「61」 「サブプライム危機から信用市場危機へ」(3) ABCP市場の収縮(クランチ)の仕組み。2007.10.25
副島隆彦です。今日は、2007年10月25日です。
さらに「サブプライム危機」関連の、過去の3ヶ月の間の記事を載せます。私は、あちこちに置いてある自分のPCがあって、それぞれのPCに、「8月17日以来の、4、5月からすでに崩壊を始めていたサブプライム危機・信用市場危機」の記事や、コメントや、評論文を集めていました。それらを、なるべく、時系列(クロニロジー)で、ここに載せようと、ずっと考えていたのです。
ところが、どんどん、新しい記事と情報が、あちこちの自分のPCに、乱雑に溜(たま)って行きましたので、仕方が無いので、一塊(ひとかたまり)ずつ時間順不同で、載せてゆきます。
自分の目に留まった、重要な記事ばかりのはずですが、中には、玉石混交で不用なものも、あるかもしれません。それらの判定は、今の嵐が過ぎ去って、一段落する2年後ぐらいに判明するでしょう。今から、大きな嵐が襲ってくるのですから。
(転載貼り付け始め)
● 2007年9月7日 米ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)
グリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は最近の市場の動揺について、 株価が暴落した87年の「ブラックマンデー」などの歴史的な混乱と 「酷似している」との見解を表明した。
前議長は9月6日夜、ワシントンで開かれた会合で「この7週間、 目の当たりにしている動きは多くの面で98年や87年と同じ」と指摘した。98年は有力ヘッジファンドLTCMの破綻(はたん)があった。さらに前議長は「1世紀前の金融恐慌などにも似ている」と述べ、危機感をにじませた。
前議長は経済活動の縮小をもたらすのは「恐怖」だと分析。拡大を促す「高揚感」に比べて「恐怖ははるかに影響が大きい」と語った上で 「現在は恐怖に動かされている」と懸念を示した。
●副島隆彦です。 2007.10.11 の私のメモランダム。 以下の文は、いかにも、負け犬の遠吠えだ。
強気一本でやってきた人間が、がたがたになって、まだ、アメリカべったりで、「まだまだ景気はよくなる。アメリカ経済は強い」と言い続けているのである。おもしろいぐらいに、居直っている。実におもしろい。無理に気を張って、脂汗を流しながら言っているのだ、ということがよく分かる。
こういう人間が、これまで、ずっと、日本でも、「経済・金融界の体制エリート」として、振る舞ってきたのだ。お前たちはやがて、死刑宣告されるのだ。いい気味だ。副島隆彦記おわり。以下が、記念すべき証拠文章。
(転載貼り付け始め)
2007/10/02(火) 21:52:53
株価は景気に先行して動きます。
サブプライムでNYダウが11%下げたが、また史上最高値を更新したということは、これから米国経済が拡大していくと多くの投資家が見ているからだ。
サブプライム不安が言われているが、これはリスクのとれない投資家がアメリカの景気後退を喧伝しているだけです。 そこまで自信をもって言うなら、空売りでもしてみたらいい。 (転載終わり)
●副島隆彦です。以下の文章は、以前読んだ。すぐれた文章だ。実によく分かっている人だ。副島隆彦記
2007/08/01(水) 19:53:47 ID:u8cc8PjF
米国の不動産バブル崩壊は、消費者支出の激減・銀行の財務体質の悪化、 ヘッジファンドの破産などを通じて恐慌に繋がるであろう。
欧州については、不動産バブルの影響のほとんどないドイツと、 米国を遙かに上回る悲惨なバブル状態にあるスペイン、その中間の英仏両国など、国によるばらつきが大きい。内需の点からは経済大国の英仏両国の不動産バブル崩壊は大問題であるが、金融システムやユーロ体制の信認の観点からはスペインの方が重要であろう。
人口4000万人のスペインの住宅着工が年間80万件で、英仏独三カ国(人口2億人)の合計より多く、独仏より貧しいのに住宅は独仏より高額、1400万戸の住居のうち300万戸が空家、住宅ローン利用者の95%は変動金利で、史上最低金利での契約というのは余りに危険だ。
中・東欧諸国も過剰な対外債務と不動産バブルを有しており全体に国力が低下し、不動産バブルは存在するものの膨大な経常黒字と対外債権を有するロシアの優越が明瞭になると思われる。 欧州の不動産バブル崩壊後は、経済力だけでなく政治力でも欧州におけるドイツの優越が明瞭となり、英仏はドイツの衛星国的存在に転落するであろう。ユーロが崩壊し各国で独自通貨が再開され、ドイツはその国力の象徴であったドイツマルクを取り戻すことになる。
同様に東アジアでも、不動産バブルに依存した中国と韓国の経済が大きな打撃を受けて社会が混乱、不動産バブルの影響の小さい日本と台湾の影響力が急速に大きくなると思われる。 全体として見ると、1990年代にバブル崩壊を経験した日本、東独統合のコストとマルク喪失を経験したドイツ、 ソ連崩壊後の混乱と原油価格暴落を経験したロシアの三カ国が、来るべき混乱期に安定を維持し、急速に国際的影響力を高めるのではないかと想像される。
● (副島隆彦記。以下の文章に全く同感である。自分が書いた文章のようだ。)
現在、ヨーロッパとアメリカのふたつの中央銀行(ECBとFRB)が、協力し合って、短期金融市場に資金を放出している。このことは、 簡単に言えば、中銀が市中銀行に融資しているということだ。 そこで、中央銀行から資金を借りた市中銀行が、それを融資に当てたり、資金繰りに当てたりする。
アセット・バックドCP 「住宅ローン債権担保証券」の発行体は、銀行系が多いだろう。今は、これらのCPが満期になっても、それをさらに新しい期間の別の借り換え債券にして、そのまま継続で「洗い替え」で、引き続け買ってもらい続けることができなくなっている。引き受けてくれている銀行(CPの買い手)の方が、「もう新しいCPは、引き受けないから(解約したいから)、資金を返してくれ」と解約を要求しているのだ。だから、借り換え債の発行が出来ない。そのために、返さなければいけなくなった資金の分を、中央銀行から 、どうしても資金がたりないので、「公定歩合という安い資金で、貸して下さい」と頼んで、借りている。ヨーロッパも、アメリカも、これが現在、5.75%になっている。この資金供給を受けた市中銀行が、自分の子会社(か関連会社)である、法律上のCP発行体であるファンド(資金運用会社)を助けるために、借り回して、融資する。
こうすることによって 何とか目の前の、資金不足を埋めて、やりくりしている状態である。8月の上旬だけで、アメリカのABCP(ABCペーパーとも言う)の市場の、CP発行残高は、240兆ドル(2兆ドル)から、30兆円分くらいが、減っている。急激な減少である。誰も、ババを掴(つか)みたくないから、及び腰になって、CPの引き受け手がいなくなっているのである。 ヨーロッパとアメリカの中銀である、ECBとFRBが資金供給量した合計で45兆円ぐらいの緊急の資金放出のうち、30兆円位は、このように「住宅ローン債権担保証券」のCPの市場で、このような使われ方したのである。
これ以上CP市場全体の中で、ABCPの発行残高がどんどんが減るようだと、欧米の中銀の緊急支援の資金供給 と、それを原資とする民間銀行から自分の子会社であるCP発行体に対する融資で、本当に 間に合うのかどうかが怪しいのである。なぜなら、中銀の資金供給の形である、「買い オペ」の中身である、資金を放出する際に、担保として中央銀行が、受け取る担保手形(銀行振出約束手形)や、譲渡性預金などの証券は全て、短期(満期3ヶ月未満)のものである。
● (副島隆彦注記。今、振り返って、考えれば、やはり、ジョゼフ・スティグリッツは、2003年にすでに、以下のような、たいへんすばらしい予見、予測をしていた。きわめて正確である。)
(「GCAMS」 というサイトから転載する)
2003年11月の文章の中から
世界的ベストセラーをいまだに続けているコロンビア大学スティグリッツ教授が TVに出ていたが、その時の発言は以下のとおり。
① 米国財政は極めて短期間に巨額の赤字を出すようになり、景気対策の名のもとに必要以上の減税が行われ、戦争と言う財政の大盤振る舞いが続いているが、こんなことが長続き出来る訳がない。
米国の絶頂期の1960年代ですら、ベトナム戦争でバターも大砲もといった大盤振る舞いが「ドル暴落」のきっかけとなった。双子の赤字問題がいつまで表面化せずに続けられるのか分からないが、いずれ第2のニクソン・ショックが日本を始め世界に衝撃を与える。 福井日銀総裁がドルを買い支えているうちに、出来る人は外債をドルからユーロ債に切り替えておいたほうが良いだろう。
② 米国もやがてはアルゼンチンのようになり、ラテンアメリカ化し、米国債の利払いも滞るようになり、債務不履行も避けられないだろう。福井日銀総裁は、今年だけで、すでに (為替介入を通じて) 13兆円もの金を米国に貸し付けている。 借りた米国は借りた金で日本の株を買ったり日本の自動車やテレビを買ったりしている。それで日本はそれだけ豊かになったのか、むしろ貧しくなっている。 円がいくら高くなったところで米国から買うものは食糧や飛行機などの限られたものでしかない。
③ 日本の巨額な赤字財政を続けられるのはなぜか。 日本の巨額な預貯金と、巨額なドル建て債券が、国家の財政赤字の穴埋めに使われているから、アルゼンチンのように円は暴落することがなく、かえって高くなっている。 日本が経常収支で黒字の間は財政も破綻することはない。
しかし米国が経済破綻してドルが大暴落した場合、日本経済にも破綻がやってくる。中国も対米黒字国だが日本とは違ってユーロへのシフトは確実に進んでいる。
対米黒字をユーロでヘッジしておけばドルの暴落も回避できるが、日本の政府・日銀は米国の脅しによってシフトができない。ならばせめて民間だけでもドルからユーロへシフトしておくべきだ。米国はそれを警戒して日本の金融機関を米国の資本で買収しようとしている。
小泉首相や竹中金融大臣が日本の銀行や生保を米国に売り渡そうとするのも、日本の民間資金のユーロシフトを恐れているからだ。最終的には最大の金融機関である郵貯も民営化して米国へ売られる。 しかしそんなことをしてもその前に米国は破綻する。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝
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