「2184」 古村治彦(ふるむらはるひこ)の最新刊『トランプの電撃作戦』が3月25日に発売 2025年3月16日
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SNSI・副島隆彦の学問道場研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)です。今日は2025年3月16日です。
今回は、古村治彦の最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)を皆様にご紹介する。発売日は3月25日だ。
『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
2025年1月20日の大統領就任式でのトランプ
本書では、2025年1月20日に発足した第二次ドナルド・トランプ政権を網羅的に分析した。トランプを支える2人の大富豪、ピーター・ティールとイーロン・マスクの動きについて詳しく解説している。トランプ政権の閣僚の解説、昨年のアメリカ大統領選挙の解説も行った。世界の大きな動きでは、アメリカが西半球に立て籠もるモンロー主義に回帰し、他の部分を中露に任せるという「ヤルタ2.0」体制に進むと分析した。
「ヤルタ2・0」体制
トランプの高速度の仕掛けによって、アメリカ国内と世界が唖然としてしまった。トランプはいったい何をやっているのか、何を考えているのかという疑問を多くの人たちが持っている。本書はそうした疑問に対する答えになっていると自負している。
以下に、まえがき、目次、あとがきを掲載した。参考にしていただき、是非手に取ってお読みください。
(貼り付けはじめ)
まえがき 古村治彦(ふるむらはるひこ)
2025年1月20日、第2次ドナルド・トランプ政権が発足した。トランプ大統領は就任直後から異例のスピードで、次々と施策を発表し、実行している。注目を集めているのは、イーロン・マスクが率いる政府効率化省(せいふこうりつかしょう)だ。政府効率化省のスタッフたちは各政府機関に乗り込んで、人事や予算の情報を集め、調査している。そして、米国国際開発庁(USAID)については、マスクの進言もあり、閉鎖が決定された。日本では聞き慣れない、米国国際開発庁という政府機関の名前が日本でも連日報道されるようになった。その他、トランプ政権の動きは、日本のメディアでも連日報道されている。
第2次トランプ政権の一気呵成(いっきかせい)、電光石火(でんこうせっか)の動きは、米連邦政府と官僚たちに対する「電撃作戦 Blitzkrieg(ブリッツクリーク)」と呼ぶべき攻撃だ。電撃作戦、電撃戦とは、第2次世界大戦中のドイツ軍が採用した、機動性の高い戦力の集中運用で、短期間で勝負を決する戦法だ。トランプとマスク率いる政府効率化省は、相手に反撃する隙を与えないように、短期間で勝負を決しようとしている。
アメリカではこれまで、新政権発足後から100日間は、「新婚期間、ハネムーン期間 honeymoon 」と呼ばれ、あまり大きな動きはないが、支持率は高い状態が続くという、少しのんびりとした、エンジンをアイドリングする期間ということになっていた。しかし、第2次トランプ政権のスピード感に、アメリカ国民と世界中の人々が驚き、翻弄(ほんろう)されている。人々は、トランプ大統領が次に何をするかを知りたがっている。政権発足直後に、これほどの注目を集めた政権はこれまでなかっただろう。
1月20日以降、メディアや世論調査の各社が、ドナルド・トランプ大統領の職務遂行支持率 job approval ratings(ジョブ・アプルーヴァル・レイティングス)を調査し、結果発表を行っている。アメリカの政治情報サイト「リアルクリアポリティックス」で各社の数字を見ることができるが、2月に入って、支持が不支持を上回り、支持率が伸びていることが分かる。世論調査会社「ラスムッセン・レポート社」が2月9日から13日にかけて実施した世論調査の結果では、トランプ大統領の仕事ぶりの支持率が54%、不支持率は44%だった。トランプの電撃作戦について、アメリカ国民は驚きをもって迎え、そして、支持するようになっている。
「トランプが大統領になって何が起きるか」ということを昨年11月の大統領選挙直後から質問されることが多くなった。私は「私たちが唯一予測できることはトランプが予測不可能であることだ The only thing we can predict is that Trump is unpredictable. 」という、海外の記事でよく使われるフレーズを使ってはっきり答えないようにしていた。ずるい答えで、申し訳ないと思っていたが、トランプ政権がスタートして見なければ分からないと考えていた。
私は、第2次トランプ政権の方向性について見当をつけるために、昨年の大統領選挙前後から第2次トランプ政権発足直後の数週間まで、アメリカ政治を観察 observation(オブザヴェイション) してきた。洪水のような情報の流れに身を置きながら、トランプの発言やアメリカでの記事を分析した。そして、大統領就任式での演説(素晴らしい内容だった)を聞き、それ以降の動きを見ながら、確信を得たことを本書にまとめた。内容については、読んでいただく読者の皆さんの判定を受けたいと思う。
本書の構成は以下の通りだ。第1章では、ドナルド・トランプと、テック産業の風雲児であり、トランプを支持してきたイーロン・マスクとピーター・ティールの関係を中心にして、アメリカにおける「新・軍産複合体」づくりの最新の動きを見ていく。ピーター・ティールの存在がなければ、トランプの出現と台頭はなかったということが分かってもらえると思う。
第2章では、第2次トランプ政権の主要閣僚について解説する。第2次トランプ政権の柱となる政策分野を中心に、閣僚たちの分析を行っている。閣僚たちのバックグラウンドや考え方を改めて分析し、どのような動きを行うかについて分析する。外交関係の閣僚たちは第4章で取り上げる。
第3章では、2024年の大統領選挙について改めて振り返り、トランプの勝因とジョー・バイデンとカマラ・ハリス、民主党の敗因について分析する。また、次の2028年の大統領選挙にトランプ大統領は立候補できないので、誰が候補者になるかを現状入手できる情報を基にして予測する。
第4章では、第2次トランプ政権の発足で、アメリカの外交政策はどうなるかについて分析した。ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス紛争を中心とする中東情勢、北朝鮮関係について分析する。また、第2次トランプ政権の外交政策の基本は「モンロー主義」であることを明らかにする。
第5章では、世界全体の大きな構造変化について分析する。アメリカを中心とする「西側諸国 the West(ジ・ウエスト)」対 中国とロシアを中心とする「西側以外の国々 he Rest(ザ・レスト)」の構図、脱ドル化の動き、新興大国の動き、米中関係のキーマンの動きを取り上げている。アメリカの世界からの撤退がこれから進む中で、日本はどのように行動すべきかについても合わせて考えている。
本書を読んで、読者の皆さんが第2次トランプ政権について理解ができて、戸惑いや不安を減らすことに貢献できるならば、著者としてこれ以上の喜びはない。
2025年2月
古村治彦(ふるむらはるひこ)
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『トランプの電撃作戦』◆目次
まえがき 1
第1章 ピーター・ティールとイーロン・マスクに利用される第2次トランプ政権
●新・軍産複合体づくりを進める2人が支えた132年ぶりの返り咲き大統領 18
●トランプ陣営においてわずか3カ月で最側近の地位を得たイーロン・マスク 24
●第1次トランプ政権誕生に尽力し、影響力を持ったピーター・ティール 28
●第1次トランプ政権で「官僚制の打破」と「規制の撤廃」を求めたピーター・ティール 36
●第2次ドナルド・トランプ政権の人事に影響力を持つ世界一の大富豪イーロン・マスク 40
●トランプを昔から支えてきた側近グループからは嫌われるイーロン・マスク 42
●2010年代から進んでいたティールとマスクの「新・軍産複合体」づくりの動き 46
●選挙後に「トランプ銘柄」と目されたパランティア社、スペースX社、アンドゥリル社の株価が高騰 50
●パルマー・ラッキーという聞き慣れない起業家の名前が出てきたが重要な存在になるようだ 56
●パランティア・テクノロジーズとアンドゥリル社が主導する企業コンソーシアム 59
●21世紀の軍拡競争によってティールとマスクは莫大な利益を得る 64
第2章 第2次ドナルド・トランプ政権は「アメリカ・ファースト」政権となる
●忠誠心の高い人物で固めた閣僚人事 68
●「アメリカ・ファースト」は「アメリカ国内優先」という意味であることを繰り返し強調する 70
●「常識」が基本になるトランプ政権が「社会を作り変える」政策を転換する 72
●40歳で副大統領になったJ・D・ヴァンスはトランプの「後継者」 75
●厳しい家庭環境から這い上がったヴァンス 76
●ピーター・ティールがヴァンスを育て、政界進出へ強力に後押しした 80
●政府効率化省を率いると発表されたイーロン・マスクとヴィヴェック・ラマスワミの共通点もまたピーター・ティール 83
●第2次トランプ政権は国境の守りを固めることを最優先 90
●国防長官のピート・ヘグセスの仕事は国境防衛とアメリカ軍幹部の粛清 96
●「以前の偉大さを取り戻すために関税引き上げと減税を行う」と主張するハワード・ラトニック商務長官 99
●トランプに忠誠を誓うスコット・ベセント財務長官は減税と関税を支持してきた 105
●トランプ大統領は石油増産を最優先するエネルギー政策を推進する 109
●トランプの石油増産というエネルギー政策のキーマンとなるのはダグ・バーガム内務長官 112
●ロバート・F・ケネディ・ジュニアの厚生長官指名でビッグファーマとの対決 116
●「アメリカを再び健康に」で「医原病」に対処する 117
●ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件関連文書の公開はCIAとの取引材料になる 120
●トゥルシー・ギャバードの国家情報長官指名と国家情報長官経験者のジョン・ラトクリフのCIA長官指名 122
●第2次トランプ政権にアメリカ・ファースト政策研究所出身者が多く入った 127
●「裏切り者、失敗者の巣窟」と非難されるアメリカ・ファースト政策研究所 128
●第2次トランプ政権で進めようとしているのは「維新」だ 135
第3章 トランプ大統領返り咲きはどうやって実現できたのか
●共和党「トリプル・レッド」の圧倒的優位状態の誕生 140
●トランプ当選を「的中させた」経緯 142
●アメリカの有権者の不満をキャッチしたトランプ、それができなかったバイデンとハリス 149
●バイデンからハリスへの大統領選挙候補交代は不安材料だらけだった 156
●「自分だったら勝っていただろう」と任期の最後になって言い出したバイデン 161
●カリフォルニア州を含むアメリカ西部出身者で、これまで民主党大統領選挙候補になれた人はいないというジンクスは破られず 164
●アメリカ国内の分裂がより際立つようになっている 168
●2028年の大統領選挙の候補者たちに注目が集まる 173
第4章 トランプの大統領復帰によって世界情勢は小康状態に向かう
●対外政策も「アメリカ・ファースト」 188
●「終わらせた戦争によっても成功を測る」「私たちが決して巻き込まれない戦争」というトランプの言葉 195
●第2次トランプ政権の外交政策を担当する人物たちを見ていく 197
●トランプ大統領の返り咲きによってウクライナ戦争停戦の機運が高まる 202
●ロシアのプーティン大統領に対しては硬軟両方で揺さぶりをかけている 206
●トランプの出現で一気に小康状態に向かった中東情勢 210
●スキャンダルを抱えるネタニヤフはトランプからの圧力に耐えきれずに停戦に合意した 212
●北朝鮮に対しても働きかけを行う 216
●トランプ率いるアメリカは「モンロー主義」へ回帰する―― カナダ、グリーンランド、パナマを「欲しがる」理由 220
●トランプは「タリフマン(関税男)」を自称し、関税を政策の柱に据える 226
●日本に対しても厳しい要求が突きつけられる 229
●日本にとって「外交の多様化」こそが重要だ 236
第5章 トランプ率いるアメリカから離れ、ヨーロッパはロシアに、アジアは中国に接近する
●「ヤルタ2・0」が再始動 240
●参加国の増加もあり影響力を高めるBRICS 244
●「脱ドル化」の流れを何としても止めたいアメリカ 249
●グローバルサウスの大国としてさらに存在感を増すインドネシア 253
●サウジアラビアは脱ドル化を睨み中国にシフトしながらもアメリカとの関係を継続 257
●宇宙開発やAIで続く米中軍拡競争 260
●キッシンジャーは最後の論文で米中AI軍拡競争を憂慮していた 263
●キッシンジャー最後の論文の共著者となったグレアム・アリソンとはどんな人物か 267
●ヘンリー・キッシンジャーの教え子であるグレアム・アリソンが中国最高指導部と会談を持つ意味 269
●トランプが進めるアメリカ一極の世界支配の終焉によってユーラシアに奇妙な団結が生まれるだろう 273
●トランプ大統領返り咲きは日本がアメリカとの関係を真剣に考え直すきっかけになる 275
あとがき 279
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あとがき 古村治彦(ふるむらはるひこ)
昨年(2024年)、アメリカ大統領選挙が進む中で、私の周りで、「トランプさんはおかしい人だから、何をするか分からない」ということを言う人たちが多くいた。「トランプは狂人 madman(マッドマン)だから、核戦争を引き起こす可能性が高い」というような扇動(せんどう)的な記事がインターネットに出ていたこともある。本書を読んで、こうした考えは誤りだということに気づいてもらえたと思う。
ドナルド・トランプは合理的(利益のために最短のルートを選ぶことができる)で、めちゃくちゃなことをやるのではなく、そこには意味や理由がきちんと存在する。トランプ政権で大きな影響力を持つイーロン・マスクについてもそうだ。合理性を追求するあまりに、常識や慣例に縛られないので、結果として、非常識な行動をしているように多くの人たちに見られてしまうが、中身を見れば極めて常識的だ。本書で取り上げたように、トランプ、マスクの裏にはピーター・ティールが控えている。ピーター・ティールもまた同種の人間だ。彼らは自己利益を追求しながら、アメリカに大変革(だいへんかく)をもたらそうとしている。
トランプは、激しい言葉遣いや予想もつかない行動、常人には思いつかないアイディアを駆使して、相手に「自分(トランプ)は常人(じょうじん」とは違う狂人(きょうじん)で、予測不可能だ」と思わせ、相手を不安と恐怖に陥れて、交渉などを有利に進める方法を採る。これを「狂人理論 madman theory(マッドマン・セオリー)」と呼ぶ。トランプはこの方法を使って、現在、アメリカ国内と世界中の人々を翻弄している。しかし、トランプのこれまでの行動を見れば、必要以上に恐れることはないということが分かる。「狂人理論」を使う人間は本当の狂人ではない。トランプの交渉術だと分かっていれば、落ち着いて対処でき、落としどころを見つけることができる。トランプは、「有言実行 walk the talk(ウォーク・ザ・トーク)」の人物であるが、自身の言葉に過度に縛られず、取引を行う柔軟性を持つ。この点がトランプの強さだ。
本書で見てきたように、トランプ返り咲きによって、世界は小康状態 lull(ロル)に向かう。大きな戦争は停戦となる。実際にイスラエル・ガザ紛争は停戦となり、ウクライナ戦争も停戦に向かう動きになっている。これだけでもトランプの功績は大きい。トランプは、大統領就任式の演説で述べたように、「終わらせた戦争」「(アメリカが)巻き込まれない戦争」によって評価されることになる。同時に、しかし、アメリカの製造業回帰、高関税は世界経済にマイナスの影響をもたらすことになる。これから、そのマイナスをどのように軽減するかについて、取ディール引が行われることになる。日本にも厳しい要求が突きつけられることになるだろうが、トランプを「正しく」恐れながら、落ち着いて対処することが必要だ。
そのためには、トランプ政権が行う施策や行動の根本に何があるかということを理解しておく必要がある。そうでなければ、表面上の言葉や行動に驚き、翻弄され、おろおろするだけになってしまう。私は、本書を通じて、第2次トランプ政権の行動の基本、原理原則を明らかにできたといういささかの自負を持っている。
本書は2024年12月から準備を始め、2025年1月から本格的に執筆を始めた。2025年1月20日のトランプ大統領の就任式以降の、怒濤(どとう)のような激しい動きを取り入れて、可能な限りアップデイトしたが、皆さんのお手許に届く頃には古くなっているところもあるだろう。あらかじめご寛恕をお願いする。
これからの4年間は、第2次トランプ政権が何を成し遂げ、何に失敗するかを、そして、世界構造が大きく変化する様子を目撃する刺激的な4年間となる。
最後に、師である副そえじまたかひこ島隆彦先生には、現在のアメリカ政治状況分析に関し、情報と助言をいただいたことに感謝申し上げます。秀和システムの小笠原豊樹編集長には本書刊行の過程を通じて大変お世話になりました。記して感謝します。
2025年2月
古村治彦(ふるむらはるひこ)
(貼り付け終わり)
(終わり)