舟を編む

5670 投稿日:2013/05/02 02:52

今風の言葉でいえばキモオタ(気持ち悪いオタク)である出版社勤務の馬締(まじめ=松田龍平)に,彼の下宿先のおばさんの孫娘である香具矢(かぐや=宮崎(さきは立つ)あおい)がなぜ惹(ひ)かれるのか、そこにちょっと引っ掛かりました(松田龍平が気持ち悪すぎる)が、良作です。ちょっと後半間延びした感じもありましたが、観に行って後悔することはないと思います。私としてはもうひとつくらい辞書作りの苦労話があって良いのかなと考えました。
※もしかしたら、ここでは「崎」の変字体が反映されず、文字化けするかも知れません。

辞書の監修役を務める国語学者・松本を演じる加藤剛、その妻役の八千草薫、長年、出版社で辞書編纂(へんさん)してきた荒木役の小林薫、先述の下宿のおばさん役の渡辺美佐子など、年配の役者さんが見事な演技でした。顔の皺(しわ)、白髪それ自体が素晴らしい。若い頃のスタローンやシュワルツェネッガーが筋肉で観客を圧倒していたのと同様に。
※少し余談になりますが、池脇千鶴が31歳という歳の割には老けて見えるのが気になりました。大酒飲んで煙草吸って…という不摂生な生活を送っているのではないかと少々心配になりました。

辞典の編纂には膨大な時間を要する。その歳月の経過というのが、この映画の見せ所になっていて、老いた加藤剛が更に老い、定年を迎えた小林薫が老境に達する。同時に若者言葉も変化し続け、編集者も研究を怠(おこた)ることが出来ない…そのあたりの描写が巧みでした。

恐らくキネマ旬報では上位に食い込むでしょうし、出演者の誰かが主演賞、助演賞受賞しても不思議ではない。まだ上映中なので、興味のある方、ご覧になってはいかがでしょうか。