「2199」 アメリカの超一流法律事務所たちがトランプの報復に降伏した(第1回・全3回) 2025年5月28日

副島隆彦です。今日は2025年5月28日です。

今回から、アメリカにある 超一流の巨大 法律事務所たちが、トランプに屈服したという内容を話す。

大きな法律事務所は、アメリカのワシントンとニューヨークにあるが、首都ワシントンの超一流の法律事務所たちの動きが、私はようやく分かった。英語で Law Firmという。Lawが「法律」で、Firmは「事務所、企業」という意味で、それで法律事務所という。私はこれまで、その中でも大きい法律事務所、Big Law Firmsたちのことが分からなかった。今回、一覧表を入手することができて、それらが全部分かった。日本では、私以外にこのことを教える人がいない。

パワーエリート(Power Elite)という言葉があるんだけど、要するにアメリカの権力者たちの頂点にいる人たちだ。弁護士と会計士と医者もいて、超一流医者というのは政治的な動きをする。そのパワーエリートの一種が法律家、弁護士たちだ。裁判官になる訳ではない。アメリカ社会の巨大企業たちの代理人をやる。この巨大法律事務所、Big Law Firmsの一覧表はこれに後でくっつける。これらについて私はどうしても全体を理解したかったが、日本ではこれまで語られたことがない。それがようやく新聞記事になったということだ。

アメリカの巨大法律事務所(後でまた貼る)

これは FT(Financial Times)紙、イギリスの超一流の金融新聞のものだ。3月27日付の記事で、ここにはっきりと「米一流法律事務所、政権の報復に直面――つまりトランプ政権の報復に直面――早々と「降伏」も」という見出しで出ている。この記事は後のほうで載せます。しかし、これを読んですぐに理解できる力のある人はいないと思う。何が起きているのかが分かる人はいない。それでも、彼ら法律事務所がトランプ政権に降伏した、Surrender to the Trump Administration、Surrender to Trump ということはわかる。今回これが起きた。

(貼り付けはじめ)
●「米一流法律事務所、政権の報復に直面 早々と「降伏」も」
2025年3月27日 FT

トランプ氏はここ数週間、法律事務所を狙い撃ちした大統領令を出している © Carolina Vargas/FT/Reuters トランプ氏はここ数週間、法律事務所を狙い撃ちした大統領令を出している © Carolina Vargas/FT/Reuters

法曹界全体を巻き込み、一丸となって戦おうとする試みが大手法律事務所ポール・ワイス・リフキンド・ワートン・ギャリソンの「降伏」によって頓挫した後、米国屈指の有力法律事務所がトランプ米大統領の怒りから事業を守ろうと奮闘している。

各社のトップは24日、顧客の代理人を効果的に務める事務所の能力はホワイトハウスの敵意によって損なわれないと主要顧客に確約することに奔走した。法律事務所数社の有力パートナーと話をしたある幹部弁護士は、あらゆる規模の法律事務所が次の標的になることを「死ぬほど恐れている」と語る。ウォール街の大物弁護士は「誰もがそのために外部の弁護士を雇わねばならず、誰もがこれについてPRの声明を出さなければならない」とし、「これはリアルな不安だ」と話した。

トランプ氏はこの数週間で、法律事務所のパーキンス・クイとポール・ワイスを標的にした大統領令を発令したほか、ワシントンに本社を置くコビントン・バーリングに対する通達を出した。大統領令は連邦政府機関に対し、これらの事務所から機密情報を扱う「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」を剥奪し、法律事務所や各社と取引がある企業との政府契約を打ち切るよう指示した。

ポール・ワイスは巨大M&A(合併・買収)や複雑な訴訟を扱っているが、プログレッシブ(進歩派)の大義を支援してきた名高い歴史がある。同社のパートナーには多くの元民主党高官が名を連ねる。民主党の大統領候補の資金集めを担う有力組織でもあり、2024年にはカマラ・ハリス候補と民主党全国委員会のために100万ドル(約1億5000万円)以上を調達した。

同社は先週、トランプ氏の要求に屈し、ブラッド・カープ会長はポール・ワイスの存続が危ぶまれたと主張した。一方、規模がはるかに小さいパーキンス・クイは大統領令を不服として法廷で戦い続けている。

ここ数日、法律事務所を標的とした大統領令がさらに発令されるとの不安が広がり、なかでも特に過去にトランプ氏と法廷で争った数多くの企業や人とつながりのある組織が対象になると懸念されている。

■マスク氏の投稿も臆測

トランプ氏の側近中の側近である起業家のイーロン・マスク氏は23日夜のX(旧ツイッター)への投稿で、扇動的な右派論客のディネシュ・デスーザ氏を相手取った訴訟を無償で引き受けたとしてニューヨークの法律事務所スキャデン・アープスを攻撃し、スキャデンが次の標的になるとの臆測が飛び交った。

16年大統領選へのロシアの介入疑惑を特別検察官として調査したロバート・モラー氏がパートナーに名を連ね、トランプ氏から解雇された連邦政府の監察官数人の代理人を務める大手法律事務所ウィルマーヘイルの弁護士は仲間内で、自分たちも標的になることを恐れていると話している。それでも、同社はトランプ氏から政権の要職に指名された候補者を上院の承認公聴会に向けて準備させる仕事を手掛け、民主党政権に対する訴訟も扱った。

スキャデンの代表はコメントの要請に返答しなかった。ウィルマーヘイルはコメントするのを控えた。

トランプ氏は24日のホワイトハウスでの会見で、「ほかにも和解を望んでいる企業がある」とし、「最大手は皆、過ちを犯したことに気づいて戻ってきた」と語った。さらに、法律事務所は「自らを律しなければならない」と付け加えた。

フィナンシャル・タイムズ(FT)はこの記事のために30人以上の企業弁護士と法曹界に近い関係者に接触したが、大統領とその側近から報復を受ける懸念のために、匿名での取材に応じたのは十数人にとどまった。

一部の法律事務所は政権からの攻撃を無力化することを期待し、トランプ氏と親密な関係にある弁護士やロビイストの起用を急いでいる。エリート法律事務所数社はホワイトハウスからの監視の目が強まることを恐れ、進歩派の大義や民主党、DEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムへの言及をウェブサイトから削除した。

■カープ氏の判断に批判

ポール・ワイスの和解はトランプ氏を増長させ、他の法律事務所を攻撃し、究極的には米国の司法制度全体を脅かすとの不安が高まるなか、和解を決めたカープ氏の判断はポール・ワイスの社員やOBだけでなく業界全体からも批判を浴びた。100人以上の元ポール・ワイス社員が24日、政権との取引に抗議するカープ氏宛の書簡に署名した。

ポール・ワイスの元パートナーで、その後、米作家ジーン・キャロル氏の代理人を務め、トランプ氏を名誉毀損で訴えた同氏の裁判で勝訴したロベルタ・キャプラン氏は24日、自身の法律事務所を通して「我々の顧客と我々の信念のために立ち上がって戦う」ことを誓った。この問題について公式声明を出した数少ない法律事務所の1社であるキャプラン・マーティンは「我々の職業の最高の理想を守ることに尽力する」法律事務所と連携し続ける考えも表明した。

非営利団体コモンコーズ・イリノイの事務局長を務めるエリザベス・グロスマン氏は「彼らが頭に銃を突き付けられていたとは思わない。難しい決断を迫られたのだと思う」と話す。同氏はポール・ワイスの元アソシエートで、和解を決めたカープ氏の判断を痛烈に非難する公開書簡のとりまとめに携わった。「あれは非常に身勝手だったと思う。彼らは自社の利益について考えており、法の支配や米国について、あるいはこれがリソースの少ない企業や人にどのような影響を与えるかについて考えていなかった」

他の法律事務所の一部トップもカープ氏の降伏を批判した。幅広い人脈を持ち、米国有数のエリート法律事務所を長年率いてきたリーダーとして、同氏は政権の行き過ぎに対して弁護士を結集させるうえで大半の人よりもふさわしい立場にあったと主張した。

一方、23日の社内メールで「大統領令は容易に我々の事務所を破滅させられた」と書いたカープ氏の主張を疑問視する人もいる。ポール・ワイスや競合大手の関係者数人は、トランプ氏の攻撃の幅広さを考えると、顧客企業は他の事務所に移る選択肢が限られていると述べ、カープ氏の会社が直ちに危険にさらされるには業界の動きが遅すぎると指摘した。

■顧客を失うリスクに理解も

他のトップ弁護士はカープ氏を擁護し、大半の企業はトランプ氏の標的になるのを避けようとしているため、顧客を失うリスクは現実にあったと主張した。大統領令では、ポール・ワイスの顧客企業は政府契約を失う可能性に直面していた。昨年26億ドルの売り上げを計上したポール・ワイスは金融大手ゴールドマン・サックスや米投資会社アポロ・グローバル・マネジメント、石油大手エクソンモービル、米プロフットボールNFLなど、幅広い顧客を抱えている。

「ブラッド・カープは生贄(いけにえ)の子羊であり、大局的に見れば、あれは良い取引だ」と競合法律事務所のトップ企業弁護士は話した。「トランプ氏は反ユダヤ主義対策について4000万ドル相当の仕事を無償で引き受けるよう彼に依頼した。暴徒を拘置所から釈放させることとはわけが違う。問題はむしろ、ひざまずいて敬意を示すことになったブラッド(・カープ氏)の屈辱だ」

別のライバル弁護士は、カープ氏は政権と戦う企業連合を構築しようとしたが、他社が大義を支持するのが遅かったと説明した。

「ブラッドが最初に大統領令を受け取った時、陳情書に署名するかアミカスブリーフ(裁判所に提出される第三者の意見書)に署名し、全員に法廷に出席させようとする機運があった」とこの人物は言う。「そこへ全員が『ほかに誰が署名するのか』と問い始め、誰も名乗りを上げようとしなかったから、ブラッドは単独で行動して取引をまとめた」

この取り組みについて知る別の関係者によれば、最終的に共同意見書に名前を載せる意欲があったのは「一握り」の事務所にとどまった。

「つまり、おしなべて大した気骨がない」とこの関係者は語った。「我々が目の当たりにしているのは、法律事務所にどれほど気骨がないか、ということだ。結局のところ、彼らは資本主義者だ」

By James Fontanella-Khan, Amelia Pollard, Joe Miller and Sujeet Indap
(貼り付け終わり)

 

この3月27日の『FT』の記事の前に、3月22日付の『日経新聞』の芦塚智子=ワシントンからの記事があって、それも私はウォッチして採集してあった。こっちのほうが早い。それで、3月27日この『FT』の記事が出た後、同じ『日経』で、これも女の記者の名前になっているんだけど、3月29日付の吉田圭織=ニューヨークからの記事がでた。この3本の記事で、何が起きていたのか、全体が分かる。

(貼り付けはじめ)
●「トランプ氏、法律事務所も報復の標的に 「私を攻撃」」
2025年3月22日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21C600R20C25A3000000/

【ワシントン=芦塚智子】トランプ米大統領が、自身に対する疑惑調査や捜査に関与したとして、大手法律事務所への報復措置を相次いで発表している。20日には、大手事務所が政権の政策推進に協力することなどを条件に措置を取り下げる「取引」に合意したと発表。法曹界への威圧との批判も出ている。

トランプ氏は20日のSNSへの投稿で、14日に発表していた大手法律事務所ポール・ワイス・リフキンド・ワートン・ギャリソンへの措置を撤回すると表明した。

トランプ氏は14日の大統領令で、同事務所の弁護士らが連邦政府の建物に立ち入ることを制限し、機密情報を扱う資格を停止するよう命じていた。同事務所の元パートナーが口止め料事件を巡るトランプ氏への捜査に関わっていたことなどを理由に挙げていた。

20日の声明は、同事務所が反ユダヤ主義対策といった政権の方針のために4000万ドル(約60億円)相当の法的支援を提供することや、トランプ氏が反対するDEI(多様性、公平性、包摂性)政策を取らないなどの条件に同意したと説明した。ホワイトハウスは、同事務所が元パートナーの「不正行為」を認めたともしている。

トランプ氏は6日、大手法律事務所パーキンス・クイに対しても機密情報の取り扱い資格停止などの大統領令を発表。2016年の大統領選で民主党候補だったクリントン氏のために働き、トランプ氏に不利になる情報の工作に関わったなどとした。トランプ氏の連邦議会占拠事件への関与などを捜査したスミス元特別検察官に協力したとして、コビントン・バーリングにも同様の措置を発表している。

パーキンス・クイは、大統領令はトランプ氏が政敵とみなす人物の代理を務めた事務所への差別的な報復で、違憲だとして連邦地裁に提訴。地裁は12日、訴えを認めて大統領令に一時差し止め命令を出した。

トランプ氏は21日、こうした措置は法律事務所への威圧ではないかとの記者の質問に対し「それらの法律事務所は悪事を働き、私を何年にもわたって攻撃した」と反論し「法律事務所は皆、取引をしたがっている」と強調した。

法律事務所が機密情報の取り扱い資格を停止されれば、政府と契約する企業などの顧客を失う恐れがある。

法律事務所がトランプ氏の報復を恐れて、政権に対する訴訟の請け負いを敬遠する可能性など影響を懸念する声も出ている。

トランプ氏は14日、司法省で異例の演説をし、自身を捜査した検察官や政敵への「報復」を宣言した。トランプ氏が法執行機関を政治的に利用する懸念が高まっている。

すでに第1次政権で対立した元大統領補佐官のボルトン氏や米軍制服組トップだったミリー元統合参謀本部議長の警護を解除した。バイデン前大統領が機密情報にアクセスする資格も取り消した。バイデン氏の息子ハンター氏の警護解除も表明している。
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●「米法律事務所にトランプ氏報復 訴訟、屈服で対応割れる」
2025年3月29日 日経新聞


大手法律事務所のジェナー・アンド・ブロックはトランプ政権に対する訴訟を起こした=ロイター

【ニューヨーク=吉田圭織】トランプ米大統領が、自身に対する疑惑調査や捜査に関与したとして大手法律事務所への報復措置を相次ぎ発表している。28日時点で5つの法律事務所が標的となった。政権への訴訟に踏み切る事務所がある一方、トランプ氏に歩み寄る動きもあり業界の対応は分かれている。

直近、大手法律事務所ジェナー・アンド・ブロックと同ウィルマーヘイルが新たな標的となった。25日、27日にそれぞれ発令された大統領令ではいずれも2016年の米大統領選にロシア政府が介入した疑惑をめぐる捜査との関係が指摘された。事務所の弁護士らによる連邦政府の建物への立ち入り制限と機密情報を扱う資格の停止を命じた。

ウィルマーヘイルに対する大統領令でトランプ氏は27日「(ロシア疑惑捜査は)私の第1期目に政権の公務員の任務遂行を妨害した。こうした司法制度の『武器化』は称賛すべきではない」と主張した。

標的となった法律事務所の多くはトランプ氏の大統領令に対抗して訴訟を起こしている。ジェナー・アンド・ブロックは28日「大統領令ではジェナー社を標的にした理由として、政府にとって不都合な案件に関わったことや大統領に批判的な人と過去にあった関係などを理由に挙げたが、憲法上許されないものだ」として訴訟を起こした。

パーキンス・クイもトランプ政権に対し同様の訴訟を起こしており、地裁は訴えを認めて大統領令に一時差し止め命令を出している。

一方、報復措置を避けようと先回りで対策する事務所も出ている。トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で28日、スキャデン・アープス・スレート・マー・アンド・フロムとの合意を明らかにした。

トランプ氏は「(同事務所は)政権に歩み寄り、司法制度と法曹界の武器化を終わらせるという強い決意を宣言した」と記した。スキャデン・アープスはトランプ氏に1億ドル(約150億円)相当の法的支援を提供すると約束したほか、DEI(多様性、公平性、包摂性)政策を取らないことも宣言したという。
(貼り付け終わり)

 

『日経』の3月29日の記事に前掲の一覧表があって、これがものすごく重要だ。トランプ政権の標的となったワシントンの法律事務所の一覧だが、「5大法律事務所」と言っていいと思う。これら事務所の名前と、大統領令発令の日が左側に書いてある。一番早いのは2月25日、コビントン・バーリングという大きな法律事務所だ。こういうところは弁護士が、恐らくは300人ぐらいいて規模が大きい。ここを狙い打ちにしたというか、大統領令を出した。その他にも、法律事務所の名前が並んでいる。

大事なのは、一つ目の3月22日の『日経』の記事から分かったことだ。トランプ大統領が3月14日に米司法省に乗り込んで、そして異例の演説をした。これまでに自分自身を「犯罪捜査」した検察官や政敵たちへの「報復(vendetta、ヴェンデッタ)」を宣言した、この1行がすごいのであって、他の日本のテレビ、新聞は記事にしていない。トランプが自ら司法省の建物にどなり込んでいって、トランプは今や現大統領だから、「よくもおまえたちはこれまで私自身の政治活動とか、2017年からの第1期目で、大統領としての任務遂行の際に、私のいっぱい足を引っ張って、悪いことばかりしたな、もうおまえらのこれまでの動きを許さない」とはっきり大きな演説をした。恐らくそこに200人ぐらいの司法省の幹部、部長、局長たちを並べて大演説した。これはものすごく大事なことだ。

https://youtu.be/QCHogqIDY_M←クリックすると映像を見ることができます

その前の去年の11月6日、トランプが当選したときに、「もう司法省を解体する」という話まであった。司法省を大統領直属にする、と。これは日本でいえば法務省だ。日本の法務省は検察庁とくっついていて、三権分立のうちの行政部に属する。しかし、裁判を行うときの検察官、国の代理人として刑事裁判を行うときは、司法部の一部にもなる訳だ。だから、司法的行政官と言う。アメリカも一緒だが、日本で最高検察庁とかいうと何か立派そうに見えますが、実は、日本の法務省と合体している。建物も隣同士で行ったり来たりしていて、組織としては一体。日本人はこれがよく分からない。

アメリカでも Department of Justice、司法省 はそれとほぼ同じだけど、司法長官は、英語では Attorney Generalという。この Attorney Generalは、歴史的にはイギリスの国王のすぐそばにいた「大法官」と訳す。大法官は法律に関して国王にあれこれ教える立場の大臣だ。しかし、この Attorney Generalを、今は検事総長と訳す。それは州ごとにいるんだけど、ワシントンの中央にいる、わかりやすく言うと法務大臣、法務大臣がそのまま検事総長だ。これを日本人は知らない。Attorney Generalは司法長官と訳してもいいけど、検事総長とも訳す。

3月14日に司法省内を歩くトランプ大統領とボンディ長官

トランプ政権では、司法長官に パム・ボンディ(Pam Bondi、1965年-、59歳)というフロリダ州の検察官上がりの女性がなっている。犯罪者たちであるアメリカの違法移民、Illegal Arrivals、今は Illegal Aliensとはっきり言うようになったが、それらを厳しくたくさん捕まえている、そして刑務所に送り込むだけでなく、今はエルサルバドルという中米の国に、もう何千人単位で送り込んでいる。

中米諸国の地図

エルサルバドルには7万人も入る大きな刑務所があって、国境警備を担当するクリスティ・ノーム(Kristi Noem、1971年-、53歳)国土安全保障長官が、そこの視察に行った。体や頭にまで入れ墨をして白い長いパンツ一枚を身につけている気持ち悪い連中が各某房に入っている、ずらーっと長い大きい建物の前を歩いた。囚人たちにらみつけられながら、ばあーっとそこを歩いた。恐ろしい仕事だ。

https://youtu.be/q9oZ0pHymko←クリックすると映像を見ることができます

その刑務所の写真を見るともうぞっとする。ここだけでも7万人収容できると言っている。ただ、ノームをにらみつけているこの男たちは、まだ生易しいほうだ。彼らよりもっとすごいのは独房に入れられている。おまえの体を1秒で八つ裂きにして食い殺してやる、というような恐ろしい男たちもいる。それに比べれば、まだ唾を吐きかけたりしていないから。それでももう異様な形相でにらみつけている。

これは非常に大事な写真だ。麻薬犯罪と人身売買とかをやっている、ここまで恐ろしい犯罪組織を、これまでは写真でさえ見たことがないというか。でもこれが今の人類の大きな真実だ。これから目をそらしたらいけない。麻薬に狂って、犯罪、人殺しが当たり前みたいな中南米の男たちが7万人も捕まっているところの現実を無視して、人権がどうのとか、法律の適用を受けて正しく処罰されなければいけないとか、きれいごとを言っている暇などない。まとめて全部エルサルバドルに、終身刑で捨てに行った訳で、この現実の重さを、現にトランプ政権はやっている。これは正しい行動だと思う。

https://youtu.be/VnQgoHMYvW8←クリックすると映像を見ることができます

フィリピンの場合も、これと同じことが言える。本当は2万人ぐらいと言われているけど、形の上では7000人を撃ち殺した、大統領(在任:2016-2022年)をやっていたロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte、1945年-、80歳)は偉かった。今は捕まった形で、ハーグの国際刑事裁判所、ICCに連れていかれている。しかし、独房に入れられたりはしてなくて、ホテルみたいなところにいると思うが、7000人を殺したという罪状で裁判にかけられている。「人権を無視して、法律の手続をとらないで、フィリピンの軍隊とか特別警察隊によって、前歴のある者と麻薬売買をしているような人間たちを路上で撃ち殺したりした」、ということで。もう10年以上前ですけど、殺された周りの家族は泣き叫んだりしただろうが、そういうやりかたで処罰をしたという罪で国際裁判にかけられることになっている。

ロドリゴ・ドゥテルテ

しかし、もしドゥテルテを本気で牢屋に入れたりしたら、フィリピン人のおばさんたちが怒り狂う。世界中のメイドさんとか下女やら女中やらやっているようなフィリピン人のおばさんたちが、ドゥテルテを守ろうとする。

それが今の世界の現実で、日本ではそういうことは言わないことになっていて、ほとんど説明しない。だから、トランプがやっていることは正しいんだ。それをやりに、パム・ボンディやクリスティ・ノームというおっぱいが大きい、丸首シャツだけでキャップをかぶって行った女も偉いですが、そういう覚悟で、トランプ政権は今のアメリカに潜り込んできた1100万人の不法移民を摘発して捕まえて強制送還する。犯罪性の強いやつは、もうエルサルバドルに送り込む。あるいは、島を一つつくって、そこに収容すると言っている。

アメリカ国民、民衆はこれを支持している。ただ、テレビ、新聞はそういうことを言いたがらない。「人権尊重と平等と人種差別しない」を旗頭にして生きてきた人たちは、この問題に触れようとしない。このことはいい。クリスティ・ノーム長官は、前述したように2025年3月26日にエルサルバドルに行った。ナジブ・ブケレ(Nayib Bukele、1981年-、43歳)大統領というのが受け入れた。もともとの、自分の国の7万人ぐらいの薬物犯罪者、共和党犯罪者たち。全身に入れ墨を入れている彼らを受け入れて、全部収容している。終身刑として。もうあきれ返って、言う言葉がないぐらいすごい写真。彼らが群れをなしている写真もある。

ドナルド・トランプとナジブ・ブケレ

刑務所の内部

また話を戻すが、この女の長官は Attorney General、知的な大法官だ。Attorneyというのは代理人という意味だけど、法律家という意味もあって、Generalが全体をまとめるという意味。アメリカでは一体化している。日本では検事総長ということになる。

ここに載せた『日経新聞』のトランプ政権の標的となった五つの法律事務所の説明もこれからしますが、これは記事をしっかり読めば書いてある。私はずっと巨大法律事務所のことが気になっていていたので、記事に一覧表が出てきたときはびっくりした。3日間、20回ぐらい読み返し続けて、それでようやく全体が分かった。

トランプが司法省に乗り込んでいって大演説した話に戻す。トランプが「おまえら絶対許さん。幹部たちの首を切ってやる」と怒鳴った。「おまえたちは、やってはいけない裁判をたくさん私に対してもかけた。邪魔した。私の政治の邪魔をした。その証拠も挙がっている。真実は、今回私は1億3000万票ぐらい票をとっているんだぞ、それに対して民主党のカマラ・ハリスなんか2000万票なんだ」と言っている。トランプは圧倒的にアメリカの国民の支持を得ている。その数字は発表しないことになっている。実際は、アメリカ国民の支持を8割ぐらいトランプがとった。

ということは、デモクラシー(democracy)、代議制民主政体の理念に従えば、圧倒的な支持を受けている大統領は何でもできる。それを裁判所や検察庁、つまり司法省がわーわー引っ張って邪魔したり、あるいは議会の民主党が足を引っ張って邪魔したりするなんて、もういいかげんにしろというのが、今のアメリカの国論。トランプは今、CEOと呼ばれていて、会社の代表取締役社長だ。今はCEOが大統領になったんだと言われている。だから社長の言うとおりやらせろ、足を引っ張るな、となる。

それに対して今、使われている言葉が「裁判所、検察庁による司法の武器化(weaponization)」だ。司法を武器にかえて、自分たち国民の代表者に対して違法なことをたくさんやった、許さない、と言って怒っている。司法省でももう既に何百人かが首になっている。特に監察官と呼ばれている、監督の監ですから、恐ろしい職業。FBIや CIAに対して、司法省から監督する立場の監察総監(Inspector General)とかいうのがいて、彼らが真っ先に首を切られた。その彼らを守っているというか、代理人をやっている法律事務所が、今回、標的にされたワシントンの5大法律事務所に入っている。特にどれだったかな、首を切られた監察官たちがトランプ政権に対して裁判をやっていて、それをやっているのがこのうちの一つで、後で見つける。

トランプが司法省に怒鳴り込んでいったのが3月14日で、その同じ日だ。『FT』の記事からも分かるんだけど、アメリカで5番目に大きい大法律事務所である、ポール・ワイス・リフキンド・ワートン・キャリソンという、これは人の名前。みんな誰でも知っている、日本だったら、アンダーソン・毛利・友常法律事務所とか大江・田中・大宅法律事務所とかいう100人、200人の弁護士から成る大きなのがあるんだけど、これは日本ではほとんど誰も話をしないけど、難しい実務をやっている訳(わけ)だ。特許申請とか、アメリカから来た大企業、Amazonとか Microsoftの代理人をやっているような大法律事務所があるが、地味ではある。日本の社会ではあまり表へ出ない。難しいことをやっている。幅30センチの厚みのあるような書類をずっとつくるみたいな、恐ろしい人たちだが、その分だけ、日本でも年収2億円とかもらっているような人たちだ。アメリカだったら年収20億円もらっているようなパワーエリートたち。こいつらが結集している。話がそれた。

3月14日にトランプが「もうおまえ許さん」と言って大統領令で何をしたかというと、セキュリティ・クリアランス(security clearance)というんだけど、これは適格性評価と訳す。これを取り上げた。 大法律事務所というのは、アメリカ政府の国家機密情報を共有できる立場にある。つまり警察、FBIやCIAの幹部たちと同じ情報を公開、共有されている。きっと何でもかんでもではないが、それでもかなりの機密情報にまで触れられる立場だ。そのセキュリティ・クリアランス、適格性評価をトランプは取り上げた、剥奪した。

その次は、政府と契約を結んでいる大手のメイン・コントラクター、日本語でわかりやすくいうと古い言葉だけど「政府御用達」、主要な請負会社だ。政府の大きな仕事をする主要な大企業たち、メイン・コントラクターズに対して、それらの法律事務所との代理人契約、つまり裁判や契約を取り結ぶときの仕事を強制的に解約させた。これで法律事務所たちは震え上がった。これでは仕事が上がったりになる。それで1週間後の3月20日にポール・ワイスのブラッド・カープ会長がトランプに屈服した。『日経新聞』の記事の中では「政府に迎合」と書いてあるが、迎合じゃない。これについては、『FT』も記事の中で「降伏」と書いてある。屈服、降伏、つまりもう土下座して謝って、「はい、(罪を)認めます」、だ。そして何をやったかというと、4000万ドル、66億円ぐらいの謝罪金をトランプに支払ったようだ。

(つづく)

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