「49」 カール・マルクスも秘密結社員であったのではないか、という当時からあった、陰謀論者の側からの、追及の本人インタヴュー記事です。貴重な新聞記事です。

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副島隆彦です。今日は、2007年6月12日です。以下に載せるのは、1871年という、今から136年前の、アメリカのニューヨークで発刊されている新聞のインタビュー記事です。

 カール・マルクス本人への、突撃取材のインタヴュー記事です。取材した側の、このR・ランドールという記者の方が、何者で、どういう勢力を背景にした人物であるかは、分かりません。
「ザ・ワールド」という当時のアメリカの新聞の性質も、党派性も明らかではありません。 当時のイギリスの政治警察の意を体現した体制側の新聞であったのではないか、と推測できます。

 受けて立つカール・マルクスの方が、かなり苦しい防御戦を強いられていますかが、それでも、しっかりと答えています。
「陰謀などは無いのだ」という堂々たる態度です。彼はロンドンに亡命者として長く滞在しており、ここで死にました。

 この奇妙な、そして貴重な新聞記事を、訳している、山形浩生(やまがたひろお)という人物は、野村総研の研究員をしている(いた?)人で、生来、かなりエキセントリックな人間で、その性格の異常さは、私、副島隆彦も少し知っています。おそらく軽度の精神障害者だと思います。ですから、職場や友人関係でいろいろのトラブルを抱えている人だと思います。生来の優秀な頭脳をしているのだろうが、その偏向した、偏屈な思考は、周囲に、害毒を与える、その標本(ひょうほん)のような人間です。一度は会って、話をしてみたいと思います。  副島隆彦拝

(転載貼り付け始め)

「カール・マルクス  Interview 」

by R・ランドール、訳:山形浩生  hiyori13@alum.mit.edu

(The World、1871 年 7 月 18 日号)

 インターナショナルについて何かを調べ出せ、という依頼に応えて、わたしは努力してきた。この団体は現在、非常に難しい状況にある。

 ロンドンは間違いなくこの団体の本拠地だが、イギリス人たちはおびえており、ジェームズ王が陰謀のあとで何を見ても火薬のにおいをかぎつけてしまったのと同様に、何があってもインターナショナルの関与を疑うような状態になってしまっている。この組織の意識は、公衆からの疑惑に伴って高まった。

 そしてこの組織を導く者たちに何か秘密があるとするならば、かれらこそは秘密をよく守る人間の鏡である。わたしはその指導者級のメンバー 2 人と連絡をとり、1 人と気さくにことばをかわした。そしてその内容を以下にお示しする。わたしは以下のことを得心した。すなわち、インターナショナルは本物の労働者の集団ではあるが、その労働者を導いているのは別の階級出身の社会政治理論家たちである。

 わたしの面会したそのうちの 1 人は、インタビューの間中、工員のベンチにすわり、時々わたしとの会話を中断して苦情を受けていた。その苦情はかれの雇い主である数多くの班長の一人からのもので、遠慮会釈のない代物だった。この同じ人物が雄弁な演説を公衆の前で行うのを聞いたことがある。

 一節ごとに、自らを支配者と称する階級に対する憎悪のエネルギーをこめていた。この話者の一般生活をこうしてのぞき見てから、わたしはあの演説が理解できた。かれは、自分が完全な政府を組織できるだけの頭脳があると自負しているにちがいない。それなにの、ここでのかれは工員というもっとも敬遠される作業に人生を費やさざるを得ないのだ。

 かれは誇り高く繊細であり、それでいながらことあるごとに、小言に対して会釈を返し、猟師が猟犬に下す命令と同程度の文化性しかない命令に対して笑みを返さなくてはならなかったのだ。この人物は、インターナショナルの一面についてわたしにかいま見せてくれた。それは労働の資本に対する蜂起、生産する労働者の享受する中間層に対する蜂起である。

 それは時がきたれば力強く叩きつぶすであろう手であり、そしてそれを計画する頭についても、わたしは以下のカール・マルクス博士とのインタビューのなかでかいま見たように思う。

 カール・マルクス博士はドイツの PhD であり、実際の生きた社会の観察と書物の両方から抽出された広いドイツ的知識を持っている。また、かれが通常の意味での労働者であったことはないと述べておこう。かれをとりまく環境もその外見も、中産階級の裕福な人物のものである。

 わがインタビューの晩にわたしが通された書斎は、才覚をあらわして財を築きはじめた気鋭の証券ブローカーの部屋としても適切なものだったろう。非常に個人的に快適なものとなっており、趣味のよい気さくな人物のアパートだったが、その持ち主についてことさら何かを告げるわけではなかった。ライン川の眺めを描いた立派なアルバムが机の上に広げられ、それがかれの出自のヒントとなっている。

 わたしは爆弾をさがして慎重にサイドテーブルの花瓶をのぞきこんだ。石油のにおいを求めて鼻をならしたが、嗅げたのはバラの香りだけだった。わたしはこっそり自分の椅子に戻り、陰鬱な気分で最悪の事態を待った。

 かれは部屋に入り、わたしを礼儀正しく迎え、そしていまやわれわれは向き合ってすわっている。そう、わたしはあの革命の主導者、インターナショナルの本物の創始者にして指導精神たる人物、資本に対し、もし労働とやりあうつもりなら家に焼き討ちをかけられるであろうという宣言を書いた人物――つまりはパリ・コミューンの弁護人と、サシで向かい合っているのだ。

 ソクラテスの胸像をご記憶だろうか。当時の神への信仰を告白するよりも死を選んだ人間。横顔にあの見事な額のでっぱりを持ち、それが終わりの方で、鼻を形作る団子状に丸まった、切断された鈎のようなものに陰険につながっているのを? この胸像を思い浮かべつつ、ひげを黒く染め、あちこちに灰色を散らしてみるといい。

 こうしてできた頭を、恰幅のいい中背の身体にのせてみよう。あなたの目の前にいるのが博士だ。顔の上半分にヴェールをかぶせると、生まれながらの教区民と言っても通用する。しかし本質的な部分である巨大な眉をあらわにすれば、すぐに自分が相手をしているのが、あらゆる組み合わせ力の中でも最も驚嘆すべきものであることがわかるだろう――考える夢見者、夢見る思考家だ。

 別の紳士がマルクス博士とともにあった。同じくドイツ人だと思うが、英語がきわめて達者であったため、確信は持てない。かれは博士側の証人なのだろうか。そう思う。「評議会」は、このインタビューのことを聞いて、これ以降にその行いについて博士を喚問するかも知れない。なぜなら革命はなによりも己自身のエージェントを疑うものだからだ。するとここにいるのは、かれの補強証拠というわけだ。

 わたしはすぐに本題に入った。世界は、インターナショナルについて五里霧中です、とわたしは述べた。それを非常に嫌ってはいるものの、その嫌悪の対象がいかなるものなのかについて、はっきりとは言えない状態なのです。その霧の中を他の者より深くまでのぞきこんだと告白する一部の者は、そこに二つの顔を持つヤヌスの姿を見たと申しています。

 その一つの顔は、善良で正直な労働者の笑みを浮かべてるが、そのもう一つの顔には血に飢えた陰謀家の歪んだ表情が見えた、と。この理論を根付かせている謎を解明すべく光を当ててはいただけないものだろうか?

 教授は笑った。おそらくは多少の嘲笑もこめていたのだろう、われわれがかくもかれにおびえているということについて。「解明すべき謎などございませんよ」とかれは、非常に洗練されたドイツ訛(なまり)で口を開いた。

 「ただ唯一あるとすれば、人間の愚かしさというものの謎かもしれませんな。われわれの団体は秘密でもなんでもなく、その議事録は一言一句が出版されていて、読みたければだれでも読めるという事実を果てしなく無視し続けるのですから。あなたもわれわれの綱領を一ペニーで購入できますし、パンフレットに一シリングお出しいただければ、われわれが自分で知っているのとほとんど同じくらいのことを、あなたもわれわれについて知ることができるのです。

  ――いま、「ほとんど同じくらい」とおっしゃいました。そ うかもしれません。が、しかしそれでは知り得ない部分が、  一番重要な秘匿部分なのではありますまいか。正直に申し上  げますが、そして外部の観察者が持つ印象に従っていわせてい ただきますが、世間一般にこうしたあなたの主張が割り引かれ て受け取られているというのは、大衆の無知による悪意という 以上のものがあるにちがいないと思われるのです。そして今お っしゃったことのあとで、敢えておたずねするのが不躾でない ならば、そもそもインターナショナルとな何なのでしょうか?

マルクス:それを構成する個人を見ればわかることです――労働者たちです。

  ――ええ。しかしながら、兵士はそれを突き動かす国家体の 具現であるとは限りません。あなたがたのメンバーには何人か 会いました。そしてかれらが陰謀家のような代物でないことは 信じられます。だいたい、百万人の知る秘密はもはや秘密とは 呼べませんから。しかしながら、これらの成員たちが単なる道 具にすぎず、それがもっと強力で、こう付け加えるのをお許し 願いたいのですが、大胆な秘密会議の手に握られているとした らどうでしょう。

マルクス:そんな証拠は一つもないでしょう。

 ――先日のパリの暴動は?

マルクス:まずそもそも何らかの陰謀があったという証明を是非ともお願いしたいものです――あそこで起こったことがすべて、あの時点における状況の必然的な帰結でなかったという証明を。あるいは、そこに陰謀があったとしても、それにインターナショナルが荷担していたという証拠をお示し願いたいものです。

――インターナショナルのメンバーたちが数多く集団で参加していました。

マルクス:ではそれがフリーメーソンの陰謀だとも言えるわけですな、個人として参加していたフリーメーソン会員の数は多大なものでしたから。ローマ法王なら、まさにあの暴動をすべてフリーメーソンのせいにすることでしょう。

 そうなってもわたしは驚きませんがね。しかしながら、他に説明のしようがあるのではないですか。パリの暴動は、パリの労働者によるものです。労働者の中でもっとも有能なものが、その暴動の指導者であり指揮者であったことはまちがいないでしょう。

 しかしながら、もっとも有能な労働者は、同時にインターナショナルの会員でもあったのです。でも、だからといって集団としてのインターナショナルは、かれらの行動にいささかも責任があるわけではない。

  ――でも世間はそうは考えますまい。人々は、ロンドンから 秘密指令が下ったとうわさしておりますし、資金まで出たとも 申しております。インターナショナルの議事の表面上の公開性 を主張なさっていますが、連絡上の秘密すら完全に存在しない のだと考えていいわけなんでしょうか。

マルクス:これまで組織された団体の中で、公開部分とそうでない部分を両方持たずに仕事を行ってきたものなどありませんよ。 しかしながら、ロンドンからの秘密指令などという話は、中央のローマ教皇的な圧制と策謀から真義と道徳に関わる託宣が下されるようなお話ですが、そもそもインターナショナルの性格を完全に誤解したものです。

 もしそれが事実なら、インターナショナルは中央集権化された政治形態を持っているということになりますが、その実際の形態は地域のエネルギーと自主独立性を最も重視するよう設計されているのです。実のところ、インターナショナルは労働階級の政府とすら正しくは申せません。それは組合の連合であって、制御する力ではないのです。

  ――してその組合の目的とは?

マルクス:政治権力の奪取による労働者の経済的解放です。そしてその政治権力を、社会の目標のために行使することです。したがって、われわれの活動はあらゆる労働階級の活動を包含する広範なものでなくてはならない。ある特殊な性格のものにすれば、それを一部セクションのニーズに合わせることになります――つまり労働者だけの国家、ということです。

  しかしながら、少数者の目的を追求するために、すべての人々に団結するようお願いしたりなんかできないでしょう。それをするなら、インターナショナルはその名前を捨てなくてはならない。この団体は、政治運動の形態を指示するものではない。その目的に対して言質を与えるものなんです。

 それは労働の世界津々浦々に広がる、結びあった社会のネットワークなんです。世界の各部分で、問題のそれぞれ別の面が露呈してきて、その地の労働者はそれぞれ独自のやりかたで、自分たちの関心事に対応していくんです。

 労働者の中での組み合わせは、細かいところでは絶対にちがってきます。ニューキャッスルとバルセロナとではちがうし、ロンドンとベルリンでもちがう。たとえばイギリスでは、労働階級にとって政治的な力を示す方法はさまざまに開かれています。平和的なアジテーションが迅速かつ確実に目的を達成できるのに、暴動を起こすなんてきちがい沙汰です。

 フランスでは、何百という抑圧的な法律と階級間の道徳的な反目のため、社会的戦争という暴力的な解決方法が必要となるようですね。その解決方法の選択は、その国の労働階級の問題です。インターナショナルはその点について、指示するつもりはありませんし、ほとんど助言さえ与えません。しかし、そのすべての運動に対して、インターナショナルは共感を寄せ、自分の規定によって課された制限の範囲内で支援をさしのべるのです。

  ――して、その支援とはいかなる性質のものなのでしょう   か。

マルクス:たとえばですね、解放運動のもっとも一般的な形態は、ストライキです。かつて、ある国でストライキが起こると、それは別の国から労働者が輸入されることによって打倒されてしまいました。インターナショナルは、これをほぼ完全に止めました。

 ストの計画を報されると、メンバーたちにその情報を広め、かれらはすぐにその闘争の地が不可侵なものとなるよう手配します。主人たちは、自分たちの雇い人と交渉するしかなくなります。ほとんどの場合、これ以上の支援は必要とされません。

 かれら自身の会費や、かれらがもっと直接的に関わっている社会が資金を供給しますが、かれらへの圧力が重くなりすぎて、そのストライキがインターナショナルの認めるものとなれば、共通財源から必要資金が供給されます。この手段によって、バルセロナの葉巻製造者のストは先日勝利をもって終わりました。

 しかしながら、社会はストライキに興味はありません。ただし、限られた状況下でそれを支持することはありますが。金銭的な視点からいえば、社会がストライキで何かを得ることは絶対になく、むしろ失うことのほうが多いでしょう。一言で要約するとこういうことです。労働階級は、富の増加のなかで貧しいままにおかれ、奢侈の増加の中で窮乏のままにおかれるのです。

 その物質的な欠乏は、道徳的な地位や肉体的な地位をも貶めるのです。それに対して他の者たちに頼ることもできません。このようにして、かれら自身が自分たちに関わる事象を自ら掌握することが、避けがたい必須事項となったのです。

 労働者は、自分たちの内部における相互の関係や、資本家たちや地主との関係を改めなくてはなりません。ということはつまり、社会を変えなくてはならないと言うことです。これが現存するあらゆる労働者組織の最終目標です。

 土地組合や労働組合、交易組織や友愛組織、生協店舗や共同生産は、そこに到達するための手段にすぎません。これらの組織の間に完全な結束を作り出すのがインターナショナルの仕事です。その影響は、あちこちに見られるようになってきています。

 スペインでは二紙、ドイツでは三紙、オーストリアとオランダでも同数、ベルギーでは六紙、スイスでも六紙がわれわれの考えを広めています。さて、インターナショナルのなんたるかを説明いたしましたので、それが陰謀に加担したとかいうお話についてご自分なりの見解をまとめていただけるかと思いますが。

  ――おっしゃることがよくわからんのですが。

マルクス:旧社会が、議論と団結という自らの武器を手にした労働に張り合う力を求めようとして、陰謀集団という汚名を着せるというでっちあげに頼らざるを得なくなっているのがわかりませんか?

  ――しかし今回の一件についてフランスの警察は、インター ナショナルの関与について証明できると宣言していますが。こ れ以前の事件のこともありますし。

マルクス:しかしそうした事件については、よく見ていただければ、インターナショナルに対してかけられた陰謀の嫌疑がいかに浅はかなものかを示しているのだ、ということは言わせていただきましょう。

 この前の「陰謀」話をご記憶でしょう。国民投票が行われると報じられました。選挙民の多くは、判断がつかない状態でした。皇帝支配の価値がはっきりと感じられない状態になっていたんです。皇室が自分たちを守ってくれる対象としての脅威とな危険について、信じられないようになってきたからですね。新しいお化けが必要とされていました。

 それをねつ造すべく、警察が動きました。あらゆる労働者組織が警察には嫌悪を抱いていましたから、警察側としてはもともとインターナショナルに好意は抱いていなかったわけです。ここで警察はうまいことを思いつきました。インターナショナルを悪者にしてしまえばいい。そしてその団体の評判を落とすと同時に、皇帝側の利益になるようにしてしまおう、と。

 このうまい考えから、皇帝の命を狙った陰謀と称するとんでもない代物が出てきたわけです――われわれはあんな哀れな老人を殺したいなどとは思っちゃいないのですがね。

 で、警察はインターナショナルの指導者を逮捕しました。証拠をねつ造しました。裁判のために起訴状をつくり、その間に国民投票を行ったわけです。しかしながら、茶番がただの粗雑なでっちあげなのは、あまりにも明白でした。このスペクタクルを目撃した賢明なるヨーロッパは、その性質について一瞬たりともだまされませんでしたよ。

 だまされたのは、フランスの農民選挙民たちです。あなたがたイギリスの新聞は、この惨めな出来事の最初の部分だけ報道しましたが、その結末を報じるのは忘れてしまったのです。フランスの裁判官たちは、陰謀の存在は対政府サービスで認めたものの、インターナショナルの関与を示すものは何もなかったと宣言するしかなかったのです。今度のも、前と同じなんですよ。

 フランスの小役人がまたもや動いているわけです。世界で前代未聞の市民運動に説明をつけろといって呼ばれてきているわけです。これだけ時代の徴が出てきているんだから、正しい説明がわかりそうなものです――労働者の知性の高まり、その支配者たちの奢侈と無能の拡大、権力がついにある階級から人民へ移行しようとしていること、解放の大運動のために時も舞台も機会も満ちていること。

 しかしながら、これだけのことを見てとるためには、この小役人は哲学者でなくてはならないのですが、現実のかれはmouchard、イヌにすぎません。そしてその存在の法則に則り、かれはイヌの説明にすがっているわけです――「陰謀だ」という。昔ながらの偽造文書の束が、その証明を提供してくれるでしょうし、今回はヨーロッパも、おびえのためにそのお話を信じるでしょう。

  ――それはヨーロッパとしても無理からぬことでしょう。あ らゆるフランスの新聞がそれを報じていますから。

マルクス:あらゆるフランスの新聞ね! ここにもその一例があります(とル・シチュアシオン紙を手にする)。事実関係についてのこいつの報道の価値を、ご自分で判断してご覧なさい。(読み上げる)

 「インターナショナルのカール・マルクス博士は、フランスに渡ろうとしてベルギーにて逮捕された。ロンドン警察はかれが関わっている結社に長いこと目をつけており、いまやそれを弾圧すべく積極的な動きに出ている」文章二つ、ウソ二つ。ご自分の判断で、この証拠を確かめられるでしょう。

 ごらんのとおりわたしは、ベルギーの牢屋にいるかわりにイギリスの自宅におります。また、イギリスの警察がインターナショナルやその関連結社に手出しできていないことはご承知のことと思います。しかしながら、あまりにも通例となっているのが、この報道が何の訂正もなされずに、大陸の新聞を駆けめぐるということなのです。そして、わたしがヨーロッパの全雑誌にここから回状を配ったとしても、それは続くでしょうな。

  ――こうした誤報に対して訂正を試みたことはおありです  か?

マルクス:やりましたが、やがてうんざりしてやめてしまいました。マスコミ連中の信じられないずさんさの例として、たとえばその中の一つでは、フェリックス・プヤットがインターナショナルの会員にされていましたよ。

  ――するとちがうのですか。

マルクス:あんな野蛮な人物の居場所は、インターナショナルにはありませんよ。あの人物はかつて、無遠慮にもわれわれの名前を使って派手な宣言をしてくれましたが、すぐに撤回されました。が、もちろんながら新聞はこの撤回の方は無視してくれましたがね。

  ――ではマツィーニは、あなたがたの一員ですか。

マルクス:(笑いながら)いやいや。かれの思想の枠内にとどまっていたら、われわれはほとんど進歩しなかったことでしょう。

  ――これは驚きですね。わたしはてっきり、かれが一番進歩  的な考え方の代表だと考えていたのですが。

マルクス:かれが代表しているのは、古くさい中産階級共和国の考え方にすぎません。われわれは中産階級とはなんら関係を持つつもりはないのです。マツィーニは現代運動の最後尾にまで脱落してしまい、いまやドイツの教授たちといっしょです。

 かれらも、ヨーロッパでは未だに未来の文化的民主主義の使徒と思われていますがね。まあ、一時はそうでした――たぶん 48 年以前までは。当時はイギリス的な意味でのドイツの中産階級は、まだしかるべき発展をほとんど遂げていませんでした。

 しかしながら、いまやかれらは相対として反動側に行ってしまったので、プロレタリアートとはもはや袂を分かちました。

  ――あなたの結社に実証主義的な面を見ようとする人々もお りますが。

マルクス:そんなものはありません。会員に実証主義者はおりますし、会員ではなくてもいっしょに活動する人々の中にも、そうした者はおります。しかしながらこれはその哲学のためではありませんし、われわれの理解しているような人民政府とも関係なく、古い階級関係にかわって新しい階級関係をつくりだそうとするだけのものです。

  ――すると、インターナショナルの指導者たちは結社のみな らず新しい哲学を生み出さねばならないように思えるのです  が。

マルクス:まさにその通り。たとえば、資本に対する戦いにおいて、もしミルの政治経済学から戦術を引き出すなら、われわれに大した勝利は望めますまい。かれは労働と資本の関係の一種類をたどってみせました。われわれは、別の関係をうちたてることが可能だと示したいのです。

  ――で、宗教は?

マルクス:この点については、社会の代弁者として語るわけには行きません。わたし自身は無神論者です。確かに、このような発言をイギリスで耳にすると驚かれるでしょうが、ドイツやフランスでは公然と述べることができるというのは、まあいささかの慰めではあります。

  ――それなのにこの国イギリスに本部をおいていらっしゃ  る?

マルクス:理由は明らかでしょう。結社の自由は、ここでは確立されています。ドイツでは、存在はしていますが、実際には無数の困難に取り囲まれています。フランスでは、そんな自由は長年存在すらしていませんでした。

  ――ではアメリカは?

マルクス:われわれの主要な活動拠点は、今のところヨーロッパの旧社会の中にあります。いままでは、多くの状況のため、アメリカでは労働問題がすべてを圧倒する大問題とはなってきませんでした。

 しかしながらそうした状況は急速に消滅しつつありますし、ヨーロッパで見られたのと同様、労働階級がコミュニティの他の部分とは別個に成長し、資本から切り離されるにつれて、急速に全面に出て来つつあります。

  ――このイギリスにおいては、あなたが希望なさっている解 決は、なんであれ革命という暴力的な手段に頼らずに実現され るものと思うのですが。演説や新聞によってアジテーションを 行い、少数派が転向して多数派になるというイギリス式のシス テムは希望が持てると思うのですが。

マルクス:その点、わたしはあなたほど楽天的ではありません。イギリスの中産階級は、自分たちが投票の独占を保てる場合には、多数派の審判を受け入れる用意があることを常に示してきました。

 しかしながら賭けてもいいが、中産階級がきわめて重要な問題と考える点について投票で破れたばあい、この国でも新たな奴隷所有者の戦争が起こることでしょう。

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 わたしはこの印象的な人物との会話の趣旨を、記憶できた限り再現した。結論を出すのはお任せする。コミューン運動への関与について、肯定的・否定的に何を言われているにしても、インターナショナルは、よかれ悪しかれ文明社会が自らの中にあるものとして認識せざるを得ない新しい力を持つものであることはまちがいない。

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 Comment:ニューヨークの World 記者R・ランドールによるマルクス・インタビュー。記事は 1871 年 7 月 3 日に脱稿されている。インタビューの間中ずっといっしょだったもう一人のドイツ人紳士は、エンゲルスだったと考えられている。これに先立つことほんの数ヶ月、マルクスも関わっていたパリ・コミューンが流血の末に閉鎖されている。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

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