ロバート・A・ハインラインの伝記について
会員番号1021小澤博幸と申します。アメリカSF黄金時代のSF作家ロバート・A・ハインラインの伝記が発売されました。題名はRobert A. Heinlein In Dialougue With His Century VolumeⅠ 1907-1948 Learning Curve という長たらしいものです。作者は、ウィリアム H.パターソン ジュニア(Wiliam H. Patterson, Jr)です。出版社は、TORです。600ペイジを越える大著です。
英語を読むスピードが速くないので、まだぱらぱらめくっただけですが、表紙カバーの見返しの部分に、「1930年代の左翼で、アメリカのリバータリアンに影響を与えた。」(A left-wing politician in the 1930s,he became an inspiration to American libertarians.)とあります。
わたくしは、この35年ほど、ハインラインの『異星の客』(創元SF文庫)を繰り返し読んできました。はじめは日本語で、次に英文で、一年に一度は読んでいます。その主人公のひとり、ジュバル・ハーショーは、「その気になりさえすれば、地球連邦とポケット・ナイフ一丁でたたかう」まさにリバータリアンの典型のような人物です。
50年前に読んだハインラインの『宇宙船ガリレオ号』も物理科学者と三人の少年が、手作りロケットで月世界に行くお話しでした。これもわたくしには、リバータリアンの典型のように思われます。
ハインラインが、本当にリバータリアンに影響を与えたかどうかは、これから議論されるものなのでしょうが、1988年に亡くなったにもかかわらず、現在でもアメリカの書店では売られ続けており、しかもさらに数年前は、「ヴァージニア版」(Virginia Edition)という特別編集版が発売されているところを見ても、まだアメリカ人には影響を与え続けているのでしょう。
数年前アメリカの知り合い同士の会話を聞いた限りでは、『異星の客』(Strenger In A Strange Land)はアメリカ教養人の一般常識かな、と感じたことがありました。大学のテキストにも、使われているようです。(The Martian Named Smith Critical Perspectives on Robert A. Heinlein’s Stranger in a Strange Land by W.H.Patterson Jr & Andrew Thornton)
ハインラインは、NASAとかかわりが深かったようで、彼の死後追悼集Requiemが、NASAの学者Yoji Kondoの編集で出版されています。日本の作家矢野徹による弔辞には感動します。
しかし、ハインラインは、アポロ計画の欺瞞については、発言していないようです。ここがわたくしの大きな疑問点です。
参考、「バージニア版」について
http://www.virginiaedition.com/