『議会政治の誕生と国会』―崩壊・再生への道 発刊にあたって 平野貞夫
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<メルマガ・日本一新第90号>
◎「日本一新運動」の原点―97(臨時増刊号)
日本一新の会・代表 平野 貞夫
(『議会政治の誕生と国会』―崩壊・再生への道
発刊にあたって)
東日本大震災と、それに起因する福島第一原発事故という、日
本にとって有史以来初めて経験する国難に立ち往生する政治家た
ち、まったく機能しない政府、迷走する国会、これが国家かと私
は悩んだ。この国難に私にできることは、明治時代に導入した議
会政治をふり返り、日本が何故こうも劣化したかを記録すること
であった。
たまたま縁のあった学術専門書の出版で知られている『信山社
出版』の神山貢社長に、私の構想を理解していただき、刊行する
ことができた。神山貢社長とは法政大学の同窓で、原水爆禁止運
動で著名な安井郁教授のゼミで、7年ぐらい私が先輩という縁で
ある。「好きなだけ書けば」と助言され、その結果が400頁に
近い書物となった。2月27日(月)には発売される予定で、ま
ずは、執筆の動機に当たる「まえがき」をお読みいただき、その
意をご理解願いたい。
まえがき
平成21年(2009年)8月30日に行われた第45回衆議
院総選挙で、日本国民の圧倒的多数は民主党に政権を担当させる
ことを選んだ。わが国の憲政史上画期的出来事であった。いな、
わが国の歴史で初めて国民の意思=投票で、政治権力がつくられ
たといえる。
衆議院事務局から参議院議員など半世紀間、日本の議会政治の
なかで私は生きてきた。宿願の本格的「政権交代」が実現した―。
ようやくわが国で本格的「議会民主政治」は始まったと、生きし
方をふり返り涙を流したものであった。ところが一週間も過ぎる
と、政権交代した民主党が、議会民主政治を担える政党なのか大
きな疑問を持つようになった。
それは、第1に政府与党の幹事長を「政策の協議を決定に関わ
らさない」ようにしたことだ。議院内閣制を採る議会政治国で、
これでは国家統治は不可能である。当初は「幹事長は選挙だけ」
という方針だった。国会対策も「官邸」ということだったようだ
が、これは憲法上の問題に気がついて、幹事長の担当ということ
に戻した。選挙でも国会対策でも「政策」と切り離すことはでき
ない。小沢一郎という政治家を政権運営の中枢から排除すること
を、民主党政権スタートの最大課題としたことが、政権を迷走さ
せ政治を劣化させた。
第2は、民主党政権幹部の感情的で非常識で狂ったような「官
僚攻撃」であった。官僚のあり方や不祥事に対する意見や批判は
大いに結構だが、官僚の人格や職責を冒涜する発言が相次いだ。
多くの良識ある官僚に対して不安感と政権に対する嫌悪感を感じ
させたことである。行政を実行する官僚の協力なくして、適切な
政治は不可能だ。権力を握れば官僚は奴隷とばかり「官僚はバカ
だ」と呼んだ馬鹿な主要閣僚がいたが、これでは真っ当な政治が
できるはずはない。
歴史的政権交代で民主党政権が成立して、日本の民主政治が著
しく劣化する。という現象に直面して私は悩みつづけてきた。そ
して平成22年6月、鳩山政権が行き詰まり、菅政権が成立した
とたんに、政権公約の基本を次々とクーデターのように否定した。
挙げ句の果てに、菅首相は「議会主義とは、ある意味で期間を限
定した独裁政治だ」とまで暴言を吐いた。議会主義政治家でない
ことを露呈した。菅政権の議会政治や憲法冒涜のいちいちを批判
するつもりはないが、東日本大震災・原発事故への対応は、政治
家としてより人間として許せないものがあった。
「政権交代による健全な議会民主政治の定着」を目指して、私
は30数年、生命の全てをこれに懸けてきた。平成19年から2
年余、当時の小沢民主党代表に言われ、菅代表代行本人からも要
請され相談相手をしていたこともあった。今日の政治の劣化に直
面して、私は自責の念に苛まれている。
本書は、政治改革の重要目標である「国民の意思による政権交
代」が実現したとたんに、日本政治の汚濁が吹き出すという「ポ
リチカル・パラドックス」を、どう解決するかという問題意識に
もとづいて執筆したものである。今日の政治の劣化の最大の原因
は、現在の国会議員のほとんどが、わが国で120年余にわたっ
て展開された議会政治を知らないこと?、知ろうとしないことで
ある。
国会議員だけではない。国民も有識者もメディアも、審議スト
ップした国会を批判するに「一日一億円の経費の無駄」と論評す
るレベルだ。憲法で「国権の最高機関」を、その程度にしか考え
ない「日本の政治文化」に、問題の根本がある。与野党が国家国
民のために真剣に議論して審議が止まることは政治ではありえる
こと。もっとも党利党略、私利私欲のストップなら別だ。要する
に最近の日本人には、議会政治に対する健全な感性を喪失してい
ることが問題である。
それを呼び戻すことが喫緊の課題であるとの思いをもとに、わ
が国で議会政治を導入する動きが始まって、今日に至るまで約1
50年の通史を世に出すことにした。後期高齢を過ぎた私にでき
ることはこの程度のことである。日本人とりわけ国会議員が、自
分たちの職責の歴史を知らないというか、無視しているところに
今日の政治の劣化があるという推認から執筆した。
本書は、私が昭和63年(1988年)に執筆し、徳間書店か
ら政党政治研究会の名で刊行した『議会政治100年』を参考と
した。700頁を超える同書を整理・要約・補完した上で、平成
23年12月までの日本議会政治を追加し通史とした。執筆時間
に限られ、歴史の上の評価・特色づけなどが不十分であるが、民
主党政権でわが国の議会政治は崩壊したという私の怒りの信条を
理解されたい」
この本の特色は、幕末の議会政治導入論から昨年の平成23年
までの約150年にわたるわが国の議会政治を概観した通史であ
り、単行本で今日までの議会通史は本書だけである。国会議員は
もとより、地方議会でその職責にあたられる多くの議員、首長、
そしてそれを選び出す側にいる国民のみなさんに、議会政治に強
い関心をもってもらうという目的で執筆したものだ。
(臨時増刊号への激励に感謝する)
2月20日付の「メルマガ・日本臨時増刊号」には、多数の激
励やコメントをいただき、また、メルマガ作成に情報を提供して
いただいた方々に厚くお礼を申し上げる。
特捜関係者の内部告発で「捜査資料には他の政治家への裏金提
供が結構記載されていた」については、早速それを証明するよう
に、平成21年3月7日付で、共同通信が「自民党有力議員側に
6千万円裏献金、西松関係者が供述」と発信していることも判明
した。
問題はこれからだが、「小沢関係捜査」が政治的謀略である疑
惑がきわめて濃厚であることがさまざまな情報で明らかになった。
まず、巨大メディアがこの問題を素知らぬ顔で過ごせば、メディ
アとしての責任放棄であり、存在は不可能であろう。謀略に荷担
している事実を証明することになるからだ。そうではないと強弁
するなら、早急に真実の究明に起ちあがるのが、健全なメディア
としての役割ではないか。
相も変わらず、何を考えているのかまったくわからないのが国
会だ。「小沢問題」を捜査や裁判より政治的に優先利用して、証
人喚問とか政治倫理審査会と、筋違いのことをいっていた人たち
はどのような責任をとるつもりか。最早、「小沢関係の捜査と裁
判」は議会民主政治に対する挑戦であったことを理解できない人
は国会議員の資格はない。今からでも、決して遅くはない。国会
として、直ちに真相究明に着手すべきだ。
『議会政治の誕生と国会』の「結び」には、「小沢問題」につ
いて論じておいた。議員諸兄には参考にされたし。
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事務局雑話
漸く『議会政治の誕生と国会』―崩壊・再生への道(平野貞夫著・
信山社出版)が刊行される。発売日は2月27日(月)とのこと
だが、首都圏であれば今週末に店頭に並ぶと出版社が情報があり、
Amazonでは既に予約受付中。価格3.780円(税込)
さても、この新刊書は平野代表の渾身の1冊であると私は思う。
ただ、私も不勉強だから断定はできないが、議会史を学者の文章
で表層的に書いたものは他にもあるのだろうが、議会民主政治の
あれこれを、その現場から綴ったところにこの本の意味がある。
平野代表は「本の値段が高い」と愚痴るが、この類の書籍でこの
価格が高いと私は思わない。ウィキペディアによれば、信山社出
版とは「売れ行きをさほど気にかけていないかのようなタイトル
を出版」とあり、類は友を呼ぶ好例でもあろう。
この本の活かし方は、議会民主政治に関心を持つ人がまず読む。
次は、本とは「積ん読」ものとする議員さんに、カンパに代替し
て贈るなど工夫がいる。巷間でいわれるが「国政を担う政治家が
小粒になった」と私も思う。それは受験対策という択一式の問題
には強いが、自ら判断し、解決策を探すという創造的なことはま
ったく不得手な人たちが多いからである。
私は05年にあるところから文章を求められ、その中に『日本は
これからの80年で人口が半減すると予測されている。世界経済
に影響を与えるほどに大きくなった国家が、世界最大の速度で人
口減が進むのだが、この経験は地球上に先例がない。民主主義制
度のもとで、社会保障を含む国家としての仕組みなど、諸外国に
学ぶものなどないと私たちは自覚せねばならない』と書き遺して
いる。議会民主政治とは、選ぶ側と選ばれる側が健全に機能して
始めてその成果が期待される。まえがきには「国民も有識者もメ
ディアも・・・」とあるが、ここは耳が痛い。有識者やメディア、
そして政治家が好き勝手をやるのは、国民の選択能力、そして監
視力に瑕疵があるからではないだろうか。国会議員にも、そして
国民の側にも「理論武装」が求められている。
☆本のオビより
『崩壊の危機に瀕した議会政治の元凶を顕在化し、健全な感性を
呼び戻す縁(よすが)に、議会政治の誕生から150年の通史を
概観する』
『議会政治の歴史を知らずして、政治は出来ない。政治家は、そ
のよって来る所を理解・掌握することこそ、選挙戦略・勝利にも
通ずるはずである。本書を政治の抜本改革を志す人々に薦めたい』
推薦・小沢一郎
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2月18・19日の両日、稼業の岡山・兵庫出張を兼ねて足を延
ばし、大阪・京都を慌ただしく駆け巡ってきた。
主にお会いしたのは「日本一新の会」会員ではあるものの、関西
日本一新の会の活動には不参加の方々で、その思いを確かめる旅
でもあった。それぞれのご意見は事前にメールなどを頂戴してお
り、グループごとに刻限を調整してお会いし、大きな集会の中で
は聞けないお話を膝詰めで伺い、これからを語り合った。ただ、
それぞれの時間は限られていたことから十分とはいえず、続いて
のお話は他日を期すこととした。
また短時間ではあったが、河上みつえさんの集会にも立ち会って、
自身で研究された地方議会の歴史や役割・問題点などを拝聴した。
政治家の卵とは、孵化してナンボのものであり、孵化し損じた卵
はものの役に立たない。地道に研究し、それを固有の政策として
支援者に語る、それを基礎にして議席を得て活躍する、そんな議
員が多数になれば、議員歳費の多寡など問題ではない。あまりに
も「対費用効果」が悪いから、歳費削減や定数削減など本末転倒
の議論になるのだ。
そんな慌ただしさの中、19日に帰参して成分化したのが20日
発行の「臨時増刊号」である。平野代表から届いていた草稿を、
缶ビール片手でテキストにしてファックス送信、筆者校正、再送
信、さらに文字数が通例号より多かったために布置を調整して、
A4版2枚に納めるなど、2人の作業は深夜に及んだが、緊急臨
時号として20日早朝には配信ができて安堵した。