「40」  以下の文は、よくまとまった最新の中国論である。書いている人物に問題がある。副島隆彦記

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副島隆彦です。 以下の現在の中国について書いている文章は、きれいにまとまったよい文章である。

 しかし、書いている人物は、台湾の、その中でも、CIAに操(あやつ)られたミニ政党であった、台湾団結連盟 略して、
「台連(たいれん)」という、つい最近、小選挙区制導入で、台湾で滅んでしまった、反中国の勢力と、べったりくっついて、そこから資金とかももらって、書いている人の文だ。

 ところが、安倍晋三首相以下の日本の保守派の主流が、親中国に大きく舵(かじ)を切っているので、それで、つい最近まで、「今こそ、アメリカと同盟して中国を攻めよ」みたいなことを書いていたのに、急に、コロリと態度を変えて、こういう、冷静な中国分析の文を書いている。こんなに人間は、コロコロと態度を変えられるものかね、の見本の文章だ。

この文の中には、自分たちの国内言論が、一気に少数派に転落したことの焦(あせ)りがよく見て取れる、実に良い文章である。

副島隆彦拝

(転載貼り付け始め)

        週刊「木曜コラム」
2007.04.12

            ****************

中国格差社会の行方

 先の全国人民代表大会で、胡錦濤政権は「調和社会」の構築を目標に掲げた。しかし中国社会は格差拡大を続け、民衆の不満は農村部から都市部へ移りつつある。

 「調和社会」の政策は中央と農村部の格差、貧富の格差
是正を眼目としたものだ。胡主席の思いとは別に、格差問題は想像以上の危機的状況にある。

 香港系雑誌によると、現在中国各地では1日約300件、年間12万件(06年)近い抗議行動や暴動が起こっているという。今までとの大きな違いは、都市部での暴動が急伸していることだ。例えば専門学校生が卒業資格をめぐり1万人規模のデモを起こした。

 地域の官僚による不正や腐敗、病院・学校などの制度の仕組みやシステムの不公平に、民衆の不満は限界に達しつつあるとの声が聞かれる。

 中国の青年たちには、行き場のない怒りと不満をインターネット世論にぶつけたいという思いが顕著だ。中国人のネット利用者は1億2千万人以上とみられる。ネット勢力は、中国共産党政権を左右する恐ろしい存在に成長した。今後このネット勢力と都市部での抗議運動が連動することで、大規模な暴動が呼び起こされるとの見方もある。胡政権には、腐敗した地方権力に対する監視制度の構築と透明な仕組みが欠かせない。

遠い「調和社会」

 中国共産党が最も恐れる相手とは誰あろう、「人民」そのものである。中国は数千年の歴史の中で、一握りの権力者のために人民を奴隷状態に閉じこめてきた。中国人民は現代の奴隷そのものだ、という意見も真実味を帯びてくる。かつてのアジア諸国は欧米列強による植民地奴隷になっていたが、チベットやウイグルでは今も中国の植民地政策と奴隷制度による犠牲が脈々と続いているのは紛れもない事実だ。

 今、中国各地で人民奴隷による共産党政権への抗議行動と暴動が深刻な事態を招いている。胡政権は、都市部には雇用創出や社会保障整備を検討している。今後は世界と共存する限り、奴隷制度の中国も「自由と民主、人権と法治」を受け入れざるを得まい。

 共産主義国家・中国が資本主義を受け入れることで、いつまでも威嚇や恫喝の政治を続けることには限界が見えている。中国の格差社会も、そのうち調整されながら「米国・日本型」の格差社会に変わっていくとの見方がある。とはいえ日米台型の「民主化」が中国の体制崩壊をもたらすことも懸念されよう。

広がる都市労働者の貧困

 これまで中国の格差問題を論じるときは、都市と農村の比較対比が問題視されてきた。しかし今日では、都市部住民の所得格差が一気に拡大しているのが現実だ。主要都市では、農村から流入してきた、流民と呼ばれる合計2億人の貧困労働者が街に溢れている。

 彼らは故郷に戻れず、出稼ぎ労働者として建設現場や肉体労働、家政婦や飲食産業などに従事し、月給数百元という人が多い。家政婦や皿洗いの時給相場が100円前後である一方、1日で10万円以上稼ぐ同時通訳者もいる。

 彼ら低所得者層はやるせない虚脱感に苛まれている。こうした不安心理が昂じて精神的な錯乱状態に陥り、社会報復行動の芽が育っていくのだ。中国は貧困層の問題を解決しない限り、今や暴動の拡大と治安悪化は避けられまい。この問題を放置すれば、更なる社会不安が拡大しよう。

農村腐敗の元凶

 では、中国各地における農民や労働者の実情はどうか。先鋭化する暴動について、各紙があらゆる衝突・事件の公式発表を伝えている。弊誌では紙面の都合上実際の事例は省くものの、村民と公安の衝突に、中国当局が直接事態の収拾に乗り出すケースが多くなった。

 各地で相次ぐ衝突の要因は、急増する土地の強制収用や環境問題にあるようだ。土地収用では補償金の算定をめぐって農業収入と補償額の格差が争点となり、地方当局による「腐敗の温床」が農民を苦しめている。

 ましてや環境汚染は深刻で、土地はやせ細り飲料水も汚染されて飲めないのに、地方当局は改善策を講じておらず、それどころか業者と癒着して私腹を肥やすことしか考えていないのである。これでは農民の怒りと不満がいつ暴発してもおかしくないだろう。

米専門家の見た中国

 中国各地での抗議や紛争、貧困層の暴動の根源的な問題について、ブッシュ政権下の国務省上級顧問であるジェームズ・キース氏は、大国中国の陰に「貧しい中国」が存在するとして、公聴会で以下のように証言している (産経新聞07.2.15)。

 ① 全人口13億人のうち8割が貧しい地方に住み、その中の5億人は所得1日1ドル以下の「貧困」階層である。

② 内陸部は都市部に比べ、保険や教育、社会福祉、土地侵食、水質悪化、大気汚染、森林破壊など各方面で決定的な劣等条件にある。

③ 地方の住民も法律で保障された権利に目覚め、当局による一方的な土地収奪、違法徴税、賃金不払いなどへの抗議を頻繁に表明するようになった。当局が治安を乱したとけなす「抗議行動」は04年に7万4千件、05年には8万7千件に達した、④45歳から65歳までの国民のうち80%は保険や年金などの社会福祉受容がなく、地方当局の腐敗の広がりは社会全体の倫理的価値観を侵食している。

党中央の暴動対策

 胡政権はこうした貧困層や格差社会の問題に警鐘を鳴らした。農村の余剰労働力を都市に移動する、農民の収入を向上させるなどの、当初の「調和社会」建設目標に苦心の跡が見られる。これは貧困層の暴動を食い止めるための手段に他ならない。

 中国政府は乱開発に歯止めをかけるため、昨年から規制を再編し、不動産取引に対する監視を強化して汚職幹部を摘発している。また農民の負担を軽くするため農業税の全廃、農民の義務教育の学費免除などの手を打ち、新たな国内治安戦略を採用した。

急拡大した抗議行動や暴動に対しても、治安当局は新たな戦略を構築している。今後はできる限り武力は使わない、徹底弾圧はしない、少数民族に関する暴動は限定弾圧、全ての非難は地方の党組織に絞り中央に向けない、などである。しかし今のところは中央まで波及しないものの、地方統治が弱まれば暴動は拡大するとの見方もある。

格差社会が生んだ成金

 筆者は先日、日本の各業界を代表する11名の方々と、六本木のステーキハウス「モンシェルトントン」で食事会を開催した。この店は鉄板焼き店として人気が高く、客の半数近くが外国人である。個室は欧米風の装飾がなされており、エキゾチックな雰囲気を醸し出している。

 筆者がこの店を選んだ理由は、最近は良質の神戸牛がなかなか手に入らないからである。当日は支配人が用意してくれたが、なぜ入手が困難かと聞いたところ、日本国内の倍近い価格で中国人富裕層が丸ごと買いあさっているからだという。フルーツの産地でも、1個3千円のりんごが中国では飛ぶように売れるらしい。

 中国では、富裕層の若者たちが最高級のブランド物を身につけている。1泊10万円以上もするスイートルームのクリスマス宿泊パッケージも予約で満杯だという。彼らは新興成金であり、新中国の顔中国のエネルギーである。つまり見方を変えれば、強烈な競争原理の中から浮上してきた成金たちが経済活性化の原動力となっているのは確かだ。

格差社会解決の鍵は日本か

 東京オリンピックや大阪万博があったのも日本の高度成長期であった。中国も2008年の北京オリンピックと2010年の上海万博で、経済発展のピークを迎えている。しかし日本との大きな違いは、中国企業が利益率や技術力、高付加価値商品などよりも、売上拡大や従業員数など目に見える表層面ばかりに目を奪われる段階にあることだ。

 中国経済の難点は、急増するエネルギーと環境問題ではないか。日本は省エネ技術と環境技術の向上で危機を乗り切った。まもなく中国も、この2つの問題で頭打ちになり、成長鈍化に直面することになろう。

 中国は急速な経済成長を遂げ、経済大国と言われているが、金融システムや企業統治の脆弱性、エネルギー、インフラ整備など、成長・持続の壁となる問題が解決されていない。実際の難題を現実的に処理することこそ政治的芸術だと思えてならない。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

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