「1294」アメリカの共和党予備選で公然と囁かれる不正投票の横行。スーパチューズデーを終えて共和党予備選挙の様子、大統領選挙予備選挙・党員集会の複雑な仕組み、衝撃的な内部事情を現地から緊急報告します。 2012年3月24日 佐藤研一朗・筆

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アメリカの北のはずれ、ニューヨーク州ロチェスター在住の佐藤研一朗です。今日は2012年3月24日です。今日は、私がアメリカ国内で見てきた米大統領選挙戦の模様を報告いたします。

<中盤戦に入りロムニーが優勢でも抜けきれず>

今年の1月3日にアイオワ州を皮切りに始まった共和党予備選挙は、3月6日のスーパーチューズデー(「一日に全米多くの州で予備選挙がある特別な投票日」の意味)を終え、大体、半分の州で投票が終わったところである。中盤戦を迎えてマサチューセッツ州の元知事ミット・ロムニーが先頭にたっているが、まだまだ抜け切れていない。元上院議員のリック・サントーラム、元下院議長のニュート・ギングリッチ、リバータリアンの下院議員のロン・ポールもまだまだ脱落しそうもない。ごたごたした混戦になっている。


ポール、サントラム、ロムニー、ギングリッチ(左から)

前回の選挙ではジョン・マケイン上院議員がスーパーチューズデーで共和党の大統領候補の指名をほぼ決めたが、今回、共和党の大統領候補が判明するには、まだしばらく時間がかかりそうである。今週前半のイリノイ州での予備選挙において、ロムニーが勝利し、その直後に共和党で発言力を持っているとも言われる、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事がロムニーへの指示を強く打ち出した。

この選挙が混戦になった理由は、飛び抜けた人気の候補がいないという事もあるが、共和党の予備選挙のルール変更に原因がある。前回2008年の民主党の大統領予備選挙ではヒラリーとオバマの接戦であった。これが大統領の本戦に有利に働いたという事があり、共和党は今回、予備選挙のルールをなかなか決着がつかないような制度に変更したのだ。

予備選挙は間接選挙であり「デリゲイト」と呼ばれる代議員の獲得競争である。代議員は各州の人口によって割り振られている。八月に行われる共和党全国大会に参加するこの代議員の過半数の投票を得た候補が、最終的に共和党の大統領候補に選ばれるのである。

前回までは、その州で一位を取った候補に全ての代議員を与える「親の総取り」方式をとる州が多かったが、今回からは投票率に合わせて代議員を配分する方式に変更した州が多い。そのため獲得代議員の差がつきづらくなっている。

親の総取り方式をとっていて、人口の大きいカリフォルニア州の予備選が行われる、6月上旬まで結果が決まらないのではないかという観測もある。

Super Tuesday’s stakes are super high, Detroit Free Press
http://www.freep.com/article/20120304/NEWS15/203040497/1118/RSS

では3月12日現在時点での代議員の獲得数はどのようになっているだろうか。

CNN
ロムニー:444人、サントーラム:202人、ギングリッチ:115人、ロン・ポール66人
Republican Delegate Calculator, CNN http://edition.cnn.com/ELECTION/2012/calculator/

ニューヨークタイムズ
ロムニー:454人、サントーラム:217人、ギングリッチ:107人、ロン・ポール47人
Republican Delegate Count, NYTimes http://elections.nytimes.com/2012/primaries/delegates

トップランナーのロムニーがダントツで引き離しているようであるが、それでも獲得代議員の数は4百五十人程度だ。指名に必要な代議員の過半数の1144人には、まだ700人近くの代議員が必要であり、まだまだ指名にはまだまだ遠いのである。

ところで、どうしてCNNとニューヨークタイムズでは、獲得代議員の数が違うのだろうか。それはここに載っている数字は、各メディアが予想したものだからだ。実は州によっては地区レベルの人気投票は終わったが、代議員を選ぶ選挙はまだ行われていないため、本当の数字が確定していないのだ。実際に確定している代議員の数字は、これより100人は少ないである。

<複雑怪奇な予備選挙>

予備選挙のルールは非常に複雑である。選挙方式も各州によって全然違う。簡単には理解できないような仕組みになっている。今回、私はロン・ポールの選挙戦を追いかけてきて、その事に気がついた。闘っている候補者ですら、全てのルールを理解しているか怪しいものである。まずマスコミの記者たちは万全に理解しているわけではないはずだ。

だから各候補者にはルールを良く理解している選挙戦略家(ステラテジスト)がついて、候補者にアドバイスを与えるのである。

前回の民主党の予備選でヒラリーが負けたのも予備選の複雑なルールを良く理解していなかっために戦略を取り間違ったからだという話もある。(親の総取りでもないのに、大きい州に力を入れすぎて、小さい州に力を集中したオバマに破れている。)

The Five Mistakes Clinton Made – TIME http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1738496,00.html

<公的な選挙でなく、党の私的な人気投票>

各党の予備選挙は、党の大統領候補を選ぶ大切な選挙であるが、実は憲法によって制度が決まっている「公的」な選挙ではない。予備選挙は基本的に政党という私的な団体が行っているただの人気投票なのである。だから各州のルールを決めるのは、当然、党の役員たちである。毎年、各州が勝手に、自分たちで選挙方法を決めていくので、ルールが複雑多彩になっていくのである。

予備選挙は、全米50州とグアムやプエルトリコなどのアメリカの領地を合わせてた56地域で行われる。予備選挙の投票方法には、プライマリー(予備選挙)とカーカス(党員集会)の二つがある。

●プライマリー(予備選挙)

プライマリーは37の地域で行われる。これは我々が想像するような普通の選挙であり、有権者が投票所に行って投票をする。代議員は獲得投票率に合わせて配分されるか、州によっては親の総取り方式がとられる。

●カーカス(コーカス、党員集会)

残り19の地域ではカーカスである。これは党員集会の事だ。近所の教会や学校に集まって、各候補者の支持者が党員の前で演説をし、それから候補者に投票をするのである。この党員集会のプロセスは、候補者の人気投票だけでなく、同時に各州の党の役員を選ぶプロセスでもある。町内会レベルで行われた党員集会では、郡レベルの党員集会にいく代議員が選ばれる。そして郡、選挙区、そして最終的に州の党員集会まで勝ち上がった代議員が、8月に行われる全国の党員大会に行く代議員になるのである。そしてこの代議員たちから党の役員が選ばれるのである。

●代議員の拘束・非拘束

面白いのは、町内会レベルで行われた選挙は「人気投票」だということだ。マスコミにカーカスの投票結果として報道されるのは、この人気投票の結果である。だが党員集会で選ばれた代議員は、必ずしも町内会レベルで行われた人気投票の結果に拘束されるわけではない。党員集会を行っている20州のうち、12州では、代議員たちは町内会レベルで行われた「人気投票」の結果に左右させる事なく、8月で行われる共和党の全国党大会で、自分の好きな候補者に投票できる「非拘束」方式を取っている。

だから非拘束方式を採用する党員集会の州では、選挙日にメディアで発表される投票結果は単なる「人気投票」の結果であり、最終的に全国の党大会に行く代議員の数ではないのだ。その結果は数ヶ月たって、実際に郡、選挙区、そして最終的に州の党員集会が終わるまではっきりと分からないのである。全くややこしいが、熱心なサポーターを持つ候補者には有利な制度でもある。単にどれだけ多くの人が投票をしたかを量るのではなく、だれだけ熱心な、深い支持を得ているかを量る制度だとも言えるだろう。この辺の制度の多様性は何ともアメリカらしいのである。

<ブローカード・コンベンションで共和党大会は大混乱に>

このような細かいルールを逆手に取りロン・ポールが、メディアで予想されている以上の代議員を党員集会の州で獲得する可能性がある。人気投票で3位に終わったアイオワ州では、ロン・ポールの支持者が代議員の大半を取りそうな勢いである。

Rick Santorum, Ron Paul On Track To Get Most Of Iowa’s Delegates
http://www.huffingtonpost.com/2012/03/15/rick-santorum-ron-paul-iowa-delegates_n_1347743.html?ref=mostpopular

今後の予備選で、サントーラムが中部を、ギングリッチが南部の州を抑え、ロン・ポールが非拘束の党員集会の州の代議員を取っていくと、ロムニーがトップランナーでも、代議員の過半数をとれないまま8月の共和党大会まで行く可能性がある。

この党大会の代議員の第一回目の投票で、どの候補者も過半数をとれないと「ブローカード・コンベンション」となり、それまで州の投票結果に拘束されていた代議員が、二回目からの投票では、自分たちの意志で好きな候補者に投票できるようになるのだ。そこまで行くと8月の共和党大会は大混乱に陥るだろう。

Brokered convention – Wikipedia http://en.wikipedia.org/wiki/Brokered_convention

ブローカー(Broker)というのは、仲介人、仲買人(なかがいにん)という意味だ。「株のブローカー」の様に日本でも使われる。ブローカード(Brokered)と形容詞になると、仲裁されたとか、黒幕に牛耳られたというような意味になる。

だからブローカード・コンベンションというのは、元々は、候補者や党のボスたちが、密室で取引をして勝者を決めるというような意味合いなのである。候補者たちが副大統領候補や閣僚のポジションと引き換えに、または自分の政策を採用させる事を条件に、取引に応じるということである。しかしブローカード・コンベンションになった場合に、どのような結果になるかは今の時点では予想するのは難しいだろう。

<勝つ事を許されないロン・ポール>

さてここからは書いていてあまり気乗りする話ではないが書いておかなければならない。アメリカのメディアや政党がどれだけ腐っているかという話である。

前回、私は予備選挙の序盤戦のアイオワ州の一週間前ににレポートを書いた。アイオワ州でロン・ポールが勝利すれば、メディアのロン・ポールへの総攻撃が始まるだろう予想した。しかし実際には私の予想を超えてロン・ポールがアイオワ州の世論調査で一位になった時点で、ロン・ポールへの攻撃は始まっていた。

アイオワ州の投票日前の一週間、メディアはロン・ポールは人種差別主義者であるというデマをできる限り振りまいた。事の始まりは2008年に雑誌ニューリパブリックが、ロン・ポールが発行人(編集者ですらない)だった何十年も前のメールマガジンに人種差別的な記事が含まれていたという記事である。

今回、メディアはこれを新しいニュースのように取り扱った。しかしこのニューリパブリックの記事は、意図的に情報が隠されており、実際にはロン・ポールが書いたわけではない記事を、いかにも本人が書いたかのような印象を与えるために書かれたものであった。その事を確認も検証もせずに、主流メディアは、意図的に情報を垂れ流していった。この辺は、日本の記者クラブメディアの小沢一郎への不当な取り扱いと重なるのである。

Reality Check: The name of a ‘Mystery Writer’ of one of Ron Paul, FOX19,
http://www.fox19.com/story/16458700/reality-check-the-name-of-a-mystery-writer-of-one-of-ron-pauls-racist-newsletters

メディアには自分たちのアジェンダあり、公平を装いながら、実際は自分たちのアジェンダに合わない候補者たちを血祭りに上げるのである。「偽りの帝国では、真実は反逆罪になるのである」とロン・ポールは自著『Revolution a manifest』(邦訳:他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ、成功書房)で書いた通り、既得権益に挑戦する人間を主流メディアは許さないのである。メディアの偏向報道は常軌を逸している。

例えば先日ロン・ポールはアメリカ領のヴァージン諸島の党員集会の「人気投票」に勝利した。だがマスコミはロン・ポールの勝利を報道せず、党のルールにより過半数の代議員を獲得したミット・ロムニーを勝者だと報道した。その他の州では例外なく人気投票で勝利した候補者を勝者と報道しているが、どういう訳かロン・ポールが勝つと、それは勝ちであると認められないのである。マスコミは、ロン・ポールが勝利を許さない。一州であっても許されない。勝ったとしても、勝っていないと隠蔽するのだ。

<不正投票、不正選挙、腐った共和党クラブ>

メディアよりももっと腐っているのが、共和党予備選挙そのものだろう。選挙は、神聖なもので公平であるべきであると多くの人が信じて疑わないだろうが、その公平さが常に保たれているとは限らないのである。

今回の予備選挙では様々な不正投票が報告されている。投票結果をねつ造する不正選挙すら行われている可能性がある。完全な物的証拠はあがってきていないが、状況証拠なら無数にある。

●死人でも投票できる予備選挙

私はロン・ポールの選挙戦を応援をするために1月10日に行われたニュハンプシャー州の予備選挙に行ってきた。沢山のロン・ポールの支持者とともに、投票所の前でロン・ポールの看板を持って立ち、投票を呼びかけてきた。

そこで知ったのだが、ニューハンプシャー州の予備選挙の投票所では、身分証明書の提示が必要とされず、自分の名前を告げるだけで投票ができるのである。

そして名簿からは選挙の数ヶ月前から選挙日前に亡くなった人の名前が削除されていないため、簡単に成り済まし投票ができるのだ。ある市民ジャーナリストが、この問題を告発するために、実際に投票所で亡くなった人に成り済まして投票用紙を習得し、この様子を一部始終ビデオに収めてネットで公開している。このように予備選挙はざるであり、詳細を良く知るものが簡単に不正をできるようになっている。

NH poll workers shown handing out ballots in dead peoples’ names, The Daily Caller
http://dailycaller.com/2012/01/11/video-nh-poll-workers-shown-handing-out-ballots-in-dead-peoples-names/

ニューハンプシャー州のような予備選挙方式(プライマリー)では、ざるであっても一応各州の法律が適応される。

しかしカーカス(党員集会)は、完全な共和党の私的な催し物である。ルールを決めるのは各州の共和党の役員であり、運営も開票も当然共和党の役員によって行われる。そのため恣意的に運用できる幅がさらに大きく、公正さを望むのは簡単なことではない。各町内会レベルで行われる党員集会を仕切るのは、その地区の共和党の代表である。

当然、共和党の役員も地区の代表も、必ず支持する候補者がいるわけである。だから、チェックが緩ければ、その候補者に有利になるように集会を運営しようとするのは当然な事である。

党員集会での人気投票はかなり適当に行われている。有権者は近所の学校や教会に集まって、支持者の演説を聞く。そして自分のの席に回って来た皿に投票用紙を載せる。こうして集められた投票用紙は別の部屋で数えられる。

そして投票結果の集計は党の本部によって行われるのである。だが、ちゃんとした監査は行われておらず、完全に性善説に基づいたアーナーズシステムである。だから、集計の途中で結果が変わっても少しもおかしな事はない。ことが明らかになったとしても、現場が混乱していたためのミスだったと片付けられるのだ。

このような党員集会の州で、ロン・ポール陣営に不利になるような嫌がらせが多く報告されている。その中でも2月11日に行われたメイン州の党員集会が一番露骨であった。ロン・ポールは200票ほどの僅差でロムニーに破れたことになっている。しかし非常に疑問が残る勝利であった。

選挙の当日に、ワシントン郡の党員集会が10センチから15センチの雪を理由に延期された。この郡は、前回の2008年の大統領選挙で唯一ロン・ポールが一位だったのである。この時期のメインではこの程度の雪は当たり前であるし、結局雪はほとんど振らなかった。同日にはガールスカウトのイベントですら普通に開催されているのである。この郡の共和党の代表はロムニーの支持者であった。要するにロン・ポールを勝利させないための妨害であった。

そしてメイン州の共和党の代表は、当初、延期されたワシントン郡の党員集会の投票結果は公式な結果に反映させないと発言した。結局は党員からの非難を受け、この発言は撤回された。一週間後に行われたワシントン郡での党員集会では、予想どおりロン・ポールの勝利に終わったが、200票差を縮めるには至らなかった。

2月11日の選挙後に、この共和党代表が、正しく投票結果を反映するためにと、各地区の共和党代表に投票結果をもう一度送るように指示を出した。すると都合良くロムニーの投票数が増え、ロン・ポールの投票数が減ったのである。ワシントン郡でロン・ポールが大勝利をしても、結果が変わらないようにする予防措置だったのだろう。このようなめちゃくちゃな党員集会の運用を受け、メイン州では次回からプライマリー(予備選)の導入が検討されている。

Maine Caucuses Finish Closer Than Expected, New America http://www.thenewamerican.com/usnews/politics/10921-maine-caucuses-finish-closer-than-expected-strange-recount
Messy caucuses lead to push for primaries in Maine – BostonHerald.com http://www.bostonherald.com/news/us_politics/view/20120316messy_caucuses_lead_to_push_for_primaries_in_maine/srvc=home

●不正選挙(ロン・ポールとロムニーの票のすり替え、投票結果の操作の疑い)

ロン・ポールの支持者の中には、このような嫌がらせレベルでない、もっと大きなレベルで不正選挙が行われているのではないかと疑問をあげている人もいる。選挙結果自体が、操作されている可能性があるというのだ。

アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州などの投票の詳細を選挙区ごとに分析していくとおかしなパターンが浮き上がってくるというのだ。選挙結果を投票所の規模で並べ替えると、投票所の規模が大きくなればなるほど、不自然にロムニーへの投票率が上昇し、対称にロン・ポールの得票率が下落している。このようなパターンは基本的にこれまでの予備選挙では見られなかったものであり、非常に怪しいデータである。

これはロン・ポールが田舎で人気で、都市部ではロムニーが人気だということでは説明がつかない。なぜなら田舎でも投票所が大きくなるとロン・ポールの投票率が下落し、ロムニーの投票率が上昇しているのである。このデータを分析したロン・ポール支持者は、票のすり替えられていると主張している。

2000年の共和党のニューハンプシャー州の予備選挙の結果を投票所の大きさで並べたグラフ、投票所の大きさが20%を超えると、グラフは平坦になるのが分かる。

しかし、2012年のニューハンプシャー州の予備選挙では、グラフは平坦にならず、ロムニーの得票率は、投票所が大きければ大きいほど上昇し、ロン・ポールの得票率が減少している。

アイオワ州でも同様なトレンドが見て取れる。特に右の図のアイオワ州の大都市のデモイン郡では他の候補者の票が投票所の規模に関係なく得票率が変動していないのに、ロムニーとロン・ポールだけが対称するように極端な数字が変動している。票のすり替えの可能性を示唆している。

Evidence of AlgorithmVote Flipping in GOP Primary Elections Layman’s Executive Summary.pdf https://docs.google.com/file/d/0ByJAC-sfXwumZzI2bVlON2VTMnFyYVZZSnpDYnNyQQ/edit?pli=1

確かにアイオワで投票前にCNNが投票所の入り口で行った調査では、ロン・ポールがロムニーと並んで24%をとり一位であった。

サントーラムは18%の3位だった。しかしふたを開けると、開票結果はロン・ポールが3000票以上もの差を付けられて3位であった。知ってのとおり当日はロムニーの僅差の勝利と報道されたが、集計の間違いを指摘され後日サントーラムの勝利と訂正された。この党集会のごたごたの責任を取って、アイオワ州の共和党代表は辞任している。

このごたごたの裏で、私はこのアイオワの党員集会でロン・ポールに対する不正選挙があったのだろうと思っている。アメリカ全土が注目する予備選の初戦の勝利でロン・ポールに勢いを与えないため、上のグラフが示唆するようにロムニーとの票のすり替えが行われたのだろう。

今回の選挙でロン・ポールは、どの州でも前回出馬した2008年の二倍の投票数を得ている。しかし前回2位であったネバダ州では、ロン・ポールの得票率がたった1.4%しか増えていない。前回とは違い巨額のお金をTVコマーシャルにつぎ込み、ボランティアが共和党員の家をくまなく回ったのにである。

ネバダ州は元々リバータリアン的な文化があり、ロムニーがほとんど選挙活動をしていなかったこともあり、ロン・ポールの勝利が予想されていたが、ロン・ポールの投票が2008年の6087票から、たった88票にしか増えなかったのである。これはどう考えても異常である。

Ron Paul Hints at Suspicion of Election Fraud, The New America http://www.thenewamerican.com/usnews/politics/11175-ron-paul-hints-at-suspicion-of-election-fraud

先日、ロン・ポール自身も、少なくともアイオワ州、ネバダ州、メイン州で不正選挙が行われてた可能性があると発言している。現在も予備選挙を戦っている候補者自身が、このような声を上げるというのはよっぽどのことである。

Paul believes vote tampering occurred in three caucus states, Examiner.com
http://www.examiner.com/independent-in-manchester/paul-believes-vote-tampering-occurred-three-caucus-states

ロン・ポールはラジオのインタビューに答えて「各候補者の演説会には数百人しか集まらないに、自分の演説会には三千人、四千人の支持者が集まっている。それなのに投票になると票が伸びないのは怪しいと思わざる得ない」と発言している。しかし票の再集計を要求しても、既に投票用紙は廃棄されているというのである。だから物的証拠は出てこないので、共和党を訴えても勝ち目がない。

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ミシガン大学で行われた演説会 4000人の支持者が集まった

ミズーリ州の演説会 2300人の支持者

イリノイ州の演説会 5000人の支持者

ここに埋め込めなかったが、ロムニーの全く盛り上がらない演説会を下のリンクから見てほしい。
ニューヨークタイムズ http://youtu.be/ol0GUt77uyQ
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物的証拠がないだから、このような不正がどのようなレベルで行われているかは誰にもわからない。ロン・ポールは「これは巨大な陰謀というより、地元の共和党の役員たちがロン・ポールの支持者の侵入をいやがっているということだろう」と語っている。

私もアメリカに住んで地方政治を横から見ているので分かるが、共和党に限らず、政党の集まりというのは、いい言葉で言えば地元の名士のクラブみたいなもののである。悪く言えば、商売のために政府とコネを作る場であり、談合とか腐敗を生む原因でもある。政治家に献金をしないと、政府関連のビジネスはできないのである。だから地方政治にまとわりついて暮らしている、爺婆たちが、政府を本気で小さくしようと考えているロン・ポールの支持者たちが、党の内部に入ってくるのを快く思うわけがない。

初戦のアイオワ州の党員集会の前日に、共和党の知事がテレビのインタビューで、ロン・ポールがもし勝つことがあれば我々はその結果を無視するだろう(削除する take it out)という発言をしていた。これが何を意味するのかは分からないが、ロン・ポールなにと闘っているかよくわかるのである。

If Ron Paul wins Iowa “We just take it out”: http://youtu.be/qO3hmVqbjtY

結局、これはスターリンの格言どおり「誰が投票するかが問題ではなく、誰が票を数えているかだ」なのである。この各州の地元政治に癒着した、寄生している共和党の役員たちを、駆逐しない限り、今後リバータリアン的な候補者が共和党から大統領候補に選ばれることはないだろう。リバータリアン的な小さい政府というのは、みんなで政府にたかって寄生するのはやめましょうという意味でもあるからだ。

唯一の希望は、ロン・ポールの支持者たちが、党員集会方式をとる州から、共和党を乗っ取りつつあるということである。例えばアイオワ州では辞任した共和党の代表の後任が、ロン・ポールの支持者にきまったのである。草の根には草の根の闘い方があるのである。

<ロン・ポールでなければオバマできまり>

このように共和党の支配層は、ロン・ポールを忌み嫌い、のけ者扱いをしているが、実際に、現職の民主党オバマ大統領に11月の大統領本戦で勝てるのはロン・ポールだけなのである。オバマ大統領と一騎打ちを想定した全国の世論調査では、ロムニーとロン・ポールだけが、オバマを倒せるという結果が出ている。

Poll: Ron Paul bests Obama for the first time nationally, The State Column
http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:HdoaIV7Jv3QJ:www.thestatecolumn.com/articles/2012/02/28/poll-ron-paul-bests-obama-for-the-first-time-nationally/

この世論調査ではロムニーも優勢であるという結果がでているが、本当にオバマに勝てるのはロン・ポールだけである。ここで考慮されていてないのは、ロン・ポールが共和党の大統領候補に選ばれなかったら、どのような行動に出るかということである。もしロン・ポールが共和党に愛想を尽かし、第三党から出馬すれば、共和党から多くの支持者を奪うことになり、その時点でロムニーの勝利はなくなるのである。もし第三党からの出馬がなくても、リバータリアン党から出馬している元ニューメキシコ知事のゲリー・ジョンソンを推薦することになれば、同様な現象が起きる可能性はある。

共和党の支持者は、オバマでなければ誰でもいい(Anyone But Obama)という心境であるが、ロン・ポールの支持者は絶対にロン・ポールでなければだめだ(No One But Ron Paul)と考えている。だから上のシナリオがなくても、ロン・ポール支持者が選挙にいかないだけでも、共和党には大きなダメージなのである。この点を共和党はまだよく理解していないのだ。

リバータリアンのロン・ポールだけが、無党派のインディペンデントと、戦争をいつまでもやめないオバマにうんざりしているリベラル派を取り崩し、同時にオバマでなければ誰でもいいと思っている保守派の支持を固められるのである。

ミット・ロムニーは中道リベラルよりの共和党の政治家だ。前回オバマに破れたジョン・マケインの立場に近い。マサチューセッツ州の知事時代に、オバマの健康保険のモデルになる健康保険制度導入したことで、共和党の保守派からは疑いの目で見られている。そのためロムニーは、保守派の支持を取り付けため自分の発言を何度も修正するはめになっており、立場がコロコロと変わる風見鶏と揶揄されている。

もしロムニーが共和党の候補として選ばれても、オバマとの違いが鮮明にならない。これでは前回、共和党が党の中道リベラル派のマケインを選んでオバマに惨敗した二の前になる可能性が高い。同じ土俵で闘うなら、現役大統領の知名度を使って今回10億ドルの選挙資金を集めるだろうと言われているオバマの有利なのは当然である。

私はロムニーを見ていると、2004年に民主党大統領候補のジョン・ケリーを思い出してしまう。現役のブッシュ大統領は民主党員から心から嫌われていたが、民主党は自分たちでもよくわからないうちに、弱点もないがぱっとしないケリーを選んで現役のブッシュに負けている。ロムニーのぱっとしない感がケリーとかぶって見えるのだ。

確かに、不況と金融危機のなか、ガソリン値上は、現役の大統領にはあまりいい状況ではない。だがオバマは連銀にお金をじゃぶじゃぶと刷らせる事で無理矢理人工的に景気を浮上させ、選挙を乗り越えようとするだろう。2012年は世界中で重要な選挙が行われているため、連銀だけでなく、世界の中央銀行がお金を刷りまくっている。問題は選挙の後に先送りにしようとする。何かのきっかけでリーマンショックのような金融危機でも起きたり、ガソリンが1ガロン6ドル、7ドルとかにならない限りオバマの有利は変わらない。

破綻はおそらく選挙後におこるだろう。

今後の予備選挙は、しらけたままロムニー優勢のままで進んでいくだろう。焦点はロムニーが代議員の過半数をとれるか、ブローカード・コンベンションになるかに絞られてくる。

選挙が接戦になればなるほど、ロムニー陣営が、ロン・ポールの支持者を取り込もうという動きにでてくるだろう。雑誌タイムにはロン・ポールがロムニーと取引をするのではないかというような観測記事が流れていた。

均衡予算を実現するような支出のカット、新たの戦争を起こさないこと、連銀を完全監査し通貨改革をすることを取引の条件になるだろうとこの記事は指摘している。ロムニーは全国的な人気のある上院議員ランド・ポール(ロン・ポールの息子)を副大統領に据えるという事でロン・ポールの支持者を取り込むべきだという声もある。

Why Ron Paul May Cut a Deal With Mitt Romney, TIME.com http://swampland.time.com/2012/03/14/why-ron-paul-may-cut-a-deal-with-mitt-romney/

まあ、このあたりは全くの憶測であり、まったく流動的な話である。私としてはロン・ポールが共和党から飛び出して、第三党から出馬してほしいと思う。だいたい取引をしても、それが守られるか分からないのである。しかし最後は第三党から出馬して全国規模の選挙戦を闘うだけの元気がロン・ポールと支持者に残っているかということになるだろう。

日本では政治のタガが完全に外れている。既に自民党の政治支配が崩壊し、政権を取った民主党でさえいつ崩壊してもおかしくない状態である。しかしアメリカでは民主党と共和党による二大政党支配はまだまだきついのである。中国の共産党並みである。ここにロン・ポールがくさびを打ち込みにかかるか、否かという所だろう。簡単には決断ができない選択だ。ロン・ポールの大統領選挙戦を超えて、この自由を求める運動が今後どのような道を進んでいくのかは、まだはっきりとは見えてこない。

佐藤研一朗 拝

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