「149」 上野千鶴子の女性学が、中国で大人気 ①

副島隆彦です。今日は9月5日です。

東京大学で女性学(フェミニズム)の正式講座を担当していた、上野 千鶴子(うえの ちづこ 1948―、77歳)という女性思想家がいます。

上野 千鶴子

上野千鶴子は東大を定年退官して今、77歳。本を50冊ぐらい書いていて、フェミニズムでは一番有名な人です。「スカートの下の劇場」(河出書房新書、1989年)という本とかですね。「おひとりさまの老後」(文芸春秋、2007年)みたいな高齢者の介護の本もずっと書いてきました。10冊以上のベストセラーを出している、有名な学者で評論家です。

スカートの下の劇場
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この上野千鶴子の本が、3年前から中国でバカ売れしています。日本ではあまり報道されませんが。中国で超一流大学である北京大学の女子学生たちが、上野千鶴子の本を読んで、ネットで取り上げて評判になって、わーっと人気が広がっている。つい最近も、今も上野千鶴子の本のブームが続いているという記事がありました。その記事と、数年前の記事も載せます。

(記事の転載貼りつけはじめ)
●2025年5月5日 日経Woman
https://woman.nikkei.com/atcl/column/23/081600325/042500022/

上野千鶴子ブーム続く中国…もがく女性たちが上野本を読む3つの理由
2022年に火が付いた上野ブーム 中国の女性たちの心をつかんだ背景にある中国社会の問題とは?

数年前から、中国で上野千鶴子さんの著書がベストセラーとなっている。2022年に中国の書評サイト「豆瓣(どうばん)」で、この年の「輝く作家」1位となり、『往復書簡 限界から始まる』(鈴木涼美との共著)は、「ブック・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。「19年の東京大学入学式の祝辞が中国語に翻訳され、SNSでバズったことに端を発した動き。そのブームは今も冷めることがない」と北京大学副教授の古市雅子さん。古市さんが、現在の中国の女性たちを取り巻く環境について解説する。

「上野本」は中国女性たちの必読書に

2025年に入っても、上野千鶴子ブームの熱は冷めていないどころか、上野さんの本は中国の女性たちの必読書として浸透してきたようにも感じる。また、中国の婚姻数が近年急速に減少し、24年には1980年以降で過去最低を記録したというニュースを目にした方もいるかもしれない。中国社会で女性たちは今どのような環境に置かれているのだろうか。

そもそも、フェミニズムに関する注目は19年以前から少しずつ高まっていた。それが表面化したのは、2010年代。まさに高度成長期にあった中国経済が、新型コロナウイルスによって足踏みを(…続く)

●2023年8月18日 Newsweek
上野千鶴子、性差別論が中国で爆発的ブーム…「おひとりさま」に共感も

<中国で「上野ブーム」が巻き起こったきっかけは? 本誌「世界が尊敬する日本人100」特集より>村上春樹や東野圭吾など中国で人気の日本人作家は多いが、新たに上野千鶴子がその1人に加わった。2022年に7冊、23年(7月末時点)は新訳を含め8冊もの翻訳書が出版されており、累計発行部数は70万部を超えたと報じられている。

「爆紅(爆発的人気)」とまで言われる中国の上野ブーム、きっかけとなったのは19年の東京大学入学式の祝辞だ。大学にも社会にもあからさまな性差別が横行しているとの指摘は、中国でも大きな反響を呼んだ。

17年にアメリカから始まった、セクハラや性差別を告発する#MeToo運動は中国でも広がりを見せたが、中国共産党は「西側敵対勢力による分断工作」として取り締まる姿勢を示している。こうしたなか、主に日本の問題を指摘しているため検閲を擦り抜け出版を許されている上野の著作は、フェミニズムに共感する人々にとってのバイブルとなった。

それだけではない。フェミニズムを知らない女性にも支持者は多いようだ。価値観が多様化し、結婚を求める親や親族の圧力をはねのけて1人で生きようとする女性が増えつつある中国では、「子供の代わりにペットを家族に」「単身者のための料理セット」など、単身経済は成長産業だ。いかに検閲を強化しようとも社会の変化は止められない。「おひとりさま」提唱に共感した上野ブームは、そのシンボルとなっている。
(転載貼り付けおわり)

副島隆彦です。上野千鶴子の本の何が、そんなに、中国の高学歴の女たちに受けているかというと、一言で言えば性欲とセックス、男女とのことを率直に書いているから。関連の評論文が10冊ぐらいありますが、それらすべて、ものすごく中国で女たちに読まれています。これは私なりには理解できる。

■バカ売れした、鈴木涼美との共著
一番バカ売れしたのが、鈴木 涼美(すずき すずみ、1983―、42歳)との共著で「往復書簡 限界から始まる」(2021年、幻冬舎)かな。この鈴木もとんでもない女性で。東京の一流お嬢様女子校を出て、日本経済新聞の記者(2009-2014)になったんだけど、慶応義塾大学在学中にAV女優をやっていた。私は彼女のビデオを探したことがあるけど手に入りませんでした。今はこの経歴は公表しているし、元AV女優というのが肩書の一つになっています。自分の顔写真付きの本をもう20冊ぐらい出してるから有名人なんでしょうが。私も1冊は読んだ。

往復書簡 限界から始まる
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それでその上野千鶴子と鈴木涼美の対談本で、鈴木が上野に対していっぱい質問するわけです。それに上野千鶴子はあけすけに答えていました。もう男女の性欲の問題を丸出しにして隠すことなく全部喋りました、という内容です。

私、副島隆彦が勝手な解釈をするといけないんですが、しかしやっぱり煽情的(センセーショナル)に、いやらしく表現しないと、人が理解してくれないから下品にやります。

上野千鶴子がその本の中で、「わたしは、肉体と精神をどぶに捨てるようなセックスを若いころ、たくさんした」と喋った。そこが北京大学の女子大学生たちにえらく受けたんだと思う。高学歴の女たちや、中国の知識人階級の女たちが上野に賛同した。2年前に上野千鶴子の大人気が中国で巻き起こった時、私はびっくりした。それで「なんで中国共産党は、北京大学に上野千鶴子を呼んで講演させないんだ」と私は思った。やらせると思った。しかしなかなかやらせません。中国共産党の本部というか、教育をやっている中国の文科省の長官みたいな、大学を管理しているところが、今も困り果てていると思う。

(本「往復書簡 限界から始まる」から引用はじめ)
わたし(上野)は「肉体と精神をどぶに捨てるような」セックスを、若いころ、たくさんしました。対価こそ発生しないものの、自分も相手も尊重しないようなセックスです。その後悔が、わたしに言わせたせりふでした。・・・(中略)・・・その(セックスの)やっかいさやめんどうさに見合った人間関係の手続きを、カネの力ですっとばして自分の欲望だけを満足させるのが、男にとっての性産業でしょう。そのとおり、あんたたち「どぶ」だよ、とどんなに言いたいか。はっきりいいましょう。カネや権力や暴力で女を意のままにしようとする男は、「どぶ」と呼ばれても仕方のない存在だ、と。
(引用おわり)

副島隆彦です。 鈴木に関して言うと、当時はAV女優をやっていたことを秘密にしながら、日本経済新聞の地方行政の記者を5年間やっていました。そしてその間にも、たくさんの日経新聞の男の記者たちと寝てるでしょう。これは日経新聞にとっては大変なスキャンダルで、結局、上から押し潰しました。しかしもう言論人である副島にバレちゃったから、今からでも書きます。日経は彼女をクビ(退職)にしちゃって、鈴木は作家デビューしました。前掲の、上野との対談本は、日本国内でも5万部10万部売れたと思う。鈴木は東京のお嬢様として生まれ育った。彼女自身に少し精神病の気がある、と言うと問題だけど。お父さんの鈴木 晶(すずき しょう)は大学教授で、フランス文学の翻訳もやってます。お母さんもそういう翻訳をやっているような家庭での一人娘だと思う。

■1990年代の社会現象「ブルセラ」
「ブルセラ少女」だった鈴木鈴美は、高校時代(1999-2001)に宮台真司(みいだい しんじ、1959-、66歳)や大塚英志(おおつか えいじ、1958―、67歳)を愛読したそうです。けれども、きっと彼女は高校時代に宮台真司と寝ていると、私は思いますね。その頃の宮台真司と私は友人で、個人的に彼を知っています。勉強会での付き合いがなくなって10年ぐらい経ちますが。宮台は私の言論人デビューよりも10年遅くて、私より6歳年下です。1993年にブルセラや援助交際を論じた本を出してドカーンと売れたんです。このてき東大の大学院(社会学)を出て、都立大の社会学の、もう助教授になっていました。その時にブルセラって言葉とともに出てきて、NHKにまでテレビにも出てました。

宮台真司

1990年代に社会現象になった「ブルセラ」っていうのは、せーラー服とブルマー(ブルマーズ)ってことからできた俗語で、アダルトグッズという意味もある。使用後の、シミのついた汚れた女性のパンティーを女子高校生たちが、渋谷や新宿のそういう特殊なお店に売りに行くんです。そうするとおそらく5000円や1万円で5枚とか10枚とか買ってくれるんだと思う。

16歳の鈴木涼美が自分の下着を売りに行ったブルセラショップで、鈴木がさっきまで履いていたパンツを買った男が、それを頭にかぶってマスターベーションする姿を見て、その男を見下した、と書いてある。ところが本人自身がまあ一言で言うとおかしいですから。今から30年前のそのころ、宮台真司とおそらくそのフルセラの店で出会ってるんですね

ブルセラショップ

■社会学の学者
宮台真司は、東大の同じ社会学で、上野千鶴子より11歳年下です。社会学ならもう一人、大澤 真幸(おおさわ まさち、1958年―、67歳)っていうのがいる。東大で社会学の学位をとって、千葉大学の助教授をした後、京都大学の正教授になったのよ。ところがこの大澤は、京大の女子学生を妊娠させて、大騒ぎになった。女子学生の親が騒いだんですね。それで大澤は教授になって2年で、実質クビになった。もうこれね、新聞に載ったんです。これを今、私が書くと本人は嫌だろうけどね。真実だから。

大澤美幸

東大社会学の親分は、私より4つ年上の、橋爪 大三郎(はしづめ だいさぶろう、1948年―、76歳)ですね。日本の社会学者で社会評論をやる学者として頂点の人間です。いやあ、困った。こういう話をし始めると、なんというか。東大社会学ボロボロになりますね。今日はその話はしません。

橋爪大三郎

■東大と京大
それで、上野千鶴子に戻すと、私が上野を最初に見かけたのが勉強会です。直接話したことはないんですけどね。上野千鶴子が来ていた。ジーンズを履いていて、髪もボサボサでお化粧もしない感じの小柄な女性です。そのうち派手なお化粧するようになりましたが。30歳の頃、上野は平安女子学院大学という京都の田舎大学で教えてたんです。彼女は京都大学卒業ですから。京大というところはね 自由な雰囲気があって、学部の中で学科の選択が自由なんですね。それが東大系との違いです。東大はね、官僚養成大学だから。

私の友達で東大行った奴らは、ほんと可哀想だった。九州の田舎者どもは「進振(シンブリ)」というのがあってですね。進学振替というのかな。新振で全部ダメになって。 東京出身の子たち、麻布高校や開成高校を出た奴らのような上手な生き方は全然できないもんだから。田舎者はね、みんなね、学者になれない。落ちこぼれるんです。かわいそうだった。誰も助言してくれないですからね。東大入るまでは各県で1番、5番、10番みたいなやつらで、勉強秀才たちなんだけども。みんな東京出てきて落ちこぼれて、かわいそう。

東京の奴らはこすっからいですから。代々、お互いに見知ってますからね。先輩後輩のつながりがあって。まあいいや。もう何の話だになっちゃうよ。でもね、もう私はいろんなことを全部喋らなきゃいけない立場だから。

■上野千鶴子の「マルクス主義フェニズム」
だから上野千鶴子は偉かったし、今でもずっと偉いんですけどね。フェミニズムの中でもここから専門的になって、「マルクス主義フェミニズム」と言うんです。上野本人が「マルフェミ」と名乗ってるの。フェミニズムという言葉ぐらいは、ちょっとインテリで読書人なら知らない奴はいないわけですが、昔はウーマンリブと言いました。これはもう下品な言葉で、英語の正式な呼び名は women’s libです。liberationで、自由になる、自由化するって言うんですね。1970年代は、女性の自由化運動。女性解放運動と言いました。

それの、アメリカの代表的女流評論家のベティ・フリーダン(Betty Friedan,1921-2006)とかは、私のアメリカ政治研究の本にも書いてます。もうそれを話し出すとね、きりがないんで。

「女性解放運動」のことを、日本の一般社会では俗称で「ウーマンリブ」と言いましたが、学問用語では「フェミニズム」と使い始めまして。フェミニン(feminine)というのは女性的という意味ですね。男性的はマスキュリン(masculine)と言います。女性らしさと言えば可愛いと言う意味だから。お化粧をいっぱいして可愛くするという意味でフェミニスズムを使ってもらうとフェミニストの女たちが困る。

◾️日本では、女性学が内部崩壊
しかし、1990年代まで各大学で女性学講座をいっぱい持たせたんだけど、ろくな研究成果が上がらなかったんですね。もう本とか論文書いっぱい出たけど、結局、誰も相手にされなくて消えていきました。日本人による女性学では、まあ上野千鶴子と、一番頑張っていたのは、落合 恵美子(1958―、67歳)かな。 大澤真幸の奥さんも女性学者なのね。でも自分の旦那が京都大学で女子学生を孕ませて、怒り狂って離婚したはずです。その後どうだったか、その噂しか聞いていません。

要するに、女性学者たち自身がそれぞれの男との関係でね。まあ簡単に言えはボロボロになったんですよ。としか言いようがない。

だから男との関係を一生懸命考え続ける学問である女性学が、内部崩壊したと思う。副島隆彦はここまで言い切ります。私は言い切る能力と権限を持っているのね。近くで彼らを見てましたから。 女性学という学問自体を、大学が教員に教えさせなくなったんです。実質滅んだんです。女子学生たちがついてこなかったというか。

■上野千鶴子と老人問題
だから日本で女性学が壊れちゃって。バリバリのフェミニズムの方もガンガン書いていました上野千鶴子はどうしたのかと言うと、彼女は頭が良かったから老人問題の方に行っちゃって。老後の女の生き方論でね。「おひとりさまの老後」(2007年、文芸春秋)っていう本でバーンと入れたんです。15年前だ。これすごい本ですよ。20年前なら、デパートの上の階のレストランにお客がひとりで入っていくと、「おひとりさまー」という言葉を割と大声でかけられていたんです。今は減ったんじゃないかと思う。三越や高島屋の上階のレストランに、ばあさんが一人で食べに来るわけね。旦那が死んじゃったとか、結婚していなかった人もいるだろうけど、おひとり様で。

上野千鶴子は文章力もあるし頭もいいから、そういう本も書いて読者に受けたんですね。でも、一人の女流評論家としてはやっぱり固いですからね。なかなか普通の人は読めないな。

おひとりさまの老後
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■女たちが恐ろしいくらいに強い中国
その上野千鶴子の本が、ドカーンと3年前に中国で売れちゃってね。中国の頭のいい女たちが上の彼女の本を読んだ。おそらくもう10冊ぐらい翻訳されてると思う。中国は書店書物史上が発達してないと言われ続けて何十年だけど、人口がすごいですから。日本に比べても、ドカーンと急激に、出版物市場がこの20年で大きくなったと思う。それで中国は、まがりなにも共産主義国家で社会主義思想で出来ていて、男女同権が守られている国ですからね。中国共産党の幹部たちも大企業も幹部たちも男女同一賃金です。出世も平等です。しかし一番上の方には男がいっぱいいるけどね。

だから中国では、女とちが恐ろしいくらいに強いんですよ。そばで見てても怖いですからね。まあこういうことを言うと、偏見だとか勝手なことをいうな、になっちゃうけど。中国の女は旦那を引っ叩きますからね。本当に怖いですよ。韓国の女も強いですから。

■日本の女性も最近は強くなった
日本はじゃあ日本の女は弱いのかと言うと、これが問題でね。ナヨナヨしてた女はいつも旦那にいじめられて泣いてました、という文化があります。最近は日本の女性も強くなった、と言っても、やっぱり一言で言うと「日本の女は恵まれない結婚生活をしても、じっと我慢して男と暮らす」「我慢して子供を育てて生きていく」っていうことらしいです。真実でしょう。

だけどもう我慢しなくなった。離婚率で言うと日本も実は、5割を超してますね。ただその人たちはまた再婚するもんだから、離婚率が目立たないしあんまり新聞記事になりませんね。もう日本の女たちも我慢しなくなった。それは「金曜日の妻たちへ」という30年前のテレビドラマの頃からですね。

金曜日の妻たちへ ワンシーン

主婦や女性は「不倫」という言葉を使います。普通の一般用語では、男たちは「浮気」という言葉を使いますね。女性にとっての不倫が当然視されるようになって。どうも女たちの3割ぐらいはやっぱり、夫や彼氏以外の男と寝ているようです。この率は思っているよりもずっと高いです。だからそれが瀬戸内寂聴みたいな女流作家の、「男とたくさん愛情生活があって当たり前よ」という尼さんが書いた本が受けた。その瀬戸内寂聴を嫌う真面目なお母さん、奥様たちも一部います。これはこっちで頑強に根強いですね。それは瀬戸内寂聴の悪い面を抜いていると言われています。

瀬戸内寂聴

(①おわり、②に続く)

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