には、各国がオープンな場で情報を交換し、協力していくことが必要ではないか。
日本においても、経産省がプロジェクトを立ち上げる際、JCABの型式証明能力や、FAAの証明取得プロセスをどうするかといった問題が、十分に検討されたとは思えない。経産省とNEDOが実施したMRJに向けての技術研究は、高い付加価値を持つ製品実現のために必要な努力だが、日本の旅客機開発に困難をもたらす最重要課題は、こうした先端技術ではなく、「国による認証制度」の問題なのだ。
しかし、専門分野の研究や設計を担う現場技術者や、マーケットだけを見ている投資家や経営者では、こうした認識を持つのは難しい。特に日本では専門人材の流動性が低く、開発現場の実情から行政の制度までを、網羅的に知る機会は得にくい。
その結果、経産省/NEDOは市場や基礎研究だけを見て絵を描き、三菱はそれを足掛かりにして事業に取り組んだが、肝心の型式証明を手掛ける国交省は蚊帳の外という、驚くべき体制ができあがった。
これは「誰が悪い」という問題ではなく、国家プロジェクトのあり方や行政機関の整備方針など、日本という国の力が改めて問われるべき事例ではないだろう。
****************************
8/26(土) 6:11配信 Merkmal(メルクマール)
MRJの失敗は必然だった? 元航空機エンジニアの私が感じた「うぬぼれ技術者」発言への違和感、部下への責任転嫁に民間産業の未来なし
1)川井元社長らの発言
国産旅客機スペースジェット(MSJ、旧称MRJ)開発の失敗は、日本国民に大きな失望を招き、今もその理由について議論が続いている。
そんななか、三菱航空機の社長として一時期のMSJ開発を率いた川井昭陽(てるあき)氏が、テレビ愛知のインタビューに対し、日本人技術者の「うぬぼれ」が失敗の理由だと発言し、一部のひんしゅくを買っている。
川井氏は経験豊富な外国人技術者を招聘(しょうへい)したが、日本人技術者は傲慢(ごうまん)で彼らのいうことを聞かなかったというのだ。
川井氏は、かつて三菱が開発したビジネスジェット機MU-300の飛行試験に関わった経歴を持ち、連邦航空局(FAA)による型式証明審査の一端を経験している。FAAでは、型式証明に関わる膨大な審査作業をスムーズに進めるため、資格を認めた民間技術者に業務の一部を委託する仕組みがある。そうした技術者に接してきた川井氏は、彼らのような人材を招き入れることが、MSJの開発に役立つと考えたのだろう。
これについては、開発の初期からチーフエンジニアを務めていた岸信夫氏も「良い考えだった」と述べており、5回目の納期遅延が発表された2017年以降も、外国人技術者の増員は続いた。この時期、開発に携わる約2000人のうち、実に600人を外国人技術者が占めたと報じられている。
2)過去の経験に依存した計画の問題点
しかし、MSJは日本の国産機であるにも関わらず、「FAAの型式証明しか意識されていない」ことが、このプロジェクトの本質的な異常性を示している。
米国へ輸出するMSJにFAAの型式証明が必要なのは当然だが、それ以前に必要なのは設計製造国である日本の型式証明だ。航空機の型式証明審査に関して、国際民間航空条約(シカゴ条約)では「設計国が世界に対し第一義的な責任を有する」としている。
米国の政府機関であるFAAには日本企業が日本で行う事業を審査する権限はなく、MSJの設計や製造を審査して承認する責任を負うのは日本の航空局(JCAB)だ。それにも関わらず、関係者を含む多くの人たちがFAAの型式証明だけに目を向けていたのは、過去の経験に引きずられた思い込みのためである。
日本では民間航空機の開発機会が少ないため、JCABに新型旅客機の型式証明審査が行えるような常設部門はない。しかし、過去には
・YS-11
・MU-300
といった開発でFAAの型式証明を取得して輸出につなげた実績があり、MSJの型式証明も同じスキーム、すなわちJCABとFAAの証明を同時に取得する方針で計画された。
3)日本人の意識から消えた本来のプロセス
だが、この方針を採用したとしても、設計段階での審査や製造工程の審査を行うのはJCABでなければならない。輸入国であるFAAは、米国国内でMSJを飛ばすことを認めるかどうかを判断する立場なので、米国に持ち込まれた試作機の審査が基本になる。
川井氏がMU-300の開発で担当していたのは、試作機の飛行試験などFAA審査への対応であって、国内での設計段階の審査ではない。そのため、川井氏も試作機に対するFAAの審査が型式証明の本丸だと考えたのだろう。
川井氏だけでなく、日本のメディアがYS-11などの開発を語る消費者向けの物語でも、FAAによる審査がドラマチックに描かれることが多い。「JCABによる設計や製造の承認」という本来のプロセスが、日本人の意識から消えているのである。
だが、現代の旅客機開発という巨大プロジェクトでは、試作まで終えているFAA審査の段階で大きな設計修正は致命傷だ。40年も前に小型航空機で経験したのと同じスキームを、そのままMSJで押し通すのは明らかに無理がある。MSJ開発の最終盤で起こった悲劇は、「誰もが予想できた事態」である。
MSJは2015年に初飛行しているが、それから5年がたっても型式証明が取得できないまま、凍結が発表された。しかし、より大型のボーイング777や787の場合、初飛行から1~2年でFAAや欧州航空安全機関(EASA)の型式証明を取得している。
ボーイング機は設計段階でFAAの審査を受けているから、設計の安全性は試作機が完成した時点で基本的に承認されており、飛行試験はそれを確認するプロセスにすぎないからである。
4)異常な審査体制
JCAB航空機技術審査センターの清水哲所長によると、三菱航空機は日米両国で並行して審査を受け、設計を進める考えだったという。
しかし先にも書いたとおり、日本も米国も互いに主権を持つ独立国家である。日米両国による並行審査を構想するなら、両政府がしかるべき取り決めを交わし、設計段階から共同の審査機関を設けるような体制が必要だ。
しかし、そんな虫の良い話を米国政府が受け入れる理由はない。MSJの開発は非現実的な構想を前提に始められ、FAAの承認が得られるかどうかわからない設計に基づいて、試作や飛行試験の段階に進んでいったのである。
川井氏らは、外国人技術者ならFAAの審査に耐える設計ができると思ったのかもしれないが、それは見当違いの思い込みだ。設計は技術者が審査当局と調整しながら進めるものであり、最初からFAAが納得する設計案だけを用意することなど、いくら経験が豊富な設計者でも不可能だ。航空機の開発は設計者だけが行うのではなく、審査に当たる政府当局との共同作業なのである。
したがって、いくらボーイングのOBであっても、設計作業の能力そのものは日本人と違いはなく、日本人技術者が彼らのいいなりにならなかったのも無理はない。そもそも三菱の設計者はボーイング777や787の共同開発設計にも参加しており、設計能力がボーイングの技術者に劣っているわけではない。
強いていえば、米国人技術者はFAAへの提出資料などについて日本人より詳しいだろうから、彼らのおかげで審査を受ける準備がはかどったというのは本当だろう。
5)必然だったMSJの失敗
繰り返しになるが、航空機の型式証明は「設計国が世界に対し第一義的な責任を有する」ものである。日本で設計される航空機の安全性を、日本の政府当局であるJCABが保証し、それを世界に認めさせることができなければ、国産機など製造できない。
JCAB審査センターの清水所長は、インタビューに対して強度試験の例を挙げ、「最大値の1.5倍の荷重に3秒以上耐えられることを証明しなければならないという基準はあるが、証明の方法は示されていない」と語っている。しかし、方法が適切かどうかを判断するのがJCABの仕事だ。その責任を負う立場にある者が「証明の方法は示されていない」と語ること自体、まったく論外というしかない。
川井元社長も清水所長も、無理な仕事を押し付けられた立場だったといえるし、そのことには多少の同情も感じる。しかしJCABが自らの責任を放棄し、元社長が「部下に責任を転嫁する」ようでは、日本の民間航空機産業に未来などあるわけがない。
MSJプロジェクトを事業化した経済産業省は、開発の失敗を検証する有識者会議を開催しているが、やはりここでも「検討安全認証プロセスの理解・経験が不足していた」と、最初から指摘されていたことを、ひとごとのように繰り返しているだけだ。しかも、計画の立ち上げに関わった張本人である御用学者や役人たちが、やはり自分たちの責任を丸投げし、今も涼しい顔で会議を主導している。
このような無責任国家にとってMSJの失敗は必然だったのであり、その無責任が今後も繰り返されようとしているのだ。
ブースカちゃん(元航空機プロジェクトエンジニア)
(引用終わり)
相田英男 拝
【110】揉める原因は経済産業省の役人達のせいだ
相田です。
たかが「単なる水」を海に流すくらいで、えらい騒ぎよるねえ。まあ結局は、だな、「本当のこと」がどうか、というのは、発言者達は全く問題にしていない。「私達が信じるものはこういう事だ」と、相手に押し付けてるだけだ。だから、折り合いがつく訳がない。
ここまでこじれたそもそもの原因は、だな、経済産業省の官僚達が、東京電力をぶっ潰すために、「処理水」の安全性に関する説明を、世間一般に対し「意図的にサボタージュした」ためだ。学者達を集めて、何回も、もっと丁寧に説明する機会を持てば良かった。それを経済産業省はさぼったのだ。
私はそう考えている。まず間違いないと思う。それで、頭のいい官僚さん達の目論見通りに、各所で炎上しまくっているようだ。
みんなせいぜい頑張ってくれ。
さて、私からの提言だが、近い将来に中国、韓国の原発でメルトダウン事故が起きた時の、我が国の対応については、きちんとシミュレーションしてるのかね?せめて、事前準備くらいはしとこうね、官僚の皆さん。
ついでに、かねてより私が気になっているのは、だな、おそらくGEが密かに作成しているだろう、「3.11福島事故の正式な報告書」の存在だ。官僚達はこの報告書を、さっさとGEから入手して、解析して、対応策を追加する事だ。どうしても、GEからもらえない時は、だな、個別にGEの原子力技術者達を招待して、彼らにレポート作成を依頼しろ。日本人の間抜け達が作った、過去の「事故報告書」よりも、数段レベルの高い内容になるのは疑う余地がない。当時のBWRの設計を知っている技術達者は70歳を超えているだろう。が、まだだいぶ生き残っている筈だ。なので、彼ら死ぬ前に集めて書かせておけ。数100億円くらい税金を使っても、入手する価値はあるよ。
(引用始め)
水産物全面禁輸ショック!「想定外」だった中国の処理水報復 岸田政権「不買運動程度か」と甘い予想…専門家が指摘「今後、報復が半導体に拡大すると…」
8/25(金) 19:50配信 Jcast 会社ウォッチ
東京電力が2023年8月24日午後1時、福島第一原発の処理水の海への放出を始めた途端、それを見届けたかのように中国政府は、日本産の水産物の輸入を同日から全面的に停止すると発表した。
全国の漁業関係者はもちろん、日本政府にとっても「想定外」のショックだった。福島から遠く離れた鹿児島、福岡などの水産業者の元に中国や香港から取引キャンセルの連絡が入った。日本の漁業は、そして日本経済はどうなるのか。中国の狙いは何か。専門家の分析から読み解くと――。
処理水放出で中国国民パニック、食塩「爆買い」に走る
報道をまとめると、中国外務省の報道官は8月24日の記者会見で、日本の処理水放出について、「生態環境の破壊者であり、海洋環境の汚染者だ。断固たる反対と強烈な批判を示す」と非難した。
その後、中国税関当局が「福島の『核汚染水』が食品の安全に対してもたらす危険を全面的に防ぐため」として、日本を原産地とする水産物の輸入を全面的に停止すると発表した。
中国は原発事故後、福島、宮城、東京など10都県からの水産物の輸入を禁止してきた。今回、それが全国に拡大されたかたちだ。中国は日本にとって水産物の最大の輸出先で、中国・香港向けの合計が、2022年度実績で約42%に達する。日本の漁業に甚大な影響が出ることは避けられない。
また、中国外務省は「食の安全と中国人民の健康を守るため、あらゆる必要な措置をとる」との談話を発表した。これは、水産物以外の日本産食品にも、新たな輸入規制を導入する可能性を示唆したと受け止められている。
実際、ロイター通信(8月24日付)によると、処理水の海洋放出が始まった8月24日、中国のスーパーやネット通販では食塩を「爆買い」する人が急増、売り切れになる事態が続出し、当局が冷静な対応を求めたほどだ。
中国国民の「食の安全」を巡る不安が、水産物にとどまらず、海水を原料に作られる食塩にも波及したかたちだ。
今回の中国政府による全水産物禁輸措置、岸田文雄政権にとっては「想定外」の事態だったようだ。朝日新聞(8月25日付)によると、日本政府内では「中国が何かやってくるとは思っていたが、ここまでは予想していなかった」(農林水産省幹部)という驚きが広がったそうだ。
中国がすでに実施している水産物の放射能検査という規制に加えて、「さらに不買運動をしてくるかもしれない」(首相官邸幹部)という相場観が語られていたという。ずいぶん甘い想定だったわけだ。(以下略)
(引用終わり)
相田英男 拝
【109】いらん心配はいいから、さっさと映画を公開せい。オッペンハイマーのことなど日本人は誰も知らんよ
この夏アメリカで、物理学者のオッペンハイマーを主人公とした映画が公開され、ヒット中らしい。同時期に公開された、別の娯楽映画の宣伝がこじれた影響(?)で、日本での公開時期が未だに決まっていない。大変残念なことだ。ジャニーズ事件に巻き込まれた、山下達郎みたいな立ち位置だろうか(???)
はっきり言って「君たちはどう生きるか」は、全く観る気がない私だが、「オッペンハイマー」は是非見てみたい。別に原爆実験の爆発や、赤狩りに巻き込まれて公聴会を受けるシーン、などを、見たい訳ではない。同僚やライバルとして、多数登場するだろう物理学者達が、どのように描かれているかを見たいのだ。
オッペンハイマーはプリンストン高等研究所の所長だった。この研究所は、アインシュタインを筆頭に、欧州から亡命して来たユダヤ系物理学者の受け皿となった。第二次大戦後の物理研究の頂点といえる場所だった。パウリ、ダイソン、ディラック、ノイマン、ワイル、ウィグナーなどの、著名な物理、数学者達がここに所属していた。
戦前にオッペンハイマーがドイツに留学した際には、ボーア、ハイゼンベルク、ボルン等の量子力学の立役者達との交流もあった。マンハッタン計画に参加していた際には、フェルミ、ベーテ、ファインマン達とも付き合いがあった筈だ。チョイ役で良いので、彼ら歴史に残る多くの学者達が、どのような風貌で描かれて、どんな言葉を語るのかを、是非見てみたい。私が文章で読む彼らの印象と、どのように違うのかを知りたい。それだけだ。
以下の引用記事によると、映画には日本人は登場しないらしい。そうすると、日本からプリンストンに留学した、湯川秀樹、朝永振一郎、南部陽一郎(言わずと知れた日本人物理学者の最高峰)、内山龍雄(後述のヤンより先に、一般化ゲージ理論の概念に到達した学者、阪大の伏見康治の弟子)、柳瀬睦男(日本の科学哲学会の影の主役、村上陽一郎の師匠でもある)、等の学者達も、やっぱり登場しないのだろう。残念なことである。
プリンストン研究所は頂点だけのことはあり、環境はなかなかに熾烈だったようだ。あるインド系の物理学者が亡くなった際に、アインシュタインは、お悔やみの言葉として、その奥方に「私達は御主人の御遺体については、哀悼の意を捧げます」と語ったという。驚くべき非常識さである。そのような厳しい様子を、監督はどのように表現しているのか、なかなかに興味がある。
中国人初のノーベル賞物理学者となった、チェンニン・ヤンくらいは、せめて出ていないのだろうか?素粒子物理学の分岐点となった一般化ゲージ理論について、プリンストンでヤンが初めて発表した際に、パウリが凄い剣幕で文句を言い始めたため、ヤンの発表が中断し、オッペンハイマーが仲裁に入ったという、有名なエピソードがある。映画で一度見てみたいと思うのだが、多分ないだろうな。
(引用始め)
映画『オッペンハイマー』 「原爆の父の物語なのに日本人が出てこない」のはなぜ?
8/1(火) 18:30配信
「原爆の父」ことJ・ロバート・オッペンハイマーの生涯とその時代について描かれた、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』は高い評価を得ている。
一方で、原爆の父の物語でありながら、その原爆の被害にあった日本人が映画内にまったく出てこないのはどうなのか、との指摘もある。
アメリカによる広島と長崎への原爆投下は、戦争を終わらせるのに本当に必要だったのかーーという、原爆後の戦後史において「最も重要な議論に対峙していない」と、米誌「マザー・ジョーンズ」はノーランを批判している。
無論、ノーランは「大量破壊兵器を使用することは悪いことだ」との考えを表明している。
だが、同作品内でノーランは「“日本への原爆投下に正当性はなかった”という考えへの支持を明らかにしていない」ため、「太平洋戦争を終結させてアメリカを救ったのは、オッペンハイマーが発明した2発の爆弾だった」という物語にも読み取れるという。
同作ではオッペンハイマーが戦後、赤狩りの渦中で公職から追放されたことと、機密保持許可公聴会に焦点が置かれているが、このように仕上がったのは、ハリウッドの関心が偏っているせいではないかと、米紙「インテリジェンサー」は報じている。
また、ノーランに限らず、多くのアメリカ人が「戦時中の日本人について漠然とした考えしか持っていないからでは」と述べている。
ハリウッドが好きな戦争ネタは「ナチス、共産主義者、そしてそのスパイ」
一般的に、戦時中の日本人は「特攻隊員と、戦いが終わった後も長くジャングルで戦い続ける盲目的に忠実な兵士たちによって定義されており」、軍人ではない市井の日本人については知られていない。アメリカを攻撃し、戦争に持ち込んだのはナチスではなく日本人だったにも関わらず、ハリウッドは「ほとんど関心を寄せていない」という。
これについては、ハリウッドにはユダヤ系が多いこと、また、日本は他のアジア諸国の人々は迫害したが、オッペンハイマーしかりアメリカにも多数いるユダヤ人を迫害した歴史は持たないことが少なからず関係しているのではないかと示唆している。
もっとも、原爆は当初ヒトラーへ対抗するために開発された。だが、ナチスが敗北したことでターゲットは日本へ向けられた。
ノーランが作ったのはユダヤ系アメリカ人であるオッペンハイマーについての映画で、そのなかで必ずしも「日本人を忠実に描かなければいけないわけではない」。だが、オッペンハイマーを語るうえで「核」を外せないのと同様に、彼の人生と日本は切っても切れないものであるはずだと述べている。
ノーランは「オッペンハイマーが人類を核の時代へと導き、人類に初めて自らを破壊する能力を与えた。この事実に懸念を持つ」と語ってるが、一方で「その核の遺産(核の犠牲者たち)については曖昧だ」。核の破壊力の凄まじさ、およびそれが歴史の転換点になりうる可能性を示すシーンとして、作中では人類初の核実験「トリニティ実験」が描かれているが、それらを最も示すのは、トリニティ実験ではなく、一瞬にして焼却された、もしくは放射能中毒で(1945年末までに)死亡した広島と長崎の約22万人の犠牲者だと同紙は主張する。
実際に、この「核」によって、アメリカは戦後の世界の覇権を握ったわけだが、それはつまり「アメリカの世紀の幕開けは日本の犠牲者なくしては起こらなかったということだ」
そして、この視点がいまなおハリウッド、およびアメリカ人には欠けていると指摘する。
その証拠としてあげているのは、同作公開後に作家兼コラムニストであるカイ・バードの、同作公開後の米紙「ニューヨーク・タイムズ」への寄稿文だ。
バードはピュリッツァー賞を受賞した「オッペンハイマー『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」のほか、日本への原爆投下に関する著書などで知られる人物であるが、彼はこう書いている。
オッペンハイマーの人生の「本当の悲劇」は、(原爆の脅威を目の当たりにして、核開発に反対する主張を訴えるようになったことから)ソ連のスパイ容疑をかけられ、公職から追放され、屈辱を与えられたこと。そして、それがほかの有能な科学者たちを「公的な知識人として、政治の舞台に立ち、声をあげるのを思いとどまらせたこと」だと。
これに対し、インテリジェンサーは「本当の悲劇」は、彼のたぐいまれな頭脳が、すでに彼にとってもアメリカにとっても、ほとんど脅威ではないと分かっていた国(日本)の破壊に使われたこと、しかも、その22万人以上の犠牲者の大多数が洗脳された特攻隊員でも兵士でもなく、武器を持たぬ市井の人々だったことだと述べている。
COURRiER Japon
(引用終わり)
相田英男 拝
【108】量子コンピュータでセキュリティが破られる心配はないぜ
相田です。
マイナンバーカードを普及させるため、健康保険証と一体化させる、とか、病院帰りの年寄りが、道で落としたらどうするんだ?、とかの、話題が席巻している。その中で、カード自体を現行方式から、新しい仕様のカードに変更する準備が政府で進んでいる、という。
その場凌ぎの政府の対応に、世間の不満が高まっているが、河野大臣は新しいカードが必要な理由に、何と量子コンピュータでセキュリティが破られる可能性がある、と、国会で答弁したという。
とある事情から、私も量子コンピュータについて調べ始めた。わかって来たのは、これ、そんな簡単に作れる代物じゃないぜ。理論上は、現状の暗号システムを容易に無効化できる。だが、現実に量子コンピュータが使えるレベルになるのは、相当な技術革新が必要だ。ノーベル物理学賞があと4個くらい取れるレベルの、ソフト、ハード両方の、破壊的な技術革新が、だ。
そこまで到達するには、少なくとも10年以上はかかるだろう。その間は、従来型コンピュータの進んだ暗号破りへの対策は、当然必須だろう。が、量子コンピュータへのセキュリティ対策を持ち出すのは、あまりにもナンセンスである。
言うにこと欠いて、勉強不足アリアリの無責任な発言を、国会記録に残すのは如何なものか?理科系センスの欠落を如実に反映した発言だ。
どうせ、外野が批判した処で、いつものように聞く耳持たずで物事過ぎるのだろう。が、勉強不足の軽い発言しか出来ない人物なのが、世間に露見していく実態を、大臣本人はもっと反省するべきでないのか?
(引用始め)
【速報】河野デジタル大臣「新しいマイナンバーカードでは新しい読み取り機が必要となる可能性」
7/5(水) 14:38配信 TBS NEWS DIG Powered by JNN
河野デジタル大臣は、2026年中を視野に導入を目指す新しいマイナンバーカードについて「仕様によっては、新しい読み取り機が必要になるという可能性は当然ある」との認識を示しました。
新しいカードに切り替える理由としては、“量子コンピューターなどいろいろ技術が革新し、強度的にさらに強い暗号に切替える必要性がある”などと答弁しました。
立憲民主党の長妻政調会長の質問に答えました。
(引用終わり)
相田英男 拝
【107】やっぱりウソだよこの話
相田です。
以下の記事は、異なる話題が入り乱れた、ごちゃごちゃした内容で、大変わかりにくい。書いた人物が、内容をよくわかっていないので、仕方がないのだが。ざっくり整理すると、以下となる。
① 軽水素とホウ素による核融合反応を、岐阜県にある核融合実験装置(LHD)を使って確認した。
②実験のアイデアは、米国の核融合スタートアップ企業の「TAEテクノロジーズ」が提案した。
③ 軽水素とホウ素による核融合反応は、中性子を発生しないが、従来のD-T反応の30倍の高温反応が必要となる。
④TAEテクノロジーズでは、磁場反転配位(FRC)型という閉じ込め性能が高いプラズマ制御技術を開発中である。ただし、基礎検討の段階で超伝導コイルを使った実験はまだである。
⑤TAEテクノロジーズの研究者は、30年以内にFRC型核融合反応の実証炉が出来る、と期待してる。
最初に、岐阜県の核融合科学研究所の話が出てくるので、そっちの成果なのかと思った。だが、そうではなく、実験装置を使わせただけだ、ということらしい。岐阜県は、単にダシに使われただけだった。
それでもプラズマ型の核融合装置で、実際に核融合反応を確認した事例はほとんど無いので、貴重な実験ではあるのだろう。14ミリオン電子ボルトのエネルギー持つ高速中性子が生じる実験など、その辺の機械で安易に出来るものでは無い。イーターの実験も、スケジュールの大半は、核融合反応を起こさないで、重水素(D)だけのプラズマの安定制御実験を、延々とやるのだ。最後の最後に、核融合を起こすために、三重水素(T)を含むプラズマを作り装置を稼働する。が、そっちは、何が起こるかわからないので、正確な工程を決めておらず、出たとこ勝負になる筈だ。
私がここで、ずっと書いているが、D-Tの核融合反応では、高速中性子が発生し、周囲の機械に大きなダメージを与えるのだ。プラズマ制御のために使う超伝導マグネットも、中性子を浴びて特性が低下し、超伝導を維持できなくなる。この超伝導から常伝導状態に変化する現象を「クエンチ」と呼ぶ。記事の通りに、イーターで核融合反応を起こすと、早い段階で超伝導マグネットにクエンチが起きて、プラズマ制御が困難になると予想されている。
だから、イーターが動き始めても、その後に、商業用の核融合発電が早期に実現するなど、出来る筈ないのである。キャノングローバルなんちゃらという、シンクタンクのおっさんが、「核融合発電が商業ベースに乗る日も近い」と、散々吹聴しているが、あんなのは全て大ウソだ。大概にせえよ、全く。
それで上記の③に、中性子を発生しない新たな核融合反応を確認しました、メデタシですね、という事になる。が、そんな安易な事は、やっぱり全くない。
実験内容を書いた記事をチラリと見たが、ホウ素(B)の原子は、最初からプラズマ中に燃料としてある訳では無く、LHD装置の脇についている、プラズマを加熱する中性ビーム加熱装置を使って、水素プラズマ中にイオンとして打ち込むらしい。確かにそれならプラズマになるだろうが、そんなやり方でチビチビとホウ素イオンを加えても、ほとんど核融合反応の発熱は期待できない。
なので、上記③の磁場反転配位(FRC)型とやらの、新しいプラズマ制御方式を使って、更に高密度のプラズマを作る研究を続けます。どうか皆さん、TAEテクノロジーズにたくさんのお金を投資してください、という話に繋がる訳だ。ふう、ややこしいぜ。
それで、そのFRC型の新しい核融合炉が、いつモノになるかというと、「20―30年代に発電能力を実証する」らしい。「発電能力を実証する」とは、商業発電炉の一つ前の実証炉(デモリアクター)を建設して、発電を起こす、という意味だ。ちなみに、イーターは実証炉の前の「実験炉」である。イーターはの構想は、私が学生時代から既にあった。それから30年長を経て、2兆円を費やして、ようやく実験に漕ぎつけた。せっかく作ったのだから、これから10年くらいは実験に使うだろう。その結果を踏まえてから、次の実証炉に進むと、計画されている。
それと比べると、だな、イーター(トカマク型)とは全く異なる炉形で、あと30年で実証炉を作るというのは、どう考えても無理があるのではないだろうか?実験炉をスキップして、いきなり実証炉に進むという道もある。が、そうそう上手くいくのか?中性子を発生しない核融合反応は、温度が高温になるため、高温に耐える材料が必要になるそうだ。私は断言するが、現在の世界に存在する材料よりも、高温に耐え得る材料は、最早存在しない。今後、研究を重ねても作れない。少なくとも金属材料ではあり得ない。GEや三菱重工が、高温ガスタービンを開発する過程で、周期律表に存在するほぼ全ての元素を使って、金属の耐熱性を突き詰めているからだ。
セラミックスならば可能性はあるかもしれない。しかし、セラミックスは溶接ができないため、タイルのような貼り板で使うのが席の山だ。使える部分が限定されざるを得ない。そんな状況で、早期の発電試験ができるのだろうか?まあ、ヘリウム3のように、原料が木星から取って来ないと使えない訳ではないので、その分マシではあろうが。
なので、このTAEテクノロジーズとかいうスタートアップ企業が言うことも、やっぱり大ウソだろう。核融合の話を読むと、このように、あちこちにたくさんのウソが散りばめられている。それを御大層に読者に煽るので、壮大な詐欺の勧誘を受ける気分に、毎回させられるのである。
(引用始め)
世界初「軽水素とホウ素による核融合実験」に成功、スタートアップが描く未来
5/7(日) 16:10配信
日刊工業新聞 ニューススイッチ
3月、自然科学研究機構核融合科学研究所(岐阜県土岐市)と米国の核融合スタートアップ「TAEテクノロジーズ」(TAE、カリフォルニア州)は共同で、軽水素とホウ素による核融合実験に世界で初めて成功した。軽水素とホウ素による核融合は、重水素と三重水素を使った一般的な核融合に比べて反応条件は厳しいが、放射線である中性子が発生しない点で優れる。今回の成果について、TAEの最高科学責任者(CSO)でカリフォルニア大学教授の田島俊樹氏は「軽水素とホウ素による核融合実現の入り口に立った」と力説する。
TAEは1998年に創業し、長年にわたり核融合発電に挑戦してきた。核融合スタートアップとしては最古参の存在だ。核融合は重水素と三重水素の核種を用いるのが一般的だが、非主流の軽水素とホウ素による核融合を目指している。
今回の実験は、核融合研の大型ヘリカル装置(LHD)で行った。磁場で閉じ込めたプラズマにホウ素の粉末を振りかけた後、時速1500万キロメートル超の速度で側面から軽水素を照射してホウ素にぶつけ、核種同士を融合。この核融合反応によって生じたヘリウムをTAEの計測器で捉えた。
重水素と三重水素による核融合では反応の際、放射線である中性子が発生する。中性子は膨大な熱エネルギーを持つが、遮蔽(しゃへい)が難しく、炉壁に当たると金属を放射化し、放射線を出す放射性物質に変化させてしまう。
これに対し、軽水素とホウ素では反応の結果、高温のヘリウムしか出ないため、炉壁が放射化するリスクが小さい。反応条件が難しいという課題もあるが、それでもTAEが軽水素とホウ素の核融合を目指すのは、創業者の故ノーマン・ロストーカー氏の遺志を受け継いでいるからに他ならない。
ロストーカー氏はカリフォルニア大学アーバイン校(UCI、カリフォルニア州)のプラズマ研究者であり、田島教授は教え子に当たる。73年、田島教授はロストーカー氏に初めて会った際「プラズマの理論は構築された。これからはそれを使った応用が重要だ」と説かれた。その応用の一つが核融合であり、50年もの歳月を経て師の教えを実現しようとしている。
ロストーカー氏が唱えたのが「End in Mind」(出口から考えよ)という思想だ。では、核融合発電における出口とは何か。それは安定的にエネルギーを生み出し続ける装置を成立させることだ。そのためには、軽水素とホウ素の核融合しか道はない―。TAEはそう結論付けた。田島教授は「中性子が出ることによる安定運転への影響は大きい」と指摘する。
一般的な核融合発電を阻む主な課題は、中性子による放射化と超電導コイルの性能劣化にある。放射化は保守が困難になるなど、安定運転に支障を来す恐れがあった。また超電導コイルに中性子が多く当たると、熱により超電導特性が失われる「クエンチ」という事象が発生する。これを防ぐため、中性子を遮蔽(しゃへい)する炉壁を大きくすると、今度は装置全体が巨大になり、コスト増につながる。
一方、軽水素とホウ素では中性子が出ないことから放射化の懸念がなく、装置のコンパクト化にもつながる。ただ、核融合を起こすための反応温度が極めて高く、重水素と三重水素よりも30倍のプラズマ温度が必要になるという。このため国際熱核融合実験炉(イーター)のように強力な磁場でプラズマを閉じ込めるトカマク型の方法や、レーザーで核融合反応を起こす方法は使えない。そこでTAEが採用したのが、磁場反転配位(FRC)型という炉系だ。
FRCは理論上、閉じ込め性能が高い高エネルギーのプラズマを作ることができる。まず線形装置の両端で閉じ込め効率が低いプラズマを生成。それらを中央に向けて加速させ、二つのプラズマを合体させて閉じ込め効率が良いプラズマを作る。プラズマの性能が高まると外側から強力な磁場で閉じ込める必要がなくなり、プラズマ自身が持つ磁場によって閉じ込められる。
従来はFRCのプラズマを一定時間、閉じ込めることが難しかったが、プラズマに外部から高エネルギーを与える方法で課題をクリアした。これらの方法について、田島教授はプラズマを「自転車」に例えてこう表現する。「自転車はペダルをこぐまでは不安定で転びやすい。だが、ひとたびペダルが回り、進み始めると安定して前に進む。プラズマも同様にエネルギーを高めていけば、自分自身が作る磁場によって安定的に閉じ込められる」。
具体的にはこうだ。まずFRCのプラズマに外部から加速器でエネルギーを加える。加速器からのエネルギーを受け取ったプラズマは、自身が持つ磁場の閉じ込め性能が高まり、安定化するという仕組みだ。今後建設する実験装置や商用炉では加速器のパワーを上げ、よりプラズマにエネルギーを与える。同時に高エネルギーになったプラズマが外側に広がろうとするのを抑えるため、超電導コイルを導入する計画だ。
高温に耐える材料開発不可欠
事業体制も着々と整いつつある。2022年には米グーグルや住友商事などから2億5000万ドル(約336億円)の資金調達を実施。またグーグルの計算機の知見を生かし、開発を効率化している。ロストーカー氏が抱いた夢はTAEに受け継がれ、今、花開こうとしている。田島教授は「(ロストーカー氏が)20年以上研究してきたプラズマや装置の知見を進歩させてきた結果だ」と強調する。
核融合においてプラズマ研究は進展しているが、発電にはエネルギーの取り出しや装置としての安全性が求められる。特にFRCは通常想定する核融合発電よりも高温のプラズマを使うため、それに耐えうる材料開発が不可欠だ。田島教授も「我々はプラズマの専門家ではあるが、周辺機器については協業していく必要がある。日本企業にはその点を期待している」と話す。
実現まで遠く、国が研究の主体だった核融合。しかし、10年ごろに急増した核融合スタートアップの存在は、この潮目に変化をもたらした。巨額の民間資金が流れ込むことで研究開発が加速。野心的なスタートアップは20―30年代に発電能力を実証すると意気込む。TAEもその1社だ。田島教授は言う。「2、3年後に核融合発電を実現できるとは言わない。ただ30年かかる話ではない」。その目は核融合の「出口」を捉えている。
(引用終わり)
相田英男 拝
【106】原発が危ないなら管理して動かせば済む話
相田です。
引用文の著者については、説明の必要はあるまい。いつもの「古賀節」で、反原発をカマしているのだが、今回はつっ込ませてもらう。
まず古賀氏は、「安倍晋三元首相もできなかった「40年ルール」の撤廃」と書いている。ここに、最初の古賀氏の事実誤認がある。「安倍首相でもできなかった」のではない。安倍が重用した、経済産業省出身の周囲のブレーン達が、原発の再稼働を阻止したのだ。経済産業省の官僚達は、原発の再稼働をどうしても東電にやらせたくなくて、それによって、東電をさっさと潰して、電力利権を自分達に取り戻したいのだ。古賀氏も元経済産業省出身の官僚なら、その辺りの経産省の思惑は知っているだろう。知らないのならば、あなたは頭が悪すぎる、か、カンが悪すぎる。それだけだ。
さて古賀氏は、「原発では、「心臓部」にあたる原子炉圧力容器と、これを覆う格納容器は交換できない」と書いている。古賀氏の説明を逆に言えば、だな、圧力容器と格納容器以外の、ほぼ全ての原子炉の部材は交換が可能だ、ということだ。現に蒸気発生器(PWR)とか、シュラウド(BWR)とか、ポンプとか、その他の配管一式全て、などの原発の部品については、実際に現地サイトで新品に交換された実績がある。
確かに、圧力容器は大き過ぎて、交換はできないだろう。だけども、壊れるメカニズムを詳細に解析して、割れにつながる窪みや切り欠きの寸法を、実機で正確に測っている。割れの進展を加速させる中性子照射量は、実機にミニチュアの金属試験片を入れて、定期的に取り出して調査して、照射量のモニターを続けている。要するに、交換できる部品は全て新品に取り替えましょう。交換できない部品は、慎重に調査を継続しながら、運転を続けましょう、というスタンスなのだ。だから継続運転が可能と、規制委員会は判断したのだ。委員の一人を除いて、であるが。
ちなみに、共産党員の金属材料研究者で、井野博満(いのひろみつ)という方がおられる。井野先生は以前から、日本で使われる圧力容器の強度を計算する際の、数式が誤っている、と主張し続けている。本当の処は、材料強度屋でないとわからない。しかし、原子力規制委員会で認めている計算式は、アメリカの原子力規制委員会(NRC)が採用した数式が基本である。そのNRCの数式は、米国機械学会(ASME、アスメ)で長年にわたり議論されて決められた、強度計算式が元になっている筈だ。井野先生も、ASMEの技術者達が、膨大なテストデータを元に定めた強度計算式の、どこに問題があるのかを、はっきりと説明して頂けないか、と、かねがね私は思っている。
さらに古賀氏は「石渡氏は、地震や津波の審査を担当する委員である。彼ほど、日本という地域がいかに危ないのかを、知っている人はいない。だからこそ、老朽原発の運転期間延長に反対を貫いた。そうした専門家の知見を無視して多数決で押し切るなら、規制委の存在意義はない」とまで書いている。
ここにも、古賀氏の事実誤認がある。石渡先生は規制委員会では、地震や津波の審査を担当する委員である。が、石渡氏は岩石研究の専門家であって、地震や津波の研究の専門家ではない。地震や津波の専門家は、石渡先生の他にも大勢いる。ただその方々は規制委員ではない、というだけである。石渡先生が運転期間延長に反対を貫いた理由は、彼が地震の専門家だからではなくて、地団研のメンバーだからだ。科学的な判断に、政治的心情を持ち込む人物だからだ。
ちなみに古賀氏は、引用文の最後でプレートテクトニクスの話を持ち出して、日本の原発の危険性を述べている。トルコのプレートがどうのこうの、とか言って読者を煽っている。しかし私は問うが、古賀氏が専門家として、絶大な信頼を置いている石渡先生は、プレートテクトニクス理論を本当に信じているのだろうか?私には大いに疑問である。御自身が心の奥底で信用していない地震発生のメカニズムを使って、「原発は危ない」と言われたところで、全く説得力がないように思えるが。
プレートテクトニクスを本当に信じているのかどうか、規制委員の石渡先生には白黒はっきりさせて頂きたい。自分自身が信用を置いていない原理を使って、「原発が壊れます、危ないです」と主張されても、「ひとをバカにしとるんか?」という、怒りと情けなさしか、私には感じられない。「地向斜造山論でも地震は起きる」と言われるならば、それでもいい。是非そのように石渡氏には明言して頂きたい。
最後に古賀氏に問いたいが、自分をクビにした経済産業省から、実はパシリに使われているという自覚が、あなたには無いのか?情けないとは思わんか?これまで、安倍元総理を散々非難して、バカにしてきた古賀氏であるが、安倍総理がブレーンにしていた、宿敵である古巣の思惑に、あなたはマンマと乗せられているのではないのか?それとも、最初から古巣とグルでやってるのか?こちらも白黒はっきりさせて欲しいものである。絶対にやらんだろうけどさ。
「国民は、この危機的事態に声を上げなければならない」と、古賀氏は最後に煽る。「原発が動いている関西や九州よりも、関東は電気代が高いのを、なんとかしてくれ」という、関東民の危機的な声など、古賀氏にはどうでもいい訳だ。
(引用始め)
危ない原発ほど延命される愚策
古賀茂明
危ない原発ばかりが延命されると言えば、そんな馬鹿な、と思う。だが、現にそういうとんでもない法律改正に向けて、岸田文雄首相が原子力規制委員会の山中伸介委員長と二人三脚で、暴走を始めた。安倍晋三元首相もできなかった「40年ルール」の撤廃を目指しているのだ。
3.11の翌年2012年に原子炉等規制法が改正され、原発の運転期間は原則40年とし、1回に限り20年までの延長を認めた。最長でも60年で廃炉だ。これが「40年ルール」である。政府が現在検討中の法改正案では、まず、原発の運転期間に関する定めを規制委所管の法律から経済産業省所管の法律に移す。原発推進官庁であり福島第一原発の事故を起こした主犯格の同省に任せること自体が驚きだ。さらに、「40年ルール」の骨格を維持すると言いつつ、実際には、規制委による審査などで停止していた期間を除外し、その分を追加的に延長できるようにする。規制委の審査で20年稼働停止していれば、60年を超えて80年まで運転期間延長が認められる。驚愕の改正だ。
現在、管理体制に不備があったり、活断層の存在が疑われるなどの理由で、規制委の審査を通らない原発がいくつもあるが、この改正により、そういう「危ない原発」ほど長い運転期間が認められることになる。どう考えてもおかしい。
40年ルールの根底には、どんな設備でも経年劣化により故障や事故が増えるという「常識」がある。原発では、「心臓部」にあたる原子炉圧力容器とこれを覆う格納容器は交換できない。特に、圧力容器は核分裂で生じる強い放射線の中性子線にさらされ金属材料が劣化する。古くなれば危ないと考えるのは当然だ。
マクロン仏大統領が原発建設を推進していると報じられるが、その理由は、同国の原発の約半数が老朽化による金属劣化や補修予定により稼働が停止し、停電リスクが高まったからだ。原発の老朽化リスクが顕在化しているのがわかる。
しかし、山中委員長は「原発の寿命は科学的に一律に定まるものではなく、規制委員会として意見を言う立場にない」として、ルール変更を容認した。原発の経年劣化を考えれば、安全性と運転期間が無関係というのはあり得ない。一方、5人の規制委委員の一人石渡明氏は「科学的・技術的な新しい知見に基づくものではなく、安全性を高める方向での変更とは言えない」と述べて反対を貫いた。科学者の矜持を示したのだ。
大地震に襲われたトルコは複数のプレートの境目にあるが、日本も4つのプレートが境を接する国である。世界の地震発生地点を赤丸で示す気象庁の地図では、日本は真っ赤に染まり空白地点はない。この小国で世界の地震の10分の1が発生しているという。そんな国で原発を運転するのだから、念には念を入れてと考えるのは当然だ。石渡氏は、地震や津波の審査を担当する委員である。彼ほど、日本という地域がいかに危ないのかを知っている人はいない。だからこそ、老朽原発の運転期間延長に反対を貫いた。そうした専門家の知見を無視して多数決で押し切るなら規制委の存在意義はない。
40年ルール撤廃でより危険な原発の再稼働が促進される。国民は、この危機的事態に声を上げなければならない。
※週刊朝日 2023年3月3日号
(引用終わり)
相田英男 拝
【105】最初から意見が一致するわけないと、わかりきっているだろうが
相田です。
原子力規制委員会の議論で、委員の1名が反対して合意できなかったそうだ。反対した委員とは、日本地質学会の会長で東北大の先生だという。専門は岩石の分類であり、地震の専門家では全くないのだが、地震・津波分野の審査を自信を持って判断しているという。
まあ、ぶっちゃけて言うとだな、この日本地質学会の会長さんは、地団研(ちだんけん)の重要メンバーなのである。だから、原発の再稼働に反対し続けるのである。
地団研とは、地学団体研究会という組織の略称である。地団研とは単なる学界ではなく、共産主義を信じる地学研究者が集まった組織である。井尻正治(いじりしょうじ)という、ナウマンゾウの発掘で有名な学者がいた。井尻はあの武谷三男、坂田昌一と並ぶ、理科系左翼学者のカリスマの一人であり、井尻をリーダーとして戦後に組織されたのが地団研である。
地団研とは、かつては民科(みんか、民主主義科学者協会の略称)の一部会でもあったが、1955年に民科が分解した後も、独立組織として活動を継続している。
現在の大規模地震の発生メカニズムであるプレートテクトニクス理論を、地団研は執拗に否定し続けている。プレートテクトニクスは、西側国家で提案された帝国主義的な理論であり、旧ソビエトで提唱された地向斜造山論の方が正しい、と、ひたすらに言い張っているのが地団研である。学術議論に政治思想を持ち込むのが地団研である。
そんな組織の重要人物が、規制委員のメンバーにいるのだから、絶対に議論がまとまる筈など無いのである。日本の原発の運転には執拗に反対し続ける地団研であるが、ロシアや中国で稼働する原発には、全く抗議の声を上げないのも地団研である。
これ以上は、もう言わん。
最初から話にならんよ、こんなもん。理屈の話じゃないけんね。
(引用始め)
原発「40年ルール」→60年超案、委員1人が反対 原子力規制委
2/8(水) 18:17配信 毎日新聞
原発の運転期間を原則40年、最長60年とする「40年ルール」を改め60年超の運転を可能にする改正制度の骨子案について、8日の原子力規制委員会の定例会で審議があり、5人の委員のうち石渡明(いしわたり・あきら)委員が反対を表明した。この日、骨子を決める予定だったが、山中伸介委員長は多数決による議決を避けて、来週臨時会を開き改めて議論することにした。
政府の原発運転延長方針に対応して規制委は、運転開始から30年を超える原発について最大10年ごとに劣化状況や安全性を審査して、以降の運転を認可する新規制制度の骨子案を昨年策定した。この日は、意見公募で1749人・団体から寄せられた意見と、それへの規制委の回答について議論。山中委員長が「骨子案を了承してよろしいか」と意見を求めると、石渡委員が「非常に重要なことで、採決すべきだ」と発言した。
採決したところ、他の委員が賛成する中、石渡委員は「運転期間(の規制)を法律から落とすことになり、安全側への改変とは言えない」と述べた。また、政府の運転延長案は規制委の審査などで停止した期間分だけ運転期間を延長できる仕組みのため、審査に時間を要するほど古い原発を動かすことになる点が、矛盾を意味する「二律背反になってしまう」などと指摘。骨子案への反対を表明した。石渡委員は東北大教授などを務めた地質学者。2014年9月から委員を務め、地震・津波分野の審査を主に担当している。
規制委は、8日に骨子を決め、それを基に40年ルールを削除して新規制制度を加えた原子炉等規制法の条文案を作成し、15日の定例会で議論する予定だった。山中委員長は会合後の記者会見で「(石渡委員が)誤解されている部分もある。もう少し議論したい」と述べた。【吉田卓矢】
(引用終わり)
相田英男 拝
【104】いわゆるひとつの古典的な詐欺商売である
相田です。
細かくコメントを書くとシンドイので、忘備録程度とします。記事の日本語が回りくどすぎて、内容が大変わかりにくい。が、政府が核融合技術を積極的に「後押しする方針を決めた」、という訳でも無いようだ。組織の名称が「核融合産業協議会(仮)」となっている。「産業振興会」ではなく、「産業協議会」である。しかも(仮)までついている。
まあ、うるさく騒ぐ連中がいるから、どの程度の実力か、下調べしながら話だけまずは聞いてやるか、というスタンスらしい。核融合にはこれまで、旧文部省が長い間、ダマされ続けた歴史がある。なので、政府もさすがにすぐさま飛びつくような、間抜けな対応はしないのだろう。
しかしまあ、極めて古典的な詐欺の手法が繰り返されているのに、疑わない連中が大勢いるのよなあ。世代が変わると、痛い思いを経験した担当者達がいなくなるので、同じ失敗を繰り返すのだろう。
話は単純で、核融合技術を産業化するならば、D-T反応による装置で、安価にメンテナンス可能な、超高真空を維持できる、大型リング構造体が作れるかを証明させれば良い。材料は何だ?316ステンレス鋼か?それとも低放射化バナジウム合金か?
あと、D-T反応では絶対に上手くいく訳ないので、D-D反応炉、He3-He3反応炉が、いつ実用化出来るのかを、説明させれば良い。そしたら、「AIを使った最新の電磁場解析手法で、あと30年くらいで見通しが立ちます」とかの、まことしやかなウソを並べるんだろうな。
そこまでしてアブク銭が欲しいのかね?欲しいんだろうな。私もお金は欲しいからね。
(引用始め)
「核融合」産業化へ、公的補助で民間参入後押しも
2/2(木) 10:10配信
「核融合産業協議会(仮)」設立へ
政府は「核融合産業協議会(仮)」を設立する方針を固めた。国際熱核融合実験炉(イーター)などで培った技術を生かし、核融合産業のサプライチェーン(供給網)構築を目指す。量子科学技術研究開発機構(QST)を中心に民間企業の技術を結集。産学官の連携体制を構築する。公的補助などで民間の参入やスタートアップの育成を後押しする。
このほど核融合発電の国家戦略の骨子案を取りまとめた。核融合産業の予見性を高めるため、発電実証時期を早期に明確化する。産業ニーズを可視化するため、技術成熟度を記載した核融合発電に関する技術マップなどを作成し、経済安全保障の視点も踏まえて取り組むことなどを盛り込んだ。
また、産官学の有識者などが参加する核融合エネルギーフォーラムを発展的に改組し、産業化に向けた議論を活発化させる方針。スタートアップを含めた民間企業の保有する技術シーズと産業ニーズのギャップを埋める支援を行う。
1月30日に開いた有識者会議では、核融合開発を推進するには現在の2倍程度の人員が必要だとする意見が出たほか、核融合炉を運転する人材確保・育成も重要になると指摘があった。こうした意見を踏まえ、3月にも国家戦略を策定する。
核融合発電は発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない脱炭素エネルギーとして期待される。近年は米国や英国、中国が独自に核融合戦略を打ち出すなど、各国が産業化に力を入れ始めている。
日刊工業新聞
(引用終わり)