2/5刊 「これから世界はどうなるか: 米国衰退と日本」 (ちくま新書)

1094 投稿日:2013/02/02 09:03

これから世界はどうなるか: 米国衰退と日本 (ちくま新書) [新書]
孫崎 享 (著)
価格: ¥ 840
内容紹介
経済・軍事・文化発信で他国を圧倒した米国の凋落が著しい。この歴史的な大転換のなか、世界は新秩序を模索し始めた。日本の平和と繁栄のために進むべき道とは。
新書: 256ページ
出版社: 筑摩書房 (2013/2/5)
言語 日本語
ISBN-10: 4480067027
ISBN-13: 978-4480067029
発売日: 2013/2/5

孫崎享のつぶやき 2013-02-01 00:35
http://ch.nicovideo.jp/magosaki/blomaga
2月6日発売予定『これから世界はどうなるか』の「はじめに」の部分 

はじめに

 世界は今、歴史的な変動期にあります。

 第二次世界大戦から今日まで、国際政治には、柱がありました。

常に米国が世界最強です。米国が世界を取り仕切りました。全ての国際関係は米国が世界を取り仕切ることで構築されました。

 この構図は、誰もがほぼ永久的に続くと思いました。フランシス・フクヤマという米国の著名な歴史学者は『歴史の終わり』を書きました。米国体制の完成でもって歴史は終わったとしました。

 日本でも、米国の世界の完全掌握の下では、米国追随が国益に合致すると、東大の先生方が臆面もなく述べていました。

 実は、今、この米国支配が揺らいでいます。もし、米国支配が本当に揺らげば、第二次大戦以来の国際政治の枠組みは変わります。

 そんなことは、ないだろう。日本では、極く、極く、一部の人を除いて、ほぼ全ての人がそう思っています。

私達日本人は、「米国が世界に君臨することは永遠に続く」とすら思っています。この中、米国に従っていれば問題なかろうと思っています。

 でも違うのです。

 「でも違う」、そんな根拠のないことを言わないで欲しいといわれるかもしれません。

 経済では、確実に米国が世界一の座から降りつつあるのです。

 皆さんが未だ気付いていないデータを示します。出典は国連統計です。

 2010年、中国は工業生産で米国を抜きました。歴史的な事件です。

米国は1913年にはすでに工業生産で英国を抜いています。(世界の工業生産では1870年には英国が31.8%で世界の一位、これが1913年には米国が35.8%で一位、英国はドイツ(15.7%)に次いで第三位(14.0%)です。以降、約100年米国は工業生産でから世界NO1の地位にありました。ですから、2010年というのは、世界史の中でも歴史的時期なのです。

米国の世界一の座が明らかに脅かされた年なのです。

でも日本の新聞はほとんど報道しません。ですから、日本の人はほとんどの人はしりません。

国民総生産(GDP)でも、中国は米国を抜きます。今や、「国民総生産(GDP)で中国は米国を抜くか」が問題ではなく、「何時抜くか」が問題になります。

 もし、日本人の大多数が「中国は超大国として米国を抜く」ということを事実として受け入れるとすると、どうなるでしょうか。

 「米国に依存すれば安全保障は保たれる」「米国経済との一体化で日本経済の繁栄がある」という政策の是非が問われます。

 逆に言えば、米国に依存させようとする勢力から見ると、「中国が工業生産で米国を抜いた。さらに国民総生産でも抜く」という情報は必ずしも好ましいものではありません。

 この本では、「米国支配が終わるのか否か、終わるとすると、世界秩序はどうなるか」を見て見たいと思います。

 日本国民が「中国は超大国として米国を追い抜く」という状況を充分知らないのは、どうも無知だけではなさそうです。何か恣意的な力が働いているように思えます。

 まず、国際関係での情報を見直す代わりに、我々に関心のある原発、TPP、増税の問題を見て見たいと思います。

 日本の社会では正しい情報が伝わっていないのです。意識的な詭弁が行われています。この本では、先ず、原発、TPP、,安全保障問題で、如何に詭弁が横行しているかを検証します。

 日本社会では、詭弁が横行しています。

 「出来るだけ客観的な情報を分かち合おう」という姿勢が社会から消えました。

 先ず、政策がある、この政策に都合の良い情報を流布させる、これが今日の日本社会の姿です。

 私達の最も関心のある原発、TPP、,安全保障問題を見て見たいと思います。

 日本社会では、原発以降、大変な変化が出ました。メディア、大学教授、官僚など従来権威とされる人々の発言の信用が一気に消滅しました。

 「信頼度」を専門に調査している世論調査調査にEdelman「Trustbarometer」があります。日本でも、大学研究者が

(2012年版)は、日本社会の衝撃的な変化を示しました。幾つかのデータを見て見たいと思います。

→は2011年から(→)2012年の変化です。

(1)組織的信頼度

政府:51%→25%(-26%)、メディア48%→36%(-12%)、

NGO51%→30%、ビジネス53%→47%

(2)業種別信頼度

エネルギー:75%→29%(-46%)、メディア54%→33%(-21%)、金融サービス55%→38%(-17%)、銀行71%→51%(-20%)

注:メディアに関して(1)と(2)の数字が異なるのは原文のまま。

(3)個別信頼度

技術的専門家65%→42%、学者ないし専門家70%→32%、会社社長67%→24%、貴方のような人39%→22%、NGO48%→18%、一般社員59%→16%、金融アナリスト40%→14%、政府公務員63%→8%、

(4)メディア

新聞-16%、テレビ-26%、ラジオ-13%、雑誌-13%

 驚く状況です。

 日本社会では、今大変な情報革命が起こっています。

 従来正しいと思ってきたものが正しくないのです。そう日本の世論は判断し始めました。

 しかし、特定の政策に誘導するため、世論を誘導するのは、何も原発やTPPに限ったものではありません。国際政治でも同じ現象がでているのです。

 私達は自らが判断する時代に入りました。この本では自ら判断する参考に出来るだけ、論争されている論点を紹介し、異なる論点に接することが出来るように試みて見ました。対立をしることにより、我々は正解に近づきます。

 私は、この本では、国際政治を、出来るだけ「論争から見る」ということを心がけました。

 どんな本でもいいですから「国際政治」の本を手にして下さい。

特に日本の著者の本がいいです。

 次々と説明が続きます。

 でも、多くの場合、どこが大事なのか、解らないのです。

 国際政治とは、主導権を巡って国家が激しい戦いを行っている場です。

本来、とても興奮を呼び起こす分野です。でも、「国際政治」の本は決して興奮を呼び起こすような本ではありません。なかなか「国際政治」の核心に迫れないのです。

 どうしたら、「国際政治」の核心に迫ることができるでしょうか。

第一章 情報革命と国際政治:新聞やテレビが日々報道しています。これに加えて、国際情勢を学ぶ必要があるのでしょうか。あるのです。残念ながら、今日の新聞やテレビは特定方向に誘導するため、虚偽と詭弁で満ちているのです