NHK大河ドラマ「龍馬伝」

ジョー(下條) 投稿日:2011/01/02 13:50

新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくおねがいします。

さて、先日NHKの大河ドラマ「龍馬伝」が終わりました。

このサイトを見ている人は、「坂本龍馬はジャーディン・マセソン商会とアーネスト・サトウと深く関係していた」という副島先生の説を知っていると思います。だから、脚色してつくられた坂本龍馬の伝記ドラマなど、あまり興味がわかないかもしれない。

しかし、私は、NHKなりに、「ひとりで維新の改革を成し遂げた偉人・坂本龍馬」のイメージを損なわず、真実をいくつかいれていたと思います。副島先生の書いた「属国日本論」の真実が、ざわざわと世の中に伝わっているというひとつの証(あかし)です。

例えば、ドラマには、アーネスト・サトウが登場しました。坂本龍馬がアーネスト・サトウに向かって、「薩摩と長州のうしろにはイギリスがいるのでしょう」と啖呵(たんか)をきって、パークスやアーネスト・サトウらを慌てさせる場面があった。「おいおい、薩長連合をつくったのはおまえってことになっているんだろう、そんなこと言っちゃあ、いかんぜよ」とつっこみを入れたのは私だけではなかったと思います。ちなみに、アーネスト・サトウこそが倒幕の裏にいたイギリス外交官です。

また、坂本龍馬暗殺の下手人として、それとなく、長州藩の存在を示唆していました。坂本龍馬夫人のおりょうの夢として、長州人に暗殺される場面を映し出していた。また、大政奉還をもくろむ坂本龍馬は、薩摩藩・長州藩にとっては邪魔者でしかないという史実をきちんと描いていました。

最近、NHKは、ドラマの中で、さりげなく、少しだけ真実を暴露するという手法をとっています。白州次郎の伝記ドラマでも、彼とキャノン機関とのつながりを、新聞記者のことばとして暴露していました。白州次郎はキャノン機関をつかって裏の仕事をさせていたようです。

また、この「龍馬伝」の中で、いろいろな歴史の事実が確認できたのがよかった。

例えば、金と銀の交換比率がちがうために日本の金が海外に流れ出したという事実、および、これが志士たちが攘夷に走る理由であることをきちんと伝えていました。久坂玄瑞と坂本龍馬の会話として描いていました。

そして、文久3年5月10日の尊王攘夷決起も確認できた。この日、志士たちは皆、苦労して画策してきた尊王攘夷の活動が、ついに成就するのだと心待ちにしていた。ところが、藩からは何の命令もない。彼らは本当に落胆した。これらのことが確認できました。

坂本龍馬がなぜ大政奉還に走ったかは副島先生が詳しく論述しています。アーネスト・サトウが坂本龍馬の後ろで暗躍していたということが属国日本論を読めばわかる。「船中八策」という坂本龍馬が書いた明治維新の骨格方針はアーネスト・サトウがジャパン・タイムズに寄稿した「英国策論」がもとになっています。アーネスト・サトウは、「日本の元首は天皇であり、そのもとに諸雄藩の連合政権をつくるべきだ」と書いているそうですから、これが大政奉還のもとのアイデアでしょう。したがって、坂本龍馬もこの案のとおり動いている。これはアーネスト・サトウが土佐藩を訪問した直後に後藤象二郎が薩摩藩に大政奉還をかけあっていることからもわかります。

ところが、大政奉還に走った坂本龍馬が暗殺されたことから、急激な状況の変化が起きたことがわかります。いったい何がアーネスト・サトウに起きたのか?

裏読みすれば、最初から騙すつもりだった、大政奉還させて、その後、薩長土肥の軍事力で制圧する筋書きが前もってあったと考えられる。または、フランスの出方によって、2つの場合を想定して、どちらにも対応できるようにしていたのかもしれない。

ただ、アーネスト・サトウの行動を好意的に解釈するならば、彼自身が急激なイギリス本国の方針転換に振り回されたのではないかという理論も成立します。坂本龍馬が暗殺された1867年ですが、その前の3年間というのは世界史でも希(まれ)な激動の時代です。ヨーロッパからアメリカ・アジアまで、いろいろなことが起こっている。オーストリア・ハンガリー帝国(ハプスブルク家)の誕生などいろいろありますが、特に記しておかなくてはいけないのが、「南北戦争の終了(1865年4月)」と「太平天国の乱の終息(1864年)」です。

これによって、武器商人であるジャーディン・マチソン商会は在庫をかかえたまま、武器が売れなくなったはずです。こういう急激な経済環境変化に普通はついていけない。そこで、イギリス本国とトーマス・グラバーが協力して、日本を内乱に導いて武器の在庫を一掃しようしたのではないか、そのため大政奉還の方に走っていたパークスやアーネスト・サトウを転向させ、また坂本龍馬を捨てゴマにしなければならなかったのではないか。これは典型的な「逆コース」といわれるパターンです。第二次世界大戦後の日本でもありました。

副島先生の話だと、イギリスのどこかにこれらの資料がまだ隠されているそうですから、いずれ、真実が明らかになるでしょう。

このドラマをみると、岩崎弥太郎がつくった三菱という会社は、坂本龍馬暗殺によって生まれたことがわかります。実は、いろは丸事件というのがあって、紀州藩が海援隊に8万両(本当は7万両らしい)の賠償金を払ったことになっています。ドラマでもきちんと取り上げていました。しかし、このお金は、いろは丸所有の大洲藩には行っていないらしい。つまり、岩崎弥太郎か後藤象二郎が賠償金を掠(かす)め取ったということです。ちなみに、坂本龍馬が暗殺されたとき、なぜ京都にいたかというと、この賠償金をとりにいったらしい。これらのことは津本陽という人の本で明らかになっています。

これが本当に歴史的な事実なら、いろは丸の賠償金で岩崎弥太郎は大もうけをしたということになります。坂本龍馬が生きていたらそうはならなかったわけで、岩崎弥太郎が創設した三菱は、坂本龍馬暗殺の上に成り立つ会社ということになります。

三菱という会社は、「三菱ゼロ式戦闘機」でわかるとおり、脈々とつながる武器商人でもあります。ドラマでは、そのことを、岩崎弥太郎のことばとして、「戦争こそが金儲けのビッグチャンスだ」といわせていました。

下條竜夫拝