夏のお子様向け映画『ベスト・キッド(The Karate Kid)』

菊地研一郎(会員番号2555) 投稿日:2010/08/24 05:19

8月22日にリメイクの『ベスト・キッド(The Karate Kid)』を見た。

オリジナルの『ベスト・キッド』は80年代にヒットした他愛のない青春娯楽映画だ。普通のイタリア系の少年が日系人から空手を習ってJocks(体育会系のいじめっ子の意味)に勝つ、という筋。日本でもそこそこヒットし、テレビの洋画劇場でもよく流れていた。

リメイク版ではいくつか設定が変更されている。場所がアメリカから北京に、少年がウィル・スミスの息子ジェイデンに、空手マンがジャッキー・チェンに。武術も空手からカンフーに。異論はあると思うが、ジャッキー・チェンのおかげで“オリエンタリズム”な違和感は少ないだろう。ジェイデンくんも小柄で童顔で、まだ可愛い小学生という容貌である。

映画後半のカンフー修行からトーナメント戦で優勝するまでの流れはスポ魂の定番通りなためコメントの必要が無い。学問道場的に意味があるのは前半だろう。露骨にアメリカ大衆向けの「Welcome to 北京」ビデオしており、北京の意図が透けて見える。例えば、天安門広場を背後にするシーンがあるのだが、さりげなく毛沢東の肖像画が長々と写り込んでいた。

明示はされないが、ボーイのママはデトロイトのGMに勤務していたようである(父は数年前に死亡)。ホームシックのボーイが「中国なんかイヤだ。ホームに帰りたい」と叫ぶが、ママはこう叱る。「帰るところはないの。もうデトロイトの家はないの。ここがホームなの!」どうやら一時転勤ではないようなニュアンスである。続編があれば、その辺りのことがもう少し描かれるかもしれない。オリジナルの続編『ベスト・キッド2』はオキナワが舞台で、日本人にとってはかなり珍妙に見えたのを覚えているが…。