「1421」TPP交渉と平行して、水面下で進む「民法改正」の動き。大新聞は連帯保証人(個人保証)制度の改正部分だけをクローズアップするが、実際はこの民法改正はアメリカによる日本社会改造計画の一つである。2013年12月29日
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「副島隆彦の学問道場」から 新年のご挨拶。 2014.1.1
謹んで初春のお慶びを申し上げます。
昨年中は重々お世話になりまして、誠に有難うございました。
皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。
今年も気持ちを新たに、益々飛躍の年となりますよう、一同頑張って参ります。
本年も宜しくお願い申し上げます。
2014年 元旦
「副島隆彦の学問道場」から
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副島隆彦を囲む会の中田安彦(アルルの男・ヒロシ)です。今日は2013年12月29日です。今朝(12月29日)の日経新聞の一面に次のように記事が載っていました。中小企業の経営者の個人保証の対象者を大幅に絞っていく方針で民法改正を法務省が検討しているというニュースです。以下に記事を貼り付けます。
(貼り付け開始)
個人保証、経営者以外も容認へ 民法改正素案、資金繰りに配慮
(2013年12月29日 日本経済新聞)
銀行などが中小企業へ融資する際の個人保証の制度改正を巡り、引き受け側の自発的な意思が確認できれば、経営者以外にも保証を認める方向となった。民法改正を検討する法務省が法制審議会の民法(債権関係)部会に素案を示し、ほぼ同意を得た。経営者に限定すると資金繰りや起業への影響が大きいとの懸念に配慮し、厳格な条件を満たせば例外を認める。
民法改正では、売買など契約の基本ルールを定めた部分(債権法)を中心に約260項目の見直しを議論している。
法務省は事業での借入金への個人保証の対象者について絞り込みたい考えだ。保証人の範囲は(1)経営者が自社の債務を保証する場合(2)総議決権の過半数を持つ株主らが引き受ける場合――などとする案をまとめた。
一方で保証を自ら進んで引き受ける意思を確認できた個人に限り、例外的に保証人になることを認める。直接の資金提供ではなく保証人となって第三者の起業を支援する投資家らを想定。意思確認は公正証書の活用を求めるなど厳格な手続きを設け、法の趣旨を逸脱した拡大解釈の防止につなげる。
今年2月に法制審の部会が決めた民法改正要綱の中間試案では、個人保証は経営者に限るとの考えを打ち出した。
契約ルールなどについて詳しくない経営者の家族らが保証人となり、高額の借金を背負って生活破綻に追い込まれる事態などが多発するのを防ぐことに重点があった。
ただ個人保証は不動産など担保が不十分な中小企業の信用力を補い、資金調達のコストを下げるのに役立っている面もある。このため対象を一定の支払い能力を見込める個人に限定し、資金繰りの悪化などを懸念する中小企業側の要望との調和を図る方向となった。
経営者の個人保証を巡っては、中小企業団体や金融機関団体の担当者、有識者らの研究会が12月に「ガイドライン」をまとめた。過大な債務の負担とならないような保証金額の設定、保証契約の締結時に丁寧な説明を尽くすなど、事業者の自主的な対応も進んでいる。
債権法改正 契約多様化で120年ぶり
▽…民法で企業や個人の契約ルールなどを定める債権法は1896年(明治29年)の制定以来、ほとんど変わっていない。改正の諮問を受けた法制審議会では、契約の多様化や判例の蓄積に合わせた分かりやすいルール作りを目指している。法務省は商法や会社法の改正に続く、経済活動に関する法整備の集大成と位置付ける。
▽…法制審は部会で2014年7月に民法改正要綱原案をまとめ、15年2月に開催する総会で改正要綱を答申する予定。答申を受けて法務省は改正法案を15年の通常国会に提出する見通しだ。今回の法改正が実現すれば、約120年ぶりの抜本的な見直しとなる。
▽…今年2月に法制審の民法(債権関係)の部会が取りまとめた中間試案では、債務の支払いが遅延し、取り決めがない場合などに適用する法定利率への変動制導入、約款規定の明文化、短期消滅時効の廃止など約260項目を提示した。個人保証に関しては、連帯保証を引き受けた人が破産や自殺に追い込まれるケースも後を絶たないため、中小企業などへの融資では経営者以外の個人保証を禁じる規定を盛り込んでいた。
(貼り付け終わり)
以上が日経新聞の記事です。記事では「契約ルールなどについて詳しくない経営者の家族らが保証人となり、高額の借金を背負って生活破綻に追い込まれる事態などが多発するのを防ぐこと」が狙いになって今回の法務省の改正が行われると解説してあります。
一見するとこれは非常に良いことだと思えます。連帯保証人のはんこを押すことは一歩間違えば自分が借金を全部背負うことになるからです。そのような悲劇は漫画「カバチタレ」や「ナニワ金融道」でもよく描かれていました。今回の改正では、保証を自ら進んで引き受ける意思を確認できた個人に限り、例外的に保証人になることを認めるという内容になっています。
実はこの日経の記事だけではなく、数年前からこの個人保証の制度改正を含んだ民法改正の動きの記事は繰り返し話題になっています。民主党前政権はマニフェストで「連帯保証制度、個人保証の廃止を含めた見直し」をうたっていました。今年の春にも上に書いた日経と同じ内容の記事が載っていました。
以上のような民法改正は確かに歓迎すべきことです。しかし、法務省はそんなことだけのために民法改正機運を盛り上げているわけではありません。 上の日経の記事にもあるように、今回の民法改正は訳120年ぶりの抜本改正となるとされています。そこに問題がないのか、と当然考えなければならない。
そこに登場してきたのが、鈴木仁志(すずきひとし)弁護士の新著『民法改正の真実』(講談社・2012年末刊行)です。
鈴木先生は、かつて外国弁護士法改正問題の危険性を論じ、ちょうどアメリカからの年次改革要望書の存在が関岡英之氏の『拒否できない日本』(文春新書)によって明らかにされた前後に『司法占領』というノンフィクション小説を書いた人です。登場直後にこのページでも紹介しました。あれから約10年経ちました。
いまは年次改革要望書に代わって登場した、日米経済調和対話という新しい枠組みと、TPP交渉によってアメリカの対日経済政策は決められています。
鈴木仁志弁護士はあくまで実務の立場ですが、一方で学者の立場でも上智大学法科大学院の加藤雅信(かとうまさのぶ)という教授が、法務省主導で進む民法改正については、鈴木弁護士とは違いあくまで学術的な立場から批判しています。
二人の主張は視点が違いますが、民法改正が日本の法体系をめちゃくちゃに壊しかねない危険をはらんでいるという危機感を持っていることでは同じです。
すなわち、民法改正という大問題は、ただ一人、内田貴(うちだたかし)という東京大学法学部教授の元で進められており、それが日本の民法(具体的には総則と債権編と呼ばれる部分)をアメリカの契約法という考え方に馴染むように改正してしまおうという狙いが法務省にある。この一点でこの改正作業の批判者の意見は共通しています。
既存の法律を大幅に変えるということは、極論すれば、その改正される前の法律に依拠してきた裁判所の判例の束が無効になることを意味します。新しい法律は判例を盛り込んだ条文になるということのようですが、そうなると条文が膨れ上がってしまう。これを市民にわかりやすい法だということで内田貴というアメリカ留学組の東大教授は無理矢理に進めている。
実は加藤教授もアメリカ留学組なのですが、日本の民法であまり無茶な改正はできないということで反対しているようです。かなり法律用語が入っており、専門的になりますが、加藤氏の反対論は次の点に集約されるようです。
1 現在の体制のまま,債権法改正の審議を継続することに反対する。
2 現在の条文を多条文化し,複雑にすることに反対する。
3 消費者契約を民法典に取り込むことに反対する。
4 現在の民法典の五編の枠を超えて「法律行為」・「時効」の一部等を総則編から債権編に移動させること,債権総論と契約総論を統合すること,その他,現在の原案を前提として審議を継続すること,以上の三点に反対する。
さて、以下に貼り付けるのは私のブログ「ジャパン・ハンドラーズと合理的選択」に載せた、鈴木仁志弁護士の『民法改正の真実』の書評の再録です。
民法改正の裏側にはやはりアメリカに迎合する官僚がいた、と鈴木氏が暴いています。しかし、問題はこの民法改正は財界の肝いりである規制改革会議のメンバーですら歓迎していないというところにあります。
鈴木氏はそのような無理な民法改正をやることの狙いは、日本の新民法(契約法)で存在しない判例の穴を埋めるためにアメリカの契約法の判例が用いられるようにするのが狙いではないか、と疑っています。
以下にブログの記事を貼り付けます。
(貼り付け開始)
農業関税分野がもっぱら取り上げられるTPP交渉に国民の目が釘付けになっている間に、日米の間では重要なアジェンダが進行中のようです。それが民法改正の議論です。
現在、法制審議会 を舞台に民法改正の議論が進行中です。このことを私は鈴木仁志という弁護士の書いた『民法改正の真実』(講談社)という本で知りました。民法には総則、物権、債権、親族、相続の5編があります。改正されようとしているのはこの内の債権と総則に関する部分で、明治時代以来の大改正になるという話です。
この鈴木仁志(すずきひとし)という弁護士は、『司法占領』(講談社)という小説をだいぶ前に書いています。ちょうどあの頃は米国の年次改革要望書がネット上で大きな話題になっていた頃でした。あの時は小説でしか書くことのできなかった懸念が、いまは具体的な審議会での議論にあらわれている、ということでしょう。
日本の保守派は民法改正というと相続編における非嫡出子の扱いのことばかり取り上げるが、ほんとうに重要なのは債権編の改正です。やっぱり安倍晋三を支持する保守は頭が悪いのでしょう。
『民法改正の真実』はざっくりというと以下の内容です。
(1)民法の債権編を契約法という米国法の概念で書き換えようとしている動きがある(2)その実働部隊が内田貴という東大法学部教授をしていた人物である (3)しかもそ の議論は法務省の官僚が多数参加しているにもかかわらず民間団体の風を装った「秘密会議」とも言いうる場所で議論されている。以上の事実が明らかにされています。
民法の権威といえ ば長らく我妻栄(あがつまさかえ)でしたが、いまはこの内田貴(うちだたかし)が重要らしい。内田は1983年から1985年の30歳になる前後に米国のコーネル大学に留学しています。その 際に、従来の「我妻民法」にはないアメリカ型の考え方をすっかり植え付けられて日本に帰ってきたのだということがわかります。
要するに経済学に竹中平蔵があるならば、法律学には内田貴がいた、ということです。そして、経済学と法律学はともに「法と経済学」という理論構成で米国企業のグローバル化展開に貢献しています。
明治時代に成立した日本の民法はドイツ民法の引き写しでしたが、いま法務省と内田貴が二人三脚で推進しようとしているのは、米国型の契約法の仕組みを民法に埋め込もうということです。
これは、年次改革要望書や、その後継である「日米経済調和対話」の大きな戦略のなかの枝葉の部分であり、同時に、TPPを通じて米国がアジア諸国に受け入れさせようとしている「米国標準」の持ち込みであるということでしょう。その前哨戦が日本で行われているということにほかなりません。枝葉で はありますが、民法が生活に関わるものだけにインパクトは大きい。民法改正については在日米国商工会議所(ACCJ)も歓迎しているようです。
ここにあるのは 「ルール作り」でイニシアチブを取ろうとする米国の思惑です。関岡英之さんの業績ですが、規制調和という言葉が、TPPの議論を見ていく時に出てきます。 ハーモナイゼーションというのはハーモニー=調和をもたらすという意味ですが、音楽におけるハーモニーが指揮者の思惑や独裁によって実現されていくのと同じように、レギュレーション(規制)における調和はその旗振り役である米国の思惑、合理性によって実現されるということです。
これが、TPPを規制調和という思惑で推進しようとする米エリート(それは具体的にはピーターソン国際経済研究所のフレッド・バーグステンらロックフェラー系の経済戦略家、日本のカウンターパートは早稲田大学社会科学部教授の浦田秀次郎)の考え方です。
ただ、同時に米国が規制の調和を強く求めなければならない理由はもっと別の部分にもあるように思えるのです。ただし、これは鈴木仁志氏の著作の内容とは離れた私の独自の見解です。
そもそも、TPP というのは、大きな枠組としては「物やサービスの貿易の自由化をアメリカ多国籍企業にとって合理的に行う、というルール作りの交渉」です。いまはコメや乳 製品の輸出品目についてばかりの議論がメディアで行われていますが、もっとサービスの輸出にも目を配るべきでしょう。サービスの輸出で重要なのは何かといえば、それは「弁護士の輸出」ということです。貿易というのは、ある国で余ったものを別の国に輸出するという営みにほかならない。
どうも米国の弁護士は「余りまくっている」というのが実情のようです。この理解に少し前に至っていたのは『アメリカ・ロースクールの凋落』(ブライアン・タマナハ著)を読んだためでした。この本では米国型ロースクールの闇の部分が描かれています。弁護士になったがスーパーでレジ打ちをしている人までいるという現状です。
要するに、米国における「サープラス(余剰品目)」はモノではなく人であるということです。昔は戦争でサープラスを燃やして減らすということをやりましたが、いまは そうも行かない。だから、サービスの輸出という形で海外に輸出します。しかし、輸出先で厄介なのは、「非関税障壁」(ノンタリッフバリアー)という存在で す。だから覇権国は規制調和という法制度設計の変更を属国に強制します。
ここで『民法改正 の真実』で具体的に展開されている、日本の大規模な民法改正の動きがリンクしてきます。鈴木氏はまず、民法の前に会社法の改正が有り、その会社法改正が米国で多くの多国籍企業の法律上の所在地があるとされるデラウェア州法に準拠していたことが小林興起前衆議院議員の質疑によってすでに明かされていたことを 指摘します。会社法は商法から独立する形で成立しています。これと同じように、日本における米司法界にとって「非関税障壁」である民法を改正させようという動きが2006年位からあったということのようです。
つまり、私の理解では「アメリカは、米国内におけるサープラス=余剰生産物であるところの、ロースクール卒の食えない弁護士を少しでも食わせるために、TPPな どの規制調和の枠組みを通じて、アジアに弁護士の輸出をしやすくする土壌づくりをしているのであり、債権法改正もその一環である」という風になります。中国があまった生産物をアメリカに売りつけているように、アメリカは余った法律人間を世界に売りやすくする環境を作りたいのでしょう。
帝国・属国論から類推するとそれ以外の結論にはなりようがありません。
米国はうまくいかないロースクールという制度の輸出を日本に10年前に行なって、更にまた米国内の尻拭いとして民法改正を打ち出してきた、ということなのでしょう。日本のロースクールも淘汰が著しくなるようです。
金融ビジネスなどをやりやすくするという思惑もあって、米法曹界と米金融業界は持ちつ持たれつの関係にあるから、それはコロンビアビジネススクールのグレン・ハバードのようなビジネスローの分野の人間が推進しているというふうに理解すれば筋は通ります。
この一見するとこ ろ、戦略的に見えて、実際は泥縄式の「制度のハーモナイゼーション」のやり方が、アメリカのTPPに懸ける情熱の背景にあるのだと思います。ただ、それは 米国の一般国民の重要な関心ではありません。あくまで支配層の体制を維持しようとする思惑によるものです。
これは考えてみれば、安全保障の分野でも同じです。貧乏人の海兵隊たちを食わせるために属国に軍事的合理性からは必ずしも必要とも思えない基地を置き続けるのと同じ構図です。そのために抑止力という方便を創りだすのが安全保障御用学者のお仕事です。
海兵隊が貧乏人の低学歴の若者の雇用対策であったのに対して、食えない米弁護士たちは、いわば高学歴ワーキングプアというべき存在です。ロースクール を卒業させて借金まみれにしてしまった弁護士を食わせるために、米国は弁護士を世界中に輸出しようとして、制度の枠組みを米国にとって合理的なように替え てしまおうということなのでしょう。そのために理論武装をするのが法務省の官僚と意を通じあっている、米国帰りの内田貴のような御用学者というわけです。
制度が変更されるしわ寄せは属国の法律関係者にやってきます。弁護士や司法書士、行政書士といった法律関係者よりも、法学研究者、法務官僚、最高裁事務総局といった組織は米国の圧力に敏感であらざるを得ません。
鈴木氏が書いていますが、内田貴を前面に押し出している法務官僚は裁判官を経験した人物を父に持つ寺田逸郎という人物で、この寺田も1976年からやっぱりコロンビアロースクールで学んでいます。つまりは今回の衆院選の違憲判決に踏み込まないことを事前に米国のジェラルド・カーティスに確約していたと思われる、竹崎博允・最高裁長官と同窓生です。
また、この寺田なる人物は年次改革要望書のやりとりについても極めて詳しい人物であることが国会質疑で明らかにされました。そのようなネットワークが米国の思惑含みの民法改正でも展開されています。さらに法務省民事局長をしていた筒井健夫という人物がこれに絡みます。筒井は裁判官もしていました。これに加えて早稲田大学総長をしていた鎌田薫という法学者がいます。内田、寺田、筒井、鎌田が民法改正のキーマン4人です。
郷に入っては郷に従うではないのが徹頭徹尾アメリカ的な考えです。ただ、仮に中国が今後、英米法的な考えで法律を整備した場合、日本の旧来のドイツ法の立場は国際的には厳しくなるのではないかとも思います。東南アジアのTPPの参加国はまだ法整備が整っていない「更地」に近い状態ですので今のうちに英米法の考えで市場をお さえておこうということでしょう。
一方で日本の場合は先んじてドイツ法に準じて「近代化」してしまっていますから、逆に制度変更に対するコスト負担が増える可能性があるわ けです。異なる植生を持ち込もうとするわけですから。鈴木弁護士の議論は「接ぎ木がうまくいかないかもしれないのに議論が密室に近い形で進められているのは問題だ」ということに要約できるでしょう。内田貴は鈴木氏の著作に関しては自著では知らん顔を決め込んでいるようです。
いずれにせよ、議論が専門的すぎるということもあり、憲法改正以上に民法改正の問題は一般人の目から遠ざけられていると感じます。
法制度の改正というのは制度変更に伴うコストがどれくらい大きくなるかということで判断されるべきだと思います。日本の場合は属国ですから、説得コストは極めて安く、その代わり実施にあたって負担させられる対応コストが大きくなるように思います。
説得コストを負担するのは米国側、実施対応コストを負担するのが日本側だと考 えれば、アメリカにとっては極めて合理的な同盟関係です。放っておいてもアメリカは覇権国であるかぎりは、グローバルコモンズの保全をやらざるを得ません。だから日本が安保タダ乗りをしているという議論は日本人の騙されやすさをうまく付いた方便でしかないでしょう。
このように、法律の分野だけで はなく安全保障の分野、経済協力の分野(エネルギー協力、原子力)においても同様の関係が見られます。これは日本法の研究者である、マーク・ラムザイヤー(ハーヴァード・ロースクール教授)の掲げる合理的選択論を私なりに属国論から裏返して読み解いた分析です。
ただ、原発事故のリスクとか憲法改正のリスクとかTPPのリスクもそうですが、「まだ実際に起きていないこと」についてのリスクを語るのは非常に難しいと考えています。ただ、同時に憲法改正と同じように、今の民法で概ね事足りているのに、なぜ今大幅な民法改正をしなければならないのか、という冷静な議論はもっとするべきだと考えています。アジェンダは米国から突然として降りてくるのが日本の属国としての運命ではあるのですが、抵抗線は早めに作っておくべきですから。
付け加えて言うならば、鈴木氏の本を読む限りでは、内田貴という法学者はアメリカ型の契約法概念を民法に持ち込もうとしている一方で、同時に自分の独自の学説まで法律に書き込もうとしている風にも見えます。
ここから内田は 「アメリカの法学者から認められたい」という願望と、同時に自分の独自の理論を書いた民法にして、我妻栄のように学者としても名を残したいという願望の2 つがあって、この2つはどこかで決定的に齟齬をきたす可能性がある事もわかります。なぜなら内田独自の見解は英米法と矛盾する部分があるからです。
だから、いざとなればアメリカにとって都合の悪い改正を含む草案を決めたりしたら、法務省は内田貴を切り捨てるでしょう。このへんはいまも忠実にアメリカの子分をやっている竹中平蔵と内田が違うところです。そもそも竹中には立派な経済学者としての経歴がないから学会にではなくもっぱらビジネス界に媚びを売るという生き方をしたのです。
鈴木氏の『民法改正の真実』のAmazonブックレビューでは、recluseというレビュアーが的確な表現で書いています。
<そこに絡んでくるのがアメリカからの絶え間ない制度改正への圧力です。ここでは最大の政治権力(法務省)がアメリカからの圧力に耐え切れずに(この人物が どのようなイデオロギーを持っているのかは本書ではあまり扱われていませんが)、日本の「最良」の知性(元東大法学部教授)を背後から操りながら、このような社会改造を着々と、日本の文脈の中での合法性の衣装をまといながら、成し遂げていくプロセスが暴露されています。この構図には何の目新しさもありませ ん。日本の「知性」なんてこの程度のものなんでしょう。>
まったくもって的確な論評です。
以上、TPPや憲法改正と同時並行で進行する「アメリカの日本改造」の現在進行形の情報をお伝えしました。
http://blog.livedoor.jp/bilderberg54/archives/35162959.html
(貼り付け終わり)
以上です。皆様はこの民法改正についてどのように思われたでしょうか。
多分、自民党の国会議員もこの民法改正がはらむ問題点についてはほとんど理解していないでしょう。
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