「145」 2025年6月 ガヴァーネス 女家庭教師②
ガヴァーネス②
そういうことで、ウィーンは、大きな立派な帝国の都だったんですよ。だけどオーストリアは小さな国になっちゃって。べルリンの勢力であるプロイセン(プロシア)帝国が、1933年にナチスドイツの政権になったので。大ドイツ主義(オーストリアを含めてドイツを統一する)、小ドイツ主義(オーストリアを排除してプロイセン王国を中心に統一)といってですね。1938年にオーストリアはドイツに併合されて滅んでいって、戦後に小さな国になったんですね。
■ゲルマン人、スラブ系、スキタイ(遊牧民)
それで、例えば今のトランプの奥さん、メラニアはね。トリエステのすぐ東側にあるエストニアという小さな国の出身なんですけどね。この人口137万人(2023年時点)のエストニアという国からアメリカに流れ出してきたモデルですね。メラニアは身長が180cmぐらいあって、ハイヒールを履くと190cmになっちゃいますから。トランプが188cmだからだから並んでちょうど一緒なんですね。だからそのメラニアみたいな超美人の女たちは、実はドイツ系の血が入っているのね。ゲルマン民族のね。混ざっている人たちでスラブ系スラブ人ですね。
スラブとゲルマンの違いも、もう今日は話しませんが。スラブはスレイブ、奴隷という意味。南スラブが「旧東ヨーロッパ諸国」です。ユーゴスラビアを中心にした北スラブ人がポーランドとロシア人なのね。だからスロバキアとかスロベニアとかボスニアとか、みんなスラブ系なんですね。ローマ帝国のローマ人がゲルマン人を支配していて、でもゲルマン人は暴れ出すんだけど。さらにその外側にいた人たちがスラブ人です。ゲルマン人から見ても奴隷扱いされた人たちがスラブ人なんです。
さらにその向こうに、裸馬(はだかうま)に乗ってる遊牧民スキタイがいる。歴史に中に出てこない、文字を持っていない草原の民がいます。そういうふうにヨーロッパ人は出来ているのね。
真ん中にいるイタリア人とフランス人とが一番威張ってて。イタリアは暖かかったから古代ローマ帝国を作ったのね。フランスも雨が降って豊かな国で小麦がいっぱい取れたのね。ところがね、私の独自の眼力で見破ったんだけど、ドイツはあんまり雨が降らないんですよ。森林はね、一生懸命にきれいな森林地帯を作ったけどね。で、皆さんがここで習った三圃制農業(さんぽせいのうぎょう、土地を三分して作物を植え替えることによって、地味の低下を避ける農法。中世ヨーロッパの農村で、二圃性に代わり10~11世紀に普及し、農業生産力が向上した)といってですね。牛や馬の糞を入れて、川から引いた水で土を一生懸命肥やしたんですね。そしてそこで初めてジャガイモが取れるようになった。それで小麦もなんとか取れるようになったのね。それがドイツという国なんです。土地が痩せるから3年にいっぺんそこを耕してあとは草を生やして肥えさせるのね。だからドイツは貧しいんです。豚肉とジャガイモしかないのね、今も。料理はね。それに対して、イタリア、フランスは豊かだった。
イギリスはヒースの大草原、ヒースという小さな紫や白の、日本で言えばなんだろう、雑草ですね。これの大平原で痩せた土地なんですね。まあ野菜とかは取れるけど。そのイギリスが海の船の力で、七つの海を支配した大英帝国になっていく。日本までイギリスに支配されたわけです。戦国時代から。
でもイギリスは日本を捨てて、中国経営の方に当たってね、日本はオランダにまかせちゃった。長崎に出島というところを作って、出島だけが江戸幕府という徳川氏の体制から唯一、貿易が許されている場所とされた。本当はね capitulation キャピチュレーション(条件付き降伏、服従、政府間協定の合意事項)というんです。capitulate キャピチュレートというのは「首」という意味ですけどね「首を切る」という意味もある。
■ capitulation
キャピチュレーションというのは、例えばオスマントルコ帝国に、土下座はしなかったけども屈服しながら「貿易をさせていただきます」と、独占的な貿易関係、ヨーロッパ白人国家が独占的な権利を取るんですね。それがキャプチュレーションなんです。日本の歴史学者や日本史学者で、これを知ってる人は誰もいません。バカなんですね一言で言うと。東大教授とか日本の歴史学者っていうのは、世界を知らないんですよ。だから何で、オランダって国が日本を独占したか、これを考えもしないんです。キリシタンが、キリスト教徒や宣教師が、入り込んでくるのが幕府は死ぬほど怖かった。それでキリスト教禁止にして、オランダとだけ。オランダはプロテスタントでしたから、オランダとだけ付き合ったということです。
もうちょっと世界をきちんと勉強しろと。白人世界から見たら日本は、オランダとのキャプチュレーションなんです。白人たちは絶対土下座はしませんでした。だけど屈服はしました。そして幕府から特許状みたいのもらって貿易独占した。
■嵐が丘
だから今日はガヴァーネスの話に特化しますが、本当はここから大事なんだけど、「嵐が丘」という有名な小説があります。これはね、文学が好きだったら必ず読まなきゃいけない。原題は Wuthering Heights(ワザーリング・ハイツ)というんですね。この小説を読んだ人はたくさんいるけど、何のことだが理解できないんですよ。これはエミリー・ブロンテという女性作家が1847年に書いた小説なんです。エミリーにはお姉さんがいる。2つ上かな。シャーロット・ブロンテというのがね。このシャーロット・ブロンテは「ジェイン・エアー」という小説を書いたのね。これらは何回も映画になっているから、見てる人は見ています。女の子で小説好きの、文学好きの本読みさんは読んでます。ところが今の若い子たちはもう読まない。でも映画が残っていますからね。近代小説の原型みたいな感じなんですよ。特に「嵐が丘」の方が有名だと思う。舞台はスコットランドじゃなくて、中部イングランド。一応イングリッシュなんだけどかなり寒い北の方ですね。ここに山地というか大草原があってね。そこにお屋敷があって、もう観光地になってて、そこみんな見に行くんですよ。崩れ果てた昔の、貴族様のお屋敷があるのね。下の方に湖があってね。
「嵐が丘」の大事なシーンは、キャサリンって女の人がいろいろあって死んじゃったんだけど。彼女を死ぬほど愛していたヒースクリフって男が、嵐の中でキャサリンのことを叫び声を上げながら恋こがれるのね。そこに至るまでの2代にわたる物語です。ヒースクリーフはロンドンで拾われてきた孤児で、息子扱いなんだけど下男扱いでもあったかわいそうな男の子なんです。いじめられている。それで、隣家のキャサリンと少年少女時代に二人で遊んでいるんですね。それで、できていたんです。性行為をやっていたと思う。成長して、キャサリンは親の命令で別のお屋敷の息子と無理やり結婚させられる。傷心のヒースクリフはロンドンに出て行って、ある程度お金持ちになってから帰ってきて、自分が育ったお屋敷を買い取るんです。それで復讐をする、という話なんですよ。かわいそうな話なんだけど、映画のシーンぐらいはみんなどこかで見てるはず。クリフが崖と言う意味で、ヒースが小さな紫や赤の小さな雑草ですね。ヒースクリフと言う名前は、そこから作られた言葉でね。それの男の話。
■〇アパート、✖マンション
木造モルタル鉄筋の汚いアパートというのは、もう日本全国から消えつつあって、鉄筋アパートになっています。「アパート」って言葉は悪い言葉じゃないんですよ。アパートメントはね。フランスのシャンデリゼ通りの、日本の銀座や青山みたいなところにずらーっと超高級アパルトマンが並んでるわけですからね。アパートメントっていうのは金持ちたちの住んでる家のことで、そんな嫌な言葉じゃないんですよ。世界基準の言葉ですね。
それを「マンション」って言うから私はもう嫌なんだ。マンションっていうのは「大金持ちのお屋敷」ですからね。だから日本語でマンションって言うと本当に死ぬほど嫌だ。「タワマン」って言葉を聞くだけで吐き気がする。「タワーレジデンス」と言いなさいって。レジデンスは住居ですね。「高層鉄筋アパート」と言う意味です。
■ハイツ
ところが戦後から、東京の本郷のあたりで「ハイツ」っていう言葉を使い出した。戦前はね。御下宿(おんげしゅく、学生が親元を離れて大学などに通う際、アパートなどの一室を借りて生活する状況を指す)って言ったんですね。東京本郷菊坂下菊坂ってところで、あの辺に旅館もありました。御下宿っていうのはね。今だったら家賃がどれくらいだろう、20万円ぐらいです。東京帝国大学に通わせるために。田舎の金持ちや大地主たち、それから船問屋とかね。船持ちさんたちのような金持ちの息子たちで、頭がいい、旧制高校を出てる優秀な子どもたちが、あの辺の御下宿に住んでたのね。文学者も住んでいた。例えば、竹久夢二のような「ナヨッとした女の絵」を描いて有名なった作家がいます。彼らも御下宿を借りて住んでるのね。そこに当時で言えば女優さんクラスの美人の女たちが出入りして、その女を描くんですね。だから御下宿は立派なものだったんですよ。旅館と同格ですね。一泊今で言えば3万円みたいな。
それがハイツになっちゃったんだよ。ハイツが全国に広がって。この間までありました。バカみたいですけど。ハイツというのは「高原」という意味ですからね。このワザーリング・ハイツ(嵐が丘)から取ったんですよ。誰も知らないけど、そういうこと。ハイツというコトバはいつ頃からかなあ。ということは、戦前にお雇い外国人でアメリカから来た、宣教師もやっているような人たちが、日本人に英文学を英語で教えたんですよ。それを聞いて学んだ日本の学生たちは、秀才でありながらかつ金持ち階級でもあって、やがて官吏、官僚になっていくのね。または旧財閥系の企業の「社員」として働くんですけどね。「社員」の話ももうしましたね。彼らがこのハイツを借りて、やがてお金儲けしてそのハイツを自分で建てるんですね。
だからね、帝大文学部で「ワザーリング・ハイツ」を習ったのよ。だから全国にハイツが広がったの。もうバカみたいですけどね。私は一人で教えているんですよ、こういう言葉の語源をね、情けない。ワザーリングというのは、激しい山荒らしのことです。私が住んでいる熱海の家は、海抜200メートルもあるもんだから、たまに「ワザーリング」の状態になります。自分では203高地って呼んでるんだけど。本当に203メートルです。
■網代(あじろ)
私の家から7km先に、網代(あじろ)という小さな漁港があります。20年前に、ここの「網代の干物(ひもの)」が日本全国に名前が轟いたのよ。みんなが、ここで干物を買って帰ったんですよ。車がものすごく渋滞した。ところが、全国各地で干物を作るようになって、網代の干物産業はもう9割5分潰れました。
(記載途中。つづく)
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