「2208」 アメリカの超一流法律事務所たちがトランプの報復に降伏した(第3回・全3回) 2025年7月11日

副島隆彦です。今日は2025年7月11日です。

アメリカの巨大法律事務所についての3回目です。

2月25日、最初に大統領令を食らったコビントン・バーリングは、対抗訴訟、すなわちトランプ政権と争う裁判をやっていない。ここが、下の表にあるように「機密文書の不正持ち出し事件」をでっちあげた。2021年1月6日、ワシントンの議事堂を50万人ぐらいが取り囲んで、何万人かが中に入っていって議事堂とホールをうろうろしただけのことだ。ほとんどの人はそこから退避したんだけど、捕まった人が2000人くらいいる。死人が出たということになっているけど、誰も死んでいない。警護の警察官たちは誰も死んでいない。なのに、このコビントン・バーリングがおかしなことをいっぱいやった。罪人とされた1400人くらいの人たちは、トランプが2期目の大統領に当選した途端に、Pardonというんだけど、大統領による恩赦令が出されて、今後の裁判や刑が全部取り消しになった。「自宅に帰っていい」になった。

アメリカの巨大法律事務所

トランプが不正選挙で負けさせられた(2020年)ときに政府の国家機密文書を不正に持ち出した、という言いがかりをつけて、400人の FBI 職員と一緒に司法省が、トランプの別荘があるフロリダ州パームビーチのマー・ア・ラゴに押しかけた。トランプの家の隅々まで、執務室からベッドルームのメラニア夫人の下着まであさった。しかし不正文書なんか何にもなかった。なぜならそれが「事件」になっていないから。このような悪事をはたらいた司法省の職員たちは、今も命がけで逃げていると思う。同じ職場にいて彼らを死ぬほど嫌っていたトランプ側の連中が、そいつらを世界中どこまででも追いかける。そいつらを撃ち殺すために。本当にやる。裁判にかけたりはしない。インターポールで指名手配とか、そんなことはしない。そういうやつらは、追いかけて行って、直接、射殺する。

この「事件」をこのコビントン・バーリング法律事務所が扱っていて、「トランプたちは犯罪者だ」とわいわい言って裁判をやっていた。もうここもぼろぼろ総崩れになると思う。ここにジャック・スミス(Jack Smith、1969年-、55歳)特別検察官(special counsel)というのが、トランプが再当選するまでいて、トランプをまるで「逮捕した」みたいにして連れていって、マグショット(mugshot)というんだけど犯罪者扱いの写真を撮った。背広のままだったけど、捕まえて丸首シャツみたいにしてトランプのマグショットを撮った。それにトランプは怒り狂っていて、「何だ、おまえ、次におまえも同じ目に遭わせてやる」とはっきり言った。

ジャック・スミス

トランプのマグショット

だから、このスミスはきっと捕まる。もうどこか外国に逃げちゃったかもしれない。スミスの動きをコビントン・バーリングがずっと手助けしていた。だからトランプは、最初にここを狙い打ちにした。

こういうことが起きているんだ、と私が教えないといけない。新聞記事が証拠として残っている。大事な事件だ。それで、さっき言ったジェンナーとウィルマーヘイルに対して、3月25日と3月27日に大統領令が出た訳で、それで今、対抗裁判をやっているが、彼らはぼろ崩れだ。3月末のことだ。

そして、4月2日からトランプが、世界70カ国に対して「アメリカとの貿易関係で大きなトレード・インバランス(trade imbalance)、アメリカが貿易赤字(trade deficits)を出しているから、これを是正せよ」という相互関税の動きに出た。平均30%ぐらいの相互関税をかけて、同じだけのアメリカ製品を買え、輸入しろという圧力をかけた。その理由として、「アメリカが軍事力で守ってあげているんだから、そのお金を払え、それとの取引だ」とはっきり言い切った。だから、貧乏な国は黙っちゃって何も言わない。お好きなようにどうぞみたいになっている。

アメリカが世界中を支配してきた50年間、GATT、ウルグアイ・ラウンド、そして世界貿易機関(WTO)で、ずっと自由貿易体制をやってきた。世界中が関税同盟を引き下げる、それどころかゼロにするとなった。自由貿易体制、フリートレードオーダー(free trade order)を世界中に広めるという動きをアメリカはずっとやってきた。だけど今では「アメリカは国家破産しているのだから、アメリカに金を払え、そうしないとアメリカはやっていけないんだ」という動きに出た。

この説明も、アメリカと日本のマスコミはしない。例えば、トヨタやドイツの会社、中国の大企業も、メキシコに組み立て工場をいっぱい建設して、無関税だから、国境線を超えてアメリカ国内にどんどん販売してきた。それでアメリカ国内のプアホワイト、貧しいアメリカ白人たちの職がなくなった。だからトランプは「アメリカ国内に工場をつくれ、企業はアメリカに戻ってこい」という激しい運動をやっているのだ。

日本の自動車会社の工場の位置

関税がかかる場合はこうなる

そうすると、「いや、今さら戻れないんだ。サプライチェーンという小さな中小企業、部品をつくっている工場が、もうアメリカにはないんだ」となって、これが今問題になっている。それでもトランプは「とにかく貿易赤字を是正する」と。「アメリカはこれまであまりにも痛い目にあってきた。世界帝国であるがゆえに “平等な取り扱い” を言って、アメリカの本当に貧しい白人層が酷い目に遭った」という声を、トランプとイーロン・マスクが代弁している。これも日本のテレビ、新聞は書かない。

トランプによる関税引き上げが始まったのが4月2日だ。ところが4月7日に、日本の農林中金が2兆円ぐらいの米国債を売ったもんだから、アメリカは震え上がった。中国が売ったという噂がうわっと広がって、それでニューヨークの金融業者どもがおびえて、その代表がヘッジファンドなんだけど、ヘッジファンドが大損した。レバレッジ、倍率をいっぱいかけて米国債を買っていたのが、金利が4.5%まで逆流したもんだから暴落した。これ以上、米国債が暴落するとトランプ政権が打撃を受ける。株の暴落ぐらいならいいが、「このままではアメリカの金融市場が壊れる」と、トランプは真っ青になってそれ(関税の大幅引き上げ)は引っ込めた。しかし関税戦争(tariff war)、貿易戦争(trade war)は続けると。そういう態度だ。

米国債10年物金利の推移(2025年3月から5月まで)

この4月の関税騒動の前に、3月中にすでにこんなすごいこと、法律事務所との1カ月間の激しい闘いがあったんだいうことを副島隆彦が報告しないと、みんなが理解できないんだ。これは重要なことだ。

一番のエリートが、難しい仕事をいっぱいしている。例えば、日本の皇室から出た眞子(まこ、1991年―、33歳)様と結婚した 小室圭(こむろけい、1991年-、33歳)氏は、ニューヨーク州の法律協会、Bar Association というんだけど、それに所属している下っ端弁護士です。裁判で出てくる弁護士じゃなくて、事務弁護士。まあ裏口入学で合格したんだと思うけど、とにかく何をやっているかというと日本語と英語の翻訳業みたいな仕事だ。あるいは、その文章のチェック、契約書のチェックをする。そういうことを何年もする。Solicitor(ソリクター)というんだけど、そういう細かいことはをやる下っ端弁護士が、何百人も必要だ。彼はそれをやっている。

小室圭と眞子

仕事は山ほどある。つき合わせ作業をやる訳で、だからこの『日経新聞』の記事を書いている女性記者たち、吉田圭織も芦塚智子も聞いたことがない名前だが、そういう細かい仕事ができる女たちだ。日経新聞に雇われているんだろうけど、ニューヨークの州立大学ぐらいの法律科、司法科を出ているのだろう。おそらくはニューヨークの弁護士の資格を持っていると思う。そうじゃないと、こういう文章を書けない。そういう真面目な人たちが世の中にいっぱいいる。立派な大きな新聞記事を書いたり、どかんどかんと偉そうなことを書いたりできるのは、私は自分と同じレベルだと思っているからだ。私は細かい事務ができる人を尊敬する。彼らは目立たない。

他のいいかげんなやつらは、細かいことは何も知らない。そいつらに対して、「私も知らないのから、おまえが知っている訳がないよ」と私、副島隆彦は思っていて、偉そうなことをテレビで解説員としてしゃべっている新聞記者上がりのやつらを馬鹿にしている。

今回、ここに出てきた大きな法律事務所、もう一回言うけどポール・ワイスとパーキンス・クイとスキャデン・アープスとコビントン・バーリングとウィルマーヘイルと、それからまだ『日経』の表の中にあったジェンナー・アンド・ブロックとか、こいつらがはっきり表に出てきて、私はものすごく嬉しい。私は3日間ずっと読み続け、調べて、非常に気分が良かった。自分も老人性の鬱病ではあったんだけど、敵の苦しみは私の喜びですから、これで自分を支えていた。

しかもこのスキャデン・アープスが、トランプに1億ドル、約150億円相当の法的支援、だから和解金じゃない、慰謝料、慰謝料を提供すると約束した。慰謝料を払った、Concealment Fee ね、屈服した。大量の難しいことをやっている超エリートたちが、結局最後は「ごめんなさい」と言って謝った。対抗裁判もなしにして、自分たちが全て間違っていたと認めた。あまりにもあっけらかんとしていて、馬鹿みたいな話で、自分たちが正義だと言い続けた人間が、自分たちは悪(あく)でしたとまでは言わないけど、間違っていたと認めた。そのことがすごいことで。

そうしたら法律業界側が、ポール・ワイスのブラッド・カープ会長に対して、「おまえのせいでとんでもないことになった。おまえはとんでもない恥さらしだと、許さん」とぎゃあぎゃあ言いだした。それに対してブラッド・カープは「自分の法律事務所が生き残るためには、どうしてもトランプ大統領の言うことを聞くしかなかったんだ」と言い訳をしている。

もう最後にしますが、「ブラッド・カープの言い分も分かる」という連中が大物たちの中にもいて、こいつらがおもしろい。イーロン・マスクもこれに加わって、極右陰謀論者と呼ばれているディネシュ・デスーザ(Dinesh D’Souza、1961年-、64歳)の代理人をやった。3月23日付けの、この法律事務所は許さんという記事がある。イーロン・マスクが横から、ここも許さんと言ったという記事もあって、1回目に貼った。

ディネシュ・デスーザ

ポール・ワイス法律事務所の売り上げは、26億ドルだ。4000万ドル相当の仕事を無償で引き受けることになって、ブラッド・カープは「生贄(いけにえ)にされたんだ」と、「これは良い取引だった」と言っている。4000万ドル(約60億円)分の仕事。今までの仕事(リベラル、差別をしない、人権人権と言っているイスラム教徒たちの側に立って代理人をやる)とは逆の仕事をさせられるんだ、と。

逆の仕事をさせられるといっても、こんなことは弁護士ならすぐできる。依頼人の立場に立つのが弁護士の仕事だから、ころころと態度を変えられる。あれも私は大嫌いで。このディベートという考え方、論述で、「はい、立場を変えて全く反対のことをしゃべりなさい」と、そういう不愉快なことを平気でやる連中なんだ。信念とか正義感で生きている訳じゃない。そこが私、副島隆彦には気持ち悪い世界で、法学部というのは嫌だなと思ったことがある。何かカメレオンみたいなところがある人間たち、つまり正義をブローキング(broking)する、正義の売り買いをする人たちだ。本当に気色が悪い。それなのに、みんな偉そうに信念に基づいて堂々としゃべる。不愉快な奴ら。

「このブラッド・カープがトランプにひざまずいて敬意を示したこと、これが問題だ」と言っているのもいる。コモンコーズ・イリノイという人権団体があるんだけど、エリザベス・グロスマンという女。この女だってポール・ワイスで弁護士をやっていた。ポール・ワイスの元アソシエートと書いてある。彼女は「ブラッド・カープ会長たちが頭に銃を突きつけられていたとは思わない。難しい決断を迫られたのだろう」と同情しているような書き方をしながら、しかし、カープ会長の判断を痛烈に批判する公開書簡を取りまとめた。みんなで抗議文、声明文を出した。「あの降伏、屈服は非常に身勝手だった。自分たちの法律事務所の利益と存続のことばかり考えて、法の支配(rule of law)とか人々への配慮を、どのように影響を与えるかを考えていない」というきれいごとを、このエリザベス・グロスマンは平気で書いている。「闘うぞ」の女で、きれいごとの女。こういう人は自分の考えを変える訳にいかないんだけど、でも法律家としてはもうあっちにどかされる。

他のトップ弁護士たちは「ポール・ワイスの顧客企業が政府契約を失うと言う事態に直面していた。ブラッド・カープがトランプに屈服したのは、それはもう仕方がなかった」という同情もしている。ポール・ワイスは、エクソンモービルやゴールドマン・サックス、米プロフットボールNFLなどの代理人をしていたんだって。これらが政府契約を失うなんてことになったら、だからとんでもない。

私が最後に言いたいこと。つまりこの大法律事務所たちは、これまで偉そうな、立派そうなことをいっぱい言ってきたのに、押しなべて気骨がない。私たちが今、目にしているのは、この大法律事務所はこれほどまでに気骨、つまり根性というが、根性がなかったのだということだ。

結局のところ彼らは資本主義者、キャピタリストだ。自分の金(かね)のことしか考えない人たちなんだ、という言葉でこの記載を終える。

(終わり)

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