[489]下↓に副島先生が書いたことを、簡単に解説したいと思います

ジョー(下條) 投稿日:2011/04/26 08:59

下↓に副島先生が書いたことを、が書いたことを、簡単に解説したいと思います。

まず、原子力安全委員会は、もう、「大気中に放出された放射性物質の量はチェルノブイリの1/10」で走りだしたようです。先週もこんなニュースがありました。

<引用開始>
放射能の大気放出続く…1日154兆ベクレル

読売新聞 4月23日(土)21時15分配信
 内閣府原子力安全委員会は23日、東京電力福島第一原子力発電所から大気中に放出された放射性物質の量が、放出量が落ち着いた今月5日の時点でも、1日あたり154テラ・ベクレル(1テラは1兆)に達していたことを明らかにした。

 5日に福島第一原発から大気に放出された放射性物質の推定値は、ヨウ素131が毎時0・69テラ・ベクレル、セシウム137が同0・14テラ・ベクレル。国際的な事故評価尺度(INES)で使われるヨウ素換算値で、ヨウ素とセシウムの合計量を計算し直すと、放出量は同6・4テラ・ベクレル(24時間で154テラ・ベクレル)となることがわかった。同委員会はこれまで、5日ごろの放出量について、セシウムとヨウ素の量を単純に合計し、「毎時約1テラ・ベクレル以下」と低く見積もっていた。
<引用終了>

ポイントは「毎時約1テラ・ベクレル「以下」」(テラベクレルと兆ベクレルは同じ単位になる、なぜ同じ文で2つの単位系を使っているのかさっぱりわからない)を「1日154兆ベクレル」としたところです。1テラ・ベクレル「以下」ですから、0.5テラとすれば、大まかな数字で言えば「10倍程度多くした」ということになります。西村肇先生は一日1テラベクレルと見積もっていますから約100倍になります。

実は、以前の西村肇先生(100日でてもチェルノブイリの1/1000)と原子力安全委員会(チェルノブイリの1/10)の値も、100倍以上の差があって、ここから、原子力安全委員会は10~100倍大きな値に見積もることに決めたことを意味します。

どちらの値が正しいのか?というのは皆さん自身がどちらを信じるかということですが、前回述べたことを図で示します。まず、放射線レベルですが、アメリカ軍が調べた福島第一原発付近の放射線量の結果が下の図のようになります。南の方と北の沿岸部では20キロ圏内でも、かなり放射線量が低く、一律に20キロ圏内立ち入り禁止にしている意味が全然ないことがわかります。


アメリカ軍が調べた放射線レベルマップ:赤の部分が年間被爆限度20 mSv以上に対応する。

さて、上の図の赤い部分の内側はどうなっているのでしょうか?原子力安全委員会がつくった図が、もう少し詳しいです。ただ、注意していただきたいのは、20 km圏内のデータがないことです。20 km圏内のモニタリングポストがないのでそこが空白になっているわけです。一番たかいところが年間200mSV以上という非常に高い値です。


原子力安全委員会が示した放射線レベルマップ。20 km圏内はモニタリングポストがないので測定できていないのがよくわかる。

上の図は精度がちょっと粗いので、福島大が調べた結果が他にあります。すると、きちんと「プルーム効果」と呼ばれる盛り上がりの場所が浪江町のところにあるのがわかります。


福島大学が調べた放射線レベルマップ

この「プルーム効果」と呼ばれる盛り上がりの場所を、西村先生は計算できちんと考慮しました。つまり、この効果を入れれば、発生源の放射線放出量は少なくなるわけです。

ところが、下のSPEEDIはそういう効果は取り入れることが出来ません。だから、なめらかに福島第一原発を釣り鐘の中心として、ゆがめてつなぐだけです。すると、以前にも書いたように、中心部分がものすごく高い放射線量になります。下の図をじっくりよく見て下さい。


SPEEDIの結果。上と比べると、20 km圏内はモニタリングポストがないのでなめらかに福島第一原発に向けて値を上げて計算しているのがわかる。プルーム効果は存在しない。

さて、下は、一番上のアメリカ軍のデータを年間の放射線量に変換したフランスのデータです。3月30日のデータですが、空から測定しているのでプルーム効果がありません。すると浪江町付近で年間20~30msV。上の2つの図の約1/10です。


フランスの原子力安全研究所によって公開された、福島原発周辺の1年間の推定積算被ばく量。3月30日ー4月3日のアメリカ軍のデータをもとにつくった。

いまだにこのSPEEDIで放射線物質大気放出量を見積もっているのか定かではありませんが、SPEEDIで見積もれば1桁以上大きい量になるのは明らかです。

最後にチェルノブイリで放出された放射線量も示しましょう。図の強いところが約55万MベクレルBq/m^2(MBq/km^2とBq/m^2は結局同じ単位になる)です。私のわかる範囲では茨城県(ひたちなか市、100km程度)で現在3万MBq/km^2(セシウム137、なぜか3月18日以降で3月15,16日がぬけている))ですから、チェルノブイリでは恐ろしい放射性物質が広大な地域に降ったのがわかります。ドイツのバイエルンは1000 km離れていますが、一部の地域では数万Bq/m^2降ったそうです。

外国人が3月12日から日本から退避して逃げたのですが、確かにこの図をみれば、逃げた理由がわかります。しかし、これを見れば逆に、「大気中に放出された放射性物質の量はチェルノブイリの1/10」は無理があることがよくわかります。

もし「チェルノブイリの1/10」が正しいとすれば、放出された放射線物質の99%が海のほうに流されたということですが、SPEEDIの結果は、どう見てもこれを否定しているようにしか見えません。

下條竜夫拝