「1860」 副島隆彦著『全体主義(トータリタリアニズム)の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界』が発売される 2019年12月20日

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 SNSI・副島隆彦の学問道場研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)です。今日は2019年12月20日です。


全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

 明日、2019年12月21日に副島隆彦先生の最新刊『全体主義(トータリタリアニズム)の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界』(ビジネス社、2019年)が発売されます。今日はこの本の紹介をします。

 副島隆彦先生は本書執筆のために今年7月末に深センと香港を取材旅行し、私(古村)も同行しました。本書はその取材旅行の成果が詰まった一冊になっています。


深センで訪問した場所(本書から)

 本書『全体主義の中国がアメリカを打ち倒す』を貫くテーマは、「世界は中国化する、しかもディストピアに向かう」というものだ。最先端技術の発達によって、様々なSF映画で描かれてきた「技術の進歩を利用して便利で豊かな生活が実現するも一枚めくると厳しい監視社会」に世界が向かっている。以下に『全体主義の中国がアメリカを打ち倒す』から引用する。

(引用はじめ)

世界中のすべての国が、中国化するのである。その代表的な具体例かつ証拠は、監視カ
メラ(CCTV(シーシーティヴイ。今はコミュニティ・サーキットTV[ティビー]と呼ぶ)が、街中のあらゆるところに取り付けられていることだ。アメリカも、ヨーロッパも、日本だって監視カメラだらけの国になっている。

これからの人類がたどるのは、このディストピア(幻滅の国。絶望郷[ぜつぼうきょう]。監視国家)への道である。中国だけがますますひどい国になるのではない。ディストピア(dystopia)はユートピア(utopia、理想郷[りそうきょう])の反対語(アントニム)である。

(『全体主義の中国がアメリカを打ち倒す』、3、6ページ)

(引用終わり)

 古村治彦です。日本でも監視社会化は進んでいる。街角の監視カメラに加えてNシステムと呼ばれる自動車のナンバープレートを読み取る機械も道路に設置されている。中国ではそれこそ至る所に監視カメラが設置されている。深センでタクシーに乗った際に、運転手が素早く「シートベルトをするように」と注意してきた。シートベルトをしていない人間がいることは監視カメラですぐに察知されて、自動車のナンバーから運転手が割り出されてすぐに罰金が科せられるということだった。


中国の監視カメラ

 第2章、第3章、第4章ではアメリカと中国のIT技術を挟んでの戦い、中国国内の巨大IT企業間の暗闘、中国共産党(中国政府)内部の派閥間抗争、習近平国家主席の深謀遠慮が余すところなく描かれている。米中間、アメリカ国内、中国国内で何が起きているか、大量の情報が流れ込んでくるが、それらを追っているだけでは、全体で一体何が起きているかについては全く分からない。本書の2つの章では、その絵解きが行われている。

 中国政府は中国国民の「声」に気を遣いながら、中国の繁栄(経済成長)のために外国、特にアメリカとの丁々発止の、存亡をかけたやりとりをしていることが分かる。「韜光養晦[とうこうようかい](強くなるまで爪を隠す)」(100ページの引用記事から)で忍従していたが、今はアメリカからの外圧に団結し、挙国一致体制で対処しようとしている。


中国側の交渉責任者・劉鶴副首相

 日本はそうした状況を傍観するしかない、影響を受ける立場にしかいない。『全体主義の中国がアメリカを打ち倒す』から引用する。

(引用はじめ)

アメリカが、1985年の日米半導体交渉で始めた戦略は、こうやって成功した。このあとはアメリカ政府からの恫喝(ドウカツ)を受けて、日立も東芝もNECも富士通も、すっかり萎縮(いしゅく)して半導体とIC[アイシー](集積回路)の先端技術の開発意欲を失った。アメリカの脅しに屈服したのだ。それ以降は、日本は周辺技術である電子部品(デバイス)の供給会社に転落した。

これが、近藤大介氏がいう「日本は中国の下請け国家」である。日本の電機会社たち自身が、ファーウェイなどの中国の先端企業のサプライ・チェーンになったのである。別の言葉で言えば中国の言う「人類運命共同体」だ(笑)。日本は自力では、最先端の半導体を作れない国になってしまった。

(『全体主義の中国がアメリカを打ち倒す』、115ページ)

(引用終わり)

 古村治彦です。世界GDPに占める中国の割合が約16%、日本は約5%、アメリカは約25%だ。経済力では既に日本は米中に大きく置いていかれている。「日本はアメリカの属国」であるという認識に加えて、新たに「日本は中国の下請け」という認識をして、日本人全体の頭の中の世界観を更新しなければ世界情勢を理解することはできない。本書はまさにこの世界観の更新にぴったりの一冊だ。

 本書で紹介されている中で、私が衝撃を受けたのは、深センの三和人力(人才)市場だった。そこはドヤ街で、格安の料金で泊まれる簡易宿泊所が林立する場所だ。今はこの簡易宿泊所に泊まりながら、インターネットゲームに没頭する若者たち(日本語ではネットゲーム廃人と呼ぶ)の街になっている。宿泊所の1階フロアは開け放しになっていて、インターネットゲームのディスプレイが所狭しと並び、若者たちが一心不乱にゲームをしていた。本書第7章「ディストピア中国の不穏な未来」で、この時の様子が書かれている(238-247ページ)。


三和人力市場のネットカフェの若者

 世界の最先端の行き着く果て、が深センにあった。中国はこれからの世界がどのように進むのかを先取りして見せてくれる。

 この点では中国国内での現金流通がほぼ行われていないことにも衝撃を受けた(香港はそうではなかった)。本書でも詳しく取り上げられているが、スマートフォンを使ったアリペイとウィーチャットペイという電子マネー支払いプラットフォームが普及しており、現金が使われていなかった。


アリペイ、ウィーチャットペイの決済額の推移


中国では現金決済が11%しかない

 アリペイとウィーチャットペイについて重要なことについて、本書から引用する。

(引用はじめ)

アリババとテンセントこそは、中国の巨大成長の秘密なのである。アメリカ政府のファーウェイとの 5 ファイブジー G 戦争(ITハイテク戦争)などは、脇役(わきやく)でしかない。アリババ(アリペイ)とテンセント(ウィーチャットペイ)が持つ、スマホ決済機能が、中国国民 14 億人(本当は 15 億人だろう)のほぼすべてを網羅している。恐るべきスピードでの銀行機能を持ってしまった。

どうも、世界中の大銀行が、このアリペイとウィーチャットペイの前に屈服して、徐々
に潰れていくようである。すなわち、「銀行消滅」である。支払いと送金(決済)だけで
なく、個人向けの貸付(融資)と、なんと定期預金などの金融商品の販売までもアリバイ
とウィーチャットペイは行っているからである

(『全体主義の中国がアメリカを打ち倒す』、59ページ)

(引用終わり)

 古村治彦です。個人間のお金のやり取りや売買の決済から融資へとなると銀行は存在意義を失う。インターネットさえつながればキャッシュレス決済は国境をも超える。実際に日本のデパートやコンビニ、タクシーではアリペイ、ウィーチャットペイが使える。それだけ中国人旅行客が多く、小売りは中国人頼みだということが分かる。

 私は深セン滞在中のある朝、一人でスターバックスコーヒーに入り、英語でコーヒーとサンドウィッチを注文した。注文はスムーズであったが、問題は支払いだった。現金しか持っていないと伝えると、レジの下の引き出しからビニールに包まれた紙幣を出してきてお釣りを渡してくれた。外国人は中国国内で銀行口座を持つことができないので、アリペイもウィーチャットペイも使えない。しかし、日本でもキャッスレス化を進めており、これもまた時代の最先端ということになる。

 以下にまえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にしていただき、『全体主義(トータリタリアニズム)の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界』を手に取ってお読みいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

(貼り付けはじめ)

まえがき   副島隆彦

中国は表紙に打ち込んだとおり明らかに全 トータリタリアニズム 体主義国家である。
その別名が「共産中国(きょうさんちゅうごく)」である。みんなに嫌われるはずだ。だが、今後、世界中がどんどん中国のようになる。

世界中のすべての国が、中国化するのである。その代表的な具体例かつ証拠は、監視カメラ(CCTV [シーシーティブイ]。今はコミュニティ・サーキットTV[ティビー]と呼ぶ)が、街中のあらゆるところに取り付けられていることだ。アメリカも、ヨーロッパも、日本だって監視カメラだらけの国になっている。

中国では監視カメラによる民衆の動きの把握のことを 天 てんもう 網(ティエン・ワン)と言う。「天網恢恢疎にして漏らさず」の天網である。

私は最近、中国に香港から入って 深セン(しんせん)に行った。この中国のITハイテクの最先端の都市を調査してきた。あれこれもの凄(すご)い発展ぶりだなと、思った。それを後(あと)の方で報告する。中国にまったく行きもしないで、中国の悪口ばかり言っている(書いている)人たちは、お願いですから、せめて北京と上海に行ってください。安いホテル代込み10万円で行けます。エクスペディアなどネットで安くで予約するといい。

中国は国民の生活を監視している国になってしまっている。もうすぐ監視カメラが中国全土に 6 億台取り付けられるそうだ。中国国民14億人の2人に1台の割合だ。まさか個人の家の中までは取り付けられないだろうが、それだって分からない。中国のすべての都市の街路には、既に付いている。

ところが、これらの中国製の監視カメラ会社に、最初に技術を開発して売ったのは、日本の大手電機会社である。ニコンとキヤノンとパナソニックとソニーが、この公共空間のカメラの技術を一番先に開発した。日本がいまもドイツ(カールツァイスとライカ)にも負けないで、世界一の技術力を誇っているのは、この分野である。専門技術でいえば、フィルムとフィルターとレンズの技術である。ハッセルブラッド社(スウェーデン)は、DJI(中国のドローンの最大手)が買収した。

あとのほうで載せるが(P61)、キヤノンの御手洗富士夫(みたらいふじお)会長の発言で、「キヤノンは監視カメラで未来を切り開く」と最近堂々と日経新聞に出ていた。

中国だけが国民を徹底的に監視しようとしている国家なのではない。米、欧、日の先進国も監視国家だ。それに続く新興国も、「国民を監視する国家」になっていくのである。すなわち中国が先導して、他の国々もそれに追随する。これからの人類がたどるのは、このディストピア(幻滅の国。絶望郷[ぜつぼうきょう] 。監視国家)への道である。中国だけがますますひどい国になるのではない。ディストピア(dystopia)はユートピア(utopia、理想郷[りそうきょう])の反対語(アントニム)である。 

人類が自分の未来を、盲目的、直線的かつ貪欲に突き進む結果、世界はこのあと、いよいよ中国のようになっていく。中国の悪口を言っていればいいのではない。

国民生活が、権力者や支配者によって徹底的に監視され、統制される政治体制のことを全体主義(totalitarianism トータリタリアニズム)という。この全体主義という言葉を広めたのはドイツ人の女性思想家のハンナ・アーレン人である。彼女が、1951年に書いた『全体主義の起源』で、ソビエト体制を批判した時に使われた言葉である。このコトバの生みの親は、イタリア知識人のジョバンニ・アメンドラである。

世界がやがて中国のようになっていく、という課題は、私が急に言い出したことではない。すでに感覚の鋭い言論人や知識人たちによって「世界は中国化する」という本も出ている

もう 20 年前からイギリスのロンドンは、すべての街 ストリート 路に監視カメラが設置されていたことで有名だ。今の日本も主要な生活道路のほとんどにまで、監視カメラが設置されている。このことを日本国民は知らされていない。新宿や池袋のような繁華街だけが、カメラで監視されているのではない。 

民衆の往来、行き来を、政府や取り締まり当局(警察)がずっと撮影して、画像を保存している国が立派な国であるはずがない。だが、どこの国の警察官僚も、必ずこういうことをやる。官僚(上級公務員)というのは、本性(ほんせい)からしてそういう連中だ。

これは人類にとっては悲しむべき間違った方向である。科学技術(テクノロジー)の進歩が、コンピューターや通信機器(スマホ他)の異常な発達とともに、こういう監視技術を最高度に発達させた。この監視システムを維持するために、一体どれほどの警察公務員が新たに採用され続けているかについて、誰も関心を払わない。

それにしても、全 トータリタリアニズム 体主義は強いなあ。世界大恐慌が襲いかかったとき、中国はシャッタード・アイランド(バターンと金融市場を閉じる)ので、ビクともしない。

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目次
まえがき 3

第1章 中国のディストピア化を追いかける世界
中国は巨大成長したという事実は否定できない 18
世界の知識人が描いてきたディストピア像 22
左右のどっちからも嫌われるのが一番いい 30
全体主義中国を徹底的に叩く 33
ディストピア映画の歴史的系譜 40

第2章 貿易戦争から金融戦争へと移り変わった
〝卑屈〟なテンセントが金融戦争に勝利する 52
銀行消滅とCCTV 59
銀行の別名は「信用」 69
アリババはNY市場から締め出されるのか? 70
中国のネット世代と実質的なデモクラシー 75
ファーウェイはアメリカのいじめに負けなかった 82
アメリカと中国の睨み合いは続く 87
中国人は国有企業が嫌い、民間企業大好き 90
半導体製造の切り札、紫光集団 96

第3章 中国は最早アメリカとの力相撲を恐れない
中国の技術泥棒を引っ張った「千人計画」 104
結局中国を一致団結させてしまったアメリカのミス 109
米中IT戦争と日本の半導体潰しの意外な共通点 112
サムスンを育てたのはインテル 117
新たな火種となったレアアース 120

第4章 中国にすり寄る 韓国、北朝鮮と台湾を巡るつばぜり合い
北朝鮮と韓国による「高麗連邦」の誕生 130
GSOMIA破棄問題で嫌韓が高まった本当の意味 132
アメリカが韓国を切ったのではなく、韓国がアメリカを切った 135
香港問題は台湾問題である 139
2020台湾総統選とテリー・ゴウの動き 142
韓国瑜はアメリカの回し者だった 145
中国は民主化するのか? 150
台湾の中国化とシーレーン問題 152
中国人はヒラリー・クリントンのことが大嫌い 154
もうアメリカの圧力などなくなってしまった 160
警戒の目はファーウェイの海底ケーブルに 164

第5章 中国の膨張を招き込んだアメリカの弱体化
腰砕けとなったペンス副大統領 170
「外国にいる米軍の兵隊たちは国に帰って、ゆっくり休め」 174
米中貿易戦争は、今年中に表面上は静かになる 177
イレイン・チャオはチャイナ・ロビー代表で政権ナンバー 3 180
EVの天下を取る中国にひれ伏すマスク 187

第6章 アフリカと中央アジアに広がる チャイナネットワーク
アフリカの一帯一路戦略 204
次の世界の中心は中央アジアになる 213
中国はアメリカからアフガンを任された 219

第7章 ディストピア中国の不穏な未来
新疆ウイグル問題の真実 224
私は見た、深センの現実を 236
華強北と中国のジャイアント・ベイビーたち 238
ドローンの恐るべきパワー 248
デジタル人民元の脅威 250

あとがき 252

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あとがき   副島隆彦

この本『全体主義(トータリタリアニズム)の中国がアメリカを打ち倒す││ディストピアに向かう世界』は、世界最大の牢獄国家、中国についての、私の 11 冊目の本である。
英文の書名は、“Totalitarian China will finish of America(トータリタリアン・チャイナ・ウィル・フィニッシュ・オフ・アメリカ)”である。このfinish off(フィニッシュ・オフ)という動詞は、「とどめを刺す、息の根をとめる」という強い意味だ。

『あと 5 年で中国が世界を制覇する』(2009年刊)という本も、私は書いている。この本は反共(はんきょう)右翼の人々から激しく嫌われた。「何を言うか。中国は暴動が起きて、中国共産党は潰(つぶ)れるのだ」と、彼らは、私の本に最大限の悪罵(あくば)を投げた。それで、現実の世界の動きは、その後どうですか。

人も国家も、より強い者に虐(いじ)められながら、這い上がってゆく途中は、善であり、正義である。より強い国の支配の下(もと)で、苦心惨憺(さんたん)しながら勝ち上がってゆく。

しかし、一旦(いったん)、勝者になったら正義[ジャスティス](justice)から 悪[イーヴォ](evil)に転化する。中国が、アメリカ合衆国を打ち負かして世界覇権(はけん)国(ヘジェモニック・ステイト)になったら、その時、巨大な悪[イーヴォ](evil)になるのである。それまであと5年だ。

人も国家も、そして企業も、2番手に付けて1番手(先頭、支配者[ガリバー])の真似をしながら必死で喰い下がっているときが、一番美しい。これまでの40年間(鄧小平[とうしょうへい]の「改革改放宣言」1978年12月18日。 40周年を中国は祝った)、私は、アメリカ帝国の後塵(こうじん)を拝しながら、蔑(さげす)まれながら、泥だらけの極貧(ごくひん)の中から、着実に勝ち上(のぼ)ってきた中国を頼もしく、美しいと思ってきた。

この11月20日に北京で、〝世界皇帝代理〟のヘンリー・キッシンジャーが心配した。これに対して、翌日即座に、習近平は、「心配しないで下さい。中国は世界覇権(hegemony、ヘジェモニー。ドイツ語ならヘゲモニー)を求めません(私たちは、これまでにいろいろ苦労して、人類史を学びましたから)」と発言した。

これが一番大きな処(ところ)から見た、今の世界だ。日本という小ぢんまりとした国で世界普遍価値(world values、ワールド・ヴァリューズ)を理解しようとして、私は、独立知識人として(本書第1章を参照のこと)、孤軍奮闘して来た。

本書は書名が決まったのが11月11日。体調不良の中で、2週間で作り上げた。だが手抜きはない。いつもながらの全力投球だ。私の地獄の踏破行(とうはこう)に同行して、命懸けの鎖場(くさりば)にも付き合ってくれたビジネス社大森勇輝編集長に記して感謝します。

2019年12月

副島隆彦

(貼り付け終わり)

(終わり)

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