「1929」 『世界頭脳(ワールド・ブレイン)』とは何か(第1回・全2回) 2021年4月21日

 副島隆彦です。今日は2021年4月21日です。
 
 今日はワールド・ブレイン(World Brain)という話をします。
これは、「世界脳」あるいは「世界頭脳」とやるか、それとも、もっとはっきりと、「世界を支配する脳」と、訳し方はできる。
 この「ワールド・ブレイン」という考え方を紹介します。日本の知識人で、このことに気づいている人はまだいない。だから私が言います。

H・G・ウエルズ
 SF(サイエンス・フィクション)ものの小説の創業者というか、一番、初期の人である、H・G・ウエルズ(Herbert George Wells、1866-1946年、79歳で死 )という作家がいます。
 ’SFの父’と呼ばれています。名前はみんな知っていると思う。ワールド・ブレインという考えは、この H・G・ウエルズが、1937年の講演で言い出した。翌年、本になりました。
『世界の頭脳―人間回復をめざす教育構想』というタイトルで日本語の翻訳も出ています。


『ワールド・ブレイン(World Brain)』の表紙
 「世界頭脳」というのはどういうことかというと、誰でもただですぐに、いつでも共有できる知識の総合的なまとまりのことです。もうちょっと簡単に言うと、「新しい百科事典運動」ということです。英語では、New Encyclopedia Movement といいます。もっとわかりやすく言うと、今のインターネットが引き起こした、情報、通信革命が引き起こした「ウィキペディア」(Wikipedia)のことです。こう言うとわかると思う。そして、これが人類にとって、どんなに危険かという話も私はしなければいけない。

 このワールド・ブレイン(世界頭脳)というのは、普通よく言われるような、天才級の頭脳をした人たちが最初に学問というか、自然科学(ナチュラル・サイエンス)を発達させていったという言い方で使われる特別な天才的な頭脳という意味ではない。世界中の普通の人たち、みんなが共有できる知識、情報という意味です。それを作れという運動です。

 現に私たちの目の前に、インターネットがあって、それは端末機としてはスマホになっていますが、いつでもどこでもアクセスできて、SNS のチャットでお互いの情報のやりとりや会話をしているのですが。それだけではなくて、どこに、どのようにアクセスして、自分の必要な知識を供給してもらうかということです。これが持つ危なさというか、危険性について話をします。

 ウィキペディアを使う人というのは少ないと思う。簡単に言えば知識人階級だけです。普通の人は、言葉調べというか、言葉の意味がわからないときに、ちょこちょこと辞書代わりに引く程度だ。ウィキペディアを使って政治思想問題とか社会問題とかを、詳しく英文にまで戻って読んで理解するという人はあまりいないと思う。それでも読書人階級、知識人階級であればウィキペディアを使う。

ウィキペディア
 ウィキペディアのよさと悪さだけど。もう20年前からある。1995年(日本では、1998年から。ウインドウズ98から)から、インターネットが普及したときからあります。しかし、内容は非常にいい加減でしたというか、初めはほとんどおもちゃみたいな感じでした。しかし、それから20年経って、今はもう20年もたつと、膨大な量の情報、知識が、ウィキペディアに有る。
 あらゆる単語、項目が全てあると言ってもいい。何百万項目でも済まないぐらい、何千万項目もある。ありとあらゆるものが検索(アクセス)すれば見られる、読めるようになっています。このことは、一面では恐ろしいことです。

 私は10年ぐらい前まで、大学で教えていたので、大学生がレポート提出のときに、ウィキペディアの項目の文章を、そのままべたっと張りつけて、それを自分で書いた文章のふりをしてレポート提出してくるわけです。このことは、もう15年前に起きていた。今の大学の学生たちも同じことをやっていると思う。大学教授はそれを注意すると思う。だからって、どうにかなるものではない。
 学生が自分なりに勉強しました、ということですから、採点する側は、学生がどこからその情報を引っ張ってきたかはすぐ分かる。だから、ウィキペディアから取るな、貼り付けでレポートとするな、という注意を、今の日本の大学教授たちもすると思う。それでもここまで普及してしまっている。

 もう一つよくないのは、このウィキペディアのおかげで、日本の出版業界が半分、滅んだと言ってもいいぐらいです。これは冗談ではない。
 なぜなら、出版社の中にいる編集者(エディター)たち自身が、このウィキペディアを使うからです。そのことを、恥じる、ということもない。編集者たちは、ほとんどが朝から晩までウィキペディアを使っています。単語検索をやらなきゃいけない。自分が、作家や著者や大学教授からもらってきた原稿の言葉検索、用語を確かめようと思うと、ほとんどはウィキペディアに行くんです。

 あとコトバンクとかいうのもある。あとは、Google か Yahoo! で検索するわけですが、Google検索すると、大体、頭のほうに、ウィキペディアが出てきます。ですから、ウィキペディアを使いながら本をつくっている。だから、このこと自体が、出版業界が滅びつつある、あるいは半分滅んだ大きな理由です。自業自得だとも言える。

 大きくは、インターネットとスマホが発達したので、本がどんどん売れなくなったという事実がある。書店での本の売り上げは、がた減り状態で、ひどい状況になった。さらには、アマゾンでネット販売で、買う割合が、もう、本の購入の全体の2割まで来たようだ。
 このことで、本の著者で生活している副島隆彦も大きな打撃を受けているわけです。恐らく私の場合でも、自分の本が、この20年で、2分の1から3分の1しか売れなくなった。これがこの20年間で起きた真実です。

 もっと言うと、テレビと新聞 が激しい打撃を受けた。’紙(かみ)の新聞’を購読している人はどんどんものすごい勢いで減っています。この20年間ぐらいで、全部で紙の新聞が、5200万部売れていたのが、今は年間、2400万部というから、半分にまで落ちたんですね。
 朝日新聞や読売新聞の打撃はものすごく大きい。購読者数600万部、と言っているけれど、本当は、400万部ぐらいだ。
 毎日新聞や産経新聞なんかは、潰れかかっていると言ってもいい。日経新聞だけは経済金融新聞だから、インターネットの有料会員制に移行して、紙と有料配信のインターネット記事両方で月に5900円です。

 紙の新聞は要りませんと言ったら、安くなるのは1500円くらいかな。インターネットだけで4277円だと思います。そういう状況になっている。金融経済情報を追いかけている投資家や資産家や上級サラリーマンたちが、これを利用してネット記事を読んでいます。私もそうしています。現状はここまで来てしまって、もう戻ることはありません。もっともっとこれがは激しく進行すると言い切ったほうが早い。

 テレビ業界もひどい有様(ありさま)になって来た。ネットのせいで、大きなテレビ局と、その延刻放送網が、ひどい打撃を受けている。この問題は、これ以上やりません。

 もう一回、世界頭脳、ワールド・ブレインの話に戻ります。
 知識、情報にアクセスするのが本当に簡単になった。簡単に言えば、漢字の間違いを訂正するのに検索する。あるいは英、単語のスペリング用に検索するとか、簡単に言葉の意味を調べるとか、恐らく大抵の場合は普通の人はその程度でしかウイキペディアを使いません。それ以上難しいことを考える時間も暇も能力もありません。

 ただ、知識人階級の人間たちにとっては、ここからが深刻な問題になってくるんです。要するに、英語やフランス語やドイツ語、ロシア語でそれぞれウィキペディアができ上がっているんだけど、それらが、英語に変換され翻訳されるわけですね。
 そして、何とこの1年間で、恐らく2020年ぐらいからだと思うけども、Google が開発した自動翻訳機が搭載されている。私は半年ぐらい前に気がつきました。英文の原文を、Google の翻訳機にかけると、おかしな日本語なんだけど、何とか意味が半分は酌み取れる日本語が出てくる。

 自動翻訳、オートマチック・トランスレーション・マシーン(automatic translation machine
)です。これで日本文が出てくるんです。これは驚くべきことだ。ただし、そのおかしな日本文に、人間がどんどん手を入れていかないと、普通の場合は半分意味不明です。まだその段階です。

 この自動翻訳機というのは、Artificial Intelligence の略記号である AI (エイ・アイ)と呼ばれている、人工知能 の一部としてずっと開発されてきた。40年ぐらいになる。このことも関連してきます。もっと本当のことを言うと、日本のウィキペディアは、時事通信と共同通信、主に共同通信と電通が、下請けとして、お金を掛けて、秘密で裏方で、周りにバレないように、日本語版を、つくってきた。はっきり書くと、アメリカのCAI(米中央情報局)の下請け、子分です。

 日本国内の、歴史上の古い知識と文化とコトバなんとかは、日本人しか書けません。
ただ、世界知識 の場合は、英語やフランス語で書いてある文献を、ほとんど英語になっている。
 それを、日本人の頭のいい人たちが、大学院生たちとかが、自分の学科の共通知識を、アルバイトで、電通や共同通信に雇われて、やっているようだ。
 簡単な翻訳をして、全体の10分の1ぐらいの短い解説文に書き換(か)えていたんですね。それでも間に合うという時代がこの10年間ぐらい続いていた。それなりの専門家が、要領を得て書いているから嘘ではない。しかし、去年から起きた現象は、自動翻訳機で生(なま)の英文が、そのまま日本語で出てきますから、大きな変化が起きてしまった。今はそれが併存状態で落ち付いています。

ウィキペディアが、一体、誰が書いているのか。その正体が、分らない。文章責任がない。
日本のかつての「平凡社の大百科事典」のように、その項目(アイテム)の言葉の説明文の、最後に、日本人の学者たちの名前が、書いてあった。それが、文章責任(略して、文責=ぶんせき=という)であり、それが、信用を生んでいた。 それが、良質の国民文化(ナショナル・カルチュア)を作ってきた。
 
 ところが、ウイキペディアでは、誰が書いているのか、名無しも権兵衛(ごんべえ)で、文章責任が、無い。これは、恐ろしいことだ。まるで、「誰でも、みんなが、参加して、書き込める、百科事典です」と、悪質な、制度、建前になっていて。 日本の田舎の、何とか神社の、由来(ゆらい)とか、起源とかを、ヴォランティアの郷土史家(きょうどしか)たちが、書いている。としている。これは、トンデモナイ、言論マニューバー(謀略言論)だ。 ウイキペデアは、米CIAが、作って、管理して、運営している。そして、世界規模の謀略政治と、それから、各国の国民洗脳(せんのう)のための道具として、使われている。

 この問題は、今日は、「ワールド・ブレイン」(世界頭脳)の説明だから、これ以上、話しません。私、副島隆彦は、もう、ずっと、このことで、怒っている。誰も、この重大な、大きな真実を書かないから、私が、書くしかない。

 英語の原文を、翻訳して簡略にした解説文でいいじゃないか、という用途で使う人は、日本人の知識人や解説翻訳家みたいな人が書いた文章で間に合うんです。だけと、私たち知識人になると、英文で読んだものを、自分なりに理解して日本国内の知識にしてゆくために、さらに工夫がいる。このことが、英語の原文(オリジナル・テキスト)が、自動翻訳機にかかって出てくると、嘘がつけなくなった、いいかげんなことが書けなくなったという問題が、現に、起きています。

 ウィキペディアは、すでに書いたとおり、アメリカのCIAがやっている。CIAというのは Central Intelligence Agency、「セントラル・インテリジェンス・エイジエンシー」で、米(べい)中央情報局と訳しますが、ここの、intelligence というところが非常に重要で、これは、もともと知能なんです。インフォメーションじゃなくてインテリジェンス。それが国家情報、すなわち、国家スパイとか、政治謀略用の情報操作とか、恐ろしい意味に変わっていく。
 Artificial Intelligence、「アーティフシャル・インテリジェンス」、AI、人工知能もそうですが、このインテリジェンスが乗っている場所が、人間の、ブレイン、脳、頭脳なんです。

 それらが人間の頭に入っている。人間の頭のことをヘッド(head)という。このヘッドの中にスカル(skull)、頭蓋骨(ずがいこつ)というのがあって、その中に、ブレインが入っているわけですね。この中で、thinking ability、思考(しこう)、「考えること」というのが行われる。英語では、thinking ability 「スインキング・アビリティ」のことを、mind、マインド、といいます。

 ところが日本は、土人の国ですから、知識人階級でも、今でもこのマインドを、✕「心」という言葉を、ここに入れてしまうんですね。全員、バカなんです。日本の知識人階級の、ほぼ、全員が、マインド、を ✕心 だと、思っている。今も、このレベルです。私、副島隆彦が、もう、25年間、「バカ。心は、英語や、フランス語、ドイツ語にはならない。mind マインドは、思考、知能、精神だ」と、言い続けても、まだ、聞いてくれない。ウイキペディアの、哲学(フォロ・ソフィア。値を愛する学問)や、認知科学(コグニティヴ・サイエンス)の専門用語でも、恐るべきことに、
まだ、思考と、 ✕ 心 の 区別が、専門家の学者たちが、付かない。日本は、いまだに、恐るべき土人の国です。

 心は、heart、心臓のことで、ここに有る、feelings フィーリング、感情、のことだ。ところが、日本の知識人階級は全員で、今でも、「心は頭を含んだ全部だ」というふうに馬鹿な考えをみんなしています。愚かきわまりないことだ。mind マインドというのは、知能、思考、精神作用です。

 もう一つ、オックスフォード英語辞典に載っている、mind の英語の定義、definitionは,thinking ability の 他に、
‘state of consciousness’ 「スイテト・オブ・コンシャスネス」
と言いまして、「意識の状態」と訳します。これが思考というものの、英語の言葉による定義です。このことを、これ以上、言い出すと切りがない。私は、かつて何度も、このことを主張した。
 だから、in my mind を、✕「私の心の中では」とやって、これで、通用するものだから、日本人は、アジア土人のままだ。正しくは、◯「私の考え)(思考)では」あるいは、「私の知能では」と言いかえなければいけない。ようやく、この段階に来た。私が、日本は土人だと私が言うことの症例、病気、現象 の一部だ。

 この mind 、brain 頭脳、知能問題はもう、これ以上やりません。
 H・G・ウエルズという人は、1866年生まれだ。1946年に、第2次世界大戦が終わった次の年に、80歳で死んでいる。この人は極めて、早熟な人で、25歳から小説を書き始めた。

 でも売れるわけはないですから、初めは当時のイギリスの小さな雑誌に載せていたんですが、やがて『ペル・メル・ガゼット」Pall Mall Gazette とか『ネイチャー」 Nature などの1流誌に、認められて、寄稿するようになった。寄稿というのは、 contributionといいますが、編集者の目にとまって、優れたレベルに達しているとなると載せてもらえる。お金も少しもらえたと思う。それでもまだアマチュアレベルです。

 ところが、1895年、29歳のときに『タイム・マシン ”The Time Machine”という小説を書いてドカンと売れた。このときに彼は名声が出て出世して、物書き、小説家として成功した。

タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)

 次の年の1896年には、『モロー博士の島」”The Island of Dr. Moreau ”を出します。これは恐ろしい小説です。本当に恐ろしいんです、これは。

モロー博士の島 (偕成社文庫)

 やがて映画になりました。私が深く尊敬している映画監督のジョン・フランケンハイマー監督の「D.N.A ドクター・モローの島」という、1996年の映画です。南太平洋の、ニューギニアのあたりの島を一つ買って、そこに住んで暮らしている学者、きっと狂気の学者(マッド・サイエンティスト)が、高等動物である獣(けもの)たち、ヒョウとか、ライオンとか、クマとか、そういうのを、手術して、人間につくり変えるという恐ろしい小説です。「ドクター・モローの島」という映画は今見てもぞっとします。

 それから『透明人間」”Invisible Man ”というのを次の年には書いて、それから『宇宙戦争』と日本語では訳されますが、これも書いた。それから、『月世界旅行』というのもさらに書いて、1895年から1901年までの6年間で、彼の主要な作品がこの時期に、出てしまっている。32歳までにですね。その後もずっと書き続けて、大変な影響力を、まずイギリスで持った。それからドイツ語やフランス語にも翻訳された。

 フランス人で、ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne、1828-1905年、77歳で死)という人が、SFの最初、『海底二万里[マイル]”Vingt Mille Lieues sous les mers”(1870年)とか、『八十日間世界一周」”Le tour du monde en quatre-vingt jours ”(1873年)、『彗星飛行」”Hector Servadac ”(1877年)も書きました。この人の話は今日はしません。ジュール・ヴェルヌは、コナン・ドイル(Conan Doyle、1859-1930年、71歳で死)なんかとほぼ、一緒かな。H・G・ウエルズより30年ぐらい早い人です。もう彼らのことはいいです。

ジュール・ヴェルヌ

海底二万里(上) (新潮文庫)

 今言ったように、『透明人間』や『宇宙戦争』とか、「タイム・マシン」という考えを、H.G.ウエルズが、作ったということは、それ以降にあらわれて、この50から80年間の間に、いろんな種類のタイムトラベル映画、宇宙映画が、世界中で作られた。○○年の、「2001年宇宙の旅」や、1972年からの「スターウォーズ」にまで至る、ものすごい数のいろんな種類の宇宙映画、あるいは、未来社会を描いた映画があって、日本国内にはも、優れたアニメの作品がたくさんありますね。未来社会 を描いた映画も全部、H・G・ウエルズから大きく影響を受けていると考えるべきです。このことは当たり前のこととして認められています。

 もうちょっと後になると、40年代から50年代のころ、WWⅡ の戦争中ですが、原爆を作って、投下する話みたいなものまで出てきた。「アトミック・ボム」atomic bomb、原子爆弾(やがて、核兵器、ニュークレア・ウエポンに呼び名が、変った)の話まで、彼が、作っている。恐るべき天才です。
 あるいは、鉄鋼船というか、鉄で甲板や船を覆った船は、1890年ぐらいにはもう既にあったんですが、それが陸上でも動き出すという考え方で、タンク、戦車という考え方も、H.
G.
ウエルズが、出しているんですね。飛行機で空から爆弾をどんどん落とす戦争が起きるとか、予言者としての能力がすごかった。いろんなことを彼は書いています。

 そしてウエルズは、晩年の、72歳のときに「ワールド・ブレイン(世界頭脳)」というのを講演して、それが本になった。同時に、世界政府(ワールド・ガヴァメント、 World Government )をつくれ、あるいは、ニュー・ワールド・オーダー(New World Order)といいまして、新(しん)世界秩序 をつくれ、戦争がない世界をつくれ、という考え方も、H・G・ウエルズが初めて出したんです。

 やがて、第1次世界大戦(1914-1918)の後、ヨーロッパの主要都市が、爆弾で燃えてしまうような激しい戦争になったんですが、翌年の1919年に、国際連盟と日本語ではいいますが、The League of Nations「ザ・リーグ・オブ・ネイションズ」ができた。このアイデアを出したのもH・G・ウエルズです。彼が1人で何でもやったとは言いませんが、とにかくものすごく先見の明のある人で、すごい量のアイデアを出した。驚くべき天才です。

 『月世界旅行』というけども、”The First Men in the Moon ”「月に最初に降り立った人間たち)」というタイトルですね。1901年、35歳のときにこれも書いています。これが、のちのいわゆるアメリカのアポロ計画で、1969年7月22日に、アポロのアメリカの2人の飛行士が月面に降り立ったという話です。これはウソです。そんなことは、人類は、まだ出来ない。このアポロ計画自体のアイデアも最初に出したのは、H・G・ウエルズです。

 こういうふうに考えていくと、いろんな問題が、H・G・ウエルズから起きている。最初にコンセプト、言葉によるアイデアの提示、をしたわけですね。概念をつくるということは、非常に大事で、それは、イギリスという国が世界覇権国だったから出来た。
 1920年代から、アメリカがどんどん、世界一の富を持ったので、アメリカに覇権(ヘジェモニー)が移るんだけど、イギリスとアメリカは、英米国民で同じ英語をしゃべっています。本当はかなり違うけれども、大阪弁と東京弁の違いぐらいですから通じるわけです。そして英から米に世界覇権が移るんだけど、その前の、1900年ぐらいの話だから、H・G・ウエルズは世界で最先端の豊かな国の一番すぐれた知能、知性がある人々の中で、認められてはい上がっていって、大きな影響を与えたということが大事なんですね。

 この未来社会イメージでいうと、私が尊敬して、みんなも知っているジョージ・オーウェル(George Orwell、1903年-1950年、46歳で死)の『1984年」”Nineteen Eighty-Four ”(1949年)という未来社会を描いた小説もそうですね。
 もう一人オルダス・ハクスリー(Aldous Huxley、1894-1963年、69歳で死)という人がそれより10年ぐらい早くて、『すばらしい新世界」” The Brave New World ”(1932年)。それは、これまd見たこともないようなすばらしい未来世界という意味だけれども、そういう未来小説。しかし、この2作は、ディストピア(dystopia)と言いまして、「絶望の未来社会」だ、と。人類の未来社会は、人類が、大きく管理されて、表面上は自由で平等で、貧困が消えて豊かになった社会になった、というふりをした社会ができ上がる。けれども、その中は実は牢獄国家で、収容所社会で、大きな意味で階級差別があって、能力差別があって、人間は牢獄の中で生きていたという小説で、これが、今の私たちにまで伝わっているわけですね。


ジョージ・オーウェル

一九八四年〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)


オルダス・ハクスリー

すばらしい新世界〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

 しかし、H・G・ウエルズは、それより30年早い人ですから、そういう悲観主義がまだ無いんです。悪い面がちっとも出ていないところで、思い切り理想を振りまけた人なんですね。だから、晩年になって出してきた、この「ワールド・ブレイン」という思想は、天真爛漫(てんしんらんまん) そのもので、公平で、リベラルで、すぐれた情報が、どんな貧しい人にも自由に努力なしで全員に行き渡るというアイデアを出した。

 ところが、副島隆彦が非常に危機感を持つのは、今のウィキペディアは、便利で、誰でもいつでも使えて真実が書いてあるように見えるけれども、本当の真実は、全て重要なことは、隠します。権力者や世界支配者たちにとって、都合の悪い真実は全て隠します。削り落とします。一部分だけ残して、彼らにとって都合が悪いことは全部隠します。

 その具体例が、例えば、徳川家康という人は、本当はどういう血筋の人で、どこからやってきて、やがて織田信長にくっついて、下層民で忍者の出、ですけど成り上がっていった。これは名古屋徳川氏(公爵家)からしたら、絶対ばれちゃいけない秘密なんですね。
 こういうところになると日本国内基準で全部隠します。そして、信長を本当に殺したのはイエズス会の宣教師たちで、当時できてまだ10年しかたっていない黒色火薬を本能寺の下に詰め込んで、そこに信長が入って、朝の3時、4時にドカーンと大爆発させたんですね。だから信長の骨も死体も何も残っていないというのが真実です。これを私、副島隆彦は自分の本に書きましたね。

 こういう大きな真実になると、必死になって、嫌になるぐらい血相を変えて、彼らは隠します。✕陰謀論だとか、頭のおかしい人たちの噂(うわさ)話に過ぎない、とか。そういう言葉遣いで、私、副島隆彦みたいな人間は、徹底的に嫌われます。月面着陸問題もそうですが、副島隆彦が日本では闘っているわけで、あらゆる問題、30種類ぐらいの問題で、私は戦っています。

 ここでは、ウィキペディアの記述は、公平で真実を書いているように見せかけながら、ものすごく悪らつで、たちが悪い隠し方をします。「さらに研究が進んだ結果、疑われた仮説は虚偽であることが証明された」と、そこまで書きますからね。あるいは、「証明はどちらの側もできていない」とか言って、公平を装ってほったらかして、真実をうやむやにするんですね。本当にたちが悪い手口をウィキペディアはやります。

 だから、H・G・ウエルズが、ワールド・ブレイン」のアイデア、コンセプトを出したときは天真らんまんだけども、現実には、何が起きているかというと世界の人民(人類)の洗脳のための道具なんです。世界民衆、世界人民を、洗脳する道具としてのウィキペディアという面がどうしても出てくるんです。現に出てきてしまった。

 ここをどう考えるかということで、私、副島隆彦は、このワールド・ブレイン問題を、佐藤優8さおつまさる)氏と対談したときに、私が持ち出して、それは『ウイルスが変えた世界の構造』というタイトルの2020年に出た本ですが、ここに30ページ分ぐらい、載っていませんでした。原稿はあるわけで、それをもう一回見つけ出して、もう一回、私はこの問題を提起しなきゃいけない。編集者からその原稿の束をらっています。今日は思いつくままにしゃべるだけで、この問題に関してまだ私自身が研究が足りない。

 でも、日本の知識人、読書人階級に対して、世界頭脳「ワールド・ブレイン」というのがあって、これで、今の世界も、でき上がっているんですよ、日本人は土人ですから、おくれた国の人間だから世界に追いついていくのは、大変なことだと。世界というのは、ヨーロッパとアメリカの白人文明のことですね。それがまだ先頭を走っていまして、その後から、よちよちついていくしかなかった。そこに言語の壁というのがあって。国民(民族)によって、ご飯の食べ方が違うとか、風土、気候が違いますから、文化の壁は仕方がない。あと、宗教の問題とかありますけど、言語の壁というのは非常に深刻な問題として今もある。

 これもさっき言った、自動翻訳機の問題で相当いいところまで来た。単語を、横に横につないでいくことで、コトバの壁を薄くしているという努力がある。これは私も、彼ら、ビッグ・テック big tech のガーファ GAFA+MS たちの努力を認めなきゃいかんと思う。だが、今や、彼ら自身が、世界支配者の一部になっている。 そして、世界人民(人類)を、言論と知能と、脳で思考(かんがえること)で、支配し、洗脳している。このことは深刻な問題だ。

(つづく)

このページを印刷する