「1276」 新刊『中国は世界恐慌を乗り越える』(ビジネス社)と『衰退する帝国・アメリカ権力者図鑑』(日本文芸社)が発売されました。中国の発展の姿は100年前のアメリカ帝国そのものである。2012年1月10日

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副島隆彦を囲む会の中田安彦です。 今日は2012年1月10日です。現在、アメリカでは共和党の大統領選挙候補者選びのための予備選挙が始まっています。1月3日には田舎のアイオワ州で予備選挙に代わる党員集会が開かれ、本命と言われてきたミット・ロムニー(元マサチューセッツ州知事)、年末になって突然浮上してきた、キリスト教原理主義派の若手のリック・サントラム元上院議員、そして、rバータリアンのロン・ポールが横一線で並ぶという結果になっています。10日の北東部のニューハンプシャー州ではすでにロムニーが優位に戦いを進めているようです。

年末から年初にかけて、私達関連で二冊の本が出版されています。一冊は私と副島先生の共著ととなる『アメリカ権力者図鑑』です。この本は、今までに出した計3冊の権力者図鑑シリーズの一冊で、アメリカだけを扱ったものです。

この本の表紙は苦虫を噛み潰したオバマと笑顔のヒラリー・クリントン国務長官で対比になっています。この三年間、大統領にならなかったヒラリーは元気そのもので国務長官として世界を飛び回っている一方、深刻な経済の立て直しをブッシュ前大統領から引き継いだオバマ大統領は日に日に髪の毛に白髪が増え、痩せて行きました。

オバマの周りにいた側近も次々と辞めていく。今日になって、オバマの大統領首席補佐官をしていた、ウィリアム・デイリーが辞表を出した。一昨日にはオバマ夫人と前の首席補佐官だった、ラウム・エマニュエル補佐官(現シカゴ市長)の中で緊張関係があったと米国の新聞で報じられたりもしている。デイリーにしても、エマニュエルにしても、もともとシカゴ政界から出てきた人物で、デイリーの一族は名だたるシカゴ市長である、リチャード・デイリーです。


オバマの元を側近が次々と離れる(右がデイリー)

元気すぎるヒラリー

デイリーがオバマに出した辞表には、「早く愛するシカゴで家族と楽しく過ごしたい」と書いてあったそうです。デイリーは、去年のアメリカの債務上限引き上げ問題で議会共和党のベイナー下院議長との折衝で躓(つまづ)いたということになっている。財界人であるデイリーが議会との調整役をやっても上手くいかないのに、デイリーはオバマが「財界を軽視している」という共和党・財界側の批判をそらすためにホワイトハウスによんだ経緯がある。

それで後任の首席補佐官がもともとオバマ政権ではヒラリーの元で予算担当の国務副長官をしていた、ユダヤ人のジェイコブ・ルーという人物で、クリントン政権でも予算関連の仕事をしていた。議会との折衝経験もあることから起用されたようですが、オバマ政権入りするまではシティグループで投資関連の部署にいたそうです。オバマの周りはクリントン政権時代の側近である、パネッタ国防長官などで固められており、オバマの本当の腹心といえるのは、ピート・ラウス補佐官だけになってしまいました。ヒラリーは「今のオバマを見ていたら、あの時に大統領にならなくてよかったわ」とホッとしていることでしょう。

『アメリカ権力者図鑑』では共和党の候補である、ミット・ロムニーとロン・ポール、そして今は失速しているリック・ペリーについては写真付きで特集してあります。ただ、共和党候補者選びで年末になって名前が出てきたニュート・ギングリッチ元下院議長やさっきのリック・サントラムについては扱っていなかった。ただ、重要なのは、ギングリッチ候補をサポートしている、共和党系の財界人について、この本では詳しく扱っているということです。

それは、ラスベガスのカジノ王であるシェルドン・アデルソンという男で、この男がゴリゴリの共和党の側でイスラエル支持のユダヤ人です。イスラエルのネタニヤフ首相とも親しいようですから本格派のシオニストです。



『アメリカ権力者図鑑』の100ページとイスラエル向けの大会で演説するアデルソン

この男がポンとカネを出したので、今年の秋まで鳴かず飛ばずだった、ギングリッチが急浮上してきたのです。ギングリッチは大統領になるつもりはなく、イスラエルの「噛ませ犬」として存在しているのです。しかし、ギングリッチは、逆に支持者であるイスラエル・ロビーに配慮するあまり、「パレスチナ人なんか存在しない。あれは戦後にでっち上げられた民族だ」と言ったりしています。

AIPACというアメリカのイスラエル・ロビーの母体が、ギングリッチを持ち上げて、その代理人として他の共和党候補者に圧力をかける役割を果たしている。だから、ギングリッチがワーワー騒げば騒ぐほど、他の共和党候補者はイスラエルを意識した発言にならざるを得ない(ロン・ポール以外は)。サントラム候補も極端なキリスト教原理主義者なので、イスラエル・ロビーの肩を持って、「核開発をするイランに空爆を辞さず」という過激な発言を繰り返しています。

ギングリッチはアデルソンが出したカジノマネーに支えられながら、選挙活動をやっている。ギングリッチを支援する政治団体はアデルソンからの資金でロムニーに対する批判CMをやっている。そうするとロムニーは共和党のウォール街の穏健派の代理人のような男ですから、ロムニーが若い頃に投資ファンドの経営をしていた時の良くない話が出てきている。

共和党はこのようにウォール街の銀行勢力とキリスト教原理主義の文化的保守主義者という大きな枠で政治闘争をしていて、それをイスラエル・ロビーが引っかき回している。今回はそれらに超然としているロン・ポールを支持するティーパーティーの勢力もいる。

ただ、大きな流れでは資金力があるロムニーが予備選挙を今のところは勝ち進めていくでしょ
う。民主党も余程のことがなければ、仕方なしにオバマ大統領で選挙戦を戦うことになる。

これまでのヨーロッパ編、新興大国編の人物図鑑と比べて眺めてみると、やはりアメリカにはこの先、大きく伸びそうな人物があまりに少ないという事に気が付きます。しかし、それでも日本は特殊な国で、伸び悩むアメリカにべったりくっついて行かないと行けないという状況ですから、アメリカのことも知って置かなければならない。特にTPPを具体的に誰がどういう戦略意図に基づいて進めているのかということは重要でしょう。第1部には米国を彩った歴代財閥の流れと変遷も取り上げてあります。

私は年末にかけて、福島の都路の事務所で吉見くんとしばらく寝泊まりしながら、ずっと中国の権力構造についての本を読んでいました。そこでわかったことは中国という国の現在はまったく100~120年前の米国にそっくりだということです。米国も世界帝国になるにあたって、海洋進出を剃る前に、国内を大開発している。それは米国大陸横断鉄道の発達(1869年)であり、西に向かって進む際、少数民族であるアメリカン・インディアンを弾圧した歴史を持っている。

中国も南北戦争のような国家の分裂事態であるである内戦というべき「文化大革命」をへて、アメリカの南北戦争後の再建時代(リコンストラクション)のような改革開放時代を迎えている。日本もこの時代は明治維新を迎えており、まるで天安門事件のように人権を求める自由民権運動を厳しく弾圧した山県有朋のような支配者が居た。中国はアメリカや日本など先んじて近代化した側からすれば100年くらい遅れているということになります。それが改革開放以降、恐ろしい勢いでそのタイムラグを取り戻そうと発展を始めたということです。

だから、中国が欧米並みの自由の思想を持っていないのはある意味では仕方がないことでしょう。軍事面でも世界第二位だけれどもアメリカに比べればまだ遅れていて、軍事費でアメリカと並ぶのは2025年ころだと言われている。

だから、中国はまだ国内の開発をやっている最中でそれが今の「西部大開発」なのであるということが、『中国は世界恐慌を乗り越える』を読むとよくわかります。今回の本でも内陸部の内モンゴル自治区を中心に、副島先生の現地調査が丹念になされており、中国で有数の石炭採掘国営企業である「中国神華能源」の工場の見学取材などいろいろな現地取材の写真が載っています。

世界史的な流れを見れば、アメリカが中国の台頭に焦りを感じるのは当然でしょうが、しかしこれが趨勢なのだから抗っても仕方がない。ところが日本の保守言論人は中国に異様な拒否反応を示すばかりで、等身大の中国の能力と欠点の洗い出しをやろうとしない。この本を読んで、中国の現地調査の重要さがまた再認識できると思います。

以下、『中国は世界恐慌を乗り越える』のまえがきと目次を転載します

(貼り付け開始)

まえがき

2011年9月のギリシャ国債暴落がイタリア国債暴落(年率7・42%への利回り上
昇、11月11日)につながった。この「ヨーロッパ金融崩れ (国家債務危機)」
は必ずアメリカに波及する。こうして2012年に世界恐慌に突入し、日本も打撃を
受けるだろう。という年末の切迫した時期に、 私は中国研究本を出す。この本
は私にとって4冊目の中国研究本である。
この本の結論は、「それでも中国はなんとか大丈夫である。北京、上海、広東省
の不動産バブルは確かにハジける。だが、内陸部の“西部大開発”の力 でこれを
中国は乗り越えるだろう」とするものである。中国は世界恐慌を踏み越えて乗り
切る。最近の情報では、中国は、南米とアフリカ諸国17カ国 の政府と通貨供給
協定を結んだ。ユーロもドルもダメになった時の貿易(実需)取引の決済通貨と
して人民元が使われることの備えである。これは明ら かに人民元の基軸通貨へ
の道である。
私も、今年9月に中国現地調査に行くまでは、「さしもの中国も”ヨーロッパ発
の世界金融恐慌”の余波を受けて各地で暴動が起き、金融システムが崩 壊する
のではないか」と危惧していた。しかし、そんなことはまったくなかった。民生
は安定していた。中国の一般庶民(6億人の都市低所得層と8億 人の農民)は十
分にゴハンを食べていた。中国では安い食事なら一食5元(60円)から10元(120
円)で食べられる。むしろ中国の消費者物価は 下がっている(P38に記事あり)。
喧伝されていた物価高騰(=消費インフレ)が中国を崩壊させるというのは嘘
だった。下落する投機用不動産の価格の問題だけだ。株価はすでに十分に 下げ
てある。
今年は私は内モンゴル(内蒙古)に行った。私の本の読者で現地に居ついて経営
者になった人にあちこち案内してもらった。そして分かったことは、 「中国民
衆は、貧しい暮らしにあえぎながらも、その一方で“自分も金持ちになれるかも”
という強い希望を持って生きている」ことだ。
私たち日本人が、デフレ不況(長い不景気)ですっかり意気消沈して生きている
のとは大きな違いだ。今の中国では誰でも(公売、入札)炭田や鉄鉱石 の平原
を買って、一獲千金の夢を見ることができるのだ。P33の写真を見てください。
それにひきかえ私たち日本人は、自分の目先の収入と売上げ確 保におびえなが
ら苦しく生きているだけだ。どっちが「自由な社会」か分かったものではない。
中国のバブル経済(ただし不動産だけのバブル)には夢がある。ごった返し、ひ
しめき合う、内陸部と西部の地方都市の中国民衆は元気であった。
この本は、中国大キライ人間たち向けにも書かれている。隣国の大国・中国が豊
かになればなるほど中国を毛嫌いし、嫉妬心に駆られ顔をそむける人々 に、さ
らに大きな真実を伝える。私の本はウソを書かない。そのことで評論家としての
信頼を得ている。
私の中国本シリーズは、今や社命で中国に長期出張し、中国でビジネスを開拓す
る企業戦士たちが読んでくださることが分かった。私は金融・経済だけ でな
く、政治の話も書く。

副島隆彦

第1章 迫りくる「1ドル=2元=60円」時代

円が強い今こそ人民元預金 …… 14
人民元は必ず上がる …… 16
中国で人民元を預金する …… 22
中国で金に投資すべき …… 24
中国で買って中国で売るのが正しい …… 28
不動産投資なら東北しかない …… 30
欧米の不健全なバブルと中国の健全なバブル …… 34
第2章 中国経済の成長は何があっても止まらない

中国の不動産バブル …… 38
インフレ抑制のため、中国の金融引き締めは続く …… 46
崩壊するのは中国ではなくヨーロッパとアメリカだ …… 49
中国の技術力が飛躍的に伸びている …… 52
最先端分野での技術力も急伸している …… 55
通信機器の分野でも日本は抜き去られた …… 58
中国は石炭で動いている …… 62
中国国内最大の石炭会社 …… 64
中国の物流を担うトラック運転手たち …… 66
飢えない限り暴動は発生しない …… 70
大都市部には空き家がゴロゴロある …… 72
需要を上回る過剰な建設ラッシュ …… 74
中国経済を牽引する裏マネー …… 78
10年で10倍、20年で100倍になった …… 83
バブル崩壊で半値になっても、まだ5倍の利益が残る …… 85
貧富の巨大な格差こそ中国経済の原動力 …… 87
300万円のバッグを買い漁る行動原理 …… 91
政治の目的は民衆を豊かにし、食べさせること …… 95
古い粗悪な鉄筋アパートは建て替えなくてはならない …… 100
日本にも中国と同様の腐敗が蔓延していた …… 102

第3章  中国は世界覇権国を目指し、
人民元の時代が到来する

資本主義が崩壊しつつある …… 108
世界は完全な統制経済体制になっていく …… 110
資本主義はなくなるのか? …… 112
2011年、北京、上海の不動産の下落が始まった …… 115
株式市場も引き締めが続いている …… 118
中国は経済成長を維持し続ける …… 121
資産家は不動産投資で生まれた …… 122
中国で激しいインフレが起きているというのはウソだ …… 124
“爆発戸”と呼ばれる石炭成金 …… 126
中国のエネルギーの根幹は今も石炭である …… 129
中国とアメリカのG2時代 …… 132
オバマの次はバイデンだろう …… 136
中国はまだ米国債を買い続ける …… 140
2012年から始まる習近平時代 …… 141
薄煕来は首相レースから脱落 …… 142
習近平の次の第6世代は周強と胡春華がトップ …… 148
江沢民が反日運動を主導した本当の理由 …… 149
北朝鮮とのパイプ役、張徳江という人物 …… 152
軍はまだ胡錦濤が握り続ける …… 153
日本海の時代が来る …… 154
トルコとイタリアの海底パイプライン「ナブッコ計画」 …… 159
カダフィが倒された本当の理由 …… 162

第4章  西部大開発により大きく発展する
内モンゴルの実情

フフホト~バオトウ~オルドス …… 166
内モンゴルのレアアース生産基地 …… 171
内モンゴル自治区の漢人はすでに80%以上 …… 178
90年代のモンゴル共和国の大飢饉 …… 180
中国全土の漢民族化が加速している …… 183
チンギス・ハーン陵墓 …… 186
遊牧民はほぼ消滅した …… 190
黄砂は内モンゴルから日本へ飛んでくる …… 192
世界各地で進む砂漠化を中国は解消できるか? …… 194
18世紀のGDP世界1位は中国だった …… 198

第5章  巨大な人口と消費が
今後も中国を支え続ける

内モンゴル暴動事件の真相 …… 204
中国の民衆暴動の実態 …… 208
人と産業の巨大な移動が中国の西部大開発 …… 212
社会主義的市場経済の実態 …… 214
大気汚染の問題もいずれ解決する …… 216
アメリカのハイテク日本企業たたきのめし作戦 …… 219
地下水による農業化、工業化は十分可能 …… 223
中国の株価はすでに十分に下がっている …… 228
地方の不動産価格はこのまま据え置きで止まる …… 230

付章 主要な中国株の代表的銘柄30 …… 233

あとがき …… 250

(転載終わり)

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