「153」 数学という暗黒大陸 ③
副島隆彦です。数学という暗黒大陸 ③です。
前回②では、1931年のゲーデル「不確定性定理(数学は数学自身をみずから解くことはできない)」という、とんでもない証明がされてしまった話をしました。今回は、現代数学に至る流れをわかりやすく話します。
■ユークリッド幾何学
(ユークリッド幾何学について、Wikipediaの説明:
幾何学体系のひとつであり、古代エジプトのギリシャ系哲学者であるエウクレデス(ユークリッド)の著書『原論』1~4巻において体系化した。手法は以下の通りである。
・まず、点や線などの基礎的な概念に対する定義を与える。
・次に、一連の公理を述べ、公理系を確立する。
・そせて、それらの上に500あまりの定理を証明する。
という現代数学に近い形式をとっており、完成度の高いであった。現代的観点からは公理系に若干の不備もあり・・・略 )
エウクレイデス(ユークリッド)後世の想像図
副島隆彦です。
ユークリッドというのは、皆さんも名前ぐらいは知ってるでしょう。紀元前300年ぐらいの人で、ギリシャ人です。公理というのは axiomといいます。この言葉は覚えてください。公理(axiom)に対して定理(theorem)というのがある。公理が少し崩れたものが、定理です。
それに対して原理(principle)というのがある。何とかの原理といえば「アルキメデスの原理」で、それでみんなそれだけは知っている。アルキメデスがお湯に飛び込んで、自分の体と同じ体積の水が飛び出したので、比重というか、質量がわかりましたというものですね。例えば、金は水の36倍の重さがあるから比重は36になる。これが原理。原理は自然に関して起きていることだから、原理の方のほうが偉いと、みんな思っている。
ところが数学者たちから見たら、人が勝手につくれる 定理とその前の 公理が一番偉い。憲法より偉い。この公理を拝みに拝む人を、「数学者」と実は言うんです。
誰でも知っているユークリッド幾何学の公理は、簡単にいうと
公理1 ある点がある。これを任意の点と言います。もう一つの点があります。その間を結ぶと直線が引ける。これを線分と言う。
公理2 その線分はどこまででも延長できる。それだけ。
公理3 ある1点を通って同じ半径で円を描ける。ばかみたいだけど、コンパスを使えばわかりますね。
公理4 直角は全て相等しい。どこで直角を描いても、直角はどこでも直角。ばかみたいなこと。2直角が180度で、三角形はどこでどう描いても2直角。
公理5 ある線があって、それ以外に点がある。その点を通って、その線と等しい線は一つしか描けない。ある線があって、それ以外のところに点があって、その点と、もとの線と平行に描ける線は1本だけというのが公理5です。
このユークリッド幾何学は、平行線はどこまでも平行という「平面上の幾何学」です。 中世以降ずっと、現実の宇宙はユークリッド的とされて、それを否定することは神の冒涜ともされたんです。このあと、非ユークリッド幾何学という「曲面上の幾何学」のが出てきます。地球は球体ですからね。
■非ユークリッド幾何学
ユークリッド幾何学の公理5「平行線公準」を否定する、非ユークリッド幾何学というのが出てきます。ロバチェフスキー(1792-1856)というロシア人が研究していた。モスクワから東に400キロぐらいいったところにカザン大学というのがあって、レーニンとかみんなカザン大学を出ている。その辺にはエカテリンブルクといって、ロシア皇帝たちの離宮というか、別荘のある町もあります。ロバチェフスキーはそのカザン大学の学長までした人で、非ユークリッド幾何の研究に30年費やした。発表したのが1836年。でも、それについては完全に無視されて(時には満場の失笑を買って)一生を終えた。
カザン大学の場所
ロバチェフスキー
左:双曲幾何学 ※非ユークリッド幾何学
中央:ユークリッド幾何学
右:楕円幾何学 ※非ユークリッド幾何学
同じころ、ハンガリーにボーヤイ(1802-1860)という人がいて、別個に研究をやっていた。当時すでに数学界の大御所として威張っていたガウス(1777-1855)に、自分が書いた「非ユークリッド幾何学」と呼ばれる新しい論文を送った(1831年)。ガウスはボーヤイを大いに賞賛しつつも、「自分もこの問題に取り組んでいて、もっと前から知っていた。それで同じ結果が出た」と返事をしたんです。ボーヤイは、ガウスが自分の業績を剽窃しようとしていると勘ぐって精神を病んでしまう。ロシアのロバチェフスキーも非ユークリッド幾何を始めているとガウスから聞いたりして、その後の研究も成果が出なくて絶望のうちに死んでしまった。
ボーヤイ
ロバチェフスキーらは、ユークリッドの公理5について、いや、1本とは限らないよと言い出した。もっとたくさん引けると言い出した。このロバチェフスキーからが現代数学なんです。これを、大学の数学科の二流、三流、五流のばか数学者たちがはっきり教えない。なぜなら、実はここからいろんなものがぶっ壊れていくから。これを教えると、あれっ?、みたいになってね。この非ユークリッド幾何学で数学革命が起きたと、小室直樹が書いている。これはもうコペルニクスが「本当は地球は太陽の周りを回ってるんだ。地球が宇宙の中心じゃない」言ったのと同じぐらいすごいことだと。このあたりを、前掲した足立恒雄の「『無限の果てになにがあるか』から引用します。
(引用はじめ 『無限の果てに何があるか』から)
新しい物理学は、ニュートン力学の持っているいくつかの矛盾を解決するために、けっきょく二十世紀に至って、A・アインシュタイン(1879-1955)によって創造されることになるのだが、そこで使われた幾何学はリーマン幾何と呼ばれる、非ユークリッド幾何をさらに一般的に発展させた幾何学であった。ニュートン力学の矛盾の中には、たとえば、・・・(中略)
結論から言えば、この実在の宇宙はユークリッド空間ではなく、しかも有限の大きさを持ち、膨張を続けているのだということがしだいに解明されてきた。そして、重力というものも物質が存在することによる空間の歪みであると説明されるようになって、・・・(中略)
しかし、おもしろいことに、アインシュタイン自身、現代物理学を創始しながら、相対性理論の帰結である、宇宙は膨張しているという結論をなかなか受け入れなかった。彼にとって、宇宙は厳粛な、神の秩序と調和の中にあるべきで、ふわふわと膨張する風船みたいに不安定なものとは信じられなかったのであろう。(中略)アインシュタイン自身が「非ユークリッド幾何の理論なくして相対性理論を思い付くことはありえなかった」と証言しているように、非ユークリッド幾何は、このような現代的宇宙観への道を拓いたのであった。
(引用おわり)
■公理が壊れてしまったのに、威張っている数学者
副島隆彦です。非ユークリッドの幾何学によって、ピタゴラスやらアルキメデスたちがそれまで一生懸命に本気で考えていたことが壊れてしまった。彼らは「真理の発見」すなわち「神(ゼウス)が人間世界のあちこちに、ポンポンとほったらかして置いてあったものを見つけてくる」ということをやっていたから。でも、それが壊れてしまった。彼らの神は、キリスト教の神じゃなくて、ギリシャの神々です。
公理を死ぬほど信じるのが数学者。だから数学者たちは 公理が壊れることをを嫌うんです。公理系が壊れてしまったのは、このロバチェフスキーの1836年とゲーデルによる1931年で、その時にもう言いたい放題の世界が生まれたということ。でも実は、それでよかったよかったとも言えるんです。
ロバチェフスキーとゲーデルは100年違う。この2人はものすごく嫌われていて、数学者の世界では、ゲテモノ扱いです。今の数学者たちは「私たちは、そこからもうさっさと出ていったんだもん」と言って、開き直っている。 出ていくな、このやろうと。おまえら、もう一回、もとの刑務所に戻してやるというのが副島理論なのね。
公理というのは自明のもの。それは明らかなセルフエビデンスで、証明しなくていいもの、ということになっている。みずから明らかな自明の理なんです。数学者がこの 公理系を取り扱うから、威張り腐っている。彼らは「そこから派生して出ていったのが物理学とか工学部の連中だ」、ぐらいに思っているわけです。
それで、その 公理が壊れてしまってどうするのといったら、そのあと、公理は自分たちで勝手につくっていいんですということになった。そこからが現代の世界になってしまったのね。「勝手につくってそれでいいじゃないか」と、言うのは勝手だけど、そのとき何が起きたか。数学は真理を見つけ出すための学問であるという大きな建前があったのに、それがガラガラと壊れたんですよ。それをちゃんと認めないことが、私は許せないの。
つまり、truth、真実、真理 (ところで、factは事実ね。ごろごろ転がっている事実。 真理と事実、truthと factの違いもまた難しいんだ)。この truthを見つけるための学問だったはずなのに、それを投げ捨てた。「その瞬間に数学は死んだんだ「と言わなければいけない。 じゃ、「何のためにあるんですか問題」が実はあって。それはやめてくれというわけ。 ところが、さっきの足立恒雄とかは本気でそれを今もやっている。
そうすると、今の高級数学の皆さんは、「あの人(足立恒雄)たちは、基礎数論の人、整数論の人ですから」とか「あの人たちは、数学の一番下の汚い泥んこだらけの地面をはいずり回ってる、子供の数学ですから」、みたいなふうに取り扱うんです。
でも、はっきり言います。私の弟子だとはっきり認めている、早稲田大学の、今、55歳ぐらいの小澤徹(おざわ とおる)教授。この人がやってるのは、何の数学かわからんけど最高級数学ですよ。世界数学学会、本当は数学連合(国際数学連合)と言ってるけど、その日本代表なんです。もう1人、森 重文(もり しげふみ)というのがいて、これは世界数学学会の会長もしていて、フィールズ賞をもらっている。「小澤君は何でもらえないの?」と私が言ったら嫌な顔をされましたが。
小澤君は真面目ないい人で、何も威張らないし、世界中あちこちへ飛び回って、テキサス大学へ行くかと言ったら次はフランスのグルノーブル大学へ行ったり、ヨーロッパの何とか王立研究所で黒板相手に数式をずっと書いて授業したりする。その小澤君に私は聞いた。君らは、真理を探究してるんじゃないのかと。そしたら彼は「いや、私たちはもう真理はやりません」と。そうはっきり言ったからね。私は怒りはしないけど、「はあ?」みたいになった。それから、もう5年ぐらいたつ。
でも私は怒ってるんですよ、本当は。真理の探究をやめたくせに、数学者は何をそんなに威張ってるんだと。工学部になって、「私は技術屋です。技術数学です、世の中の役に立つ機械とか道具とか通信機でもつくっていればいいんです」とか言えばいいじゃないかと。確かに、そういう役に立つものをつくっているんだし。「製鉄所で、新日鐵で、新日鐵の製鉄した後のスラッジという溶鉱炉の下にたまったものがある。それを取り出すときに小澤の解、ソリューション(Ozawa’s solution)使われている」と。小澤君はそう自分で言ったから。
だから今、位相幾何学とかトポロジーとか、集合論とか、微分積分もそうだけど、あと確率・統計。確率・統計って、インチキ数学そのものですからね。
高橋 洋一(たかはし よういち 1955- 70歳)という、東大数学科を出て大蔵省へ入って、今は経済学者とされているのがいる。彼は、東大法学部を出たほかの財務省(旧大蔵省)の官僚たちのことをバカ呼ばわりして威張り腐っているね。でも高橋らがやっている統計学・確率学というのは、真理の発見どころか、解がないものだから無理やり解を出す学問なんです。統計屋・確立屋だって、数学者からはバカにされます。
高橋洋一
■コンピュータ数学は、インチキ
もうちょっと言いますよ。コンピューター数学というのが今、かなり大きくなっている。もうどこまででも計算しますからね。【あー。スパコン富岳による飛沫飛散のシミュレーションとか、毎日テレビで見せられました(# ゚Д゚)】 コンピューターで、宇宙の大きさだろうが何だろうが、無限に計算します。あれは一言で言うと、数学を強姦している学問。数学をコンピューターで強姦してるんだと。わかるかな。これが確率・統計。要するに解がないもんだから、インチキ公式をいっぱい山ほどつくって、都合のいいように解を出すんです。【あー。「8割おじさん」こと西浦 博(にしうら ひろし 理論疫学、当時は北海道大学教授。現在京都大学教授)ですね(# ゚Д゚)】
スパコンのシミュレーション
西浦博
■金融工学も結局大爆発した
それを金融工学でいっぱい山ほど使って、あげくの果てにリーマンショックのときに大爆発を起こして、金融工学というのが潰れ果てたのね。それはみんな、インド人の一番数学のできる連中とか、NASAにいた数学者たちとか、アメリカの大学の数学者たちが、若手がですよ、金もうけしたいと、何十億円も何百億円も稼ぎたいと言ってね。20年前に数学なんか嫌だと言った人たちが流れ込んだ。
学生たちまでコンピューターを使って投資だと。簡単に言うと、波形があって、波形と波形の間にずれが生まれる。ずれが生まれるときに確実に儲かるところというのがある。それを確率微分方程式を使って、それをコンピューターにかけて、この曲線と曲線の間のすき間を狙って金もうけする、と。
それをもっと高級にしたばかやろうが、ロバート・ルーカス(米経済学者 1937-2023 85歳で死)です。1970年ごろに生まれた「合理的期待形成学派」の中心人物だ。どんどん発達したコンピューターを使うことによって、自分たちの合理的な期待のことを「予測」と言うんだけど、近未来を予測できると。ルーカスが「難しい数式を使って予測することによって経済を国家政策としてきちんと管理していける。成長も管理できる」と言って威張りくさったんです。
それは、みんな知っている正規分布、つり鐘(ベル・カーブ)とも言うんだけど。それと統計・確率でできていて、それから偏差価。東大に受かるやつは偏差値74から上とかね。それに対して学校での落ちこぼれは45、30と尻尾のほうになる。こういうベル型をした、あれが確率微分方程式で、やってることは実はこれだけなんです。
だけどこれ、さっき言った金融工学の要するに Financial Mathematics(金もうけ数学)と全く一緒なんです。それを何か偉そうに学術論文にしただけでね。 それで結局大爆発しちゃったんです。 そのくせ「黒いスワン、ブラックスワンがあらわれた」とか言って。「ハクチョウはみんな白だと決まってるのに黒があらわれた」とか、ばかなことを言って、みんなでびっくりして、それで驚きごっこをしているだけなんだ。
■AI(エーアイ)もウソ。ただのデータセンターだよ
まだ言います。【また止まらなくなっちゃったんですね。どうぞ】 AI(artificial intelligence)も、ウソです。人工知能で金融も管理できるとか、人工知能の発達でロボットがさらに発達して、超高度のコンピューターを使うことで新しい機械が生まれて、人間の生活が楽になるとか、これらも全部、嘘なんです。
(数学という暗黒大陸③おわり、④に続く)
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