[1770]私が書いた「余剰の時代」への感想文と、返事。

副島隆彦 投稿日:2015/04/02 11:35

副島隆彦です。 私が書いて出しました 「余剰の時代」(ベスト新書、KKベストセラーズ社刊、2015年2月)に対して、20通ぐらいの 感想メールをいただいています。 私は、まじめに感想を寄せてくださった、すべての人に返事のメールを書きます。

 以下のメールは、おそらく中年の医師からのメールです。それに対しての私の考えを書きました。 ここで、私が、ピケティの「21世紀の資本(論)」からの引用をした箇所は、ものすごく重要な事だ、と私は気付いていますので、皆さんにも、お裾分(すそわ)けします。 何か、ピン とくる人は来てください。 
副島隆彦拝

(転載貼り付け始め)

From: ********
Sent: Friday, March 27, 2015
To: GZE03120@nifty.ne.jp
Subject: 余剰の時代を読んで

副島先生こんにちは。

 大阪で開業医をしています。****と申します。副島先生の嫌いな職業かも知れませんが。

 先生の今回の本「余剰の時代」を読んで、高校の文化祭を思い出しました。確かたクラスでこ焼き屋を出店したのですが、路上販売の店と変わらないか、それより貧弱な設備にクラスの40人は多すぎました。

 たこ焼き作りをやる気の有る奴、売り場で目立ちたがりだけの奴ばっかりで、比較的まじめな私は、仕事を人に譲る形で、暇をもてあましていました。同級生に「なにしてんのー」と聞かれても答えようもなくまさに余剰の人員を味わいました。

 世界中で効率だけが重視され、正社員一人あたりの仕事の負担は重く、それなのに人員は限界にまで削減されています。収益効率だけを重視する商品やサーヴィスがあふれ、それでも人が余ってあふれてしまう。

 世界の限界というのは、食糧そのほかの資源の枯渇ではなくて、文明の発達 そのものが原因となるのでしょうか。

 話は、変わりますが、アジアインフラ投資銀行へ韓国の参加が決まりました。
日本は、うだうだして結局最終的では、6月までに「限定的な参加を表明」などということになって、アメリカに従順になることで決着しそうですね。一体なにをしているのやら。

**** さまへ

2015年3月18日

副島隆彦から

メールをありがとうございます。
 私が書きました「余剰の時代」をお読みくださり、感想をお送りくださいましてありがとうございます。

 お書きのとおり、 「食糧そのほかの資源の枯渇ではなくて、文明の発達
そのものが (人間の余剰の)原因となる」 ということに、私も驚いています。

 これほどまでテクノロジーが発達して、生産力が上がり、有り余るほどの製品が出来て、それですべての人間が 豊かに のんびりと 暮らせるではなくて、それとは反対に、ますます追い詰められて職を失いそうで、青ざめながら、恐ろしく 苦しい 状態に 多くの人間が向かっています。

 偉大な経済学者のジョン・メイナード・ケインズが、新たに大きく気付き直して、20世紀初頭からの人間(人類)の、最大の苦しみ となったものが、「有効需要(ゆうこうじゅよう、消費的需要)の不足から起きる、人間の余剰 =失業、職が見つからない、就職できない」という問題でした。

 人間、すなわち、あなた、が、余剰なのだ、という巨大な問題に、私たちは直面している。この「余剰の時代」を書いた著者である 私が、今も、自分でこの本に書いたことの ものすごさに驚いている、というのが実情です。  

 トマス・ピケティ が、大著「21世紀の資本(論)」で書いていましたが、もう地球上の 人口爆発は 終わってしまって、人口増加率は1パーセントと弱で減少に向かっているので、人口問題は大きくは終わった、と 人口学者たちは考えているようなのです。この記述に私、副島隆彦は大いに驚きました。

  ピケティ本の 77ページ に次のように書かれています。

「・・・多くの人々(人口学者)は、人口増加は完全に止まってしまったと想定しているようだ。実際にはまだ増加は止まっていない。 その正反対なのだが、でもあらゆる兆候を見ると、人類はその方向に向かっているようだ。

 たとえば2012-2014年で、世界経済成長率は、たぶん3パーセント超で、これは新興国の急成長に負うところが大きい。

 だが、世界人口(副島隆彦注記。現在72億人で、一年間に7千万人ぐらいずつ増えている)はまだ、1パーセントに近い速度で増えており、従って世界的な一人当たりの産出(副島隆彦注記。アウトプット。出来高、生産高)の成長率は、実は2パーセントをわずかに上回るだけでしかない。 」

 このようにピケティは書いています。

 ということは、これほどに世界中の先進国の家庭、民衆を苦しめている、高齢者の近親者の介護と、大量の治療できない高齢者の存在と、重度の障害者たちの過剰な生存の問題も、大きくは終わりに向かっているということのようです。

 ということは、〇〇さまたち医師や医療関係者が、職業人として苦しんでいるであろう、医療の現場での 治癒しない複雑な難病の病者たちの 問題も、解決はなくても、「過ぎ去って」ゆくでしょう。

 私はこの大きな事実を、世界基準の大著(たいちょ)をしっかり読み込むことで、理解しました。

 それよりは、若者たちの失業の方が、いよいよ人類の最大の課題としてせり上がって来ている、という ことになります。  私は、この本を私に書かせた編集長が、私に投げた 球の大きさを、あとになって気づいて 今も呆然(ぼうぜん)としています。

 それでも著者の欲望としては、今のこの時期に、この本を書いて出しておいてよかった、ということになります。

 貴兄は、生来、脳と体力に余力、過剰 がある人でしょうから、 どうぞ 私の他の本もお読みください。そして感想をお送りください。必ずお返事します。

副島隆彦拝  

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝