2010年2月8日佐藤栄佐久元福島県知事インタビュー

1094 投稿日:2011/03/22 14:23

@iwakamiyasumi
3月20日に行われた、佐藤栄佐久元福島県知事の緊急インタビューは大きな反響をいただきました。動画と共に、有志によるサマリーテキストを掲載しています。ぜひご覧ください。http://bit.ly/eSa779

http://iwakamiyasumi.com/archives/7682 より貼付

・福島県知事時代、原子力発電に反対ではなかった。プルサーマル計画に疑問をもったのは、燃料廃棄についてどこに捨てるかが未決定だったから。

・エネ長長官が関連法規を二点変更したことなどを評価して、その時点でプルサーマル推進には賛成。しかし、四つの条件をつけた

1.Mox燃料の品質管理
2.作業員の被爆低減
3.使用済みMox燃料対策の長期的展望の明確化
4.核燃料サイクルに関する国民会議

これらの条件は、翌年より裏切られ続け、東電との間にも軋轢が生じた。

・1989年、福島第二原発のボイラー事故が起きた際に、地元に情報がまわらないなど、隔靴掻痒の事態に。同様の事故が、三年後、美浜原発でも起きて、疑問が深まった。

・原発一基検察に一兆円程掛かる。その1%が地元に落ちる。財政悪化している地方自治体が、原発誘致に心が動くのは無理が無い。

・使用済み核燃料のプールも大変な危険となることが、この度の問題で取り沙汰されている。自分が知事時代には、それに気付かなかった。使用済み核燃料の貯蔵庫を原発内に作ると東電から連絡があり、承諾してしまった。
但し、当時も使用済み核燃料の今後の展望を国にも確認してほしいと要望し、通産省から「2010年には専門の施設に移転。」と説明を受けた。しかし、半年後には、「2010年に、再検討」という説明に変更。不信感を持った。

・原発というものは、大臣や国会議員でもさして知る事ができないのでは?電力事業社や官僚が集団的に決めている。

・エネルギー関連のとある安全会議に参加した際、議論が安易ではないかと問題提起したことがある。会議中、住田弁護士(TVにも出ている女弁護士)より「三回も真面目な議論をしているのになにか?」と避難された。
そこで、「(こういった内容の討議については)ドイツでは15年掛けて会議してから結論を出した。フランスは二十年掛けて結論を出してない。
日本は、三十人ほどの人間で、しかも、参加者の多数が身内である電力事業者や官僚である会議をたかだか三回行って、決めようとしている。国民的な議論にすべきではないか?」

・国会で国民の代表たる議員によって成立されるエネルギー基本法には、原子力という言葉すら入っていない。
 エネルギー基本法が通った後に、実務レベルで官僚が主体となって計画を建てるのがエネルギー基本計画。
 そこには、原子力の計画が入っている。これでは公論に載せることすらできない。

・使用済み燃料に関して、疑問を糾すと、当時の通産省の課長クラスの方には、福島と(再処理施設を持つ)青森で相談して下さいと言われる始末だった。

・一方、福井県敦賀の高速増殖炉もんじゅ計画が進んでいた。安全な核燃料サイクルに必須な計画であったけれど、1995年にナトリウム漏洩事故が起きた。疑問はまた拡大。

・1999年には、JCO東海村原発事故も起きた。上述の四つの条件がちっとも守られない、原発推進自体に疑問符がつけられる状況になったと判断し、福島のプルサーマル計画も白紙に戻すべきと主張した。
すると、韓国出張中に、東電の副社長から、福島の火力・水力発電所建設計画をストップすると連絡をされた。
帰国途中に、大臣、東電関係者などが、空港で待っていると連絡を受けたが、福島のプルサーマル計画中止は決定事項と議論をしなかった。
その後、一ヶ月ほどで、福島の火力・水力発電所建設計画は問題なく推進すると連絡が来たので、特に問題にはならなかった。

・福島県として、失敗学の村上先生ほか有識者を集めて、原子力および電力事業の安全についての会議をもった。福島県庁内にリスク管理の専門部署も置いた。

・2001年には、エネ長が力づくでも原子力を進めるといっていたほど。
わたしは、「原発をブルドーザーのように進めないでください」と申し入れた。重要な問題であるから、しっかり国民的議論があってしかるべきと私は考えていた。

・1999年、JCO東海村原発事故では、最高の技術、安全管理のもとに実施されていると思った原発が、あまりにずさんに運営されていると知って、実にショックだった。
中性子線が検出されたにもかかわらず、マスコミがヘリコプターで取材していた。中性子線は、コンクリートさえ通り抜ける。だから建屋外だろうと、上方だろうと危険。
この取材方法を、欧州のメディアは嘲笑したほど。日本では一般的に原子力問題に無知であるとも言えないか。

・その後、浜岡原発で東電のデータ改ざん問題が起きたことは、さらにショックだった。同様の装置を使っていた福島原発でも検査依頼が保安院から来たが、「運転に支障がないように検査せよ」というお達しがあって、頭に来た。まず止めて、問題がないと判ってはじめて、運転を再開すべきだからだ。

・保安院に原発に関する内部告発が寄せられたことがあった。原発の格納炉にひびがあった由。それを保安院は、東電にすっかり情報開示してしまった。これでは内部告発した者は、自分の立場を守れない。首になったり、仕事を打ち切られたりするだろう。
 東電だけの問題ではなく、官僚・保安院も含めて、問題を作っていると考えるようになった。

・その後、福島原発でも、さまざまな事故があり、その記録改ざんがあったと知った。もろもろ知って行くに連れて、国(官庁)自体が隠秘構造の中心にあると判った。

・産業廃棄物の不法投棄などに関しても、東京のゴミを安く引き受ける業者が、福島の炭坑跡地に捨てているだけといった問題がある。東京の必要を地方で解決する構造、地方の貧しさが汚れ仕事も引き受ける構造、こういった都会と鄙の関係が指摘できる。原発でもこれは同じこと。

・昨年、現在の福島県知事(名字は同じく佐藤さん)が、プルサーマル推進を承諾した。その際、県議会はろくに議論せずに、知事に一任してしまった。知事の判断を云々するつもりはないが、県議会が議論をしなかったことはどうかと思う。

・この度の福島の原発問題で、プルサーマル発電について、通常のウラン燃料の危険性と違うことが、ほとんど言及されていないと感じている。それが大変不思議だ。

・役所は、一旦道が引かれると、止まらない。誰にも責任を取らせないし、取りたくないが故に、みななぁなぁでその道を進んで、止めらない。原子力の問題を通じて、このことが判った。

・日本の原子力政策がスタートした時点から、不明瞭な点が多い。(国際政治的にもいろいろあんでしょうなという話。おおざっぱなので省略。)

・わたしが望むのは、なるべく環境を汚さずに、いち早く今回の問題が収束して、みながまたふるさとに戻って、暮らす事ができること。

・現地の自治体も、住民も、政府の説明をすなおに聞いてきたのです。事故など一切無いという説明を信じて、推進に協力して来た。それで今回の事故です。ちゃんと解決して欲しい。

・使用済み燃料の怖さは、私も今回の事故で始めて感じた。

・この話の詳細をもっと知りたければこちらをご覧下さい。

 知事抹殺-つくられた福島県汚職事件-佐藤栄佐久
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