「69」サブプライム危機についての以下のWSJ紙の2007年10月11日付け の記事は重要だと私は判断しました。2008.1.5

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副島隆彦です。今日は、2008年1月5日です。

以下のWSJ(ウォールストリート・ジャーナル)紙の記事は、重要だと、私は判断しました。以下にあるとおり、低所得者(貧乏人)向けの高金利のサブプライムローンだけが問題なのではなくて、 「高利のローンは中流層や富裕層の地域でも急激に増加している」 という事実が重要なのです。 それでここに載せます。 副島隆彦記

(転載貼り付け始め)

2007年10月11日

  今年になりアメリカの住宅ローン市場の実態が明らかになるにつれ、エコノミストたちは低収入、マイノリティ、都市在住の人々へ貸し出された「サブプライム」ローンについて説明するのに追われている。

 しかし過去十年にわたる1億3千万件以上の住宅ローンに対して行われた分析により明らかになったことは、破綻の懸念のあるローンは、全国至る所で貸し出されており、それは僻地の小さな街から大都市中心、裕福な郊外にまで及ぶ。

 以下のウォール・ストリート・ジャーナル紙による分析によれば、2004年から2006年の間、 すなわち住宅価格が米国の多くの地域で最高値をつけた頃、2500以上の銀行、 貯蓄銀行、消費者信用組合、住宅金融会社などが合計1兆5千億ドルもの高利ローンを貸し出したことが示されている。

 ほとんどのサブプライムローン(それらは いい加減な信用供与や資産の過大評価の元に 延長して貸し出されている)もこれらに含まれる。 昨年貸し出された住宅ローンに占める高利のローンの比率は、2004年の16%から伸びて、29%になっている。

 過去三年の間に貸し出された4,360万件のローンの内、約1,030万件が高利のローンである。高利ローンの比率は、メイン州ルイストンからフロリダ州オカラ、ワシントン州タコマにいたる68の大都市圏ではさらに高い比率に跳ね上がる。

The United States of Subprime
Data Show Bad Loans  Permeate the Nation;  Pain Could Last Years

By RICK BROOKS and CONSTANCE MITCHELL FORD

October 11, 2007

http://online.wsj.com/article/SB119205925519455321.html

  As America’s mortgage markets began unraveling this year, economists seeking explanations pointed to “subprime” mortgages issued to low-income, minority and urban borrowers.

 But an analysis of more than 130 million home loans made over the past decade reveals that risky mortgages were made in nearly every corner of the nation, from small towns in the middle of nowhere to inner cities to affluent suburbs.

 The analysis of loan data by The Wall Street Journal indicates that from 2004 to 2006, when home prices peaked in many parts of the country, more than 2,500 banks, thrifts,  credit unions and mortgage companies made a combined $1.5 trillion in high-interest-rate loans.
Most subprime loans, which are extended to borrowers with sketchy credit or stretched finances, fall into this basket.

 High-rate mortgages accounted for 29% of the total number of home loans originated last year,
up from 16% in 2004. About 10.3 million high-rate loans were made in the past three years, out of a total of 43.6 million mortgages. High-rate lending jumped by an even larger percentage in 68 metropolitan areas, from Lewiston, Maine, to Ocala, Fla., to Tacoma, Wash.

 サブプライムの影響を調べるため、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米国の住宅ローン情報公開法に基づき貸し手が記録していた2億5000万件以上の住宅ローンの申請・発行記録を分析した。

 サブプライムローンは、当初こそ、信用情報に傷のある 低収入の顧客を対象にしていた。しかしデータによれば、実態は、サブプライムの借り手は都心部の低収入層が圧倒的多数だという一般通念に反していることが明らかになった。

 確かに、貧しい地域では高利ローンの比率が高いことは事実であるが、数値が示すところによれば高利のローンは中流層や富裕層の地域でも急激に増加している。

 銀行その他の住宅ローンの貸し手は、顧客の信用履歴や頭金が少額であることを理由に、高リスクと考えられる借り手には高い金利を長い間課してきた。住宅価格が過去十年の
間、全国的に急上昇を続けたため、より裕福な家庭までが、従来の基準では認められなかった高価な家を購入するために高利のローンを利用するようになった。

 高利のローンとは、同じ期間の米国公庫の利率より3%以上高い金利のローンを指す。 ウォール・ストリート・ジャーナルの調査結果が示すのは、サブプライムの余波は、収入力や人種や地域の違いを越えて、多くの人の認識以上に広範なアメリカ人に打撃を与えているということである。

 分譲住宅の投機で一攫千金を考えている投資家から、持ち家の夢を追うワーキングプアまで、サブプライムローンは米国の金融システムの核心に深く浸透した。そしてそれは今、日々深刻化する苦悩をもたらしている。

 データによれば、無軌道なサブプライムの最悪の乱発の多くは優に2006年まで続いており、その痛みは、特に住宅価格が停滞し続けるなら、来年どころかそれ以上も続く可能性がある。行き詰まりが表面化するまで数年かかる借り手もいるだろう。

 「住宅価格が非常に高かった頃、それらを手にする資力のない人々に家を買わせようとする攻撃的な住宅ローン産業が跋扈しました。それは砂上の楼閣だったのです」と ウェルズリー大学のカール・ケイス経済学教授は言う。「それらを精算する時期が来ました」

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の分析によれば、ワシントン・ミューチュアル社の「ロング・ビーチ・ローン」などのいくつかの主要なサブプライムローンは一年あるいはそれ以上前から、貸し出し基準を縮小あるいは引き締めるようになった。しかし 都市銀行や貯蓄銀行がその穴を埋めた結果、本来なら冷却化するはずの住宅市場を持ちこたえさせる結果になった。

 データが示すのは、サブプライムローンの波をかぶった米国の多くの地域で、財政の苦しみは長く続きそうだということである。破綻の懸念のあるローンの多くは、まだ実際に破綻していない。例えば、6,000億ドルものゆとり金利サブプライムローンが
2008年末までに(当初の低金利期間を終えて)高金利に移行する予定であり、ますます多くの借り手が支払いを滞らせることになろう。

 昨年九月、プリンターとコピー機の販売店員をしているダーラ・ボールは、次のように語る。「当初金利が 8.2%のゆとり金利サブプライムローンを利用してラスベガスに46万ドルの家を購入した」その時の彼女の弁では、「一年後に金利が14%に上がって月々の支払いが3,700ドルから8,000ドルに上がる前に、ローンの借り換えをするつもりだった。」

 だが昨年の間に、彼女の地区では同等の家の価格が31万ドルにまで下がってしまい、新たに46万ドルの ローンに借り換えるには、家の価値がそこまで戻らない限り不可能になったという。
その可能性はほとんどない。彼女はローンの支払いを止めてしまった。そして貸し手に交渉しているところだという。「どっちみち私は自宅を失うことになるわ。どうして払い続ける必要があるかしら」

 フロリダ州フォートマイヤーズは避寒地で、発明王トーマス・エジソンの出資で何十年も前に椰子の木の並ぶ大通りがつくられたことで知られている。最近、この都市は深刻化する米国の住宅ローン危機の代表例として急速に知られるようになった。この地域の中古住宅の販売における中位価格は2005年12月から22%も下落した。抵当の差し押さえ件数はずっと空前の規模を続けている。しかも終わりはまったく見えない。

 2004年から2006年の間に、85億ドル以上の高利の住宅ローンがケープコーラルからフォートマイヤーズの大都市圏で発行された。借り手はこのローンを利用してこれまで以上になく背伸びをして、その結果不動産価格はインフレ状態になった。昨年この地域で貸し出されたローンの5件に2件は高利のローンであり、この比率は2004年の比率の2倍を越える。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、最も急伸している高利のローン市場と、レアルティトラック社とフォアクロージャーズ・ドットコムがまとめた差し押さえ件数のランキングとを比較した。例えばカリフォルニア州ストックトンでは、昨年貸し出された高利のローンは住宅ローン全体に対して33%に上り、2004年の13%から増大している。

 今年の前半だけで、ストックトン地域では8,169件の差し押さえが執行され、これは27世帯に1世帯の割合に上る。カリフォルニア州アーヴァインのレアルティトラック社に言わせるとこれはストックトンを差し押さえの首都に押し上げた。

 マイアミ、デトロイト、ラスベガスを含む10の大都市圏の内7つまでが最も高い差し押さえ率に苦しんでいる。これらの地域では、借り手は米国全体よりももっと高速に高利ローンに突進していた。アメリカン・プランニング・アソシエーションの次回報告に載る調査報告の中で、アトランタのジョージア工科大学のダニエル・イマーグルック准教授によると、「2006年初期に発生した差し押さえ事例と、2003年にサブプライム貸し出しの多かった都市との間にも、同様な関係が見られる」という。

 暗い兆しばかりでないのは事実だ。新規に貸し出された高利のローンの比率は、2005年に88%に跳ね上がった後、昨年わずか2%の400万件に減少している。これは数社の最も攻撃的な貸し手が倒産し、残りの貸し手が信用供与基準を引き締めたことを反映している。住宅販売の減速により、住宅ローンの需要にブレーキが掛かり、借り手は「ゆとりローン」とかその他のトリックを仕込んだローンに対して慎重な態度を取るようになった。

 しかし、昨年のデータは、住宅市場が弱含んでいるにもかかわらず、いくつかの貸し手は リスクの高いローンの貸し出しに躍起になっていることを示す。都市銀行と貯蓄銀行は、昨年発行された高利のローンの52%を占めており、2005年の44%から増大している。

 アトランタのサントラスト銀行は、長い間保守的な融資姿勢で知られていたが、その住宅融資部門は、高利のローンの貸し出し数を二倍以上に増やした。アリゾナ州スコットデールのファーストナショナルバンクホールディングスの一部門であるファーストナショナル銀行など、より小規模の銀行もまた、昨年に高リスクのローン貸し出しを急増させた。

 ファーストナショナルのローン融資部門の責任者であるジョエル・ゴッテスマンによると、これらの急増の多くは借り手が第二のローンを組んだことを反映しているという。それ以降、この銀行はこの種のローン貸し出しを縮小したと彼は説明した。

 サントラスト銀行の急増に関しては、スポークスマンによれば、「この地域への参入が遅かったことが原因」という。さらに金利の変化がこの増大を押し上げた、とも説明した。

 より高収入のある層も、さらに高額の住宅購入のためにこの種のローンを利用するようになった。年間収入が少なくとも30万ドル以上ある、信用履歴がホワイトの借り手ですら、高利のローンの件数は昨年74%も急増したことが数値によって示されている。

 住宅ローン 全体で見たとき、一件平均の貸出額は昨年1%しか増えていないのに対し、高利ローンの平均貸し出し額は昨年10%増えて15万8000ドルとなった。この2006年のデータは全米の 8,886の貸し手の記録を含み、米国の住宅ローン全体の80%を網羅している。

 高利のローンに関するデータは、しかし、「ゆとり金利」によって引き起こされる潜在的な将来の危機を過小評価させているかも知れない。情報公開を定めた法に従うと、いくつかの「ゆとりローン」は、高利のローンとしては現れていないのである。

 2004年より前には、貸し手はローンの値付けの詳細について報告する義務がなかったためである。 住宅ローンの貸し手の融資基準は、何年にもわたり次第に緩んできた。1977年制定の連邦法である「コミュニティ・レインベストメント法」により、銀行にはその地域での信用供与を増大させることが求められた。

 これにより多くの銀行が低収入やマイノリティの借り手に対し甘くなった。ニューディール政策時代に設立されたローン保険会社である連邦住宅局は信用の少ないかほとんどない借り手を対象としていたが、攻撃的なサブプライムローン提供者の前にそのシェアを失っていった。

 これらの商業的融資者は、借り手に対し高い金利を課してはいたが、書類をそろえる必要がなく、承認が早く、頭金もいらないと約束したので、多くの借り手には魅力的に映った。

 シアトルに本拠を置くワシントン・ミューチュアルズ・ロングビーチ・モーゲージ (2004年から2006年にかけて480億ドルの高利ローンを融資した)などの、野心的な融資者は、郊外にもサブプライムローンを押し込むために、外部のブローカーを多数
利用した。会社のスローガンは、「融資OKの力」であった。その結果は、ありとあらゆる人種・民族・所得水準・地域にわたる住宅ローンの大乱発であった。

 住宅・都市開発省の統計によると、サブプライムローン専業の貸し手の数は、1996年に141であったが2005年までに210に増大した。同じ期間に、それらの貸し手による貸出額の合計は、10倍に増大している。

 「フィラデルフィアのような、古い工業都市には貧困問題があり、それが人々がサブプライムローンを利用せざるを得なかった理由です」 とペンシルバニア大学ウォートン校の研究員であるケルビン・ジレンは説明する。

 しかし、より高価な地域、たとえばマイアミでは、2004年から2006年にかけて高利ローンの市場占有率が25%も増えたが、そういう所ではサブプライムローンは低所得層向けとは受け取られて
いなかった。それらは天井知らずの住宅コストへの回答と見なされていた。

 「それらはまったく異なるグループと言えますが、サブプライムはその両者に利用されたのです」とジレンは指摘する。 かつては、高利のローンの借り手は、その信用リスクが高い分、通常の借り手のようにはローン残高を増やすことは認めてもらえなかった。

 しかし2000年代初頭に全米で住宅価格が上昇するに伴い、貸し手は、借り手の年収に比較してより大きなローンを抱え込むこと
を高利ローンの借り手にも望むようになった。データによれば、2005年に1~4人家族向けの住宅を購入した高利ローンの借り手は、平均して彼らの書類上の年収の2.1倍のローンを組んでいた。これは通常の借り手の場合に比べて4%高い。

 クリスティーン・マクマホンは金融ブローカーとして、年に何十万ドルもの収入があり、ニューヨークのイーストハンプトンにある寝室が4つもあって270万ドル以上もする家に住んでいる。マンハッタン・モーゲージ社に勤める彼女は昨年、自宅の資産の一部を現金化するためにローンの借り換えをするのに、サブプライムローンを彼女自身で利用した。

 彼女によれば、借り換えの時、通常の貸し手は彼女にそれほど多くの現金を手にすることを許さなかったので、サブプライムローンをニューセンチュリーフィナンシャル社から利用した。同社は現在、破産裁判所の管理下にある。彼女が利用したのは当初2年間は 6.45%の固定金利で、その後、調整金利に移行するものである。彼女は金利が高く調整される前に、家を売るつもりでいる。

 貸し手たちは同様に「第二抵当」ローンも増額していた。その多くは頭金を支払うのに使われる便乗型の第二のローンである。そういう第二抵当ローンの全ローンに占める割合は2004年の12%から昨年は22%にまで増えた。この種の便乗型のローンは通常のローンよりもはるかに不履行に陥りやすいと考えられている。

 住宅価格の高騰の一因である不動産投資家の投機行為を抑えるようなことは、融資者たちはほとんど行っていない。データによれば、昨年、高利のローンの13%は、所有者によって居住されない物件へのローンとなっており、これは2004年の9%から増大している。 専門家によれば、そういう非居住物件は所有者自身が住む物件に比べ差し押さえリスクが高いという。

 不良ローンを最後までつかまされるのは誰だろうか。ウォール街は、たくさんのサブプライムローンを買い取り、それを証券にパッケージ化して投資家に売りつけた。データが示すのは、ブームがしぼみ始めると、貸し手は、最もリスクの高いローンの大半を投資家に転嫁したということだ。

 データによると、2004年に発行された高利のローンの約63%が同じ年に売却されており、全住宅ローンで見ると68%が売却された。昨年は、高利のローンの73%が売却され、全住宅ローンでは67%であった。

 昨年、平均的な高利ローンの利率は、同じ償還期間の財務省証券 に比べて5.6%も高かった。この差は2005年には5.3%、2004年には4.8%であった。

 最も被害の大きい地域では、今後何年もの間ローンの借り手、貸し手、建設業者とも、数字に苦しめられることになる。

 フォアクロージャーズ・ドットコムによると、今年7月末まで、フォートマイヤーズを含むフロリダ州リー郡でのローン破綻と差し押さえ競売の発生率は全米二位を記録した。競売が成立しなかった住宅在庫の数は1万5000にも膨れあがり、結果的に、利益の出る価格での転売を望んでいた何人かの投資家は、望まない価格や受け入れがたい価格での売買契約をせずに済んでいたりする。

「フォートマイヤーズは全米最悪の住宅市場と言っていいと思います」と先月、ホーヴァニアンエンタープライズ社の執行副社長兼最高財務責任者のJ.ラリー・ソースビーは嘆いた。3月に、ニュージャージー州のレッド銀行はフォートマイヤーズの混乱を理由に9300万ドルの税引き前借方を計上した。

 先月、レッド銀行は3日間、全米規模の「世紀に一度」のセールを行い、その中でこの地域の住宅の値段を大幅に切り下げた。

 来週、差し押さえ物件競売を手がけるハドソン・アンド・マーシャル・オブ・テキサス社は、フォートマイヤーズとその近郊で貸し手によって差し押さえられた住宅約70軒を、競売にかけることになっている。

 好条件で入札して取り逃がしたとしても、入札者には次の機会がたくさんある。同じオークションでフロリダ州の他の300軒以上の差し押さえられた家が売りに出されるからだ。  (記事終わり)

http://online.wsj.com/article/SB119205925519455321.html

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

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