「80」 「サブプライム危機から世界恐慌へ」(15) 2008年の7月分の記事をまとめて載せます。 2008.9.4

  • HOME
  • 「80」 「サブプライム危機から世界恐慌へ」(15) 2008年の7月分の記事をまとめて載せます。 2008.9.4

副島隆彦です。 今日は、2008年9月4日です。

 この第2ぼやきに、ようやくのことで、「サブプライム危機から世界恐慌へ」(15)を載せます。2008年7月の分の記事を集めたものを載せます。

私は、今年、2008年の金融・経済の記事を集めたものを、1月以降、全く載せていません。 何が、それほそ忙しかったのか、自分でも忘れました。とにかく、忙しかった。

3月に、「連鎖する大暴落」(徳間書店刊)を出して、そのあと、すぐにPHP研究所からの「時代を見通す力(ちから)」を書くことで、4月、5月の2ヶ月は本当にきつくて苦しかった。
それを、書き上げて、やれやれと思ったら、すぐに7月に入って、この「時代を見通す力」が出版されたのは、7月末で、実際には8月の夏の盛りだった。

 こうやって、私の時間は過ぎてゆく。この9月6日から、祥伝社からの、毎年恒例の「エコノ・グローバリスト・シリーズ」の11冊目である、「恐慌前夜」が発売になる。この本を書き上げるのに、7月後半から8月前半までの一ヶ月がかかった。だから、私は、この第2ぼやきに、何も載せられなかったのだ。

1月分は、「13」までで載せているようだから、急いで、今から、今年の2月の分から、8月の分までをここに、載せます。
副島隆彦拝

(転載貼り付け始め)

●「FRBの資金供給、資産構成上の限界に近づきつつある=日銀金融市場局長」

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK
014102520080729

2008年7月29日 ロイター

 日銀は29日、「サブプライム問題に端を発した短期金融市場の動揺と中央銀行対応」と題したリポートを公表、これについて中曽宏金融市場局長は、米連邦準備理事会(FRB)がとった様々な対応措置の結果、短期国債の保有額の大幅減少によりバランスシート上、資金供給余地が限界に近づきつつあると指摘した。

 同リポートは、サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題に対する 主要中銀の対応をまとめたもの。FRBはサブプライム問題発生後、短期金融市場に大量の資金供給を行ったほか、プライマリーディーラーを対象に幅広い担保を裏付けとした1カ月物入札型ターム物貸出(TAF)の導入や、MBSなどを担保としてFRBが保有する国債を貸し出すなど、様々な措置を講じてきた。こうした措置が奏功して、米国の短期金融市場は当初に比べてある程度緊張感が緩和した。

 ただ、足元の国際金融市場の状況について中曽局長は「だんだんと周辺部に動揺が広がってきている」との認識を示し、特に注目しているLIBOR─OISスプレッドは基本的に高い
状況が続いていると指摘。「カウンターパーティ信用リスクと流動性リスクの両方が縮小しないことを背景に、緊張状態はまだ続いている」とし、今後も縮小しにくい状況との見通しを示した。

 こうした中、FRBのバランスシート(資産サイド)は昨年夏までに比べて大きく変化した。 短期の資金供給オペが大幅に増加したことを映じて、FRBは買い入れた短期国債を、現金
償還などによってその残高を減額することにより、準備預金残高が一方的に増加することを回避、翌日物金利の誘導を円滑に行うことを企図。また、すう勢的に増加してきた長期国債の
保有も減少、保有国債のうち債券貸し出しへの利用も増加した。

 この結果、FRBのバランスシートは、長期国債、短期国債ともに減少し、代わりに短期オペの比率が増加。短期国債買い入れ額はほとんど残高がなくなりつつあり、これ以上の資金供給が難しい状況に なりつつある。中曽局長は今後の対応について、FRBがこれまであまり行ってこなかった資金吸収オペなどを活用して、バランスシートを短期国債の買い入れと両建てで膨らませる方法もあるとした。

 リポートではサブプライム問題以降に欧米中央銀行が抱えた金融調節面の課題として、翌日物金利のボラティリティの高まり、ターム物金利と翌日物金利のかい離幅拡大、ドル建て金融市場のひっ迫などクロスボーダーでの波及、有担保資金取引市場の著しい機能低下、中銀のいわゆる補完貸付利用に対する民間金融機関の抵抗感の強さをあげた。

 こうした課題に対し、各国中銀では、翌日物オペの頻度・規模面の増加や、オペの長期化や柔軟化、 ドル資金の為替スワップによる供給などの措置が講じられたと論点を整理した。


● 「米SECが金融機関株の空売り制限期間を延長の公算、対象銘柄も増加へ=WSJ 」

2008年 07月 27日 フィラデルフィア 、ロイター

 米証券大手の幹部らは、米証券取引委員会(SEC)が金融機関株の空売り制限期間を延長する可能性があるとみている。また規制の対象銘柄も増やす公算が大きいという。米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が27日、電子版で伝えた。

 空売りの制限期間は29日で終了する。証券幹部らは、SECが対象を現在の19金融機関から拡大すると予想しているという。同紙によると、証券幹部やロビイスト、ヘッジファンド業界の代表らは週末、SECと協議を行い再考を求めた。

 ヘッジファンド業界団体は25日のSECとの電話協議で、SECが期間を延長するとともに、対象銘柄に保険会社や建設会社を含めることを検討しているとの印象を受けたという。同紙によると、SECはまた、空売り規制を恒久的なものにするよう取り組んでいる。SECの政策担当者は選択肢を絞り込んだ上で、早ければ28日にSEC4委員に提唱する可能性があるという。現時点でSEC広報官からコメントは得られていない。

 ネット上にあったコメント。 制度を恒久的にしようなどと言っているが、市場を小手先で操作しようとするとしっぺ返しを食うことをわかっているのか。それでも、一時的であれ、効果があるのも事実。今週が山と見る、


● 2008年7月26日(土)に、住宅公社(救済)法案 Housing and Economic Recovery Act of 2008 が上院で決議され通過した。元々は住宅ローンの借手(かりて)救済 Housing Reform という名目で貸し手の金融機関をも救済 するために議論されていた。

 ところが、例のGSE(ガヴァメント・サポーテッド・エンタープライズ、政府支援企業である、ふたつの住宅公社) 危機説が流れてからは、「GSE救済法案」という雰囲気になり、出来上がってきた法案は下記リンク先にあるとおりだ。全部で670ページ以上ある。

http://www.house.gov/apps/list/press/financialsvcs_dem/
hr3221_bill_text.pdf

Housing Reform として議論されていた間は、ブッシュ大統領は「拒否権発動を辞さず」という絶対反対という態度を貫いてきた。議会主導で、目下の金融危機を乗り切ろうとする動きに、執行部(行政権)として泥を塗られた感じがするからだ。 ブッシュ政権の態度が明確に変わったのは、法案が「GSE救済」の色を濃くしてからだ。

 実際、このHousing Reform関連法 については、この10月1日から施行だが、GSE救済に関しては、大統領の署名があり次第、すぐに有効となるらしい。それくらい緊急を要する話だったのだ。 それとも、最初からGSE救済を念頭に置いていたのではないか。

 そして、法案名 の一部に、Economic Recovery 「景気回復」 とあるとおり、中身は住宅ローン問題やGSEに限ったものではない。 自動車メーカーのクライスラーの救済を念頭に置いた項目も盛り込まれている。

 GSE救済については、Paulson財務長官に一任ということらしい。肝心の、大量の住宅ローンの焦げ付き者の発生の問題については、今まで同様 「やってますよ」 というポーズだけであり、実質はあまり効果がないようだ。 引き続き、全米で、住宅価格下落とForeclosureの津波は続いている。


●「米金融危機:自己責任原則の放棄で米国は弱体化、ドルは凋落 」

2008年 07月 18日  ロイター、東京   森 佳子 記者

 信用バブル崩壊後の不良債権問題の深刻化で追い詰められた米国は、「自己責任原則」や「時価会計ルール」など米国社会の真髄を貫くルールを自ら放棄しはじめた。

 これは急場しのぎとしては有効かもしれないが、世界の信頼を損なうことで、米国の弱体化は加速し、基軸通貨ドルの凋落の歩みを早め、将来に取り返しの付かない禍根を残すことになるとの見方が世界の投資家の間で聞かれる。

 <自己責任原則の放棄>
 金融界に限らず、米国社会の根幹をなすルールは「自己責任原則」であり、これを法律に例えれば米国の憲法のようなものだ。
 しかし、3月に資金繰りに窮した米証券ベアー・スターンズに緊急融資枠を設定して救済をはかったことを皮切りに、このところ米国が様々な場面で自己責任原則を放棄するケースが目立ってきた。

 「インベストメント・バンクが先導した信用バブルが弾け、金融界が苦境に陥ったことで切羽詰った米国は、とうとう自己責任原則という『踏み絵』を踏んでしまった」とファースト・インターステート・リミテッド香港社長、中山茂氏は指摘する。
 自己責任原則は時価会計ルールと並んで、他国が米国スタンダードを受け入れる際に「フェアな基本理念」として認識され、米国スタンダードは世界的な広がりをみせた。

 「これを放棄することは、米国の自己否定を意味し一番の強みを捨てたことになる。今後、米国の信用は、国際的にも国内的に失墜し、弱体化が加速するだろう」と中山氏は予想する。

 ベアー救済劇の翌日には、米連邦準備理事会(FRB)が米証券会社に対する連銀窓口貸出(Primary Dealer Credit Facility=PDCF)の開始を発表したが、証券会社は本来FRBの監督外にある業態で、流動性供給はFRBの使命を逸脱した異例の措置だ。

 だが、バーナンキFRB議長は、当初は半年間の期限付きだったPDCFを年末を越えて延長する用意があるとまで表明した。
 今月14日、米政府は経営難が懸念されている2つの政府系住宅金融機関(GSE)、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ) と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の救済に着手、現在は1公社につき22億5000万ドルの融資枠の上限を引き上げ、両公社の資本増強のために株式を購入する方針を表明。さらに連銀窓口貸出枠で資金供与する提案もした。

 米国が自己責任原則を放棄してまで、必死にウォール街を救済するのは、マイナス成長やリセッションを回避したいからだ。
 だが、著名投資家のジム・ロジャーズ氏は「リセッションはシステムに存在する過剰を取り除くという意味で『善』である」と言う。

 「米国が過剰(マネー)にまみれたウォール街を救済して、リセッション回避をはかることは愚かしく、米国は、実際にリセッションを体験するより、はるかに高価な代償を支払うことになるだろう」とし、「無分別な資金供給によって、FRBは自らの衰退を招くだけでなく、激しいインフレを招き、基軸通貨としてのドルの終焉を早めるだろう」とロジャーズ氏は警告する。マネーモーニングとのインタビューで答えた。同氏は米政府のGSE支援について「完全なる自己破滅的行為」と評している。

 都合に合わせてルールを変更するということは、米国が政治の世界で何度もやってきたことだ。これが経済の世界でも通用するのか、目下、金融市場に試されている。

 ドルに対するバスケット通貨(ユーロ、円、ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフラン)の加重平均値であるドルインデックスは、2001年7月の120.90から4割超下落して3月には過去最低の70.689となった。現在は72台を推移している。

 ロジャーズ氏は、米国債はここ1―2年の間に現在のトリプルAから格下げされるだろうと予言する。

 <時価会計原則の裏技>
 米国は金融機関の決算について、時価会計ルールを早々と放棄し、違法ではないものの異なる会計処理を活用し、国を挙げて金融機関の粉飾決算の片棒を担いでいるとの批判が、米国以外の国々で上がっている。

 「かつて米国は、日本に対して時価会計ルールの厳格適用を声高に要求し、日本の金融機関を潰しておいて、自分が困ったときには、勝手にルールをネジ曲げるのは許しがたい」(本邦金融機関)。「時価会計のポイントは、ガラス張りで全体が見渡せることだ。少しでもルールを曲解すれば、全てが台無しになる。米国がフェアなアカウンティングとして世界に売り込んだものを、自らの都合で柔軟運用するとは、呆れて物が言えない」(アジア系金融機関)と絶句する。

 米財務会計基準審議会(FASB)は昨年、金融商品の会計処理における公正価値の算出基準としてFAS157号を導入し、米大手金融機関でも採用している。FAS157号の下では、時価会計が適用されるのは、レベル1と呼ばれる資産のみだが、米金融機関保有の金融資産のうち、レベル1に区分されるものは3割にも満たない。他方、時価算定が困難な資産であるレベル3資産は増え続けている。

 米国が政府を挙げて支援しているGSEの会計も柔軟運用の一例だ。「ファニーメイについてはバランスシートで資産の評価が甘いと言える。レベル3資産については十分な引き当て・償却を行っておらず、同公社が保証する債券の引当金(負債サイド)も全く十分とは言えない」と東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏は指摘する。

 斎藤氏によれば、ファニーメイは資産がわずか2%目減りしただけで、株主資本を超える損失が発生するほど資本が脆弱な状態で、損失処理ができるほどの資本増強が早急に必要だという。プール前セントルイス地区連銀総裁は「両公社が破たん状態にあると認識するべきだ」と述べている。斎藤氏によれば米金融機関が活用する会計の裏技には少なくとも3種あるという。

 第1に、損失が出ている保有証券を「満期まで保有するつもりで、売却可能で流動性が高い」というカテゴリーに分類することで、「簿価」評価し、評価額の変化が永続的と判断されるまでは「その他包括的利益」に繰り入れる。これによって評価損は表面化しない。

 第2に、レベル3資産(流動性も指標もなく各社が独自の推定によって評価する資産)をヘッジするためのデリバティブ資産についてのみ未実現収益を計上し、損益計算書のトレーディング収益に入れる。実際、米投資銀行はレベル3資産から巨額の未実現収益を計上している。

 第3に、大きな損失を出した場合は、金融当局に時価評価を一時凍結してもらう。バーナンキ議長は「時価会計は、時に投げ売りを誘って市場を不安定にする側面がある」との認識を示し、「必要であれば一時凍結することもありうる」ことを示唆している。 (ロイター日本語ニュース 森佳子 編集 橋本浩)

●「日本の金融機関が保有する米GSE関連債、農中の残高は5.5兆円」

2008年 07月 18日  東京、ロイター

 米当局が政府系住宅金融機関(GSE)の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の2社の支援策を打ち出した。

 GSEの関連債券について、2008年3月末現在の日本の主要金融機関の保有状況を調査したところ、農林中央金庫は、GSE2社の機関債と住宅ローン担保証券(RMBS)の合計で5.5兆円で、三菱UFJフィナンシャル・グループの3.3兆円を上回り、国内最大規模の保有額となった。

 また、生命保険会社では、住友生命が開示していないが、複数の関係者によると、日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命の大手4社のGSE債の保有状況は、機関債とRMBSの合計で4兆円を超えた。個別にみると、日本生命は2兆5000億円、第一生命は9000億円だった。

 大手証券会社では、大和証券グループ本社がGSE2社のRMBSを1811億円保有している。野村ホールディングスについては、RMBS業務から撤退し、米国のプライマリーディーラーの資格も返上したたため「ポジションは少量」(広報)だという。大手銀行3グループのGSE関連債の保有残高の合計は4.7兆円だった。

 ロイターの聞き取り調査による2008年3月末の国内金融機関のGSE債の保有状況の一覧は以下のとおり。

◎銀行           GSE関連債 (備考)
三菱UFJ         3兆3000億円 (ジニーメイ含む3社分)
みずほFG         1兆2000億円 (全額ジニーメイ)
三井住友FG        2198億円 (ジニーメイ含む3社分)
   計          4兆7198億円
◎系統         GSE関連債合計   うち機関債   うちRMBS (備考)
農林中金        5兆5000億円   2兆円     3兆5000億円 (ファニーメイ・フレディの2社分)
◎生命保険       GSE関連債合計   うち機関債   うちRMBS (備考)
日本生命        2兆5000億円  4700億円   2兆1621億円 (ジニーメイ含む3社)
第一生命          9000億円  5000億円   4000億円 (ファニーメイ・フレディの2社分)
明治安田生命         900億円      0円    900億円 (2社分)
三井生命           943億円   100億円    843億円 (2社分)
富国生命            22億円    22億円    0円 (フレディのみ1社)
◎損害保険       GSE関連債合計   うち機関債   うちRMBS (備考)
東京海上HD         530億円   430億円    100億円 (ジニーメイ含む3社)
損保ジャパン         740億円    30億円    710億円   (2社分)
三井住友海上HD       440億円   440億円       0円 (2社分)
◎証券         GSE関連債合計   うち機関債   うちRMBS (備考)
大和証券G本社          ――     ――     1811億円 (2社分)


● 「NY市場トリプル安 株・ドル・債券、政府財政悪化の懸念 」

日経新聞 2008年7月12日

【ニューヨーク=山下茂行】 11日の米金融市場では金融システム不安や景気の先行き警戒感からドル資産が全般に売られた。ダウ工業株30種平均が前日比128ドル48セント安の1万1100ドル54セントと、2006年8月以来の安値で終えたほか、債券、ドル相場がそろって下落する「トリプル安」の格好となった。

 11日の米金融市場は住宅公社2社についてポールソン財務長官が国有化など政府による救済をひとまず否定したことなどが嫌気された。株式市場ではダウ工業株30種平均が大幅安で、終値で年初来安値となった。一時1万1000ドルの大台を割り込んだ。

 外国為替市場ではドル売りの動きが広がり、円相場は前日比80銭円高・ドル安の1ドル=106円20―30銭で取引を終えた。
 長期債相場も大幅反落となり、10年物国債利回りは前日比0.16%高い(価格は安い)3.96%で取引を終了。景気悪化が懸念される局面では「安全資産」との位置付けから債券市場に資金が流入するのが普通だが、この日は政府による住宅公社の支援が避けられなくなり、政府財政が悪化する恐れがあるとの見方から債券が売られた。

●「混乱解消に日本の資金も サブプライム問題で金融相 」

2008年7月15日 共同通信、クアラルンプール

 渡辺喜美金融担当相は15日、マレーシアの首都クアラルンプールで開かれた「世界経済フォーラム東アジア会議」に出席し、米サブプライム住宅ローン問題をきっかけにした金融市場の混乱を解消するため、 日本の資金が必要になるとの見方を示した。

 渡辺金融相は、サブプライムローン問題の影響で巨額損失を出した欧米金融機関の資本増強には公的資金の投入が必要とした上で「それぞれの国の財政資金だけでは多分まかなえないだろう」と指摘。 サブプライムローン問題で日本が受けた影響は欧米に比べ少なかったことを踏まえ 「最後の出し手になるかもしれない。日本は官民とも長期のお金を出すのが特徴だ」と強調した。ただ、具体的な資金拠出の方法には言及しなかった。

 渡辺喜美金融相は15日、クアラルンプールで開幕した世界経済フォーラム東アジア会議で、米住宅ローン問題をきっかけにした金融市場の混乱を収束するには欧米の巨大金融機関への公的資金注入が必要になるとの認識を示した。「被害を比較的受けていない日本が最後のとりでになるかもしれない」と述べ、米欧政府が動き出せば、日本も協調して資金協力する考えも披露した。

 

●「農林中金、米シティの資産5千億円分を購入 」

2008年7月16日 朝日新聞

 農林中央金庫は米金融最大手シティグループから、シティの資産をもとに組成した総額約5千億円分の証券化商品を購入した。 サブプライム問題で巨額の損失を出し、資本増強と資産の大幅な圧縮を進めるシティの要請に応じた。サブプライムで痛手を負った欧米金融機関が投融資に慎重なのと対照的に、損失が比較的少なかった日本の金融機関の積極姿勢が目立っている。

 農中が買ったのは、シティが保有するクレジットカード・自動車ローン債権などから組成した証券化商品。今年1月ごろから複数回にわたって買い取りを進めた。

 シティの昨夏以降のサブプライム関連損失は、米金融大手で最大の約460億ドル近くに膨らんだ。シティは中東の政府系ファンドなどの出資を仰ぐ一方、従来の拡大路線を転換し、5月には4千億ドル(約42兆円)分の資産を売却する方針を打ち出した。

 シティのカード・自動車ローンなどは返済能力の高い利用者が多く、優良債権が多いとされる。農中にとっては「資産の安全性が高い割に利回りが良い。金融市場の混乱による欧米金融機関の投融資意欲の減退傾向が逆にチャンス」(幹部)だという。

 日本の金融機関には、欧米企業の資金調達の際にも出番が増えている。6月には三井住友銀行の主導で米IBM向けに500億円の融資案件をまとめ、今月11日には、みずほコーポレート銀行が主幹事となってスウェーデンのトラック大手ボルボ・グループに総額1100億円を協調融資すると発表した。


●【円ドル人民元】「米住宅公社救済協力へ外貨準備活用案浮上」

産経新聞 2008年7月17日 コラム

 7月16日、渡辺喜美金融担当相は訪ねてきた米政府元高官に語りかけた。 「米住宅抵当金融公社の経営不安を憂慮しています。まず、日本は政府の保有分はもとより、民間に対しても住宅公社関連の債券を売らないように言います」 うなずく米要人に対し、渡辺氏は続けた。

 「米政府が必要とすれば日本の外貨準備の一部を公社救済のために米国に提供するべきだと考えている」昨年8月の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライム・ローン)危機勃発(ぼっぱつ)後の金融不安は、最近表面化した連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の2公社の経営危機でさらに深刻化している。

 米政府や連邦準備制度理事会(FRB)は公的資金注入など公社救済策を検討中だ。しかし、公的資金必要額は住宅価格下落に比例して膨張する。両公社の住宅ローン関連債権は米住宅ローン総額の半分近い5兆2000億ドル(約550兆円)で、日本の国内総生産(GDP)に相当する。

 両公社が発行している住宅関連証券が投げ売りされるようだと、米国のみならず欧州、日本、中国など国際的な信用不安になる。そればかりではない。米国債への信用は損なわれ、ドルは暴落しかねない。株式の低迷に加え、米国債とドルが暴落すれば、ドルを中心とする国際金融体制は崩壊の危機に瀕し、世界経済全体が根底から揺らぐ。

 渡辺案は、米国の自力による住宅公社再建には限界があるとみて、この6月末で1兆ドルを超えた日本の外貨準備を米国の公的資金注入の資金源として提供する思い切った対米協調である。
筆者はこの考え方について、在京米金融筋で米国務省のアドバイザーに感想を聞いた。彼は言う。「同盟国日本が率先して支援の手を差し伸べてくれると、われわれは日本にかつてなく感謝するだろう。

 日本は救済パッケージで主導性を発揮し、中国にも働きかけてくれればより効果的だ」 中国の外貨準備は6月末で1兆8000億ドルに達し、米国債や米住宅公社関連債券の保有額でも日本をしのぐ世界最大の水準とみられている。中国は貿易や投機を含む投資で流入してくるドルを当局が買い上げ、主として米債券に投資している。ドルが暴落すれば中国も巨額の損失を直接被ることを中国政府は自覚しており、日本が国際協調を呼びかけると同調する可能性は高い。

 思い起こすのは、1997年のアジア通貨危機である。日本の財務省は通貨危機打開のために「アジア通貨基金」設立構想を推進した。ところが米クリントン政権が強く日本案に反対し、日本主導を嫌う中国と語り合って、アジア通貨基金構想をつぶした。今回の危機は米国を震源地とする巨大地震であり、中国も米市場の安定は自国経済の死活問題である。渡辺金融担当相は「まだ私案の段階だが、中国にも協力を呼びかけるつもり」と言う。米金融危機が今後さらに悪化すれば、有力案として浮上しよう。

 

● 「米住宅ローン大手、インディマックが破綻 」

日本経済新聞 2008年7月12日

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080712AT2M
1200W12072008.html

 【ワシントン=藤井一明】米連邦預金保険公社(FDIC)は11日、米地方銀行で住宅ローン大手、 インディマック・バンコープの業務停止を発表した。FDICが管財人となり、預金や資産を引き継ぐ。

3月末時点の資産規模は320億ドル(約3兆4000億円)、預金量は190億ドルだった。住宅ローンで急成長した大型金融機関の破綻は米金融システムへの懸念をさらに強めそうだ。

 米国で業務停止となった金融機関としては、1984年のコンチネンタル・イリノイに次ぐ過去2番目の規模。FDICによると、預金保険が今回の措置に伴い預金の保護などのために負担するコストは 40億―80億ドルと見込まれる。業務は週明けの14日から通常通り継続。FDICは受け皿機関の選定を急ぐ。

 インディマックはカリフォルニア州が拠点。「オルトA」と呼ばれる住宅ローンで業務を拡大してきた。 オルトAは信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)と優良な貸出先の中間にあたる顧客層へのローン。サブプライムと並んで焦げ付きが膨らんでいた。

●「米政府系住宅金融だけで懸念払しょくにはならない=インベストラスト 福永氏 」

2008年 07月 11日  インベストラスト代表取締役、福永博之氏

 米紙ニューヨーク・タイムズ電子版によると、ブッシュ政権の複数の高官は政府系住宅金融大手のファニーメイと フレディマックについて、問題が悪化すれば 1社もしくは両社を政府の管理下に置く計画を検討しているようで、これ自体は株式市場にとってプラスの材料だ。だが、消化不良のところもあるようで、買い戻しの勢いは限定的なものにとどまっている。

 ポールソン米財務長官やバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が足並みを揃えて金融システム安定化に向けた動きを強めていることで、市場では逆に米金融機関に対する懸念につながっている面もある。 政府系住宅金融が解決すればすべての懸念が払しょくされるということにはならない。


●「ファニーメイとフレディマックの破たん回避を-米議員が相次ぎ発言 」

2008年7月10日 ブルームバーグ

 米住宅金融大手のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)は、つぶすには大き過ぎる-。 共和党や民主党幹部からこうした発言が相次いでいる。

 ファニーメイとフレディマックの株価は1991年以来の安値に下落しており、 両社が発行した社債の5兆2000億ドル相当を世界各国の中央銀行や年金基金などが保有している。

 下院金融委員会のスペンサー・バッカス議員(共和、アラバマ州)は 同日、社債保有者は破たん防止措置を当てにできるかもしれないが、 株主は米政府が両社の株価下落を食い止めるとは期待できないだろう、と語っている。

 ファニーメイの10日株価終値は前日比14%安の13.20ドル。 今年これまでに67%下落した。フレディマック株は22%安の8ドル。年初来下落率は約 77%に達した。

 

● 「金融機関の実態に再び疑いの目 「レベル3資産」の膨張に要注意」

週刊ダイヤモンド 2008年6月20日ぐらい号

藤戸則弘(ふじとのりひろ) 三菱UFJ証券シニア投資ストラテジスト

 米国で金融株が、再度軟化の気配を見せている。シティグループは、3月17日安値17.99ドルから4月28日高値27.35ドルまで+52.0%の上昇を見せた。ところが5月以降は軟調に転じ、5月21日には21.01ドルまで下落。最安値まで3ドルという不安な水準である。大手証券・投資銀行のメリルリンチ、ゴールドマン・サックス(GS)等の株価も、5月初めに戻り高値をマークした後に、同様の軌跡を描いている。

 空売り勢の買い戻しに一巡感が出たこともあるが、最大の要因は、金融機関の実態悪に投資家の目が再び向き始めたことであろう。「3月の悲観」の後、「4月の楽観」で投資家のマインドは大きく改善してきた。しかし、5月中旬あたりから潮の流れが変化し始め、アナリストから欧米金融機関の実態悪、追加評価損観測のレポートが出始めている。

 危惧される要因のひとつは、「レベル3資産」(低流動性で時価評価が困難な資産)の膨張だ。大手証券・投資銀行のなかには、「レベル3資産」が自己資本の倍以上に膨張している企業がある。複雑な証券化商品を適正に評価するのはきわめて困難だ。なかには、ABX指数やCDS指数の動向から「この程度か」とアバウトな評価も含まれており、そこに恣意性が働くリスクがある。厳格な評価法を採用すれば、たちどころに評価損が膨張する恐れもあろう。

 また、3月の悲観局面でヘッジ比率を高めた金融機関があり、その後の価格反騰で「ヘッジロス」が膨張したとの報道もある。その金額は、最大で15億~20億ドルとされており、最もロスの大きな企業は第2四半期も赤字決算となる可能性が高まっている。

 アナリストのなかには、2009年末までに、金融機関全体の追加評価損は1700億ドルに達するとの観測も出ており、超悲観の反動で楽観に振り過ぎていた振り子が、再度バックし始めている。


● GS、モルガン・スタンレー、リーマン・ブラザーズといった大手証券・投資銀行の第2四半期決算(3~5月期)は、6月中旬前後に発表される。もし、そこでさらなる評価損の拡大があった場合には、投資家はサブプライム問題の根の深さを再認識させられることになろう。欧米の金融株が軟化すれば、日本の金融株も悪影響は避けられない。「4月の楽観」シナリオが蜃気楼とならないためには、やはり公的資金の投入による抜本解決が必要と思われる。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

このページを印刷する