「1409」 腰痛(ようつう)と首、肩の痛みは治るようである。 「トリガーポイント・ブロック注射」という治療法を紹介する。 副島隆彦記 2013年11月6日

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副島隆彦です。今日は、2013年11月6日です。

私は、今日は、読者の皆さんに、驚くべき私自身の腰、首、肩の凝(こ)りの治療体験を書きます。

 冒頭から注意書きします。 私の以下の文を読んで、整形(せいけい)外科医で、椎間板ヘルニアの手術をしても、痛みが取れず、具合の悪い人は、私、副島隆彦 宛てのメール・アドレス GZE03120@nifty.ne.jp に ご連絡ださい。 どうもここには、隠された医療犯罪があるようです。

 以下の文は、現在発売中の「ザ・フナイ」という月刊誌の今月号 に書いたものです。私、副島隆彦は、本気で、腰痛(ようつう)と頚痛(けいつう)で苦しんでいる多くの(何百万人もの)人に向けて書きます。

「腰痛と首、肩の痛みは治るようである」論  

副島隆彦  2013年9月8日 記 

 腰痛と首、肩、そして手足の痛みは治すことが出来る、という話です。この話は、医療に関わることであり、人間の健康の問題です。

 私、副島隆彦は、これまで本誌に医療や病気のことを書いたことは有りません。私は医師ではないし、自分自身が分からないことは書かない、と決めている人間だからです。

 でも私もごく普通の人間として、体のあちこちが痛みます。それは年齢と共におきることであって不自然なことではありません。私はもの書き、言論人という職業のために首、肩の凝(こ)りと、腰痛がありました。

 ところが私の、長年のこの腰痛と、首と肩の凝り(これを頸痛、「けいつう」と呼ぶべきだと私は思います)の問題は解決しそうです。なぜなら、この度(たび)私は、ひとりの医師に掛って、「トリガー・ポイント・ブロック注射」という注射を、バシバシ、体の痛みのある箇所すべての筋肉の「痛点」(おそらく指圧で言うところのツボと同じでしょう)に射ってもらったら、驚くほどの効き目で、私の体の凝りの痛みが大きく減りました。ですから、今回は、この私自身が受けた治療の話を書きます。

 私はこれまでウソを書いたことが有りません。このことは私の読者の皆さんが分かってくださるでしょう。私が、生まれて初めて、自分の体で受けた治療のことですから、ホントかな、と疑っていただいてもいいのですが、どうか真剣に読んでください。

 私は、自分の腰痛と首や肩の痛みを取ってもらおうとして、「トリガーポイントブロック注射」という治療を受けました。驚くべき効果がありました。どうして、体の痛みの問題での対処として、もっと早く、10年前からこの治療法を皆で話して世の中に広げる、ということをしなかったのか、私は不思議でならない。以下が私の体験記です。

 治療を体験したのは2013年9月7日です。私自身の腰痛(ようつう)と首の痛みの話です。私は60歳になりましたので、首の痛みと腰の痛み、それからピアノ肘(ひじ)と呼ばれる、おそらく腱鞘炎(けんしょうえん)である腕の痛みがあります。職業柄、ずっと座って字を書くことと本を読むことが多いので、それで腰痛があるわけです。
腰痛は日本に1000万人の患者がいると言われている。年をとると腰や足が痛いのは当たり前なわけですが、若いころから痛みの出る人もいます。
 
 それで私は、ついに意を決してお医者さんにかかることにしました。群馬県前橋市で開業している木村ペインクリニックの木村裕明(きむらひろあき)医師にかかりました。そして「トリガーポイント・ブロック」というやり方の注射をたくさん体のあちこちに打ってもらいました。患部というか首のあたりと肩と、それから腰からお尻、足、それから腕がだるいというので両腕にも打ってもらいました。

 この文を書き始めたのは、治療を受けた翌日(9月8日)からです。私は今もびっくりしているのですが、その後、東京に帰ってから木村医師と電話で話して、私なりにはまだキツネにつままれたような状態です。恐らく、この木村医師とお仲間の医師たちが考えて実行している治療法が正しいと判断しました。それで皆様にご報告します。
 そんな昨日今日のことですから、私の判断が必ずしも絶対的に正しいとは言いません。筋肉注射を打ってもらったので、それで急に体の具合がよくなったというだけのことかもしれない。

 ただ私自身にとっても大事なことは、この10年間ぐらいで考えますと、いわゆる「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」という言葉と、「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」という言葉があります。

脊髄1

 腰痛や首の痛みの問題では、医師たちの診断を受けると、すぐにこの椎間板ヘルニアという言葉が出て来ます。おそらくものすごく多くの人が、この病名と診断されているはずです。私の場合は、後者の、脊柱間狭窄だ、と1年前に受けた、脊椎(せきつい)の専門家の医師にチラと、言われました。椎間板ヘルニアは戦前からある病名なのでしょうか、この30年間ぐらいで非常に世の中に広まったはずです。

 そうすると、まず、椎骨(ついこつ)があるわけです。椎骨と言うから難しくなるのですか、ここに挙げる背骨の図のごとく、椎骨(ついこつ)がたくさん縦(たて)に連なっているのが人間の背骨です。その中を脊髄(せきずい)と言って神経が通っている。

背骨のことを脊柱(せきちゅう)とも言います。この脊柱は簡単に言えば背骨です。

 椎間板というのは骨と骨の間にある板という意味だろうから、骨と骨のクッション機能を持っているやわらかい部分のことだと思います。円盤上の軟骨のことで、緩衝材(かんしょうざい)のようなもので、そこからはみ出した症状であるヘルニアとなった髄核(ずいかく)というものが、その後ろ側にある脊髄=背骨の神経に当たるので痛みが出る、と私は素人ながら考えていました。他の多くの人もそう考えているでしょう。

 首のほうから背骨となって腰、お尻のほうまでずっと伸びている脊椎の連なりの、この脊柱管の真ん中を神経が通っているわけですから、特に首の部分(頚椎、けいつい)と腰の部分(腰椎、ようつい)での神経を圧迫する状態のことを椎間板ヘルニアとか、脊柱管狭窄症と呼んでいる。医者ではないので私の言葉づかいは正確ではないでしょうが、こういうことだと思います。

 脊柱管狭窄症も、簡単に言えばまわりの骨から出てきた軟骨と髄核が、歳を取ると、経年(けいねん)劣化で、ヘルニアという「はみ出していること」が脊柱管を圧迫して真ん中を貫いて通っている神経を圧迫する。だから腰が痛いとか、ひどい場合は激痛になるのだと思います。
 
 それでこの椎間板ヘルニアと脊中間狭窄というのは、どうも医者によってそんなに区別がついているわけでもないことが、私は、一冊の本を読んで、わかってきました。

私は木村医師に診断を受けて「トリガーポイントブロック」という筋肉注射を打ってもらって、その後、真剣にずっと考えていまして、驚いている。

木村医師のホームページは、
「痛みの診療所 木村ペインクリニック」
http://www.kimura-painclinic.com/
です。

 私は、木村医師から加茂淳(かもじゅん)という医師が書いた一冊の本をいただきました。専門書では有りません。一般の人向けの本です。ここに表紙を図示します。

加茂本

 この人は、石川県の小松市という、金沢市から西に行った、海に面している空港のある都市で、加茂整形外科医院という病院を経営している。その人が書いた『トリガーポイントブロックで腰痛は治る!』(風雲舎、ふううんしゃ、2009年刊)という本です。2009年の刊行ですから4年前に出版されている。

『トリガーポイントブロックで腰痛は治る!』というこの本をいただいた私は帰宅後、他の仕事を放り投げて、一心不乱に読みました。そして8時間ぐらいで読み終えました。

 私がこの本を読んで、大変驚いたのは、これまでに椎間板ヘルニアの、そのヘルニアの切除手術というのをやった人たちは、ものすごい数で、全国にいるだろう、そして、その手術自体が大きな間違いであろうとわかりました。このことは真に驚くべきことです。ヘルニアという飛び出した軟骨の部分を削り取るという、切除するという手術だと思いますが、こんな手術なんかしたら、さらに体を痛めつけることになるとよくわかりました。

 この加茂医師も木村医師も整形外科に所属する医者だと思います。木村医師はもともと麻酔学の専門の医者です。木村医師が、私に、「整形外科の医者はすぐに切ろうとするんだよね」という言葉を使って話してくれました。私は大変驚いたのですが、どうも椎間板ヘルニアのヘルニア手術をした人は、痛みが再発する人が多い。だから、3度もヘルニアの手術をしたという人たちがたくさんいるようです。それはやはりおかしいと私は思う。ヘルニアの症状が再発し、悪化するなどということがあるのか。何のための手術なのか。 

 ですから私は、読者の皆さんの中で、腰のヘルニアの手術をしてよくなったという人がいたら教えてもらいたい。どうか私に連絡してきてください。私宛てのインターネットの連絡先を最後のページに載せます。

 どうやら腰痛も頚痛(けいつう)も、手足のしびれも、背骨の問題から来る痛みではない、ということがわかってきた。私たちが手足のしびれとか、お尻から太腿(ふともも)にかけての、いわゆる「座骨神経痛(ざこつしんけいつう)」と世間で言われている痛みも、これは決して骨(脊柱と椎間板)からくる神経の病気ではない。どうやら、筋肉の中の血管が圧迫を受けて、痛みが出るのである。だから「筋痛症(きんつうしょう)」と呼ぶべきである。腰痛とは、文字どおり腰の筋肉の痛みであり、骨の病気ではないということです。

 加茂医師は、この『(トリガーポイントブロックで)腰痛は治る!』という本で徹底的にそのことを書いています。ということは、この治療法は、整形外科の医者たちの中での大きな問題になっているはずです。これまでに椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と診断されて手術を受けた人たちの中から、さらに症状が悪くなっている人たちが大勢いる。これは大変なスキャンダルだろうと私は思います。医療犯罪(・・・・)と呼んでもいいものだろう。

 この問題は恐らく整形外科の医師たちの間でずっとこの10年間ぐらい「静かに」騒がれてきた事実だろうと私は思います。ところが、大病院の整形外科医ほど、今でも椎間板ヘルニアの手術をしている医者がたくさんいるようだ。今もどんどん切っている可能性が高い。これは、大変危ないことだと私は気づきました。

 なぜなら私自身が、このトリガーポイントブロック注射の治療を受けるまでは、完全に脊柱管狭窄症の患者としての自分というふうに考え込んでいたわけです。ですから、首から両腕にかけてしびれが起きるのも、肩が凝るのも、それから腰の痛みも座骨神経痛も、全てこの椎間板からのヘルニアのせいだと思い込んでいた。これが全部ウソであるとわかりました。

 原因は、ただ単に筋肉の痛みです。それを骨格の異常であると言い続けたのが、この10年間、20年間の整形外科の医者たちです。これは端的にMRI(エム・アール・アイ)という医療機械の発達と普及とも大きく関係する。
今では、昔のレントゲンと違って、もう何でもかんでもMRI(核磁気共鳴画像法、かくじききょうめいがぞうほう、 Magnetic Resonance Imaging)という画像診断をみんな受けるようになりました。これ以外に、X線CT(シーティー)というものあります。MRIとCTスキャンの違いとかについては私は何も知りませんので書きません。私は、これらの機械での診断をこれまでに10回ぐらい受けています。今は、なんでもかんでもMRIの検査になっている。一台が、2億円から3億円する高価な医療器具らしい。

 そうすると、腰や首の痛みという問題を、骨とつながっている筋肉の問題なのだ、ということを、今の医者たちが理解しない。そのように加茂医師は、前記の本で書いている。今の医師たちは筋肉のことを勉強しない、と書いている。画像診断で骨のことばかりを見ている。そしてすぐに椎間板ヘルニアとか脊柱管狭窄症と診断を出す。私も去年、別の医者からそのように言われた。「はみ出ているところをそのうち僕が削り取ってあげるよ」みたいなことをその医者は私に言いました。それ以上は何も一切、何も言わない。一応、大変偉い脊髄の専門の医者だということになっている人です。今、私は少し怒っています。

 私が思い出すのは、10年ぐらい前に、私はその頃も、肩の凝り、腰の凝りあったので、「この辺の皮膚の上から、肩や腰に、太い注射器でブスリと注射を打ってもらいたいよ。どうして医者たちはそういうことをしてくれないのかなあ」とブツブツ言っていた人間です。

 ところが、まさしくその筋肉注射を昨日、木村医師は私にやってくれた。それも私が凝りがヒドい、と言った部分に、木村医師は、どんどん射ってくれました。そうすると非常に気持ちがよかった。気持ちがよかったというしかない。深さ2センチぐらい、ぶすっと、恐らく普通の注射針よりもずっと細い注射針だと思いますが、それで打ち込んでくれました。針が細いからそんなに痛くない。

 血液を採る注射針よりもずっと細い。見た目はごくふつうの注射器で、なんという薬剤か知りませんが液体を流し込むわけです。ふわっとした感じが患部に広がります。その前に、別の痛み止めの注射をすぐそばに打ってからやる。目の前で見て知りました。ふわっと妙な快感が広がるわけですが、静脈注射をしたときの感じと一緒です。それを筋肉に打ち込む。これで確実に疲労が取れる、と私は思いました。

 まだ全身の30箇所ぐらいに一回しか射ってもらっていないので、この後どうなるかをじっくり私は自分の体で味わっている。それから判断すべきことだ。来月、またこの「トリガーポイントブロック注射」を木村医師に射ってもらいに行こうと思う。

 私がびっくりしているのは、前述した『……腰痛は治る』を読んでいたら、決して加茂医師がこういうことを急に言い出したのではなくて、1983年に、アメリカでMPS(エム・ピー・エス)という病名を提起した、ジャネット・トラベルという女性の医師と、デイヴィッド・サイモンズという2人の医師が本を出しました。1983年にアメリカで刊行された『筋筋膜性疼痛(きんまくせいとうつう)と機能障害』というタイトルの医学の専門書です。

 この本は、副題が「トリガーポンイントマニュアル」となっていて、エンタプライズ社という出版社から日本でも、川原群大(かわはらぐんだい)という医学者の訳で出ています。彼女が名づけたMPSというのは、「 筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん)」いう病名で、加茂医師と木村医師たちが日本でも集まってこのMPSについての医師たちの研究会を主催している。

 このジャネット・トラベルという医師が、何とあのジョン・F・ケネディ、ケネディ大統領の主治医になった人です。私は知っていましたが、ケネディ大統領が大変きつい腰痛持ちだったと言われています。そしてその手術をしたけれども、症状がよくならなかったと言われていた。

 ところがその後、ケネディ大統領はこのトラベル医師の診断とトリガーポイントブロック注射の治療を受けて、症状が見る見る改善されて元気になったのだそうです。これに私はびっくりしました。トラベル医師が言うには、ケネディ大統領の痛みの原因は脊椎もしくは椎間板にあるのではなくて、以前からの、すなわち彼が軍隊にいた時以来の、背中の筋肉の衰弱が引き起こした一種の慢性のけいれんであると。「けいれん」のことをスパズム( spasm )といいますが、筋肉の慢性的なけいれんだと、ラベル医師は症状を診断した。そしてケネディ大統領は見る見る治った。だからケネディがこの治療を受けたのは1950年代の終わりのはずです。なぜなら1963年11月22日に彼は暗殺されていますから。

 そして1983年に、このジャネット・トラベルとデイヴィッド・サイモンズ医師の本がアメリカで出ている。これは簡単に言うと、腰痛は骨の病気ではなくて筋肉の病気だと言っている。これは凄(すご)いことだと私は気付きました。そしてこの加茂医師の本の92ページには、小殿筋(しょうでんきん)といいまして、腰のあたりからお尻、それから太ももの外側から足の下の部分のいわゆるふくらはぎのところにずっとつながる筋肉がある。

 この小殿筋というやつの痛みが私にもある。それから肩から背骨あたりから両手のほうにずっと伸びている斜角筋(しゃかくきん)の痛みも私にあります。もう一つは耳の後ろあたりから首の側線の部分にずっと太い筋肉がありますが、ここの凝りもあるわけです。これが専門用語では胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)と言うのだそうです。この3つの筋肉が痛むわけで、私もここに症状が出ます。

 これらの筋肉にそれぞれ各所にトリガーポイントという部分があって、そこに筋肉注射をぶすりと打ち込む。そうすると症状がどんどんよくなる。ほとんど生理食塩水に近いのかもしれませんが、何とかという薬剤をわずかに少し入れているだけだと木村医師が言いました。それで恐らく私はこれから5回ぐらい木村医師のトリガーポイントブロック注射を受けたら、私は首も腰の痛みも治るだろうと、今、思っています。

 最近の医者たちは、どうも骨のことばかり言い過ぎた。あるいは骨の中を走っている脊髄=神経のことばかり言い過ぎた。筋肉の痛みは、MRIの画像診断には出ない。だから、筋肉のことを無視してきた。そして余計な、やってはいけない危ない手術を整形外科医たちがこの20~30年の間に、日本でもたくさんやってきたらしい。

 スポーツ選手たちでも何回もヘルニアの手術を受けた人がいる。杉良太郎という歌手も手術を3回した。その後、思わしくないという言い方をした。外科手術というのは1回で終わるのが基本だ。治らないから又、同じところを切る、というのはおかしい。それを「再発性」とか医師たちは言うそうです。

 それに対して症状を訴えて加茂医師のところで良くなった多くの患者たちのことが、この本の中には体験談として書かれています。

 だから、どうもほとんどの腰や背骨の痛みの病気は筋肉の痛みのようだ。筋肉が受けた刺激とかいろいろな言い方はあるのだろうけど、そういうものであって決して骨の異常ではない。

 加茂医師はインターネット時代になってからの12年間、2001年からずっと診療の合間に、一生懸命ずっとネットでこのことを訴え続けて、書き続けた人だ(「加茂整形外科医院」 http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/ を開いてください)。そしてようやく2009年になって、この『(トリガーポイントブロックで)腰痛は治る!』という本が出た。

 私としては、これだけ書いて読者に伝えることが出来れば、今回はとりあえず満足だ。が、あと一つつけ加えると、もう1冊、本があります。その本もこの『トリガーポイントブロックで腰痛は治る!』という本の出版社と一緒で、風雲舎から出ている。『腰痛は脳の勘違いだった―痛みのループからの脱出』という、これは医者ではない患者さんだった戸澤洋二(とざわようじ)という人が書いた本だ。

 この戸澤洋二氏は、加茂淳医師のインターネット上の文章を読んでこの本を書いた。自分の腰の激痛は、実は脳の勘違いであると。脳が勝手に痛みをプールしていて、痛みを勝手につくり出したのが腰痛であるという内容だ。これはある程度評判をとった本だと思います。

 私は2年ぐらい前に、NHKの「ためしてガッテン」という番組をたまたま見た。そうしたら、「腰痛の原因がわかった。それは脳が勝手に痛みをつくり出したからだ」というような番組でした。本当かなと思いながら、でも現場の偉い医者たちがそう言っているのだろう、くらいに思って、ちょっと不思議に思っていた。ところが、そこには戸澤洋二自身は出てこないし、加茂医師たちの努力などは一切無視されていた。脳が勝手に痛みをつくり出したものが腰痛の原因だ、と。何だかキツネにつままれたような番組だった。

 つまり、これは整形外科の医者たちの間で内部に争いがあるんだろうと私は今、思う。加茂医師や木村医師たちは少数派で、それに対して、これまで、さんざん椎間板ヘルニアの手術をやってきた責任ある医者たちのほうが圧倒的に主流派で多数派だ。

 彼らが自分たちの犯罪性というか、責任を覆い隠すために必死で今でも頑張っているのではないかと私は判断する。だからレントゲンやMRIや関節鏡(かんせつきょう)で見えた骨格異常という、骨の異常が痛みの原因だと考えて、疑いもせずにそのように診断する整形外科の医者たちが、今もたくさんいる。これが大間違いだ。加茂医師はそのようにはっきり書いている。そうではなくて筋肉の痛みなのだ。当たり前といえば当たり前なので、私も拍子抜けして、あまりにも単純な結論に今もびっくりしている。
 
 ですから医者に行って、筋肉にブロック注射を打ってもらえばいい。ただし、いわゆる「ペインクリニック」というのがこの10年ぐらい、全国で大変流行(はや)っているように見える。看板がたくさん出ている。そこでも「ブロック注射」というのをやってくれるわけです。が、これはどうも筋肉へのブロック注射ではなくて、「神経ブロックの注射」らしい。神経に直接、注射するらしい。皆さん、気をつけてください。

 これは危ない。ブロック注射なら何でもいいというものではない。やはり「トリガーポイントブロックという注射」をしてくれる医者でなければ危ないと、私はあえてここで書きます。木村医師によると「自分たちの考えに共鳴してくれる医者たちが今、300人ぐらい集まっている」のだそうです。それが前述したPMS研究会です。

 あと一つ、権威づけというわけでもないけれども、もう1冊、アメリカの医者たちの書いた本の名前をここに書いておかなければいけません。それはイギリスの疼痛(とうつう)生理学の権威のパトリック・ウォール博士という人の本の紹介です。『疼痛学(とうつうがく)序説―痛みの意味を考える』(南江堂、2001年刊)、横田敏勝(よこたとしかつ)という医学者の翻訳です。

 この本は、生理学者の立場から、“ヘルニア犯人説”に疑問を投げかけている。このパトリック・ウォールという偉い生理学者が、加茂医師の解説では、「椎間板ヘルニアの手術は70年以上もの間、行われてきた。もてはやされたこともあったが、疑問が増し続けている。

 ヘルニアの突出と痛みはそれぞれ独立していて、痛みの発現におけるヘルニアの突出の役割ははっきりしない」とのことです。すなわち“痛み”というものの研究を生理学者という人たちがやっているらしくて、今、国際的な「痛み学会」というものもあるそうです。痛みのことも加茂医師の本に書いていますが、もうこれ以上は今回は書きません。 

 患者にとっては腰痛や頚痛の痛みを取り除いてもらえればそれでいいのであって、椎間板からはみ出したヘルニアのせいにする必要はない。なぜなら、椎間板ヘルニアの症状のまま痛みも出さずに、腰が90度曲がったままで平気で生活している老人がたくさんいるのだそうだ。だから何でもかんでも病気だとして手術などしてはいけない。

 もう1人、マイアミ医科大学のヒューバート・ロズモフという教授が発言している。「椎間板ヘルニアが痛みを引き起こす可能性は、3%にも満たない」と書いている。このように、加茂医師の本で書かれてしまっているわけですから、これは医学界の内部では大げんかになる大変な事実だと私は思います。大変な争い事であるはずなのに、私たち一般国民には知れ渡らない。なぜなのか? 何かおかしい。

 厚生労働省の医療と治療法を監督している医官(いかん)たちはとっくに知っているはずなのだ。加茂医師や木村医師たちはこの10年間、ずっと脇に押し込められている。患者として苦しんでいるのは、私たち一般国民だ。どうして、この問題で、私たちが騒がないで、今日まで来てしまったのか? 私は、ひとりでポカンとしている。

 医者たちというのは、自分たちがこれまでに行ってきた治療法や手術が間違っていたということになっても、後で責任を取るということをしない。実際上、責任なんか取れない。逃げ回るしかない。手術を受けても腰痛がヒドいままの患者たちから、損害賠償請求なんか受けたら大変なことになると、分かっている。

 医療訴訟というのは大変難しい裁判だ。その時その時は、それが最善の治療法であり、必要な手術だったと言うに決まっている。実験材料や稽古台にされた患者たちにしてみればたまったものではない。これが医学の世界というものの真実のあり方だ。

 いいように言われて、だまされて手術なんかされてしまった人たちは、自分の知恵が足りなくて医者に騙(だま)されたのだ、と、私ははっきり言うべきだと思う。ただし、同じ医者仲間だから、加茂医師や木村医師はそこまでは言わない。
 
 ですから、このMRI(エム・アール・アイ)という高性能の高額の医療機械が急激に出回って、流行(はや)るようになってから、又どんどん新しい病気をつくってしまっただろう。やらなくてもいい手術までたくさんやってしまったことの大きな責任というのは、私はやはりあると思っている。私がはっきり分かったことは、ヘルニア手術なんか絶対にやるものではない、やらなくて本当によかったということだ。脊柱管狭窄症だなんて言われて、それで、この副島隆彦までが、病人であると自分で思い込んでしまったことが大間違いだった。

 最後に言っておきますが、私の腰痛とか首の痛みというのは大したことはないのです。老化の一種だ。老人病だ。私は、「腰が痛い。首が痛い」と言いながら、普通の健康な生活をしています。ちょっと腰が痛いぐらいというのは、マッサージや鍼灸(しんきゅう)で、治ることはないけれども、気分がよくなる程度のものだ。ですから、病気だ、病気だと騒ぐこと自体が本当は大きな問題があって、大きくは、“制度”に騙されているのだ、と私は思う。

 私が木村医師に非常に好感を持ったのは、鍼灸師や整体師やカイロプラクティック、柔道の整骨師、もっと大きく言えばマッサージ師さんたち民間医療の人たちを嫌がらない、ことだ。「鍼灸師の皆さんと一緒に治療しているんですよ」と木村医師は言った。

 私がこれまで付き合ったほかの医者たちは、民間療法とか代替医療の人たちを何となく見下している。自分たち医者は、難しい大学の医学部を出て国家試験に受かっていると威張っている。それに対して、木村医師たちは、マッサージ師たちの所にまでようやく降りてきた人たちだ。

 今の内科の医者たちに至っては、「僕は注射をするのは嫌いなんだよね」と言うようだ。つまり医療トラブルを起こしたくないから注射さえ出来ない。それで薬ばっかり山ほど出している医者がそれこそ山ほどいる。薬を出すことしかほかに能がないのが、恐らく今の医者たちの9割ぐらいだと私たちはっきり言うべきだと思う。

 外科で、必要な手術をしている医者たちはやはり偉いといえば偉い。癌(ガン)の摘出手術や感染性の病原菌による骨髄の手術とかは絶対にしなければいけない。必要な手術はしなければいけない。だが、椎間板ヘルニアの摘出手術のほとんどはするべきものじゃなかったということがはっきりとしてきた。木村医師や加茂医師たちは、鍼灸師や整体師たちと自分たちがそんなに変わらないんだという感じのところにまでおりてきている。私はそういう正直で真面目な医者たちがきっと出現しているはずだとずっと思っていた。医者たちも、最近は「マッサージに行きなさい」という言い方をするようになった。

 ただし、私は、ヒドく悪化した慢性(まんせい)の腰や首の痛みにまで、トリガーポイントブロック注射で治せるとは思わない。しかしそれでもかなりの痛みが取れて、症状がものすごく良くなると思う。

 私はわざと、老人病という言葉まで使うけれども、ガンにしても、老化現象の一種だと、あの有名な近藤誠(こんどうまこと)医師が最近、ぺろっと言ったそうだ。だから慢性とか老化という問題まで医者が治療して解決できることはない。だから症状を軽くするぐらいでいいのだ。特に腰や首の痛みというのはみんなに出るわけだから。医者たちが人体の専門家だからと言って、あまり偉そうなことを言うべきではないとまで私は思っている。ですから、患者のすぐ近くにまで、ようやく木村医師のような医師たちが近寄って来てくれていて良かったというのが、今日の私の結論です。

 腰痛、頚痛のヒドい人たちは、一回、このトリガーポイントブロックの治療を受けてみてください。私に反論のある人や、ご意見のある人は、どうぞお寄せください。編集部宛ての手紙でもいいです。必ずお返事します。

副島隆彦拝

私のメールアドレス GZE03120@nifty.ne.jp

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